ブロックチェーンに隠れた3つの課題とは?

DXの有望技術として期待されるブロックチェーン。分散型台帳とも呼ばれるこの技術が普及するためには克服すべき3つの課題「スケーラビリティ」「ファイナリティ」「セキュリティ」があります。

本記事では、これら3つの課題の概要と解決策を解説します。

  1. ブロックチェーンのおさらい
  2. ブロックチェーンの課題①:スケーラビリティ
  3. ブロックチェーンの課題②:ファイナリティ
  4. ブロックチェーンの課題③:セキュリティ
  5. まとめ

ブロックチェーンのおさらい

高まるブロックチェーン市場への期待

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待されている有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことです。産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーションから開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革まで大小問わずにビジネス全体を変革する可能性を秘めています。

元々はFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンですが、近年、データの透明性や耐障害性、分散的な組織構造などが注目され、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

海外では行政や地域福祉レベルでもブロックチェーンが実用化されるケースがあり、国内でも大手企業を中心に、実証実験や一部サービスへの導入が始まっています。

欧州での規制や度重なる企業の不祥事などにより、データの正確性や業務の自動化が求められる今後のビジネスでは、ブロックチェーンの需要はさらに拡大していくことでしょう。

テーマでもあるブロックチェーンの課題について説明を加える前に、そもそもブロックチェーンとはどういう仕組みなのか簡単におさらいしましょう。

ブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

詳しくは以下の記事でも解説しています。

そんなブロックチェーンも万能薬ではない!?

上述のように、ブロックチェーンは様々な社会課題を解決する可能性を秘めた素晴らしい技術です。しかし、その割には私達が普段触れているサービスに適用されている事例は多くはなく、社会へ浸透しているとはいえない状況です。

これは一体なぜなのでしょうか。もちろん既存のデータベースから乗り換えるだけのメリットを感じない、新たなシステムを導入するだけの資金がないといったビジネス的な理由もあるでしょう。

しかし、それ以前にブロックチェーンには技術的な課題が大きく分けて三つ存在します。いずれの課題も単純に対策をすれば良いというものではなく、メリットと引き換えに生じているものもあるため、その理由や背景を知ることはブロックチェーンを語るうえで欠かせないでしょう。

ここからはそれぞれの課題について、概要と解決策を紹介していきます。

ブロックチェーンの課題①:スケーラビリティ

point of sale scalability

出典:National Computer Corp

課題の概要

ブロックチェーンの課題の一つ目は、「スケーラビリティ」です。

スケーラビリティとは、「トランザクションの処理量の拡張性」つまり、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかの限界値のことを指します。

ブロックチェーンは、その仕組み上、従来のデータベースよりもスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。

ブロックチェーンの仕組みでは、ビットコインやイーサリアム、リップルといった各ネットワークごとに予め定められた「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、一定量のトランザクション群をブロック化することで取引記録を保存しています。

したがって、ある単位時間にどの程度の量のトランザクションをブロック化して処理できるかは、コンセンサスアルゴリズムに依存することになります。

たとえば、ビットコインでは「PoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)」というコンセンサスアルゴリズムとして採用しています。

これは、ネットワーク参加者(=「ノード」)に、自身のコンピュータのマシンパワーを利用したある計算に成功することを、ブロック生成の条件とするルールです。

そのため、ビットコインネットワークにおけるスケーラビリティ、つまりトランザクションの処理量は、ノードのマシンパワーに依存することになります。

ビットコインの場合、新しいブロックが平均して10分に1回生成され、各ブロックでは1MBのデータしか処理がされません。

ブロックチェーンには、未処理のトランザクションが待機しておくメモプールという空間が存在しますが、処理するトランザクションが増えて記録可能な取引の上限を超過してしまうと、メモプールに大量のトランザクションが留まってしまいます。

こうなると、次回以降のブロック生成時まで放置されて取引が完了しなくなってしまいます。このような取引増加に伴ってネットワーク処理速度が低下することをスケーラビリティ問題といいます。

また、マイナーと呼ばれるトランザクションの承認者は、ガス代(手数料)という経済的なインセンティブによって動いているので、手数料が多いものから処理を行います。

すると、自らの取引を優先的にブロックに記録させるために相場より多くの手数料を支払うユーザーが現れ、手数料のインフレが起きてしまうという副次的な弊害もあります。

一般に、スケーラビリティは「tps(transaction per second、1秒あたりのトランザクション処理量)」で定義することができますが、実際に、代表的なブロックチェーンネットワークは、次のように不十分なスケーラビリティだと言われています。

  • 一般的なクレジットカード:数万tps
  • ビットコイン(コンセンサスアルゴリズムがPoW):3~7tps
  • イーサリアム(コンセンサスアルゴリズムがPoS):15~25tps
  • コンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク(PoAコンセンサスアルゴリズム):数千tps

このように、ブロックチェーンは、オープンで分散的なデータベースとして期待を集めている一方で、ネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティが担保できなくなるという課題を抱えています。

課題の解決策

この課題に対しては様々なアプローチが試みられています。最も安直な最善策は、メインチェーンのブロック容量と生成スピードの制約を緩和させることです。

このアプローチでは、ブロックの容量を増やしたり、生成までの間隔を短縮することで、一回のトランザクションで処理できるデータ量を増加させて待機のトランザクションを減らすことができます。

しかし、これによってブロックチェーン本来の分散性が低下する可能性や、システム自体の安定性やセキュリティに影響を及ぼす可能性もあります。

また、金融領域では、「ライトニングネットワーク(Lightning Network)」という新しい概念に注目が集まっています。

ライトニングネットワークは、小規模ながら高頻度で行われる取引をオフチェーン(ブロックチェーンの外部)で処理するペイメントチャネルという仕組みによって、最初と最後の取引だけをブロックチェーンに反映できるネットワークのことです。

ペイメントチャネルでは、複数の秘密鍵でビットコインを管理するマルチシグという技術を背景にオフチェーン取引が可能になるため、最初の取引でビットコインを送金し、その金額内で自由に送金ができます。

したがって、ブロックチェーンのように途中の取引も全て検証する必要がなく、中間の処理を省くことでトレーサビリティ問題に対応しています。

このようなアプローチにより、決済の迅速化や高いトランザクション容量の実現が期待されています。たとえば、大手暗号資産取引所のバイナンスはビットコインの取引をライトニングネットワークで実行できるようになったと発表しています。

Binance Completes Integration of Bitcoin (BTC) on Lightning Network, Opens Deposits and Withdrawals

しかし、非金融領域においてはいまだ効果的な解決策は確立していません。

こうした原理的な課題は、ブロックチェーンが社会基盤となれるかどうかを左右する、重要な論点だと言えるでしょう。

ブロックチェーンの課題②:ファイナリティ

出典:ぱくたそ

課題の概要

ブロックチェーン、とくにその代表格であるビットコインの課題として知られるのが、「ファイナリティ(finality)」の問題です。

ファイナリティは決済にまつわる概念で、日本銀行によって、次のように説明されています(下記二文は公式サイトより引用、ただし一文目の丸括弧内と太字は筆者が追記)。

  • (ファイナリティーのある決済とは)「それによって期待どおりの金額が確実に手に入るような決済」のことを言います。
  • 具体的には、まず、用いられる決済手段について(1)受け取ったおかねが後になって紙くずになったり消えてしまったりしない、また決済方法について(2)行われた決済が後から絶対に取り消されない――そういう決済が「ファイナリティーのある決済」と呼ばれます。

ビットコインの仕組みでは、このファイナリティを十分に担保できないとして、特に金融領域における活用が懸念視されることがあります。

上記「スケーラビリティ」の項目でも触れたように、ビットコインではPoWと呼ばれる、ノードのマシンパワーを利用した計算競争によるコンセンサスアルゴリズムが採用されていますが、実はこのPoWがファイナリティの担保を邪魔しているのです。

そもそも、PoWは、次のような仕組みです。

  1. ある時、あるノードが、トランザクションプールから一定量(1MB)のトランザクションを任意でとりまとめて、ブロック化を開始する。
  2. ブロック化を行うために、ノードはビットコインネットワークから与えられた計算課題を解くことを試みる。
  3. 同様に、世界同時多発的に複数のノードが計算を行い、計算に成功したノードが生成したブロックが他のノードに伝播されていく。
  4. 伝播された先のノードがブロック生成に用いた計算の「暗算」を行い、計算が正しいと認められたら、ブロック化に成功する。

ここで、ある問題が起こります。それは、ある一時点でネットワーク内に複数のノードがつくった異なる複数のブロックが同時に存在し、さらにそれらの異なるブロックの中には同じトランザクションが入っているという事象です。

PoWでは、複数のノードによる計算競争の結果を一旦すべて正規のブロックとして認めてしまうことになります。すると、ある取引記録が正しいかどうかを確認するにあたって、複数の異なるブロックのうちどのブロックを正しいものとして参照すべきかわからなくなってしまいます。

これが、ビットコインにおける「フォーク(チェーンの分岐)」と呼ばれる問題です。

さて、ブロックチェーンの課題に立ち返ってみると、このフォークの可能性が、ビットコイン決済におけるファイナリティの担保を邪魔していることがみえてきます。

PoWを原理として採用するビットコインでは、常に同時多発的に複数のブロックが生成され、その度ごとにチェーンの分岐(フォーク)が発生する可能性があるため、取引内容が覆る可能性を完全にゼロとすることができず、ファイナリティを担保することができないのです。

実は、ビットコインではチェーンの分岐が問題にならないように、PoWを補完するもう一つのコンセンサスアルゴリズムである「ナカモト・コンセンサス」を採用しています。

ナカモト・コンセンサスは、複数のブロックが同時生成された場合、ブロックの集積が最も多い(つまり長い)チェーンに含まれるブロックを正規のものとみなすという考え方です。

一見、この考え方によって、ファイナリティが担保されなくもなさそうではあります。しかし、残念ながら事態はそう簡単ではありません。

ナカモト・コンセンサスはあくまで合意形成に至る考え方の一つであって、実際には、例えば運営側による仕様の変更など大きく賛否の分かれる問題が生じた際、全員での合意形成には至らず、複数の異なるチェーンを正統とみなす派閥に分派してしまうことがあります(ちなみに、こうした運営側による仕様変更等でチェーンがはっきりと分派してしまうことを「ハードフォーク」と呼びます)。

実際に2017年には、ビットコイン(BTC)からのハードフォークによってビットコインキャッシュ(BCH)が生まれました。ハードフォークの理由は、スケーラビリティ問題の解決を目指した仕様変更でブロックの容量を8MBに拡張するというものでした。

こうしたハードフォークはハッカーによる「リプレイアタック」の対象になります。リプレイアタックとは、ある台帳上(旧台帳)で有効なトランザクションを他の台帳上(新台帳)でも実行することにより、送金者の意図しない台帳上で資産移動させてしまうことです。

これは「旧仕様」と「新仕様」のブロックチェーンがどちらも同じ「秘密鍵」を用いていることが原因です。仮想通貨の記録の管理に用いるキーを変えずに新通貨を作るため、知らぬ間にデータがコピーされて所有権を奪われてしまいます。

そういった意味で、PoWを採用しているビットコインにおいて、「信用」を扱う決済領域で最も重視されるファイナリティを完全に担保することは原理的に困難なのです。

課題の解決策

実は、このファイナリティの問題は、ビットコインに限った課題ではなく、イーサリアムなど他のブロックチェーンネットワークでも同様に抱えている課題です。しかし、全てのブロックチェーンでファイナリティの問題が生じるわけではありません。

ファイナリティの担保が難しいのは、PoWやPoSといった不特定多数の参加者での合意形成に至るためのコンセンサスアルゴリズムを採用しているネットワーク、つまり、「パブリックブロックチェーン」に限った話です。

そのため、ファイナリティを必ず担保する必要のある金融機関では、「コンソーシアム型」や「プライベート型」と呼ばれる参加者を限定したブロックチェーンネットワークを採用することで、この問題に対応するケースがあります。

「コンソーシアム型」や「プライベート型」のブロックチェーンでは、ネットワーク内に決められた数の人しか参加を許可していません。多くの場合、参加するためには管理者による本人確認等があり、簡単には参加できない仕様になっています。

このようなチェーンにおいては、ファイナリティが実現しており、主にエンタープライズ向けのシステムでビジネス採用されています。

ブロックチェーンの課題③:セキュリティ

出典:Pexels

課題の概要

ブロックチェーンが原理的に抱える課題の3つ目が、「セキュリティ」の問題です。これには驚かれる方も少なくないかもしれません。冒頭でもブロックチェーンは「データの対改ざん性が高い」と説明したばかりです。

では、なぜセキュリティが課題となっているのでしょうか。

これは、トランザクションと呼ばれる個々のデータの塊のそれぞれに鍵がかけられている(公開鍵暗号方式)ことに加え、トランザクションの塊であるブロックの生成時にもコンセンサスアルゴリズムと呼ばれる合意形成のルールが適用されることで、データを書き換えることのハードルが非常に高くなっていることを意味しています。

こうした背景から、「ブロックチェーン=セキュリティを高める技術」であると考えている方も少なくありません。しかし、残念ながら、ブロックチェーンはセキュリティの万能薬というわけではないのです。

ブロックチェーンは「強いAI」というわけではなく、あくまで人間が稼働させる一つのシステムです。

そのため、ブロックチェーンが社会実装される過程のヒューマンエラーによって(コーディングのバグ等)、あるいは組織的な恣意性によって(51%問題等)、理論が適切に効果を発揮しないことでセキュリティが脅かされることも十分にありえます。

こうした事情からブロックチェーン、とりわけビットコインにつきまとうセキュリティ課題として、次の2つの問題が存在しています。

  • 51%問題
  • 秘密鍵流出問題

51%問題とは、「ある特定のノード(ネットワークの参加者)が、ネットワーク内のマシンパワーの総量を超えるパワーでマイニングを行うと、そのノードの恣意性にネットワーク全体が左右される」という問題のことで、平たく言えば、「ネットワークの乗っ取り(牛耳り)」問題といったところでしょうか。

先ほど説明したように、ビットコインではPoWおよびナカモト・コンセンサスと呼ばれるコンセンサスアルゴリズムのもと、複数のノードによる計算競争の結果、最も長いチェーンに含まれたブロックを正統なデータとしてみなす、という仕組みがとられています。

そして、この計算のスピードは、計算を行うノードのマシンパワーに依存しています。したがって、この仕組みを逆手にとると、他のどのノードよりも強いマシンパワーを手に入れ、その結果、他のどのノードよりも速いスピードで計算を行うことができれば、そのノードは自分にとって有利な、恣意的な取引記録を正統にすることができます。これが、51%問題と呼ばれるセキュリティ上の課題です。

もう一つのセキュリティ課題が、秘密鍵流出問題です。

これは、いわゆる「なりすまし」攻撃で、各ノードが保有するアカウントに付与された「秘密鍵」を盗まれることで起こります。

ブロックチェーンの仕組みでは、前述した「ブロック化」の過程でトランザクションがプールから取り出される際に、「秘密鍵暗号方式」と呼ばれる方法でトランザクションへの「署名(秘密鍵で暗号化する)」が行われることで、トランザクション自体のセキュリティが担保されています。

通常、この秘密鍵は、各アカウントごとに一つだけ付与されるもので、この鍵を使うことでアカウントに紐づいた様々な権限を利用することができます。

そのため、この鍵自体が盗まれてしまうと、個人アカウント内の権限を第三者が悪用できてしまうことになります。これが、秘密鍵流出問題です。

課題の解決策

51%問題と秘密鍵流出問題は、それぞれに、解決策が異なります。順に、説明していきます。

51%問題への対応

51%問題の対策方針は、コンセンサスアルゴリズムを変更することです。

先ほど説明したように、51%問題は原理的なセキュリティリスクであり、PoWおよびナカモト・コンセンサスが合意形成のルールである以上、完全な対策は不可能です。

もちろん、ネットワークの規模が大きくなればなるほど、ネットワーク総量の過半数を占めるマシンパワーを用意することは難しくなっていくので、51%問題を利用した攻撃のハードルも上がってはいきます。しかし、あくまで難易度が上がるだけの話であるため、リスクがなくなるわけではありません。

