加速する、ブロックチェーンによる流通の合理化

2022年現在、流通業界では、ブロックチェーンをはじめとする先進技術によってプロセスイノベーションを起こすべく、各社で大規模な技術開発や実証実験が行われています。

例えば、IBMが、コンテナ船世界最大手のA.P. Moller-Maersk(A.P.モラー・マースク、以下マースク)との共同でブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォーム「TradeLens」を構築した他、世界最古の医薬品・化学品メーカーであるMerck KGaA(メルク・カーゲーアーアー、以下メルク)と共に偽造品対策プラットフォームを立ち上げています。

出典:TRADELENS 概要(IBM社資料)

また、アジアに目を転じてみても、中国EC市場シェア2位のJD.com(下図)がブロックチェーンに関連する200件超もの特許を申請したという報道がなされるなど、世界最大の人口を抱える中国においても、物流のシステム全体をブロックチェーンによって強化していく流れがみられています。

出典:JD.com

さらに、ロジスティックプロバイダーAlbaによるIPRブロックチェーン活用の実証実験参加、サプライチェーンロジスティックソフトウェアを開発するSwivel Softwareの国際間取引プラットフォームGlobal eTrade Services (GeTS)への参画など、特に物流領域では、ブロックチェーンを活用したプラットフォーム構築競争が盛んにおこなわれています。

👉参考記事:『ブロックチェーン物流は何を実現する?ビジネスの仕組みと活用事例!

ブロックチェーン×コールドチェーン(温度管理)の必要性

GDPで高まるコールドチェーン(温度管理)の重要性

こうした流れの中、国内でも特に注目されている分野の一つが、「コールドチェーン(低温流通体系)」を実現するための「温度管理」です。

コールドチェーンとは、生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流方式、つまり「徹底的に温度管理されたサプライチェーン」のことで、商品の品質管理が問われる食品業界や医薬品業界においては、最も重要なプロセスと考えられています。

出典:国土交通省

実際に、2018年12月には、厚生労働省が日本版GDP(Good Disribution Practice=適正流通基準)ガイドラインを発出。

品質マネジメントや業務オペレーション、適格性評価など、医薬品の流通過程全般に関わる複数の基準が設定されていますが、その中でも、トレーサビリティと並んで最大の要件と考えられているのが温度管理システムなのです。

また、米国FSMA[FDA(U.S. Food and Drug Administration) Food Safety Modernization Act]や欧州GDP(Good Distribution Practice)による食料品・医薬品の貨物管理規制強化の影響も大きいでしょう。

同規制強化により、海外売上高比率の高い日本企業にも迅速な対応が求められており、コールドチェーン管理の改革および市場の拡大が見込まれています。

そして、日本でも、医薬品、食料品、化学品、農産物など、温度管理を必要とする幅広い業界でのコールドチェーン・イノベーションが求められています。

👉参考記事:『ブロックチェーンのトレーサビリティへの応用〜食品・物流・偽造品対策〜

なぜ、ブロックチェーンか?

既存のコールドチェーンには、「データロガー」と呼ばれる温度管理システムが用いられており、各ロガーから得た情報を事後管理するやり方が一般的でした。

しかし、データロガーを用いた方法では、リアルタイムの状況に合わせた温度管理ができないばかりか、コストの観点からも、適用できるのはトラックやコンテナ輸送のような、商品が集積された管理形態に限定されてしまい、コールドチェーンで求められる、個別商品単位でのきめ細かな管理ニーズに応えることができません。

この課題を解決するために、近年は、QRコードRFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれるツールが利用され始めています。

<例:日立の温度検知ラベルに利用されるQRコード>

出典:日立製作所

RFIDとは、「RFIDタグと呼ばれる媒体に記憶された人やモノの個別情報を、無線通信によって読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)をおこなう自動認識システムのこと」で、「RFIDタグを読み取り機などにかざすことによって、情報(製造年月・流通過程・検査情報など)が表示機器に表され、さらに新しい情報を書き込むことで、製品の流れや人の入退場などが一元管理でき」ます(公益財団法人流通経済研究所2018より)。

こうしたツールを活用することで、新しいコールドチェーンでは、商品ごとの個別情報を一元管理し、各商品に個別最適化された温度管理を行うシステム(つまりはIoTシステム)が実現されると言われています。

そして、ここで生じるデータを一元管理するプラットフォームこそ、ブロックチェーンプラットフォームです。

RFIDとブロックチェーンによるオープンプラットフォームを構築することで、リアルタイムに関係各社で受発注・決済・所有権移転も含めたトレーサビリティを一元管理できるようになると期待されています。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長は、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ、の3点です。

これらの特長は、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

ブロックチェーン×コールドチェーン(温度管理)の事例

日立製作所の取り組み:温度検知ラベルとFCPF

2017年末、日立製作所は、コールドチェーン上での個別商品の品質管理を、温度検知ラベルを用いてIoT化・一元管理する、FCPF(Food Chain Platform、フードチェーンプラットフォーム)構想の実証実験を開始しました。

「東南アジアでは、近年の経済発展とともに高所得者層が増加し、品質管理された食品への要求が高まる一方で、コールドチェーンが未発達なことにより品質管理された食品が十分に消費者に提供されていない」ことを背景に、高品質な食品を提供するコールドチェーン物流を構築することが狙いです。

出典:日立製作所

本プロジェクトでは、同社が開発した温度検知ラベルを用いることで、商品ごとに個別に、しかも安価に取り付けることができるため、輸送単位を限定することなく、生産者から消費者までのすべての工程で適切な温度管理を行うことができるとされています。

出典:日立製作所

同社は、「FCPFは温度検知ラベルのほかに、ブロックチェーン、ロジスティクス管理、画像診断/AI(Artificial Intelligence)、保冷ボックス、鮮度・熟成度シミュレータなど複数の日立の強み技術を活用し、食品の品質管理、トレーサビリティ、ダイナミックマッチング、物流指示などのサービスを提供することで、生産、卸、物流、小売り、さまざまなステークホルダーの要求に応じた価値を提供する」ことで、「従来よりも安価なコストできめ細やかな温度管理」を実現するとしています。

本プロジェクトは、センシングデバイスとIoT技術、AI、そしてブロックチェーンを組み合わせることで、コールドチェーンの課題をDXで解決しようとする好例だと言えるでしょう。

👉参考記事:『IoT、ブロックチェーン、AI。ビッグデータを活用したDXとは?

日本通運の取り組み:医薬品の物流プラットフォーム

2020年、先述の日本版GDPを受けて、日本通運では、「Pharma2020」と呼ばれる1000億円規模の投資プロジェクトを開始しました。

同社によると、「プロジェクトでは、全国4か所(埼玉県、大阪府、福岡県、富山県)に医薬品専用センターを新設するほか、GDP基準に準拠した医薬品専用車両を開発し、全国を網羅した医薬品サプライネットワーク」の構築が予定されています。

同プロジェクトの中核をなしているのが、インテルと共同開発するIoTデバイスGCWA(Global Cargo Watcher Advance)を基幹技術としたブロックチェーン・プラットフォームです。

出典:日本通運

GCWAは、従来の温度管理デバイスであるデータロガーと異なり、ウェブ上にリアルタイムで個別商品の計測データをアップすることができるため、これまで「”空間”レベルにとどまっていた」温度管理を「個体レベルで温度や湿度、衝撃などの動態管理」へと昇華させることができるとされています。

そして、このGCWAを中心に取得された物流情報(温度モニタリング、輸配送状況、在庫状況など)と、トレーサビリティによる流通情報(受発注、決済、所有権移転など)を一元化するために活用されているのが、ブロックチェーンです。

ブロックチェーンを使うことで、中央管理者を排除したオープンプラットフォームの実現が期待されています。

NTT DATAの取り組み:DX推進ソリューション

2021年には、NTTデータが、ブロックチェーン技術をベースとしたDX推進ソリューション「BlockTrace®」の提供を開始しました。

同社によると、「BlockTraceは、ブロックチェーンプラットフォームおよび同プラットフォーム上のアプリケーションにより、お客さまのDXを推進するソリューションであり、今後NTTデータのブロックチェーン関連のサービスも含め、BlockTraceブランドでの展開を図」るとされており、その中の一つに、コールドチェーンの課題解決に向けたアプリケーションが含まれています。

出典:NTT DATA

その名も、「BlockTrace for Cold Chain」。

BlockTrace for Cold Chainでは、「輸送中の位置情報・温度管理情報をブロックチェーン上に書き込むことで、生鮮食品の品質状態を見える化し、エンドユーザーに訴求することができるため、商品価値の向上を見込むことができ」る他、「医薬品や化学品などのセンシティブな温度管理輸送が必要なシーンにも応用でき」る「低温輸送保証をサポートするソリューション」であるとされています。

他にも、「サプライチェーンにおける情報共有ソリューション」である「BlockTrace for Supply Chain」等のアプリケーションも用意されており、これら複数のソリューションを組み合わせることで、コールドチェーンの課題解決が期待できるでしょう。

【2022年】ブロックチェーンによるP2P電力取引の現状まとめ

2022年、注目されるブロックチェーン技術の電力事業への応用

非金融領域での活用が期待されるブロックチェーン技術

2008年に生まれたブロックチェーン技術は、これまで主に、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)を中心に、金融事業を革新するフィンテックとして注目を集めてきました。

しかし、近年では、ブロックチェーンのもつ技術的応用可能性から、非金融事業、例えば製造・物流・小売業界でのSCM(サプライチェーン・マネジメント)、医療業界での診療データ管理、不動産業界での国際オンライン取引、はてはアートや選挙まで、様々な領域での多様な活用が進んでいます。

その中でも、特に技術開発が盛んで、実証実験や事業化が進んでいるのが電力分野です。

電力分野では、電力会社を介さない電力の個人間取引(P2P 取引) や、再生可能エネルギー(再エネ)の環境価値の取引にブロックチェーンが活用可能だと考えられており、大企業のみならず、スタートア ップ企業や電力会社を中心に国内外で開発が進められています。

電力分野のブロックチェーン技術開発に乗り出す大手各社

例えば、2020年11月には、トヨタ自動車株式会社(未来創生センター)と東京大学、TRENDE株式会社の共同研究結果が発表されました。

同研究では、2019年6月17日から2020年8月31日までの間、「ブロックチェーンを活用し電力網につながる住宅や事業所、電動車間での電力取引を自律的に可能とする次世代電力取引システム(P2P電力取引)の実証実験を」行った結果、「実証実験に参加した一般家庭(含、電動車)の電気料金を約9%低減」、「電動車の走行利用電力の43%を再エネとし、CO2排出量を38%削減」することに成功しています。

出典:トヨタ自動車 未来創生センター

また、同年12月には、KDDIグループの4社(エナリス、auフィナンシャルホールディングス、auペイメント、ディーカレット)が合同で、次世代電力システムにおけるP2P電力取引プラットフォームの社会実装を目指し、P2P取引事業が成立する要因を検証する共同実証事業を開始しています。

出典:ENERES

さらに、翌年1月には、三菱電機と東京工業大学との共同研究により、P2P電力取引を最適化する独自のブロックチェーン技術を開発し、「余剰電力の融通量を最大化する取引など、需要家の取引ニーズに柔軟に対応できる取引環境を提供」するとしています。

出典:東京工業大学

他方、国外に目を移してみても、同様の取り組みは各所に見られます。

例えば、米国の LO3 Energy 社は、独自開発したプライベート型のブロックチェーンである Exergyを用いて、再エネ電力の P2P 取引プラットフォームの構築を目指し、米国や豪州で実証を進めています。

また、ブロックチェーン技術の国家的導入が進むエストニアでは、Elering 社(エストニア)とWePower社(リトアニア)を中心に、エストニア国内において、エネルギー消費や再エネ発電に関するデータをブロックチェーンでトークン化する実証実験を実施しています。

ブロックチェーン×P2P電力取引市場への注目

今見たように、電力分野でのブロックチェーン技術開発では、例えば次のような用途での活用が目指されています。

  • P2P 取引(個人間取引の履歴を記録)
  • 環境価値取引(再エネ価値や低炭素価値を証明)
  • 資金調達(将来発電量をトークン化し販売することで資金調達)

そして、国内外を問わず、特に技術開発が進んでいるのが「P2P電力取引」です。

P2P電力取引とは?

