インターオペラビリティ(相互運用性)とは?ブロックチェーン同士を接続する新たな技術を解説!

近年、ブロックチェーン技術に関して「インターオペラビリティ」という言葉を目にする機会が増えてきました。ブロックチェーンが持つ現状の課題と、「インターオペラビリティ」によって何が実現するのかを解説していきます!

    近年、浮かびあがるブロックチェーンの課題

    2009年にBitcoinが運用開始されて以来、Ethereum、Hyperledger Fabricなど様々なブロックチェーンプラットフォームが誕生しました。

    それに伴い暗号資産などの金融領域だけではなく、非金融領域においてもブロックチェーン技術が多方面で応用され始めています。

    特に近年では、物流や貿易などサプライチェーン・マネージメントにおけるトレーサビリティシステムへの活用など、ブロックチェーンに関する実証実験や実装が急速に進んでいます。

    しかし、そうした形でブロックチェーン利用の可能性が広がる一方で、ブロックチェーン技術自体に関わる根本的な課題も浮かび上がってきています。それは、異なるブロックチェーン間のデータのやり取りが困難(=インターオペラビリティがない状態)であるということです。

    異なるブロックチェーンにおいて、やり取りができないというのは一体どういった状況を指すのでしょうか。そのためには、そもそもブロックチェーンとはどういう仕組みで成り立っているのかから見ていく必要があります。

    次項ではブロックチェーンについて簡単に説明したあと、相互運用性について詳しく説明していきます。

    ブロックチェーンとは

    ブロックチェーン=正確な取引履歴を維持しようとする次世代データベース

    出典:shutterstock

    ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

    ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

    取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種です。その中でもとくにデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

    ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っています。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

    これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

    また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

    ブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値と呼ばれる関数によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

    ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

    新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています

    また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。

    コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出します。この行為を「マイニング」といい、最初に正しいナンスを発見したマイナー(マイニングをする人)に新しいブロックを追加する権利が与えられます。ブロックチェーンではデータベースのような管理者を持たない代わりに、ノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持っています。

    このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

    こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

    データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

    詳しくは以下の記事でも解説しています。

    異なるブロックチェーン間に相互運用性はない

    前述のように次世代のデータベースともいえるブロックチェーン技術には、BitcoinやEthereumをはじめとして非常に多くの種類の基盤があります。同じ種類のブロックチェーン間のデータのやりとり、例えばEthereumのウォレット(仮想通貨取引を行うための口座)から別のEthereumウォレットに対しては、手軽に送金をすることができます。

    しかし、EthereumをBitcoinのウォレットに送ることはできません。なぜなら、各ブロックチェーンネットワークは異なるルール・仕様に基づいており、それぞれに互換性がない状態となっているからです。これは、ブルーオーシャンだったブロックチェーン業界に、様々な企業が独自のプラットフォームをローンチしてしまったことが原因でしょう。

    これは、PCや携帯電話の歴史においても見られた事象です。各メーカー個別のプラットフォームでデバイスを作った結果、相互に互換性がなくなり、アプリケーションはそれぞれの機種ごとに作らなければいけなくなりました。このことはまさに、現在のブロックチェーンの置かれている状況と似ているかと思います。

    現在、各チェーン同士の互換性がないために、無理に送金をするとチェーン上の資産は行方不明になってしまいます。いわゆるセルフGOXと呼ばれるものです。そのため、BitcoinをEthereumに変換したい場合には、取引所で取引する必要があります。

    互換性というと、馴染みの薄い言葉に聞こえます。これは、私たちが普段生活している際にはこの「互換性がない」状態をあまり見かけないからかもしれません。

    出典:Unsplash

    例えば、私たちは三井住友銀行の口座から三菱UFJ銀行の口座へと送金できます。これは私たちが日常で利用している銀行サービスでは、あらかじめ異なる銀行同士の互換性が担保されているため、何の問題もなくお金の移動が出来るのです。

    しかし、こうした互換性がなくなり、三井住友銀行に預けたお金は三井住友銀行内でしか使えない、となると大変不便です。使えるサービスの幅が大きく狭まるだけでなく、一度、三井住友銀行から出金したうえで再度、三菱UFJ銀行へと入金しなければならず、余計な手間が増えてしまいます。

    これと近しいことがブロックチェーン間の課題として挙げられているのです。この「互換性の無さ」がブロックチェーン技術発展の妨げとならぬよう、異なるブロックチェーン同士を繋ぐことができるようにする仕組みが研究・開発されています。それが「インターオペラビリティ」と呼ばれる概念です。

    インターオペラビリティ=相互運用性

    出典:shutterstock

    インターオペラビリティとは?

    インターオペラビリティは日本語で相互運用性と訳されます。

    ブロックチェーン関連の文脈では、BitcoinやEthereumなど、無数の様々なブロックチェーン同士を相互に運用可能とするための技術のことを指します。

    インターオペラビリティによって可能になること

    インターオペラビリティによってシステム同士が連携できるようになると、異なるブロックチェーン同士でも送金やデータのやり取り、コミュニケーションが可能となります。ユーザー側からはシステム特性に依存しないシームレスな取引や処理が実行され、不必要な手間や不自由さのない世界が実現可能となります。

    例えば、同一のサービス内であっても、金融取引には秘匿性の優れたブロックチェーンを、決済の手続きにはトランザクションの処理スピードが優れたブロックチェーンを使い分けることができます。

    既存のブロックチェーン基盤では様々な制約により導入が難しかったケースにおいても、新たにブロックチェーンを構築するといったアプローチも現実的なものになるでしょう。したがって、インターオペラビリティは非常に革新的なアイデアであり、ブロックチェーンが社会へより普及するためには必須の技術であるといえます。

    現在、様々なプロジェクトがこうした異なるチェーン間における価値の移動、コミュニケーション手段の確立・実現に向けて開発を行っています。

    インターオペラビリティの実現を目指すプロジェクト

    Cosmos(コスモス)

    出典:Cosmos

    Cosmos(コスモス)は、インターオペラビリティの実現を目指してTendermint(テンダーミント)社が開発した仮想通貨です。

    CosmosではIBC(Inter-Blockchain Communication)という仕組みを利用し、異なるブロックチェーン間でもデータのやり取りができるようにしました。IBCでは、ブロックチェーン間を「対等」な関係で接続し、それぞれの独自チェーンのノードが自分でデータを検証するしています。

    IBCに対応した独自のブロックチェーンを開発できるツール「Cosmos SDK」を用いて、Cosmosのネットワーク上にブロックチェーンを構築できます。この各ブロックチェーンのアプリケーションを「Zone」といい、Zone同士が相互接続できるように作られた中継役となるブロックチェーンを「Hub」といいます。

    Cosmosのネットワークは下図のように「Zone」と「Hub」の二種類のブロックチェーンから構成されています。

    また、「Peg Zone」という別のブロックチェーンの状態を追跡するためのブロックチェーンを仲介することにより、BitcoinやEthereumといった既存のチェーンとの互換性を生み出せるため、Cosmosは外部のコンセンサスアルゴリズムをベースにしたチェーンを接続することも可能です。

    Cosmos自体は仮想通貨の世界から見ると歴史の浅い通貨ですが、こうしたインターオペラビリティは投資家たちの間でも評価されており、時価総額は50位前後(2025年2月時点)と全体でも上位に位置しています。今後もさらなる発展が期待できるでしょう。

    Polkadot(ポルカドット)

    出典:Polkadot

    Polkadot(ポルカドット)は、Ethereumの共同創業者であるGavin Woodらによって2016年に立ち上げられたプロジェクトです。同サービスの開発は、ユーザー主権的なWeb3.0の構築を目指す団体「Web3 Foundation」によって主導されています。

    Polkadotも前述のCosmos同様、マルチチェーンに対応しており、相互運用性が高いことで知られています。Polkadotのシステムにおいて、インターオペラビリティを実現しているのは「XCM(cross-consensus messaging format)」という特殊なプロトコルです。

    このXCMは「Relaychain」と「Parachain」「Bridgechain」の3種類のブロックチェーンから構成されています。ネット全体のセキュリティを司るメインのチェーンである「Relaychain」とアプリケーションごとの目的に応じた独自のトークン・経済圏を構築する「Parachain」に対して、「Bridgechain」は下記のように外部のブロックチェーンと「Parachain」の接続を行います。

    出典:medium

    この「Bridgechain」により、あらゆるタイプのデータや資産をBitcoinやEthereumといったブロックチェーンに転送することが可能になっています。こうした柔軟性は、Polkadotがオープンガバナンスシステム(重要な決定を参加者全員が投票で決める仕組み)を採用していることによって実現しています。

    インターオペラビリティを含め、ユーザーが自分の意見を反映させてネットワークの方向性を決められる柔軟なシステム設計はPolkadotの最大の特徴であり、成長を続けてきた理由の一つだといえるでしょう。

    CosmosとPolkadotの違い

    CosmosとPolkadotはどちらもインターオペラビリティを確保することで、ユーザビリティの向上やブロックチェーンの普及を目指しているプロジェクトです。両者ともに中心に大きなハブ機能を持ったチェーンがあり、そのメインチェーンに様々な機能を持ったサブチェーンが接続する形になっているため、ざっくりとした全体像は似通ったものになっています。

    そんな両者における違いはどこにあるのでしょうか?細かい違いは多々ありますが、最も大きな違いは、ネットワーク全体のセキュリティが統一されているかどうかです。

    Cosmos Hubに接続する独立したブロックチェーンは均一なセキュリティを備えていません。これは、IBCで相互接続するブロックチェーンのそれぞれのブロック承認は、それぞれのチェーンに任されているためです。そのため、Hubが停止してしまったとしても、それぞれのチェーンで動作しつづけることが可能です。

    一方のPolkadotでは、「Parachain」は「Relaychain」を親チェーンとして、同じセキュリティを共有しています(オプションとして独自のブロック承認を使うことはできますが、標準機能ではありません)。 そのため、チェーンごとにセキュリティ性能にばらつきが出ることはありません。

    したがって、アクシデンタルな状況下やスケーラビリティという点ではCosmosが、プロジェクトを迅速かつ安全に立ち上げられるという点においてはPolkadotが優れているといえるでしょう。

    しかし、Polkadotは当初、Ethereumのインターオペラビリティやスケーラビリティ(どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるか)を解決するためのソリューションとして開発されましたが、Ethereumが独自のソリューションを開発したため、Polkadotの存在意義が薄れてしまっているという指摘もあります。

    実際に、国内の暗号資産取引所Zaifでは、「流動性等の観点から、将来的に安定的なサービス提供が困難となる可能性があると判断したため」との理由から2024年12月にPolkadot(DOT)の取扱いを廃止すると発表しています。

    DOT(Polkadot)及びMBX(MARBLEX)取扱い廃止のお知らせ|Zaif

    ブロック生成時間の短縮などが予定されている大型アップデート「Polkadot 2.0」によって巻き返しを期待する声もありますが、将来性に暗雲が立ち込めていることは紛れもない事実でしょう。

    まとめ

    本記事では、ブロックチェーン同士を接続する新たな技術=「インターオペラビリティ」について解説してきました。

    これまでのブロックチェーンを活用したシステムは、目的に応じて個別最適で作られてきました。しかし、インターオペラビリティ技術が発展していくことで、これらの個々のシステムをつなげることが可能になり、ブロックチェーンは新たな社会インフラ技術になる可能性を秘めています。

    今後、ブロックチェーン間を横断していくプロジェクトや、仮想通貨のやり取りも増えていくことが予想されるため、インターオペラビリティの重要性もさらに増していくことでしょう。

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    【2025年最新】開発企業がブロックチェーンのプラットフォームを比較!基盤・種類ごとにメリット・デメリットを徹底解説!

    Ethereum、Ripple、GoQuorum、Hyperledger・・。一口にブロックチェーンといってもそのプラットフォームには、用途に合わせて数多くの種類があります。開発基盤として選ぶならどれがいいか?それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。

    ブロックチェーンのプラットフォームは用途に合わせて選ぼう

    出典:Unsplash

    実は多数あるブロックチェーンのプラットフォーム

    ブロックチェーンを活用したプロダクト・サービスの開発には、開発の実装基盤となるプラットフォームが不可欠です。一般にはあまり知られていませんが、ブロックチェーンのプラットフォームには非常に多くの種類があります。ざっと名前を列挙するだけでも、以下の通りです。

    • Bitcoin Core
    • Ethereum
    • Avalanche
    • Ripple
    • NEM
    • Polygon
    • Cosmos
    • GoQuorum
    • Hyperledger Fabric
    • Corda
    • Solana
    • Stellar
    • TRON
    • BSC
    • Waves
    • EOS  等々

    もちろん、これらの全ての名前や特徴を覚える必要はありません。しかし、代表的ないくつかのプラットフォームについては、その分類と最低限の特徴はおさえておくほうが、実際にブロックチェーンを利用したプロジェクトの推進、あるいは外注もスムーズになるでしょう。

    なぜ、プラットフォームを用途で比較するのか?

    ブロックチェーンのプラットフォームを分類する方法は様々にありますが、本記事では「用途に合わせた分類」をお勧めします。用途に合わせるというのは、たとえば単純な送金ならビットコイン、ゲームならイーサリアム、銀行間送金ならRippleやCordaを開発基盤とするのが好ましい、といった具合です。

    一般的に、用途別での分類方法には、「パーミッションタイプ(ネットワークの公開範囲)」「独自の仮想通貨の有無」「スマートコントラクト機能の有無」「トランザクション速度(tps)」などがあります。しかし、これらの分類方法では、分け方が大味すぎていまいち特徴を掴めない、開発時の構成次第で条件が変わりうる、といった限界があるため「結局よくわからない」という結果になってしまいます。

    また、色々と知識を手に入れたところで、結局のところは開発プロジェクトで達成したいゴール、つまり自社の課題に応じた開発基盤を選択するのがセオリーなので、骨折り損にもなってしまいかねません。こうした理由から、以下では代表的な10種類のプラットフォームについて、用途に合わせて簡単な比較をしていきます。

    代表的な10のブロックチェーンプラットフォーム

    数多く存在するブロックチェーン開発基盤のうち、本記事では代表的なプラットフォームとして、Ethereum、BSC、Polygon、NEM、Solana、Ripple、Corda、GoQuorum、Hyperledger Fabric、Bitcoin Coreの10種類を取り上げます。

    プラットフォーム名対象用途例
    Ethereum(イーサリアム)toC企業NFTなど
    BNB Chain(ビーエヌビーチェーン、旧BSC)toC企業DApps、NFTなど
    Polygon(ポリゴン)toC企業NFT、DAppsなど
    Symbol(シンボル)toC企業 ゲーム、DAppsなど
    Solana(ソラナ)toC企業ゲームなど
    Ripple(リップル)toC企業銀行間送金(特化)
    Corda(コルダ)toB企業銀行間送金、企業間プラットフォームなど
    GoQuorum(ゴークオラム /ゴークォーラム)toB企業企業間プラットフォームなど
    Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)toB企業企業間プラットフォームなど
    Bitcoin Core(ビットコインコア)個人個人間送金

    上表のように、10種類のプラットフォームを用途の観点から分類すると、大きく次の4つに分けることができます。

    1. toC企業向け:ゲームなどの開発に向いている
    2. toB企業向け:業界プラットフォームなどの開発に向いている
    3. 銀行向け:銀行間送金に特化している
    4. 個人向け:ちょっとした送金の手段として使われる

    例えば、あなたが製造業の会社で事業責任者をしており、ブランド戦略の一環で製品のトレーサビリティ(追跡可能性)を担保することで偽造品対策や競合製品との差別化を行いたいと考えているのであれば、toB企業向けプラットフォームであるCordaやGoQuorum、Hyperledger Fabricを開発基盤としたプロジェクトを推進していくのがお勧めです。あるいは、自社経済圏を構築するためにトークン発行を前提としたプラットフォームを構築したいのであれば、開発基盤はEthereumのほぼ一択でしょう。

    次項で詳しくみていくように、ブロックチェーンはその開発基盤によってターゲット層や情報秘匿性、搭載している機能に違いがあります。そのため、自身が推進するプロジェクトに向いているプラットフォームを把握し、その特性を理解しておくことは、開発者だけではなくビジネスサイドの担当者にとっても有益です。

    また、独自の仮想通貨を備えているブロックチェーンもあるため、その背景知識としてチェーンの技術的特徴を把握しておいて損はないでしょう。それでは、それぞれのプラットフォームについて順に見ていきましょう。

    ブロックチェーンプラットフォームごとの特徴・違い

    Ethereum(イーサリアム)

    出典:BTCC

    Ethereumは、2013年にロシアの若き天才Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)により構想されたプロジェクトで、ビットコインの設計思想を開発者向けに押し広げたプラットフォームです。Ethereumの主な特徴は次の通りです。

    • エンタープライズ向け(toC企業)
    • NFTの開発に用いられることが多い
    • 独自仮想通貨:ETH(イーサ)
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションレス型
    • 情報の秘匿性が低い

    Ethereumは、ビットコインを設計の土台としていることもあってか、パーミッションレス型、つまり不特定多数の参加を認めるネットワークであるため、情報の秘匿性を担保しづらく、企業の中でもゲーム開発などのtoC企業に採用されやすい点に特徴があります。

    また、特筆すべき点として、トークンの開発基盤として実質的に市場を独占していることがあげられます。これはトークンをリアルマネーと交換する取引所自体が、Ethereumの初期トークンであるERC20の規格に合わせてつくられたために、Ethereum以外での開発が困難になってしまっていることを背景としています。

    したがって、ERCトークンの規格を変えるだけで様々なデジタル上の資産に対して互換性を持たせられるというメリットがあります。現在もERCの規格は増え続けており、今後新たな規格が登場すれば、新たなサービスにもブロックチェーンを組み込める可能性があります。実際に、ERC20の規格で発行されたトークンは、誤送金すると再使用できないという仕様(=GOX、ゴックス)でした。これを解決するためにERC223という規格が誕生しました。

    2025年にも大型アップデート「Pectra(ペクトラ)」によって、既存のスマートコントラクトに追加の実装を行わずにEOA(外部所有アカウント)に様々な機能を導入可能になる仕組みや、バリデーターがステークできる最大量を32ETHから2,048ETHに増加させるアップデートが実施されました。

    このように、Ethereumは定期的なアップデートでユーザビリティが常に向上し続けており、初心者にもおすすめの開発基盤です。

    BNB Chain(ビーエヌビーチェーン、旧BSC)

    出典:BINANCE

    BNB Chainとは、世界最大の仮想通貨取引所取引所であるバイナンスが運営・管理する独自チェーンです。BSCの主な特徴は以下の通りです。

    • エンタープライズ向け(toC企業)
    • DApps(分散型アプリケーション)の開発に用いられることが多い
    • 独自仮想通貨:BNB(バイナンスコイン)
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションレス型
    • 高速かつ低コスト

    元々バイナンスでの取引にはBinance Chainというブロックチェーンが利用されていました。しかし、このチェーンはプログラム上の制約が多かったため、ブロックチェーンとしての柔軟性に課題を抱えていました。そんなバイナンスチェーンが抱える課題の解決策としてEthereumとの互換性を高めたBSCが開発・統合されたため、自由にDAppsを構築することができます

    また、BNB ChainはEthereum同様、スマートコントラクト機能も搭載しています。これにより、カスタマイズ性だけではなく、バイナンスチェーンの特徴であった高速の処理スピードも実現しており、ユーザーとプラットフォームの開発者の双方にとって大きなメリットを持つチェーンとなっています。

    さらに、BNB Chainの手数料はそのほかのチェーンに比べると割安になっています。これは、BNB Chainのコンセンサスアルゴリズムが、「PoSA(プルーフ・オブ・ステーク・オーソリティ)」という方式が用いられているためです。この方式のもとでは、承認の仕組みに高性能なコンピュータや大量の電力を要する計算処理は不要なため、手数料を抑えることができます。独自の仮想通貨であるBNB(バイナンスコイン)は執筆時点(2025年2月)で、時価総額6位にランクインしており、その安定性も人気の理由です。

    このような背景から、現在はBNB Chainがバイナンスのメインチェーンとして採用されています。

    Polygon(ポリゴン)

    出典:COINPOST

    Polygon(ポリゴン)は、イーサリアムが抱える「処理の遅延」や「手数料の高騰」といった問題の解決を目指してつくられたブロックチェーンです。2021年まではMaticNetworkという名前でサービス展開していました。

    • エンタープライズ向け(toC企業)
    • トークンやDAppsの開発に用いられることが多い
    • 独自仮想通貨:MATIC(マティック)
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションレス型
    • 高速かつ低コスト

    PolygonはEthereumのセカンドレイヤーとして開発されています。メインのブロックチェーンと並行して高速でブロックを生成し、Ethereumにリンクします。このシームレスな接続によって、Polygon自体が持つトランザクションの実行能力と、Ethereumが持つ豊富なDAppsへのアクセスを実現しています。

    また、同チェーンの開発を行うPolygon Labsは、「Polygon 2.0」への大型アップデートを発表しています。このアップデートでは、ゼロ知識証明を利用した処理コストの高いデータのオフチェーン処理を実現し、コストをさらに大きく削減できるとしています。なお、この「Polygon 2.0」では、独自の通貨も「MATIC」から「POL」へとアップグレードされ、発行上限が廃止されました。これによってPOLの新規発行が可能になり、コミュニティの拡大がさらに加速することが期待されます。

    2023年8月には、国内大手の仮想通貨取引所であるCoincheckでもPolygonの取り扱いを開始しており、国内でも近年注目されているブロックチェーンです。

    Solana(ソラナ)

    出典:Myforex

    Solanaは2017年にAnatoly Yakovenko氏によって考案され、2020年3月にローンチされたばかりの比較的新しいプラットフォームです。Ethereumと同じくパーミッションレス型、独自仮想通貨をもったtoC企業向けの開発基盤です。Solanaの主な特徴は、次の通りです。

    • エンタープライズ向け(toC企業)
    • ゲーム、DAApsの開発に用いられることが多い
    • 独自仮想通貨:SOL(ソル)
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションレス型
    • トランザクション速度(tps)が速い

    Solanaの最たる特徴は、トランザクション速度(tps)の速さです。例えば、ビットコインのトランザクション処理速度は6件/秒、イーサリアムは15件/秒ですが、Solanaの場合は50,000件以上/秒と圧倒的な数字を誇ります。また、Solanaの取引手数料は平均して0.00025ドル程度であり、取引の障壁の少なさでは群を抜いています。