また、ビットコインと同じコンセンサスアルゴリズムを採用した新しいネットワークは、51%攻撃の高い危険性にさらされることになります。したがって、51%問題のリスクをなくすためには、ルールそのものを変更する必要があるのです。

これは、ビットコイン以外のブロックチェーンネットワークにおいて実際に行われていることで、例えば、イーサリアムで採用されている「PoS(Proof of Stake)」は、51%攻撃のリスクを限りなく低くすることを目的に定められたルールと言われています。

PoSは、「ネイティブ通貨の保有量に比例して、新たにブロックを生成・承認する権利を得ることができるようになる仕組み」であるため、あるノードが51%攻撃を行うためには、ネットワーク全体の過半数のコインを獲得しなければならず、これは過半数のマシンパワーを一時的に利用することと比べて、はるかに難易度が上がります。

また、コンセンサスアルゴリズムだけではなく、ネットワーク参加者自体を許可制にすることも、51%問題に対する一つの対策方法です。

先述した「コンソーシアム型」と呼ばれるブロックチェーンネットワークでは、「PoA(Proof of Autority)」というコンセンサスアルゴリズムのもと、閉じられたネットワーク内で一部のノードに合意形成の権限を与えるという形をとっています。

秘密鍵流出問題への対応

秘密鍵流出問題への対応策の一つとされているのが、マルチシグです。マルチシグとは、トランザクションの署名に複数の秘密鍵を必要とする技術のことで、マルチシグを利用する際には企業の役員陣で鍵を一つずつ持ち合うなどの対応がとられます。

また、マルチシグは秘密鍵流出問題へのリスクヘッジ方法であると同時に、 一つの秘密鍵で署名を行う通常のシングルシグに比べてセキュリティレベルも高くなることから、取引所やマルチシグウォレットなどで採用されています。

ただし、上述のコインチェック事件のように、個人レベルでマルチシグを利用していたとしても、取引所そのもののセキュリティが破られてしまった場合には被害を食い止めることはできません。

セキュリティへの攻撃は複数階層に対して行われうるものであることを理解して、単一の技術のみに頼るのではなく、本質的な対応をとるように心がけましょう。

まとめ

ブロックチェーンを自社ビジネスに導入するには、本記事で紹介した3つの課題を無視することはできません。イメージ先行で場当たり的なDXではかえって様々なトラブルを誘発させかねません。そのため、まずはブロックチェーンの長所だけではなく短所も理解したうえで、適用先やユースケースの洗い出しをおこなうのが良いでしょう。

トレードログ株式会社では、非金融領域におけるビジネスへのブロックチェーン導入を支援しています。

新規事業のアイデア創出から現状のビジネス課題の解決に至るまで、包括的な支援が可能です。

少しでもお悩みやご関心がございましたら、是非オンライン上で30〜60分程度の面談をさせていただければと思いますので、お問い合わせください。

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ブロックチェーンによる電子投票とは?投票におけるブロックチェーンの可能性に迫る

2009年にBitcoinが運用開始されて以来、Ethereumをはじめとして様々なブロックチェーンプラットフォームが誕生しました。

ブロックチェーンの特徴といえば、情報の改ざんが極めて難しい点があげられ、暗号資産などの金融領域だけではなく、非金融領域においてもブロックチェーン技術が多方面で応用され始めています。

特に近年では、物流や貿易などサプライチェーン・マネージメントにおいて、ブロックチェーンに関する実証実験や実装が急速に進んでいます。

そして、今回はブロックチェーンと親和性が高いといわれている「電子投票」の分野での取り組みを紹介します。ブロックチェーン技術を活用した電子投票が実現可能なのか考察していきましょう。

  1. ブロックチェーンが投票を変える
  2. ブロックチェーンによる電子投票のメリット
  3. 「ブロックチェーン×投票」の導入事例
  4. 国内でもネット投票解禁の動きが
  5. まとめ

ブロックチェーンが投票を変える

従来の”投票”がもつ課題

「投票会場まで足を運び、投票用紙に候補名を記入し投票箱に入れる」これが一般的な投票の一連の流れです。

このアナログ方式の投票が持つ課題としては、利便性が悪く投票率が伸びないということが挙げられます。

総務省が公表している下記のデータを見ても、投票率は右肩下がりになっており、とくに普段の生活からデジタルが当たり前となっている若い世代(10〜20代)では、投票率が著しく低いのが見てとれます。

出典:総務省

また、作業効率が悪く人件費がかかるというデメリットもあります。2017年におこなわれた衆院選では決算ベースで596億7900万円の費用が発生しましたが、主な経費は、投票所または開票所にかかる経費であり、人件費が約半分を占める結果となりました。

国政選挙では各投票所に人員を割く必要があるため、莫大な費用がかかってしまいます。近年では期日前投票に伴って期日前投票所が設置されるため、さらに多くの人件費が発生することも多くなってきています。

さらに、集計・開票に際しては人為的ミスや不正行為が発生することもあるでしょう。公平でクリーンな政治を実現するうえでは、人間が恣意的な操作が不可能な投票スタイルにすることが望まれます。

こういった課題を受けて、日本やアメリカではブロックチェーンを用いて選挙システムの改善を目指す取り組みが行われています。

ブロックチェーンとは

従来の投票作業の課題を解消する上で、改めて”投票”に必要なことは何なのかを紐解くと、

  • 定められた期間内に有権者が投票可能
  • 投票結果が改ざんできない

という2点が挙げられます。

そこで注目を集めるのが、「分散型で障害に強い」「改ざんが限りなく不可能に近い」という特徴を持つブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

詳しくは以下の記事でも解説しています。

ブロックチェーンによる電子投票のメリット

投票の改ざんが困難になる

出典:Unsplash

投票にブロックチェーンを用いる最大のメリットは、透明性のあるクリーンな選挙が実現できることです。選挙や政治には古くから不正がつきものです。コンプライアンス徹底が求められる現代においても、残念ながら度々不正が起きたというニュースを目にします。

ブロックチェーンはデータをネットワークの参加者の間で同期します。加えてハッシュと呼ばれるデータに呼応した値を鎖のように引き継いでいくため、ある一地点のデータを改ざんするには、その後のブロックもすべて辻褄が合うようにハッシュを再計算する必要があります。

そのため、仮に一つのデータを書き換えただけでも、後続のブロックが持っているハッシュ値と整合性が合わなくなるため、改ざんをすぐに検知することが可能です。

米紙ワシントン・ポストの調査結果によると、アメリカでは国民の約30%が、大統領選挙で不正が行われたと考えているそう。ブロックチェーンによって選挙の透明性が担保されれば、こうした疑惑も払拭されて健全な政治が実現するでしょう。

柔軟な投票スタイルが実現する

出典:Unsplash

現在の主流である投票所での投票という形式では、入場券や本人確認書類を持参して指定の投票所に向かわなければなりません。また、投票時間も通常午前7時から午後8時と決められています。

これに対してブロックチェーンによる投票であれば、本人確認から投票までネット上で完結します。そのため、24時間いつでも投票することが可能です。

若年層の投票率が低いという長年の課題がありますが、この原因は政治的無関心だけではないようにも思います。スマホ一つでなんでも完結できるこの時代において、わざわざプライベートの時間を割いて投票所に行かなければならないのは手間そのものにほかなりません。

また、高齢者や健康上の理由で投票所に行くのが難しい人もいます。一定の条件を満たせば郵便等投票制度も利用できますが、そもそもネットでの投票であれば、条件や手続きも不要で選挙権を講師することができます。

投票者の個別の状況にあわせて自由で柔軟な投票が可能になれば、投票率の改善も見込まれるでしょう。

大幅なコストカットが可能になる

出典:Unsplash

前述のように現在の選挙では莫大な人件費が発生しています。これは選挙の公平性などを担保するうえで避けられない経費です。しかし、ブロックチェーンによる電子投票が解禁されれば、こういった立会人や開票作業にかかる人件費を削減することができ、選挙の経済的合理化が実現するでしょう。

また小さな市町村では、そもそも立会人の確保が難しいケースもあります。こうしたケースでは公募のみでは人手が不足するため、業務委託によってムダな費用がかさむことがあるます。

選挙のデジタル化と聞くと、先進的な都市圏で活用されるイメージも抱きがちですが、仮に実用化に至った際にはこうした地方での活用も期待できます。

再投票が可能になる

出典:Unsplash

選挙期間前は各紙、政治家のスキャンダルの応戦です。もちろん、一番ホットなトピックなので当然といえば当然なのですが、困ったことに現在の選挙制度では一度投票したら、その後に別の候補に票を入れたいと思ってもやり直しが利きません。

実際、有権者のなかの一定数は、確固たる候補者がいるわけではありません。2022年の参院選では安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、1割を超える有権者が投票先の決定に影響があったと回答しています。

最新の意思を投票に反映することができるネット投票であれば、真の意味での民主主義が実現するはずです。

「ブロックチェーン×投票」の導入事例

アメリカ:ウェストバージニア州

出典:pixabay

2018年11月、アメリカウェストバージニア州の中期選挙で、ブロックチェーン投票システムが実際に導入されました。 このテストは選挙権を持つ海外駐在軍人1000名ほどを対象としたもので、州または連邦の身分証明書とモバイルアプリが使用されました。

アメリカでは多くの州が、海外駐留の軍人などの在外有権者に対して、電子メールでの投票を許可している。しかし、この投票がセキュアであるという保証はなく、投票率も低くなっている現状があります。

この選挙では、30カ国に駐在する144人のウェストバージニア州有権者がブロックチェーン投票アプリを利用して投票を行なったと発表されています。

参考値として、2016年のアメリカ大統領選挙における国外からの投票はわずか7%に留まっており、一方のブロックチェーン電子投票システムにおける投票率は14.4%という結果となりました。

このことからもブロックチェーンを用いた電子投票は、海外からの投票率の向上にも一定の成果を挙げたといえるのではないでしょうか。

後日談ですが、2020年のウェストバージニア州予備選挙では、ブロックチェーンではなくワシントン州シアトルに本社を置くDemocracy Live社のオンラインポータル(クラウド)によるインターネット投票が導入されました。

また、サイバーセキュリティ専門家のMaurice Turner(モーリス・ターナー)氏や暗号学の権威であるMITのRon Rivest(ロン・リベスト)教授らがネット選挙の危険性を指摘しており、ブロックチェーンよりも紙の投票の方が安全性が高いとしています。

これはブロックチェーン単体の問題ではなく、投票をおこなう有権者のモバイル端末のセキュリティや本人確認の顔認証の精度などによる問題もあります。

ブロックチェーン技術はセキュリティや処理速度など様々な面で進化を続けており、その適用範囲も年々拡大していることから、今後こういった課題への解決策が見つかるのではないでしょうか。

アメリカ:ユタ州

出典:Pixabay

ユタ州は米大統領選で初めて、スマートフォン等のアプリで投票を行うブロックチェーンベースの投票システムを導入しました。

投票者は事前に生体認証を含む本人確認を行い、投票用紙トークンを使ってオンラインで投票します。ライバシーを保護するために匿名のIDで署名して投票されますが、ブロックチェーンによって真正な投票データであることが担保されているため、開票結果もすぐに開示されました。

新型コロナウイルスの影響で郵便投票が増加し、集計作業の遅れや投票用紙を使用した詐欺行為などが懸念されましたが、ブロックチェーンが使用されることによって、データ改ざんなどの不正行為を防止したうえでより多くの若年層や非投票者の投票率向上につながりました。

この選挙で利用された投票アプリ「Voatz」はHyberledgerブロックチェーンと生体認証を使って、安全で確実な投票を実現しており、これまでアメリカ国内でも60回以上選挙に利用された実績があるといいます。

軍用レベルのセキュリティ技術によって支えられているこの投票スタイルは、2028年か2032年の大統領選挙までにより広い範囲で電子投票を採用できることを期待しているとしています。

エストニア

電子国家と呼ばれているエストニアでは、ブロックチェーン技術が生まれる前の2005年から世界に先駆けて、i-Votingというシステムを用いた国家主導の電子投票が行われてきました。

有権者はインターネットにつながったコンピュータがあれば世界のどこからでも投票でき、投票内容は期日までであれば変更が可能です。また、電子投票期日締め切り後に投票所に来て、紙で再投票を行うこともできます(この場合、電子投票は削除されます)。

このシステムによる投票は多くのエストニア国民が利用しており、2023年の議会選挙では51%がi-Votingを利用。これは世界の歴史で初めて、紙の投票 (49%) よりも多くの電子投票 (51%) があった選挙となりました。

エストニアは国家レベルでブロックチェーン導入が盛んな国であり、税金、医療、教育、交通などの行政サービスにおける文書のタイムスタンプに「KSIブロックチェーン」という独自のブロックチェーンが使用されています。

とくに医療分野での取り組みは非常に興味深い事例となっています。詳しくは以下で紹介しています。

現在は電子投票のデータ基盤としてブロックチェーンは用いられていませんが、今後ブロックチェーンによる国政選挙の実現が最も近い国として取り上げました。

つくば市

出典:つくば市

茨城県つくば市では「令和元年度つくばSociety5.0社会実装トライアル支援事業」において、ブロックチェーン技術を活用したインターネット投票の実証実験が行われました。

出典:ジチタイワークスWEB

このプロジェクトは、株式会社VOTE FOR、株式会社ユニバーサルコムピューターシステム、日本電気株式会社と共同で運用されており、2019年に第一回が、4年後の2023年には第二回の実証が行われました。

第一回では、本人認証や処理速度、上書き投票などの課題が浮き彫りになりましたが、第二回ではマイナンバー内蔵のICチップを活用することや、ブロックチェーンのプラットフォームをEthereumからHyperledger Fabricへ変更することでこれらの課題をクリア。時間や場所を選ばずに、ICカードリーダーに接続可能なWindows端末があれば、1-2秒程度で何度も投票可能な投票システムの構築に成功しました。

将来的には市長選などへの採用も検討しているとのことで、日本初の公職選挙が実現するのか、引き続き注目していきたい事例です。

国内でもネット投票解禁の動きが

日本国内でも国政選挙でのネット投票解禁が加速しつつあります。

2023年6月には、立憲民主党と日本維新の会がインターネットによる投票を令和7年の参院選から導入することを規定した法案を衆院に共同提出しました。

立維、ネット投票法案提出「7年参院選で導入」 – 産経ニュース

この法案は、選挙などへのインターネット投票の導入を推進するものであり、セキュリティ確保には電子署名を用いることも定められています。

ブロックチェーンを用いずとも電子署名の搭載は可能ですが、ブロックチェーン上に保存された電子署名は改ざんへの耐性が高いため、通常のデータベースに格納した場合よりもデータの真正性が高まります。したがって、国政選挙においてブロックチェーンが導入される可能性は十分考えられます。

今後の続報が待たれます。

まとめ

新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るった結果、私たちの考え方や行動は大きく変わりました。「リモート」が当たり前の世界となり、利便性が向上しただけでなく、デジタルならではのセキュリティリスクについての意識も大きく改善されたように思います。

投票についても同様で、投票率の低下などを背景にネット投票解禁にシフトしていくことでしょう。ネット投票法案の提出もその追い風となることが予想され、ブロックチェーンを活用したより効率的で利便性の高い選挙の実現がますます期待されます。

【初心者向け】NFTとは何か?どういう仕組みなのか?簡単に・わかりやすく解説!

当初は一部のクリプト界隈で盛り上がっていたNFTも、最近ではニュースやSNSでも取り上げられることも増えてきました。しかし、NFTの歴史はまだまだ浅く、「名前は聞いたことはあるけど、具体的にどういう技術なのか、なぜ話題になっているのかはわからない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、NFTの概要からその仕組みや事例を分かりやすく解説していきます!