P2P電力取引は、通信技術の一つである「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)通信」と、2016年4月から始まった電力小売全面自由化を背景とした「電力取引」を組み合わせた造語です。

一言でいえば、「電力会社を通さず、太陽光発電などの発電設備をもつ一般家庭や事業体同士で、直接、余剰電力の売買を行うこと」を指します。

それぞれ、簡単に説明します。

P2P通信とは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、従来のデータベースの「クライアント・サーバー型」と対比されます。

出典:平和テクノシステム

システムの中央管理者である第三者のサーバーを必要とするクライアント・サーバー型とは異なり、P2P通信では、媒体間で直接やり取りを行うことに特徴があります。

他方、日本国での電力取引は、従来、電力会社が各家庭や会社とそれぞれに直接取引を行い、電力会社からの一方的な電力供給が行われてきました。

しかし、上述した電力小売全面自由化を背景に、発電能力をもっていれば、電力会社ではなくとも電気を自由に売ることが可能になりました。

P2P電力取引では、まさにP2P通信においてデータのやり取りをコンピュータ間で直接行えるように、余剰電力をもつ家庭や事業体間で、直接、自由に売買を行うことができるのです。

P2P電力取引のメリット

P2P電力取引には、次のようなメリットがあります。

  • 発電需要家(電力の売り手)のメリット:余剰電力を小さい単位から簡単に売ることができ、太陽光発電等の資産活用方法が広がる
  • 受電需要家(電力の買い手)のメリット:需要家同士のマッチング最適化が進むことで、従来よりも電気料金を抑えることができる
  • 需要家全体のメリット:売買形式を柔軟に変更でき、目的に適した取引ができる(ダイナミック・プライシングの実現)

従来の電力取引では、電力会社や仲介の会社など、市場の中央管理者が必要でした。

中央管理者との取引では、取引内容を個別に最適化することができず柔軟性に欠くばかりか、システム全体の運用コストが大きくかかってしまいます。

これに対して、P2P電力取引では、多数のネットワーク参加者同士で柔軟に取引を行うことが可能になるため、取引コストを低減させることができると期待されています。

ただ、とはいえ、もし自宅で太陽光発電を行い、蓄電池に余剰電力をためていたとしても、その電力をいつ、誰に、どうやって売ればよいかは検討もつきません。

また、個人間の取引で適正な価格を調整することも非常に困難でしょう。

そこで、近年、各社が取り組んでいるのが、P2P電力取引を簡単に行えるようなアルゴリズムを搭載したプラットフォーム構築です。

出典:DATA INSIGHT

そして、このプラットフォームの背景技術として活用されているのがブロックチェーン技術なのです。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長は、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ、の3点です。

これらの特長は、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

 

従来のデータベースの特徴

ブロックチェーンの特徴

構造

各主体がバラバラな構造のDBを持つ

各主体が共通の構造のデータを参照する

DB

それぞれのDBは独立して存在する

それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている

データ共有

相互のデータを参照するには新規開発が必要

共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

ブロックチェーン×P2P電力取引の事例

トヨタ自動車×東京大学×TRENDの取り組み

2020年11月13日、トヨタ自動車、東京大学、TREND株式会社は、2019年から2020年におよぶ共同実証実験で、電気料金を9%低減可能なシステムを構築したと発表しました。

(再掲)出典:トヨタ自動車 未来創生センター

公表されている共同実証実験のテーマ・概要・結果は次の通りです。

<テーマ>

  • 家庭や事業所、電動車(PHV)がアクセス可能な、需給状況で価格が変動する電力取引市場
  • 市場で取引される電力における発電源の特定と、発電から消費までのトラッキングを可能とするシステム
  • 人工知能(AI)を活用し、電力消費や太陽光パネルの発電量予測等に応じて電力取引所に電力の買い注文・売り注文を出す、電力取引エージェント

<概要>

実証期間

2019年6月17日から2020年8月31日

実施場所

トヨタの東富士研究所と周辺エリア

実証に参加したモニター

  • 一般家庭 20軒
    • 電力消費者(2タイプ)
      • ①PHV無し:6軒
      • ②PHV有り:6軒
    • プロシューマー(4タイプ)
      • ①太陽光パネルのみ:2軒
      • ②太陽光パネル+蓄電池:3軒
      • ③太陽光パネル+PHV:2軒
      • ④太陽光パネル+蓄電池+PHV:1軒
  • 事業所(太陽光パネル+PHVチャージャー)

電力価格

需給量に応じた変動価格

各役割

  • トヨタ
    • 車両用電力取引エージェントの開発
  • 東京大学
    • 電力取引所の構築
    • 事業所用電力取引エージェントの開発
  • TRENDE
    • 家庭用電力取引エージェントの開発

<結果>

  • 実証実験に参加した一般家庭(含、電動車)の電気料金を約9%低減
  • 電動車の走行利用電力の43%を再エネ化、CO2排出量を38%削減 等

出典:トヨタ自動車 未来創生センター

KDDIグループの取り組み

2020年12月04日、KDDIグループのエナリスとauフィナンシャルホールディングス、auペイメント、ディーカレットの4社は、電力および環境価値のP2P取引事業成立要因を検証する実証事業を共同で開始したと発表しました。

(再掲)出典:ENERES

公表されている同事業の背景と概要は次の通りです。

<背景>

  • 自社の新電力向けサービス(需給管理オペレーション支援等)基盤を用い、ブロックチェーンを活用して電力のP2P取引をはじめ、多くの新電力が新たな電力ビジネスに挑戦できるプラットフォーム構築を目指すこと
  • スマホ・セントリックな決済・金融体験を提供する「スマートマネー構想」の実現に向けて、フィンテックを活用した新サービスの研究の一環

<概要>

実施期間

2020年11月20日~2021年2月末

実施内容

  • エナリスが卒FITプロシューマーから環境価値が含まれた電力を調達し、真に再エネ価値を求めるRE100企業へ電力とともに環境価値を供給
  • auペイメントが、実証事業用の環境価値トークンを発行し、発行されたトークンをエナリスがRE100企業に配布
  • RE100企業は卒FITプロシューマーから譲渡された再生可能エネルギーの環境価値に対する謝礼として、環境価値トークンを譲渡
  • 実証事業終了後、卒FITプロシューマーは提供した環境価値の謝礼として受け取るauペイメント発行のau PAY残高を幅広く決済に利用することが可能
  • ディーカレットは自社で構築した「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、環境価値トークンの発行、流通、償却

検証内容

  • 環境価値に対するトークンでの謝礼譲渡
  • 現行制度に基づいたP2P電力取引の検証
  • 非FIT電源とRE100企業需要家が実際に取引に参加する実証

各社役割

  • エナリス
    • ブロックチェーンを活用した卒FIT電力および環境価値の調達と供給
    • auペイメントへの環境価値トークンの発行依頼
    • RE100準拠電力および環境価値取引の実績に基づき発行された環境価値トークンの流通
  • auフィナンシャルホールディングス
    • プロジェクト全体のコーディネート、au PAY活用
  • auペイメント
    • 資金移動業者の登録に基づき実証事業で利用する環境価値トークンの発行
    • 本検証の終了時には発行したトークンを償却、プロシューマーのau PAY残高譲渡
  • ディーカレット
    • 環境価値トークンの発行・管理を可能とするプラットフォーム提供

三菱電機×東京工業大学の取り組み

2021年1月18日、三菱電機株式会社は東京工業大学との共同研究により、最適な組み合わせを探索するブロックチェーン技術により、柔軟な電力取引を実現すると発表しています。

出典:東京工業大学

公表されている同研究の背景、特長、体制は次の通りです。

<背景>

  • 太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電気を電気事業者が固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT制度)」が、2019年11月から順次満了を迎えたことで、満了を迎えた需要家は、より良い条件で余剰電力を買い取る小売電気事業者を探し、新たに売買契約を結ぶ必要がある。
  • このような背景の下、需要家同士が余剰電力をその時々の最適な価格で直接融通しあうP2P電力取引が、新たな余剰電力の取引手段として注目されている。
  • 現行の電気事業法では需要家に電気を販売できるのは小売電気事業者に限定されるため、小売電気事業者の管理の下でP2P電力取引をブロックチェーン技術によって仮想的に実現し、その有効性の検証や課題の抽出を行う実証実験が行われている。

<特長>

  • 売り注文と買い注文の最適な組み合わせを探索する、計算量の少ないブロックチェーン技術の開発により、需要家の取引端末などの小型計算機でもP2P電力取引が可能
  • ①余剰電力を最大限に活用したい時は需要家(電力の売り手)の余剰電力の融通量を最大化、②需要家の利益を優先させたい時は需要家全体の利益を最大化するなどの売買注文の最適な組み合わせを探索することで、さまざまな取引ニーズに柔軟に対応できるP2P電力取引を実現

<体制>

名称

担当内容

東京工業大学

ブロックチェーン技術の研究開発、最適約定アルゴリズムの設計

三菱電機

P2P電力取引システムの設計、約定機能の設計

DeFi(ディーファイ)とは?ブロックチェーンによる分散型金融の可能性

2021年現在、ブロックチェーン技術を活用したDeFi(ディーファイ)という金融システムが注目を集めています。分散型金融とも訳されるDeFiは、中央管理者を排除することでサービスへのアクセシビリティを向上させ、金融市場の新たな可能性を広げると期待されています。DeFiの事例であるDEXやレンディングと併せて解説します!

  1. DeFiとは?
  2. そもそもブロックチェーンとは?
  3. DeFiアプリケーションの事例

DeFiとは?