    これらは、「PoH(プルーフ・オブ・ヒストリー)」というネットワークに参加しているコンピューター同士の同期を必要としない独自のコンセンサスアルゴリズムによって実現しています。PoHでは、ネットワークの通信状態に関係なく、ネットワーク全体として処理が進められるため、高速かつ低コストでの取引を可能にしています。

    こうした特徴や手数料の安さから「イーサリアム・キラー」とも呼ばれているSolanaですが、安定性に欠けるというデメリットもあります。度重なる稼働トラブルや支援元の大手仮想通貨取引所FTXが破綻するなどして、SOLは幾度も暴落を経験しています。

    新興のブロックチェーンには将来性がある一方で、その価値を一定に保つのは難しいという欠点があることも覚えておいた方が良いでしょう。

    Symbol(シンボル)

    出典:BITTIMES

    Symbolは2021年にローンチされたプラットフォームで、EthereumやPolygonと同じくパーミッションレス型、独自仮想通貨をもったtoC企業向けの開発基盤です。

    2021年に誕生したと聞くと、「まだ安定していないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、Symbolには前身となるNEM(ネム)と呼ばれるブロックチェーンがあり、NEMで定評のあったマルチシグというセキュリティシステムが引き継がれています。

    そのため、新興のブロックチェーンではありますが、実績と信頼のあるエコシステムとなっています(Symbolが誕生したあともNEMは存続し続けており、現在はSymbolのサブチェーンにする計画が進行中です)。Symbolの主な特徴は、次の通りです。

    • 個人やコミュニティ、企業などユーザーの属性に関係なく利用できる
    • ゲームや取引所、DAppsの開発など幅広い目的に用いられることが多い
    • 独自仮想通貨:XYM(ジム)
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションレス

    Symbolでは、コンセンサスアルゴリズムに「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」を改良した、「PoS+(プルーフ・オブ・ステーク・プラス)」が採用されています。PoS+では、XYMの保有量だけでなく、取引量や活動量も評価対象にしたスコアが自動的に算出され、それに応じてブロックの生成者が決まる仕組みが導入されています。そのため、XYMの保有量に関わらず、献身的(アクティブ)なユーザーを優遇するというある意味で公平なシステムとなっています。

    また、Symbolはパブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーン両方の機能が搭載されたハイブリッド型のチェーンです。そのため、プロジェクトのセキュリティ性に応じて、機能を使い分けることが可能になります。実際に、2022年にカタールで開催された「FIFAワールドカップ」のホテル建設にSymbolが採用されました。Symbolが導入されたのはホテル建設の工程管理プラットフォームや建造物を3次元で設計するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と呼ばれるツールです。

    セキュリティが高く法人向けのブロックチェーンであるからこそ、今後は他のプロジェクトでもSymbolが利用される可能性も十分に考えられるでしょう。

    Ripple(リップル)

    出典:COINPOST

    Rippleは、2012年から開始された金融決済・送金プラットフォームです。XRPという仮想通貨を発行しているため、投資対象として扱ったことがある方も多いかもしれませんね。Rippleの主な特徴は次の通りです。

    • エンタープライズ向け(銀行)
    • 銀行間取引に特化している
    • 独自仮想通貨:XRP(リップル)
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションド型
    • 送金が速く、手数料が安い
    • 秘匿性が低い

    Rippleは、正確にはブロックチェーン技術は使用されていません。しかし、「XRP Ledger」という専用の分散型台帳管理システムを使用しています。このシステムでは、リップル社が指定したメンバーのみが承認作業を行います。そのため、送金スピードに定評があり、銀行間送金に特化したプラットフォームとして採用されることがほとんどです。

    個人間送金のような頻度が少なく、かつもともとの手数料も大きくない取引であれば、のちに説明するBitcoin Coreで十分かもしれません。しかし、エンタープライズ、特に銀行のような膨大な頻度で多額の取引を行う企業にとっては、送金スピードは大きなメリットといえるでしょう。

    通常のデータベースとブロックチェーンの中間的な位置付けにあるRippleですが、クロスチェーンブリッジの新たな規格を開発中とのこと。今後ますますブロックチェーンとの関わりも密になっていくことが予想されるため、必ず押さえておいた方が良いプラットフォームといえるでしょう。

    ただし、2020年12月に米証券当局であるSEC(証券取引委員会)が、リップル社を相手に起こした裁判はいまだ係争中です。いまだにXRPの価格は激しく上下するため、安定的な運用を望む方はほかのプラットフォームを利用した方が良いでしょう。

    Corda(コルダ)

    出典:101 Blockchains

    Cordaは、2014年に設立されたソフトウェア企業である「R3」(R3CEV LLC)を中心とした「R3コンソーシアム」によって開発・推進されているブロックチェーンプラットフォームです。

    開発当初は、「取引におけるプライバシーの確保」という金融取引の要件を満たすための特化型プラットフォームとして誕生しましたが、その後は、金融領域に強みを持ちつつも他の領域にも使えるtoB企業向けプラットフォームとして利用されています。Cordaの主な特徴は次の通りです。

    • エンタープライズ向け(toB企業)
    • 銀行間取引に強みをもつが、他の領域にも使える
    • 独自仮想通貨:なし
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションド型
    • 秘匿性が高い

    Cordaは、銀行間取引に特化したRippleと、次に紹介するtoB企業向けのGoQuorumやHyperledger Fabricとの間の性質をもっています。

    まず、Rippleとの違いは、Rippleが自社の独自仮想通貨をもつパーミッションレス型のプラットフォームであるのに対して、Cordaは参加者の限定されたパーミッション型のプラットフォームである点です。この違いから、Rippleと比較して、Cordaは情報の秘匿性を高いレベルに保持できる点に特徴があるといえます。実際に、Cordaを運営しているR3コンソーシアムには、「バンク・オブ・アメリカ」や「みずほ銀行」などのメガバンクが名を連ねており、Cordaはこうした企業の要求する高いプライバシー要件をクリアしています。

    次にGoQuorumやHyperledger Fabricと比較すると、ユーザー企業のユースケースに対応した作りとなっています。これはスクラッチ開発となっていることや、Corda基盤上で作られたアプリ間のデータ連携に優れている(インターオペラビリティが高い)ことが理由です。また、開発言語にJava / Kotlin(Javaをもっと簡潔にした言語)という扱える人口の多い言語を採用しているため、開発者を確保しやすいことも特徴の一つです。

    GoQuorum(ゴークオラム / ゴークォーラム)

    出典:BITTIMES

    GoQuorumは、2016年にJ.P. Morganによって開発されたオープンソースソフトウェアです。toC企業向けのプラットフォームであるEthereumをtoB企業向けに改変したもので、基本的にはEthereumと同様の特徴を持ちます。GoQuorumの主な特徴は次の通りです。

    • エンタープライズ向け(toB企業)
    • 企業間プラットフォームに用いられる
    • 独自仮想通貨:なし
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションド型
    • 秘匿性が高い
    • 95%はEthereumと同じ

    GoQuorumがEthereumと異なる点は、「情報の秘匿性」と「スループット(単位時間あたりの処理能力)」です。EthereumはもともとBitcoinを開発者向けに展開したパーミッションレス型のプラットフォームなので、ネットワークへの参加者が限定されておらず、プライバシー要件を高く保つことができません。また、上述した通り、トランザクション処理速度(tps)も数百程度であり、企業間取引に求められる速度には達していません。

    GoQuorumでは、Ethereumの特徴を基本的には維持しつつ、 企業向けに機能がブラッシュアップされているため、プライベートなトランザクションに向いています。ビジネスプロセスや顧客データの機密性を保ったままブロックチェーン上で処理できるため、企業が求めるセキュリティとコンプライアンスの要件に対応しやすくなります。ただし、プライベートトランザクションは、取引があったこと自体はコンソーシアム内の全員が確認できるため、取引の存在自体を秘匿したいケースには向いていません。

    Ethereumをベースにしているため、Ethereumエコシステムの知識やスキルが必要になってしまいますが、その分、機能性や拡張性においては優れたパフォーマンスを発揮するフレームワークとなっています。

    Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)

    出典:Zorro Sign

    Hyperledger Fabricは、2015年12月にLinux Foundationによって開始されたブロックチェーンプラットフォームです。より厳密に言えば、複数のフレームワークやツールなどから構成されるプロジェクトである「Hyperledger」のうち、最もtoB企業で利用されているフレームワークが「Hyperledge(プロジェクトの中のフレームワークである) Fabric」です。Hyperledger Fabricの主な特徴は次の通りです。

    • エンタープライズ向け(toB企業)
    • 企業間プラットフォームに用いられる
    • 独自仮想通貨:なし
    • スマートコントラクト機能:あり
    • パーミッションド型
    • 秘匿性が高い

    基本的な特徴としては、GoQuorumと同じと考えて問題ありません。主な違いとしては、Hyperledger FabricがIBM社のエンジニアによって最初からtoB企業向けに特化してつくられたプラットフォームであるために、GoQuorumよりもさらにエンタープライズ要素が強いことです。そのため、新規参入企業が開発をスタートするための環境(フォーラムやドキュメントなど)が整っており、スムーズにプロダクト開発へ着手できます。実際に、Hyperledger Fabricは、IBM社の牽引する各種の業界プラットフォーム開発の基盤として用いられています。

    なお、これはあまりインターネット上には出回らない情報ですが、大手企業が非金融領域でエンタープライズ向けのシステムを構築する際、かなりの割合で検討されるのが、このHyperledger Fabricと前述のGoQuorumです。取引手数料という意味合いでのガス代は発生しない(計算リソースとして「gas」の概念は存在)ため、まずはPoCでプロジェクトをスタートしたい場合にもうってつけの基盤といえるでしょう。

    Bitcoin Core(ビットコインコア)

    出典:crypto.news

    最後に、Bitcoin Coreについて説明します。Bitcoin Coreは言わずもがな、仮想通貨やブロックチェーン技術の先駆けであるBitcoinの開発基盤となるプラットフォームです。Bitcoin Coreの主な特徴は次の通りです。

    • 個人向け
    • 開発基盤としてはほとんど用いられない
    • 独自仮想通貨:BTC(ビットコイン)
    • スマートコントラクト機能:なし
    • パーミッションレス型
    • 秘匿性が低い
    • トランザクション処理速度が遅い

    他のプラットフォームが、何らかの用途に合わせた開発基盤として構築されたのに対して、Bitcoin Coreは、仮想通貨としてのビットコインを世に送り出すために「サトシ・ナカモト」によって構築されたために、エンタープライズ向けのブロックチェーンプラットフォームとしては機能しません。また、スマートコントラクトも、Ethereumの生みの親であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)によって生み出されたものであるため、Bitcoin Coreには機能が搭載されていません。

    さらに、「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」と呼ばれるコンセンサス・アルゴリズムを採用し、フルノード形式(全てのトランザクションをダウンロードし続ける)であることから、トランザクションも7tpsと非常に遅く、企業間の送金などにも向いていません

    こうしたことから、Bitcoin Coreが開発基盤として用いられることは滅多になく、その用途は、ビットコインそのものの利用や、個人間送金などに限られています

    まとめ

    今回はそれぞれの開発基盤の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。ブロックチェーンには様々な種類があり、それぞれに向き不向きの用途があることがお分りいただけたでしょうか。

    とはいえ、まだこのコラム内で語りきれない特徴や実際の現場での使用感などにも違いがあり、日々新しいプラットフォームが開発されていることも事実です。自社システムにブロックチェーンを導入する際には専門的なアドバイスを受けると良いでしょう。

    トレードログ株式会社は、ブロックチェーン開発・導入支援のエキスパートです。ブロックチェーン開発で課題をお持ちの企業様やDX化について何から効率化していけば良いのかお悩みの企業様は、ぜひ弊社にご相談ください。貴社に最適なソリューションをご提案いたします。

    【業界動向】物流×ブロックチェーンは何を実現する?最新の活用事例も!

    ブロックチェーンは、その世界市場規模が2030年までに4,694億9,000万ドルに成長すると予測されている有望技術です。とくに物流業界とは相性がよく、在庫管理や偽造品排除などさまざまな側面から注目を集めています。IBMなどが取り組んでいる事例と共に最新の物流DX動向に迫ります。

    いま、「物流×ブロックチェーン」が熱い。

    2025年現在、物流の一連の流れを最適化するという「ロジスティクス」とブロックチェーンを掛け合わせたビジネスが、世界的な盛り上がりを見せています。

    今まで話題になることが多かったブロックチェーンの用途は、ビットコインなどの仮想通貨、NFTなどの独自トークンなどでしょう。しかし、近年ではサプライチェーンマネジメントの観点から国内外の企業においてブロックチェーンの導入が浸透しつつあります。

    MarketsandMarkets社の発表したレポートによると、世界のサプライチェーンマネジメント (SCM) の市場規模は、2020年の約2億5300万ドルから2026年32億7200万ドルまで約53.2%のCAGR(年平均成長率)で成長すると予測されています。

    Blockchain Supply Chain Market Growth, Size, Share, Trends, Revenue Forecast & Opportunities | MarketsandMarkets™

    このことからも近い将来、物流とブロックチェーンは切っても切れない関係になるでしょう。では、ブロックチェーンが実現するサプライチェーンマネジメントとは一体なんなのか、そもそもブロックチェーンとはどういう技術なのかについて軽くおさらいしましょう。

    ブロックチェーンとは?

    出典:shutterstock

    ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

    ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

    取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種です。その中でもとくにデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

    ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っていました。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

    これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

    また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

    ブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値ナンスと呼ばれる関数によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

    ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

    新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています。

    また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出す行為を「マイニング」といい、最初にマイニングを成功させた人に新しいブロックを追加する権利が与えられます

    ブロックチェーンではマイニングなどを通じてノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持つことで、データベースのような管理者を介在せずに、データが共有できる仕組みを構築しています。参加者の立場がフラット(=非中央集権型)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

    こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

    データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

    詳しくは以下の記事でも解説しています。

    現代ビジネスに欠かせないサプライチェーンマネジメントとは?

    サプライチェーンマネジメント=生産フローの最適化

    サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは
    出典:ITトレンド

    サプライチェーンマネジメントとは、その名のとおり、原材料の調達から製造、販売までの生産プロセス(サプライチェーン)を管理することです。在庫管理、出荷などの各段階でデータを取得・共有することで、各工程における無駄を省き、従来埋もれていたデータを有効活用することで、新たなビジネス戦略を構築することも可能になります。

    サプライチェーンマネジメントの実現によって、具体的には以下のようなメリットが得られるでしょう。

    • 配送や出荷における時間や労力の無駄を減らせる
    • 原材料を必要な分だけ調達できるようになる
    • プロセス全体を可視化し、透明性を高めることができる
    • 自動認証により人的ミスを排除できる
    • 温度管理が必要な商品を最適に管理・配送できる
    • 機械的に在庫要件を予測できる

    なぜサプライチェーンを管理する必要があるの?

    現代のマーケットではネット上で商品の取引が行われ、消費者のもとに届くまでに複数の業者が携わることが一般的になっています。生産すれば生産した分だけ売れるという時代は過去の話となり、必要な商品を必要なだけ生産することが重要です。そんな多くのモノであふれる時代においてグローバルな競争に打ち勝つためには、サプライチェーン全体でリソースや情報を共有し、欠品や過剰在庫を回避する必要があります。

    また、消費者がインターネットやモバイルで商品を見つけると、いますぐに入手したいと考えるでしょう。この消費者のニーズに応えるには、常に在庫を確保し、スピーディーな配送環境を整える必要があります。一方で、企業や部門ごとに独自に生産量や在庫を管理してしまうと、余剰在庫が発生して機会損失が増加する可能性があります。したがって、ユーザーの要望に合わせた効率的な生産と供給を実現するためには、サプライチェーンの管理が必要不可欠なのです。

    ブロックチェーンと物流課題の相性の良さ

    ブロックチェーン技術の特徴である「非中央集権性」や、サプライチェーンを取り巻く現状を踏まえると、なぜ今「物流×ブロックチェーン」が注目されているのでしょうか。その理由を一言でいえば、「物流業界のニーズとブロックチェーン開発会社のシーズが見事に一致したから」と言えるでしょう。

    物流業界のニーズ

    物流業界には長年解決されていない課題が存在していました。特に、「業界全体の取引をデジタル化しようにも、プレーヤーが多すぎて中央のデータベースを管理する主体が決まらない」という点が大きな障害となっていました。各企業が独自に情報を管理し、共有することが難しいため、効率的な取引が阻まれていたのです。

    これに対し、ブロックチェーンは「非中央集権性」を特徴としており、中央の管理者がいなくてもシステム全体が安全に運営できる仕組みを提供します。具体的には、取引データの共有が透明で改ざん不可能な形で行われ、複数のプレーヤーが協力し合うことで利害の衝突を避けながら、より効率的に情報を交換できます。物流業界が抱えていた課題を解決するために、まさに最適な技術がブロックチェーンだったのです。

    ブロックチェーン開発会社のシーズ

    一方、ブロックチェーンの開発会社にとっては、技術的な進展が金融分野を超えてさまざまな領域に応用可能であることが明らかになり、次なるビジネス機会を求めていました。特に、暗号資産(仮想通貨)に依存しない新たな適用領域を模索していたのです。開発会社がシーズとして注目した条件は、以下の通りです。

    • データベース共有によるコスト削減メリット:物流業界はプレーヤーが多いため、非効率的な取引が行われており、ブロックチェーンによるコスト削減の可能性が大きい。
    • 非中央集権性:中央の管理者が不在でもシステムが円滑に機能する環境が求められるため、「GAFAのような中央集権的な存在がいない」業界が理想的。
    • 優れたトレーサビリティ(データの追跡可能性):物流業界にはしばしば情報の不正確さや不透明さが問題となっており、ブロックチェーンの優れたトレーサビリティ機能が重要視されていました。

    これらの条件に合致する業界として、まず不動産や医療分野が注目されました。不動産業界では、物件の所有権や取引履歴の管理が複雑で、中央集権的な管理が必要です。ブロックチェーンを利用することで、物件情報を透明かつ安全に管理でき、取引の効率化とコスト削減を実現します。医療分野でも、患者情報や治療履歴の管理の透明化が求められ、ブロックチェーンによる情報共有が診療の質向上とコスト削減に寄与することが期待されています。

    特定の業界でブロックチェーンのビジネス導入が進むと、今度はより多くのプレイヤーが絡むサプライチェーンの透明化へとその舞台を移し、物流業界は適用領域の一つとして検討が進みました。物流業界では、複数の企業が関与するため、取引の透明性や追跡可能性が重要です。ブロックチェーン技術を導入することで、商品の流れや品質、運送状況などの情報を一元的に管理でき、取引の信頼性を高めるとともに、サプライチェーン全体のコスト削減が実現可能となります。

    このように、複数のプレイヤーが関わる物流業界は、データ共有やトレーサビリティの向上、コスト削減が求められており、ブロックチェーンの特性がそのニーズにうまく応える形で注目されているのです。

    物流におけるブロックチェーンの適用シーン

    ここまではブロックチェーンとサプライチェーンマネジメントの概要について見てきました。サプライチェーンマネジメントはブロックチェーンがなくとも実現できる概念ですが、ブロックチェーンを導入することで可能になることも数多くあります。ここからは、ブロックチェーンによるサプライチェーンの管理についてご紹介します。

    在庫管理

    出典:Pixabay

    前述のようにブロックチェーンは、取引の正当性を中央サーバーではなく、ネットワークの全参加者が共有情報として扱います。そのため、データの改ざんが非常に困難であるうえ、情報の迅速な共有と作業効率化が可能です。

    従来の在庫管理では、それぞれの企業が独自のデータベースでストック管理をしていたため、企業間の情報共有に時間的な問題や、正確性の問題がつきものでした。

    ブロックチェーンを用いた在庫管理では、QRコードやICタグ(RFID)とリーダーを使って位置情報をリアルタイムで記録します。これにより、在庫情報が正確に把握でき、大規模な棚卸作業が不要になります。

    ネットワークの参加者全員で情報を共有するため、情報の共有に伴う煩雑な事務作業が不要になります。メールやチャットを介することなく、プラットフォーム上でスムーズに情報を得られ、多くの業務が効率化するでしょう。

    実際に、ウォルマート、ネスレ、ユニリーバなどの有名企業では、在庫の追跡にブロックチェーンを自社のビジネスに導入しています。

    国際配送

    出典:Pixabay

    国際配送業界の情報システムは、デジタル社会となったいま現在も書類ベースで作業を行っています。参照する電子データもリアルタイムに更新されるものではなく、数十年前のEDI(インターネットや電話回線を通じたデータ交換)が現役で使用されているのです。

    こういった状況から、国をまたいだ関係各社同士での連携においては、絶えずオペレーションエラーのリスクを抱えながら、ヒトによる非効率な突合作業が繰り返されることで、必要以上の膨大なコストがかかってしまっています。さらに、国際荷物の配送には原産地証明書が必要になるケースや、現地配送業者による不正行為などが問題になっており、この傾向は産業のグローバル化に伴ってますます顕著になっています。

    こういった現象を踏まえて、現在の物流プロセスを簡素化しながら各商品を追跡できるというブロックチェーンの利点を生かしている企業もあります。バラバラに行われていた国際配送を一元管理することで、配達時間と不正行為を検出し、収益性・安全性の向上が見込めるのです。

    決済

    出典:Pixabay

    ブロックチェーンは、セキュリティと透明性を確保しながら、国境を越えた支払いを簡素化できます。この仕組みにはスマートコントラクトという技術が用いられています。スマートコントラクトは、契約の条件を自動的に強制する自動実行契約です。買い手と売り手の双方の取引条件が満たされた場合にのみ、自動的に支払いが行われるように指定できます。

    このスマートコントラクトの仕組みは自動販売機を例に説明されることが多いです。自動販売機では、顧客がお金を投入し、商品を選択すると、条件(投入額が商品の価格を上回る)が満たされた場合、自動的に契約が成立し、商品が提供されます。逆に条件が満たされていない場合、契約は成立せず、商品は提供されません。

    このように、特定の条件をプログラムに組み込んでおき、それが満たされ際に契約が自動的に実行される仕組みを活用することで、特定のプロセスを自動化して仲介業者のコストを排除することが可能になるでしょう。

    米国のペイメント事業大手Visa は、ブロックチェーンとスマートコントラクトに基づいて、請求と支払いの管理に役立つ独自の決済サービスを展開しています。

    偽造品排除

    出典:Pixabay

    偽造品は物流業界にとって最大の脅威の一つであり、ICC(国際商業会議所)およびINTA(国際商標協会)の報告によると、偽造品が世界経済に与える損失は令和4年には4兆6,800億ドル(約515兆円)に達するともいわれています。これは驚異的な額であり、偽造品問題がいかに深刻で広範囲にわたるものであるかを物語っています。しかしながら、これまで偽造品問題が解決できなかった理由は、既存の物流システムが「トレーサビリティ」、すなわち商品の追跡可能性を完全に高めることができなかったためです。