  1. NFTとは?
  2. NFTを特徴づける3つのポイント
  3. NFTはなぜ話題に?
  4. NFTはどこで取引されている?
  5. NFTの活用事例
  6. NFTの将来性とは
  7. まとめ

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

NFTを特徴づける3つのポイント

データの改ざんが困難である

唯一性の証明をするためには、データが上書きされることのない高いセキュリティ性が求められます。それを実現しているのが、NFTの基盤となっているブロックチェーンです。

ブロックチェーンとは、同じデータを複数の場所に分散して管理するデータベースのことです。従来型の中央集権的なデータベースと異なり、ブロックチェーンの情報はネットワークの不特定多数の参加者と共有されているため、データの透明性が高く、不正なブロックをすぐに検出することができます。

また、ブロックチェーンでは、取引情報やデータを一連のブロックに記録し、それらを鎖状につなげていくことで、データの安全性を保証しています。そのため、もし過去のデータを改ざんしたければ、そのデータのあるブロック以降の全てのブロックも改ざんしなければ、つじつまが合わなくなります。

その改ざんの最中も新しいブロックはどんどん追加されていくので、データを書き換えたり、削除したりするには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています。

このようなブロックチェーンが持つ高いセキュリティ技術によって、NFTは安全に管理されています。

ブロックチェーンについて詳しく知りたいという方は、こちらも併せてご覧ください。

プログラマビリティがある

NFTにはプログラムによって様々な機能をつけられるという特徴、プログラマビリティがあります。

たとえば、ロイヤリティプログラムでは、NFTが2次流通した際にクリエイターにも手数料が入るようにNFTを設計できます。そのため、「中古ではクリエイターの利益にならない」という二次流通市場が抱える悩みや、煩わしい著者権の管理なども無用です。

また、エアドロップというプログラムでは、ある期間のNFTの所有者だけに新たなNFTを配布するよう設計することでユーザーの長期保有を促しています。

このようにNFTの作成者がいろんな機能をプログラムをすることで、その使い道を増やすことが可能になっているというのもNFTの大きな特徴のひとつでしょう。

誰でも売買できる

NFTは、誰でも簡単に作成・売買ができます。

NFTはオンライン上で売買することができるため、マーケットプレイスと呼ばれる取引所にログインさえすれば誰でも気軽にアートの売買に参加することができるようになりました。

多くのマーケットプレイスは、入札によって価格を決定する仕組みも導入しており、出品者と購入者の間でより良い価格での売買取引ができるようになっています。

また、マーケットプレイスのサービスでは、専門的な知識を持っていなくても簡単にデジタルコンテンツをNFT化できるサービスもあり、作品出品に関するハードルもかなり低くなっています。

実際に、小学生が夏休みの自由研究として制作したドット絵のNFT「Zombie Zoo」では、たった3ヶ月で200作品を販売して、その取引総額が4400万円以上になったと多くのメディアに取り上げられ話題になりました。

小3男児の絵に「一時2600万円」…高値売買の動きを急拡大させた「NFT」

このように気軽に始められるというのも、NFTらしさといえるでしょう。

NFTはなぜ話題に?

NFTが話題になった大きな理由の一つは、信じられないような高額の取引でしょう。

2021年3月22日には、『Twitter』の共同創設者兼最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシー(Jack Dorsey)によって2006年に呟かれた ”初ツイート” がNFTとしてオークションに出品され、約3億1500万円という驚愕の金額で売却され大きな話題を集めました。

TwitterのドーシーCEOの初ツイートNFT、3億円超で落札 全額寄付 – ITmedia NEWS

また、同年3月にデジタルアーティストであるBeeple氏がNFTアートとして競売に出したコラージュ作品「Everydays: the First 5000 Days」が6900万ドル(日本円で約75億円)という値が付きました。これは、オンラインで取引されたアーティストのオークション価格史上最高額を記録し話題を呼びました。

老舗Christie’s初のNFTオークション、デジタルアートが約75億円で落札 – ITmedia NEWS

「デジタルデータにこんな価値が!」というインパクトや話題性から、NFTという言葉が一気に広まっていったのはある意味当然ですね。

ただし、私たちが注意すべき点は、全てのNFTの価値は安定しているわけではないということです。

ある人が大事にとってある ”思い出の石ころ” に値段がつかないのと同様、そのデジタルデータに対して価値があると多くの人々が判断し、需要や投機性が生まれてようやくそのNFTに値段がつくのです。

デジタルデータに価値が付き売れるようになり、NFTが時代の大きな転換点となったことは事実ですが、過剰な需要と供給が加熱してしまうと仮想通貨と同様、バブル崩壊の道を辿るかもしれません。

NFTはどこで取引されている?

出典:ぱくたそ

NFTを売買するには、NFTマーケットプレイスを利用します。アートや音楽、映像、ゲームのキャラクターやアイテムなどの売買ができるさまざまなNFTマーケットプレイスがあります。

NFTマーケットプレイスは先述のブロックチェーン技術を土台としており、マーケットプレイスごとに土台とするブロックチェーンの種類も異なります。

現在世界最大手のOpenSeaをはじめ、LINE NFTやCoincheck NFTといった様々なNFTマーケットプレイスが国内外に存在し、取り扱いコンテンツや決済可能な暗号資産もそれぞれ異なるため、出品者や購入者は取引する場所を用途に合わせて選ぶ事ができます。

詳しくは以下の記事で解説しています。

NFTの活用事例

NFT×アート

出典:pixabay

絵画やアートの分野でも、NFTの技術が使われ始めています。

多くの場合、アートや絵画はPhysical(物理的)なものとして作られる場合がほとんどです。NFT登場前のデジタルアート作品はコピー・複製が可能なため、高い価値をつけるのが難しいというのが現実でした。しかしNFTの技術により、コピー不可能なデジタルアートを作成できるようになり、先述したBeeple氏のように75億円で取引されたNFTアートも存在しています。

ちなみに日本国内では、村上隆氏やPerfumeといった著名人が、続々とNFTアートを発表しています。国内のアート分野でもNFT技術の活用が徐々に広まっていると言えるでしょう。

NFT×ゲーム

出典:pixabay

NFTの活用が盛んに行われてきた事例がゲーム分野での利用です。

NFT技術を利用することで、自分が取得した一点物のキャラクターやアイテムをプレイヤー同士で売買することや、取得したキャラクターやアイテムを他のゲームで使うことも可能になります。ゲーム内で育成したキャラクターなどは二次流通市場で取引され、パラメータやレアリティが高いほど高値で取引されています。

また、NFTは往々にして仮想通貨を用いて取引がされることが多いです。そのため、ゲームをプレイすることで仮想通貨を得られる「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」という概念が生まれており、これは今までのゲーム体験を覆すものでしょう。今後も、NFTの特色を生かしたブロックチェーンゲームが次々にリリースされることが期待されています。

NFT×スポーツ

出典:pixabay

スポーツ業界においてNFTは、選手やクラブと、ファンのエンゲージメントを高める手段として活用されています。

『世界的に有名なプロスポーツ選手の決定的な名シーン』には、代えがたい価値があるはずです。誰もが感動しますし、ましてやファンにとっては垂涎の価値です。しかし、インターネット上には『決定的な名シーン』がたくさん転がっていて、お金を払うことなく誰もが気軽に見ることができてしまいます。

しかし、NFTによって選手や選手のプレーをNFT化すれば、その瞬間を切り取った「公式」のデジタルコンテンツが唯一無二のアイテムとして色褪せずに存在することができ、ファンが所有する喜びを感じたり、ファンの間で売買できるようになります。

また、売り上げの一部をクラブに還元することで、応援しているチームに貢献しながら楽しむことができるというまさにファンには二重に嬉しい構造になっていることも、スポーツ界でNFTが広まりつつある理由でしょう。

NFT×トレカ

出典:MAGIC The Gathering

現在、最も勢いのあるNFTの活用分野はなんといってもNFTトレカ、すなわちトレーディングカードです。

トレカ界隈では現在、印刷技術やスキャンソフトの発達によって偽造品の氾濫が大きな問題となっています。偽物のクオリティが上がるだけではなく、実店舗でも偽物の販売で検挙されているケースがあり、もはや一般人の私たちからすると見分けることは困難です。

NFTでは前述の通り、偽造やデータの改ざんができません。したがって、一点モノであるレアカードの証明や偽造防止という観点では、まさにうってつけの技術なのです。

実物のトレーディングカードは、一部の熱心なコレクターに支持されるマニアックな世界という印象があったかもしれません。しかしNFTトレカでは、人気アイドルやプロスポーツ、人気アニメのトレカが発売されるなど、幅広い層に提供されています。

アツい盛り上がりを見せているだけに今後も要注目の組み合わせです。

NFTの将来性とは

NFTはオワコン?

このように様々なジャンルで盛り上がりを見せているNFTですが、その取引はピーク時と比べると落ち着いてきています。一部ではそういった現状を受け、「オワコン」とも囁かれていますが、果たしてNFTは将来性がないのでしょうか。

出典:Gartner

これはガートナー社が発表しているハイプサイクルです。ハイプサイクルとは、特定の技術の成熟度や社会への適用度を視覚的に表したグラフのことで、IT分野における重要な指標の一つとして知られています。

このサイクルではNFTは現在「過度なピーク」を過ぎ、「幻滅期」に突入しています。ガートナー社の定義では、幻滅期は実験や実装で成果が出ないため、関心が薄れ、この時期を通り抜けると具体的な事例をもとに社会全体で主流採用が始まるとされています。

つまり、ある意味では想定内の落ち込みで、このNFT氷河期とも言える冬の時代を耐え忍んでこそ社会への浸透が進むというわけです。したがって、この一時的な落ち込みを見て「NFTは終わった」「NFTは将来性がない」と判断するのはまだ早すぎるでしょう。

実際に、ハイプサイクルにおいてようやく幻滅期を抜け出した「人工知能」も、過去にはディープラーニングを加速させる学習データが不足していることなどを理由にブームが終焉し、「AIによって人間の仕事が奪われる!」といった主張も鳴りを潜めてきました。

しかし、現在の状況はどうでしょうか。様々な企業のサービスにAIが組み込まれ、子供からお年寄りまで誰しもが一度はAIによるユーザー体験をしているはずです。とくにアメリカのAI研究所であるオープンAIが開発した会話型AIのChatGPTは、官公庁や教育の場面で採用されるほど社会に広く浸透しました。

このように、NFTの「取引量」「時価総額」に関するネガティブなニュースは一時的な情報に過ぎません(その逆も然りで、ポジティブなニュースにも注意が必要)。むしろ、様々な要因によってNFTは着実に次への一歩を踏み出し始めています。

NFTはネクストフェーズへ

NFTが再び社会で受容される頃には、以前のような視覚的な価値の裏付けといった立ち位置ではなくなっているかもしれません。

確かにNFTは現在、投機的な側面から人気を博しています。しかし、むしろ今後はNFTないしブロックチェーンの「データの改ざんが困難」という特徴を生かし、所有権証明や身分証明といった非金融分野への普及が進んでいくのでしょう。

その事例の一つが「SBT(SoulBound Token、ソウルバウンド・トークン)」です。SBTは譲渡不可能なNFTであり、二次流通での売買や譲渡などが一切できません。この性質を利用して、現在デジタルID(本人確認、学歴・社歴証明、身体・医療情報など)での活用が検討されています。

また、多くのNFTがイーサリアム(Ethereum)上に構築されていますが、これ自体の技術的進化もNFTが再興するための一要因です。NFTのデメリットの一つに「手数料の高騰」があります。手数料は、ブロックチェーンへの記録や取引所の仲介により避けられないモノですが、イーサリアムはその手数料が他のチェーンに比べると割高でした。

しかし、イーサリアム(Ethereum)自体のアップデートにより、処理速度が向上すれば、手数料のユーザー負担は改善されることでしょう。

また、ポリゴン(Polygon)など第3のブロックチェーンの活躍も見逃せません。ポリゴンの処理スピードはイーサリアムの約450倍ともいわれており、取引手数料もはるかに安く済みます。スターバックスやナイキといった数々のブランドの取り組みにも採用されていることからも、その期待が窺い知れます。

このようにNFTは、これからのデジタル社会を大きく変化させる原動力として、その姿かたちを変えつつあるのです。

まとめ

これまで人類は、土地や物といった物理的な物を所有し価値を高め、売買・交換することで経済活動を行ってきました。それと同じことがデジタル領域でも起こりうるということです。

かつてインターネットやスマホ、SNSが目新しいモノでしたが、今では誰もが当たり前のように使いこなし、社会・人々の生活を一変させました。NFTも同様に今後の社会を変える大きな可能性を秘めています。

今後も引き続きキャッチアップが欠かせないでしょう。

メタバースとNFT 〜NFTによって証明される仮想現実内の”モノの価値”〜

近年、NFTがニュースやSNSでも取り上げられることも増えてきましたが、そのNFTと関連して「メタバース」という言葉も耳にすることも増えてきました。実はメタバースの概念そのものは以前から存在しており、近年になって注目を集めるようになった背景にはNFT技術が深く関係しています。

本記事では、従来のメタバースの概念とNFT技術の基礎を説明した上で、メタバースとNFTの掛け合わせによって新たにどのようなことが実現できるのかを解説していきます。

  1. 近年注目を集める「メタバース」
  2. 従来のメタバースの課題
  3. NFTとは?
  4. NFT×メタバースで実現すること
  5. NFT×メタバースの活用実例
  6. まとめ

近年注目を集める「メタバース」

出典:pixabay

メタバースに関する近年のトピックス

近年、「メタバース」というワードがSNS上のみならず、テレビのニュースでもとりあげられる機会が増えています。その中でも、2021年10月28日には多くの人々にとって馴染み深いFacebookが社名を「Meta(メタ)」に変えたことが大きな話題となり、「メタバース」に注目が集まるきっかけの一つとなりました。

さらに2022年2月18日には、米Google傘下のYouTubeもメタバースへの参入を検討していると日本版公式ブログで明かしました。

また、2020年以降のコロナ禍において、Zoomを筆頭とするオンラインMTGが一般的なものとなりました。こうしたバーチャルでのコミュニケーションに対する心理的ハードルが大きく引き下がったことも、人々が「メタバース」に興味をもつようになった要因の一つと考えられます。

メタバースとは

メタバースとは「オンライン上に構築された仮想空間」です。

言葉で説明するとイメージがつきにくいかも知れませんが、実はメタバースという概念そのものは以前から存在しているのです。

個性豊かな動物たちが暮らす村であなた自身 が生活していく任天堂の大人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」もひとつのメタバースです。

全世界で1億4千万人以上がプレイするモンスターゲーム「Minecraft(マインクラフト)」は、オンラインで仲間たちと冒険に出かけるも良し、多くのプレイヤー達が住民として暮らすサーバー内で各々建築をしたり農業を営むも良しといった、非常に自由度の高いメタバースです。

つまりメタバースとは、「画面の向こうにあるもうひとつの世界」を指します。

出典:pixabay

コンシューマー向けゲームを通じてすでに概念として存在していたメタバースですが、近年のVR/AR技術の向上によって「より現実に近い(リアリティの高い)仮想空間」が作られるようになってきました。

さらに、デジタルデータに唯一性をもたせる技術であるNFTを活用することにより、次項で述べる ”従来のメタバースの課題” を解決することができるようになったのです。

従来のメタバースの課題

従来のメタバースの課題、それは「メタバース内のデジタルデータの価値を証明することが困難である」という点です。

先述した「あつまれ どうぶつの森」や「Minecraft(マインクラフト)」の中には、ゲーム内で使える独自の通貨やゲーム内アイテムが存在しています。

出典:hikicomoron.net

ただし、それらはあくまでもゲーム内だけで使える通貨やアイテムであって、現実世界において価値をもたせることはできません。どうぶつの森の中でお金をいくら稼ぎ、家を増築し、貴重な家具を持っていようが、それらは全てゲーム内での出来事に過ぎないのです。

つまり従来のメタバースと現実世界では、価値の交換が出来ませんでした。なぜならゲーム内データはいくらでもコピーが可能で、価値あるものだという証明が困難であったためです。

そこで登場するのがNFT=「Non-Fungible Token」です。

このNFTという技術を用いることによって、これまで不可能だったゲーム内データの価値の証明が可能になり、現実世界の通貨で取引できるようになるのです。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