2021年現在、注目を集めるDeFi

2008年の誕生以来、ブロックチェーンは、ビットコインをはじめとした暗号資産(仮想通貨)、スマートコントラクトを利用した自動決済システム、ICOやSTOといった資金調達方法、トークンエコノミー、自立型分散組織(DAO)の形成など、様々な領域で活用されてきました。

こうした中、金融領域でのブロックチェーン活用方法として、その功罪を問わず、近年特に注目されているのがDeFi(ディーファイ)です。

例えば、日本銀行は、決済システムの整備などを担当する決済機構局から、「自律的な金融サービスの登場とガバナンスの模索」と題した日銀レビューシリーズを公開し、その中で既存金融との比較対象としてDeFiを捉え、そのメリットとリスクについて考察を明らかにしています。

また、8月10日には、DeFiのプラットフォームを運営するPoly Networkがハッキングを受け、約660億円相当の暗号資産(仮想通貨)が不正に流出したことを発表するなど、理論にとどまらず、すでに実業の世界でも大きな影響力をもっています。

DeFiとは?

DeFiとは、ブロックチェーンを用いて、金融機関を介さずに無人で金融取引を行う仕組みのことです。

Decentralized Financeの略で、”分散金融/分散型金融”などとも訳されます。

金融市場には、証券や保険、デリバティブやレンディングといった様々な金融サービスが存在していますが、従来、これらはすべて金融機関による中央一括管理がなされてきました。

これに対して、DeFiでは、ブロックチェーンを活用することで、各種金融サービスにおける中央一括管理をなくし、信用履歴審査や本人確認なしに誰でもサービスを利用できる仕組みが構築できます。

DeFiの特徴

DeFiには主に3つの特徴があります。

  • 金融機関の仲介が不要
  • 手数料の安さ
  • 地域に左右されず利用可能

最大の特徴は、中央管理者である金融機関の排除です。

これにより、従来、中央管理者が仲介業務を行うことで発生していた業務コストや手数料を省くことが可能になります。

また、中央管理者が不在であることから、インターネット上でのやり取りが可能になり、結果として地域に左右されず利用可能になる、つまり金融サービスへのアクセシビリティが向上します。

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

 

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

 

従来のデータベースの特徴

ブロックチェーンの特徴

構造

各主体がバラバラな構造のDBを持つ

各主体が共通の構造のデータを参照する

DB

それぞれのDBは独立して存在する

それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている

データ共有

相互のデータを参照するには新規開発が必要

共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

DeFiアプリケーションの事例

DEX(分散型取引所)

DeFiの例として最もわかりやすいものが、「Uniswap」に代表されるDEX(Decentralized Exchange:分散型取引所、デックス)です。

DEXとは、主にイーサリアムのスマートコントラクトを活用して構築されたP2Pの取引所のことで、DEX市場の月間取引量は、2020年時点ですでに4,000億円を越えるほど拡大しており、関連するトークンも高騰しています。

通常、暗号資産の取引所は、bitFlyerやCoincheckのような特定の企業が運営しています。

これに対して、DEXでは、ブロックチェーンのスマートコントラクト機能により、中央一括管理を行う金融機関を必要とせず、流動性の供給から、取引の約定に至るまで、一連のプロセスのほとんどが自動的に処理されています。

レンディング(貸付)プラットフォーム

銀行による中央一括管理のもとに行われる代表的な金融サービスの一つがレンディング(貸付)です。

借り手と貸し手の間に銀行が入り、貸し手に渡される利息に、銀行の経費としての利子が加わることで、貸し借りによって大きな金額差が生まれてしまっていました。

これに対して、DeFiのレンディングプラットフォームでは、ブロックチェーンのスマートコントラクトを用いることで銀行などの仲介業者を排除することができ、不要な”中抜き”がなくなることで、借り手にとっても貸し手にとってもメリットのある取引を実現することができます。

また、Compound(コンパウンド)やArve(アーヴ)といったプラットフォームでは、信用情報なしに資金調達を行えるというメリットもあります。

ステーブルコイン

DeFiにより、イーサリアムのネットワーク通貨”イーサ(ETH)”を担保に、米ドル(USD)と価値が紐づくステーブルコインを発行し保有することができるサービス「Maker」も登場しています。

ステーブルコインとは、価格変動が少なくなるよう設計された暗号資産(仮想通貨)の総称です。

ビジネスで利用する通貨には、価格が安定していることが必要です。

通貨の価格が大きく変動すると、価格設定を頻繁に更新しなればならず、保有する通貨の価格変動リスクについても考慮し続ける必要があります。

Makerでは、既存の米ドルと結びつけたステーブルコインを発行することで、ネット上で自由にやり取りでき、かつ、安定した通貨を、経済的、政治的、物理的に金融アクセスの困難な人に対して提供しています。

ブロックチェーントークンによる資金調達〜ICOとSTOの違い〜

ブロックチェーントークンの代表的な活用方法に、ICOやSTOといった資金調達方法があります。フィンテックの注目株とも言えるICO、STOは、従来の株式市場よりもはるかに低いハードルでの調達を可能にすると言われています。ICO、STOとは何か、両者の違いと合わせて解説します。

  1. ブロックチェーントークンが注目を集めている!
  2. そもそもブロックチェーンとは?
  3. ICOとは何か?
  4. STOとは何か?
  5. ICOとSTOの違い

ブロックチェーントークンが注目を集めている!

2008年にサトシ・ナカモトがビットコインを誕生させて以来、ブロックチェーン技術は金融領域のみならず、非金融領域、それも非常に幅広い産業での応用が期待され、また実用化されてきました。

その中でも、ブロックチェーンと切っても切れない関係と言えるのがトークンです。

ブロックチェーントークンは、ICOやSTOといった資金調達方法、近年注目を集めるNFT(Non Fungible Token)、Utility Token によるトークンエコノミーの形成など、数多くの応用可能性を背景に、世界中の事業家、投資家達が注目する事業領域だといえます。

とりわけ、本記事のテーマでもあるICOやSTOは、従来の株式資本市場における資金調達のハードルの高さを克服する新しい方法として注目を集め、すでにいくつもの大型の調達実績を出してきました。

本記事では、そうしたICO、STOとは何か、そして両者はどのように異なるのか、について解説していきます。

👉参考記事:『【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、NFT、Utility Token〜

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ICOとは何か?

ICOとは、Initial Coin Offering(イニシャル・コイン・オファリング)の略で、新規仮想通貨を公開・売却することで資金調達する方法のことです。

「クラウドセール」「トークンセール」「トークンオークション」とも呼ばれるICOは、新規事業等のプロジェクト成果(を享受する権利)を付与したトークンを大量に発行し、ホワイトペーパー(ICOによって解決したい課題やその必要性、市場規模、具体的なソリューション、実現までのロードマップ、開発体制、調達した資金の使途や配分方法などについてまとめた資料)によってプロジェクトの有望さを売り込むことで、シード段階での大型調達が可能になる点がメリットです。

しかし、一時期は大きく注目を集め、多額の資金が投じられたICOでしたが、その極度に投機的な性格や、仕組みを利用した詐欺事件が相次いだことなどにより、現在は市場が縮小し、STOに役割を取って変わられつつあります。

STOとは何か?

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開、ブロックチェーンを利用した資金調達方法の一つ)の問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

ICOとSTOの違い

同じくブロックチェーン技術を活用した資金調達方法であるICOとSTOですが、その性質は大きく異なります。

具体的には、次の表の通りです。

ICO STO
資金調達方法 企業が仮想通貨を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う 有価証券の機能が付与されたトークンを発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う
特長 株式発行やSTOと比較して資金調達のハードルが低く、短期間で大型の調達が可能 ICOの問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消することができる
取り巻く環境 ICOの仕組みを悪用した詐欺事件なども起こってしまったこともあり、近年では、一時期の勢いは見られない 金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株で、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされている

先ほども述べたように、現在は、ICOよりもSTOの方が主流になっています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が高いことなどのデメリットもあります。

とはいえ、多々違いはあるにせよ、いずれの方法も従来の資金調達方法の枠にとらわれない新しい方法であることには違いありません。

今後も、ICOやSTOなどブロックチェーントークンを利用した資金調達方法は活用されていくでしょう。

NFT印鑑とは?〜ブロックチェーン2021年最新ニュース〜

2021年8月18日、シヤチハタはNFT印鑑の共同開発を発表しました。NFT印鑑は、偽造不可能な電子印鑑のことです。取引のオンライン化やDXが進む中、ブロックチェーン技術の応用であるNFTを活用したNFT印鑑はどのような役割をはたすのでしょうか?NFTやブロックチェーンの概要と合わせて解説します。

  1. シヤチハタがNFT印鑑サービスの開発を発表!
  2. NFT印鑑とは?
  3. NFT印鑑の展望

シヤチハタがNFT印鑑サービスの開発を発表!

Tech Crunchによると、シヤチハタ株式会社(以下、シヤチハタ)は2021年8月18日、ケンタウロスワークスおよび早稲田リーガルコモンズ法律事務所と、ブロックチェーンを利用した電子印鑑システム「NFT印鑑」を共同開発することで合意したと発表しました。

出典:Tech Crunch

シヤチハタは、「朱肉やスタンプ台、ゴム印など、日常で使用頻度の高いなつ印具シリーズ」(同社ホームページより)である”シヤチハタ”を中心に、サインペンと印鑑が一つになった”ネームペン”など、ハンコやスタンプに関する商品を数多く手がけてきた会社です。

インターネット登場以来、IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が騒がれる中、オフラインでの”非効率な”作業を必要とする押印は特にその「不要論」が叫ばれ、とりわけ近年、コロナ禍でのリモートワーク推進を背景に印鑑業界がどのような”歩み寄り”を見せるのかが議論の的になってきました。

そうした中、印鑑業界の雄であるシヤチハタが最新のテクノロジーであるブロックチェーンを活用したサービスを発表したことで、「NFT印鑑」は大きな注目を集めています。

NFT印鑑とは?

NFTとは?

