ブロックチェーンは不動産業界40兆円市場の切り札となりうるか?

不動産業界は、国内30万社、市場規模40兆円を誇る巨大産業です。その不動産業界で、今、ブロックチェーンを活用したビジネスが増えています。LIFULL、積水ハウス、Propy。不動産×ブロックチェーンは業界を変革できるのか?一挙、解説します!

不動産業界の有望技術として注目を集めるブロックチェーン

国内30万社、40兆円規模の不動産業界がブロックチェーンに期待を寄せている

不動産業界は、国内30万社以上のプレイヤーが存在し、市場規模は40兆円とも言われる巨大産業です。

日本にはおよそ600万社の企業が存在することを踏まえると、不動産の数は全業界の5%を占めていることになります。

また、当然、その歴史も古く、昔からの取引関係や商慣行などが色濃く残り続けている業界でもあります。

そうした不動産業界で、近年、ブロックチェーン技術を活用した新たなサービスがいくつもローンチされ、業界の課題解決に対する期待が高まっています

例えば、大手ハウスメーカーの積水ハウスでは、ブロックチェーンを活用した次世代不動産プラットフォーム構想が推し進められています。

出典:ITmedia「ハウスメーカーが構想する“不動産ブロックチェーン”の可能性とインパクト (1/3)」

ITmediaによると、同社は、「2019年3月には、KDDI、日立と、企業間の情報連携基盤を実現すべく、協創を開始」し、「本人確認情報(KYC)をブロックチェーン上で共有し、賃貸契約の利便性向上を実証実験によって検証し」た他、「同年9月27日には、大阪ガス、東邦ガス、損害保険ジャパン日本興亜、東京海上ホールディングス、三井住友海上火災保険も参画に加わり、住まいに関わる多くの手続きをワンストップ化させるための検討に入」りました。

また、2019年7月23日には、株式会社bitFlyer Blockchainが住友商事株式会社と業務提携を行い、独自ブロックチェーンmiyabiを活用した不動産賃貸契約の効率化を行っていく旨を発表しました。具体的には、「住宅の賃貸契約の電子化に加えて、借主がスマートフォン1つで物件の内見予約から契約、その後の契約更新から退去手続きに至るまでを行えるプラットフォームを目指し、両社は共同開発に着手」しています(カギ括弧内は仮想通貨Watchより引用)。

他にも、LIFULLによる不動産賃貸へのブロックチェーン導入や、外資企業のPropyによる国際不動産売買プラットフォームの構築など、この数年で、「不動産×ブロックチェーン」の動向は大きく様変わりし出したと言えるでしょう(なお、これらの事例については、本記事の後半でも紹介します)。

そもそもブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

不動産業界でブロックチェーンが注目される理由

不動産業界は、次のような特徴をもつ産業です。

  • プレイヤー数が多い
  • とりわけ古参のプレイヤーが多く、幅をきかせている
  • 情報に非対称性がある(借り手と貸し手、買い手と売り手、など)
  • 第三者仲介・管理が取引の基本形態になることが多い
  • 取引単価が大きい

これらの特徴から、不動産業界では、プレイヤー間の心理的な駆け引きや情報操作による「騙し」が横行しやすい傾向にあります。

また、第三者が介入することにより取引コストが大きくかかってしまうという課題も存在しています。

こうした状況に対して、ブロックチェーンは先ほど見たように、次のような特徴をもっています。

  • データ(取引記録)をオープンかつ正しく記録することができる
  • 中央管理者を設けず、当事者間でのデータ共有が可能

したがって、ブロックチェーンの技術を利用することで、不動産業界では、第三者仲介・管理による取引コストの増加を伴わずに、

  1. 利害が衝突したり見解が一致しない関係で、取引を簡単にする
  2. 従来証券化されてこなかった小口証券を実現する

といった課題解決が可能になるのです。

(これらの課題解決については、次の章でそれぞれ詳しくみていきます)

近年、不動産業界でブロックチェーンが注目される背景には、このような「オープン」「真正」「分散」といったブロックチェーンの諸特徴と不動産業界が抱えていた課題との相性の良さがあると言えるでしょう。

「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる課題

「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる課題A:利害不一致な取引の簡易化

不動産業界にブロックチェーンを導入することにより解決しうる課題の1つ目は「利害が衝突したり見解が一致しない関係で、取引を簡単にする」ことです。

先ほど見たように、不動産取引は全般的に「情報の非対称性」に基づいて無駄な取引コストが発生しているケースが多いと言えます。

これを、不動産のライフサイクルごとにあてはめた課題解決が行われています。

それぞれのフェーズにおいて、「誰と誰の間に非対称性があるのか?」に注目すると、課題の理解が容易です。

  • ライフサイクル①:登記
    • 「役所」と「登記申請者」間の非対称性が課題
    • 役所からすると、「不動産の所有者は本当にこの登記申請者本人なのか?」を確かめるのが難しい
    • そのため、権利証明や複雑な登記申請手続きが必要となり、登記申請者にとっても役所にとっても取引コストが増大する
    • 特に、発展途上国で解決できる問題が多い
  • ライフサイクル②:売買
    • 「買い手」と「売り手」間の非対称性が問題
    • 買い手からすると、「この人は本当に所有しているのか?」「隠れ担保がついてないか?」「入居者間や近隣で厄介なトラブルはないか?」、売り手からすると、「この人は本当に支払ってくれるのか?」という疑念が付きまとってしまう
    • そのため、双方の信用を担保するための第三者仲介が必要となり、いわゆる「両手取引」における高い二重の手数料が取引コストとなる。
  • ライフサイクル③:賃貸
    • 「借り手」と「貸し手」間の非対称性が課題
    • 借り手からすると、「ここは事故物件ではないか?」「家主はしっかりメンテナンスしてくれるのか?」、貸し手からすると、「この人は毎月きちんと家賃を支払ってくれるのか?」「この人はモンスター住民にならないか?」といった不安が生じてしまう
    • そのため、双方の信用を単肥するための第三者仲介が必要となり、いわゆる「両手取引」における高い二重の手数料が取引コストとなる
  • ライフサイクル④:修繕
    • 「 修繕に入る施工業者」と「過去の施工業者」間の非対称性が課題
    • 修繕に入る施工業者からすると、「今回修繕依頼されている水道の型番はそもそも何番なのか?」「過去にどんな修繕工事をしているのか?」といった情報が不明瞭。
    • そのため、物件情報や過去の施工情報など、必要ながらも可視化されていない情報を確かめるためのコストがかかったり、最悪の場合はわからないままとなってしまう

こうしたプレイヤー間の情報非対称性に起因した不動産取引の課題に対して、ブロックチェーンは、オープンかつ真正性の高い(データの改竄等がない)データ基盤において、第三者を排除した分散型の管理手法を提供することで、課題解決に寄与するとみられています。