NFT×メタバースで実現すること

NFTアイテムや建物、土地をメタバースで取引できるようにする

出典:pixabay

これまでのメタバースでは、ゲーム内アイテムが簡単にコピーできてしまうため価値の証明が困難でした。また、そのゲームで遊ぶことをやめてしまえば、これまで築き上げてきたゲーム内資産は再度ゲームを起動するまで利用されることはありません。

しかし、アイテムや土地・建物といったゲーム内資産をNFT化することにより、現実世界と同じく唯一無二である価値が生まれます。価値が生まれるとそのアイテムや土地が欲しい人との間に取引が生まれ、その取引はゲーム内通貨ではなく、仮想通貨や法定通貨で行われます。

つまり、メタバースとNFT技術を掛け合わせることによって、現実世界でのモノや不動産の売買と同様、メタバース内でのマネタイズが可能となるのです。

ゲーム内での活動がそのまま現実世界の価値とリンクするようになるという点で、NFT×メタバースの掛け合わせはとても大きな可能性を秘めています。

メタバースでNFTアートを展示する

出典:pixabay

NFTは前述の通り、いままではただのコピー可能な情報の塊にすぎなかったデジタルコンテンツに対して真贋性を担保できます。一つひとつの作品に対して固有の価値を証明できるNFTは現在、芸術分野での導入が進み始めています。

メタバース上で企画展を開催する際にNFT化した作品を展示すれば、ユーザーは移動や待ち時間なくアートを鑑賞できます。

また、メタバース内で自身のアバターを使って記念撮影をしたり、実際に作品を手に取ったりすることも可能でしょう。設計次第では気になっているNFTをその場で購入することも可能であるため、従来とは異なる角度から芸術に触れることができます。

美術館の来場者は中高年層が大半を占めていますが、NFTを使ったアプローチを採用すれば、若年層や芸術・美術に関心のなかった層も取り込めるでしょう。

メタバースのアバターでNFTファッションを楽しんでもらう

出典:pixabay

実はメタバースとNFTの組み合わせという文脈では、ファッション分野が一番相性が良いのかもしれません。

メタバース上にバーチャル店舗を設置すれば、自身のアバターにNFTのデジタルファッションを着用させることができます。もちろんカスタムパーツとして他のブロックチェーンゲームで使用するのも手ですが、実店舗での試着の代用として利用することもできます。

過去にはZOZOSUIT(すでにサービス終了)など、実際に着用せずともフィット感やサイズ選択ができるサービスもあったように、現実のアセット以外に顧客との接点を持てるという点は大きなメリットになり得るでしょう。

また、ハイブランドがNFTアイテムを販売するケースも増えており、価値の高いファッションNFTが広まっています。たとえば、ルイ・ヴィトンは約586万円でNFTを限定発売しており、デジタルの世界においても「憧れのLOUIS VUITTON」を手にする価値を提供しています。

ルイ・ヴィトンが初のNFT作品発売、価格は約586万円

NFT×メタバースの活用実例

続いて、2023年時点のNFT×メタバースの活用事例をご紹介します。

The Sandbox

出典:The Sandbox

The Sandboxは、3Dのオープンワールドの中で、建物を建築したり自分の”オリジナルのゲーム”を作ることができます。何をするかはプレイヤーの自由で、マインクラフトに似たジャンルのゲームです。

The Sandboxのメタバース内には「LAND」というNFT化された土地が存在し、現実世界の土地と同じように売買・所有することが出来ます。

LANDを保有した人は自分の土地を自由にアレンジすることができ、例えば自作のゲームを公開して ”ゲームセンター化”したり、何か催し物を開催したい人向けにスペースの一部を貸し出す ”貸しイベント会場化”する事ができます。

実際に数多くのアーティスト達が自らの作品を展示する場としてThe Sandboxを利用しており、また日本を代表するゲーム会社であるスクウェア・エニックスは会社の広報スペースとしてLANDを保有しています。

現実世界の土地と同じように、メタバース内のLANDを起点としたさまざまなビジネススタイルが個人・企業問わず誕生している点がThe Sandboxの魅力です。

Decentraland

出典:Decentraland

Decentralandは、イーサリアムブロックチェーンをベースとしたVRプラットフォームで、先程ご紹介したThe Sandbox同様、仮想空間内でゲームをしたりアイテムやコンテンツを作成・売買することが可能です。

ゲーム性は両者共通する部分も多く、「LAND」という仮想現実内の土地を保有・マネタイズできる点や、NFT化したアイテムをメタバース内で取引できる点も同じです。

一方、The Sandboxとの違いはその ”世界観” です。The Sandboxの世界が全て四角いブロックで構成されているのに対し、こちらのDecentralandは滑らかな3Dポリゴンで構成されており、よりポップで親しみやすい雰囲気の世界観が特徴です。

個性派人気アーティスト「きゃりーぱみゅぱみゅ」や、世界的に有名なセレブであるパリス・ヒルトンとのファッションコラボが話題となったことからも分かるように、そのポップな世界観とファッション業界との親和性が高いこともDecentralandの特徴のひとつです。

Axie Infinity

Axie Infinityは、2018年にリリースされたメタバースゲームです。

このゲームの特徴はAxieというNFTペットを使って対戦や育成をすることによって、仮想通貨AXSを稼ぐことができる、いわゆる「Play to Earn」のゲームモデルであることです。

もともと、Axie Infinityはベトナムで開発されたこともあり、東南アジアで大きな広がりを見せています。物価も安くかつ賃金も低いこれらの国では、ゲーム内報酬だけで十分生活を送っていけるため、Axie Infinityを仕事にしている人もいたほどでした。

また、このゲームは当初イーサリアムブロックチェーン上のゲームとして普及しましたが、イーサリアムブロックチェーンにて起こった取引手数料の高騰やトランザクションスピードの遅延といったスケーラビリティ問題を受け、現在は独自のイーサリアムサイドチェーン「Ronin」で稼働しています。

サイドチェーンとは、メインチェーンの問題を解決するために開発された別の独立しているブロックチェーンのことです。Roninでの稼働により、Axie Infinityのプレイヤーは取引手数料が削減できるようになりました。

ガバナンストークンであるAXSの価格が下落しているため、全盛期よりは稼げなくなっていますが、その分ピーク時に比べると初期費用が安くなっているので、少額で参入してみるのも一手でしょう。

まとめ

NFTを活用したメタバース市場は今後急成長することが期待されており、様々な業種の企業が参入をすでに始めています。

例えば、SHIBUYA109渋谷店(東京都・渋谷区)を中心とした4つの施設を展開する株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、「The Sandbox」のメタバース上に「SHIBUYA109 LAND」を開設することを発表しました。

109が展開するオリジナルNFTの販売やNFTが手に入るミニゲーム、メタバース上での広告事業など、様々な展開を行うことがアナウンスされています。

SHIBUYA109が「メタバース・NFT事業」に本格参入!

また、PUBGの大ヒットにより2021年度に約2,000億円の売り上げを記録した韓国のゲーム大手:Kraftonは、暗号資産ブロックチェーン・ソラナ(SOL)を開発するソラナラボと連携し、NFTを利用したソラナ基盤のゲームを共同開発する計画を発表しました。

韓国「クラフトン」もメタバース参入、NFT事業を立ち上げ

今後もNFT×メタバースの掛け合わせによって、これまでにない新しいモノや体験が次々と生み出されていくことでしょう。

NFT技術の音楽分野への活用
〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜

近年のNFT技術の発達により、唯一性が担保されたデジタルコンテンツの資産価値が向上してきています。NFTといえば主にデジタルアートやゲームの分野で注目が集まっていますが、NFT技術は音楽分野でも大きな可能性を秘めています。本記事では、NFT音楽とNFT技術についての基礎知識をご紹介し、さらに音楽のNFT化によって実現すること、すでに存在するNFT音楽の活用事例までを詳しく解説していきます。

  1. NFT×音楽分野の多様な可能性
  2. NFTとは?
  3. 音楽分野×NFTで実現すること
  4. 音楽分野×NFTの活用実例
  5. まとめ

NFT×音楽分野の多様な可能性

2021年12月、アメリカの著名シンガーである故ホイットニー・ヒューストンのデモ音源がNFT音楽オークションで約1.1億万円で落札され、”NFT音楽” への注目が一気に高まりました。

NFT音楽とは「NFT技術を使った唯一無二の楽曲データ」を指します。

NFT技術の活用は、これまでデジタルアートやトレーディングカード、ゲームの分野で注目を集めてきていますが、音楽分野へのNFT技術の活用も楽曲データの唯一無二化のみならず、転売収益の確保など様々な可能性を秘めています。

まずはその根幹となるNFT技術について、簡単に解説していきます。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

音楽分野×NFTで実現すること

ライブチケットの転売収益の確保

出典:pixabay

NFT技術を音楽分野で活用する上で、実現性が高く、また実現した際のインパクトが大きいものでまず考えられるのが「ライブチケットの転売収益の確保」です。

現状、人気の高いミュージシャンやアイドルグループのライブチケットは高額転売に悩まされています。この場合の高額転売の弊害とは、転売による収益がクリエイター側に1円も還元されていないことを指します。

しかしNFT技術を活用すれば、NFT化されたデジタルチケットが転売されるたびに、クリエイター(チケットの発行者)にも手数料を還元するという仕組みが可能となります。また、NFT化されたチケットには取引履歴が全て記録されているので、仮に転売行為そのものをNGとしたい場合にも効力を発揮します。

実際にこの「ライブチケットの転売収益の確保」のために、海外では「Afterparty(アフターパーティー)」、日本国内では「ローソンチケットNFT」という名のプロジェクトが既にそれぞれ動き出しています。

新たなマネタイズ方法が生まれる

出典:pixabay

音楽クリエーターにとって、現在の音楽市場でのマネタイズはなかなか厳しいというのが現実です。その理由のひとつが、いま最も主流となっている音楽の提供の形である「ストリーミング配信」の収益性の悪さです。

実際に、音楽ストリーミング市場の51%を占めている「YouTube」では、収益のうち7%しかクリエイターに還元されていません。また「Spotify」や「Apple Music」など大手配信プラットフォームでは1再生あたりたった0.003円しか還元されない仕組みとなっています。

そうなった背景としては「音楽の希少価値が下がった事」があげられます。CD全盛期では”ジャケ買い”なる言葉があったように、音楽そのもの・CDジャケット・歌詞カードを含めたパッケージに対して3000円の価値がありました。それがストリーミング配信全盛のいま、気になった歌詞はネットで検索すればすぐに見つかり、誰かが作ったプレイリストを流して”いい感じの曲”を知る、という風に音楽は「消費される対象」となりました。

出典:pixabay

そこで、楽曲データをNFT化して数量限定で販売し、音楽の価値を復権しようとする試みが始まっています。NFT音楽を購入するファンにとっての大きなメリットは「数量限定の楽曲を購入したのは私です」という証明ができ、心理的に他のファンとの優位性を感じられる点です。

また、例えば100曲限定で販売された楽曲を手に入れたコアなファンがまた別のコアなファンに譲る際に、ライブチケット同様、転売収益が元のアーティストにも還元される仕組みを作ることも可能となります。

この試みは日本国内・海外を問わず多くのクリエーターたちの間で広まりつつあります。次項で詳しく解説しますが、例えば日本では坂本龍一や小室哲也といった大御所ミュージシャン、海外ではアメリカの人気バンド「LinkinPark(リンキン・パーク)」がNFT音楽を活用した試みをスタートさせています。

音楽分野×NFTの活用実例

続いて、2023年時点での音楽分野×NFTの活用実例をご紹介します。

ホイットニー・ヒューストン

出典:billboard japan

音楽分野×NFTの活用実例としてまずあげられるのが、本記事冒頭でもご紹介したアメリカの著名シンガーである故ホイットニー・ヒューストンの実例です。

ホイットニー・ヒューストンは、グラミー賞の受賞歴のある世界で最も売れている歌手の一人で、2012年2月11日に48歳の若さで亡くなるまでポップ音楽の第一線で活躍し続けたレジェンドです。

彼女が17歳の時に録音した初期のデモ音源が、NFTプラットフォームであるOneOfのオークションに出品され、史上最高額となる99万9,999ドル(約1億1,400万円)で落札されました。

これだけの大物アーティストの音源がNFT音楽として発表されたことは大きな話題となり、「NFT音楽」の認知が一般層にまで広がるきっかけになりました。

リアーナ

リアーナの唐突な“復活”から、新作のプロモーション手法の変化が見えてきた

出典:WIRED

保有資産額は6億ドル以上ともいわれる世界的歌手のリアーナの名曲「B*tch Better Have My Money」

のNFTコレクションは発表と同時に大きな話題になりました。

このNFTの概要は、世界中に熱烈なファンがいるリアーナの楽曲を手がけた音楽プロデューサー・ジャミール・ピエール氏が自身のストリーミング権をNFT化するというもの。NFTプラットフォーム「anotherblock(アナザーブロック)」において300個限定で販売しました。

「B*tch Better Have My Money」はYoutubeでも1.6億回再生以上されている人気曲であり、NFTの所有者はストリーミング再生による収益の0.0033%の分配を受けられるということもあり、販売開始されてからわずか数分で完売し、収益は63,000ドル(約840万円)に及びました。

しかし、OpenSeaでは「NFTが曲の部分的な所有権であること」「将来の利益につながりうるNFTを許可していないこと」を理由に本NFTの取り扱いを停止。良くも悪くも世間から多くの注目を浴びたNFTとなりました。

マイク・シノダ

出典:RollingStoneJapan

「Linkin Park」はホイットニー・ヒューストン同様グラミー賞の受賞歴があり、CDの全世界累計セールスは1億枚以上を記録した「21世紀最も売れた」と評されるアメリカのモンスターバンドです。

そのLinkin Parkの主要メンバーであるMike Shinoda(マイク・シノダ)氏は、ボーカルとして音楽面をリードするだけでなく、アルバムアートワーク、バンドの商品、ウェブデザイン、舞台でのプロダクションアートなど、Linkin Parkの芸術的な側面全般に携わったアーティストです。

そんなMike Shinoda(マイク・シノダ)氏は音楽とアートを融合させた自身のNFTプロジェクト「ZIGGURATS」を始動させ、今のストリーミング全盛時代における音楽のあり方、最新テクノロジーを使った表現方法を追求している第一人者です。

坂本龍一

出典:Adam byGMO

日本を代表するミュージシャンである坂本龍一氏もNFT音楽に可能性を見いだしている一人です。坂本氏は2021年12月、映画『戦場のメリークリスマス』のテーマソングとして世界的にも知られている自身の代表曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」を1音ずつ区切った「595の音」をNFT化し販売しました。

「595の音」がNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」で出品されるやいなや、「坂本龍一のあの名曲の一部を自分だけのものにしたい」という思いから数多くの人々が申し込みに殺到しました。想定を超える数の海外からのアクセスに耐えきれず、サーバーが一時ダウンしたことも、このNFTの注目度の高さを表しています。

新しい学校のリーダーズ

出典:PR TIMES

現在人気沸騰中の新しい学校のリーダーズも、ポリゴン(MATIC)上で数量限定のNFTを発行しました。記念すべきファーストNFTのモチーフとなったのは、ライブやグッズでおなじみの「習字」。その名も「一筆入魂NFT」です。

このNFTは 有名ファッションデザイナーや著名なアーティストのNFT作品などを購入できるマーケットプレイス「αU market」で無料配布されました。

このNFTは今回のためにメンバー自身が書き下ろたもので、KDDIが提供するメタバース「αU」と新しい学校のリーダーズとのコラボ「青春学園」のキャンペーンの一環として採用されています。

一筆入魂NFTの所有者は、新しい学校のリーダーズが出演する2カ所のフェス「SUMMER SONIC 2023」と「TOMAKOMAI MIRAI FEST 2023」でNFTを提示すると、各会場で追加の限定NFTが獲得できます。

限定NFTをダウンロードしたユーザーには限定コラボグッズや限定情報の公開といった特典がついており、ファンと特別なつながりを提供するプロジェクトとして注目されました。

ヤングスキニー

出典:ヤングスキニー公式サイト

詩的でリアリティのある歌詞で若者を中心に絶大な人気を誇る音楽バンド・ヤングスキニーも公式NFT「ヤングスキニー Live & Documentary (2023.01.20 – 2023.04.27)」を発売しています。