NFTは2021年初頭から急激に取引量が伸びている非代替性のトークンで、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」という特長を持っています。

Non Fungible Tokenの略称であるNFTは、”Fungible”(=代替不可能な)という語義の通り、例えば座席や日時が指定されているコンサートチケットのように、トークン同士に互換性のない”1点モノ”としての性質を有しています。

また、NFTの背景技術であるブロックチェーンは、それ自体がデータの改竄リスクや喪失リスクに対して強い性質をもっています。

NFTのもつこれらの性質を利用することで、本来であれば容易に複製や偽造が可能であり、著作権や所有権が曖昧になりがちであったデジタルデータに対して、「鑑定書」や「証明書」を与えることができるようになります。

そこで、近年、アートや漫画、ゲームなど、幅広いデジタルコンテンツをNFT化しようという流れが強くなり始めました。

👉参考記事:『ブロックチェーン×「NFT」〜NFTの基礎と活用事例〜

NFT印鑑=偽造不可能な電子印鑑

シヤチハタのNFT印鑑もNFTの性質をうまく利用しようとする試みの一つです。

NFT印鑑は、「印影データをNFT化することで、印鑑保有者の情報と印影情報を結び付けた、固有性を持つ電子印鑑」と言われています。

これまでも、印鑑をオンライン化したもの、つまり電子印鑑による契約への移行は進んできました。

しかし、電子データの弱みである偽造リスクの高さや、各社が異なる電子契約サービスを用いていることなどが理由で十分には普及してこれませんでした。

これに対して、NFT印鑑では、ブロックチェーン技術を活用することにより、所有者情報と印影を一対一対応させることが可能であり、データの偽造リスクも大幅に減らすことが期待されています。

また、単一のブロックチェーンプラットフォーム上でサービスを展開することにより、会社間で統一されたシステムを用いることができるようになるメリットもあります。

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

NFT印鑑の展望

出典:Tech Crunch

Tech Crunchによると、「NFT印鑑は、Japan Contents Blockchain Initiative(JCBI)が運営・管理するコンソーシアム型ブロックチェーン「Contents Consortium Blockchain Platform」により、印鑑管理で必須となる高度なセキュリティに配慮しつつ、パフォーマンスと信頼性を両立」し、「将来的には、パブリックブロックチェーンとの連携も視野に、より透明性の高いオープンなシステムを目指す」とされています。

【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、NFT、Utility Token〜

近年、STOをはじめ、ブロックチェーンのトークン(token)を活用した新しいビジネスが生まれています。トークンとは既存のブロックチェーン技術を用いて発行された独自の暗号資産のことで、複数種類あるトークンの中でも特に、Utility Tokenがよく利用されます。また、2021年現在では、NFT(Non Fungible Token)にも注目が集まっています。トークンの定義、特徴をもとに、最新事例を解説します!

  1. ブロックチェーンのトークンを使った資金調達方法「STO」って?
  2. トークン(token)とは何か?
  3. ブロックチェーントークンのビジネス活用:Utility Token によるトークンエコノミー
  4. 2021年の注目株、NFTとは何か?

ブロックチェーンのトークンを使った資金調達方法「STO」って?

高まるブロックチェーン市場への期待

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、仮想通貨の領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

実際、世界経済フォーラムの発表によると、2025年までに、世界の総GDPの10%がブロックチェーン基盤上にのると言われています。

STOとは何か?

そうした諸産業でのブロックチェーンを用いた課題解決の中でも、2020年、特に注目を集めているのが、「STO」と呼ばれる、ブロックチェーン技術を利用した新しい資金調達方法です。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開、ブロックチェーンを利用した資金調達方法の一つ)の問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が高いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

トークン(token)とは何か?

「トークン」という言葉がもつイメージ

上で述べたSTOでは、資金調達方法の一つとして、ブロックチェーンのトークンが活用されています。

こう聞くと、なんとなくわかったような気になりますが、その実、「トークン」という言葉はとても曖昧で、意味の幅が広い言葉です。

したがって、STOを始めとするトークンビジネスを理解するためには、まずはトークンという言葉が持つイメージを掴むことが重要です。

そもそも、トークン(token)は原義的に、「しるし」「象徴」「記念品」「証拠品」を指す言葉です(Wikipedia)。

しかし、ビジネス活用の文脈では、これら原義通りの意味よりも、むしろそこから派生した下記2つの意味が重要になります。

  1. 使える場所、交換対象などが限られている「代用貨幣」のこと
  2. 一回だけ、使い捨ての認証権限のこと

これらの意味から、ビジネスにおいてトークンがどのようなイメージで活用されているかが見えてきます。

すなわち、トークンは、「法定通貨や暗号資産(仮想通貨)と違って、交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」として用いられています。

もちろん、字義通りに全てのトークンが「使い捨てにしよう」と狙ってつくられるわけではありませんが、こうしたイメージを掴んでおくことで、数あるトークンの狙いや意味を理解しやすくなるでしょう。

トークンとブロックチェーン

今みたように、トークンそのもそも意味範囲の広い概念であり、ブロックチェーンに限定されたものではありません。

しかし、近年、トークンという言葉に注目が集まるときは、必ずといっていいほど、ブロックチェーンとセットにされています。

これは、一つにはICOやSTOといった新しい資金調達方法の背景にブロックチェーンの技術があることも影響していますが、むしろそれ以上に、そもそもブロックチェーンがトークンと相性の良い技術であることが大きな要因でしょう。

少し小難しい話になりますが、トークンとブロックチェーンの相性の良さを一言で言えば、「近代以来の国民国家経済、現代のグローバル資本主義に対するアンチテーゼ」として使われやすいという点で共通していることです。

まず、トークンは先ほど見たように、「法定通貨や暗号資産(仮想通貨)と違って、交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」としての特性をもっています。

したがって、トークンは、法定通貨や暗号資産で「外部」と均質化させたくない経済圏、例えば地方公共自治体やショッピングモールなど、オープンではあるものの中央権力を介していないコミュニティーで、そのコミュニティー内にのみ資する準貨幣として用いられます

そのため、逆に、もしコミュニティーの範囲を超えたレベルで経済圏を回していきたいのであれば、それはもはやトークンではなく、法定通貨や暗号資産で十分だということになります。

他方、暗号資産であるビットコインの副産物として生まれたブロックチェーンは、そもそもの技術的思想が「非中央集権的」です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

したがって、ブロックチェーンの技術は、暗号資産のみならず、例えば管理者不在のデータプラットフォームや第三者を介さない不動産取引など、既存の経済体制のあり方を変革するような方向性で、ビジネス活用される傾向にあります。

こうした相性の良さから、近年、STOを始めとした、ブロックチェーンの技術を活用したトークンビジネスがトレンドとなり始めています。

ブロックチェーントークンの特徴

トークンには、3つの特徴があります。

(参照:『トークンとは 【bitFlyer(ビットフライヤー)】』)

  1. 発行者・管理者がいる
  2. 個人でも法人でも発行可能
  3. 独自の価値づけが行われている

1点目は、個別の発行者や管理者がいることです。

通常、ブロックチェーンを利用した暗号資産では、中央管理者がいません。

しかし、トークンは企業や団体・個人などが発行するもののため、他の暗号資産とは異なり特定の発行者・管理者が存在します。

2点目は、誰でも発行可能である点です。

トークンは、仲介者を挟まずに発行することが可能なため、基本的にはどのような企業や団体、個人でも発行が可能となります。

3点目は、発行者の意図や目的に応じて、独自の付加価値をつけられることです。

トークンはただの通貨というわけではなく、通貨としての性質に加えて、例えば投票において議決権を得られるようになるなどの付加価値があります。

この特徴があるために、狭域経済圏における独自通貨であったり、特定コミュニティにおけるコミュニケーションツールであったりといった、多様な使われ方が模索されています。

ブロックチェーンを活用したトークンの種類

実は、ブロックチェーンを活用したトークンには、様々な種類があります

代表的なトークンの種類と概要は、次の4つです。

(他にも、Transaction TokenやGovenance Tokenといった種類もありますが、概念自体が難しい上に使用される頻度もあまり多くはないため、ここでの説明は割愛します。)

区別のポイント トークンの種類 意味 身近な例
トークン自体に金銭的価値が認められるか? Utility Token

(ユーティリティトークン)

具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン ・パチンコ玉

・図書券

・電車やバスの切符

・遊園地の入場券

Security Token

(セキュリティトークン)

それ自体に金銭的価値が認められるトークン ・株券

・債権

トークンを相互に区別するか? Fungible Token …(*)

(ファンジブルトークン)

メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン ・純金

(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)

Non Fungible Token

(ノンファンジブルトークン)

同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン ・土地

(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

(*)”fungible”は日本語で「代替可能性」を意味する英語。

今回の記事では、これら4種類の中でも特にUtility Tokenに絞って、次章で解説を行ってまいります。

もし、他のトークンについて詳しくお知りになりたいという方がいらっしゃれば、各領域のすばらしい企業がテーマを絞って研究していま

すので、ぜひ色々と調べてみてください。

ブロックチェーントークンのビジネス活用:Utility Token によるトークンエコノミー

Utility Tokenの特徴

Utility Token(ユーティリティトークン)は、先ほど見たように、トークンそれ自体は金銭的価値をもたず、具体的な他のアセットと交換することによって初めて資産性が生まれる種類のトークンです。

例えば、ロックミュージシャンのコンサートチケットもUtility Tokenの一つでしょう。

というのも、このチケットが価値をもつのは、そのミュージシャンの演奏を聞きたいと欲する人がいた上で、チケットを使うことで生の演奏を聞くことができると約束されているからです。

したがって、コンサート開催日の翌日以降であったり、そのミュージシャンを知らない人間しかいない地域であったりすると、そのチケットには1円の価値もなくなります。

また、別の例で言えば、JRの切符を西武鉄道で使っても意味がないのと同じ話です。

このように、Utility Tokenは、他のアセットとの交換可能性を金銭的価値に変えられるトークンであることから、次のような特徴をもちます。

  • 閉じられた(=一部の人間に限定された)コミュニティや地域などで効果を発揮しやすい
  • トークン自体は物質的価値をもたなくてもよい
  • 交換対象となるアセットの価値を定量化できる

こうした諸特徴は、既存のビジネスに活用する上で使い勝手が良いため、Utility Tokenは、ブロックチェーンの技術とともに、様々な領域で活用され始めています。

次に、具体的な活用事例を4つ、ご紹介します。

Utility Tokenの活用事例①:ファンビジネス

Utility Tokenの活用事例の一つ目は、ファンビジネスの領域におけるコミュニティ専用トークンです。

コミュニティ専用トークンは、集団の内外に大きな価値差を生じさせることで、小さなコミュニティに「熱狂」を生み出すことができます。

例えば、女優の石原さとみさんのファンクラブ内で、次のような条件で、ファン活動のために使える「SATOMIコイン」がつくられたとします(注:あくまで架空の話です)。

  • Twitterで、石原さとみさんのツイートをリツイートすることでのみ、SATOMIコインを受け取れる
  • SATOMIコインを一定量貯めることで、サイン色紙など、石原さとみさんのグッズと交換できる
  • SATOMIコインは、ファンクラブに入会している人だけが保有することができる

このSATOMIコインは、ファンの方々にとっては非常に価値があるものでしょう。

逆に、石原さとみさんに全く興味をもたない人にとっては、いくらコインを集めたところで使い道がないため、コインに価値を認めないはずです(コインを自由に売り買いできるマーケットがあれば、投機目的でSATOMIコインを集める人もでてくるかもしれませんが、コインに価値を生じさせているのはあくまでファンの熱量です)。