「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる課題B:小口証券の実現

不動産業界の課題でもう一つ注目されているのが、「小口証券の実現」です。

従来、不動産業界では、REIT(不動産投資信託)などにより、不動産の証券化が進められていました。

しかし、証券化できる不動産の規模は、中〜大規模なものに限定されており、たとえば、山村で廃屋になった古民家、ニュータウンで独居老人の住んでいた空き家、などはあまり対象とされてきませんでした。

これは、従来の不動産ファンドでは組成運用コストが大きくかかることから、小規模な不動産ではそのコストを回収しきることができず、ファンド組成が難しかったためです。

この課題に対して、ブロックチェーン技術を用いることで、トークンなどの活用により証券のデジタル化を進められ、組成運用コストを大幅に引き下げることが可能になります。

そのため、従来はコスト高になり踏み込めなかった小規模な不動産の証券化、つまり「小口証券」が実現されることになります。

そして、この小口証券化が進むことで、証券化できる不動産の幅が広がるだけでなく、中〜大規模の不動産には手を出せなかった個人投資家からも広く投資を募ることが可能になります。

実際に、不動産情報サイト大手のLIFULLは、2020年から、デジタル証券プラットフォームを提供する米セキュリタイズと提携して、日本でブロックチェーンを用いた不動産のデジタル証券化の実証実験を開始しています。

出典:coindesk JAPAN「LIFULLが不動産のデジタル証券化を実験、米セキュリタイズと【セキュリティトークン】」

具体的には、特別目的会社(SPC)が物件を小口トークン化し、投資家に売り出すという発行スキームで、ブロックチェーンを用いることで、配当や償還、二次流通を自動化する狙いがあります。

こうした取り組みが進むことで、REIT市場が取りきれなかった新たな不動産マーケットの開拓が進んでいくと見られています。

「不動産×ブロックチェーン」の事例

国内事例:LIFULL(不動産賃貸)

「不動産×ブロックチェーン」の代表事例として注目を集めているのが、不動産情報サイトを運営する株式会LIFULLによる不動産情報コンソーシアム「ADRE(Aggregate Data Ledger for Real Estate、アドレ)」です。

この取り組みは、「異業種プレーヤー間で不動産データを共有・連携することにより、不動産業界の抱える課題を解決するとともに、不動産業界・取引市場を発展させる」ことを目的に、2018年7月から異業種6社(LIFULL、NTTデータ経営研究所、NTTデータ先端技術、全保連、ゼンリン、ネットプロテクションズ)による共同で進められていたプロジェクトで、新たに、不動産取引に関わる手続きをワンストップで行うサービスなどを展開する株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)、マンション管理組合に対して住宅設備やセキュリティ機器の提供などをしている三菱UFJリース株式会社、法律弁護士法人 鈴木康之法律事務所などが加わり、正式に発足しています。

出典:LIFULL HOME’S PRESS

LIFULLによると、ADREの背景となっている不動産業界の課題は次のようなものです。

「物件探しをしているとき、良いと思った物件について問合せると、すでに入居が決まっており、別の物件を紹介されたという経験はないだろうか。あるいは、不動産ポータルサイトなどに同じ物件の情報がいくつも表示され、どの情報が正しいのかよくわからないということも少なくない。不動産業界においては、1つの不動産に関する情報が、仲介会社や管理会社、インフラ会社などにバラバラに保有されているため、こうした問題が起こりやすい状況にある。」(LIFULL HOME’S PRESSより)

こうした課題を解決するコンソーシアムが成立し、プラットフォームデータベースが各社に共有されることで、これまで各社の中で個別に管理され、取引コストのもととなっていた情報がスムーズに共有され、不動産賃貸の領域において、様々なコストダウンが進むと見られています。

そして、こうしたADREによる「情報の非対称性」の解決をサポートしている技術が、ブロックチェーンです。

業界横断プラットフォームの中核技術としてブロックチェーンを採用した理由として、同社は「分散管理型のブロックチェーンは公的プラットフォームの構築に向いている」としています。

これは、本記事でも説明した通り、「オープン」で「中央管理者がいない」基盤であるブロックチェーンが、プレイヤー数が多く、利害関係が一致しづらい不動産業界の課題解決に向いていることを示す好例だと言えるでしょう。

海外事例:Propy(国際不動産売買)

もう一つ、「不動産×ブロックチェーン」の代表格として注目を集めている海外事例に、オンライン国際不動産売買プラットフォーム「Propy(プロピー)」があります。

Propyは、2015年に設立した、アメリカのカリフォルニアに拠点を置くフィンテック系ベンチャー「Propy Inc.(プロピーインコーポレーテッド)」が開発した、ブロックチェーンのスマートコントラクト機能を利用したプロダクトです。

「国際的な不動産取引では、ブローカー・取引の安全性を保証するエスクローサービス・土地の登記サービス・送金業者など複数の仲介業者とやり取りをする必要があ」り、「複数の仲介業者を介することは、取引の長期化や詐欺が発生するリスクが増大することに加え、大量の書類を作成・署名をする事務作業のコストも発生している」ことを背景に、Propyでは、「スマートコントラクトを用いることで様々な仲介手数料をなくし、世界中の登記所と連携することにより、効率的な不動産の国際取引の実現を目指してい」ます(カギ括弧内は、BLOCKCHAIN-BUISINESSによる事例解説より引用)。

スマートコントラクトとは、「契約条件の締結や履行がプログラムによって自動で実行される仕組み」のことで、従来であればヒトが逐一実行せざるを得なかった不動産取引における付随業務を、ブロックチェーン基盤上で取引を行うことで、ヒトの手を介さなくてもよくなり、結果として取引コストが大幅に引き下げられることになります。

Propyも、すでに説明した不動産業界における情報の非対称性に伴う取引リスク(とその結果として必要になる取引コスト)を減らすために、ブロックチェーン技術を活用している好例だと言えるでしょう。

「不動産×ブロックチェーン」の最新動向:STO

上でみたようなブロックチェーンによる業界課題解決に併せて、不動産業界には、ブロックチェーン関連の注目すべき動向がもう一つあります。

それが、「STO」と呼ばれる、ブロックチェーン技術を利用した新しい資金調達方法です。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICO(イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開、ブロックチェーンを利用した資金調達方法の一つ)の問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が低いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

そして、実際に、2020年現在、不動産業界でのSTOへの注目度が高まっています

先ほど課題解決の一つとして説明した「小口証券の実現」でも、まさにこのSTOがうまく利用されています。

このように、STO自体は不動産に限った方法ではありませんが、業界との相性の良さから見て、STOは不動産業界における今後の一大潮流の一つになると予想されます。

ブロックチェーンのセキュリティは万能?51%問題等のリスクと対策を解説!

2025年までに世界のGDPの10%がブロックチェーン上に蓄積されると言われる昨今。対改竄性や分散性というブロックチェーンの特徴はセキュリティを担保しきれるのでしょうか?51%問題や秘密鍵流出など、実際のリスクと対策も併せて解説します!