    物流業界では、商品がどのように、そして誰が関与したのかを正確に追跡することが極めて重要です。従来のシステムでは、商品に関する情報が複数のステークホルダー間で分散しており、その透明性と正確性が欠如していました。そのため、偽造品が正規品として流通しやすく、取り締まりが非常に困難でした。

    しかし、ブロックチェーン技術はこの課題に対して画期的な解決策を提供します。ブロックチェーンは、全ての取引データを時系列順に格納し、改ざん不可能な形で保存することができます。これにより、商品の履歴や取引経路が透明化され、「いつ」「どこで」「誰が」関与したのかが正確に把握できるようになります。分散型のデータ管理システムにより、情報は一元管理されることなく複数のノードに分散され、信頼性とセキュリティが強化されます。

    このように、ブロックチェーン技術を活用することで、物流業界におけるトレーサビリティが飛躍的に向上し、商品の真贋を確実に確認できるようになります。これにより、偽造品が市場に流通するリスクを大幅に低減させることができ、消費者や企業の信頼を回復するだけでなく、物流業界全体の効率化と透明性向上にもつながります。偽造品問題への効果的な対策として、ブロックチェーンは今後、物流業界における重要な技術となるでしょう。

    物流業界におけるブロックチェーンの活用事例

    日本IBM×HBC

    出典:日本IBM 公式サイト

    日本IBMは、2023年4月から医薬品データプラットフォームの運用検証を開始しています。このプラットフォームはブロックチェーン技術を使用して、医薬品の流通経路と在庫を可視化するためのもので、製薬企業、医療機関、医薬品物流企業などが参加します。プラットフォームはHyperledger Fabricというブロックチェーン基盤を使用し、医薬品の品質保持と偽造品の防止を強化しています。

    このプロジェクトは、主要製薬企業も加入するコンソーシアム「ヘルスケア・ブロックチェーン・コラボレーション(HBC)」において検討されてきたもので、参加企業はプラットフォーム上で医療機関の在庫情報を管理し、品質管理や事業継続計画に関する情報を共有します。これにより、医薬品の安全性とトレーサビリティーが向上することを目指しています。

    医薬品のトレーサビリティーは、品質保持や偽造品の防止などの観点から重要であり、欧米では既に法制化されています。たとえばアメリカでは、2000年代から州単位で医薬品のトレーサビリティに関する法律が制定されていました。これを全国基準にして、州を越えた医薬品のトレーサビリティを確立しようというのが、2013年制定の「医薬品サプライチェーン安全保障法」です。

    日本では、国家レベルでトレーサビリティの実現に取り組まれているのは牛と米の食品トレーサビリティです。これらが法制化されたのは2000年代初頭に起きたBSE(狂牛病)問題と2008年に起きた事故米(汚染米)不正転売問題という事件が表層化したことがきっかけです。

    責任追及の観点から受動的な動きによって制定された背景からもわかるように、日本では国家レベルで産業へ厳しい規制をかけるのをためらう風潮があるため、こうした分野では民間企業による主導が効果的かもしれません。日本の医薬品の安全性と相互運用性を世界基準に引き上げるうえで、今後も注目せずにはいられないプロジェクトです。

    日本通運

    「偽造品排除」の文脈でうまくビジネス利用しようとしているのが、日通(日本通運)です。

    2020年3月9日の日本経済新聞の記事によると、「日本通運はアクセンチュアやインテル日本法人と組み、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用した輸送網の整備に乗り出」し、「倉庫の整備などを含め最大1千億円を投資する」ことで、「偽造医薬品の混入を防ぐための品質管理に生かし、将来は消費財全般に応用する」ことを発表しています(「」内は同記事からの引用)。

    上図のように、ブロックチェーンを利用した偽装品排除の取り組みでは、メーカーから小売に至るまで、川上から川下のデータを同一クラウドデータベース上にすべて紐づけていくことで、ある商品がいつ、どこで、誰によって、どんな状態で管理されているかを可視化することができるようになります。

    これにより、商品のトレーサビリティが高まり、産地やハラールの認証、違法コピーなど様々な偽造品問題を解消できるのではないか、と期待されています。

    トレードワルツ

    国際物流におけるブロックチェーン導入の代表例ともいえるのが株式会社トレードワルツ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小島 裕久)の「TradeWaltz」です。同サービスはブロックチェーンを基盤に、貿易手続きの完全電子化を目指す貿易情報連携プラットフォームです。

    現在の国際物流システムにおいて、荷主、保険会社、物流会社、税関といった貿易の関係者は各社で独自のシステムを持っていますが、これらのシステムとデータは相互に連携できていないケースがあります。そうした場合、煩雑な書類手続きが必要で、紙ベースで送受信された情報を各社が手動で転記しなければいけません。書類エラーにより手戻りも頻発します。

    このような貿易取引の課題を解決するのが、貿易情報連携プラットフォームTradeWaltzです。

    TradeWaltzでは、各企業のシステムと接続することで、関連書類の電子的な送受信と保管をアプリ上で行うことができ、業務の効率化を図っています。情報の正確性に関しては、ブロックチェーン技術を用いてドキュメントの原本を保証して改ざんを防ぐため、データを安全かつ信頼性の高いものとして扱うことができます。

    日本と世界のアナログな貿易手続きの完全電子化・業務効率化を実現するこのソリューションは、名だたる企業からの注目を集めています。2020年11月に事業を開始すると、NTTデータや三菱商事、丸紅といった大企業から資金を調達しており、2023年5月には新たに住友商事が出資に加わり、累計の資金調達額が56.5億円に達しました。

    トレードワルツが16.5億円を追加調達、累計56.5億円に──住友商事が新たに参画 | CoinDesk JAPAN

    タイ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドが持つ4カ国の貿易プラットフォームと、同時にブロックチェーン上でAPI接続する世界初の取り組みに成功し、今後は日本・インド太平洋地域間の貿易DXを推進するとのこと。「ブロックチェーン×物流」のリーダー的存在として活躍の場を大きく広げています。

    まとめ

    この記事では物流業界におけるサプライチェーンマネジメントの重要性と、ブロックチェーンの導入について詳しく見てきました。

    実際の事例からも、多数のステークホルダーが存在し、サプライチェーンが複雑化する現代の物流システムでは、ブロックチェーンのような安全かつ分散的な技術が大きな期待を背負っていることがわかります。

    ブロックチェーンを在庫管理などに活用することで、正確な在庫情報の確保や情報の共有がスムーズになり、効率化が図れます。しかし、導入には技術的な課題やセキュリティの懸念などもあるため、慎重な計画と実装が必要です。将来のブロックチェーン化に備えるためにも、一度自社のビジネスを見直してみてはいかがでしょうか。

    トレードログ株式会社は、ブロックチェーン開発のエキスパートです。食品業界や製造業、物流業界などさまざまな業界に精通し、一社一社のビジネスモデルに最適化されたブロックチェーン開発を行います。

    少しでも自社ビジネスに課題をお持ちでしたらぜひトレードログ株式会社にご相談ください。貴社に最適なソリューションをご提案いたします。

    P2P電力取引とは?ブロックチェーン×電力が実現する個人間の電力取引を解説!

    近年、エネルギー分野におけるイノベーションが急速に進展しており、その中でも特に注目されているのが「P2P(Peer-to-Peer)電力取引」です。

    P2P電力取引は、個人や小規模事業者間で電力を直接取引する画期的な仕組みですが、実はブロックチェーン技術が重要な役割を果たしているのはご存じでしょうか?

    そこで今回はブロックチェーンが実現する次世代の電力ビジネス、P2P電力取引の現状についてまとめました。

      非金融領域での活用が期待されるブロックチェーン技術

      2008年に生まれたブロックチェーン技術は、これまで主に、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)を中心に、金融事業を革新するフィンテックとして注目を集めてきました。

      しかし、近年では、ブロックチェーンのもつ技術的応用可能性から、非金融事業、例えば製造・物流・小売業界でのSCM(サプライチェーン・マネジメント)、医療業界での診療データ管理、不動産業界での国際オンライン取引、アートや選挙に至るまで、様々な領域での多様な活用が進んでいます。

      そのなかでも、特に技術開発が盛んで、実証実験や事業化が進んでいるのが電力分野です。

      電力分野では、電力会社を介さない電力の個人間取引(P2P 取引) や、再生可能エネルギー(再エネ)の環境価値の取引にブロックチェーンが活用可能だと考えられており、大企業のみならず、スタートアップ企業や電力会社を中心に国内外で開発が進められています。

      P2P電力取引とは?

      P2P電力取引は、通信技術の一つである「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)通信」と、2016年4月から始まった電力小売全面自由化を背景とした「電力取引」を組み合わせた造語です。

      一言でいえば、「電力会社を通さず、太陽光発電などの発電設備をもつ一般家庭や事業体同士で、直接、余剰電力の売買を行うこと」を指します。

      それぞれ、簡単に説明します。

      P2P通信とは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、従来のデータベースの「クライアント・サーバー型」と対比されます。

      システムの中央管理者である第三者のサーバーを必要とするクライアント・サーバー型とは異なり、P2P通信では媒体間で直接やり取りを行うことに特徴があります

      他方、日本国での電力取引は、従来、電力会社が各家庭や会社とそれぞれに直接取引を行い、電力会社からの一方的な電力供給が行われてきました。

      しかし、上述した電力小売全面自由化を背景に、発電能力をもっていれば、電力会社ではなくとも電気を自由に売ることが可能になりました。

      したがって、P2P電力取引ではまさにP2P通信においてデータのやり取りをコンピュータ間で直接行えるように、余剰電力をもつ家庭や事業体間で、直接、自由に売買を行うことができるのです。

      P2P電力取引のメリット

      P2P電力取引には、次のようなメリットがあります。

      • 発電需要家(電力の売り手)のメリット:余剰電力を小さい単位から簡単に売ることができ、太陽光発電等の資産活用方法が広がる
      • 受電需要家(電力の買い手)のメリット:需要家同士のマッチング最適化が進むことで、従来よりも電気料金を抑えることができる
      • 需要家全体のメリット:売買形式を柔軟に変更でき、目的に適した取引ができる(ダイナミック・プライシングの実現)

      従来の電力取引では、電力会社や仲介の会社など、市場の中央管理者が必要でした。

      中央管理者との取引では、取引内容を個別に最適化することができず柔軟性に欠くばかりか、システム全体の運用コストが大きくかかってしまいます。

      これに対して、P2P電力取引では、多数のネットワーク参加者同士で柔軟に取引を行うことが可能になるため、取引コストを低減させることができると期待されています。

      また、P2Pによる電力取引は、いままで埋没していた余剰電力が市場価格で売買可能になることを意味しています。したがって、発電需要家によるエネルギー供給がより主体的に行われ、再エネ活用が活性化されることで、環境への影響が低減されることが期待されます。

      さらに市区町村単位で見ても、P2Pによる地産地消のエコシステムが確立すれば、地域コミュニティ内で持続可能なエネルギー生産と消費が促進されます。これにより、大手電力会社のような大規模なエネルギーインフラからの脱依存が可能になり、電力エネルギーを安定して供給することができるでしょう。

      とはいえ、もし自宅で太陽光発電を行って余剰電力を貯めていたとしても、その電力を「いつ」「誰に」「どうやって」売ればよいかは、私たちには見当もつきません。また、個人間の取引で適正な価格を調整することも非常に困難でしょう。

      そこで、近年、各社が取り組んでいるのが、P2P電力取引を簡単に行えるようなアルゴリズムを搭載したプラットフォーム構築です。

      出典:DATA INSIGHT

      そして、このプラットフォームの基盤技術として活用されているのがブロックチェーンなのです。では、ブロックチェーンとはそもそもどのような技術なのでしょうか?

      ブロックチェーンとは?

      ブロックチェーン=正確な取引履歴を維持しようとする次世代データベース

      出典:shutterstock

      ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

      ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

      取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種です。その中でもとくにデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

      ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っています。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

      これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

      また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

      ブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値と呼ばれる関数によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

      ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

      新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています

      また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。

      コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出します。この行為を「マイニング」といい、最初に正しいナンスを発見したマイナー(マイニングをする人)に新しいブロックを追加する権利が与えられます。ブロックチェーンではデータベースのような管理者を持たない代わりに、ノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持っています。

      このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

      こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

      データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

      詳しくは以下の記事でも解説しています。

      なぜブロックチェーンがP2P電力取引に活用されるのか?

      電力業界の変革が加速するなか、主に海外を中心に従来の中央集権的なシステムから、発電者と消費者が直接取引を行う分散型システム、すなわちブロックチェーンを基盤としたシステムへの移行が検討されています。

      従来のデータベースシステムでは、電力会社が取引データを一元管理することで信頼性や透明性に問題が生じていました。単一の中央データベースは攻撃や障害に対して脆弱であり、データの改ざんや不正アクセスのリスクが高かったためです。また、取引内容や経路が非公開であるため、参加者が取引プロセスを理解するのが難しかったことでしょう。

      一方、ブロックチェーンは分散型台帳を活用することで信頼性と透明性を向上させます。取引データは分散して保存され、改ざんや不正アクセスが極めて困難になります。誰もが取引履歴を公開されている台帳で確認できるため、取引の透明性が向上し、電力会社間、時には国家間での信頼性の担保も可能です。

      さらに、ブロックチェーンはスマートコントラクトを活用することで取引処理を自動化し、効率性を向上させます。取引条件をプログラム可能にすることで取引プロセスを効率化し、手作業によるエラーやトラブルを限りなくゼロに近づけられるでしょう。

      セキュリティ面でも、ブロックチェーンは秘密鍵・公開鍵を用いた高度な暗号化技術と分散型台帳技術を組み合わせることで、データの安全性を確保します。取引データは暗号化され、ネットワーク上の複数のノードに分散して保存されるため、セキュリティが強化されます。

      このように、従来のデータベースシステムでは解決困難だった信頼性、透明性、効率性、セキュリティの問題に対し、ブロックチェーン技術は効果的な解決策を提供します。電力業界においても、その未来をより持続可能で透明性の高いものに変える可能性を秘めているとして、P2P電力取引へのブロックチェーン活用が進んでいるという訳です。

      電力分野のブロックチェーン技術開発に乗り出す大手各社

      トヨタ自動車×東京大学×TRENDの取り組み

      2020年11月に、トヨタ自動車株式会社(未来創生センター)と東京大学、TRENDE株式会社の共同研究結果が発表されました。

      同研究では、2019年6月17日から2020年8月31日までの間、「ブロックチェーンを活用し電力網につながる住宅や事業所、電動車間での電力取引を自律的に可能とする次世代電力取引システム(P2P電力取引)の実証実験を」行った結果、「実証実験に参加した一般家庭(含、電動車)の電気料金を約9%低減」、「電動車の走行利用電力の43%を再エネとし、CO2排出量を38%削減」することに成功しています。

      公表されている共同実証実験のテーマ・概要・結果は次の通りです。

      <テーマ>

      • 家庭や事業所、電動車(PHV)がアクセス可能な、需給状況で価格が変動する電力取引市場
      • 市場で取引される電力における発電源の特定と、発電から消費までのトラッキングを可能とするシステム
      • 人工知能(AI)を活用し、電力消費や太陽光パネルの発電量予測等に応じて電力取引所に電力の買い注文・売り注文を出す、電力取引エージェント

      <概要>

      実証期間 2019年6月17日〜2020年8月31日
      実施場所 トヨタの東富士研究所と周辺エリア
      実証に参加したモニター 一般家庭
      20軒電力消費者(2タイプ)
      ①PHV無し:6軒
      ②PHV有り:6軒

      プロシューマー(4タイプ)
      ①太陽光パネルのみ:2軒
      ②太陽光パネル+蓄電池:3軒
      ③太陽光パネル+PHV:2軒
      ④太陽光パネル+蓄電池+PHV:1軒

      事業所(太陽光パネル+PHVチャージャー)

      電力価格 需給量に応じた変動価格
      各社役割 トヨタ
      車両用電力取引エージェントの開発

      東京大学
      電力取引所の構築
      事業所用電力取引エージェントの開発

      TRENDE
      家庭用電力取引エージェントの開発

      <結果>

      • 実証実験に参加した一般家庭(含、電動車)の電気料金を約9%低減
      • 電動車の走行利用電力の43%を再エネ化、CO2排出量を38%削減 等
      出典:トヨタ自動車 未来創生センター

      また、2023年6月には、TRENDE株式会社が伊藤忠商事株式会社の連結子会社となることが発表されました。

      伊藤忠商事株式会社は、以前より「蓄電池を核とする分散型電源プラットフォームの構築」や「ブロックチェーンによるトレーサビリティシステムの実現」など双方の分野において積極的な技術検証を行っていました。

      今後は、分散型電源・蓄電池・エネルギーマネジメントといった複数の事業基盤に対してTRENDE株式会社の技術を連携させることで、「コミュニティ内での需給バランス最適化」「電力の地産地消」を目指すということです。

      P2P電力取引の技術開発に取り組むTRENDE株式会社の連結子会社化について

      KDDIグループの取り組み

      2020年12月04日、KDDIグループのエナリスとauフィナンシャルホールディングス、auペイメント、ディーカレットの4社は、電力および環境価値のP2P取引事業成立要因を検証する実証事業を共同で開始したと発表しました。

      出典:ENERES

      公表されている同事業の背景と概要は次の通りです。

      <背景>

      • 自社の新電力向けサービス(需給管理オペレーション支援等)基盤を用い、ブロックチェーンを活用して電力のP2P取引をはじめ、多くの新電力が新たな電力ビジネスに挑戦できるプラットフォーム構築を目指している
      • スマホ・セントリックな決済・金融体験を提供する「スマートマネー構想」の実現に向けて、フィンテックを活用した新サービスの研究を進めている

      <概要>

      実施期間 2020年11月20日~2021年2月末
      特徴 エナリスが卒FITプロシューマーから環境価値が含まれた電力を調達し、真に再エネ価値を求めるRE100企業へ電力とともに環境価値を供給

      auペイメントが、実証事業用の環境価値トークンを発行し、発行されたトークンをエナリスがRE100企業に配布

      RE100企業は卒FITプロシューマーから譲渡された再生可能エネルギーの環境価値に対する謝礼として、環境価値トークンを譲渡

      実証事業終了後、卒FITプロシューマーは提供した環境価値の謝礼として受け取るauペイメント発行のau PAY残高を幅広く決済に利用することが可能

      ディーカレットは自社で構築した「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、環境価値トークンの発行、流通、償却

      検証内容 環境価値に対するトークンでの謝礼譲渡

      現行制度に基づいたP2P電力取引の検証

      非FIT電源とRE100企業需要家が実際に取引に参加する実証

      各社役割 エナリス
      ブロックチェーンを活用した卒FIT電力および環境価値の調達と供給
      auペイメントへの環境価値トークンの発行依頼
      RE100準拠電力および環境価値取引の実績に基づき発行された環境価値トークンの流通

      auフィナンシャルホールディングス
      プロジェクト全体のコーディネート、au PAY活用

      auペイメント
      資金移動業者の登録に基づき実証事業で利用する環境価値トークンの発行
      本検証の終了時には発行したトークンを償却、プロシューマーのau PAY残高譲渡

      ディーカレット
      環境価値トークンの発行・管理を可能とするプラットフォーム提供

      IIJの取り組み

      2023年4月に、IIJはブロックチェーンによって利用者のニーズに応じた電力・環境価値の割り当てなどを行う「電力需給マッチングプラットフォーム」を導入すると発表しました。

      本プロジェクトを実施するにあたってIIJが着目したのが、現在、関西電力が開発中の「電力・環境価値P2Pトラッキングシステム」です。このシステムでは、電力や環境価値の情報や履歴を管理・保管が可能なため、発電者と利用者が個人単位で再エネを売買することができます。

      出典:IIJ 公式サイト

      公表されている当プロジェクトの背景・概要・結果は次の通りです。

      <背景>

      • 日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を打ち出しており、2030 年までにすべての新設データセンターの30%以上の省エネ化、国内データセンターの使用電力の一部の脱炭素化を目指している
      • 度重なる省エネ法の改正により、データセンターの利用者にエネルギー消費量の報告やセンター内持ち込み機器の電力種別への対応なども新たに義務付けられた

      <概要>

      実施期間 2023年3月
      特徴 関西電力が開発中の「電力・環境価値P2Pトラッキングシステム」を導入している

      電力系統の中で発電側と電気の利用者側をマッチングさせることができる

      P2Pを使って取引当事者の間での情報共有や、ブロックチェーンを使った共有情報(記録など)の耐改ざん性を実現している

      検証内容 多様な電源調達を実施しているデータセンター内の電力「実データ」を利用し、電源割合の指定などの本プラットフォーム機能の有効性の実証

      電力・環境価値P2Pトラッキングシステムを活用し、DC事業者と利用者間で、電力・環境価値の割り当ての確認

      <結果>

      • データセンター利用者のニーズ(再エネ割合・追加性)に沿った割り当てを確認
      • 自動割当による管理コスト削減や、需給電力データを管理し、将来需要を予測することにより、電力・環境価値調達量の最適化に貢献できることを確認 等

      P2P電力取引は決して「魔法の杖」ではない

      ここまでは、P2P電力取引の概要やブロックチェーン技術の解説、実際の事例について見てきました。世界中で数多くの実証実験が行われ、政府の指針や昨今の環境意識の高まりにマッチしているP2Pの電力取引は、今後すぐに私たちの生活へと浸透していくのでしょうか?