つまり、SATOMIコインは、集団(ここではファンクラブ)の「内」と「外」で価値に差を生じさせています。

こうした集団内外での価値差の発生は、法定通貨では嫌われる現象です。

法定通貨では、あらゆる集団間・個人間で価値の差を「均す(ならす)」ことを目的としているため、コミュニティ専用のトークンとは思想が真逆なのです。

そして、この特性ゆえに、ファンコミュニティ専用のトークンには価値上昇の歯止めがききにくく、閉じられたコミュニティ内におけるファン同士の熱量の相乗効果によって、「熱狂」を伴う経済価値を生み出すことに繋がります。

この原理を実際のビジネスに適用としている事例が、サッカークラブチーム用トークンである「socios.com」です。

socios.comは、ファントークンを用いて「チームの決定」に投票をすることが可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

このトークンには、従来は「試合を見に行って、グッズを買って、選手を応援する」存在であったファンに、チームの運営の一部も担ってもらうことで、よりロイヤルティを高めていこうという狙いがあります。

このように、Utility Tokenを利用したファンビジネスにおけるコミュニティ専用トークンは、企業のマーケティング文脈で考えるならば「新規顧客の開拓」よりも「既存顧客のコミュニティ化」に向いていると言えるでしょう。

Utility Tokenの活用事例②:シェアリングエコノミー

Utility Tokenの活用事例の二つ目は、シェアリングエコノミーです。

シェアリングエコノミーは、「トークンエコノミーの事業適用の本丸」とも言える活用領域で、国内動向で言えば、ガイアックス社が注力してビジネス活用を進めています。

シェアリングエコノミーのサービスにおいて、Utility Tokenと、その背景技術であるブロックチェーンを用いることで、透明性が非常に高く、管理コストの安いサービスをつくることができるようになります。

例えば、シェアリングエコノミーのサービスの一つに「レンタサイクル」があります。

ここでいうレンタサイクルは、自転車店がその場所を起点として貸し借りする類のものではなく、中国で一時期流行ったような、エリアの拠点ごとに駐輪場と大量の自転車を設置して、借主がスマートフォンアプリで貸し借りの手続きを行うものをイメージする方がわかりやすいでしょう。

レンタサイクルは、「ちょっとそこまで行くのに自転車を使いたいけど、わざわざ高いお金を出してまで買いたくはない」人に対して、耐久財である自転車を安くで貸し出すビジネスです。

このビジネスでは、「何回も貸す」ことと「人手を介さない(つまり人件費をかけない)」ことを前提条件として、一回の利用あたりの単価を下げることで多くの人に借りてもらい、利益を出すことができます。

ここで課題となるのが、盗難や乗り捨て、破損などのリスクと、管理コストのトレードオフ(に近い)関係です。

不要な管理コストをできる限りなくしたい一方で、管理コストを削ると、貸し借りや決済の記録がずさんになったり、顧客管理が不十分なために自転車の盗難等のリスクが高まったりしてしまいます。

そこで、課題解決の手法として注目されるのが、Utility Tokenとブロックチェーンの技術です。

レンタサイクルの管理にスマートコントラクト(貸借契約の自動執行)を使い、決済にトークンを使うことで、貸し借りの記録はブロックチェーン上で記録され、決済記録も同じブロックチェーン上でトークンで記録することができます

そして、これらの機能により、透明性が高く、かつ、管理コストの安いサービスが実現されます。

また、こうした課題感は、レンタサイクルに限らず、シェアリングエコノミー全体がモデルの原理的にもちうる問題です。

そのため、シェアリングエコノミーをビジネスモデルとする様々なサービスで、Utility Tokenを用いたトークンエコノミーが注目されています。

Utility Tokenの活用事例③:公共財の管理・利用

Utility Tokenの活用事例の三つ目は、公共財の管理・利用です。

公共財は、シェアリングエコノミーの延長領域として、近年、Utility Tokenの適用可能性が探られています

公共財の管理・利用にトークンを活用しようという発想の根底には、資本主義における価値の定量化への流れの中で、定性的価値、とりわけ情緒的な価値をうまく保っていこうという考えがあります。

私たちの身の回りには、リンゴのように数えることもできないし、餅のように切り分けられないはずなのに、あたかも「数えることができるもの」「切り分けられるもの」として売り買いされているものが多く存在します。

その象徴が、集団への「貢献」だったり、風土・環境のような「公共財」です。

資本主義の世の中、特にIoTやAIなどのデータサイエンスが発展し、「自然や社会のあらゆるものを定量化・分析して、私たちの生活をより豊かにするように最適化していこう」という思想が強まってきている現代では、そうした「貢献」や「公共財」のような定性的価値を備えたものであっても、定量化の波から逃れることは現実的ではありません

しかし、その一方で、個人や要素に還元された「数えられる結果」だけに縛られず、定性的価値の背後にある「美しい動機」を認めていこうという考え方も根強く存在しています。

こうした思想の背景には、純粋に動機やプロセスを大切にしていきたいという想いだけでなく、定量的データ分析に偏重した評価体系がこれまで以上に社会に広がった場合、行き過ぎた個人主義や結果主義が幅をきかせることで、フリーライダーやモラルハザードなどの「公的福利」を脅かす問題がより深刻になりうるのではないか、というネガティヴフィードバックへの懸念も横たわっています。

そこで、現在、定量化しつつも美しい動機が評価され、ポジティブフィードバックループが回るような仕組みのためにトークンが使えないか、公共財の分野での検討がなされているのです。

Utility Tokenの活用事例④:地域通貨

Utility Tokenの活用事例の四つ目は、地域通貨です。

地域通貨も、現在、その適用可能性が探られている領域の一つで、今後の発展が期待されている領域でもあります。

地域通貨へのトークン適用の背後にも、資本主義における定量化の波に対する抵抗が見られます。

現代に流通している法定通貨は、すべてのものを定量化させ、「商品」として流通させることで拡大していっています。

したがって、原理上、時間が経過するほど法定通貨で交換できる商品は増えていくことになります。

そして、その結果、地方の小さな経済主体と大都市の経済主体が同列で競争させされ、前者は後者に従属していくようになり、さらには決済ごとにかかる数%の手数料収入も、地方都市から大都市へと流出していくことになります。

近年、こうした流れを食い止めるべく、あえて法定通貨ではない地域通貨を使う地区が増えています。

代表的なものでいえば、「さるぼぼコイン」、カヤック社の「まちのコイン」などです。

地域通貨は、「閉じたコミュニティに向いている」というUtility Tokenの特徴を生かし、あえて地区内に経済圏を限定することによって大都市との競争から逃れようという試みです。

また、経済圏の管理を自治体が主導することで、決済の手数料収入が流れてしまうことも防ぐ狙いがあります。

現在は、まだ成功事例がそこまで多くはありませんが、今後も、この動きは加速していくと予想されます。

2021年の注目株、NFTとは何か?

NFTは2021年初頭から急激に取引量が伸びている非代替性のトークンです。

例えば、Non Fungible(代替不可能)なものの一例としては、コンサートチケットが挙げられます。

ブロックチェーン技術はすでにフィンテック分野などで活用されていますが、NFTの「代替不可能」という特色を追加することで、さらに他の分野での活用が広がることが期待されています。

具体的には、NFTを用いることにより、様々なものの固有の価値を証明することが可能になります

例えば、アートの分野です。アートにおいて、オリジナルを所持する価値とインターネットでコピーを見る・ダウンロードする価値は違うと捉えられています。

また、ゲームの分野でも、NFTの活用が進んでいます。

NFT技術を利用することで、自分が取得した一点物のキャラクターやアイテムをプレイヤー同士で売買することや、取得したキャラクターやアイテムを他のゲームで使うことも可能になります。ゲーム内で育成したキャラクターなどは二次流通市場で取引され、パラメータやレアリティが高いほど高値で取引されています。

このようなことを背景に、NFTは、まさに現在最も注目されている仮想通貨領域と言えるでしょう。

👉参考記事:『ブロックチェーン×「NFT」〜NFTの基礎と活用事例〜

スマートコントラクトとは?ブロックチェーンの社会実装手段を解説!

スマートコントラクトとは、1994年にニック・スザボが提唱した「契約の自動化」を意味するプロトコルです。取引プロセスのデジタル化・自動化による取引コスト削減を可能にし、ブロックチェーンの社会実装に一役買っています。事例と共に詳しく解説します!

  1. スマートコントラクトとは?
  2. ブロックチェーンの実装手段としてのスマートコントラクト
  3. 【事例】スマートコントラクトによるブロックチェーンの社会実装

スマートコントラクトとは?

スマートコントラクト=コンピュータプログラムによる契約の自動化

スマートコントラクトとは、ブロックチェーンシステム上で、規定のルールに従ってトランザクションや外部情報をトリガーに実行されるプログラムあるいはコンピュータプロトコルのことで、1994年にNick Szabo(ニック・スザボ)という法学者・暗号学者によって提唱され、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)がEthereum基盤上で開発・提供され始めました

「契約(コントラクト)の自動化」を意味するスマートコントラクトは、事前定義から決済に至るまで、一連の契約のスムーズな検証、執行、実行、交渉を狙いとしています。

出典:FinTech Journal「スマートコントラクトとは何か? その仕組みや事例、実装への課題を解説」

スマートコントラクトの仕組みは、提唱者のNick Szaboが引き合いに出した「自動販売機」の例で説明されることが一般的です。

自動販売機は、その名の通り、人の手を介さずに自動で飲料を販売する機械であり、①指定された金額分の貨幣の投入、②購入したい飲料のボタンの押下、という2つの条件が満たされることで自動的に「販売契約」が実行されます。

自動販売機自体はとてもシンプルな仕組みですが、「契約の事前定義→条件入力→履行→決済」という一連の流れを全て自動化しているという点でスマートコントラクトの好例と言えるでしょう。

なお、スマートコントラクトのブロックチェーン上での呼称は基盤によって異なります。

例えば、Etheruemであればそのまま「スマートコントラクト」と呼ばれていますが、HLF(Hyperledger Fabric)では「ChainCode」と呼ばれています。

それぞれ名称は異なるものの、同じくブロックチェーン基盤上でのスマートコントラクトサービスを指している点に注意してください。

スマートコントラクトとブロックチェーンに共通する思想:DAO

Nick Szaboが提唱したプロトコルがVitalik ButerinによってEtheruemに組み込まれたのは決して偶然ではありません。

スマートコントラクトとブロックチェーンは、その根底に、共通する思想をもっており、後に見るように、スマートコントラクトはブロックチェーンの思想を社会実装する手段としてうまく機能するからです。

両者の思想は、DAO(Decentralized Autonomous Organization、ダオ、自立分散型組織)という概念を中心に理解することができます。

DAOとは、中央の管理者をもたないネットワーク型組織のことで、個々に自立したネットワーク参加者が自由にふるまう中で、組織全体としての判断や意思決定、実行が自動的になされていくような組織形態です。

ブロックチェーン誕生のきっかけとなったビットコインはDAOの典型例だと言われており、PoWと呼ばれる事前の意思決定ルール(「コンセンサスアルゴリズム」)をもとに、ノードと呼ばれる参加者各々の利害関係に基づいた「分散的な」ネットワーク運営がなされています。