ブロックチェーンの重要性とセキュリティ

世界のGDPの10%がブロックチェーン基盤上に蓄積される?

「ブロックチェーン=ビットコイン」と考えていたらあっという間に世の流れから取り残される。

そう聞いたら、どのように思うでしょうか?

一昔前(といっても2010年代ですが)までは、ブロックチェーンといえば、ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)を支える基幹技術の一つに過ぎませんでした。

それもそのはず、もともとブロックチェーンは、2008年に生まれたビットコインネットワークの副産物でしかなく、多くのビジネスパーソンからはFintechの一領域として認識されていました。

しかし、ブロックチェーンの技術に対する理解が徐々に深まるにつれ、金融のみならず、物流・不動産・医療など、多種多様な産業での応用が進み始めました。

そして、世界経済フォーラムによると、2025年までに世界のGDPの10%までがブロックチェーン上に蓄積されるようになるとの予測もなされるほどに、ブロックチェーンの存在感は大きくなりました

そのため、ブロックチェーンを投機的な金融の一手法に過ぎないと見るか、今後の世界の様相を大きく変える「ジェネラル・パーパス・テクノロジー」と見るかによって、私たちの行く末は大きく異なってくると言えるでしょう。

そもそもブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

ブロックチェーンはセキュリティの万能薬ではない?

ブロックチェーンの大きな特徴の一つに、「データの対改竄性が高い」ということが挙げられます。

これは、トランザクションと呼ばれる個々のデータの塊のそれぞれに鍵がかけられている(公開鍵暗号方式)ことに加え、トランザクションの塊であるブロックの生成時にもコンセンサスアルゴリズムと呼ばれる合意形成のルールが適用されることで、データを書き換えることのハードルが非常に高くなっていることを意味しています。

こうした背景から、「ブロックチェーン=セキュリティを高める技術」であると考えている方も少なくありません。

しかし、残念ながら、ブロックチェーンはセキュリティの万能薬というわけではありません

確かに、ブロックチェーンは上述したような仕組みそのものの対改竄性に加えて、時系列順に取引履歴を追えること(トレーサビリティ)やネットワーク参加者間でのデータ同時共有という思想(データの対喪失性)も相まって、物流業界における偽造品対策の効果的手法として活用されるなど、そのシステムのセキュリティレベルの高さに大きな期待がされています

実際に、ブロックチェーンは、理論的には非常に堅牢なセキュリティ技術として働くことが可能で、従来のデータベースからブロックチェーン基盤へと切り替えることは、セキュリティ対策の一環としても効果がもたらされうることでしょう。

ですが、残念なことに、ブロックチェーンは「強いAI」というわけではなく、あくまで人間が稼働させる一つのシステムです。

そのため、ブロックチェーンが社会実装される過程のヒューマンエラーによって(コーディングのバグ等)、あるいは組織的な恣意性によって(51%問題等)、理論が適切に効果を発揮しないことでセキュリティが脅かされることも十分にありえます

それでは、やはりブロックチェーンは社会の救世主とはなりえないのでしょうか?

この問題を考えるためには、概念を一括りにして議論するのではなく、ブロックチェーンの種類(パブリック/クローズド)を切り分けた上で、それぞれの限界点と対策についてみていくのがよいでしょう。

次に、これらについて、それぞれ説明していきます。

ブロックチェーンの種類とセキュリティ

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると、「パブリック型(Unpermissioned型)」と「クローズド型(Permissioned型)」の2つに分けることができます。

一般に、クローズド型ではなく「コンソーシアム型」「プライベート型」とさらに細分化させる議論が多いですが、ここでは「管理者の不在/在」という軸で分けることにより、後者をクローズド型として一括りに考えています。

ブロックチェーンの分類.jpg

ブロックチェーンの種類がセキュリティに与える影響

ブロックチェーンの種類を分ける上では、とりわけネットワークがセキュリティ要件に与える影響を考える上では、ノード(ブロックチェーンネットワークへの参加者)が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です(前者がパブリック型、後者がクローズド型のブロックチェーン)。

一般に、「ブロックチェーン」はノードが限定されていないパブリック型を指していることが多いですが、この種類のネットワークの場合、不特定のノードが参加することでより公共性の高いネットワークを形成する必要が生じ、結果として意思決定やセキュリティの要件が引き上げられます

他方、ノードが限定されていないクローズドなブロックチェーンネットワークでは、特定の企業が許可された管理者として振る舞うことで、パブリック型の課題である意思決定やセキュリティの問題をある程度クリアすることができます。

例えば、2016年に検証が開始された海運業界のプラットフォームである「TradeLens」(IBMとMaerskが共同構築したHyperLedgerによるコンソーシアムブロックチェーン)では、二社が管理者としてネットワークのバランスを保つ役割を果たしていると言えます。

こうした背景から、ノードの参加者が限定されているパブリック型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。

ブロックチェーンのセキュリティリスク①:51%問題

セキュリティリスクの内容

先ほどみた「パブリックチェーン」のうち、ビットコインの原理的なセキュリティリスクと言われているのが「51%問題」です。

51%問題とは、「ある特定のノード(ネットワークの参加者)が、ネットワーク内のマシンパワーの総量を超えるパワーでマイニングを行うと、そのノードの恣意性にネットワーク全体が左右される」という問題のことで、平たく言えば、「ネットワークの乗っ取り(牛耳り)」問題といったところでしょうか。

初心者の方には意味不明かと思うので、順をおって説明します。

まず、ブロックチェーン基盤には中央管理者が存在しないため、そのネットワーク内での意思決定、例えばある取引について複数の異なる情報が提出された時(AさんはBさんに10BTC渡したが、Bさんは5BTCしか受け取っていないと主張する、といったイメージ)にどの取引記録が正しいかを決めるためには、「全てのノードが合意する、あらかじめ決められた、何かしらのルール」に基づいて判断を下さなければなりません。

このルールのことを「コンセンサスアルゴリズム」といい、ブロックチェーン基盤ごとにそれぞれのコンセンサスアルゴリズムが定められています。

例えば、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)といったあたりが有名です。

さて、ビットコインでは、「マイニング(各ノードのマシンパワーを利用した計算)」を行わせることで合意形成を行う、「PoW(Proof of Work)」および「ナカモト・コンセンサス」というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。

ビットコインの仕組みでは、マイナーと呼ばれる複数のノード達がマイニングを行った結果ブロックが生成されていく(PoW)のですが、その積み重ねとして最もブロックの数が多くなったチェーンが正しい取引記録であるとみなす(ナカモト・コンセンサス)という合意形成のルールが敷かれているのです。