      実は、そう簡単にはいかないというのが現状です。ここに一つの海外事例を紹介します。

      米国発のスタートアップ、 LO3 Energy社です。同社は独自に開発したプライベート型のブロックチェーンであるExergyを用いて、再エネ電力のP2P取引プラットフォームの構築を目指して米国や豪州で実証を進めていました。しかし、P2P電力取引の商用サービスは大規模に展開されることなく、2023年2月でサービス終了となってしまいました。

      P2P電力取引スタートアップが操業停止、なぜ商用化できなかったのか

      P2P電力取引の先駆者として期待されていたLO3 Energy社ですが、なぜ資金が尽きる前に新たな電力ビジネスを収益化できなかったのでしょうか。

      あくまで筆者の憶測になってはしまいますが、「P2Pによる電力取引は、一個人が既存の電力システムから乗り換えるだけの動機になり得なかった」ことが要因の一つではないでしょうか。

      従来の電力体系では、電力会社という中央集権的な管理者が存在していました。電力会社は売り上げのほとんどを企業や家庭からの電気料金収入が占めているため、あの手この手で消費者に自社の電気を使ってもらおうと販促活動をしています。

      一方のP2Pの電力取引ではどうでしょうか。こうしたプロジェクトでは、運営企業が生活者に対して、「クリーンエネルギーを選択できる」と訴えかけるケースが散見されます。こうしたプロモーションにおいては、事業者が「生活者は環境的インセンティブによって行動を変容させる」と過信しているといわざるを得ないでしょう

      EYが行った「Future Consumer Index」という調査によると、消費者全体の32%はサステナブルな商品やサービスに対してより多額の支払いをすることをいとわないと回答していますが、品質の高い商品は約半数の消費者がより多額を支払うとしており、実際には環境以外のインセンティブを優先することが明らかになっています

      このことからも、環境的インセンティブでは消費者が電力システムを乗り換える動機として不十分だったのではないかと推測します。

      また、余剰電力が完全に埋没しているケースはかなりレアケースです。住宅用の太陽光発電が普及して設置費用が安くなったことで、売電価格は近年減少傾向ですが、既存の電力システムの中でも、個人が蓄電した余剰電力を売電する仕組みはすでに多くの発電家が利用しています。

      これに対して、P2P電力取引を推進しているのは新進気鋭のスタートアップであることも少なくありません(既存の確立された電力システムや料金体制を刷新するのですから、当然といえば当然ですが)。

      したがって新興のプラットフォームに乗り換えてもらうには、それだけの明確なメリットやインセンティブを明示できない限りは、信頼のある大手電力会社からの乗り換えを狙うのは、消費者心理的には難しいのかもしれません。

      P2P電力取引は画期的な取り組みとして世界的な注目を浴びる一方で、こういった面から大規模な商用化が困難であるという現実もあるということには注意が必要です。

      まとめ

      今回の記事では、近年話題を集めているP2P電力取引についてまとめました。

      環境負荷の少ないエネルギー源として太陽光エネルギーなどの積極的な活用も推奨されており、今後も個人間での電力取引は環境にやさしいアプローチとして関心を集めるでしょう。

      ブロックチェーンの概要やP2P電力取引のメリットとデメリットをきちんと理解したうえで、引き続き今後もその動向に注目していきましょう。

      トレードログ株式会社では、非金融分野のブロックチェーンに特化したサービスを展開しております。ブロックチェーンシステムの開発・運用だけでなく、上流工程である要件定義や設計フェーズから貴社のニーズに合わせた導入支援をおこなっております。

      ブロックチェーン開発で課題をお持ちの企業様やDX化について何から効率化していけば良いのかお悩みの企業様は、ぜひ弊社にご相談ください。貴社に最適なソリューションをご提案いたします。

      DPP(デジタルプロダクトパスポート/デジタル製品パスポート)とは?サーキュラーエコノミーを実現させる欧州発の新ルールについて解説!

      近年、「サーキュラーエコノミー」や「サステナビリティ」といった、「大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却」という視点が重要視されており、環境に対する取り組みが個人・法人を問わず全世界的に活発になっています。

      なかでもとくに、企業においては製品に耐久性やリサイクルの容易性といった情報を付与する「DPP(デジタルプロダクトパスポート)」と呼ばれる制度が注目を集めています。その一方で、その内容を詳しく知っている、実際の事例を知っているという人はまだまだ少ないはずです。

      こちらの「DPP(デジタルプロダクトパスポート)とは?サーキュラーエコノミーを実現させる欧州発の新ルールについて解説!」のページでは、DPPの基礎知識をわかりやすく解説していきます。

      こんな方にオススメ
      EU市場への輸出・展開を検討している製造業の経営層・法務担当者
      欧州メーカーへ部品・素材を供給しているサプライヤー企業の営業・技術担当者
      「DPP対応が自社に必要かどうかもよくわかっていない」という方

      DPPとは?

      出典:Unsplash

      DPPは欧州発の経済政策

      EUでは2019年以降、「欧州グリーンディール」を軸に、持続可能な経済成長と2050年までの気候中立(カーボンニュートラル)に向けた政策が加速してきました。なかでも、これまで廃棄されてきた製品・部材・原材料を「資源」として循環させ、経済システムそのものを直線型(つくる→使う→捨てる)から循環型へ転換する「サーキュラーエコノミー」は、アメリカに次ぐ世界第二位の経済圏をさらに包括的・持続的なものにしていくための重要テーマとして位置づけられています。

      こうした流れの中核にあるのが、「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(略称:ESPR)」です。ESPRは2024年7月18日に発効し、EU域内市場に投入される製品の持続可能性を底上げするための新しい枠組みとして動き始めました。ここで義務付けられているのが、今回のテーマでもあるDPPです。

      DPPとは、製品の持続可能性や循環性に関するデータを、製品に付随する一意の識別子を通じてデジタル上で参照可能にする仕組みです。製品ごとに「属性情報のデジタル記録」を紐付けるイメージで、原材料に含まれる懸念物質の情報、リサイクル材の含有率、修理や解体のためのマニュアル、廃棄時の適切な処理方法など、製品の循環性を高めるための技術的データなどにアクセスできるようになります(具体的な記載項目は製品群ごとに委任法で定められます)。

      この仕組みにより、リサイクル業者は「効率的な資源回収の方法」を、消費者は「製品がどれだけ環境に配慮され、長く使い続けられるか」を正確に把握できるようになります。DPPが「モノのパスポート」と呼ばれるのは、個人の属性を証明する旅券のように、製品が市場に流通する際の「持続可能性の証明書」として機能するためです。

      なお、DPPを読み取るデータキャリアは、製品や利用シーンに応じて二次元バーコード、RFID、NFCなどの中から、委任法で定められる標準規格に準拠したものが選択されます。実務上は、機密性の高い情報を保護しつつ、適切な権限を持つ者に必要な情報を開示する「アクセス管理(認証・認可)」の設計が重要なポイントとなります。

      DPPには優先的に取り組むべき分野が定められている

      DPPで誤解されやすいポイントがあります。それは、ESPRは単なる枠組みであり、具体要件(どの製品に、どの項目を、いつから適用するか)は製品群ごとの委任法で順次決まる設計になっているという点です。つまり、DPPに関しても“いきなり一律のテンプレートが全製品に降ってくる”ものではなく、”優先順位をつけながら、製品カテゴリーごとに要件が固まっていく”イメージで義務化が進んでいきます。

      その際の優先順位を示すのがWorking Plan(作業計画)です。2025年4月16日、欧州委員会は最初のWorking Plan(2025–2030)を採択し、今後数年で優先的にルール策定を進める製品群を明確化しました。具体的には、循環性の向上余地が大きい分野として、鉄鋼・アルミ、繊維(とくにアパレル)、家具、タイヤ、マットレスなどが優先対象として挙げられています。このWorking Planに沿って、各製品群について「性能に関する要件(例:耐久性、資源効率、リサイクル材比率など)」と「情報提供に関する要件」が整理され、情報提供の主要な手段としてDPPが活用されていく、というのが基本線になっています。

      したがって、企業側で重要なのは「全製品を一気にDPP対応する」ことではなく、まず自社の製品がどの製品群に該当し、いつ・どの情報が求められそうかを見立てたうえで、必要なデータの整備と運用体制に優先順位をつけていくことです。最初に土台を作っておけば、委任法で要件が具体化したタイミングで最小限の追加対応をすれば良いため、現実的な対応スケジュールを着実に準備していくことを意識すると良いでしょう。

      DPPのメリットとデメリット

      「モノのパスポート」として注目を集めるDPPですが、一体どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。ここでは、それぞれ2つずつご紹介します。

      メリット①:製品の「循環性能」が正当に評価され、資源効率が最大化される

      DPPの最大の価値は、これまで消費者やリサイクル業者から見えなかった製品の品質を可視化し、それを市場の競争力へと直結させる点にあります。ESPRでは、大前提として個別の委任法で設定された性能要件(Performance Requirements)を満たした製品のみ上市することが許されており、これらの情報に加えて懸念物質などの情報を情報要件(Information Requirements)としてDPPを通じて公開することを求めています。

      つまり、企業は今後、製品カテゴリごとに設定された耐久性、修理可能性、リサイクル材の含有率といった具体的な基準をクリアするよう製品設計を根本から見直す必要があり、その結果として市場には必然的に「長く使える高品質な製品」が流通することになります。DPPは、こうした高度な設計思想を客観的なデータとして証明する役割を果たすのです。これにより、安価な使い捨て製品が淘汰され、持続可能性に投資した企業が正当に選ばれる健全な市場環境が醸成されるでしょう。

      また、この情報の可視化は、製品の「死に際」である廃棄フェーズにおいて決定的な役割を演じます。高性能なリサイクル設計がなされていても、その情報がリサイクル業者に伝わらなければ、部材は単なるゴミとして処理されてしまいます。DPPを通じて「どの部品に希少資源が含まれ、どう解体すれば安全に回収できるか」という情報が製品と紐付いて届くことで、設計段階で意図された循環性能が、初めて実際のリサイクル率向上という成果へと結実するのです。

      メリット②:規制適合の証明と、市場監視・通関プロセスが効率化される

      もう一つの大きな価値としては、企業のコンプライアンス維持にかかる膨大な事務負担を、デジタル技術によって最適化できる点が挙げられます。ESPRの第9条では、DPPが「当局が製品の適合性を検証するために必要な情報に容易にアクセスできるようにすること」を目的の一つとして掲げています。

      The requirements referred to in paragraph 2 shall:

      (a) ensure that actors along the value chain can easily access and understand product information relevant to them;

      (b) facilitate the verification of product compliance by competent national authorities; and

      (c) improve the traceability of products along the value chain.

      REGULATION (EU) 2024/1781 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL

      従来、製品が欧州の厳しい環境基準を満たしていることを証明するには、膨大な技術文書や適合性宣言を紙や個別のPDFファイルで管理し、当局の要請に応じて提出する必要がありました。しかし、DPPという共通のデジタル基盤を活用することで、企業は一意の識別子(UID)を通じて最新の適合性データを当局へ即座に提示することが可能になります。これは、単なる社内業務の効率化に留まりません。

      なぜならESPRは、DPPを通じて「税関当局とのデータ連携」も視野に入れて設計されているからです。通関プロセスにおける検証の容易化についても条文では言及されており、データが「モデル、ロット、個体」といった適切な粒度で管理されることで、規制を遵守している企業の製品は通関時の検査がスムーズになり、市場投入までのリードタイムを短縮できるという実利的な恩恵を受けられるでしょう。

      また、経済事業者間においても、DPPという「信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)」を共有することで、取引先ごとに異なる形式でデータを要求される手間が省かれ、バリューチェーン全体でのデジタル・トランスフォーメーションを加速させる強力な動機付けとなるのです。

      デメリット①:サプライヤーのデータ開示負荷と、多層的な協力体制の構築

      DPPが求める情報の多くは、製品の完成品メーカー(製造業者)だけでは完結しません。ESPRにおいて委任法で規定され得る項目のうち、「原材料の由来」や「化学物質の含有量」を特定するには、Tier1から、さらにその先の素材メーカーに至るまで、サプライチェーン全体を遡った精緻なデータ収集が不可欠です。

      しかし、実務上は機密情報の問題や「そもそもどうやって情報を記録・共有するのか」といった個別の対応が必要となるケースが多くなると想定されます。特定の化学物質の配合や部材の調達ルートは、サプライヤーにとって競争力の源泉である「ノウハウ」そのものであり、たとえ規制対応であっても開示に対する抵抗は拭えないからです。また、製造業者に比べるとサプライチェーン関係者への要件は限定的で、「必要になったら対応を考える」といった受動的な姿勢のサプライヤーも少なくないでしょう。

      もちろん、ESPRではステークホルダーごとに「差別化されたアクセス権」を設定することで機密情報を保護する仕組みも想定されていますが、この「誰に」「どの粒度の情報を」「どの条件で開示するか」という合意形成と権限管理の設計と、サプライヤーに対する説明・交渉には、多くの時間と法的整理が必要となります。サプライヤーを単なるデータ提供者ではなく、循環型経済のパートナーとして巻き込むための新たな信頼構築が求められるのです。

      デメリット②:性能要件を遵守した設計と、DPP実装に伴うコスト

      DPPの導入コストもまた、事業者を悩ませ得る課題です。メリットでも触れましたが、企業は委任法で設定される性能要件をクリアするよう、製品設計を根本から見直さなければいけません。耐久性やリサイクル材含有率の最低基準が具体化されると、これまで徹底したコストカットによって低価格を実現していた企業は欧州市場の基準を満たせる(往々にしてより高価な)原材料への切り替えを余儀なくされるはずです。

      また、自社製品がこれらの性能要件をクリアしているかを検証するプロセス自体も、膨大なリソースを要します。例えば、製造業者の義務として「適合性評価手続き・技術文書の作成」がありますが、このプロセスでは環境負荷の計算結果、実施した試験や測定のデータ、そして「サプライヤーから提供された部材の証明情報」などが求められます。これまで一部の専門部署で完結していた評価業務は、設計、調達、品質管理の各部門を横断する必要があるため、その管理工数と時間的ロスは計り知れません。

      加えて、技術的な側面では「相互運用性」の確保が課題となります。自社でDPPシステムを準備する場合、自社のERP(基幹業務システム)やPLM(製品ライフサイクル管理)で管理している情報を単に出力するだけでは不十分です。これらを標準規格(ISO/IEC等)に準拠した形で連携させる必要があるのです。

      (d) all data included in the digital product passport shall be based on open standards, developed with an interoperable format, and shall be, as appropriate, machine-readable, structured, searchable, and transferable through an open interoperable data exchange network without vender lock-in, in accordance with the essential requirements set out in this Article and Article 11;

      REGULATION (EU) 2024/1781 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL

      多くの企業は、自社でゼロからシステムを構築するのではなく、第三者の「DPPサービスプロバイダー」が提供するSaaS等を利用することになると予想されますが、これらは一時的な導入費用ではなく、製品を市場に流通させ続ける限り発生し続けるコストとして、企業の収益構造に織り込む必要があります

      DPPって日本企業にも関係あるの?

      EUでは今後スタンダードになっていくとされているDPPですが、遠く離れた日本の地においてもこれらを考慮しなければいけないのでしょうか?結論から言えば、EU市場に製品を出す可能性がある企業(完成品メーカーだけでなく、素材・部材サプライヤーを含む)は無関係ではいられません

      その理由のひとつが、DPPの土台となるESPRが「規則(Regulation)」として成立している点にあります。EU法において規則は「EU全域で一体として適用される拘束力のある法令」であり、加盟国ごとの国内法化(トランスポーズ)を待たずに原則そのまま適用されます。一方の「指令(Directive)」は、達成すべき目標を示しつつ、具体的な国内法制は各加盟国が整備する必要があります。つまり、規則であるESPRは、指令に比べて強制力を持ったルールなのです。

      実際、EUには以前から主にエネルギー関連製品を対象としたエコデザイン指令(Directive 2009/125/EC)が存在しました。しかし、ESPRはそれを置き換え、対象範囲を「ほぼすべての物理製品」へと大きく拡張した枠組みとなっています。

      また、ESPRにおいては、原材料の調達から廃棄に至るサプライチェーン全体でのエコデザインが想定されています。単に工場から出荷される瞬間の製品スペックを規制するのではなく、監視当局や税関による適合性の検証までもが、DPPを介した電磁的アクセスによって行われることが規定されており、制度側からデジタル化を強力に後押しする仕組みとなっています。したがって、欧州企業に部品を供給している日本企業は、サプライヤーとしてDPPが求める情報をデジタルデータで提供できなければ、事実上、EU市場から排除されるリスクを抱えることになります。

      実際に、電池分野においては、厳しい制約のもとでDPPの運用が始まっています。2023年7月に採択された「欧州電池規則」では、容量が2kWhを超える充電式産業用バッテリーと電動自転車・スクーター用バッテリー、全ての電気自動車(EV)用バッテリーについては、2027年2月までにバッテリー版DPPともいえる「バッテリーパスポート」の電子的記録が義務付けられました。

      さらに、アパレル領域ではより厳しい規制が始まろうとしています。ESPRではDPPだけでなく、売れ残りの衣料品・履物の廃棄禁止にも踏み込んでおり、2026年7月19日(大企業対象、中規模企業は2030年〜)から開始される予定です。ESPR発効時点ではこの2製品が対象ですが、欧州委員会はの動向次第では今後、対象が拡大される可能性もあります。

      こうした背景もあり、実際にその分野の大手企業から、当社にも「どこから手を付けるべきか」「何を証明すればいいのか」といった相談が増えています。したがって、「あくまで海外のことだから」と無関心でいる国内企業は、ビジネス上の大きなリスクを抱えているといえるでしょう。

      FAQ(よくある質問)

      Q
      DPP対応にブロックチェーンは必須ですか?
      A

      必須ではありません。ESPRの条文上ではDPPを実現するための技術としてブロックチェーン等の具体的な指定はされていません。要件(データの真正性と完全性、相互運用性、アクセス管理)を満たす形での実装が求められていますが、これらはブロックチェーンを使わずとも、暗号化技術や認証基盤(PKI)、セキュアなAPI連携などによっても実現可能です。

      ですが、ブロックチェーンの技術的特性がESPRの求める要件や複数事業者間でのデータ共有と相性が良いという理由から、DPPのプロトタイプとしてブロックチェーンが採用されているケースもあります。

      Q
      当社は中小企業で、こうした負担に耐えられるか心配です‥
      A

      ESPRの枠組みには、事業者が過度な負担で市場から淘汰されないための配慮が明確に組み込まれています。例えば、本規則の大きな柱の一つである「売れ残った消費者製品の廃棄禁止」措置については、小規模企業およびマイクロ企業は原則としてその義務から免除されます。また、中規模企業に対しても、大企業に比べて数年単位の長い猶予期間が設定されており、急激なルール変更によって経営が圧迫されないような段階的な適用が予定されています。

      さらに、製品ごとに具体的なエコデザイン要件が定められ、実際に適用されるまでには十分な準備期間が設けられています。まず作業計画の策定から始まり、準備調査やインパクト評価、ステークホルダーとの協議を経て、ようやく具体的な規制案が採択されます。重要なのは、規制が採択された後も、実際にその措置が適用されるまでに、原則として少なくとも「18ヶ月」の猶予期間が設けられている点です。

      出典: Online information session on the new Ecodesign for Sustainable Products Regulation (ESPR)

      この数年にわたる策定プロセスと適用猶予の間に、市場では中小企業でも導入しやすい安価で汎用的なDPPツールや支援サービスの整備が進むことが予想されます。自社でゼロから複雑なシステムを構築せずとも、整いつつあるインフラを活用することで、現実的なコスト範囲内での対応が可能になるはずです。

      また、大前提として確認すべき点ですが、これらの義務はあくまで「EU市場に製品を上市(販売)する」場合にのみ発生するものです。欧州での販売を一切行わず、日本国内やEU圏外の市場のみを対象とするビジネスであれば、直接的にESPRの規制対象となることはありません。したがって、すべての日本の中小企業が直ちにこの重い対応を迫られるわけではなく、自社の海外展開戦略に照らして、対応の必要性を慎重に判断する猶予があります。

      Q
      競合が「DPP対応を完了した」というプレスリリースを見たのですが‥
      A

      焦らなくてOKです。ESPRのスケジュール上、2026年4月時点でDPPへの完全対応を宣言することはできません。ESPRはあくまで「枠組み」であり、具体的な要件は、製品カテゴリごとの「委任法」で決まります。現時点ではアパレルや鉄鋼など、多くの製品群でこの詳細ルールは現在策定中、あるいはこれからのため、実運用が始まっていない段階では、最終的な「適合」は確認できません。おそらく下記のいずれかの意味で「DPP対応を完了した」という意味かと思われます。

      • ESPRではなく、「真贋証明・ブランド価値向上」という文脈での独自のDPP
      • DPPプラットフォームの選定・パートナー契約の完了(詳細が決まったら動き出せる状態)

      DPPの今後の展望

      ここまで見てきたように、運用次第で様々なメリットをもたらすDPPですが、はたして国際社会のスタンダードとして普及するのでしょうか。その答えは、現在の世界産業における中国の圧倒的な存在感と、それに対する欧州の危機感に隠されています。

      出典:Pexels

      EUのフォンデアライエン委員長が、気候変動対策を政策の筆頭に掲げる背景には、単なる環境保護を超えた高度な経済安全保障上の戦略があります。現在、中国は「安価で大量」な生産を武器に世界市場を席巻していますが、その競争力の源泉は、徹底したコスト優先主義による環境負荷の外部化にあります。こうした中国の重商主義的アプローチに対し、EUが打ち出したカウンター戦略こそが、ESPRという「ルールによる市場の再定義」です。

      EUは、単に関税を引き上げるのではなく、製品が欧州市場に入るための「入場資格」そのものを厳格化しました。ESPRによって、耐久性やリサイクル性といった性能要件を法制化し、それをDPPで「可視化」することを義務付けたのです。これにより、国・企業を問わず、要件を満たさない製品はEU市場での上市が難しくなり、適合のためのコストや情報開示対応が競争条件になります。

      実際に、フォンデアライエン委員長は就任前の会見で以下のように述べています。

      「この布陣で『欧州の道』を切り拓く。気候変動に対し大胆に行動し、米国とのパートナーシップを強化し、より自己主張するようになった中国との関係を明確にし、例えばアフリカなどの信頼できる隣人となる。このチームは、欧州の価値や世界的水準の維持のために立ち上がらなければならない。」

      出典:欧州対外行動庁「フォン・デア・ライエン次期欧州委員会委員長、より高みを目指すEUに向けた布陣を発表」

      こうしたことからも、DPPを含むグリーンディール政策は、彼女の本気度の高い経済政策であることが伺えます。彼女の続投が2029年まで決定した今、DPPは単なる環境規制ではなく、「欧州が定義するルールに従えない企業を、西側市場のサプライチェーンから構造的に締め出す」ための強力な武器として運用されるでしょう。

      したがって、DPPはもはや一地域の規制ではなく、米中対立以降の「新しい世界のビジネス・プロトコル」として、グローバルスタンダードへ昇華していくことが予想されます。

      まとめ

      今回はDPP、デジタルプロダクトパスポート/デジタル製品パスポートについて解説しました。DPPは、欧州市場でビジネスを継続するための「必須の鍵」となりますが、その実体は一律ではなく、製品カテゴリごとに段階的に構築される動的な制度です。実務者が押さえておくべき最重要ポイントは以下の3点です。

      委任法がすべての基準: ESPRはあくまで共通の「枠組み」に過ぎない。実際に「どのデータを」「いつから」「どの形式で」記載すべきかは、今後製品ごとに順次策定される委任法によって法的に確定する。

      段階的な義務化: 全製品が一斉に対象となるわけではなく、鉄鋼、アルミ、繊維、タイヤといった優先分野から順次ルールが適用される。自社製品がどのフェーズに該当するか、最新の作業計画を注視することが不可欠。

      日本企業にもリスク: EU市場に直接上市しない企業であっても、欧州メーカーのサプライヤー(素材・部品供給)である場合は、DPPへのデータ提供が取引継続の条件となる「非関税障壁」としての側面を理解しておく必要がある。

      DPPへの対応は、まず自社の製品がいつ、どの規則の対象になるかを正確に把握することから始まります。鉄鋼、繊維、電子機器、バッテリーなど、優先分野に該当する場合は早期の情報収集を推奨します。

      医療とブロックチェーンの関係性とは?医薬品・ヘルスケアの事例も紹介!