Vitalik Buterinは、まさにこのブロックチェーンがもつ「分散性」に注目して、その恩恵を金融領域以外にも押し広げるべく、自由なアプリケーションの開発基盤としてのEtheruemをつくり、その基盤上での「個々に自立して分散した」取引を可能にする機能として、スマートコントラクトのプロトコルを採用したのです。

このように、スマートコントラクトは同じ思想をもった技術であるブロックチェーンとの相性が良く、EtheruemやHyperledgerといったブロックチェーン基盤上で開発・展開されたアプリケーションにスマートコントラクトの機能を組み込むことで、管理者や実行者を介することなく、データ改竄のリスクを下げる形での契約履行が可能になると期待されています。

そして、自動販売機にもみられるように、スマートコントラクトは取引プロセスを自動化できることから、実際に、決済期間の短縮や不正防止、仲介者排除によるコスト削減といった目的で用いられています

こうしたスマートコントラクトとブロックチェーンの切っても切れない関係を語る上で、DAOという思想への理解を外すことはできないでしょう。

そもそもブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ブロックチェーンの実装手段としてのスマートコントラクト

ブロックチェーンの社会実装

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並ぶ、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

つまり、「ブロックチェーンを社会実装する」ことで、世の中の不便や非効率を無くしていくことができるのです。

実際に、ブロックチェーンは既に様々な既存産業でビジネス化されており、2020年度の世界ブロックチェーン市場規模は30億米ドルにものぼると言われています。

例えば、IBM社とMaersk社の協働による物流プラットフォーム、中国における医療用品寄付向けポータル、国連による難民・ホームレス等向けIDサービスなど、その実装対象は非常に幅広いのが特徴です。

他方、国内でも、数年前からブロックチェーンの社会実装に対する注目が集まっています。

実際に、経済産業省が平成27年度に発表したブロックチェーンに関する調査資料では、ブロックチェーンは将来的に、国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています。

出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

経済産業省によると、ブロックチェーンは、具体的に大きく5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

  1. 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

実装手段としてのスマートコントラクト

上記、経済産業省が示した5つの社会実装アプローチの中で、20兆円規模の経済効果をもたらすと予測されているのが「プロセス・取引の全自動化・効率化の実現」です。

これは、「契約条件、履行内容、将来発生するプロセス等をブロックチェーン上に記載」する、つまりスマートコントラクトを利用したブロックチェーンの実装による社会変革を意味しています。

つまり、世の中の不便や非効率を無くしていくためのブロックチェーン、その実装手段が契約の自動的な執行を行う仕組みであるスマートコントラクトなのです。

例えば、スマートコントラクトを利用したブロックチェーン実装で無くせる「不便・非効率」の代表例に印章(以下、ハンコ)」があります。

日本では、契約を確定させるための手段としてハンコが用いられていますが、これには人手を介したりハンコ自体の管理を厳密にするなど高いコストがかかってしまいます。

最近で言えば、2020年に世界を震撼させたCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)への対応として多くの企業でリモートワークが義務化あるいは推奨されたものの、これは「出社してハンコを紙に押さなければ契約が決まらない」という経済効率上の課題を浮き彫りにする結果となりました。

この問題を代替する手段として注目されているのが、スマートコントラクトです。

そもそもハンコは、「個人・官職・団体のしるしとして公私の文書に押して特有の痕跡を残すことにより、その責任や権威を証明する事に用いるもの(Wikipediaより引用)」で、契約の正当性を担保するために用いられます。

そのため、契約内容を改竄できないようにし、契約の執行も権限管理ができるブロックチェーンは、ハンコの代替手段としてふさわしい技術と言えます。

さらに、スマートコントラクトでは、一度契約を締結しておけばあとは放置しておいても問題がないためメンテナンスが不要であり、かつ強制執行力があるので、将来的には裁判結果が出たら自動で差し押さえなどもできる可能性があります。

このように、スマートコントラクトは、データの対改竄性・システムの非中央集権性といったブロックチェーンの根本思想をうまく社会実装する手段として働くことで、既存産業における不便や非効率を解消できると期待されているのです。

【事例】スマートコントラクトによるブロックチェーンの社会実装

事例①:DEX(分散型取引所)

スマートコントラクトによってブロックチェーンをうまく社会実装した代表的な事例の一つが、DEX(Decentralized Exchange、分散型取引所)です。

DEXは、イーサリアムなど一部のブロックチェーンネットワーク上で展開される暗号資産(=仮想通貨)の取引所の一つで、ユーザー自身が資産管理を行う点に特徴があります。

企業が運営するCEX(Centralized Exchange、集中型取引所)が秘密鍵の管理を“Trusted Third Party”(信頼された第三者)へと委託するのに対して、DEXでは、プロトコルに従い自動化されたプロセスを通じてユーザー自身が秘密鍵の管理を行うため、クラッキングや人為的ミスによる秘密鍵の流出、倒産などの資産喪失リスクを回避することができます

この「自動化されたプロセス」を実現している技術の一つがスマートコントラクトです。

P2PネットワークであるDEXでは、暗号資産を取引したい人同士が自身の秘密鍵とコントラクトアドレスを用いて直接取引することが可能で、決済までの取引プロセスが自動で行われます。

取引所としてはまだ歴史が浅くユーザー数が少ないためにアセットの流動性が低い、中央管理者がいないため自己責任が求められるといったデメリットもありますが、他方で、ブロックチェーンを利用することによるセキュリティの高さや管理コストの低下による手数料の安さなどのメリットが魅力的であるため、利用者も確実に増加傾向にあります。

これは、「分散性」というブロックチェーンの思想が、スマートコントラクトという機能によってうまく社会実装された好例と言えるでしょう。

なお、DEXには、「0x Protocol(ゼロエックスプロトコル)」「KyberNetwork」「Bancor Protocol」、そして最近注目を集めている「Uniswap(ユニスワップ)」といった複数のプロトコルが存在しており、それぞれがブロックチェーンを社会実装するためのミドルウェアとして機能しています。

事例②:投票

スマートコントラクトの活用事例として注目を集めている領域が「投票」です。

投票は、有権者に議決権を分配し、それらが正しく行使される、つまりあらゆる改竄がなされないことを前提としています。

これは、「データの対改竄性」というブロックチェーンのセキュリティ特徴と見事にマッチしています。

ブロックチェーンを用いた投票システムでは、議決権をデジタルトークンとして発行し、スマートコントラクトによる集計を行うことで、第三者による票の改竄を防ぐことが可能になるのです。

日本国内では、2019年に、アステリア株式会社(旧:インフォテリア株式会社、本社:東京都品川区、代表取締役社長:平野洋一郎、東証一部:3853、以下 アステリア)が株主総会における議決権投票をブロックチェーン基盤上で行うことを発表しました。

アステリアは、「ブロックチェーン上のデジタルトークンを議決権として使用することで、より公正で透明性の高い投票システムの実現を証明」することを目的に、三菱UFJ信託銀行株式会社と共に投票システムを開発し、実際には次のようなフローでの投票を行いました。

  • Ethereumのスマートコントラクトによって、賛否を問う4議案10項目に必要なデジタルトークンを登録する
  • 議決権を有する株主9,307名に議決権としてのデジタルトークンを発行する
  • 議決権の総数に応じて、それぞれ167,642個のデジタルトークンによる投票の受付を行う
  • 権利行使(投票)に伴うトランザクションをブロックチェーン上に記録する

投票は、短期間に大量の処理作業をミスなく行うことが求められるシステムです。

こうしたシステムを実装するにあたって、スマートコントラクトは、まさにうってつけの技術だと言えるでしょう。

事例③:国際貿易

スマートコントラクトを利用したブロックチェーンの社会実装の3つ目の事例が、国際貿易プラットフォームへの活用です。

IBM社の発表資料によると、国際貿易は、次のような業界課題を抱えています(下記、同資料より本文の一部を抜粋)。

  • データは組織のサイロに閉じ込められている
    • 情報はサプライ・チェーン内の数十のサービス・プロバイダーによって紙やさまざまなデジタル・フォーマットで保持されていて、複雑で、わずらわしい、経費のかさむ一対一のメッセージングを必要としています。
    • 結果として組織の境界を越えると情報が矛盾し、船荷がなかなかはっきりわ からず、さらには場所によっては見えないので、効率的な流れが妨げられています。
  • 手作業、時間のかかる、紙ベースの処理
    • 最新データの収集、処理と非効率な貿易ドキュメントの交換のために、手作業で確認したり、頻繁にフォローアップが必要だったりして、ミスや遅れが生じたり、コンプライアンス・コストがかさむといった結果になります。
    • 情報が足りないために、ドキュメントは常に遅れます。
  • 通関手続きに時間を要し、不正も発生
    • 税関当局によるリスク評価は十分な信頼できる情報が欠けているために、検査率が高くなり、詐欺や偽􏰀に対する防止手段が追加されて、通関手続きが遅れます。
  • 高コストと低レベルな顧客サービス
    • これらの難問が下流に大きな影響を与えます。
    • 効果的な予測、計画やサプライ・チェーンの混乱に対するリアルタイムの対応、サプライ・チェーン全体 での信頼できる情報の共有などができないので、過剰な安全在庫、高い管理コスト、運用上の難問、最終的には貧弱な顧客サービスにつながります。

こういった課題に対して、ブロックチェーン基盤上で国際貿易プラットフォームを展開し、スマートコントラクトによる取引のデジタル化・自動化を実現することで、従来の膨大な取引コストを大幅に削減することが期待されます。

こうしたスマートコントラクトによる取引コスト削減の最も有名な事例が、TradeLensです。

Trade Lensは、2016年9月から、IBMとコンテナ船世界最大手のマースクとの共同で検証を開始したブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォームで、荷主・ターミナル・運送業者・船社・海上保険・通関業者など、海上物流に関係するあらゆる会社間でのデータベース共有を実現し、業界全体の非効率を解消しようという一大プロジェクトです。

TradeLensでは、「グローバル・サプライ・チェーンのデジタル化」を掲げ、オープンソースの権限型ブロックチェーンであるHyperledger Fabricを元にしたIBM Blockchain Platformを利用することで、関係各社すべてでの台帳共有を実現しようとしています。

こうした事例から、多数のステークホルダーが存在し、サプライチェーンが複雑化する国際貿易のようなシステムでは、ブロックチェーンのような安全かつコストの低い技術が良いソリューションとなりうることが理解できるでしょう。

【2021年】ブロックチェーンの市場規模は?複数の統計をまとめました

ブロックチェーン技術の国内市場規模は、2020年で100〜200億円、2025年には1000億円を超え、関連市場を合わせると67兆円の潜在規模があるとされています。また、世界市場規模では2020年に36億7000万米ドルに達し、2021年から2028年にかけてCAGR82.4%の成長が見込まれています。経済産業省、矢野経済研究所、ミック経済研究所等の発表資料をもとに見方を解説します。

  1. ブロックチェーンのおさらい
  2. ブロックチェーンの市場規模①:日本国内での予測
  3. ブロックチェーンの市場規模②:世界予測

ブロックチェーンのおさらい

高まるブロックチェーン市場への期待

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、金融領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

そもそもブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

ブロックチェーンの市場規模は一つじゃない!?