ここで、これらのルールを逆手にとると、次の①②が言えます。

  • ナカモト・コンセンサス=「最もブロック数が多いチェーンが正しい」 → ①ある取引記録を正当化するためには、他のチェーンよりもブロックを多くつくればよい
  • PoW=「ブロックをつくるためには計算を行うためのマシンパワーが必要」 → ②他のチェーンよりもブロックを多くつくるためには他の対抗勢力となるノードよりも多くのマシンパワーを用いれば良い

そして、①②から、さらに次のような定理が導かれます。

  • ネットワーク全体のマシンパワーの総量の過半数を手に入れれば、どんな取引記録も正当化できる

これが、ビットコインの原理的なセキュリティリスクである「51%問題」です。

51%問題は、ビットコインの原理であるコンセンサスアルゴリズムを逆手に取ったセキュリティハックなので、原理が変わらない限りはこのリスクをなくすことはできません。

セキュリティが脅かされた事例

51%問題による暗号資産(仮想通貨)へのセキュリティ攻撃として話題になったのが、「モナコイン」事件です。

2018年5月中旬に仮想通貨Monacoin(モナコイン)への攻撃、また同時期に別の仮想通貨であるVergeとBitcoin Goldへの攻撃も発生したという事案で、一般メディアでもニュースに取り上げられて大きな話題となりました。

仮想通貨Watchによると、この事案での攻撃は、次の3点に要約されます。

  1. Bitcoin Gold(BTG)への51%攻撃。5月16~19日にかけて発生。被害額は推定1800万ドル(約20億円)。
  2. Verge(XVG)のバグを突いたTime Warp攻撃。4月と、5月22日、5月29日に発生。被害額は推定270万ドル(2億9000万円)。
  3. モナコイン(Mona)へのセルフィッシュ・マイニング攻撃(Block withholding attack)。5月13~15日に発生。被害額は推定9万ドル(980万円)。

被害額こそ一番小さいものの、モナコインは上記3種の仮想通貨の中で日本の仮想通貨取引所が取り扱う唯一の通貨であることと、モナコインが受けた「セルフィッシュ・マイニング攻撃」と呼ばれる手口が、先ほど述べたコンセンサスアルゴリズムの穴を突いた51%問題の事例であったことなどから、この事例はモナコイン問題として知られています。

事例の詳細については専門性が高く、理解が難しいためここでは割愛しますが、いずれにせよ、51%問題が、実際の事件に結びつくようなセキュリティリスクであることは間違い無いでしょう。

(本件について詳しくお知りになりたい方は、仮想通貨Watchの記事によくまとまっているので、ご覧ください)。

セキュリティリスクの対策方針

51%問題の対策方針は、「コンセンサスアルゴリズムを変更すること」です。

先ほど説明したように、51%問題は原理的なセキュリティリスクであり、PoWおよびナカモト・コンセンサスが合意形成のルールである以上、完全な対策は不可能です。

もちろん、ネットワークの規模が大きくなればなるほど、ネットワーク総量の過半数をとるマシンパワーを用意することは難しくなっていくので、51%問題を利用した攻撃のハードルも上がってはいきます。

しかし、あくまで難易度が上がるだけの話であるため、リスクがなくなるわけではありません。

また、ビットコインと同じコンセンサスアルゴリズムを採用した新しいネットワークは、51%攻撃の高い危険性にさらされることになります。

したがって、51%問題のリスクをなくすためには、ルールそのものを変更する必要があるのです。

これは、ビットコイン以外のブロックチェーンネットワークにおいて実際に行われていることで、例えば、イーサリアムで採用されている「PoS(Proof of Stake)」は、51%攻撃のリスクを限りなく低くすることを目的に定められてルールと言われています。

PoSは、「ネイティブ通貨の保有量に比例して、新たにブロックを生成・承認する権利を得ることができるようになる仕組み」であるため、あるノードが51%攻撃を行うためには、ネットワーク全体の過半数のコインを獲得しなければならず、これは過半数のマシンパワーを一時的に利用することと比べて、はるかに難易度が上がります。

また、コンセンサスアルゴリズムだけではなく、ネットワーク参加者自体を許可制にすることも、51%問題に対する一つの対策方法です。

先述した「コンソーシアム型」と呼ばれるブロックチェーンネットワークでは、「PoA(Proof of Autority)」というコンセンサスアルゴリズムのもと、閉じられたネットワーク内で一部のノードに合意形成の権限を与えるという形をとっています。

ブロックチェーンのセキュリティリスク②:秘密鍵流出問題

セキュリティリスクの内容

ブロックチェーンのセキュリティリスクとしてもう一つ代表的なものが、「秘密鍵流出」の問題です。

これは、いわゆる「なりすまし」攻撃で、各ノードが保有するアカウントに付与された「秘密鍵」を盗まれることで起こります

ブロックチェーンの仕組みでは、ネットワーク基盤上で行われた取引記録が「トランザクション」と呼ばれる塊として大量にプールされており、そのプールから1MB(メガバイト)分のトランザクションを取り出して「ブロック」としてまとめています。

このトランザクションが取り出される際に「秘密鍵暗号方式」と呼ばれる方法でトランザクションへの「署名(秘密鍵で暗号化する)」が行われることで、トランザクション自体のセキュリティが担保されています。

通常、この秘密鍵は、各アカウントごとに一つだけ付与されるもので、この鍵を使うことでアカウントに紐づいた様々な権限を利用することができます。

そのため、この鍵自体が盗まれてしまうと、個人アカウント内の権限を第三者が悪用できてしまうことになります。

これが、秘密鍵流出問題です。

セキュリティが脅かされた事例

秘密鍵流出問題として、世間を大いに騒がせたのが「コインチェック」事件です。

仮想通貨取引所であるコインチェックが第三者による不正アクセスを受け、日本円で約580億円に相当する5億2300万NEMが流出してしまった事件で、仮想通貨に対する一般消費者の信用を大きく落とすきっかけになった事件としても記憶に新しいでしょう。

TechCrunchによると、事件の経緯は次の通りです。

  • 2時57分(以後、すべて1月26日):事象の発生(コインチェックのNEMアドレスから、5億2300万NEM(検知時のレートで約580億円)が送信される。
  • 11時25分:NEMの残高が異常に減っていることを検知
  • 11時58分:NEMの入出送金を一時停止
  • 12時7分:NEMの入金一時停止について告知
  • 12時38分:NEMの売買一時停止について告知
  • 12時52分:NEMの出金一時停止について告知
  • 16時33分:日本円を含むすべての通貨の出金を一時停止について告知
  • 17時23分:ビットコイン以外の仮想通貨の売買、出金を一時停止・告知
  • 18時50分:クレジットカード、ペイジー、コンビニ入金の一時停止について告知

コインチェック事件では、秘密鍵への対策が十分に施されていないウォレットで管理していたことが不正送金の原因になったのではないかと言われており、ブロックチェーンの仕組みや原理そのものではなく、運用上のヒューマンエラーに近い要因でのセキュリティリスクを顕在化させた事例としてみることができるでしょう。

セキュリティの対策方針

秘密鍵流出問題への対応策の一つとされているのが、「マルチシグ(マルチシグネチャーの略)」です。

トランザクションの署名に複数の秘密鍵を必要とする技術のことで、マルチシグを利用する際には、例えば企業の役員陣で鍵を一つずつ持ち合うなどの対応がとられます。

マルチシグは、秘密鍵流出問題へのリスクヘッジ方法であると同時に、 一つの秘密鍵で署名を行う通常のシングルシグに比べてセキュリティレベルも高くなることから、取引所やマルチシグウォレットなどで採用されています。

ただし、上述のコインチェック事件のように、個人レベルでマルチシグを利用していたとしても、取引所そのもののセキュリティが破られてしまった場合には被害を食い止めることはできません。

セキュリティへの攻撃は複数階層に対して行われうるものであることを理解して、単一の技術のみに頼るのではなく、本質的な対応をとるように心がけましょう。

IoT、ブロックチェーン、AI。ビッグデータを活用したDXとは?