      今日の医療・ヘルスケア業界では、ブロックチェーン技術を応用した産業変革の動きが加速しています。その適用範囲は、医薬品の流通や偽造品対策、臨床試験での医療データ活用など、幅広い分野に及びます。予防医療の実現に向けた業界の課題とデータに対する考え方、海外・国内の最新事例を併せて解説します!

        2030年に向けて変革が求められる医療・ヘルスケア産業と予防医療

        2025年現在、医療・ヘルスケア産業は、クラウド・AI・ブロックチェーン・IoTなど、あらゆる先端情報技術による構造変革が求められています。構造変革が求められている背景には、マーケットの拡大(つまりは医療や介護を必要としている人が増えている)、それに伴う労働力の確保、そして医療崩壊の可能性という3つの社会状況の変化があります。

        第一に医療・ヘルスケア産業は、年々、急拡大を続けています。みずほ銀行調査部の資料によると、医療とヘルスケアをあわせると2040年には100兆円超の市場規模となる見込みで、現在の日本の国家予算に相当します。

        この背景には、日本社会の長年の課題でもある少子高齢化に加えて、予防法や健康管理の確立、生活支援サービスの充実、医療・介護技術の進化があります。厚生労働省の発表によると、2022年の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳となっており、信じられないことに「人生90年時代」がすぐそこまで迫っているのです。

        出典:厚生労働省

        一方で、自立した生活を送れる期間である「健康寿命」は、平均寿命に比べて男性は約9年、女性では約12年も短いことも明らかになっています。これは10年近い期間を医療や介護といった助けを受けながら生きていかなければならないということでもあります。したがって、日本における医療・ヘルスケアに対する需要は今後も増加していくことでしょう。

        第二にマーケットの拡大は、医療・ヘルスケア業界に携わる人口を確保しなければならない状況をもたらすでしょう。医療・福祉系の労働力不足人口は、2030年には187万人に達し、サービス業に次いで労働力が必要となる産業になるといわれています。

        出典:パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」

        このような労働構造の大幅な変化は、現場の医療システムに限らず、労働マーケットそのものの構造にも大きく関係してくることでしょう。

        そして第三に、こうした市場成長の帰結は日本経済の活性化ではなく、医療崩壊です。少子高齢化が進むなかで健康寿命が伸びないまま平均余命が伸びていくと、税金の供給と社会保障費としての医療費のバランスが崩れ、社会保障システムに支障をきたします

        また、医療現場や介護現場はより厳しさを増し、「割に合わない仕事」が増えていくことで、慢性的な労働力不足も表面化してくるでしょう。一般的には、労働環境や労働条件などを改善することが効果的なアプローチとされていますが、24時間体制でのサポートが必要になるこの業界では、どうしても実際の労働と比較して、労働環境や賃金の釣り合いをとるのが難しくなっています

        実際に愛知県で県医療介護福祉労働組合連合会(県医労連)がおこなった調査によると、看護師の約8割が「辞めたい」と退職も選択肢にあることが明らかになり、医療の崩壊は早急に解決すべき課題であることが浮き彫りになりました。

        夜勤拘束13時間以上55% 看護師ら8割「辞めたい」コロナ禍で悪化

        労働人口が不足し、医療崩壊が起きた場合、2020年に発生したCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)の時のような、「命の選別」が迫られる事態も、将来的には十分にあり得るでしょう。

        こうした状況の中、切に求められているのが「予防医療」です。予防医療は公衆衛生の考え方の一つで、病気になってから、あるいは要介護になってから対応するのではなく、病気そのものを未然に防ぐことで、健康寿命を伸ばし、医療崩壊を防ごうという考え方です。

        2030年、さらにはその先の未来に向けて、日本の医療・ヘルスケアのあり方は、この予防医療という考え方にシフトしていかなければなりません。そして、予防医療が真価を発揮するためには、ヘルスケアデータの利活用と、そのためのシステム変革が必要になってきます。ブロックチェーンはまさにこの点において、「医療・ヘルスケア業界の変革をサポートする有望技術」として、注目を集めています。

        医療・ヘルスケア分野で期待されているブロックチェーンとは

        医療・ヘルスケア業界を変革しうると注目されているブロックチェーンですが、その適用シーンについて見る前に「そもそもブロックチェーンとはなんなのか」「導入にあたってどんな利点、欠点があるのか」について簡単に学んでいきましょう。

        ブロックチェーン=集権的な管理者を介在せずにデータの共有が可能なデータベース

        出典:shutterstock

        ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

        ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

        取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種です。その中でもとくにデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

        ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っていました。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

        これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

        また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

        ブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値と呼ばれる関数によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

        ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

        新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています。

        また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出す行為を「マイニング」といい、最初にマイニングを成功させた人に新しいブロックを追加する権利が与えられます

        ブロックチェーンではマイニングなどを通じてノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持つことで、データベースのような管理者を介在せずに、データが共有できる仕組みを構築しています。参加者の立場がフラット(=非中央集権型)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

        こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

        データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

        詳しくは以下の記事でも解説しています。

        ブロックチェーンが医療・ヘルスケア業界の変革に向いている理由

        不動産、物流など、様々な業界で注目されているブロックチェーンですが、医療・ヘルスケア業界の変革に向いている理由はなんでしょうか?

        この問いに対する考え方は色々あり得るものの、答えの一つは、「医療・ヘルスケアが、ブロックチェーンがもつデータの耐改ざん性と、非中央集権というコンセプトを活かせる領域であること」でしょう。

        まず、当然のことながら、医療・ヘルスケアで扱う情報は、個人情報の中でも特に秘匿性の高い情報です。こういったプライバシーに深く関わる情報を取り扱ううえでは、データベースやシステムのセキュリティ、とりわけデータの改ざんに耐え得る能力が重要になります。

        ブロックチェーンは、暗号資産(仮想通貨)で用いられる「パブリックチェーン(不特定多数の参加が認められる)」と、「プライベートチェーン(管理者のもと特定メンバーの参加が認められる)」の2種類に大別されますが、このうちプライベートチェーンでは、特にセキュリティ要件を高く担保することが可能です。

        また、医療・ヘルスケア業界は、次のような性質をもった産業であると言えます。

        • 診療情報や遺伝子情報といったもっともセンシティブなデータのひとつを扱うため、情報の非対称性が大きい
        • 動く金額が大きいため、データ改ざんに関する経済的な動機が大きくなる
        • 患者側にデータ自決権がない

        こうした性質をもった業界でデータドリブンな変革を行なっていくためには、中央管理者の存在が障害になりうると考えられます。したがって、ブロックチェーンが非中央集権的に振舞うことができるシステムであることも、医療・ヘルスケア業界との相性を良くしているといえるでしょう。

        ブロックチェーンは「万能」ではない

        出典:Unsplash

        前述のメリットを押さえたうえで、ブロックチェーンには気をつけなければならないことがあります。それは、ブロックチェーンは「万能の救世主」ではないということです。

        「ブロックチェーンであればなんでもできる」といった誤解をよく見かけますが、現時点の実例で言えば、実証研究的なプロジェクトに終始しているものも多く、実際に変革を行う上では数多くの障害があります。

        とりわけ、スケーラビリティの問題は、医療・ヘルスケア業界でブロックチェーンが活用されるための大きな課題となるでしょう。スケーラビリティとは、「トランザクションの処理量の拡張性」、つまり、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかの限界値のことを指します。ブロックチェーンは、その仕組み上、従来のデータベースよりもスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。

        InterSystemsによると、共通ストレージインテンシブ医療データに必要な一般的なデータストレージは、次の通りです。

        • X線 = 30 MB
        • マンモグラフィー = 120 MB
        • 3D MRI = 150 MB
        • 3D CT スキャン = 1 GB
        • デジタルパソロジ―画像= 350 MB (平均)
        • 100 GB 10億回の読み込み – 一般的な人のゲノム
        • 各ゲノムの異なるファイルに対し 1 GB

        このように、医療・ヘルスケア業界では、他の産業よりもはるかに大きなデータの塊を保存・処理する必要があります。この点、ブロックチェーンの現状では、データベースとしての機能を十分に発揮することは期待できないでしょう。

        なお、このスケーラビリティの問題に対しては、近年、金融領域におけるマイクロペイメントで「ライトニングネットワーク」と呼ばれる技術を活用することで、トランザクションの処理速度を向上させることに成功しています。

        ただし、これはあくまで取引処理速度の向上であり、メディカルデータのような大きさのデータを保存する点について、すべての課題を解消しているわけではありません。ブロックチェーンの活用を考える上では、こうした課題の面にも目を向ける必要があります。

        現代医療に対するブロックチェーンからのアプローチ

        出典:Unsplash

        情報の非対称性の克服

        医療・ヘルスケア業界にブロックチェーンを導入することにより解決しうる課題の1つ目は、「医療やそれに付随する情報の非対称性を克服すること」です。上でも触れたように、医療・ヘルスケア業界では、診療情報や遺伝子情報といったもっともセンシティブなデータのひとつを扱うため、情報の非対称性が大きい点に特徴があります。

        情報の非対称性が発生しやすく、利害が対立しやすい立場の違いは、例えば次のようなものです。

        • より正確な診断を下したい ↔︎ まともな医者か知りたい(医者と患者)
        • 転売等を目的とした不正な薬物購入を防ぎたい ↔︎ 偽造薬は使いたくない(処方薬の売手と買手)
        • 保険金請求に関する不正の抑止 ↔︎ 保険会社の優越的地位の濫用の監視
        • 医学論文の実験結果に不正がないことを証明・確認したい ↔︎ よりインパクトの大きな論文を出したい

        こうしたプレイヤー間の情報非対称性に起因した医療・ヘルスケア業界の課題に対して、ブロックチェーンは、オープンかつ真正性の高い(データの改竄等がない)データ基盤において、第三者を排除した分散型の管理手法を提供することで、課題解決に寄与するとみられています。

        自決権、データポータビリティ

        医療・ヘルスケア業界にブロックチェーンを導入することにより解決しうる課題の2つ目は、「医療データに関する患者の自決権やデータポータビリティを確保すること」です。データの自決権とは、患者が自身に関する医療データを所有し、自由に移転・処分できるような権利のことで、データポータビリティは、患者が医療データを他の医療機関やヘルスケアサービス等でも自由に再利用できること、すなわち持ち運び可能であることを指します。

        これまで、患者は診療情報などの医療データを、自分自身に関する情報であるにも関わらず、自由に持ち運び、再利用したり処分したりすることが困難でした。データの自決権やデータポータビリティが確保されれば、患者は例えば次のようなデータ活用を行うことができます。

        • セカンドオピニオンのために診療情報を個人に帰属させる
        • 遺伝子情報や診断情報を自らの判断で売買できる(トークンエコノミー)

        これらの権利が成り立つためには、データを取り扱うシステムが「非中央集権的」で、かつ安全なものでなくてはなりません。したがって、ブロックチェーンの活用が求められているのです。

        非効率な転機業務の合理化

        医療・ヘルスケア業界にブロックチェーンを導入することにより解決しうる課題の3つ目は、「非効率な転機業務を合理化すること」です。医療業界には大小合わせて18万軒程の医療機関があり(平成30年度、歯科医院含む)、その多くが個別の事業者によって経営されています。また、関連機関についても、6万軒弱の薬局をはじめ、さらに数多くの法人が存在しています。

        ところが、そうした医療機関のそれぞれが似たような業務プロセスに基づいた、似たような医療データを取り扱うにもかかわらず、それらのデータは個別に入手され、異なるデータベースに保管されます。加えて、各医療機関のデータベースは相互に統合されることはなく、医療機関間でのデータ移転もほとんど行われません

        そのため、例えばクリニックと薬局のように、同じ患者に関するデータを重複して取り扱う場合には、本質的には不要な、非効率な転機業務が行われることになります。こうした課題に対し、ブロックチェーンを活用してデータベースの統合、連結をはかっていくことで、たとえば次のように業務の合理化をはかることができます。

        • 医者と薬局での似たような問診票の省略
        • 保険金請求に関する似たような伝票の突合業務・転機業務の合理化

        2030年に向けて、労働力の不足が深刻さを増していく医療・ヘルスケア業界において、ブロックチェーンによる業務の効率化は今後注目を集めていくことでしょう。

        医療・ヘルスケア分野におけるブロックチェーンの導入事例

        海外事例①:エストニア

        出典:Pixabay

        エストニアは行政サービスデジタル化の先駆けとして知られていますが、その中でもヘルスケア分野における取り組みにはブロックチェーンを用いて安全かつ迅速なデータ管理を行っています。従来のデータ管理では医療データのセキュリティを確保するのが難しいとされていますが、エストニアでは独自のブロックチェーンを開発し、改ざんからデータを守りつつ、そのデータを活用して医療の自動化・時短を推進しています。

        例えば、患者が希望すれば再診はオンライン上で完結します。医師は患者に薬を処方する際、オンラインのシステムで処方箋を発行します。その後、患者は薬局に行き、IDカードを提示するだけで、薬剤師はシステムから患者の情報を取得し、必要な薬を用意できます。エストニアでは現在、処方箋の99%がオンラインで発行されているそうで、患者・医師・薬局の三方よしの節約術といえるでしょう。

        さらに、「e-Ambulance(電子救急車)」というシステムも導入されています。このシステムでは、通報時に患者の個人IDを取得して救急車が到着するまでに過去の医療データを参照できます。したがって、到着後スムーズに適切な治療・処置を行うことができます

        また、通報者が第三者の場合、その主観情報や救急コールセンターとの対話を通して、緊急度・優先度を決定できます。これにより、事前に搬送先の病院を選定することができ、受け入れ先の病院側も事前に適切な準備ができます。このようにエストニアでは、平常時と緊急時を問わず、医療システムにブロックチェーンが組み込まれています。

        海外事例②:The MediLedger Project

        出典:Pixabay

        医療・ヘルスケアの関連業界でブロックチェーンを活用した事例の一つに、アメリカの製薬業界で発足したThe MediLedger Projectという医薬品トレーサビリティの実現を目指すプロジェクトがあります。

        トレーサビリティ(Traceability、追跡可能性)とは、トレース(Trace:追跡)とアビリティ(Ability:能力)を組み合わせた造語で、ある商品が生産されてから消費者の手元に至るまで、その商品が「いつ、どんな状態にあったか」が把握可能な状態のことを指す言葉です。

        この概念は、サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ)のマネジメント要素の一つと考えられており、主に自動車や電子部品、食品、医薬品など、消費財の製造業で注目されています。

        医薬品物流においてトレーサビリティが注目されている背景にあるのが「偽造品・盗品対策」の問題です。世界保健機関(WHO)の推計によれば、内服薬、ワクチン、診断キットなどの医療物資の1割は、品質基準を満たしてないものや、低・中所得国で偽造されたものだと言われているほか、英国規格協会(BSI)の推計では、医薬品の貨物盗難による被害総額は年間10億ドルを上回るとされています。

        さらに現在、FDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)の発令した「DSCSA(医薬品サプライチェーンセキュリティ法)」という法律により、アメリカの製薬企業は、医薬品に個別の番号を付けてサプライチェーンを管理することが求められており、2023年にはサプライチェーンの薬を追跡できる電子的な追跡システムへの参加が義務付けられました

        このサプライチェーンにおけるトレーサビリティの問題を解決する手段として、ブロックチェーンが注目を集めており、実際にプロジェクト化されたのがThe MediLedger Projectです。

        同プロジェクトは、米Chronicled(クロニクルド)社が、ジェネンテック、ファイザー、ギリアド・サイエンシズといった大手製薬会社や医薬品サプライチェーン各社と共同で立ち上げた実験プロジェクトで、コンソーシアム型のブロックチェーンシステムを使うことで、「いつ」「誰が」「どの」薬の流通に関わったを追跡することができます。したがって、偽造品はすぐに記録上の照合によって弾き出され、安全な医薬品市場を確保することが可能です。

        さらに、このプロジェクトでは、医薬品の取引に関するプロトコルを開発することで、情報の非対称性を解消し、業界全体の効率化を狙っています。つまり、従来は個別交渉を行なっていた医薬品の価格設定や契約について情報を共有し、標準化を図ろうという試みです。日本ではあまり知名度がありませんが、ブロックチェーン技術の活用によって誰でも医薬品にアクセスできる環境を構築し、健全なマーケット運営を実現しているプロジェクトの代表例です。

        国内事例①:サスメド

        出典:サスメド株式会社 公式HP

        日本国内では、ブロックチェーンを活用した医療変革を起こそうと企てるスタートアップ企業が多方面で活躍を始めています。その代表的な医療系スタートアップの一つが、医師でもある上野太郎氏が代表を務めるサスメド株式会社です。同社では、データ改ざんに強いブロックチェーンの特徴を生かし、治験データのスムーズかつ正確な管理を実現しています。

        従来の治験データでは、医療機関が抽出したデータを製薬会社のフォーマットに合わせて記録し、共有していました。しかしその過程で、治験モニター(患者)の錯誤や数値等の転記ミスがありました。

        サスメドのプラットフォームでは、ブロックチェーンの耐改ざん性を生かしたデータ管理が行われており、治験から得られるデータを担当者が何度も照合する回数が減り、治験の効率化が図られます。また、ブロックチェーンは治験における不正行為の監視役としての機能もはたします。

        市場規模、社会に与えるインパクトが共に大きい医療・ヘルスケア業界では、基礎研究の成果が社会へと実装される過程、あるいはその先にある新市場で多額の資本が動くことになります。したがって、基礎研究の裏付けとなるデータが改ざんされるリスクが大きくなり、このリスクに対応する必要が生じてきます。

        実際に、2018年4月には、厚生労働省が施行した臨床研究法によって、「臨床試験データのモニタリング実施」が義務づけられています。その結果、各研究主体は、この法令を遵守するために、データの改ざんや誤りの有無を確認するためのコストを払わねばなりません。これが、臨床試験や治験の投資効率が悪くなっている原因の一つといわれています。

        医療×ブロックチェーンの可能性──サスメド・経産省が「課題と規制」を議論【btokyo members】

        こうした改ざんリスクに対する確認コストを小さくするための手法として、セキュリティ性能が高いという特徴をもつブロックチェーン技術が応用されているのです。

        国内事例②:日本IBM×HBC

        出典:日本IBM 公式サイト

        医療×ブロックチェーンの本丸といえる医薬品流通に取り組んでいるのが日本IBMです。日本IBMは、2023年4月から医薬品データプラットフォームの運用検証を開始しています。このプラットフォームはブロックチェーン技術を使用して、医薬品の流通経路と在庫を可視化するためのもので、製薬企業、医療機関、医薬品物流企業などが参加します。プラットフォームはHyperledger Fabricというブロックチェーン基盤を使用し、医薬品の品質保持と偽造品の防止を強化します。

        同プロジェクトは、主要製薬企業も加入するコンソーシアム「ヘルスケア・ブロックチェーン・コラボレーション(HBC)」において検討されてきたものです。参加企業はプラットフォーム上で医薬品の流れを追跡し、医療機関の在庫情報を管理し、品質管理や事業継続計画に関する情報を共有します。これにより、医薬品の安全性とトレーサビリティが向上することを目指しています。

        医薬品のトレーサビリティは、品質保持や偽造品の防止などの観点から重要であり、欧米では既に法制化されています。たとえばアメリカでは、2000年代から州単位で医薬品のトレーサビリティに関する法律が制定されていました。これを全国基準にして、州を越えた医薬品のトレーサビリティを確立しようというのが、2013年制定の「医薬品サプライチェーン安全保障法」です。

        日本では、国家レベルでトレーサビリティの実現に取り組まれているのは牛と米の食品トレーサビリティです。これらが法制化されたのは2000年代初頭に起きたBSE(狂牛病)問題と2008年に起きた事故米(汚染米)不正転売問題という事件が表面化したことがきっかけです。

        責任追及の観点から受動的な動きによって制定された背景からもわかるように、日本では国家レベルで産業へ厳しい規制をかけるのをためらう風潮があるため、こうした分野では民間企業による主導が効果的かもしれません。日本の医薬品の安全性と相互運用性を世界基準に引き上げるうえで、今後も注目せずにはいられないプロジェクトです。

        まとめ

        この記事では医療・ヘルスケア業界におけるブロックチェーン導入の現状について解説しました。

        日本では海外のような行政を巻き込んだ大きな動きはいまだ見られず、各社、実証実験の段階に留まっています。しかし、健康大国である我が国ではブロックチェーンによる業務効率化の需要は今後飛躍的に増加していくでしょう。実証実験を含めて今後の展開から目が離せません。

        トレードログ株式会社では、非金融分野のブロックチェーンに特化したサービスを展開しております。ブロックチェーンシステムの開発・運用だけでなく、上流工程である要件定義や設計フェーズから貴社のニーズに合わせた導入支援をおこなっております。

        ブロックチェーン開発で課題をお持ちの企業様やDX化について何から効率化していけば良いのかお悩みの企業様は、ぜひ弊社にご相談ください。貴社に最適なソリューションをご提案いたします。

        ブロックチェーンを活用したビジネスモデルとは?非金融分野の応用領域も解説します!

