令和6年能登半島地震を受けて仮想通貨で寄付できる募金先が誕生。新たな被災地支援の形とは?

コラムタイトル

はじめに、2024(令和6)年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」により亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

石川県で最大震度7を観測した能登半島地震では1月10日時点で200人を超える死者が出ており、行方不明者も数多く確認されています。生活インフラにも甚大な被害を与え、避難生活を余儀なくされる方も大勢おり、さらには二次災害による被害も報告されています。

こうした予断を許さない状況のなか、Web3.0の視点では従来では実現できなかった新たな被災地支援の形が誕生しています。それが、仮想通貨による募金です。

本記事では「仮想通貨による募金とは一体どのようなものなのか」「令和6年能登半島地震の募金先は何があるのか」などについてまとめました。

  1. 元日の能登半島を激しい揺れと津波が襲う
  2. 令和6年能登半島地震に関する募金プロジェクトが立ち上がる
  3. 仮想通貨による募金のメリット
  4. 仮想通貨による募金の注意点
  5. 令和6年能登半島地震の仮想通貨による募金プロジェクト事例
  6. まとめ

元日の能登半島を激しい揺れと津波が襲う

2024年1月1日、石川県能登半島で震度7の揺れを観測した地震が発生しました。大きな揺れに伴う家屋の倒壊や、大規模な火災により多くの犠牲者が出ており、発生から1週間以上経った現在もなお、救出活動が続いています。

震源となった石川県では、ほぼ市内全域で断水が起きている市や大規模停電といったインフラへのダメージも深刻であり、避難所での避難生活を余儀なくされている被災者の方たちも多数います。

また、地震による被害は震源地の石川県だけではなく、新潟県や富山県でも大きな被害が報告されています。

令和6年能登半島地震に関する募金プロジェクトが立ち上がる

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オンライン化が進む募金活動

甚大な被害をもたらした今回の令和6年能登半島地震を受け、市区町村やボランティア団体など様々な団体が街頭に立って募金活動をおこなう姿が報道されています。

通勤や通学の際に駅前で募金を呼びかけているのを見たという人も多いのではないでしょうか?

一方、今回の募金活動ではこうした従来型の募金に加えて、オンラインによって全国的に多額の寄付金を受け付けている団体も多く見られます。

日本赤十字社では、「令和6年能登半島地震災害義援金」を実施しており、ゆうちょ銀行や郵便局からの募金を受け付けています。集まった義援金は被災地の生活支援のために被災都道府県が設置する義援金配分委員会へ全額が送金される仕組みとなっており、寄付先には「被災地全域への寄付(日赤本社開設口座)」と「地域を限定しての寄付(日赤支部開設口座)」の二種類が用意されています。

LINEヤフーも地震発生当日の1日からYahoo!基金において、「令和6年能登半島地震 緊急支援募金」を実施しています。クレジットカードもしくはTポイントを使った寄付が可能となっており、1月10日時点で15億円以上の寄付金が集まっています。

フリマアプリ大手のメルカリは、2日から令和6年能登半島地震による被災地の支援を「メルカリ寄付」機能で受付開始しました。メルカリ寄付は、メルカリの売上金から寄付できる機能で、日本財団への寄付を通じて、生活のパイプとなるインフラが機能しなくなったり、住居を失うなどして、避難生活を余儀なくされた人への支援をおこなっています。

このように、インターネットが発達した現代では、街頭募金や募金箱が中心だった時代から、クラウドファンディング、クレジットカード決済、SNSといった寄付のオンライン化が進んでいます。

仮想通貨による募金も

そのような状況のなか、新たな募金の形として注目を集めている仮想通貨による募金プロジェクトも立ち上がっています(各プロジェクトはコラム後半で紹介しています)。

仮想通貨とは財産的価値を有し、銀行などの第三者を介さずにインターネット上で取引できる「データ資産」のことです。有名な銘柄では「ビットコイン」や「イーサリアム」などが挙げられ、販売所や取引所などの事業者を通して入手、あるいは円やドル、ユーロ、ウォンなどの法定通貨と換金が可能です。