IoT、ブロックチェーン、AI。一見、無関係にもみえるこれらの概念は、実は、「ビッグデータを活用したDX」という文脈で相互補完的な役割を果たしています。中でもブロックチェーンは、特に不可欠な存在です。どういうことか?初心者向けに解説します!

IoT、ブロックチェーン、AIとは、それぞれどのような概念か?

IoT

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)とは、「世の中のあらゆるモノをネットワークに接続することで、さまざまな付加価値を生み出すことを目的としたITインフラストラクチャ」のことです(JRIレビュー(北野2017))。

この定義から読み取れるIoTを理解する上で重要なポイントは次の3点です。

  1. モノをインターネットに繋げる
  2. 付加価値を生み出す
  3. IT基盤(インフラストラクチャ)である

一般に、IoTと言われて思いつくのはAmazon Echoなどに代表される、センサーで自動的に電気をつけたり音声認識でエアコンをつけたりといった、いわゆるスマート家電でしょう。

スマート家電では、(1)もともと独立したモジュールであった電気やエアコンといった端末をインターネットに接続し、(2)手動で起動する手間を省いたり相互に連動することで家の快適さを上げるという付加価値を生み出しています。

しかし、こうしたスマート家電などの典型的なIoT概念で見落としがちなのが、ポイント3です。

実は、「自動的に起動する」「連動する」といったことは、あくまで個人消費者向けの小さなメリットに過ぎません。

IoTは、そうした小さな範囲にとどまる概念ではなく、「AI(人工知能)、ビッグデータなどの技術とともに利活用することで、経済活動の効率性や生産性が大きく向上すると見込まれて」おり、「さらに、高齢・人口減少社会における経済、社会保障などの面で生じる課題を解決する手段としても注目を集め」るJRIレビュー(北野2017))、(3)社会の基盤そのものを変更するような概念なのです。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

AI(人工知能)

AI(Artificial Inteligence、人工知能)とは、「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術(松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科科 准教授)」のことで、学問的にはコンピュータサイエンスの一分野とされています。

AIは非常に概念の範囲が広く、映画『ターミネーター』シリーズのように完全に自律した人間を超越しうる存在としてのAI(「強いAI」)から、近年期待と注目を集めている「(ヒトによる操縦を必要としない)自動運転車」、果てはビジネスパーソンにおなじみのExceや電卓(「弱いAI」)まで、およそ人間の知能労働を代替する計算機(コンピュータ)とその背後にある情報処理モデル(アルゴリズム)が総じて「AI(または人工知能)」と呼ばれています。

AIの中でも、現時点で特に重要なのが「機械学習」と呼ばれる分野です。

機械学習とは、「ある仕事の能率を上げるために、コンピュータを用いてその仕事を構成するデータ(変数)を分析し、アルゴリズムをモデル化すること」で、代表的な手法にディープラーニングやランダムフォレストなどがあります。

特にディープラーニングは、これまで人間が分析しきれなかったアルゴリズムを精度高くモデル化できることから「AI(あるいは機械学習の)ブレイクスルー」と称されており、ディープラーニングを用いた強化学習モデルであるAlphaGo(アルファ碁)が、世界最強の囲碁棋士を打ち負かしたことは記憶に新しいでしょう。

現時点ではコンピュータの計算能力やデータ自体の精度、機械学習を適切に扱えるデータサイエンティストやビジネスパーソンの存在など、様々なボトルネックが存在していますが、例えば量子コンピュータの登場などによってこうした諸条件が満たされるようになると、AIが人間の知能で測り得ないレベルの知能を獲得するとされる、「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼ばれる新たなブレイクスルーポイントへと到達する日も近いと言われています。

IoT、ブロックチェーン、AIと、ビッグデータを活用したDXの関係

DX(デジタルトランスフォーメーション)って?

バラバラの文脈で語られることの多いIoT、ブロックチェーン、AIという3つの概念は、実は、「ビッグデータ活用を前提としたDX」というより大きな社会動向の要素として相互に関連づけることができます

ビッグデータとは、「構造化データか非構造化データかを問わず、ビジネスや研究の現場に溢れている大量のデータを意味する用語」のことです(SAS)。

また、DX(Digital Transformation、デジタルトランスフォーメーション)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指します(日本デジタルトランスフォーメーション推進協会)。

さて、一般に、ビジネス文脈におけるDXは、これまでITが使われていなかった領域(いわゆる「レガシー」産業)にITを導入すること、あるいはITによる改善を行える環境を整えることによる効率化とコスト削減を意味します。

したがって、一口にDXといっても目的やアプローチは非常に幅広く、例えば、大きくは産業全体のサプライチェーンを改革するというストーリーもあれば、小さくはエンジニアの就労環境改善やインターネット環境の整備など、個社レベルの小さな改善も含まれています。

この中でも特に前者、つまり産業や社会レベルの課題解決としてのDXで求められているのが、ビッグデータの活用です。

これまで活用されてこなかった構造化データ、あるいは構造化すらされてこなかった大量のデータを分析することで、産業や社会全体の仕組みを大きく変え、効率化し、私たちの生活をより豊かにできる可能性があるのです。

そして、まさにこの文脈において重要なのが、IoT、ブロックチェーン、AIという3つの概念です。

DXにおけるビッグデータ活用の流れ

IoT、ブロックチェーン、AIの3概念は、ビッグデータ活用の大きな流れに位置付けて関連させることができます。

ビッグデータ活用の大きな流れとは、次の通りです。

  1. データを集める
  2. データを保存・管理する
  3. データを分析する
  4. データを活用する(社会実装する)

まず、ビッグデータを活用するには、そもそもデータ自体が十分に集まっている必要があります。

一見、簡単なことのように思えますが、実は、世の中には機械による処理が可能な形のデータ(構造化データ)とそうではない形のデータ(非構造化データ)、そしてデータとしてすら認識されていない情報があり、構造化されたデータは全情報のごく一部でしかありません