今見たように、ブロックチェーンは非常に幅の広い概念であり、その性質上、ビジネス活用の可能性も多岐に渡ります。

それ自体は良いことなのですが、ここで一つ問題が起こります。

ブロックチェーンのマーケットに関する情報を得るために複数のWebサイトや書籍をみてみると、大小異なる様々な市場規模予測がなされており、どの数字を参考にすべきか困ってしまう、という問題です。

これは、後に説明するように、ブロックチェーンの概念が新しく、応用可能性が非常に広いことと関係しています。

ブロックチェーンは、「インターネットと並ぶかそれ以上の技術的革新」と言われることもあるほどイノベーティブな技術です。

そのために、その技術的可能性や実社会への応用可能性をどのようにみるか、どこからどこまでをブロックチェーンに関連した市場とみるか、といった視点によって、市場規模の算出方法が大きく異なってしまうのです。

しかし、これからブロックチェーンを自社活用しようと言う人、あるいは新規事業の立ち上げを検討している人にとってみれば、市場規模の数字いかんで意思決定も左右されるでしょう。

そこで、次章以降では、資料間の偏りを割り引いて考えるべく、市場規模に関する複数の予測レポートを参照していきます。

ブロックチェーンの市場規模①:日本国内での予測

ブロックチェーン国内市場規模予測A:経済産業省(平成27年度)

ブロックチェーンの国内市場規模に関するマーケット予測で最もポピュラーな資料は、平成28年4月28日付で経済産業省の商務情報政策局 情報経済課が発表した『我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料』でしょう。

同資料では、大きく次の5つのテーマでブロックチェーンの社会変革・ビジネスへの応用が進むとした上で、それら5つのインパクトの合計として、将来的に国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています。

  • 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  • 権利証明行為の非中央集権化の実現
  • 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  • オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  • プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

この資料は、市場がまだ大きく形成されていない初期に発表されたこと、発表元が経済産業省であることから、複数の書籍や論文等でも引用され、ブロックチェーンの潜在的可能性に対する期待を膨らませる一つの要因になりました。

そして、実際に、ブロックチェーンの応用可能性の広さとそのインパクトの大きさは資料の示す通りで、今後、金融分野にとどまらないあらゆる社会側面に広がっていくものと考えられます。

しかし、気をつけなければならない点として、この資料で言及されているのはあくまでブロックチェーン関連市場の話であって、ブロックチェーン市場そのものの規模予測ではありません

ブロックチェーンはインターネット同様、それ自体で価値を発揮するというよりも、むしろその技術を何らかの既存ビジネスに応用することによって高い価値を生み出しうる技術です。

そのため、「67兆円規模の市場に影響を与える」ほどのインパクトはあるものの、この数字には例えば、ブロックチェーンによる影響を受けているものの内容自体はブロックチェーンと無関係、といったサービスなども含まれています。

ブロックチェーンに限らず、市場規模を調べる際には、こうした「市場という言葉がどの範囲までを示しているのか」を適切に把握することが大切です。

ブロックチェーン国内市場規模予測B:矢野経済研究所

ブロックチェーンの国内市場規模に関する他の資料に、2019年5月22日付で株式会社矢野経済研究所(以下、矢野経済研究所)が発表した『2019 ブロックチェーン活用サービス市場の実態と将来展望』(有料、リンクは同資料のプレスリリースページ)があります。

同資料は、経済産業省の資料とは異なり、ブロックチェーンを活用したサービスの市場規模が予測されています。

矢野経済研究所によると、「2017年後半~2018年にかけては金融機関に留まらず、幅広い業界においてサプライチェーンや権利証明など、同技術を応用した実証実験を積極的に実施し、その活用可能性を見出しつつあ」り、その結果として、「2019年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は、171億5,000万円の見込み」です。

さらに、同社は「BaaS(Blockchain as a Service)ソリューションの提供」が始まることに注目しつつ、「2022年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は1,235億9,000万円」、「2017年度~2022年度の5年間の年平均成長率(CAGR)は108.8%」と見込んでいます。

また、今後の展望として、「フェーズ(段階)別では、実証実験が多いものの、2019年度以降、商用化に向けた効果検証フェーズや本格的な商用化フェーズへと進む案件が増えていく」ことを踏まえ、「日本発のブロックチェーンコンソーシアムの立上げが期待される」としています。

ここで、重要なポイントは、ブロックチェーンのビジネス活用フェーズがまだ実証段階にあるということでしょう。

革新的な技術であればあるほど、既存市場へと応用する際のハードルが高く、ビジネス活用でクリアしなければならない課題も多くなります。

そのため、実際に技術が社会実装されるまでには、技術自体の登場から長い年月を要することになります。

ブロックチェーンの場合は、概念自体の認識、技術的可能性の大きさの理解はかなり進んできているので、今後は、様々な業界での実験が繰り返され、その中から次世代の「当たり前」をつくるサービスが登場し、その後に一気に市場が拡大すると見込まれます。

こうした背景を踏まえて、前述の経済産業省の資料が将来的なインパクトの予測であったのに対して、矢野経済研究所では現在にフォーカスした統計がなされているために、数字に大きな開きがあることを理解することが重要です。

ブロックチェーン国内市場規模予測C:ミック経済研究所

ブロックチェーンの国内市場規模に関して、別の資料をもう一つ紹介します。

2020年1月6日に発刊された、株式会社ミック経済研究所(以下、ミック経済研究所)の『大きく活用用途広がるブロックチェーン市場の現状と展望 2019年度版』(有料、リンクは同資料のプレスリリースページ)です。

同資料では、ブロックチェーン関連業者(プラットフォーマー・SIer・アプリ/SWベンダー)の市場規模を予測しています。

ミック経済研究所によると、「2018年度の同市場は53.3億円、2019年度は79.9%増の95.9億円市場へと成長する見込み」で、「同市場は年平均成長率66.4%増で成長を続け、2024年度には1,000億円を超える市場へと成長」します(下図)。

出典:ミック経済研究所

この市場成長について同社は、「ブロックチェーンの技術自体は、高度なセキュリティが担保されることから金融を中心に順調に活用用途が広がって」おり、「現在はトレーサビリティや著作権の管理などでも有用とされ、金融領域以外での活用も期待されている」と、一時は落ちついたブロックチェーン市場への期待が、近年にまた高まり始めていることを指摘しています。

注目すべきことは、矢野経済研究所の調査と比べるとやや控えめな数字ではあるものの、ミック経済研究所の資料でも、ブロックチェーン市場は「2024年度には1,000億円を超える」とされており、調査方法や調査主体にかかわらず、ここ数年で大きな市場成長が見込まれていることです。

この背景には、同社が指摘している通り、金融領域以外での分野でブロックチェーンのビジネス活用が進んでいる現状があります。

この統計も、日本国内におけるブロックチェーンに対する期待の高まりを示している資料と言えるでしょう。

ブロックチェーンの市場規模②:世界予測

ブロックチェーン世界市場規模予測A:株式会社グローバルインフォメーション

次に、日本から海外へと目を転じてみましょう。

世界のブロックチェーン市場は、米国を中心に、技術的発展、市場規模ともに日本よりもはるかに進んでおり、すでに国際的大企業による大規模なブロックチェーンプラットフォームのローンチなどの動向が見られています(Mearsk社とIBM社の共同による海運プラットフォーム「Trade Lens」など)。

こうした世界市場のマーケット規模に対する統計の一つとして、株式会社グローバルインフォメーション(以下、GI)による市場調査レポート「ブロックチェーンの世界市場 – 2025年までの予測:アプリケーションプロバイダー、ミドルウェアプロバイダー、インフラプロバイダー」 (MarketsandMarkets)(有料、リンクは商品ページ) があります。

GIによると、「ビジネスプロセスの簡素化と、ブロックチェーン技術とサプライチェーン管理のニーズの高まりが、ブロックチェーン市場全体を牽引することにな」った結果、「ブロックチェーン市場規模は、2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大し、CAGR67.3%という驚異的な成長を遂げる」ことになります。

さらに、2021年から2028年にかけては、年平均成長率(CAGR)82.4%で拡大するとも予想されています。

この驚異的な数字の根拠として、同社は、北米を中心とした市場における銀行・金融セクターでのマーケット維持を土台に、プライベートブロックチェーンの台頭、SEMs(中小企業部門)の高成長が市場に成長をもたらすとの見方を示しています。

特に、プライベートブロックチェーンに関して、GIは次のように言及しています。

「2020年に市場規模が最大になると予測されているプライベートブロックチェーンは、ユーザー権限などでセキュリティが確保された共有データベースまたは台帳としての役割を持ちます。通常、関連する組織のみが知っているプライベートキーを使用することで、そのセキュリティが守られます。ブロックチェーン技術の一種であるプライベートブロックチェーンは、書き込み権限は単一の組織に一元管理され、読み取り権限は、組織の使いやすさに基づいて制限されます。そのブロックチェーン技術を企業間のユースケースに活用するという点で、企業にとってより多くの機会を提供します。」

実際に、日本でも、プライベートブロックチェーンに対する取り組みが各業界の先進的な企業によって進められ始めています

この時期に、ブロックチェーンに対する投資を行えていたかどうかが、10年先の企業の未来を変えるかもしれません。

ブロックチェーン世界市場規模予測B: IDC Japan 株式会社

ブロックチェーンの世界市場規模を予測する他の資料に、2019年9月に、IT専門調査会社である IDC Japan 株式会社(以下、IDCJ)が発表したWorldwide Semiannual Blockchain Spending Guideがあります。

IDCJによると、「世界のブロックチェーンソリューションに対する支出額は2023年に約159億ドルに達する見通し」で、「2018年から2023年までの予測期間を通じて、ブロックチェーンへの支出額は安定して増加し、5年間の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は60.2%にな」ります。

また、同社はブロックチェーン市場に対する分析として、「世界的にブロックチェーン支出額が最大の業種は、銀行業」であり、「予測期間全体を通じて、銀行は全世界の支出総額の約30%を占める見通し」だとしています。

また、「その次に大きい支出が見込まれる業種は、組立製造業とプロセス製造業で」、「両者を合わせると支出額全体の20%以上になる見通しで」あり、その中でも特に「プロセス製造業は、最も高い支出成長率が見込まれる業種でもあり(CAGR68.8%)、予測期間の終わり頃には、ブロックチェーン支出額が第2位の業種になると予測」しています。

ここで注目すべきは、ブロックチェーン市場第二の支出源泉として製造業をあげていることです。

2020年現在、ブロックチェーン業界では、複数の非金融領域における市場の創出・拡大が進んでいます。

とりわけ、物流業界は、IBM社を筆頭に、ブロックチェーンの技術を利用した世界的なサプライチェーンの変革が進められており、近い将来、ブロックチェーンに対応している企業とそうでない企業で、明暗が分かれてくる可能性があります。