仮想通貨は公開鍵暗号方式ハッシュ関数などの暗号技術を利用することで安全性を確保しています。おこなわれた取引はブロックという単位にまとめられ、一定のルールに基づいて一つ前のブロックから新たなブロックが生成されて、鎖状につながっていきます。

このブロックチェーンと呼ばれる技術はほとんどの仮想通貨で用いられており、ブロックチェーン上に保存されているすべての取引データは公開・共有される仕組みとなっています。

法定通貨ではないことや価値の変動が多いことなどから、少し前までは「怪しい投資話」のイメージも強かった仮想通貨ですが、現在では法律やマーケットも整備され、利活用できるサービスも充実しつつあります。

仮想通貨による募金は後述するような、従来の募金では成し得なかったスムーズな送金や透明性の確保などが実現しています。「仮想通貨なんて周りでやってる人もいないし、大した募金にならないんじゃないの?」と思う方もいるかも知れません。実際に、仮想通貨決済企業TripleAによると、日本では総人口のわずか4%相当の500万人程度しか仮想通貨を保有していないと推定されています。

しかし、保有者がまだ少ないからといって仮想通貨による募金が効果的でないと断定するのは早計です。2022年2月に起きたウクライナ侵攻の際には、法定通貨のみならず仮想通貨による資金援助が世界中から相次ぎました。

CoinDeskによると、その額はわずか3ヶ月あまりで1億3500万ドル(約182億円)以上。法定通貨による寄付の5億7900万ドル(約782億円)には及びませんでしたが、史上最大規模の募金結果に世界中が驚きの声を上げました。

世界の共通通貨ともいえる仮想通貨は国家の垣根を超えて募金が可能であり、今後ますますスタンダードになっていくものと考えられます。

仮想通貨による募金のメリット

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募金の使い道が明らかになる

残念ながら、災害直後の緊急募金などでは混乱に乗じた募金詐欺が横行しがちです。募金という名目で資金を集めておきながら、実際には被災地支援をすることもなくプロジェクトごと立ち消えてしまうという善意につけこんだ卑劣な犯罪です。

また、健全な組織が運営していたとしてもその使い道や手数料の割合などは詳らかにされることは少なく、募金した後の資金の行方には目が向けられていないケースも多々あります。

募金ではなく寄付の事例ですが、ふるさと納税においても寄付金の10%を超える部分が外部事業者への手数料などになっていたことが問題視されました。

ふるさと納税、一番得をしているのは誰? 寄付額の2割以上は業者に…「5割ルール」徹底で何が起きるか:東京新聞 TOKYO Web

こうした問題は、寄付されたお金の流れが可視化されていないことに起因する問題です。お金の流れがブラックボックスであるが故に横領などが横行しがちな募金の使い道に対しても仮想通貨が効果を発揮します。

パブリック型ブロックチェーンにおける仮想通貨での取引(トランザクション)は基本的にすべてのユーザーが閲覧できる仕組みになっています。これは、ブロックチェーンを用いて当事者以外にも情報を分散して管理することで、データの改ざんや消失を防ぐためです。

そのため、ブロックチェーンによる募金であれば、寄付した金額がきちんと相手のもとに届いたかどうかがはっきりわかります。寄付金の使用用途や着金先が明確になることで、募金活動とその使い道に透明性をもたらすことができます。

社会全体としてもこうした仕組みを導入していくことで、使途不明の怪しい募金プロジェクトは淘汰され、寄附者が安心して募金できる土壌を育成できるでしょう。

手数料が安い

通常、銀行などの金融機関を介して募金をする際には当然ですが手数料が発生します。寄附者である私たちが支払わない場合でも、NPO団体などがカード決済手数料などを負担しなければいけないケースもあります。