したがって、ビッグデータを活用してDXを実現するためには、まずデータを構造化する、あるいは自然の情報をデータ化するといった、(1)データ収集の作業が重要になります。

次に、1で集めたデータを適切に保存・管理していく必要があります。

実は、これもデータ分析を行なった経験がないと想像しにくいことですが、データ分析において、自分の思ったような形で正しくデータが揃っているということはごく稀です。

実際には、データの一部が欠損していたり、データそのものの信用が怪しかったり、異なるデータベース同士を接合する必要があったりと、いわゆる「データの前処理」という地味で根気の要る仕事が大半を占めています。

これは、そもそも現時点では、多くの産業や企業においてデータを適切に管理するための基盤が整っていないことに起因しています。

したがって、DXに向けて大量のデータを正しく活用していくためには、(2)データの保存・管理の方法が大切なのです。

続いて、あるデータベース上に保存されたデータを分析していきます。

当然のことながら、データは集めて保存しているだけでは価値がありません

付加価値を出していくためには、情報の羅列であるデータベースから、何かしらの目的を持って分析を行い、実際の業務等に反映して効率化を実現していく必要があります。

ですが、現実には、ビッグデータが重要であるということだけを鵜呑みにして「とにかくデータを集めろ」で終わっている企業も少なくありません

これは、先ほどもみたように、データを適切に取り扱える人材が不足していることにも原因がありますが、それ以上に、「データは分析して実際に役立ててナンボ」という当たり前の考え方が欠落しているからだと言わざるを得ないでしょう。

そのため、ビッグデータ活用によるDXでは、この(3)分析のフェーズを意識して全体を設計していくことが重要だと言えます。

最後に、分析の結果であるモデルに当てはめて、現実世界の施策として社会実装していきましょう。

一般に「ビッグデータ」「DX」というとこの社会実装の部分ばかりがケースとして目立ってしまいますが、実は、1〜3の流れを適切に行うことができていれば、半分はクリアしてしまったようなものです。

もちろん、実際には、理論を現実へと実装していく過程が最も困難な場合がほとんどではありますが、そうした困難の原因として、目的から正しく逆算せずに「場当たり的に」データ活用を行おうとした結果、当事者が納得するような施策にまで十分落とし込めなかったということが少なくありません。

そのため、(4)データの活用、社会実装を適切に遂行する上でも、1〜3の収集→管理→分析が大切だと言えるでしょう。

そして、これら1〜3の実現方法として大切な役割を担うのが、それぞれIoT、ブロックチェーン、AIなのです。

IoT、ブロックチェーン、AIは、DXにおける相互補完的技術とみなせる

先ほど見たビッグデータ活用によるDXの流れと、IoT、ブロックチェーン、AIの3概念は、それぞれ次のように対応させることができます。

(※下記の対応は、必ずしも現時点でそうなっているとは限らず、今後の未来における一つの形を提唱しています)

  1. データを集める → IoTによるハードウェア端末でのデータ収集
  2. データを保存・管理する → ブロックチェーンによるデータベースの統合・管理
  3. データを分析する → AI(機械学習)による大量情報の処理
  4. データを活用する(社会実装する)

まず、IoTでは、身近にあるあらゆるモノをインターネットに繋ぎます

これにより、私たちが触れる様々な情報端末を通して、私たちの日々の行動パターンをデータとして蓄積することが可能になります。

例えば、先ほど例に挙げたスマート家電でも、Amazon Echoで鈴木さんがよく再生する音楽であったり、鈴木さん本人の声の波形、声をかけるタイミング、快適と感じやすいエアコンの温度などなど、多種多様な生活データが取得されています。

こうした環境が家の中に限らず、通勤経路、電車やバス、ビル、カフェや居酒屋、学校、病院など、生活の各拠点でモノがインターネットに接続されることで、これまで活用されてこなかった大量のデータを収集することが可能になるのです。

次に、こうしてIoT端末から収集されたデータをどのように管理するか、という問題が起こります。

ここで重要な役割を果たしうるのが、ブロックチェーンの技術です。

現在の社会では数多ある企業がそれぞれの端末、フォーマット、経路でデータを取得し、さらにそれぞれ異なるデータベースでデータを管理しています。

また、各データベースでシステムのセキュリティ要件が十分に担保されているとは限りません。

これらの事情から、ビッグデータを活用する上では、次の章で後述するような「データの統合」「データの真正性」の課題にぶつかります

ブロックチェーンは、従来のデータベースで解消することに限界があったこれらの課題に対して、より実現性の高いソリューションを提供することのできる技術だと言えます。

実際に、DXという大きな文脈に限らず、個社がビジネスでデータ活用を行う上でも、ブロックチェーンの存在感は日増しに大きくなってきていると言えるでしょう(世界経済フォーラムによると2025年までに世界のGDPの10%がブロックチェーン基盤上に乗るとの試算がなされています)。

最後に、ブロックチェーン基盤上で管理・統合されたデータを処理するのがAIの役割です。

ビッグデータ、とりわけIoTで集められたデータ群は、これまでデータ分析の領域が取り扱ってきたものよりも変数が多く、モデルも複雑化します。

こうしたデータを取り扱う上では、ディープラーニングを始めとした機械学習モデルが有効です。

例えば、メーカーの大規模工場におけるDXのプロセスでは、各機械で計測されたセンサーデータをもとに、勾配ブースティングなどの機械学習モデルによる「異常検知」(機械の誤作動による不良品生産等のミスが起こる確率と条件をモデル化)を行うことで、工場のオートメーションを推進したり、無駄なコストを省くといった改善が試みられる、といった具合です。

こうした分析は工場ライン一つ一つを具に見ていくだけではなく、全ラインを統合した形での全体分析を行う必要があり、まさに膨大な量のビッグデータを処理しなければなりません。

AI(機械学習)は、こうしたデータ分析を実現する有効な手段と言えます。

このように、IoT、ブロックチェーン、AIは、データの収集→管理→分析という一連の流れでそれぞれに長所を発揮しつつ、相互補完的な役割を果たす関連技術であると見ることができるのです。

DXでブロックチェーンが果たす重要な役割

ブロックチェーンがIoTとAIを生かしている?