米国IDC Worldwide Blockchain Strategies リサーチディレクターであるジェームス・ウェスター氏による「一般社会ではブロックチェーンをめぐって時として白熱した議論が交わされていますが、そのような中で、企業によるこのテクノロジーの採用は静かに進行し、複数のユースケースでティッピングポイントに達しています。初期の試験運用プログラムでブロックチェーンの価値を認めた企業が、そうしたプロジェクトを本番環境に移しつつあります」という発言の背景には、まさに物流業界のような社会変革の動向があると言えるでしょう。

ブロックチェーン×ゲーム 〜ブロックチェーンが生み出す新たな体験〜

近年、ゲームにブロックチェーンを組み込み、新たな体験や価値を提供する動きが強まってきています。ゲーム内にブロックチェーン技術を取り入れると、具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。これまでのゲームと”ブロックチェーンゲーム”の違いを、いくつかの事例を交えてご紹介します。

  1. 新たな体験を生み出す”ブロックチェーンゲーム
  2. 代表的なブロックチェーンゲーム3選
  3. ブロックチェーンゲームの今後

新たな体験を生み出す”ブロックチェーンゲーム”

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

「ブロックチェーン×ゲーム」のメリット

現在発売されているほとんどのゲームは管理会社による中央集権型です。全てのデータはソフトの開発会社によってコントロールされており、ゲームの存在が消えればデータもなくなり、アイテムなどの他作品への使い回しもできません。

一方で非中央集権管理であるブロックチェーンゲームならではのメリット4つについて詳しく解説していきます。

出典:pixabay

①永続性

従来のゲームでは、サービスが停止するとデータベース内の全てのデータが消えてしまいます。ブロックチェーン上にデータを記録しておけば、データベースを複数の企業で管理でき、大元のサービスが停止してもそのデータを保管しておくことができます。

②相互運用性

ブロックチェーンを通すと、1つのアイテムを他サービス会社で使用可能になります。

これには、

  • 複数の企業間でのコラボレーション
  • 運営が異なるマーケットプレイスでの売買
  • ゲームアイテムを担保に資金を借りる等の金融サービスとの連携

といった利用法があると考えられています。

ブロックチェーン同士を接続する新たな技術=「インターオペラビリティ」の研究が進めば、その可能性はさらに広がることが期待できます。

👉参考記事:『「インターオペラビリティ」〜ブロックチェーン同士を接続する新たな技術〜

③真贋性

全てのユーザー同士でデータを管理し合うことになるため、不正取引、データの改ざんが極めて難しくなります。キャラクターやアイテムのデータの複製が困難になり、オリジナルであることの証明が可能になります。

真贋性が担保されることにより、NFT(Non-Fungible Token=代替不可能なトークン)を利用したマーケットプレイスが普及するなど、新たな市場が生まれています。

👉参考記事:『ブロックチェーン技術が真贋証明に応用できるワケ〜LVMH、集英社など事例多数〜』『ブロックチェーン×「NFT」〜NFTの基礎と活用事例〜』

③透明性

ブロックチェーンユーザーはデータの履歴を誰でも確認でき(=トレーサビリティの担保)、不正防止につながります。また、アイテムの所有履歴を一般公開することで、ゲームに関する様々なアピールが行えるようになります。

👉参考記事:『ブロックチェーンのトレーサビリティへの応用〜食品・物流・偽造品対策〜

代表的なブロックチェーンゲーム3選

①マイクリプトヒーローズ

出典:MyCryptoHeroes(公式サイト)

マイクリプトヒーローズは、double jump.tokyoが開発した対戦ゲームです。戦うキャラクターは仮想通貨でできた実在の偉人がほとんどです。日本史や世界史の登場人物が多数現れ、パーティーを組んで戦うので、ロマンを感じる方も多いでしょう。

クエストやプレイヤー同士でのバトルが可能で、勝利でアイテムもゲットできます。アセットの取引所に参加すれば、高額売却で仮想通貨を儲けられるチャンスです。

ブロックチェーンゲームの基礎を押さえながら、歴史上の人物が時代を超えて戦うロマンは、世界中のプレイヤーの熱狂を生み出しています。

②クリプトスペルズ

出典:CRYPTO SPELLS(公式サイト)

CRYPTO SPELLS(クリプトスペルズ)は、デジタル上での自由な売買を可能とするトレーディングカードゲームです。

自分でオリジナルのカードを作ることができ、取引も自由にできます。カードの発行枚数や取引履歴がブロックチェーン上に記録されるために、自分のカードの価値が証明される仕組みになっています。

SNSアカウントなどでログインして始めることができ、ゲームを始めるだけなら仮想通貨ウォレットや仮想通貨を準備する必要がないのも魅力のひとつです。

ゲーム配信開始当初のクラウドセールでは、当時の国産ブロックチェーンゲームでトップクラスとなる約3000万円分以上の売上を出すなど、話題性の高さにも注目です。

③コントラクトサーヴァント

出典:コントラクトサーヴァント(公式サイト)

コントラクトサーヴァントは、アクセルマーク株式会社が作ったトレーディングカードゲームです。ブロックチェーンを使っていながら、イーサリアムなしでも無料のカードで遊べるなど、初心者にとっての敷居が低いことがポイントです。

個性あふれる女性キャラクターが「サーヴァント」というカードとして登場することから、萌え系ゲームが好きな方にもおすすめでしょう。公式Twitterではプレイヤーの疑問にも答えてくれるなど、誠実な運営を行っています。

ブロックチェーンゲームの今後

ブロックチェーンゲームは、少しずつ注目を集めるゲームが出てきているとはいえ、既存のスマホゲームやコンシューマーゲームなどと比べるとまだまだ普及しているとは言えない状況です。

とはいえ今後、ゲーム内のアイテムやキャラクター売買の活発化促進によって、爆発的に市場を拡大していく可能性も秘めています。

新たな価値をゲームやプレイヤーに与え、新経済圏を作り出す可能性も秘めたブロックチェーンゲーム。NFTの注目も日増しに高まるなど、今後も普及に向けた動きが加速していきそうです。

ブロックチェーン×投票 〜選挙を変えるブロックチェーン技術〜

近年、ブロックチェーン技術を「投票」の分野に活用する動きが活発化しています。「投票」の持つ課題と、それらをブロックチェーンが解消できる理由、そしてすでに行われている実証実験について解説していきます。

  1. はじめに
  2. ブロックチェーンが投票を変える
  3. 「ブロックチェーン×投票」の導入事例
  4. まとめ

はじめに

2009年にビットコインが運用開始されて以来、イーサリアム、イオスなど、様々なブロックチェーンプラットフォームが誕生しました。

ブロックチェーンの特徴といえば、情報の改ざんが極めて難しい点があげられ、暗号資産などの金融領域だけではなく、非金融領域においてもブロックチェーン技術が多方面で応用され始めています。

特に近年では、物流や貿易などサプライチェーン・マネージメントにおいて、ブロックチェーンに関する実証実験や実装が急速に進んでいます。

そして、今回はブロックチェーンと親和性が高いといわれている「電子投票」の分野での取り組みを紹介します。ブロックチェーン技術を活用した電子投票が実現可能なのか考察していきましょう。

ブロックチェーンが投票を変える

従来の”投票”がもつ課題

投票会場まで足を運び、投票用紙に候補名を記入し投票箱に入れる━━これが一般的な”投票”の一連の流れです。

このアナログ方式の投票が持つ課題としては、

  • 利便性が悪く投票率が伸びない
  • 不正や手続きミスが起こりうる
  • 作業効率が悪く人件費がかかる

といったものが挙げられます。

出典:pixabay

これらの事態を受けて、日本やアメリカでは投票率の向上や事務手続きミスの防止、および投票作業の効率化を目指す取り組みが行われています。

ブロックチェーン×投票

従来の投票作業の課題を解消する上で、改めて”投票”に必要なことは何なのかを紐解くと、

  • 定められた期間内に有権者が投票可能
  • 投票結果が改ざんできない

という2点が挙げられます。

そこで注目を集めるのが、「分散型で障害に強い」「改ざんが限りなく不可能に近い」という特徴を持つブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

「ブロックチェーン×投票」の導入事例

海外

アメリカウェストバージニア州での実証実験

出典:pixabay

2018年11月、アメリカウェストバージニア州の中期選挙で、ブロックチェーン投票システムが実際に導入されました。

選挙権を持つ海外駐在軍人1000名ほどが対象となり投票が行われたところ、実際に投票した人は144名でした。

参考値として、2016年のアメリカ大統領選挙における国外からの投票は、わずか7%に留まっており、一方のブロックチェーン電子投票システムにおける投票率は14.4%という結果となりました。

ブロックチェーンを用いた電子投票は、海外からの投票率の向上に貢献したといえるのではないでしょうか。

エストニアでの過去実績

出典:pixabay

電子国家と呼ばれているエストニアでは、ブロックチェーン技術が生まれる前の2005年から世界に先駆けて、i-Votingというシステムを用いた国家主導の電子投票が行われてきました。

有権者はインターネットにつながったコンピュータがあれば世界のどこからでも投票でき、投票内容は期日までであれば変更することもできます。i-Votingのウェブサイトによると、エストニア人の44%がi-Votingを利用し、選挙ごとに11,000日の稼働日を節約できるといいます。

さらにこのi-Votingからは、CybernetivaとSmartmaticが開発するブロックチェーンを利用した電子投票システムTIVIが生まれ、その投票フローに磨きをかけています。

日本国内

つくば市での実証実験

出典:つくば市

2019年8月28日、茨城県つくば市で募集された「令和元年度つくばSociety5.0社会実装トライアル支援事業」の最終審査において、ブロックチェーン技術を活用したインターネット投票の実証実験が行われました。

このプロジェクトは、株式会社VOTE FORや株式会社ユニバーサルコンピューターシステム、日本電気株式会社による合同で実施され、顔認証の導入の入力作業の効率化や、データの非改ざん性、トレーサビリティの確保などが成果として報告されました。

👉参考記事:『ブロックチェーンのトレーサビリティへの応用〜食品・物流・偽造品対策〜

インターネット投票推進法案の提出

日本国内では2021年6月、立憲民主党と国民民主党が「インターネット投票の導入の推進に関する法律案」(インターネット投票推進法案)を衆議院に提出しました。

この法案は、選挙などへのインターネット投票の導入を推進するものであり、セキュリティ確保のためにブロックチェーン技術の活用も検討されています。

まとめ

2020年年初から新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るう中、私たちの考え方や行動は大きく変わりつつあります。

投票についても同様で、今後リモートにシフトしていくことでしょう。インターネット投票推進法案の提出もその追い風となることが予想され、ブロックチェーンを活用したより効率的で利便性の高い選挙の実現がますます期待されます。