また、無料送金を実施している金融機関でも、一定の条件を満たさなければいけない場合があります。たとえば、ゆうちょ銀行では被災者に対する救援活動を支援するため、ゆうちょ銀行・郵便局の貯金窓口およびゆうちょ通帳アプリにおいて災害義援金の無料送金サービスを実施しています。しかし、ATMからの通常払込みには、手数料が発生してしまいます。

義援金送付-ゆうちょ銀行

こうした問題に対して、仮想通貨による募金をおこなうことで、手数料による実際の支援金額の目減りを改善できる可能性があります。

たとえばビットコインであれば、一度の送金で数十円程度の手数料(マイニングに対する報酬)がかかるのみであり、国内のみならず海外であっても為替手数料を支払う必要はなく、着金に時間もかかりません。

また、仮想通貨を法定通貨に替えるには仮想通貨取引所を利用する必要がありますが、その際の手数料もクレジットカード会社の送金手数料に比べても格安であり、使い勝手にも不自由ありません。

リアルタイムに送金可能

従来の募金の仕組みでは、一度集金をおこなってから計画に応じて資金を分配していきます。

しかし、仲介となる組織が介入することで、実際に援助を必要としている地域に募金が届くまでの若干のタイムラグが生じてしまいます。

また、募金を立ち上げる際にも「何に対する募金なのか」「実際の被害地域はどこなのか」「どの団体に振り込むのか」など様々な基準に照らし合わせた審査をする必要があります。これは、寄附者が安心して募金できるために必要なことではありますが、被災者や支援団体は一刻も早い資金援助が必要としているというジレンマもあります。

仮想通貨による募金であれば、ウォレットからウォレットに対して即時送金が可能です。組織や団体を仲介することがないため、金融機関の営業時間や被災地の金融機関の被害状況に関わらずスピーディーな送金が可能です。とくに海外への寄付においては、入金から着金まで大きなタイムロスが生じることも多いため、仮想通貨によるシームレスな募金がさらに有効となるでしょう。

前述の通り、資金の使い道に関してもトランザクション履歴を確認できるため、審査に必要な時間も最低限で済みます。被災者が困っているまさにその瞬間を助けるための支援が、仮想通貨の募金で実現できるのです。

仮想通貨による募金の注意点

出典:shutterstock

仮想通貨による募金で最も注意しなければならないのが、アドレスの間違いです。最先端の募金方法の注意点としてはなんともアナログですが、誤送金など自らのミスにより仮想通貨を失う「セルフGOX」は仮想通貨による決済の落とし穴となっています。

中央管理者が存在しないブロックチェーンでは、一度ブロックチェーンに取引が記録されてしまうと、その記録を書き換えることはできません。仮想通貨取引所であっても処理を変更する権限を持っていないため、誤送金先と直接、返金の交渉をしなければなりません。

また、送金ミスの内容次第では誤送した仮想通貨をどうしても取り戻せないケースがあります。それは、「異なる仮想通貨アドレスへの送金」と「所有者がいないアドレスへの送金」です。

まず「異なる仮想通貨アドレスへの送金」のケースについて説明します。

暗号資産のアドレスは、それぞれの種類で固有のアドレスが割り振られているため、他の暗号資産のアドレスへ送金しようとすると基本的にはエラーが発生します。

しかし、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BHC)、イーサリアム(ETH)とイーサリアムクラシック(ETC)などアドレス形式が似ている場合にはエラーを検知できず、送金が完了してしまうケースがあります。

このケースの場合、暗号資産が消滅してしまうため、取り戻すことが出来なくなってしまいます。

次に「所有者がいないアドレスへの送金」のケースについてです。

世の中には、秘密鍵を忘れてログインできなくなったウォレットがたくさんあります。従来型の送金方法であれば、パスワードを忘れてしまった場合でも銀行などに問い合わせて再発行してもらうことができますが、仮想通貨には管理者がいないため、ウォレットを復旧することは難しいです。