上にみたデータの収集→管理→分析という一連の流れの中で、地味ながらも非常に重要な役割を果たしているのがブロックチェーンによるデータの管理です。

先にみたように、ビッグデータを活用してDXを実現するということは、ある一企業や企業内の一部門だけで完結する類のプロジェクトではなく、産官学、サプライチェーンにおける川上と川下、同業他社、生産者と消費者など、異なる立場(そして時には敵対する立場)にいる複数のプレイヤー間での協業が不可欠になってきます。

また、取り扱うデータの総量が大きくなるにつれ、関係する人の数やプロジェクトの期間も増え、オペレーションエラー等のリスクが高まっていきます。

しかし、その一方で、データ分析は非常に繊細な側面をもち、インプットするデータが少し変わるだけでアウトプットとなるモデルや仮説の精度が大きく左右されることも少なくありません

こうした前提条件のもとでは、複雑になりがちな管理をできる限りシンプルで、かつ、セキュリティ等のリスク要件を満たすような仕組みで解決できるような技術を採用する必要があります。

ブロックチェーンは、こうした従来のデータベースでは解消が難しい複数の課題を解決しうるという点で、まさにDXにビッグデータ×DXに打ってつけの技術なのです。

ブロックチェーンの役割①:セキュアなデータ統合の仕組みを提供する

ビッグデータ利用にあたっての課題の一つに「データ統合」の問題があります。

上でも述べたように、価値あるデータは単体プレイヤーに閉じたものではなく、複数の異なるステークホルダー(利害関係者)がもつデータを統合した先にあります。

ここで問題となるのが、異なるデータベース間でのデータ共有における安全性の問題です。

データベースが異なるということは、データを保存するフォーマットや構造化の方法、単位等、あらゆる要素が異なってきます。

そうした諸データを統合することはそれ自体難度が高いばかりでなく、統合の際にデータを欠損する等のオペレーションエラーを誘発する原因にもなりえます。

さらに、仮にシステム上は統合が可能であったとしても、例えば競合関係にある複数社による統合が試みられるとした場合、誰が中心となって、どこまでのデータを、どういった権限のもとに共有するかという論点が生じます。

こうした場合、各社が「もしかすると他社のいいようにやられて大切なデータまで取られるかもしれない・・」といった疑心暗鬼の状態に陥り、プロジェクト自体が頓挫してしまうケースも少なくありません。

これに対してブロックチェーンでは、そもそも中央管理者を必要としない設計思想である上に、その分散管理システムを高いセキュリティレベルで実現できます。

また、そもそもが一つのデータベースを共有する形になるため、異なるデータベース間のデータ共有問題もクリアしやすいと言えます。

実例として、国内で注目すべき取り組みが、トヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ」)、トヨタファイナンシャルサービス株式会社による「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」の試みです。

同ラボは、2019年4月、トヨタ等により「グループ横断のバーチャル組織」として立ち上げられ、「実証実験を通じたブロックチェーン技術の有用性検証やグループ各社とのグローバルな連携等、当該技術の活用に向けた取り組みを進めて」います(カギ括弧内は、TOYOTA「「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」、ブロックチェーン技術の活用検討と外部連携を加速化」より引用/太字は筆者)。

①「ブロックチェーン技術の活用イメージ」/②「活動の拡がりイメージ」(共にTOYOTAより)

同ラボ立ち上げの背景として、トヨタは、「モノづくりを中心に、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供する『モビリティカンパニー』を目指しており」、「その実現に向け、グループ内外の『仲間づくり』を進める上では、商品やサービスを利用するお客様、それらを提供する様々な事業者が、『安全・安心』のもとで、より『オープン』につながることが重要」であるとしています。

そして、ブロックチェーンが「グループ内外の仲間づくりを下支えし、その結果、お客様にとってより利便性が高くカスタマイズされたサービスの提供や事業の効率化・高度化、更に既存の概念にとらわれない新たな価値創造をもたらす可能性がある」ために、ブロックチェーンによるグループ横断のヴァーチャル組織をつくったと発表しています。

(カギ括弧内は、TOYOTA「「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」、ブロックチェーン技術の活用検討と外部連携を加速化」より引用/太字は筆者)

トヨタによるブロックチェーンを利用した横断組織の組成という事例は、まさに、利害関係が複雑に絡み合う異なるステークホルダー間でデータ統合を行なっていくことの可能性を示していると言えるでしょう。

このように、ブロックチェーンは、「セキュアなデータ統合の仕組みを提供する」という重要な役割を果たしています。

ブロックチェーンの役割②:データの真正性を担保する

ビッグデータ利用にあたっての別の課題として、「データの真正性」の問題があげられます。

データの真正性とは、「取り扱うデータが欠損や改竄等の欠陥のない正しいものかどうか」を表す概念です。

先述したように、データ分析の精度を大きく左右するのは、実は分析そのもの以上に、データの真正性であると言われています。

なぜなら、AI(機械学習)では、データをインプットとして関数を組み、精度の高いモデルを生み出すことを目的としているため、インプットであるデータが間違っていたら、当然、結果も間違ったものができてしまうからです。

そのため、データ分析の世界においては、データ自体の真正性をなんとか担保する試みとして「データの前処理」という工程が最も重要視されています。

しかし、取り扱うデータの総量や関わる人間の数、プロジェクトの予算等が大きくなればなるほど、何かしらのヒューマンエラーであったり、悪意のある第三者によるデータ改竄の攻撃を受けやすくなります。

データの前処理では、ある程度の欠損等には対応しうるものの、データの真正性自体を正確に担保することはできません。

したがって、収集したデータを管理する時点で、改竄等のリスクを減らす仕組みを導入する必要が出てくるのです。

こうした課題に対してブロックチェーンでは、ハッシュチェーン(前後のブロックをハッシュ値と呼ばれる暗号数で結びつける考え方)にうよるデータベース生成、個々のデータ履歴自体へのセキュリティ(秘密鍵暗号方式)、コンセンサスアルゴリズムと呼ばれる合意形成のルール、といった複数の仕組みによって、高いレベルでの対改竄性を実現しています。

ブロックチェーンによるデータの真正性担保の実例としてあげられるのが、「メディカルチェーン」です。

これは、かれこれ20年ほど叫ばれ続けていた医療のデジタル化、特に電子カルテを始めとする院内データの共通化の問題を、ブロックチェーンで巧みに解決しようという試みです。

医療データは、個人情報の中でも特に秘匿性が高く、セキュリティ要件が最も高く求められます。

そして、医療機関ごとのデータ保存形式も異なるため、それらを共有していくハードルは非常に高いものになります。

メディカルチェーンでは、この問題に対して、各医療機関のデータを一つのブロックチェーン基盤上に乗せることを目指しています。

また、ビジネスモデルとしては、トークンエコノミーを採用し、トークンからの収益と医療機関からの収益を主治医や患者に還元することで、この仕組みがうまく回るように設計されています。

この事例は、ブロックチェーンが、医療情報という非常にセンシティブな情報を取り扱う基盤として信用・期待されていることを示す好例でしょう。

このように、ブロックチェーンは、「データの真正性を担保する」という重要な役割を果たしています。

【業界動向】物流×ブロックチェーンは何を実現する?最新の活用事例も!