このNFTの購入者は、約123分のライブ映像に加え、2023年のワンマンツアーやフリーライブまでの道のりを収めた限定ドキュメンタリー映像を視聴することが可能です。NFTを所有しているファンだけが体験できる特別な時間を創り出すことで、新たなアーティストとファンとの関わり方が生まれてくることでしょう。

海外と比べると有名アーティストのNFT活用は進んでいない日本ですが、彼らのような実力も知名度もあるグループがパイオニアとなって、日本のNFT業界を引っ張っていってくれることを期待しています。

OIKOS MUSIC

出典:OIKOS MUSIC

OIKOS MUSICは独立系アーティスト向けに、NFTを使ったサブスク型の収益分配プラットフォームです。楽曲原盤権のうち、サブスク部分の収益に限定した収益分配権をNFT化し、ファンとのコミュニケーション機会を提供しています。

この斬新な仕組みを提供している同サービスですが、NFTはクレジット決済が可能です。仮想通貨でのやり取りが基本となる従来のNFTでは、初心者ユーザーの参加ハードルが高いという欠点がありましたが、このプラットフォームではNFTの購入に仮想通貨のウォレットは不要です。

また、マーケットプレイスへの出品は他レーベルのアーティストにも開放される予定であり、今後は既に活躍されているアーティストの参加も見込めます。参加アーティストによっては、国内で類を見ない大規模NFTプロジェクトになる可能性を秘めています。

シードラウンドの第三者割当増資により、総額1.5億円の資金調達を実施するなど着実に成長を見せているOIKOS MUSIC。アーティストとファンの関係性・応援文化の新しいカタチが、生まれつつあります。

まとめ

本記事では、音楽分野へのNFT技術の活用について解説してきました。

音楽分野へNFT技術を活用することにより、クリエイターにとっては新たなマネタイズの可能性が、リスナーにとっては好きなクリエイターの作品を自分だけのものにできるという新たな価値が生まれます。

一部のクリエイター達の間ではNFTがすでに注目を集め、実際に自身の作品をNFTとして販売する動きも活発化してきています。今後、著名アーティストの参入がさらに進めば、音楽とNFTの掛け合わせは爆発的に広まっていくことでしょう。

【2023年最新版】アートへのNFT活用事例集

近頃、「NFT=Non-Fungible Token(非代替性トークン)」がメディアやSNSに取り上げられることも増えてきましたが、その中でも ”アート” へのNFT利用が特に注目を集めています。とある画像データに75億円もの価値がついたり、数々の著名人が積極的に参入するなど話題に事欠かないNFTアート。 本記事ではそんなNFTアートについて、NFTの基礎知識やメリットを交えながら解説していきます。

  1. NFTアートはNFT活用の火付け役
  2. NFTとは?
  3. アート×NFTで実現すること
  4. NFTアートの実例
  5. まとめ

NFTアートはNFT活用の火付け役

出典:pixabay

NFTへの注目が拡大していくきっかけとなったのは、アート分野に対してNFTが活用され、それらが非常に高い金額で取引されたことでしょう。

例えば、2021年3月に海外クリエイター「Beeple」氏が作成したデジタルアート作品が約75億円もの高額で取引され、2021年8月には東京都在住の8歳の少年が描いたデジタルアート3枚が約200万円で落札されました。一見すると普通の ”画像データ” にも関わらず、驚くような高値がつくというそのギャップによって多くの人々が驚き、世界的な話題を呼びました。

また、上記のような高値での取引以外に、人気アイドルグループSMAPの元メンバーである香取慎吾さんや人気女優の広瀬すずさんといった著名人がNFTアートに次々と参入したことも、日本国内でNFTアートが注目を集めた要因の一つです。

2023年現在では、ゲームや音楽、スポーツなど様々な分野へNFTが活用されていますが、その火付け役となったのは、こういったアートの分野でした。

そんなNFTアートについての解説や事例をご紹介する前に、まずはNFTそのものについて簡単に解説していきます。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

アート×NFTで実現すること

唯一無二という価値が生まれる

出典:pixabay

前述のように実物の絵画や美術品といったPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

しかし、アーティストが描いたデジタル作品に対して ”唯一無二の本物” であるという証明をすることは不可能に近く、コピーやスクリーンショットがWEB上に溢れてしまうことは容易に想像がつきます。

NFTがアート分野に適用されれば、これからはNFT技術によって ”唯一無二の本物” であるという証明がなされた「自分が好きなアーティストが描いたデジタル作品」を、自分だけのモノにできます。

それにより作品やアーティストに対してさらに愛着が持てるようになったり、ファンコミュニティの中で「自分はあのデジタルアートを所有する特別なファンだ」といった心理的な優越感を得たりできるのです。

クリエイターとしても、自分の作品を気に入ってくれた特別なファンの存在を、NFTアートを通してこれまでよりも近く感じることができるでしょう。

新たなマネタイズ方法が生まれる

出典:pixabay

従来であればアーティストが自分の作品を出品する際に、ギャラリーや仲介業者に少なくない金額の手数料を差し引かれる事が多かったため、アーティスト活動だけで生計をたてられる人はほんの一握りでした。

一方で、NFTアートはWEB上で誰でも手軽に出品することができ、出品手数料もかからない、あるいは従来に比べれば非常に少なくすみます。出品の手軽さとマネタイズのしやすさが相まって、アーティストたちはより多くの収入を得るチャンスが増えます。

また、NFTの技術をアートに活用することで、そのアートが転売されるたびに作者の元に収益を還元する仕組みが実現できます。無名時代に描いた作品が有名になってから高値で取引されるようになると作者自身にもその利益が還元されるため、収益だけでなく作り手のモチベーションアップにもつながります。

NFTによってアートの新たなマネタイズ方法が生み出されると、収入面で夢を諦めていた多くの才能あるクリエイター達のモチベーションアップに繋がり、ゆくゆくはアート市場そのものが盛り上がっていくことが期待できます。

NFTアートの実例

続いて、2023年時点でのNFTアートの実例をご紹介していきます。

「Everydays: The First 5000 Days」by Beeple

出典:Christie’s

NFTアートの代表作ともいえるのが「Everydays-The First 5000Days」です。海外アーティストであるBeeple氏によって作られたこちらの作品は約75億円で落札されたNFTであり、これは、執筆時点でNFT史上最高の取引額とされています。

このNFTは、Beeple氏が10数年間毎日作成し続けたプロジェクトである「EVERY DAYS」の作品をまとめて1つのNFTとした作品で、その価格のインパクトも相まって、同作品は「世界で最も有名なNFTアート」としても知られています。

Beeple氏は、NFTに注力するまでは世界的に注目されるほどのアーティストではありませんでしたが、今ではNFTアートの先駆者として世界中で認知されているアーティストとなりました。

Bored Ape Yacht Club(BAYC)

出典:Bored Ape Yacht Club

「NFTは知らないけど、この猿の絵は知ってる」という方もいるかもしれません。

NFTの代表例であるこの「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」は、アメリカのNFTスタジオであるYuga Labsが制作する類人猿をモチーフにしたNFTアートコレクションです。顔のパーツや表情、服装などバリエーションの異なる1万点のNFTアートが発行され、同じ絵柄は1枚として存在しません。

このクオリティと生成数を実現できるのは、BAYCがジェネレーティブNFTだからです。ジェネレーティブNFTとは、プログラミングによって、形、フォーム、色、パターンを自動生成するNFTアートのことを指します。

「独特なデザインにもかかわらず、他の人とは被らない」という面白さがNFTコレクターのみならず、一般のユーザーにもハマり、NFTという存在が広く認知されたという功績は計り知れません。海外のセレブや著名人を発端に、SNSのアイコンを自分が所有しているNFTアートにすることが流行したことが、冒頭のような認知を得るきっかけになったのかもしれません。

2023年9月には、日本発のストリートウェアブランド「A BATHING APE®(ア・ベイシング・エイプ)」とのコラボレーションを発表するなど、まだまだ衰えを見せていない人気NFT。気になった方は、この類人猿でNFTデビューをするのも悪くないでしょう。

CryptoPunks(クリプトパンク)

出典:CryptoPunks

CryptoPunks(クリプトパンク)は、2017年に誕生した世界最古といわれているNFTアートコレクションで、ドット絵の男女やレアキャラのエイリアンやゾンビなどが描かれています。こちらもBored Ape Yacht Club(BAYC)同様ジェネレーティブNFTであり、同じ絵柄は1枚として存在しません。

リリース当初は無料配布されていましたが、作品の総発行枚数は1万点と限りがあり、その希少性から数千万円以上の値段が付けられるまでに価格が高騰しています。その高額な値段から一種の投資商品のような扱いをされており、いまでは多くの有名投資家が保有しています。

また、CryptoPunksはフルオンチェーン、つまり全てのNFTデータがブロックチェーン上に記録されています。実は、多くのNFTプロジェクトではブロックチェーン上に画像データの保存場所を指定する「URL(文字列)」のみ記録する方法が採られています。

フルオンチェーンNFTはデータ容量の上限が非常に少ない点やコストがかかってしまうというデメリットがありますが、CryptoPunksは24×24ピクセルのドット絵のため、データ容量を小さく抑えられ、フルオンチェーンを成立させています。

永続性を実現するフルオンチェーンで実装されている点もCryptoPunksが高い評価を得ている理由の1つだといえるでしょう。

また、その注目はクリプト界隈に留まらず、多くの企業とのコラボが実現しています。2022年には

ティファニーがCryptoPunksをカスタムデザインのペンダントに変換するプロジェクトを発表しました。それぞれのペンダントには、少なくとも30石のジェムストーンやダイヤモンドが使用され、所有者のCryptoPunksに忠実なペンダントが作成できるとのことです。

ティファニーがNFTに参入!「NFTiff」を250個限定で発売。 | Vogue Japan

「Zombie Zoo」by Zombie Zoo Keeper

出典:BuzzFeed News

「Zombie Zoo(ゾンビ・ズー)」は、2021年に当時8歳の日本人の少年によって始められたNFTアートプロジェクトです。

彼が夏休みの自由研究として描いた3枚のデジタルアートを、母親の協力のもと世界最大手のNFT取引所『OpenSea(オープンシー)』に出品したところ、世界的に有名なDJによって約240万円で落札されました。

その後も人気銘柄として話題を独占したZombie Zooは取引総額4400万円を突破するなど、小学生がクリエイターの作品としては異例のヒットとなりました。

東映アニメーションによるアニメ化プロジェクトも始動するなど、日本人の、しかもたった8歳によるNFTアート作品とあって、非常に多くの注目を集めたNFTアートプロジェクトの事例としてご紹介します。

余談ですが、彼の母親である草野絵美氏は自身もアーティストとして活躍されており、映像クリエイターの​​大平彩華と日本発のNFTコレクション「新星ギャルバース」を立ち上げています。

こちらは取引総額16億円を突破するなど、世界的にも大注目を集めるNFTで、グラミー賞ノミネート・アーティス​​ト、トーヴ・ロー『I like u』のオフィシャルMV​​にも採用されています。

Murakami.Flowers Official

出典:designboom

Murakami.Flowersは、日本を代表する世界的アーティスト・村上隆氏が、自身の代表作でもある「フラワー」をドット柄で表現したNFTアートです。

このNFTは発行数が、花の108種と背景の108種の組み合わせで構成されており、合計で11,664種となっています。この数は煩悩の数である108に由来するモノであり、1万個以上存在するNFTのうち108個は「Bonnō Proof」という特別な位置付けにあるレアリティの高いNFTとなっています。

自身の死後、このNFTのメカニズムが変化することも示唆しており、公式Twitterは11万を超えるフォロワーがいるなど世界中が注目するNFTプロジェクトです。

このプロジェクトはインターネット界への貢献として国内外からも評価され、村上氏は「卓越したインターネット上の活動」を表彰するウェビー特別功労賞を受賞。

同氏はナイキの傘下であるRTFKTスタジオとのコラボレーション「クローンX(CloneX)」でもNFTを手がけており、アートとNFTの関係への期待が透けて見えます。

NFTがもつ永続性は、村上氏の「自身の死後でも、作品の価値が生き続ける」というモットーにも相容れるところがあるのではないでしょうか。

Matter is Void

この作品は、かの有名なスペシャリスト集団・チームラボが制作した7つのNFTアート作品群の一つです。それぞれの作品は、独特なグラフィックで「Matter is Void」(意:物質は空虚)と書かれており、それらの文字は常に回転を繰り返し、独自の模様へと変化します。

いままで紹介してきたNFTとは少しテイストの異なったこのNFTには、NFTの所有者が作品内の言葉を自由に書き換えることができるという珍しい特徴があります。

7作品それぞれ購入可能なNFTは1つですが、NFTを所有しているか所有していないかにかかわらず、作品自体は誰でもダウンロードし所有することができます。しかしNFTの所有者がステートメントを変更すると、世界中の人がダウンロードして所有している全ての作品が、その言葉に書き変わります。

NFT所有者の言葉次第で、作品の価値が変化するだけでなく、ダウンロードされたり展示されたりする作品数の増減にも影響があるでしょう。オリジナルNFTとレプリカの区別や、常に変化し続ける作品というのは、NFTやデジタルアート特有の表現といえるでしょう。

From the Fragments of Tezuka Osamu(手塚治虫のかけらたちより)

出典:美術手帖

日本を代表する漫画家である手塚治虫氏の代表作品を題材に展開されたNFTプロジェクト「From the Fragments of Tezuka Osamu(手塚治虫のかけらたちより)」において、「鉄腕アトム」「火の鳥」「ブラック・ジャック」を題材としたNFTモザイクアートが世界最大手のNFT取引所『OpenSea(オープンシー)』に出品され、話題になりました。

このモザイクアートは、手塚治虫漫画のカラー原画840枚と4000枚以上の白黒漫画原稿で構成されており、 モザイクの色味を一つひとつ手作業で調整したまさに力作となっています。 遠くから一枚の絵画としてキャラクターを鑑賞するだけではなく、拡大すればモザイク素材一枚一枚から手塚治虫氏の漫画への情熱や、想いを感じ取ることができます。

また、同時にジェネレーティブNFTの販売も行っており、モザイクアートNFTで使用した画像素材をもとにランダム生成されたアート作品をそれぞれの題材ごとに1000枚の販売をしました。

これらの売上の一部は、ユニセフやあしなが育英会といった子どもたちを支援している団体に寄付されたそうです。

まとめ

今回はNFTアートについて解説し、実際の事例をご紹介してきました。

NFTアートはクリエイターと買い手の双方にとってより良い体験をもたらす革新的な技術です。一方で、NFTアートは依然目新しいモノとして捉えられており、高額な金額で投機的に取引されることに注目が集まりがちです。

今後は、アートの原点である ”純粋に気に入った作品を購入する” という向き合い方が広まり、現実のアートのように人々の生活の一部となっていくことを期待します。

NFTマーケットプレイスとは?取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説

仮想通貨を含むブロックチェーン業界全体はいま、冬の時代を迎えつつあります。ビットコインやイーサリアムが過去最高額を更新した2021年と比べると、話題性だけではなく取引量やアクティブユーザーが減少しているこの現状はいささか厳しいといわざるを得ません。

一方で、デジタル資産「NFT」の取引が、度々明るいニュースを運んできてくれます。今回は、そのNFT取引の中心的な役割を果たす「NFTマーケットプレイス」の概要から、それぞれの特色や違いまで解説していきます。

  1. NFTマーケットプレイスとは?
  2. NFTとは?
  3. NFTマーケットプレイスの選び方
  4. 注目すべきNFTマーケットプレイス
  5. まとめ

NFTマーケットプレイスとは?