そのような背景もあり、ブロックチェーンの世界では誰もログインできなくなってしまった所有者不明のアドレスが数多く残っています。こういったウォレットに送金してしまうと、誰も手をつけられない状態となってしまい、取り戻せる可能性はなくなってしまいます。

こうした送金ミスが原因で仮想通貨を失わないように、送金先アドレスの確認は慎重におこなうことをオススメします。

令和6年能登半島地震の仮想通貨による募金プロジェクト事例

Oasys

出典:Oasys公式X

ゲーム特化のブロックチェーンプロジェクトであるOasysでは能登半島地震への災害支援募金をおこなっています。

Oasysは2022年に発足の比較的新しいプロジェクトですが、 日本発であることや数多の有名企業がバリデータとして参加していることから現在、大注目のプラットフォームの一つとなっています。

バリデータの一例としては、bitFlyerやAstar Networkなどの暗号資産関連の企業に加えて、バンダイナムコ研究所やSEGAやSQUARE ENIXといった仮想通貨に縁のない人でも聞いたことがあるであろう有名ゲーム企業が名を連ねています。

今回の支援募金では、$OAS (Oasys)、$ETH (Ethereum, Polygon)、$BTC (Bitcoin) を対象通貨としており、gas代や税金を除く全額を能登半島地震による救援復興活動に活用するとのことです。

Astar Network × Startale Labs

出典:Astar Network Japan公式X

Astar Networkは、日本人起業家の渡辺 創太氏が率いるStake Technolosies株式会社が開発したブロックチェーンプラットフォームです。

日本発のブロックチェーンとして異なるチェーンを相互接続できるPolkadot(ポルカドット)のハブとして活動しており、WEB3.0の実現やWEB3.0の基幹インフラを目指して取り組んでいます。2021年12月には、世界で3番目にPolkadotのパラチェーンと接続を完了させ、本格的に稼働を開始しました。

そんな大注目チェーンのAstar Networkでは、同じく渡辺氏が設立したStatale Labsと共同で令和6年能登半島地震に対する災害支援募金を発表しています。

対応通貨は募金立ち上げ時点で$ASTRのみとなっていますが、ASTRは時価総額約1000億円(執筆1月10日時点)を超える人気銘柄。世界中からのスピーディーな寄付に期待できます。

出典:MINKABU 暗号資産(仮想通貨) リアルタイムレート(2024/01/10) 

Web3 pray for Japan

出典:Palette 公式X

株式会社HashPaletteが開発した「PaletteChain」による「Web3 pray for Japan」では、複数のブロックチェーンプロジェクトが協力して仮想通貨による募金活動をおこなっています。

参加を表明しているブロックチェーンはPalette(PLT)、TRON(TRX)、Cardano(ADA)、Polygon(MATIC)、Neo(NEO)、Qtum(QTUM)、Mask Network(MASK)、IOST(IOST)の計8つです。

各プロジェクトが自社のネイティブトークンを用いた寄付窓口を設置しており、このキャンペーンで集まった資金は、手数料や税金を除く全額を日本円に換算したうえで赤い羽根共同募金の「令和6年能登半島地震への義援金(仮)」に寄付されるとのこと。

寄付の結果は、後日HashPaletteの公式ウェブサイトで公開される予定となっています。

まとめ

本記事では令和6年能登半島地震に対する仮想通貨を用いた募金プロジェクトについてまとめました。

募金にブロックチェーンを活用することで、さらなる透明性やスムーズな送金が実現できるようになり、被災地の喫緊の課題に合わせた資金集めに役立つことでしょう。とくに、法定通貨では時間や手数料のロスが多い海外からの金銭的支援が活発になることが期待されます。

新たな支援の形を実現するWeb3プロジェクトに注目するとともに、被災地の一日も早い復興を心より祈念いたします。