        高いセキュリティと分散的なエコシステムによって多くの注目を集めているブロックチェーン。そのビジネスモデルは仮想通貨から始まり、非金融領域でのトレーサビリティなどへの応用を経て、いまではDAppsやNFTといったweb3の先端技術を支える存在となっています。今後、日本企業でも続々とビジネスへブロックチェーンが活用されていくことでしょう。

        この記事ではそんな展望を踏まえ、ブロックチェーンのビジネス活用について基礎から応用まで詳しく解説していきます。

          ブロックチェーンビジネス市場の現状(2024年現在)

          経済産業省が「ブロックチェーンは将来的に国内67兆円の市場に影響を与える」との予測を発表してから約8年が経過しました。

          出典:総務省『「ブロックチェーン等による生産性向上」 “miyabi”ソリューションの活用について』

          いまだ成長中であるブロックチェーン業界は、この約8年間でそのシステムや適用シーンを柔軟に変えながら、社会に適合してきました。なかでも、経産省がビジネスへの応用が進むとしていた次の5つのテーマでは、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んできました。

          # 社会変革のテーマ 社会実装の方向性 活用事例
          1 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化 トークン活用 NFT、ICO、STO、ファンビジネス、地域通貨
          2 権利証明行為の非中央集権化の実現 不動産領域における登記などの権利証明 LIFULL、積水ハウス、Propy
          3 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現 医療プラットフォーム、NFTチケット 日本IBM、サスメド、LAWSON TICKET NFT、チケミー
          4 オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現 物流プラットフォーム 富士フイルム、ロッテ、トレードワルツ
          5 プロセス・取引の全自動化・効率化の実現 DAO(自律分散型組織) DEX、投票

          その結果、国内のブロックチェーンの市場規模は成長を見せつつあります。株式会社矢野経済研究所の発表によると、ブロックチェーンの市場規模は2021年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模は約783億円の見込みがあり、2025年度には7,247億6,000万円の経済圏を形成すると推測されています。

          しかしその一方で、ブロックチェーンはスケーラビリティなどの課題を抱えてもいます。こうした問題に対し、それぞれの欠点を補うようにして数えきれないほどのブロックチェーンが誕生しました。その結果、独自の仮想通貨をもつブロックチェーンは大小含めて約15000〜20000種類も存在するともいわれています。

          当然、エンタープライズ向けのブロックチェーンプラットフォームも数多くリリースされており、企業は自社のビジネスに最もマッチするプラットフォームを選択することができる時代になりました。ようやく日本企業にとってブロックチェーンのビジネス導入を本格的に議論できる下地が整ったといえるでしょう。

          ブロックチェーンの進化の歴史

          ブロックチェーン乱立期ともいえるフェーズに突入している現代において、ブロックチェーンがどのような経緯で成長してきたのかを把握しておくことは重要です。ここからは、そもそもブロックチェーンとはどういった技術で、どのような背景があるのかについてみていきましょう。

          ブロックチェーンとは

          出典:shutterstock

          ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

          ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

          取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種です。その中でもとくにデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

          ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っていました。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

          これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

          また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

          ブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値と呼ばれる関数によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

          ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

          新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています。

          また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出す行為を「マイニング」といい、最初にマイニングを成功させた人に新しいブロックを追加する権利が与えられます

          ブロックチェーンではマイニングなどを通じてノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持つことで、データベースのような管理者を介在せずに、データが共有できる仕組みを構築しています。参加者の立場がフラット(=非中央集権型)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

          こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

          データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

          詳しくは以下の記事でも解説しています。

          ブロックチェーンには3つのフェーズがあった

          ブロックチェーンは、この10年間あまりで技術の進展とともに、技術の応用領域、そしてビジネスモデルを進化させてきました。その進化の歴史は、ブロックチェーン1.0、2.0、3.0という呼称で知られています。

          ブロックチェーンは、2008年に誕生した当時はまだ、仮想通貨ビットコインの中核技術の一つに過ぎませんでした。このブロックチェーン1.0の時期にブロックチェーンが目指していたのは、「不正のない通貨取引」です。

          前述の通り、ブロックチェーンは中央管理者のいない公開された台帳によって情報を管理しています。常にネットワークの参加者間で情報が同期されているため、ハッキングやデータ改ざんといった脅威から仮想通貨の取引を守るのに打ってつけの技術だったわけです。

          その後、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)が、ビットコインの仕組みを仮想通貨以外の金融領域に応用するべく、Ethereumを開発しました。これがブロックチェーン2.0です。

          Ethereumひいてはブロックチェーン2.0の特徴として挙げられるのが、スマートコントラクトです。スマートコントラクトは、あらかじめプログラムされた契約を自動的に実行する仕組みのことです。 ビットコインでは1ブロックに取り込めるトランザクションは1秒に7件程度しかなく、ブロックの承認にも10分近くかかっていたため、即時性という観点では使いづらいものでした。

          しかし、スマートコントラクトを応用することで、様々な処理をブロックチェーン上で実行できるようになりました。たとえば、企業におけるバックオフィス業務や、商取引におけるエスクローサービス(商取引の安全性を保証する仲介サービス)、個人間送金などがスマートコントラクトで置き換えられました。

          このような流れを受けて現在、ブロックチェーンが突入しているのがブロックチェーン3.0の世界です。

          ブロックチェーン3.0では、ブロックチェーン技術の有用性に対する社会の関心が高まったことを背景に、非金融領域への活用が急速に進み始めています。とくに、商品が生産されてから消費者の手元に至るまで、その商品が「いつ、どんな状態にあったか」を追跡するトレーサビリティ分野においては多くの企業の注目の的です。

          また、Ethereumから派生して、tps(トランザクション速度)を改善したPolygon(ポリゴン)やSolana(ソラナ)、toB企業向けの開発に特化したGoQuorum(ゴークオラム)やHyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)といった様々なプラットフォームが登場しています

          このようにブロックチェーン市場におけるビジネスモデルの進化は、新しいモデルが過去のモデルに取って代わるのではなく、過去のモデルを残しつつも、その課題をカバーする形で新しい応用領域へとマーケットが拡大してきました。

          こうした歴史を経て、現在のブロックチェーンはブロックチェーン1.0、2.0の金融分野、3.0の非金融分野、両者のハイブリッドの3つに分類できます。

          次は、ブロックチェーンのビジネス活用が進む応用領域について解説していきます。

          ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの応用領域

          ブロックチェーンの応用領域①:金融領域(フィンテック)

          ブロックチェーンビジネスの第一の領域は、「金融領域」です。

          「金融領域」とは、平たく言えば「Fintech(フィンテック)」と言われる領域のことで、より正確には「暗号資産(=仮想通貨)を活用した領域」と考えてください。

          出典:Unsplash

          金融領域でのブロックチェーンの活用事例には、たとえば次のようなものがあります。

          • 暗号資産取引
            • ブロックチェーン技術を応用した法定通貨以外の新通貨の売買等を通して、キャピタルゲインを獲得することをインセンティブとしたビジネス
          • ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング)
            • 新規事業を始めようとする企業などが独自のデジタル権利証としてトークンをインターネットを通じて不特定多数の投資家に発行し、その対価として暗号資産を払い込んでもらい資金を集める
            • 新規株式を発行して資金調達する新規株式公開(IPO)に対し、ICOは証券会社など金融機関を仲介しないため、企業は手数料を抑え機動的に資金調達できる
            • 投資家は受け取ったトークンを企業のサービスに利用するほか、需給次第で値上がり益が期待できるというメリットがある
            • IPOのように厳密な審査や上場基準などがなく、法律の抜け穴を利用した詐欺が横行したため、現在はほとんど使われていない
          • STO(Security Token Offering、セキュリティ・トークン・オファリング)
            • 有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法
            • 有価証券に適用される法律に準拠するため、その販売には株式などの有価証券同様の発行体としての義務が発行者に課される
            • ICOの問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めている
          • IEO(Initial Exchange Offering、イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)
            • 仮想通貨取引所がトークンの販売業務、多くの場合で上場までをサポートする、資金調達を望むプロジェクトに対する一括パッケージのようなシステム
            • トークン自体に証券性はないが、取引所が完全にバックアップする形で資金調達が進むため、取引所の権威性・ブランド力を維持するために、自ずとプロジェクトの精査も行われる
            • 取引所を介した取引となるため、ICOと違いグローバルなアクセスが可能とは言えず、取引所に登録を済ませたユーザーのみを対象としたややクローズドなプロセスとなっている

          もともと仮想通貨に端を発するブロックチェーンはフィンテック分野と相性が良く、比較的スムーズにその導入が進められています。

          たとえば、大手フリマアプリの「メルカリ」はメルカリ内で得た売上金でビットコイン(BTC)が購入できるサービスをリリースしました。この「ビットコイン取引」はサービス開始からわずか3ヶ月で利用者が50万人を突破しており、ライトユーザー層にとっても馴染みやすいものとなっています。

          このようにフィンテックは、ブロックチェーンのビジネス導入におけるひとつの重要なエリアとなっています。

          なお、「Fintech」という用語に馴染みのある方も多いかと思いますが、必ずしも「ブロックチェーンの金融領域=Fintech」というわけではないため、注意が必要です(後に説明する「ハイブリッド領域」のビジネスを指して”Fintech”と呼ばれることもあります)。

          ブロックチェーンの応用領域②:非金融領域

          ブロックチェーンビジネス第二の領域は、「非金融領域」です。

          非金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことで、台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域といえるでしょう。

          非金融領域のブロックチェーンビジネスが注目を集めている理由は、次の通りです。

          1. 適用範囲が非常に広い(どの産業にも可能性がある)
          2. したがって適用領域の市場規模が大きくなる可能性が高い(政府予想では数十兆円規模)
          3. これまでに実現してこなかった産業レベルでのイノベーションが起こりうる可能性がある

          門戸が広がったとはいえ、まだまだ参加できるプレイヤーが限られている金融領域と比べて、非金融領域では、業務課題レベルからの解決が十分に可能です。

          そのため、新規事業立ち上げや経営企画の方だけでなく、あらゆる職種の方にとって、この領域について理解しておくことは自社の役に立つかと思います。

          非金融領域でのビジネス活用の考え方や事例については、本記事の後半で詳しく見ていきます。

          ブロックチェーンの応用領域③:ハイブリッド領域(非金融×暗号資産)

          ブロックチェーンビジネス第三の領域は、「ハイブリッド領域」です。

          ハイブリッド領域とは、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域です。シンプルにいえば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」ともいえるでしょう。

          わかりやすい例としては、いわゆる「トークンエコノミー」がこの領域のビジネスと考えられます。

          この手の取り組みでは、LINE Token Economyが有名です。

          出典:BUSINESS INSIDER

          LINEは2018年から「LINEトークンエコノミー構想」を掲げ、このハイブリッド領域へのブロックチェーン適用を模索しています。システムの複雑性やサービス横断に際しての課題に、ブロックチェーンを活用してサービスの永続性を図ろうという取り組みです。

          LINEは言わずと知れた国内最大のSNSツールであり、月間ユーザー数は約9,600万人(2023年12月末時点)にのぼります。膨大なユーザーがこのコミュニティに参加すれば、世界最大級のトークンエコノミーへと発展する可能性は十分に考えられるでしょう。

          こうした大規模なエコシステムが構築可能な一方で、トークンエコノミーに代表されるハイブリッド領域は、事業化にあたって細心の注意が必要な領域です。

          というのも、同領域は直感的にイメージがしやすく、美しいビジネスモデル(「●●経済圏」など)も容易に描けてしまうものの、現実的には下記のような課題が存在し、難度が非常に高くなるケースが多くなります。

          • 新興基盤の多くは1年ももたずに消えていく
          • いざサービス開発をしようという時に過去のユースケースが少ないため、バグやシステムトラブルが発生した時にエンジニアがお手上げになるケースが多い
          • 仮想通貨の値上がり益がインセンティブになる場合は、事業課題の解決のためのインセンティブがおろそかになってしまい誇大広告や詐欺の温床になるケースが多い

          そのため、事業企画担当者としてトークンエコノミーなどのハイブリッド領域におけるブロックチェーンビジネスを検討しているのであれば、提案を受けた開発基盤の「過去のケース数」を確認することをおすすめします(GitHubなどで)

          また、この領域は資金決済法の適用を受けるので、事業企画においても繊細な配慮が必要な点について法務部門から突っ込まれる可能性が高いため、注意しておく必要があるでしょう。

          ブロックチェーンの応用領域拡大を支える技術発展

          仮想通貨領域から非金融領域へといたるブロックチェーンの応用領域の拡大は、技術発展に伴って進んできました。

          実際に、ビジネスや産業に応用されている技術には、例えば次のようなものがあります。

          • Smart Contract(スマートコントラクト、契約自動化)
          • Traceability(トレーサビリティ、履歴追跡)
          • Tokenization(トークナイゼーション、トークン化)
          • Self Sovereign Identity(セルフソブリンアイデンティティ、自己主権型ID)

          これらのうち、本記事では、必ずと言っていいほどブロックチェーンでの応用が検討される、スマートコントラクトとトークンの2点について、簡単に説明します。

          Smart Contract(スマートコントラクト)

          スマートコントラクトとは、ブロックチェーンシステム上で規定のルールに従い、トランザクションや外部情報をトリガーに実行されるプログラムあるいはコンピュータプロトコルのことです。

          1994年にNick Szabo(ニック・スザボ)という法学者・暗号学者によって提唱され、エンジニアのVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)がEthereum基盤上で開発・提供し始めました。

          「契約(コントラクト)の自動化」を意味するスマートコントラクトは、事前定義から決済に至るまで、一連の契約のスムーズな検証、執行、実行、交渉を狙いとしています。

          スマートコントラクトの仕組みは、しばしば「自動販売機」を例に使って説明されます。

          自動販売機はその名の通り、人の手を介さずに自動で飲料を販売する機械であり、①指定された金額分の貨幣の投入、②購入したい飲料のボタンの押下、という2つの条件が満たされることで自動的に「販売契約」が実行されます。

          自動販売機自体はとてもシンプルな仕組みですが、「契約の事前定義→条件入力→履行→決済」という一連の流れを全て自動化しているという点でスマートコントラクトの好例といえるでしょう。

          なお、スマートコントラクトのブロックチェーン上での呼称は基盤によって異なります。たとえば、Etheruemであればそのまま「スマートコントラクト」と呼ばれていますが、HLF(Hyperledger Fabric)では「ChainCode」と呼ばれています。

          それぞれ名称は異なるものの、同じくブロックチェーン基盤上でのスマートコントラクトサービスを指している点には注意が必要です。

          ブロックチェーンの文脈では、フィンテックにおける送金業務の自動化やDEX(分散型取引所)、非金融領域では投票システムや国際貿易プラットフォームなど、多岐にわたるビジネスへの応用が進んでいます。

          こうした形で、スマートコントラクトがビジネスプロセス上に実装されることで、取引プロセスのデジタル化・自動化による取引コスト削減が期待できます。

          詳しくは以下の記事でも解説しています。

          Tokenization(トークン化)

          トークンは、ビジネスの文脈上では「交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」といった意味で用いられる概念で、非中央集権的なブロックチェーンとセットでビジネス活用されます。

          トークンには、代表的な4つの種類があります。

          トークンの種類 意味 身近な例
          Utility Token(ユーティリティトークン) 具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン ・パチンコ玉・図書券・電車やバスの切符・遊園地の入場券
          Security Token(セキュリティトークン) それ自体に金銭的価値が認められるトークン ・株券・債権
          Fungible Token (ファンジブルトークン) メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン ・純金(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)
          Non Fungible Token(ノンファンジブルトークン) 同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン ・土地(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

          ブロックチェーンの文脈でいうところのトークン化とは、物理的な資産をブロックチェーン上で取引可能なデジタル資産へと変換することを指します。これにより、地域的な障壁や仲介者を排除し、自由で平等なマーケットにおいて資産を細かく分割できます。

          とくにNFT(Non Fungible Token、非代替性トークン)は、唯一無二の「一点物」の価値を生み出せるトークンとして各業界から注目を集めています。現在では美術品や金、不動産など、多様な資産がトークン化されつつあり、その取引高は2022年に247億ドルを記録するなど実用化が急速に進んでいるジャンルです。

          詳しくはこちらの記事でも解説しています。

          ブロックチェーン3.0(非金融領域)の3つのビジネスモデル

          非金融領域におけるブロックチェーンビジネスには、事業化にあたって抑えておくべき3つの視点があります。

          これらはすべて、「取引関係における中央管理者とどのような関係を組むか」という問いに対する視点です。

          それぞれ、順にみていきましょう。

          非金融ブロックチェーンのビジネスモデル①:「直接化・自動化」

          非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの一つ目は、「直接化・自動化」です。

          これは、取引のプロセスを合理化することによって、いわゆる「取引コスト」を削減しようという視点です。

          ヒト・モノ・カネ・情報の流通プロセスにおいては、取引の主体者や取引自体の信用を担保するための付随業が至るところで発生しています。

          それらの業務を適切に遂行し、取引を無事に遂行する上では、「信用に値する第三者」を経由するのが常套手段です。

          しかし、第三者の介入は、中央管理者による規制や圧迫、中間マージンによるコスト高、商流の延長によるリードタイムの間延びなど、様々な取引コストを発生させます。

          また、外部企業に付随業務の履行を代行してもらうこと自体にも、大きな人件費がかかってきます。

          この問題に対して、「分散型台帳」技術とも言われるブロックチェーンでは、その仕組み上、ネットワークの参加者が個人レベルで(Peer to Peerで)、信用を担保しながら、安全に取引を行うことができます。

          また、スマートコントラクトによって、ブロックチェーンの基盤上で定型業務の履行を自動的に行うこともでき、これまで管理業務に費やされてきた膨大な時間や人件費を削減することもできます。

          非金融ブロックチェーンのビジネスモデル②:「民主化・透明化」

          非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの二つ目は、「民主化・透明化」です。

          これは、従来は管理者あるいはプラットフォームから参加者への一方向な上意下達だったコミュニケーションを、管理者に一方的に有利にならないように双方向化しよう、という視点です。

          先ほどみた「直接化・自動化」が中央管理者の存在による取引コストの増加にフォーカスしていたのに対して、「民主化・透明化」は、コミュニティ内の「情報の非対称性」に注目しています。

          一般に、ビジネスは情報の非対称性を作り出すことで単価を高めるところに基本の発想があります。

          ところが、インターネットの登場以来、「奪うのではなく与える」「隠すのではなくさらけ出す」「売るのではなく共有する」といった発想の転換が起こり始めました。

          「なんてことはない」一般人の集まりが、自作の動画を公開し、YouTubeというプラットフォームで圧倒的な人気を集めて大儲けする、といった光景も、もはや珍しいことではなくなりました。

          ブロックチェーンのもつ「非中央集権性」を活用することで、こうした最新のマーケティング手法を自社ビジネスに活用できる可能性があります。

          実際の活用イメージで言えば、不透明になりがちなコミュニティー運営、例えば、寄付、投票、投げ銭などの透明化、といった双方向性を想像するとわかりやすいでしょう。

          非金融ブロックチェーンのビジネスモデル③:「相対化・自由化」

          非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの二つ目は「相対化・自由化」です。

          これは、平たく言えば、「データの囲い込み」をなくして、みんなで利用していきましょうね、という視点です。

          これまでは、同じ業界でも、各社が異なるデータベースを用意し、それぞれの顧客に対してそれぞれ別の形でデータを保有していました。

          こうした「データの囲い込み」には、次のようなデメリットがあります。

          • データを共有してさえいれば確保できるはずの利用者の自由度が大きく下がってしまう
          • 同じ業界で、同じ資産を使っている間柄なのに、各社がそれぞれに同じようなデータを集める無駄な競争を行なっていたり、パワーの強い一社がデータを独占してしまって他社がどうにもならない(結果、業界としての進歩が望めない)

          これに対して、ブロックチェーンでは、各社がそれぞれにサーバーをもつのではなく、一つのネットワークを共有することで、デジタル資産を安全に共有することができます。

          これには、次のようなメリットがあります。

          • IDを他サービスに持っていって認証の手間を省ける、自分が著作権を有するコンテンツを自由にいろいろなプラットフォームで売れる、といった形で、利用者がサービスから受けられる恩恵が増す
          • 同業他社が安全にデータを共有し合えることで、あるいは川上と川下がスムーズに繋がることで、独占によるメリット以上に大きなリターンが得られる可能性がある

          「シェアリングエコノミー」「限界費用ゼロ社会」に向かっていくと言われる現代の社会において、こうした「相対化・自由化」の流れはますます高まっていくでしょう。

          ブロックチェーンのビジネス活用事例(非金融領域)

          Propy

          出典:Propy 公式サイト

          ブロックチェーンによる「直接化」の面白い例の一つに、不動産プラットフォーム「Propy」があります。

          同サービスではブロックチェーンを利用して、不動産業における売り手と買い手を仲介する紹介業者との煩雑なやり取りを簡略化しています

          従来の取引では契約書は紙ベースであり、仲介業者・買い手・売り手との間でこれまで非常に多くの手続きが必要であったため、たくさんの時間を要してきました。また、日本とアメリカでは不動産売買の仕組みにも細かな違いがあり、日本よりも複雑なやり取りになっています。

          たとえば、アメリカではMLSという誰でも不動産情報を見る事ができるシステムがあります。過去の取引事例や補修歴などかなり詳しい情報を個人でも閲覧できるので、瑕疵や条件のすり合わせ交渉などにも売り手と買い手が積極的に参加します。

          こういった背景があるアメリカの不動産業界において、ブロックチェーンの適用はコスト削減に大きく貢献します。

          書類をアップロードし、関係者のみがアクセスできるように個別設定しておけば、条件を満たしている場合にワンクリックするだけで自動的に電子署名を行います耐改ざん性に優れているブロックチェーンは、高額な取引が前提となる不動産売買にまさにうってつけの技術といえるでしょう。

          さらにPropyはタイトル保険(物件の所有権に対する保険で、取引時には判明していない不利事項が将来的に明らかになった際、その損害額が保険によって保証される)へのブロックチェーン導入にも意欲的です。

          スマートコントラクトと高いセキュリティを実装しているブロックチェーンは、仲介業者や代理業者のような中間マージンを収益としている存在が当たり前となっている業界において、「直接化」というコストカットを実現してくれます。

          SBT(ソウルバウンドトークン)

          出典:PR TIMES

          続いて、ブロックチェーンによるビジネスの「自動化」の例をあげましょう。

          この分野の代表格は、譲渡不可能なトークンであるSBT(Soul Bound Token、ソウルバウンドトークン)です。

          トークンなのに譲渡できないとはどういうことかというと、このトークンは学歴や職歴、受賞歴や取得資格など個人のステータスが紐づけられています。したがって、所有者の情報そのものに価値があり、所有権を移動させてもなんの意味も持たないため、NFTなどのように売買することができないという訳です。

          就職や転職において高い価値を持つこれらの個人履歴は、残念ながら虚偽の申告や詐欺に利用されるケースも少なくありません。証明書としての役割を持つトークンであるSBTは、ブロックチェーンの耐改ざん性を十分に生かした概念だといえるでしょう。

          このSBTを企業で活用することで、面倒な人事業務の一部をオートメーション化できます。人事・総務経験者であれば誰しもうなずくことかと思いますが、転職マーケットにおいて、採用する側の労力以上に煩わしいのが、前職側の人事業務です。

          SBTを利用したサービスでは、従業員の職務経験やスキルなどの証明を発行することで、前職の人事部からするともっともやりたくない在職証明などの業務、採用/応募時の確認作業を大幅に合理化できます。

          また、スマートコントラクトによる定型取引の自動履行も可能なので、これまでは信用担保のために人手を必要としていた「コストセンター」と位置付けられる業務を、「自動化」することが可能になります。

          ウォレットとSBTという形であれば、従来のデータベースのように異なるサービス間をAPIで連携する必要がないので、導入のハードルもそんなに高くありません。「自動化」と聞くと、ついAIを想像しがちですが、実はこうしたデータの真贋が問われるような局面の自動化であれば、ブロックチェーンに分があるといえるでしょう。

          寄付

          出典:LOOTaDOG 公式サイト

          読者のみなさんは、どこかの団体に寄付をしたことがあるでしょうか?あるいは、街頭に立って募金を呼びかけている団体に、迷いなくお金を募金したことがあるでしょうか?