NFTマーケットプレイスとは、クリエイターが自分で制作したNFT作品を出品販売したり、自分が所有するNFT作品を購入者同士で取引できる、NFT作品の売買プラットフォームです。個人間でモノを売買するメルカリやラクマの ”デジタルデータ版” をイメージすれば理解できるかと思います。

NFTマーケットプレイスでできることは以下です。

  1. NFT作品を出品・販売する
  2. 販売されているNFT作品を購入する
  3. 購入したNFT作品を更に二次販売する

基本的にNFT作品は、購入者によって二次販売された際にも元のクリエイターに利益が還元される仕組みとなっています。しかし、マーケットプレイスによっては二次販売が禁止されていたり、運営から承認されたクリエイターしか出品できない、などの制限がある場合もあります。


現在、世に流通しているNFT作品のほとんどは、仮想通貨の一つであるイーサリアムのブロックチェーンを基盤として作成されています。そのため、NFTマーケットプレイスでは決済手段にイーサリアムが採用されている場合がほとんどです。

では、数ある中からどのようにして利用するNFTマーケットプレイスを決めれば良いのでしょうか。そちらを解説する前にまずは「そもそもNFTって何なの?」という疑問を抱えている人のために、NFTについて簡単に解説します。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

NFTマーケットプレイスの選び方

出典:pixabay

NFTについて軽く振り返りをしたところで次はNFTマーケットプレイスの選び方について見ていきます。

NFTマーケットプレイスには数多くの種類があります。それぞれ特色があるため、どの取引所を利用するか選ぶ際には、以下3つのポイントに着目してみましょう。

取り引きしたいNFTのジャンルで選ぶ

NFTマーケットプレイスによって、扱っているNFT作品のジャンルが異なります。ゲームアセットやトレーディングカードの取り扱い数に強みを持つ取引所もあれば、様々なジャンルを幅広く扱っている取引所もあります。

売買に利用できる仮想通貨の銘柄で選ぶ

決済に利用できる仮想通貨の銘柄も、NFTマーケットプレイスごとに異なるため注意が必要です。NFTマーケットプレイスは先述のブロックチェーン技術を土台としており、マーケットプレイスごとに土台とするブロックチェーンの種類が異なるためです。

NFT技術の基盤となるイーサリアムはほとんどの取引所で利用可能で、中には日本円やクレジットカード決済が可能なNFTマーケットプレイスもあります。

取引時に発生する手数料で選ぶ

取引の際に発生する手数料も、NFTマーケットプレイスを選ぶ上で重要なポイントです。割高な手数料を設定している取引所もある一方で、取引手数料が無料であることを強みとしている取引所もあります。

注目すべきNFTマーケットプレイス

OpenSea

出典:OpenSea

取り扱いコンテンツデジタルアート、ゲームアセット、トレーディングカード、デジタルミュージック、ブロックチェーンドメイン、ユーティリティトークンなど
基盤ブロックチェーンEthereum、Polygon、Klaytn、Solana、Avalanche、BNB Chain、Optimism、Arbitrum
決済通貨イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)、ベーシックアテンショントークン(BAT)など
販売手数料2.5%

OpenSeaは、2017年にサービスを開始した最古参かつ最大手のNFTマーケットプレイスです。2017年のサービス開始後はどんどん市場規模を拡大し、2023年7月時点で1.67億ドルの月間取引高を誇ります。

NFT出品数も8000万点を超え、取り扱うジャンルもデジタルアートやゲームアセットなど多種多様であり、ユーザーはウォレットを接続するだけでNFTの作成や売買が可能となっています。

その作品の中には数々の有名人によるNFTもあり、例えばお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣氏や、世界的に著名な現代アーティストである村上隆氏などが自身のNFT作品をOpenSeaに出品しています。


OpenSeaの特徴のひとつに、複数のブロックチェーンに対応していることが挙げられます。一般的なNFTマーケットプレイスが対応しているブロックチェーンはイーサリアムのみであることが多いですが、OpenSeaの場合イーサリアムに加えてPolygon(ポリゴン)やKlaytn(クレイトン)、Solana(ソラナ)といったブロックチェーンにも対応しています。

このようにさまざまなブロックチェーンに対応しているため、ガス代(仮想通貨自体の手数料、検証作業をおこなったネットワーク参加者に報酬として分配されている)の軽減が可能です。複数のブロックチェーンを利用できることで、ガス代が高いといわれているイーサリアム以外も選択でき、比較的コストを下げて取引することができます。

また、複数のブロックチェーンに対応していることで、扱えるNFT作品のジャンルや数も豊富となっています。

Blur

出典:Blur

取り扱いコンテンツデジタルアート、ゲームアセット、トレーディングカード、デジタルミュージック、ブロックチェーンドメイン、ユーティリティトークンなど
基盤ブロックチェーンEthereum
決済通貨イーサリアム(ETH)
販売手数料0%

Blur(ブラー)は、2022年10月にローンチした新興のNFTマーケットプレイスです。

「プロトレーダー向けのマーケットプレイス」を謳っているBlurでは、外部マーケットプレイスを横断して取引が行える(各マーケットの出品状況や価格を確認・比較しながら効率的に取引ができる)「アグリゲーター機能」や、独自トークン「BLUR」のエアドロップ(あらかじめ定められた条件をクリアすると、トークンを無料でもらえるイベント)を積極的に行っています。

こうした独自の路線を突き進むBlurは、正式ローンチからわずか1年足らずで業界最大手のOpenSeaの取引量を上回るなど、驚異的な成長を見せるNFTマーケットプレイスとして注目されています。

ユーザーから見たBlurの最大のメリットは、「販売手数料が無料」であるということでしょう。前述のOpenSeaでは、販売手数料が2.5%がかかりますが、Blurでは無料で利用することができます。

また、イーサリアムETH(イーサ)自体はERC-20という共通規格に対応していないため、OpenseaではNFTに対して入札するためにはwETHにスワップ(交換)する必要がありました。しかし、BlurではBlurではETHのままの入札が可能です。そのため、入札の取り消し時にガス代が発生しません。

このようにBlurには、一度に多くのNFT作品を売買するトレーダーにとっては、コストを抑えられるという大きなメリットがあり、今後も活発に取引がされていくと予想されます。

Coincheck NFT

出典:Coincheck NFT

取り扱いコンテンツゲームアセット、トレーディングカードなど
基盤ブロックチェーンイーサリアム
決済通貨ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リスク(LSK)、リップル(XRP)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ステラルーメン(XLM)、クアンタム(QTUM)、ベーシックアテンショントークン(BAT)、モナコイン(MONA)、ポルカドット(DOT)など
販売手数料10%

Coincheck NFTは、日本国内最大級の仮想通貨取引所であるCoincheckが運営しているNFTマーケットプレイスです。運営元が暗号資産取引サービスを行っているため、ビットコインやイーサリアムはもちろん、Coincheckで取り扱いのある10種類以上の通貨で売買をすることが可能です。

Coincheck NFTの最大の魅力は、オフチェーン取引に対応している点です。オフチェーン取引とはブロックチェーン外での取引のことを指します。

イーサリアムブロックチェーン上で発行されたNFTは、イーサリアムブロックチェーン内でそのまま取引することになり、その際に「ガス代」と呼ばれる手数料を支払わなければいけません。そして「ガス代」はユーザー数が増えるにつれて高額になってしまうため、NFT市場が拡大中の今、イーサリアムのガス代の高騰が大きな問題となってしまっています。

Coincheck NFTの場合、NFTの取引履歴をブロックチェーンに記録しない「オフチェーン」でおこなっているため、高額なガス代を支払うことなくNFT作品を売買することが可能です。

こうした決済通貨の豊富さやガス代の削減により、国内最大手のNFTマーケットプレイスに君臨しているのがこのCoincheck NFTです。

LINE NFT

出典:LINE NFT

取り扱いコンテンツゲーム、スポーツ、アニメ、キャラクターなど
基盤ブロックチェーンLINE Blockchain
決済通貨LINE Pat、LINK
販売手数料アイテムごとに異なる

LINE NFTは2022年4月にサービスを開始した新しいNFTマーケットプレイスです。

LINE NFTの特徴はその手軽さです。我々日本人にとってお馴染みのLINEアプリの基盤を活かし、NFTの購入から二次流通までを手軽に実現でき、特にLINE Payを通じて日本円での決済が可能な点が非常に便利です。

また、普段から使っているLINE IDを使って登録できるデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」と連携しており、NFT取引のために仮想通貨ウォレットを用意しなくてもOK。初めてのユーザーにも優しいサービス設計となっており、NFTデビューにもうってつけです。

さらに、LINE NFTでは、運営からの認定を受けた企業やクリエイターだけが出品できる仕組みになっています。大手NFTマーケットプレイスでは、誰でも簡単にNFTを出品しているため市場の流動性はありますが、偽物や模造品などの低クオリティなNFTもマーケットに並んでしまいます。

しかし、LINE NFTでは運営側がしっかりと出品者を審査できるため、NFTの質がある程度担保されています。誰でも安心してNFT取引が楽しめる点は大きなメリットといえるでしょう。

圧倒的な手軽さが実現できた一方で、NFTの醍醐味である”複数のサービスをまたいだ取引”は今の所できません。LINEが運用するブロックチェーン:LINE Blockchainは、同社が独自に開発した「プライベートチェーン」であり、イーサリアムなどの他のブロックチェーンとの互換性が無いためです。

こういったデメリットも存在しますが、LINEは独自のエコシステムを構築するのに長けた企業でもあります。実際にすでに国内でもスポーツ・音楽などエンタメ分野でのコラボがたくさん生まれており、赤西仁さんや今田美桜さん、Nissy(⻄島隆弘)さんといった数々の芸能人も参加しています。

株式会社電通やGMO NIKKO株式会社といった名だたる企業がセールスパートナーとなっており、勢いのあるNFTマーケットプレイスです。

Rakuten NFT

出典:Rakuten NFT

取り扱いコンテンツアニメ、アイドルなど15以上のカテゴリー
基盤ブロックチェーン自社ブロックチェーン
決済通貨クレジットカード、楽天ポイント※パックの購入のみイーサリアム(ETH)での決済が可能
販売手数料14%

RAKUTEN NFTは、大手通販サイトの楽天グループが運営するNFTマーケットプレイスで、日本円や楽天ポイントで決済できるのが特徴です。先述したLINE NFT同様、手軽に簡単に取引がスタートできるNFTマーケットプレイスです。

また、独自のブロックチェーンを基盤としている点もLINE NFTと似ており、他のブロックチェーンとの互換性はありません。NFT作品の保管・管理が楽天という一企業に大きく依存している点が他のNFTマーケットプレイスと大きく異なる点です。

面白いのは、購入時に楽天ポイントが貯まり、支払い時には楽天ポイントで決済できるという点です。一部のマーケットプレイスでは、独自のトークンを付与して取引の活性化を図っていますが、Rakuten NFTでは楽天ポイントという既存のリソースを生かして取引の活性化を実現しています。

これはweb2.0とweb3.0の融合ともいえるケースで、ユーザーとしてもweb3.0に触れるハードルはそんなに高く感じないでしょう。既存のポイントシステムの延長としてNFTを体験することができ、手軽にNFTの購入ができる設計であることには注目です。

販売手数料が割高な点や仮想通貨での決済対応は一部のみである点などには様々な意見もありますが、大手企業が運営していることや独自のシステムなどが評価され、こちらも人気のNFTマーケットプレイスとなっています。

Adam byGMO

出典:Adam byGMO

取り扱いコンテンツデジタルアート、デジタルミュージックなど
基盤ブロックチェーンイーサリアム
決済通貨イーサリアム、銀行振込、クレジットカード
販売手数料5%(二次流通時)

Adam byGMOは、インターネットグループ会社として知られるGMOグループの子会社が運営しているNFTマーケットプレイスです。

Adam byGMOの最大の特徴は、決済通貨がイーサリアムだけでなく日本円に対応していることです。一般的なECサイトと同様、銀行振込やクレジットカードによる決済が可能なので、暗号資産を保有していないNFT初心者の方でも簡単にNFT作品を購入することができます。

取り扱いコンテンツは、アートや音楽、漫画などです。音楽家の坂本龍一氏や小室哲哉氏、漫画家の東村アキコ氏など多くの著名人がすでにNFT作品を出品したことでも話題となりました。

また、二次流通させる場合には作品の売却額の5%が販売手数料として発生し、作者にも売上金からロイヤリティを支払います。クリエイターには最初の売上金しか入らない他のプラットフォームと比べると、ユーザーだけでなくクリエイターにとってもメリットの大きいNFTマーケットプレイスであり、さらなる出品数の増加にも期待できます。

まとめ

今回はNFTマーケットプレイスに関して説明してきました。

NFT化されたデジタルコンテンツを取引できる場が生まれた事により、クリエイター・購入者双方にとって新たな価値を創出することができるようになりました。

一方で、NFT”マーケットプレイス”に限らず、NFTそのものの歴史がまだまだ浅いため、法整備が完全には整っていません。

法律的な整備が進んでいないため、NFTの取引で金銭的な損失があった場合には、法律的な保護が受けられず自己責任となってしまうこともあるでしょう。また、きちんと定まっているわけでは有りませんが、NFT作品を売却した際に得た利益は雑所得としてみなされ、課税対象となる可能性が高いため注意が必要です。

NFT自体の認知がより広まり、NFTに関する法整備が整っていけば、NFTマーケットプレイスを含むNFT市場のさらなる拡大が期待できます。

NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜

NFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」は、デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術で、アートやゲーム、音楽など様々なカテゴリーで活用されはじめています。特に、今回ご紹介するスポーツの分野では、選手やクラブとファンとのエンゲージメントを高める手段として大きな可能性を秘めています。

本記事では、NFTの基本知識から、スポーツ×NFTによってどんなメリットが生まれるのかを解説し、そして具体的な活用事例についてご紹介していきます。

  1. スポーツ分野へのNFT活用
  2. NFTとは?
  3. スポーツ×NFTで実現すること
  4. スポーツ分野×NFTの活用事例
  5. まとめ

スポーツ分野へのNFT活用

スポーツとの親和性が高いNFT

出典:pixabay

サッカーや野球、バスケットボールを始めとする「スポーツ」は、いつの時代も世界中の人々を熱狂させる非常に魅力的なコンテンツです。自分が応援するチームのドラマチックな勝利をリアルタイムで観戦したり、好きな選手の活躍をその目に焼き付けることは、替えの効かない素晴らしい体験となります。

近年、そういったスポーツへNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」を活用する動きが世界中で拡大しています。

NFTとは「デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術」のことで、1試合ごとに何らかのドラマが生まれ、同じシーンが二度と起こらないスポーツとは非常に親和性が高いと言われています。

実際に様々な団体でのNFT導入が始まっている

出典:pixabay

スポーツとNFTの親和性の高さは以前から着目されており、2019年には既に「Sorare(ソラーレ)」というサッカーのトレードカードゲームがNFTをいち早くスポーツに取り入れています。

続いて2020年に米プロバスケットボールリーグであるNBAがNFT市場に参入、さらに2022年には米メジャーリーグ(MLB)が参入してきました。また、日本でもサッカーのJリーグやプロ野球の一部チームでNFT活用の動きが活発化しています。これら活用事例の詳細については後ほど詳しくご紹介します。

このように、実際に様々なスポーツ団体によって導入が始まっているNFTですが、スポーツ分野へNFTを活用することによって一体どんな具体的なメリットがあるのでしょうか?

スポーツへのNFT導入のメリットについて触れる前に、まずはNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)について改めて確認していきましょう。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

スポーツ×NFTで実現すること

「唯一無二の本物」を所有する喜びを得られる

出典:pixabay

これまでは、画像や動画といったデジタルデータに対して ”唯一無二の本物” であるという証明をすることは不可能に近く、有名な試合のワンシーンはYouTubeにアクセスすれば誰もが簡単に見ることが出来ました。

しかしこれからは、NFT技術によって ”唯一無二の本物” であるという証明がなされた試合中のドラマチックなワンシーンを、自分だけのモノにできるのです。

“唯一無二の本物” を所有することによって、チームや選手に対してさらに愛着が持てるようになったり、ファンコミュニティの中で「自分は正真正銘のファンだ」といった心理的な優越感を得ることができます。

NFTによって実現する新たな応援の形が生まれる

出典:pixabay

NFTによって価値が証明されるものは試合中のワンシーンだけではありません。

例えば、新人選手の手書きサインをNFT化し、将来の活躍を期待するファンがそれを購入する、という楽しみも生まれる可能性があります。NFTという記録に残る形で投資した新人選手が活躍するようになれば、以前から応援していたファンとしてこれほど誇らしいことは無いでしょう。

このようにNFTをスポーツのコンテンツに活用することで、選手とファンの新しいコミュニケーションが生まれます。人対人の関係性を新たに生み出せるのがNFTの魅力と言えるでしょう。

選手やチームにとっての新たな収益源となる

出典:pixabay

スポーツ分野へのNFT活用は、ファンに対してだけではなく選手やチームにとってもメリットをもたらします。それは、コンテンツの2次流通を収益化できるという点です。

これまでのチームや選手にとっての主な収入源は、試合日のチケット代や物販、そして各種中継といったコンテンツの一次利用によるものでした。一方これからは、あらゆるコンテンツやデータがNFT技術によって紐付けられ、転売による二次流通による利益がチームや選手に還元される仕組みが実現可能となります。

例えば、新人時代に書いたサインが有名になってから高値で取引されるようになると、選手自身にもその利益が還元され、活躍次第で大きな収入源となる可能性があります。同様に、優勝決定戦などのプレミア価格がついたチケットの転売利益を、チームに還元することも可能となります。

スポーツ分野×NFTの活用実例

続いて、2023年時点でのスポーツ分野×NFTの活用実例をご紹介します。

Sorare

出典:Sorare

Sorare(ソラーレ)は実在するサッカー選手を題材としたトレーディングカードゲーム(トレカ)です。ただし実物のカードではなく、NFT技術によって選手の写真や能力値が一つのデジタルデータにまとめられているのが特徴です。

カードをコレクションする以外にも、購入したNFTトレカで自分だけのオリジナルチームを作ってそのスコアを競い合うことが出来ます。

Sorareの最大の特徴は、選手カードの性能が現実の試合結果とリアルタイムで連動している点です。自分の持つ選手がゴールやアシストを決めると、Sorare上でも強化されます。つまり、いかにゲーム内のチームに実際に活躍している旬の選手を組み込めるかが、ハイスコアを出す鍵となってきます。

ゲーム内でスコア上位のプレイヤーには、レアカードが配布されるのに加え、報酬としてイーサリアム(ETH)が与えられます。

チームを構成するNFTトレカは、Sorare内での売買の他にも、ゲーム外のNFTマーケットプレイスによる取引によって入手できます。当然のことながら、現実世界で好成績をおさめる選手のNFTカードには人気が集中し、過去には次世代フットボール界のスーパースター、ハーランド選手のユニークカードが約7831万円で取引されることもありました。

当初はフットボールに焦点を当てたサービスでしたが、2022年にはNBA(ナショナルバスケットボール協会)やMLB(メジャーリーグベースボール)と連携し、スポーツ界全体を盛り上げる存在として注目されています。

NBA Top Shot

出典:NBA Top Shot

NBA Top Shotは、北米のプロバスケットボールリーグであるNBAの選手を題材としたNFTトレカの収集や販売、展示を行うことができるNFTプラットフォームです。

NBA選手による歴史的なプレイなどのハイライト動画をNFTカードとして所有でき、紛失したり汚れたりするといったこともなく、NFTであるが故に「公式」の証明もされています。そのため、人気選手のカードはマーケットでは1,000万円以上の価格で取引され、話題となりました。

NFTは従来のトレーディングカードと同様、パックでも購入できます。その際には、オンラインの列に並ぶ必要があり、実際にお店で購入しているかのようなUXを提供しています。

また、サービス提供をしているのは人気のNFTゲームである「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」を開発したDapper Labsです。NFT業界でも古参かつ知名度の高い企業が運営しているため、サービスの質や安心感が非常に高いプロジェクトになっています。

NFTでは投資詐欺のような怪しいプロジェクトによる被害も散見されるため、この点は大きなメリットになりうるでしょう。

マイケル・ジョーダンやケビン・デュラントらからも数億ドルもの資金調達をしており、ファンや関係者から人気の高いNFTとなっています。

Jリーグ トレーディングサッカー

「トレサカJリーグ」URイニエスタ選手NFTカードが14万円で売買成立

出典:トレサカ

「Jリーグ トレーディングサッカー」は、日本初のJリーグオフィシャルライセンスが許諾されたサッカークラブ経営シミュレーションゲームです。Jリーグの公式NFTのため、1000人以上の選手が実名実写で登場しています。

同ゲームでは、ゲーム内のパック販売から購入できるLIMITED選手を育成してNFT化することができます。そのNFTを他ユーザーと取引することで、まるで実際の移籍市場に参加しているかのように補強と放出ができます。

知名度の低い選手はNFTとしての価格も低いため、普段の試合から将来性のありそうな選手やスターの卵をピックアップしておけば、数年後には価値が数十倍、数百倍になっているかもしれません。海外スポーツとは異なり、会いに行こうと思えば実際のプレーしている姿を気軽に見られるというのもこのNFTの魅力かもしれません。

また、Pontaサービス対応も開始しており、ゲーム内決済でPontaポイントが使えます。このため、クレジットカード決済だけではなく、Pontaポイントをつかって新戦力を獲得するといった一風変わった楽しみ方も可能です。

従来のソーシャルゲーム同様に基本無料ですぐにプレイできるので、気になる人はぜひプレイしてみてはいかがでしょうか。

Avispa Supporters NFT

出典:アビスパ福岡

アビスパ福岡は福岡市を拠点として活動している「感動と勝ちにこだわる」をスローガンに掲げたJリーグクラブです。

同クラブでは、Avispa Fukuoka Sports Innovation DAOという「アビスパトークン」の保有によってクラブの運営に参加できる分散型組織を活用しており、その取り組みの一貫として、Avispa Supporters NFTというNFTを発行しています。

Avispa Supporters NFTは、DAOのメンバーが優先的に手に入れることができる特別なデジタルアイテムで、「アビスパサポーター」を主役にしたキャラクターデザインが特徴です。「10デザインの歴代ユニフォーム」やDAOメンバーから募集した「アビスパならではのアイテム」など、実装内容はDAO内で議論しながら創られます。

SNSなどのデジタル上ではNFTをプロフィールに設定することで、サポーターとしてのアイデンティティを確立できたり、将来的にはスタジアムがメタバース化された際のアバターに昇華させたりすることも構想されています。

また、このNFTはジェネレーティブNFTと呼ばれるNFTです。ジェネレーティブNFTとは、プログラミングによって、形、フォーム、色、パターンを自動生成するNFTアートのことを指します。

アビスパ福岡は国内プロスポーツチームとして初めてジェネレーティブを公式発行したクラブとして歴史に名を刻むことでしょう。

LIONS COLLECTION

出典:LIONS COLLECTION

日本プロ野球に関する最初のNFTコンテンツは、埼玉西武ライオンズの「LIONS COLLECTION(ライオンズコレクション)」です。

埼玉西武ライオンズは、コロナ禍によって球団の収益の柱である観客動員が大幅に減少したことを受け、「新しい収益を生み、かつファンにも受け入れられる取り組み」を目指し、2021年9月に日本のプロ野球界で初めてNFTを導入しました。

チームの人気選手である栗山巧選手が通算2000本安打を達成した際に、手書きサイン付きパネルとNFT化された記念動画データのセットが販売されたのを皮切りに、球団公式のサービスとしてNFTを取り扱い始めました。

メモリアルシーン以外の普段の試合でも、試合開始前の球場のスクリーンに映し出されるスタメン発表ボードムービーを毎試合NFT化し販売するなど、新たなファンコミュニケーションの一環としてNFTを積極的に取り入れています。

.SWOOSH

出典:.SWOOSH

.SWOOSHとはNIKEが発表したWeb3プラットフォームです。

このプラットフォームではコミュニティを介したNFTのやり取りなどが行われます。

NIKEは近年、本格的にメタバースなどの仮想空間を意識した展開を行っており、このプロジェクトではウェアラブルなアイテムに関しての取引が可能になっている模様。今後、NIKEが独自でデザインしたNFTもリリースされる予定となっており、これらのアイテムは様々なメタバースでの活用を予定しています。

また、EAスポーツのゲームとの連携も構想されており、これが実現すれば.SWOOSHでGETしたシューズやウェアを、サッカーやバスケといったゲーム内で使用できるようになります。

EAスポーツのゲームには、2022年にイギリスの最も人気のあるゲームに選ばれたFIFAや、Madden NFL、NBA Liveなどがあり、数々のヒット作を毎年のように量産しています。そのプレイ人口を考えると、このプロジェクトは大成功を納める可能性に満ち溢れているといえるでしょう。

残念ながら日本ではまだ利用はできず、利用開始日も不明です。しかし、利用できる地域や国を徐々に広げていることから日本での利用もそう遠くないかもしれません。今後の続報に期待です。

まとめ

今回はスポーツ分野へのNFT活用について解説してきました。

NFTはスポーツにおけるファンビジネスのあり方を変革するだけの大きな可能性を秘めていると言えます。

アートや音楽などの芸術分野へのNFT活用は投資目線で語られる事が多いですが、スポーツへのNFT活用はあくまでもファンが中心となって市場を牽引していくことが期待されます。

NFTの活用によってスポーツ市場は今後さらに盛り上がっていくことでしょう。

【2023年】NFTファッションの特徴と魅力、最新トピックスをご紹介

2021年以降、アートやゲーム、音楽など様々なカテゴリーで活用されはじめているNFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」ですが、ファッションやアパレルの分野でも注目を集めています。

デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術であるNFTと、元来アナログなコンテンツであるファッション分野を組み合わせることで一体どのようなことが可能になるのでしょうか?

そこで本記事では、NFTの基礎知識からNFTファッションのメリットや特徴、関連するトピックスをご紹介していきます。

  1. ファッション分野へのNFT活用が拡大中
  2. NFTとは?
  3. ファッション×NFTで実現すること
  4. 有名ブランドのNFT事例
  5. まとめ

ファッション分野へのNFT活用が拡大中

その認知がブロックチェーン業界だけでは留まらなくなってきたNFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)は、ファッション業界へも大きく普及しはじめており、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)やGucci(グッチ)といった、有名ハイブランドが次々とNFTに参入していることからも、その注目度の高さがうかがえます。

「デジタルデータを唯一無二化する技術」であるNFTと、服や靴などの ”現物” が存在するファッション分野を掛け合わせると、どのような事が可能となるのでしょうか。

NFTファッションの特徴や実際の導入事例をご紹介する前に、まずは前提となるNFTについて解説していきます。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

ファッション×NFTで実現すること

ファッションアイテムに唯一性を付与できる

出典:pixabay

NFTを活用することによって、デジタル、現物を問わずファッションアイテムに唯一性を付与できるようになります。

現物のファッションアイテムの偽造品対策としてギャランティカード(証明書)が従来から存在しますが、このギャランティカードを含めて偽造する悪質な詐欺も横行しており、特にハイブランドが被害を被るケースが後を絶ちません。

前項で解説した通り、NFTは「デジタルデータを唯一無二化する技術」なので、現物のファッションアイテムにNFT化したデジタルデータを紐付けた「NFTタグ」を取り付ければ、そのアイテムの唯一性を証明できるようになります。

「NFTタグ」として使えるものはICチップとQRコードの2種類があり、どちらも固有の情報を書き込めるうえにNFT化すれば偽造もコピーもできないという点で共通しています。

この偽造もコピーもできない「NFTタグ」が普及すれば、ファッション業界を長年悩ませてきた偽造品対策にとって大きな進歩となることでしょう。

デジタルファッションが ”現物” に近づく

出典:pixabay

上記では現物のファッションアイテムに対してのNFT活用をご紹介しましたが、ファッション×NFTの本題はデジタルファッションです。

ゲームやメタバース(仮想現実)、SNS上で自身のアバターやキャラクターに好きな服を着用させたりコレクションして楽しむというデジタルファッションの概念は従来から存在していますが、これとNFTを結びつけることでデジタルデータとしてのファッションアイテムに「唯一性」を持たせることができるようになります。

デジタルファッションの唯一性が証明できるようになると、現物のファッションアイテムと同様に需要が生まれ価値が高まっていき、デジタルファッションを取り扱う取引が活発化します。そして、ゲームやメタバース(仮想現実)内の自分のアバターに価値が高いアイテムを着用させることによって、満足感を得たり、コミュニティ内で優越感を得ることができます。

それはつまり、NFTによってファッションにおけるゲームやメタバース(仮想現実)と現実世界の差が縮まり、新たな市場が生まれるということを意味します。実際に名だたるハイブランドが次々とNFTファッションに参入しており、後ほどご紹介します。

NFTファッション専門ブランドの誕生

出典:RTFKT

上記では既存の有名ブランドがNFT市場に参入してくるメリットをご紹介してきましたが、現物は一切取り扱わないNFTファッションに特化したメーカーも誕生しています。

現物をサービス外とすることで、いままで予算の関係で実現できなかったデザインや現実では表現できない色味をそのままグッズ化できます。デザインの幅も広がり、ユーザーは未体験のファッションの楽しみ方ができるでしょう。

実際にオンライン上でのみ着用可能なNFTスニーカーを販売しているブランド「RTFKT(アーティファクト)」が、若手アーティスト「Fewocious(フュウオシャス)」とのコラボレーションで制作したバーチャルスニーカー600足はたった7分で完売し、約3億3,200万円の売上を叩き出しました。

2021年12月に世界的大手スポーツブランドである「NIKE(ナイキ)」が同社を買収しており、大手のファッション企業も、過去に類を見ないオリジナリティあふれるバーチャル製品には興味津々のようです。

環境にやさしいファッション産業へ

出典:pixabay

ファッション産業は、「大量生産・大量消費、大量廃棄」が前提となっており、製造にかかる資源やエネルギー使用の増加、ライフサイクルの短命化などから環境負荷が非常に大きい産業の一つです。その悪影響は国連の統計によると、すべての産業の中で2番目に多くの環境汚染を生み出しているほど。

NFTファッションはデジタル上で完結し、実際の服を作るために必要な繊維や素材、サンプル品などを使用しません。出品するのにも、完成品をユーザーに届けるのにも、輸送という手段が不要になるため、環境負荷がとても少ないです。

環境省も推進するように、これからのファッションでは持続可能性が重要なキーワードになってきます。アニマルフリーや再生素材などを使用したアイテムも環境にやさしいですが、製造から流通まで一度も廃棄を出さないNFTファッションは究極のサステナブルファッションといえるでしょう。

有名ブランドのNFT事例

Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)

ルイ・ヴィトンのメゾン初となるNFT「VIA トレジャー・トランク」

出典:VOGUE JAPAN

有名ブランド、Louis Vittonでは約586万円で限定NFTを発売しており、デジタルの世界においても「憧れのLOUIS VUITTON」を手にする価値を提供しています。

「VIA トレジャー・トランク」と名付けられたこのNFTは「ヴィトン初のデジタルトランク」と打ち出されており、所有者には同製品の秘密鍵がドロップされると同時に、限定製品のアクセスや保有者同士の親密なコミュニティがアンロックされると説明されています。

また、Louis Vuittonは2021年にも「LOUIS THE GAME」というブロックチェーンゲームをリリースしています。公式マスコットキャラクターであるヴィヴィエンヌを操作して6つのステージを冒険していくストーリー形式のゲームです。

ゲーム内にはNFT化された特別なアイテムが30個隠されており、そのうち10個を自身の作品が約75億円で落札されたことで話題になった人気NFTアーティスト「Beeple」がデザインしています。

それぞれのNFTはそれなりに知名度もあり、Lois Vuittonは間違いなくNFTで先進的な取り組みをしているブランドの一つでしょう。

Gucci(グッチ)

出典:gamebiz

イタリアを代表する老舗ファッションブランドの「Gucci(グッチ)」は、数あるハイブランドの中でもいち早くNFT市場に参加しました。

2022年1月には、配信プラットフォーム「Discord(ディスコード)」上で「Gucci Vault Discord」という専用スペースを設置し、NFTやメタバースに関する意見交換のコミュニティを創設。その翌月にはバーチャルセレブリティーや限定ビニールトイ、デジタルのコレクションアイテムのクリエーションを手掛けるブランド「スーパープラスチック(SUPERPLASTIC)」とコラボレートした「スーパーグッチ」を発売するなど、GucciはNFT市場開拓に関してかなり積極的なブランドと言えます。