          これらの問いに対しては、様々な立場からの様々な意見があることかと思いますが、その中の大きな論点の一つに、「お金を募金したはいいけど、本当にこの団体が慈善活動にちゃんと使ってくれるか怪しい」「下手な使い方をされるくらいであれば募金しないほうがいいのではないか」といったものがあります。

          つまりは「寄付や募金の運用管理者に対する信用」の問題です。この問題は、寄付や募金を活動資金源としているNPO法人などにとっては、ファンドレイジングをする上で非常に大きく、やっかいな課題です。

          こうした課題を解決する手段として、近年、ブロックチェーン技術の応用が進められています。

          オーストラリアに本社を構えるLehmanSoft社が提供する「LOOTaDOG」というサービスでは、専用のウォレットを活用することで、透明性の高い寄付を実現しています。

          ブロックチェーンは全ての取引の記録を、改ざんされることなく追跡できるという特徴をもっています。そのため、オープンソースのブロックチェーン基盤を用いてアプリケーションを作成すれば、寄付したお金が「いつ」「どこで」「どのように」使用されたかを正確に把握することができます。

          このように、トレーサビリティを簡単に実現できるブロックチェーン技術は、情報の非対称性によるリスクが極めて高い問題に見事にマッチしています。国内においても、令和6年能登半島地震が発生した際には、暗号資産を用いた寄付が大々的に行われました。

          したがって、様々なビジネスの「透明性」をブロックチェーンによって担保しようという動きは、今後ますます増えていくと考えられます。

          Socios.com

          出典:Socios.com 公式サイト

          ブロックチェーンの「民主化」の事例として有名なのが、スポーツチームのファントークンである「Socios.com」です。「チームの決定」に投票可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名フットボールクラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

          ファントークンの所有者には、クラブや選手に関する投票やアクティビティに参加する権利が与えられます。新しいユニフォームのデザイン選択やスタジアムのBGMなど、そのレパートリーは多岐に渡っています。そのため、毎試合スタジアムで応援することのできない遠方のサポーターに対しても、新たなクラブとの関わり合いを提供するサービスであるといえるでしょう。

          近年、インターネットの登場、余暇時間の増長、価値観の多様化の進展、可処分所得の増加など、様々な社会・経済的要因を背景に、消費者は「ただつくられた商品を購入して、消費して、終わり」ではなく、「自分の価値観にあったより長く、より深く愛せるもの」に対して、大きなお金を払うようになってきました

          そのため、ビジネス界では、特にtoCサービスをもつビジネスでは、従来の「顧客視点」のマーケティングからさらに一歩進んで、「顧客=身内」と考えるコミュニティマーケティングとでも呼ぶべき、ファンビジネスのマーケットが伸長しています。

          今回紹介しているSocios.comでも、そうした「ファンによるコミュニティの民主化」を推進しています。とくに、フットボールの世界では「サポーターは12人目のプレイヤー」といわれるように、サポーターとクラブとの結びつきがかなり強いです。

          「サポーター=応援する人」ではなく、「サポーター=クラブの意思決定者」として、より運営に近い領域に巻き込んでいくことで、より長く・より深く愛されるサッカーチームになることを目指しています。

          ブロックチェーンは、そういった局面で課題となりやすい「意思決定に対する投票」の問題を、すでにこれまで述べた特徴をもって、見事に解決しているのです。

          医療分野

          出典:shutterstock

          ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の例は、「医療分野」です。

          これは、かれこれ20年ほど叫ばれ続けている医療のデジタル化、特に電子カルテを始めとする院内データの共通化の問題を、ブロックチェーンで巧みに解決しようという試みです。

          医療データは、個人情報の中でも特に秘匿性が高く、セキュリティ要件が最も高く求められます。そして、医療機関ごとのデータ保存形式も異なるため、それらを共有していくハードルは非常に高いものになります。

          北欧とバルト海を挟んで隣接する人口130万人の小国・エストニアでは、行政サービスデジタル化の先駆けとして知られていますが、その中でもヘルスケア分野における取り組みにはブロックチェーンを用いて安全かつ迅速なデータ管理を行っています。

          従来のデータ管理では医療データのセキュリティを確保するのが難しいとされていますが、エストニアでは独自のブロックチェーンを開発し、改ざんからデータを守りつつ、そのデータを活用して医療の自動化・時短を推進しています。

          たとえば、患者が希望すれば再診はオンライン上で完結します。医師は患者に薬を処方する際、オンラインのシステムで処方箋を発行します。その後、患者は薬局に行き、IDカードを提示するだけで、薬剤師はシステムから患者の情報を取得し、必要な薬を用意できます。

          エストニアでは現在、処方箋の99%がオンラインで発行されているそうで、患者・医師・薬局の三方よしの節約術といえるでしょう。

          また、医薬品のトレーサビリティの実現もブロックチェーンで実現可能です。サプライチェーンにおける偽造品や在庫の問題を解決する手段として、ブロックチェーンが注目を集めており、実際にプロジェクト化されたのがThe MediLedger Projectです。

          The MediLedger Projectは、米Chronicled(クロニクルド)社が、ジェネンテック、ファイザー、ギリアド・サイエンシズといった大手製薬会社や医薬品サプライチェーン各社と共同で立ち上げた実験プロジェクトで、コンソーシアム型のブロックチェーンシステムを使うことで、「いつ」「誰が」「どの」薬の流通に関わったを追跡することができます。

          したがって、偽造品はすぐに記録上の照合によって弾き出され、安全な医薬品市場を確保することが可能です。このようにブロックチェーンは、新たな価値の創出を医療分野にもたらすことでしょう。

          ブロックチェーンを活用したその他のビジネス事例

          本記事では、ブロックチェーンのビジネス活用領域を金融/非金融/ハイブリッドの3領域に区分した上で、主に非金融領域のビジネスロジックを解説しながら、様々なビジネス事例を詳しく説明してきました。

          最後に、上では説明しきれなかったその他のビジネス事例について大手企業/スタートアップに分けてごく簡単にご紹介します。

          大手企業のブロックチェーンビジネス事例

          中心企業、事例名 領域・市場 概要
          LIFULL、ADRE(アドレ) 不動産賃貸 ブロックチェーンコンソーシアムによるデータの共有・一括管理を通した業界全体の取引コストダウン
          ウォルマート、スマート・パッケージ 食品小売 生鮮食品の衛生管理、配送システムの管理によるセキュリティの強化
          MITメディアラボ、MedRec 医療データ管理 イーサリアムを利用したプライベートチェーンで、過去の医療機関の同意や同意に必要な手続きを経ることなく、医療情報の再利用を可能にする
          デンソー 自動車生産 自動運転車に独自のブロックチェーンシステムを搭載、データの改ざんを防止
          日通(日本通運) 物流 サプライチェーン全体をブロックチェーンで管理し、偽造品を排除
          ソニー デジタルコンテンツ(教育、音楽、映画、etc) ブロックチェーンベースの著作権管理システムによる著作者の保護とデジタルコンテンツの安全な共有
          マイクロソフト ID(身分証明、個人認証) ブロックチェーンベースの個人IDを開発

          スタートアップのブロックチェーンビジネス事例

          中心企業、事例名 領域・市場 概要
          ガイアックス、美しい村DAO デジタルID 地域住民とデジタル住民のDAOによる地方創生プロジェクト
          Robot Cache デジタルコンテンツ売買(中古ゲーム) ブロックチェーンプラットフォーム上でのデジタルゲームの中古売買、不正防止
          サスメド 医療、臨床試験 ブロックチェーン技術を用いた臨床研究モニタリングの実証によるデータ改ざん防止
          Civic ID(身分証明、個人認証) 個人認証、年齢確認ができる自販機によるセキュリティの向上とコストの低下
          ChainLink & OpenLaw 法務 スマートコントラクトで法契約、オフチェーンの銀行同士を仲介

          まとめ

          ブロックチェーン技術は、その誕生から現在に至るまで、金融分野での基盤的役割から始まり、非金融分野やハイブリッド領域への広がりを見せてきました。特に、日本を含む世界中で、暗号資産を超えた幅広い応用が進む中、デジタルトランスフォーメーションや社会課題の解決を実現する有力な手段として注目されています。これからのブロックチェーン活用の可能性は無限大です。ぜひ、自社の課題解決や新しい事業モデルの構築に、この技術をどう活用できるかを考えるきっかけにしてみてください。

          トレードログ株式会社では、非金融分野のブロックチェーンに特化したサービスを展開しております。ブロックチェーンシステムの開発・運用だけでなく、上流工程である要件定義や設計フェーズから貴社のニーズに合わせた導入支援をおこなっております。

          ブロックチェーン開発で課題をお持ちの企業様やDX化について何から効率化していけば良いのかお悩みの企業様は、ぜひ弊社にご相談ください。貴社に最適なソリューションをご提案いたします。

          【解説】DeFi(ディーファイ/分散型金融)とは?ブロックチェーンによる未来の金融サービスを解説

          2025年現在、ブロックチェーン技術を活用したDeFi(ディーファイ)という金融システムが注目を集めています。分散型金融とも訳されるDeFiは、中央管理者を排除することでサービスへのアクセシビリティを向上させ、金融市場の新たな可能性を広げると期待されています。

          一方でメディア等でDeFiという言葉を耳にしたことはあるものの、DeFiがどういったものなのかきちんと説明できるという人は少ないのではないでしょうか。

          そこで、本記事ではDeFiの特徴やメリット・デメリットなどの基本情報から、DeFiの事例であるDEXやレンディングなどについても詳しく紹介していきます。

          DeFiとは?

          2025年現在、その動向が注目を集めるDeFi

          ブロックチェーンは2008年の誕生以来、ビットコインをはじめとした暗号資産(仮想通貨)、スマートコントラクトを利用した自動決済システム、ICOやSTOといった資金調達、トークンエコノミー、自立型分散組織(DAO)の形成など、様々な領域で活用されてきました。

          このような状況のなか、金融領域での新たなブロックチェーン活用方法として生み出されたのがDeFi(ディーファイ)です。金融庁HPでも、金融安定理事会による「分散型金融の金融安定上のリスク」が公表されるなど、官民問わずに次世代型のファイナンスとして注目を集めています。

          そんな新たな概念であるDeFiですが、そもそもどういう意味を持ち、従来の金融システムとはどのような違いがあるのでしょうか。

          DeFi=分散型金融

          DeFiとは、「Decentralized Finance」の略で、日本語では「分散型金融」と訳されます。

          わかりやすく説明するなら、中央の管理者がいない金融システムのことを指します。

          従来の金融システムでは銀行や証券会社といった中央集権的な管理者を経由してサービスを利用する必要がありました。しかし、DeFiでは仲介役となる中央管理者を介さずに、ユーザー同士で金融サービスを利用できます。

          したがって、中央管理者を介しての取引で発生していた無駄な手数料や承認までのラグといった金銭的・時間的コストを大幅に削減できるという訳です。

          中央的な管理者がいない、と聞くとセキュリティ性能を疑問に思う方もいるかもしれませんが、DeFiではデータの記録・管理にブロックチェーンを活用することで耐改ざん性能や耐障害性能を実現しています

          DeFiを支えるブロックチェーンとは?

          そもそもDeFiのデータ基盤となっているブロックチェーンとは一体どのようなものなのでしょうか。

          出典:shutterstock

          ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

          ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

          取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種でありながら、特にデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

          ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っていました。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

          これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

          また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

          さらにブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値ナンスといった要素によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

          ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

          新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています。

          また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出す行為を「マイニング」といい、最初にマイニングを成功させた人に新しいブロックを追加する権利が与えられます

          ブロックチェーンではマイニングなどを通じてノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持つことで、データベースのような管理者を介在せずに、データが共有できる仕組みを構築しています。参加者の立場がフラット(=非中央集権型)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

          こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

          詳しくは以下の記事でも解説しています。

          DeFiのメリット

          出典:Unsplash

          次に、DeFiのメリットについて詳しくご紹介していきます。

          金銭的・時間的コストを削減できる

          DeFiにおける最大のメリットは、なんといっても金融機関が管理する従来の金融システムと比べて手数料が抑えられることです。

          中央集権型の取引では、取引する度に金融機関を仲介する必要があるため余計な手数料が発生してしまいます。

          DeFiは分散型の組織構造のため当事者同士で直接取引でき、大幅な手数料削減が可能です。

          また、DeFiでは中央管理者がいない分、「スマートコントラクト」と呼ばれるあらかじめ設定されたルールに基づいて条件を満たした場合にのみ自動的に取引を行うプログラムによって取引が遂行されます。

          したがって、信用履歴審査や本人確認なしに誰でもサービスを利用できる仕組みが構築できるため、申請や承認といった従来の煩雑な取引プロセスを省くことができるでしょう。

          ウォレットさえあれば全ての人が世界中のサービスを利用できる

          DeFiは、「ウォレット」と呼ばれる仮想通貨を管理する財布のような機能を持ったツールさえあれば、場所や時間を問わずに世界中の様々なDeFiサービスでも利用できます。

          一つのウォレットで世界中のサービスが利用できるということは、今までのように資金を移動する際にわざわざ両替をしたりアカウントを使い分けたりする必要がなくなるということです。

          したがって、世界中の金融サービスをシームレスに体験することができるでしょう。

          また、DeFiにはこれまでによくある「会員登録」や「審査」といった口座開設に伴う面倒な手続きがありません。自分のウォレットを接続するだけであらゆるサービスを利用することができるため、国籍や年齢、性別などに関係なく、全てのユーザーが平等に利用できるのです。

          これは日本に住んでいるとあまり感じられないかもしれませんが、海外では銀行口座を持っていないない人が一定数います。世界銀行の発表によれば、2018年時点で銀行口座を持てない成人の数は世界全体でおよそ17億人もいるそうです(世銀のデータでは15歳以上を成人と定義)。

          こういった銀行口座を持ちたくてもさまざま理由で持てない人も、ウォレットさえ作成すれば、地域の垣根なく世界中の金融サービスを活用することができます。

          コンポーザビリティが高い

          DeFiでは従来の金融サービスにはなかった「コンポーザビリティ」を実現しています。

          コンポーザビリティとは、日本語では「構成可能性」と表されます。これは、あるシステムを構成する要素同士が連携して機能することを意味します。

          ブロックチェーン上のデータは分散して管理されます。DeFiに用いられるブロックチェーンはパブリック型と呼ばれるもので、だれもが閲覧できる状態(=オープンソース)になっています。

          つまり、エンジニアは既存のDeFiのプロトコルを参考にすることで、新たなDApps(分散型アプリケーション)の構築に活用できます。様々な要素を組み合わせつつ、利便性の高い新たなアプリケーションが次々に開発されているのです。

          このように、DeFiでは、まるで「レゴブロック」を組み合わせて新しい形をつくるかのようにして複数のプロトコルを組み合わせることで、デジタルコンテンツが相互につながりやすくなる未来を実現しています。

          このような発展的な概念は既存金融にはないDeFiの大きなメリットのひとつでしょう。

          耐改ざん性・耐障害性が高い

          ブロックチェーンによる金融システムでは、すべてのユーザー間の取引はブロックチェーン上に記録され、インターネット上でだれでも確認可能です。したがって取引の透明性も高く、不正行為やデータの改ざんを行うことはほぼ不可能であるというメリットがあります。

          また、前述のようにDeFiではデータを分散して保有します。したがって、従来のデータベースのように停電等のトラブルによってデータセンターが稼働できなくなってしまうようなことはありません。これは情報通信社会の最大の敵ともいえるアクセス障害に対して、ブロックチェーンが優れた耐性を持っていることを意味します。

          こういった安定したネットワーク環境を実現できるというのもDeFiの特徴といえるでしょう。

          DeFiのデメリット

          出典:Unsplash

          このような素晴らしいメリットがある一方で、現状、DeFiが私たちの生活に浸透しているとはいえません。これには、DeFiが抱えるいくつかのデメリットが関係しています。

          ここからは、DeFiのデメリットについて解説していきます。

          バブル崩壊・変動損失リスク

          DeFiは仮想通貨を運用するシステムであり、その価値の上下動によって変動損失リスクがあります。現在では良くも悪くもDeFi全体としてはその変動は落ち着きつつあります。しかし、過去には仮想通貨の下落を受けてDeFiでの預かり資産(TVL:Total Value Locked)が大幅に下落することもありました。

          こういった下落の要因の一つは、信用不安です。ある仮想通貨の価値が急落したとします。その際に、この仮想通貨を担保に他の仮想通貨を借りることができるDeFi市場では、トレーダーはリスクを軽減するために、DeFiに預けた資産などの投機的な資金を一斉に引き上げます。これにより、一気にDeFi全体の資産価値が負の影響を受けます。これは、担保としていた仮想通貨の担保価値が毀損すれば、強制売却などの連鎖的な影響を受ける可能性があるためです。

          実際にステーブルコインのテラUSD(UST)が急落した際には、USTを発行するプラットフォームのテラ(LUNA)は、24時間で95.9%下落しました。それに連動するようにして、アンカープロトコル(ANC)、アストロポート(ASTRO)、マーズプロトコル(MARS)といったDeFiプラットフォームは、トークン価格が80%以上急落しました。

          このように、DeFiのエコシステムはいくつかの主要な仮想通貨の価値変動によって大きな影響を受けるというデメリットがあります。

          消費者保護の仕組みがない

          DeFiにおいて「消費者保護の仕組みがない」こともデメリットの一つです。従来の金融システムでは、銀行や証券会社などの中央集権的な組織が監督されており、万が一トラブルが発生した場合でも、法的な枠組みや保護措置が整備されています。

          しかし、DeFiはブロックチェーン技術を基盤とし、中央管理者を介さずに金融サービスを提供するため、利用者自身がすべての責任を負うことになります。例えば、スマートコントラクトのバグやハッキングによって資産が失われた場合、被害者が補償を受ける仕組みが基本的に存在しません。

          消費者保護は未整備のため、DeFi側の過失であっても弁済を受けられない可能性が高く、プロジェクト自体が詐欺や不正を目的としているケースも少なくないため、そのような問題に直面しても利用者が訴えるべき相手や法的な救済手段が不透明なことが多いです。

          プログラムにおける脆弱性は低かったとしても、消費者保護の観点においてはまだまだ課題が残っており、リスク管理や自己責任が強く求められる点がDeFiの大きな課題となっています。

          ガス代の高騰

          これはDeFi自体の問題というよりは、ブロックチェーン自体の問題ですが、ブロックチェーンのプラットフォームは、利用者が増えるとガス代(手数料)が高騰してしまいます

          DeFiではイーサリアム(ETH)ベースの高性能なアプリケーションを構築します。イーサリアムでは、利用者増加に伴うスケーラビリティ問題(ブロックの中に書き込める取引データの数が限られていることが引き起こす、処理速度の遅延や手数料の高騰)が発生することがあるため、時期によって手数料負担が増える点は注意が必要です。

          一方で、イーサリアムの大型アップデート「イーサリアム2.0」ではスケーラビリティ問題の解決が掲げられており、今後はこの課題が少しずつ改善していくのではないかと予想されます。

          DeFiに欠かせない概念

          出典:Unsplash

          DEX(分散型取引所)

          DEX(分散型取引所)とは、ブロックチェーンのスマートコントラクトを活用して構築されたP2Pの取引所のことで、管理者を介さずにユーザー同士で直接暗号資産の取引を行うことができます。

          ユーザーはウォレットの秘密鍵の管理を自身で行う必要があるものの、従来の中央集権型の取引所である「CEX(Centralized Exchanges)」では必須だった割高な仲介手数料や本人確認などの手続きが不要になり、トレーダー同士でシームレスな金融取引を実現しているサービスです。

          代表的なDEXとしてはUniswap、PancakeSwap、SushiSwap、Curveなどがあり、2023年3月11日には過去最高の250億ドル(約3兆3800億円)の取引高を記録しています。

          DEX(分散型取引所)の取引高、3月11日に過去最高250億ドルを記録

          イールドファーミング

          イールドファーミングとは、2種類の仮想通貨をDEXに預け入れ、その報酬として金利や取引手数料の一部を利息として受け取ることです。イールドは「利回り」、ファーミングは「農場・収穫」という意味です。

          DeFiでは、DeFiのプラットフォームに仮想通貨を預け入れると、DeFi内の取引が活発化して流動性(資産トレードの円滑性)が生まれます。Defiには銀行や暗号資産取引所の運営会社のような管理者がいないため、「AMM(自動マーケットメイカー)」というプロトコルによって仮想通貨の買い売りが自動的に行われています

          このAMMが機能するためには、「流動性プール」と呼ばれるDEXに預けられた暗号資産の保管場所に一定以上の仮想通貨が貯められている必要があります。しかし、仮想通貨をプールすることには様々なリスクが伴うため、仮想通貨を預け入れてくれた人にはリスクを背負ってもらう対価としてインセンティブを付与する仕組みとなっているのです。

          つまり、イールドファーミングは資金である仮想通貨をDEXに集めるための重要な要素だといえます。

          イールドファーミングには、後述するインパーマネントロスという問題も存在します。しかし、それらリスクを踏まえた上でも非常に高い利回りが見込めるケースもあるため、イールドファーミングを行うユーザーは一定数存在しています。

          流動性マイニング

          流動性マイニングはイールドファーミングと非常によく似た概念です。イールドファーミングでは、仮想通貨をDEXに預け入れた際に、金利や取引手数料の一部を(多くの場合、その預け入れた仮想通貨で)受け取っていました。

          しかし、流動性マイニングでは対価として同じ仮想通貨ではなく、独自のガバナンストークン(保有者に組織運営に参加する権利が付与される)を受け取ります

          したがってイールドファーミングの方が流動性マイニングよりも大きく、包括的な概念ではありますが、現在ではほとんど同義で使われていることが多くなっています。

          これは最近のDeFiアプリケーションの多くで流動性マイニングが導入されているためです。流動性マイニングの登場で、数百%を超える異常な高さの年利を提供できるようになりました。ガバナンストークンの価値が不安定だと思ったような売却益は得にくいですが、実績のある取引所を利用することで、安定した利益を獲得することができます。

          この流動性マイニングは、間違いなくDeFiブームの火付け役だといえます。

          レンディング

          レンディングとはDeFiのプラットフォームに仮想通貨を貸し出し、仮想通貨が借りられた際に借り手から支払われる利息によって利益を得ることです。日本語では「貸し付け」と訳されます。

          流動性マイニングと同様に仮想通貨が集まっているプールが存在しており、プールに仮想通貨をレンディングし、借りたい人は仮想通貨をプールから借りていく仕組みです。銀行の定期預金のようなイメージです。

          レンディングで貸し出した暗号資産については、貸出期間や利率(固定)など取引所が好きなように運用ができます。

          レンディングは、イールドファーミングや流動性マイニングのように2種類の仮想通貨を預け入れないため、インパーマネントロス(後述)のリスクがありませんそのため、安定的なリターンを得られ、長期運用に向いています。一方で、利息はほかの方法よりは低く設定されていることが多いです。

          ステーキング

          DeFiにおけるステーキングとは、仮想通貨をDEXに預け入れることで、その期間に応じて報酬を得られる仕組みです。ステーキングという言葉には、「出資する」という意味があります。

          ステーキングの最大の特徴は、コンセンサスアルゴリズムにPoS(プルーフオブステーク)を採用しているブロックチェーンのみが、ステーキングできる仮想通貨であるということです。

          ステーキングもレンディング同様、2種類の仮想通貨を預け入れないため、インパーマネントロスのリスクがありません。一方、レンディングに比べて、預け入れ期間中の引き出し制限がない分、金利がやや低めに設定されています。

          また、レンディングでは利率は預け入れ時の利率で固定されますが、ステーキングは市況に応じて利率が変動する仕組みです。

          Pancakeswap(パンケーキスワップ)という取引所では、流動性マイニングによって得たガバナンストークン「CAKE」をステーキングする機能が付いています。「CAKE」をステーキングして保有しておけば、さらに高い年利で増やしていくことができるため、「CAKE」が流動性マイニングの報酬として大量に発行されて価値が大きく変動してしまうのを防げます。

          インパーマネントロス

          インパーマネントロスとは、DEXに預けていたペアのトークンの価値が、単に保有していた場合に比べて低くなることです。

          イールドファーミング(流動性マイニング)を行う際は、ペアのトークンを1:1の価値割合で預け入れます。当然ですがその後、それらの仮想通貨の市場価格は変化します。しかし、流動性プールでは、二つの通貨が常に同価値(1:1の割合)になるように調整されます。

          この原因は、AMM(自動マーケットメイカー)の仕組みとアービトラージャー(金利差や価格差に注目して割安な投資対象を買い、割高な投資対象を売る投資家)の存在です。

          AMMでは外部情報を使って市場価格を設定していません。そのため、異なる市場間でトークンの価格差が起きると、アービトラージャーは AMMの価格と外部市場が均衡するまで、価格の低いトークンを買ったり、価格の高いトークンを売ったりし続けます。

          このアービトラージャーの売買によって流動性プール内のトークン価値は外部市場に自然と近づいていくため、流動性プールのバランスは常に1:1に保たれているのです。

          ここまでだと、「同じ価値割合なら、預けたトークンがそのまま返ってくれば損失は出ないのでは?」と思うかもしれません。

          実は、流動性を解除した際に戻ってくるのは、預け入れ時のトークンの数量ではなく、預け入れ時の流動性プールの中の自分のシェア率に応じたトークンが戻ってきます。元々預けたトークン数量が返ってくるわけではないので、価値の変動がゼロではない限り、必ずインパーマネントロスは発生します

          このように全体像を明らかにすると、アービトラージャーの利益は流動性プールから取られていることにお気づきかと思います。つまり、この利益分がインパーマネントロスの正体です。

          インパーマネントロスは価格変動が大きい仮想通貨の方がその損失も大きくなります。したがって、新興の草コインなどには高金利が設定されているケースがほとんどです。一方で、有名な仮想通貨やステーブルコインでは、その損失も小さくなることが一般的ですが、その分、利回りも小さくなってしまいます。

          このようなロスがありながらも得られた手数料や金利によって損失は相殺され、利益をあげることが可能なため、DeFiでは流動性マイニングがいまだに人気を博しています。

          DeFiアプリケーションの事例

          Uniswap(ユニスワップ)

          出典:Uniswap Interface

          Uniswap(ユニスワップ)は、2018年にイーサリアム上にローンチされたDEXの1つです。上述のAMMの先駆けとしても知られており、中央的な管理者のいないシームレスな金融システムを構築し、仮想通貨取引の迅速性、安全性、匿名性を確立させた存在です。

          同サービスは、「Uniswap Labs」という企業がUniswapの開発を主導していますが、独自のガバナンストークンである「UNIトークン」を発行しています。そのため、実際の組織運営に際してはUNI保有者からの投票によってローンチやプロトコルなどの内容を決定しています。

          こういった優れた仕組みはほかのDEXの参考にもなっており、SushiSwapやPancakeSwapといったUniswapの使用するオープンソースコードをコピーしてつくられているDEXも数多く存在します。

          しかしながら、Uniswapは現在でも、24時間当たりの取引高で世界トップであり、まさにDEXの「王道」といえるでしょう。

          Compound(コンパウンド)

          出典:Jinacoin

          Compound(コンパウンド)は、2018年に開始された仮想通貨のレンディングサービスを提供するDeFiアプリケーションです。

          Compoundでは、レンディングの利用で「cToken」を獲得できます。この「cToken」とはCompoundで発行されているトークンで、アプリ上で貸し出しをおこなったユーザーに対価として付与され、レンディングの金利収入はこのトークンに追加されていく仕組みとなっています。

          イーサリアム上のERC-20規格でつくられているため、通貨を売却する際はcTokenに付与されている金利分も併せて売却することになりますが、ほかのDeFiアプリ内で「通貨」として利用できるという特徴があります。

          また、Compoundでは仮想通貨を借りた場合は利息を支払う必要がありますが、借りることでも(もちろん貸すことでも)「COMPトークン」を獲得することができます。COMPはガバナンストークンとしても人気が高く、一般的な取引所で売買することもできるので、実質的に利息の支払いを抑えられる仮想通貨も存在します。

          さらに、Compoundではクロスチェーンプラットフォーム「Gateway」が導入されています。イーサリアムをはじめとする各ブロックチェーンは、利用者が増えると通信にかかる負荷が大きくなりガス代が高騰するという「スケーラビリティ問題」が生じています。

          そこで、「Gateway」では異なるブロックチェーン上で発行された仮想通貨を担保にすることで、別のブロックチェーン上に発行された仮想通貨をCompound上で借り入れることができる仕組みを実現しています。

          このようにCompoundは、ユーザーの使いやすさを考慮したユニークな仕組みが整備されているDeFiとして知られています。

          AAVE(アーベ)

          出典:THE CRYPTO TIMES

          AAVE(アーベ)は近年注目を集めているレンディングプラットフォームで、イーサリアムチェーンやPolygonチェーンなどで稼働しています。

          AAVEでは現在、30種類以上の仮想通貨に対応しており、その基本的な機能はほかのレンディングプラットフォームのように、自身が保有している仮想通貨を預け入れて利息を得ることです。

          しかし、AAVEにはフラッシュローン信用委任システムという特徴的なシステムがあります。フラッシュローンとは、借入と返済を瞬時に行う仕組みのことで、無担保で仮想通貨を借りることができます。また、借入の際に、借り手が固定金利または変動金利のどちらかを選択でき、借入の自由度が大きく増加しています。

          信用委任システムとは、AAVEに仮想通貨を預け入れているユーザーが自身の与信枠(預け入れた仮想通貨を担保とする権利)を一時的に他社に譲渡できる仕組みのことです。与信枠を委任したユーザーは、通常の利息に加え、委任先のユーザーからも利息を得られるため、博識な第三者に譲渡した場合、自身で運用するよりも良い利回りを受けられる可能性があります。

          フラッシュローンと信用委任システムの実際の利用には、スマートコントラクトのプログラミングなどの専門知識が求められますが、アービトラージャーから根強い人気があります。上級者向けのアプリケーションという見方もできますが、AAVEを活用してより多くの仮想通貨が取引されるようになったことは押さえておきましょう。

          まとめ

          今回はDeFiについて様々な角度から解説をしました。DeFiでは仮想通貨を取り扱う関係上、どうしても法定通貨同様の安定性を望むのは難しいかもしれません。そして、一部の有識者が指摘するように法的規制が強まっていることも事実です。アメリカでは商品先物取引委員会(CFTC)や証券取引委員会(SEC)がDeFiプロジェクトに対する取り締まりを強化するなど、依然として不安定な状態が続いています。

          しかし、現在の金融システムもすぐにいまの形になったわけではありません。長い歴史や各国での法制化、数々の恐慌といった紆余曲折を経てようやく自由で安定したモデルが構築されているのです。

          そういった意味ではDeFiはまだ「成功」か「終焉」かの判別をするフェーズにすら立っていないのかもしれません。分散型金融という新しい金融の形に、今後も要注目です。

          NFTトレカとは?最新デジタルトレカの魅力を紹介!

          「NFTトレカ」というワードをSNSやニュースなどで目にする機会が増えてきました。NFTトレカは、有名アイドルや人気スポーツと共に取り上げられる事が多いため、気になる方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では「そもそもNFTとは?」「普通のトレーディングカードと何が違うの?」といった疑問に対する答えや、具体的な銘柄のご紹介も交えてNFTトレカを解説していきます。

            大きな話題を呼ぶ ”NFTトレカ”

            実物のトレーディングカードは、一部の熱心なコレクターに支持されるマニアックな世界という印象があったかもしれません。しかし、2020年10月に人気アイドルグループのSKE48のNFTトレカが発売されると、SNSを中心に大きな話題となり、NFTトレカというワードが一気に拡散されました。

            出典:Pexels

            その後も国内のNFTトレカでは、2021年10月に人気アイドルグループのももいろクローバーZのNFTプロジェクトである「ももクロNFT」や、同年11月にはDeNAが横浜DeNAベイスターズ所属選手の名シーンをNFT化した「PLAYBACK9」などがローンチされました。

            2022年には漫画家・手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」や、タツノコプロ創立60周年を記念して「ヤッターマン」「ガッチャマン」といった名作がNFT化されています。

            このように、現在も続々と新たなプロジェクトが立ち上がっており、様々なジャンルのNFTトレカが発売されています。

            そもそもNFTとは?

            NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

            出典:shutterstock

            NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

            つまり簡単にいうと、NFTとは耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

            NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

            NFTが必要とされる理由

            世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

            例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができますが、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

            そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

            これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

            NFTとブロックチェーン

            NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

            ブロックチェーンは一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組みです。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため偽のデータが出回ったり、内容を改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

            NFTではこのようなブロックチェーンが持つ高いセキュリティ性能を利用して、web上のデータが本物なのか偽物なのかを誰でも判別することを可能にし、データの希少性を担保できます。ブロックチェーンの活用によって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれているというわけです。

            NFTトレカとは?

            NFTトレカとは、その名の通りNFT化されたデジタルトレーディングカードのことです。トレーディングカードについての基礎知識から、それらのNFT化についてさらに紐解いていきましょう。

            従来のトレーディングカード

            出典:Pexels

            トレーディングカードはさまざまな絵柄や写真が印刷された、収集および交換目的で販売される鑑賞用または対戦ゲーム用のカードです。印刷される対象は、スポーツ選手、アニメキャラ、アイドル、ファンタジー作品など非常に多岐にわたります。

            希少度の高いカードや対戦時に強力な効果を持つカードは価値が高いとされ、ものによっては数百万円以上の高値で取引されています。

            トレーディングカードの唯一性・希少性といった価値を保証するために、信頼できるカード鑑定会社というものが存在します。BGSPSAの2社が有名で、それぞれの評価基準は微妙に違えど、

            1. 本物であることの証明:カードが専用のハードケースに入れられる
            2. 唯一性の付与:カードに固有番号が振られる
            3. 希少性を担保:非常に厳しい評価基準をもとにカードの状態を格付けする

            といったように、価値のある1点モノであることが証明されます。

            NFT×トレーディングカード

            上記のような従来のトレーディングカードをデジタル化しようとしたとき、単に実物のカードをスキャンしただけの画像データではいくらでもコピーが出来てしまい、価値はほとんど生まれません。価値が無いということは、それをコレクションをしたり高値で取引するということもありえませんでした。

            出典:Pexels

            そこでNFT技術を用いて、デジタルデータに対して本物のトレカのような唯一性・希少性をもたせたのがNFTトレカです。

            NFTによって「替えが効かないもの」化されるだけでなく、これまでの歴代所有者や取引履歴が記録される点が、従来のトレカにはないメリットです。さらにデジタルデータであるため、静止画に限らず音声や動画をトレカ化できる点も、NFTトレカの魅力の一つです。

            さらに、NFTトレカはNFTマーケットプレイスで仮想通貨を使った取引が可能であったり、同じブロックチェーン内であれば異なるゲーム同士でお気に入りのカードを使えるなど、これまでのトレカには無い新しい楽しみ方も生まれています。

            いま大注目のNFTトレーディングカード6選

            続いて、2025年時点で話題となっているNFTトレカをご紹介します。

            チャンピオンズTCG~アザーワールドリー・マジック~

            出典:チャンピオンズTCG『アザーワールドリー・マジック』公式ウェブサイト

            「チャンピオンズTCG〜アザーワールドリー・マジック〜」は、トレーディングカードゲームの代表作「マジック:ザ・ギャザリング」などの大会で活躍したプレイヤーであるMiles Malecらが創り上げた次世代型デジタルトレーディングカードゲームです。

            「マジック:ザ・ギャザリング(MTG)」は1993年にウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から発売された世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)であり、希少なカードは数千万円を超える価格で取引されている、世界中にファンを抱えるトレカの金字塔といえる存在です。

            そんなMTGでは、カードの偽造やコピーが容易であり、所有権の証明が困難という問題が運営側の悩みのタネでした。また、ユーザーとしてはレアリティが設定されているカードの印刷枚数が明確でない場合や再版される場合に、その希少性が保証されない問題がありました。

            「チャンピオンズTCG〜アザーワールドリー・マジック〜」ではブロックチェーン上に記録されるNFTを基盤とすることで、カードごとに固有のIDと所有権情報を紐付け、その所在を証明します。所有権を明確に証明することにより、高価なカードの偽造や転売ヤーによる買い占めを防ぐことができます。

            また、NFTであれば各カードの発行枚数がブロックチェーン上で記録されるため、希少性が明確に保証されます。これにより、コレクター価値の高いカードの価値が守られます。デジタルデータの価値を担保することで、現物のカードと同様に他のユーザーと自由にトレードすることが可能になります。カードパックを購入するだけでなく、自由に特定のカードを購入してコレクションを構築したり、デッキをカスタマイズしたりする、いわゆる「課金勢」の楽しみも増えるでしょう。

            Battle of Three Kingdoms

            こちらのNFTトレカは、double jump.tokyoが株式会社セガとタッグを組んで開発が進んでいる本格ブロックチェーンゲームです。アーケードカードゲームでおなじみの「三国志大戦」のライセンス許諾を受けているため、孫権ら三国志でおなじみのキャラクターはもちろん、新たにイラストレーターが書き下ろしたイラストがNFT化されており、既存のファンも新規のプレーヤーも楽しめる仕様になっています。

            三国志大戦シリーズはアーケード版以外にも家庭用ゲーム版やスマホアプリ版もローンチされていましたが、ゲーム内のカードに物理的なカードと同等の価値をもたせることはできませんでした。しかし、本作ではNFTを使うことで、ゲーム内で獲得したカードやアイテムがデジタル資産としての実質的な価値を持ち、プレイヤー間での交換や売買が可能になります。カードの希少性や所有の証明が透明に行われるため、コレクションとしての楽しみも深まり、「遊びながら稼ぐ(GameFi)」といった新しいプレイ体験を楽しめるでしょう。

            また、本作ではブロックチェーンのみならずAI技術も活用されており、キャラクターはユーザーとの対話を通じて学習し、それぞれの性格を形成していくとのことです。2024年冬のリリースに向けてティーザー動画も公開され、言語も英語・中国語・韓国語に対応予定。今後の動向に目が離せません。

            CryptoSpells

            出典:CryptoSpells

            「CryptoSpells(クリプトスペルズ)」は、日本最大級の対戦NFTカードゲームです。リリース日は2019年6月と現存するNFTトレカたちよりもかなり早い時期から参入しており、プレーヤー数は2023年6月時点で16万人を超えている人気NFTの一つです

            従来のトレカのように、対戦において強力なカードや発行枚数が限られるレジェンドカードは希少性が高く、取引所において数十万円で売買されています。しかし、このゲームならではの特徴として、プレイヤーは世界に1枚だけのオリジナルカードを作成することができ、それらが売買される際に作成者は売買手数料の30%〜50%を受け取ることもできます。

            こういった理由からいまだに幅広いファンが根付いており、GameFi専門のNFTマーケットプレイス「Zaif INO」で限定NFT100枚が販売された際には同マーケット史上最速の28分で完売するなど、今後も成長が期待されるNFTトレカとなっています。

            「クリプトスペルズ」の限定NFT100枚が史上最速の28分で完売

            Sorare

            出典:Sorare

            国外のNFTトレカの代表格でもあるSorareは実在するアスリートを題材としたNFTトレカです。購入したNFTトレカで自分だけのオリジナルチームを作ってそのスコアを競い合います。当初はフットボールに焦点を当てたサービスでしたが、2022年にNBA(ナショナルバスケットボール協会)やMLB(メジャーリーグベースボール)と連携し、スポーツ界全体を盛り上げています

            Sorareの最大の特徴は、選手カードの性能が現実の試合結果とリアルタイムで連動している点です。自分の持つ選手がゴールやアシストを決めると、Sorare上でも強化されます。つまり、いかにゲーム内のチームに実際に活躍している旬の選手を組み込めるかが、ハイスコアを出す鍵となってきます。ゲーム内でスコア上位のプレイヤーには、レアカードが配布されるのに加え、報酬としてイーサリアム(ETH)が与えられます。

            チームを構成するNFTトレカは、Sorare内での売買の他にもゲーム外のNFTマーケットプレイスによる取引によって入手できます。当然のことながら、現実世界で好成績をおさめる選手のNFTカードには人気が集中し、過去には次世代フットボール界のスーパースター、アーリング・ハーランド選手のユニークカードが約7831万円で取引されることもありました

            NFTトレカはなかなか価値が安定しない面がありますが、Sorareでは常に世界中のプレーヤーたちが取引を行っており、初心者ユーザーでも参入しやすい下地が整っているといえるでしょう。

            Collect Trump Cards

            出典:Val morgan

            「CollectTrumpCards」は、アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏が発売したNFTトレカです。価格は1枚99ドルで、自身の宇宙飛行士姿、ロックスターに扮してギターを振り回す姿、スーパーヒーロー化し目からビームを出している姿など、様々なパターンのトランプ氏が描かれており、一定量以上の購入者には、トランプ氏とゴルフや夕食を楽しめる権利やトランプ氏をモチーフにしたアート作品を手に入れる権利が与えられるなど、デザインだけでなく特典もユニークなNFTとなっています。

            2023年4月には「Collect Trump Cards」の第2弾をリリースしましたが、わずか数時間で売り切れ、売上は約6.16億円(460万ドル)に達しました。話題性だけではすぐにバブル崩壊の道を辿ってしまうのがNFTの定石とされていますが、トランプ氏は自身の大胆な行動でメディアを賑わせ、NFTの価格も上昇している模様。2024年に再び大統領へと返り咲いたトランプ氏の絶大な人気も相まり、かなり興味深いNFTトレカとなっています。

            Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)

            出典:Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)

            ポケモン社がリリースしたスマートフォン向けアプリ「Pokémon Trading Card Game Pocket(通称:ポケポケ)」は、デジタルカードコレクションとバトルを組み合わせた次世代型のデジタルトレーディングカードゲームです。同社は2024年6月にデジタルカードの使用履歴を管理する特許を取得。この技術により、カードの対戦履歴や使用頻度などを記録し、それらの情報をカード表示に反映させる可能性が出てきました。

            この特許はNFT技術と高い親和性を持ち、将来的にデジタルカードの所有権を明確に管理し、唯一無二のデータとして保証する可能性が期待されています。現時点ではアプリ内のデータがNFTとして取引可能ではないものの、デジタルカードが使用履歴を蓄積できる仕組みであることからNFT化の噂も広まっています

            また、アプリの利用規約では「リアルマネートレード(RMT)」を禁止しており、NFT特有の資産性や換金性は排除されていますが、カードが一意性を持つという意味でコレクション性を重視した仕様です。今後、ブロックチェーンやNFTの導入に向けた拡張性を有しており、さらなる発展が期待されています。

            「ポケポケ」は2024年10月のリリース直後から注目を集め、デジタルカードゲームとしての新たな市場を開拓する可能性を秘めています。本家「ポケットモンスター」シリーズとのコラボレーションやイベント展開にも注目が集まっており、ポケモンファンやNFT業界の双方から目が離せない存在です。

            まとめ

            今回はデジタルのトレーディングカード、NFTトレカについて解説しました。

            現在のNFTトレカ市場では、様々なジャンルが形成されています。一企業にとどまらず、欧州サッカーリーグやNBAといった、そのスポーツを代表するリーグそのものが続々と提携し、NFTトレカが非常に注目されている分野であることが分かります。

            現実のトレーディングカードには「遊戯王」や「ポケモンカード」といったビッグタイトルが存在しており、仮にそれらがNFTトレカに参入することがあれば、盛り上がりはさらに加速することでしょう。

            一方で価値がなさそうなものに価値を釣り上げるべくNFTを利用したものの、メッキが剥がれて価格が暴落しているケースも散見されます。価値を正しく表現するビジネスのあり方も含めて今後の動向に注目が集まります。