そんなGucciが2023年7月に大手オークションハウスのクリスティーズ(Christie’s)と提携し、デジタルアートのNFTをオークション形式で販売することが発表されました。

このプロジェクトは「Future Frequency, Explorations in Generative Art and Fashion(未来の周波数、生成アートとファッションの探求)」と題されており、クレア・シルバー(Claire Silver)やタイラー・ホッブス(Tyler Hobbs)、エミリー・シェ(Emily Xie)といったデジタルアートを牽引する芸術家たちがコレクションに参加しています。

また、購入者はデジタルアートのパターンがプリント・刺繍された、50ヤードの物理的な生地ロール(サインとシリアルナンバー入りの証明書が付属)も手にすることができる模様。今回のコレクションのアート作品は、グッチのオンラインギャラリーである「Gucci Art Space」でも展示される見込みです。

Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)

Image may contain Human Person Helmet Clothing and Apparel

出典:VOGUE

少し古い事例にはなってしまいますが、イタリアを代表する世界的なラグジュアリーファッションブランド「Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)」は、NFTファッションにおいて大成功を収めた数少ない企業ということができるでしょう。

同ブランドでは、2021年に初のNFTコレクションとして「Collezione Genesi(ジェネシス コレクション)」を発表しました。その内容は、男性用スーツや女性用ドレス、ティアラなど9点の作品は、デジタルデータだけでなく実際に着用できる ”現物” も購入者に届けられるという内容でした。

加えて、購入者にはDolce&Gabbanaのイベントに1年間参加することができる権利や、ミラノにあるアトリエのプライベートツアーを楽しむことができる権利が与えられました。

完全にデジタル上で完結するわけではなく、オーダーメイドのフィジカルなスーツが与えられるなどユーザーのニーズにもある程度寄り添う形でのNFT導入となったこのプロジェクトは、総落札額が約6億円の大成功に終りました。

現実世界とメタバース双方の体験価値を最大化させるファッションにおけるNFTのお手本的な活用方法を業界内に示した例として、NFTファッションを語るうえで避けては通れないでしょう。

VALENTINO(ヴァレンティノ)

出典:VOGUE

Vのアイコンがお馴染みの世界を代表するイタリアのファッションブランド「VALENTINO(ヴァレンティノ)」。そんなローマを代表するメゾンが、ファッションやカルチャー分野でのNFTを手掛けるマーケットプレイス「UNXD」とパートナーシップを締結するという報道がありました。

このプラットフォームは、デジタル空間の「創造とキュレーション」を掲げており、NFTに「tangibility(有形の資産)」をもたらすことを目標としています。

「Vogue」や「WIRED」などのハイファッションに特化したチームによって結成されたこのWeb3コンテンツは、アバターの着用をメインとしてきた「Sandbox」などのメタバースへ進出したこれまでのブランドのコンテンツとは一線を画しています。

つまり、より上質で「ラグジュアリーの本質」を築くアイテムの提供を目指しており、所有欲そのものを満たすような新たなNFTファッションの価値を創造するということです。

エレガントなアイテムを販売してきたヴァレンティノが、NFTでもどのような華々しさを見せつけてくれるのか。今後の動向に注目のプロジェクトです。

まとめ

今回はファッション分野へのNFT活用について解説してきました。

ファッション界隈は流行や目新しいものに対するアンテナを張っている人達が多いため、NFTが浸透していくのに多くの時間はかかりませんでした。また、有名ブランドが積極的に参入することにより、NFTに詳しくない一般層にも急速に普及していくことが予想されます。

ますます盛り上がっていくであろうNFTファッションに今後も注目です。

DAO(分散型自律組織)とは?〜Web3.0時代の新しい組織のあり方〜

仮想通貨やNFTの話題に触れる中で「DAO」という言葉を目にする機会があるのでは無いでしょうか。「分散型自律組織」と日本語に訳されるDAOですが、一体どのような特徴やメリットがあるのでしょうか。本記事では、「DAO(分散型自律組織)」の概要やメリットと課題、そして実際の事例をご紹介していきます。

  1. DAO(分散型自律組織)とは?
  2. DAO(分散型自律組織)の特徴とメリット
  3. DAO(分散型自律組織)の現状の課題
  4. DAO(分散型自律組織)の今後
  5. DAO(分散型自律組織)の代表的な事例
  6. まとめ

DAO(分散型自律組織)とは?

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DAO(分散型自律組織)の概要

DAOには中央の管理者が存在せず、意思決定はコミュニティ全体で行う

DAO (Decentralized Autonomous Organization、ダオ)は「分散型自律組織」と日本語で訳され、ブロックチェーン上で管理・運営される組織のことです。

その特徴については後に詳しく解説しますが、株式会社などの一般的な組織とは異なり組織の管理者が存在しないという点が、DAOの大きな特徴のひとつです。組織の意思決定は管理者によるトップダウンではなく、組織の参加者全員によって平等に行われます。

DAOが注目されている理由

DAO自体は2014年頃から存在していた概念ですが、2021年以降に大きな注目を集めるようになりました。その理由として、NFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」「DeFi(分散型金融)」などの仮想通貨分野の盛り上がりがあります。

これら仮想通貨関連によるインターネット上での技術革新は ”Web3.0” と呼ばれています。Web3.0において仮想通貨はお金、DeFiは金融サービス、NFTはデジタルに関する所有権のあり方、そしてDAOは”組織”を変える技術であり、それぞれが密接に関わり合って技術革新が起こってきました。

DAO(分散型自律組織)の特徴とメリット

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続いて、DAO(分散型自律組織)の特徴とメリットについてより詳しく解説していきます。

特徴①:組織の管理者が存在しない

先述したように、DAOの大きな特徴として組織の管理者が存在しないという点が挙げられます。

株式会社を代表とする従来の組織では、意思決定は上層部の管理者によって行われ、決定事項を組織の下流にまで行き渡らせる「トップダウン方式」が一般的でした。

一方でDAOには管理者が存在せず、参加者全員が一丸となってプロジェクトを推し進めていくため、トップダウン方式に比べて様々な意見が出されて議論されることがメリットと言えます。

特徴②:透明性が高く民主的な組織運営

管理者が存在しないDAOには中央集権的な権力者が存在しないため、その意思決定のプロセスは一般的な株式会社などと比べて非常に民主的です。

具体的には、DAOを動かすための意思決定に関わるためには、そのDAOのコミュニティ内で使われる仮想通貨「ガバナンストークン」を保有する必要があります。そのトークン保有者による投票によってDAOの意思決定が行われ、さらに投票のプロセスは全てブロックチェーン上に記録されるため、民主的かつ透明性の高い組織運営が実現可能となります。

また、投票の際に使用される「ガバナンストークン」組織運営のための資金調達としての役割もあり、実際に多くのDAOがこのガバナンストークンの発行によって資金を調達しています。

ガバナンストークンを保有することには、先述した組織運営に係る権利を得る以外にも、プロジェクトが成功した際のインセンティブを得ることができるなどの金銭的メリットがあります。

特徴③:誰でも組織に参加できる

従来の組織に参加するためには試験や面接を通過し、契約書を結ぶのが一般的です。組織から離脱する場合も同様に契約解除の手続きが必要でしょう。

一方のDAOは、国籍や性別に関係なくインターネット環境さえあれば誰でも参加できます。また、DAOは匿名での参加も認められるケースも多く、顔や実名を明かさずにプロジェクトに参加できるのが従来の組織と大きく異なる点です。

DAO(分散型自律組織)の現状の課題

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ここまでDAOの特徴やメリット、代表的な事例をご紹介してきましたが、DAOが持つ現状の課題についても触れていきます。

課題①:組織の意思決定に時間がかかる

さきほど、中央集権的な管理者を持たず民主的な意思決定が行われることをDAOのメリットとして挙げましたが、逆に組織の意思決定に時間がかかるという点がデメリットとして考えられます。

サービスがハッキングにあった場合やサービスに欠陥が見つかった場合などの不測の事態に対しても、ガバナンストークンによる投票が必要となるため、緊急時に迅速に対応することができないリスクがあります。

迅速な意思決定が必要な場面においては、従来の企業組織などのような中央集権的な「トップダウン方式」に軍配が上がる可能性が高いです。

課題②:ハッキングリスク

DAOに限らずWEB上のサービス全てに言えることですが、外部からのハッキングによるリスクは拭えません。

実際に、2016年にイーサリアム上のDAOである「The DAO」がハッキング攻撃を受け、被害総額は日本円にして約52億円にのぼりました。「The DAO」は、先程ご紹介した「BitDAO(ビッダオ)」同様の分散型投資ファンドであり、「The DAO」内にプールしていた投資用資金が狙われた形となります。

課題①にあげた「緊急時に迅速な意思決定ができない」という点と、次の課題③にあげる「法整備が不十分」である点を考慮すると、被害の補填に難航するものと思われます。

課題③:法整備が不十分

DAOは2021年以降に実体化されはじめた組織形態であるため、日本を含む世界各国の法整備が十分に追いついていない状況となっています。

2021年7月にようやく米ワイオミング州が全米で初めてDAOを合法化し、2022年2月にはマーシャル諸島共和国が国家として初めてDAOを法人として承認することが決定しました。

とはいえ、DAOを法人として認める法整備を進める動きはごく一部にとどまっており、今後の全世界的な普及が待ち望まれるところです。

DAO(分散型自律組織)の今後

出典:pixabay

株式会社ではなくDAOでの組織運営が広まる

DAO(分散型自律組織)は株式会社に比べて組織への参入ハードルが低く、また組織運営における民主性が高いため、今後は大きな組織から小さなコミュニティーまで様々な規模、分野に適用される可能性を秘めています。

また、組織としての透明性が非常に高いことから、チャリティーを始めとする慈善活動や非営利組織運用との相性が良いとされているため、NPO法人などにとって替わる存在となる可能性も十分に考えられます。

DAOへの注目が高まりガバナンストークンの価格が上昇する

DAOでの組織運営が普及すれば、各DAOに紐づくガバナンストークンの価値が高まることが予想されます。そしてトークン保有者への還元も活発化して、投資対象としてのDAOが一般層にまで注目を集めるようになれば、さらに多くのDAOプロジェクトが誕生していくことになるでしょう。

DAO(分散型自律組織)の代表的な事例

ここでは、2023年時点での代表的なDAOをご紹介していきます。

Nouns DAO(ナウンズダオ)

出典:Noun DAO

Nouns DAOは、ドット絵風のキャラクターをモチーフにしたNFTコレクションです。

毎日1体ずつ「Noun」と呼ばれるNFTアートが自動生成され、オークションにかけられます。そこで競り落とした人がNFTの保有者となります。「Noun」の所有者は投票権が付与され、組織全体の議決や採択に関与できます。

投票できる内容は、オークション収益の使い道についてです。提案や議論には誰でも参加できますが、最終的な投票をできるのはNouns所有者のみとなっていることから、Nouns DAOは、Nounsを自動生成してオークションで販売する機能を備えた分散型自律組織だといえます。

Nounsの著作権は「CC0(Creative Commons 0=パブリックドメイン)」という扱いになっているため、従来のIPビジネスとは異なり、誰でもNounsの二次利用が可能になっています。

こうしたルールやデザインの独自性から幅広い層から人気を博しており、現在成功を収めているDAOの代表例の一つです。

BitDAO(ビッダオ)

出典:BitDAO(ビッダオ)公式Twitter

BitDAO(ビッダオ)は大手仮想通貨取引所「Bybit(バイビット)」が主導するDAOプロジェクトで、大手決済サービス「PayPal」の創業者であるピーター・ティールを始めとする数多くの著名人が設立時に資金提供したことで知られています。

2021年にNFTやDeFiに関する、将来性の高いプロジェクトに資金提供することを目的に設立されたBitDAO内では、「BIT」というガバナンストークンが発行されています。

この「BIT」の保有者はBitDAOの出資先や出資額を決める投票に参加できたり、保有量に応じた利益が分配されます。

日本では人気の高いコインとして知られており、BitDAOの公式Twitterのフォロワー数は約5.8万人・Discordメンバー数は約1.1万人に達しています。※2023年7月時点

BitCoin(ビットコイン)

出典:pixabay

仮想通貨BitCoin(ビットコイン)は、完全な形で分散運営されている世界初のDAOであるとされています。

BitCoinには中央集権的な管理者はおらず、ブロックチェーン上の一定のルールに従って運営されており、オープンソースであるため誰でもその取引のプロセスを閲覧可能です。

なおガバナンストークンは存在せず、ブロックチェーンに取引を記録した際に新たにBitCoinが発行される仕組み(マイニング)です。後発のDAOとは異なり、トークンであるBitCoinの発行はこのマイニングでのみ行われます。

中央集権的な管理者が不在にも関わらず、決められたプログラムに沿って意思決定されているBitCoinは、最も成功しているDAOのひとつと言えるでしょう。

Ninja DAO(ニンジャダオ)

出典:Ninja DAO

Ninja DAOは日本国内最大級のDAOであり、世界最大手のNFT取引所「OpenSea」で取引される「 CryptoNinja NFT 」というNFTプロジェクトの公式コミュニティです。

たとえNFT自体を所有していなくても「CryptoNinja NFT」の世界観に魅力を感じた人であれば誰でも参加可能で、ファン同士のコミュニケーションツールとして様々な活動がなされています。

NFTの二次流通も許可されており、小説、音楽、ゲームなどのファンによる二次創作も活溌な、今後さらに成長する可能性が高いDAOといえます。

MakerDAO(メイカーダオ)

出典:MakerDAO

MakerDAO(メイカーダオ)は、2014年にローンチされた歴史あるDAOプロジェクトです。

イーサリアムをMakerDAOへプールすることで、ステーブルコイン「DAI(ダイ)」が発行されるDeFiの仕組みをとっています。また、ガバナンストークン「MKR」の保有量に応じて、組織の意思決定への発言力を持てるようになる点も、典型的なDAOの形式といえるでしょう。

ガバナンストークン「MKR」は歴史もあり信頼性の高いトークンとして人気を博しており、その収益性の高さから投資対象としても注目されています。

Compound(コンパウンド)

出典:Compound

Compound(コンパウンド)は2018年に設立された仮想通貨の貸し手と借り手を繋げるプラットフォームです。ユーザーは資金を預けることで金利収入を得ることができ、加えて利用実績に応じて「COMP(コンプ)」というガバナンストークンが付与されます。

Compoundは2021年のDeFi(分散型金融)ブームの火付け役となったプロジェクトで、現在も人気のDeFiアプリケーションとして多くの人々が利用しています。

今回は、DAOの特徴やメリットを解説し、代表的な事例と解決すべき課題、そしてその将来性までをご紹介しました。

本記事を通して、DAOがこれまでの組織のあり方を大きく変える可能性を秘めていることがお分かりいただけたかと思います。

Ukraine DAO(ウクライナダオ)

出典:BRIDGE

Ukuraine DAOは、ロシアのウクライナ侵攻に苦しむ人々を支援するためにコミュニティの力を利用して資金調達を実現することを目的に創られた組織です。

NFTの販売を通して寄付者に金額に応じた「LOVEトークン」を付与し、収益はウクライナの人々を支援する非営利団体に送られる仕組みになっています。

UkrineDAOを立ち上げたのは、プーチン大統領に対して批判的な政治活動家であるNadya Tolokonnikova氏で、同氏は、ロシアのフェミニスト・ロックグループ「Pussy Riot」の創設メンバーとしても知られています。

72時間という短時間で3,271人から、約2,258ETH(約6.7億円)という巨額の寄付が集まり、スピード感と規模感のあるプロジェクトがDAOによって推進された事例といえるでしょう。

まとめ

今回は、DAOの特徴やメリットを解説し、代表的な事例と解決すべき課題、そしてその将来性までをご紹介しました。

本記事を通して、DAOがこれまでの組織のあり方を大きく変える可能性を秘めていることがお分かりいただけたかと思います。引き続き、今後のDAOに関する動向に注目です。