ブロックチェーンは、国内67兆円の潜在マーケットをもつ有望技術です。特に物流業界と相性がよく、①台帳共有による合理化、②偽造品排除の二側面から注目を集めています。IBM等の最新事例と共に物流のデジタルトランスフォーメーション動向に迫ります。

今、「物流×ブロックチェーン」が熱い。

巨大なブロックチェーンビジネスの市場

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

出所:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

経済産業省が平成27年度に発表したブロックチェーンに関する調査資料によると、ブロックチェーンは将来的に、国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています。

具体的には、大きく次の5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

  1. 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

「ブロックチェーン×物流」に集まる注目

ブロックチェーン市場の中でも特に注目を集めており、2020年現在、世界的にビジネスマーケットの拡大が進んでいるのが、物流業界のデジタルトランスフォーメーションです。

物流業界は、サプライチェーンの中流に位置している業界であるため、ビジネスが自社だけで完結しない場合が多く、「川上」から「川下」まで非常に多くの関係者が存在します。

また、伝票の発行作業を始め、商品番号の照合、輸出入であれば通関手続き、荷役作業等々、一つの取引を完了させるために、数多くの付随業務が発生します。

そのため、それぞれの関係者間でやり取りを行うたびに、似たような付随業務を重複して行うことが増え、その分のコストが積み重なってしまいます。

さらに、こうした「取引コスト」がかさむ一方で、物流業界は、セキュリティやトレーサビリティ(物流における商品の追跡可能性)などその他数多くの問題もはらんでいます。

こうした課題感を背景に、近年、ブロックチェーンによるサプライチェーンの再定義が行われ始めています。

例えば、グローバルEC企業であるAmazonは、2020年5月26日に、3年前に出願した「分散型台帳認証」の特許申請が承認されたことで、グローバルサプライチェーンの課題に対してブロックチェーンを用いたソリューションを提供し始める構えを見せています。

具体的には、ハイパーレジャー(Hyperledger)などの分散型台帳技術(DLT)によってデータの改ざんを防ぎ、単一障害点(停止するとシステム全体が停止する箇所)を取り除くなど、中央集権型組織の管理上の問題を回避しようという方針です。

また、IBMは、コンテナ船世界最大手のA.P. Moller-Maersk(A.P.モラー・マースク、以下マースク)との共同でブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォーム「TradeLens」を構築した他、世界最古の医薬品・化学品メーカーであるMerck KGaA(メルク・カーゲーアーアー、以下メルク)と共に偽造品対策プラットフォームを立ち上げています。

さらに、アジアに目を転じてみても、中国EC市場シェア2位のJD.com(以下JD)がブロックチェーンに関連する200件超もの特許を申請したという報道がなされるなど、世界最大の人口を抱える中国においても、物流のシステム全体をブロックチェーンによって強化していく流れがみられています。

まさに、「ブロックチェーン×物流」に大きな注目が集まっていると言えるでしょう。

なぜ、「物流×ブロックチェーンが熱い」のか?

そもそも、ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

なお、ブロックチェーンの概念自体についてより詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

👉「【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

👉「【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!

ブロックチェーンと物流課題の相性の良さ

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」という特徴を踏まえた上で、なぜ、「ブロックチェーン×物流業界がアツい」のでしょうか?

これは、結論からいえば、「物流業界のニーズとブロックチェーン開発会社の利害が見事に一致した」とみるのが妥当でしょう。

物流業界のニーズ

まず、物流業界側のニーズとして、「もともと物流業界は取引をデジタル化しようにも、プレーヤーが多すぎて中央のデータベースを誰が管理するかで意思統一できなかった」という課題がありました。

物流業界での取引をデジタル化するということは、サプライチェーンの上流と下流における業務プロセスを垂直的に統合していく、あるいは、競合関係にある同流の他社とデータを共有していく必要があります。

この「データの持ち寄りと共有」を実現するために、従来のデータベースの考え方では、どうしても中央管理者を設けなければなりません。

しかし、利害関係の異なる複数組織間で中央管理者を設定することは非常に難しく、この意思決定が大きな壁として立ちはだかっていたのです。

これに対して、ブロックチェーンは先ほどみたように、中立的でオープンな「非中央集権性」をもった技術です。

データ共有をセキュアに、また利害関係の衝突なく行うために、ブロックチェーンはまさに「渡りに船」な技術だと言えます。

こうした理由から、物流業界のニーズに対して、ブロックチェーンはマッチしています。

ただし、よく勘違いされる点として、「ブロックチェーンが従来のデータベースで解決できなかった技術的問題を突破した」と思われることも少なくありませんが、必ずしもそういうわけではありません。

もちろん、ブロックチェーンには従来のデータベースにはない技術的特徴がありますが、ビジネス活用を行う上では、「ブロックチェーンじゃなければいけない」というケースは存外少ないものです。

むしろ、どちらかといえば、「ブロックチェーンじゃなきゃいけないわけではないけれども、色々考えると、ブロックチェーンを利用した方が結果としてメリットが大きい」ためにブロックチェーンを利用するケースが増えてきているので、自社のビジネス活用を考える上ではその点に注意が必要でしょう。

ブロックチェーン開発会社のシーズ

他方、シーズ側、つまりブロックチェーンを推進したいシステム開発会社側の思惑も、物流業界へのブロックチェーン導入を後押しする形になりました。

もともと、ブロックチェーンはビットコインを支える基幹技術として誕生した経緯もあってか、「ブロックチェーン=ビットコインなどの暗号資産技術」「ブロックチェーン=Fintech」のように考えられがちです。

しかし、ブロックチェーンの技術的可能性は金融領域にとどまるものではなく、開発会社は、より自分たちのビジネスを拡大していくために、暗号資産(仮想通貨)以外の適用領域を探していました。

開発会社がシーズとして求めていた領域は、次のような、ブロックチェーンの特性をうまく活かせる条件をもった領域でした。

  • データベース共有によるコスト削減メリット →「プレーヤーが多すぎて非効率」な業界
  • 非中央集権性 → 現時点で中央管理者が不在な方が実現しやすい
    →「GAFAも中国もいない」な業界
  • 優れたトレーサビリティ(データの追跡可能性) →「嘘が多い」業界

こうした諸条件をもとに開発機会を各社が探していったところ、例えば不動産や医療など複数の業界が該当することになります。

そして、その一つとして、物流、サプライチェーンといった領域がフォーカスされれることになりました。

このように、「物流×ブロックチェーン」は、①非中央集権性というブロックチェーンの思想に物流業界のニーズがマッチしていたこと、②開発会社の事業投資機会として好ましいマーケット特性を物流業界が有していたこと、という双方向のニーズ・シーズ合致が見事に結果を産んだ好例と言えるでしょう。

物流×ブロックチェーンで実現しうる2つの効果と活用事例

「物流×ブロックチェーン」では、大きく次の2つの効果を期待することができます。

  • 効果①:台帳共有による合理化
  • 効果②:偽造品排除

実際の活用事例をみながら、順に、説明していきましょう。

物流×ブロックチェーンの実現効果①:台帳共有による合理化

「物流×ブロックチェーン」が実現する効果の一つ目は、「台帳共有による合理化」です。

通常、物流業界では、関係各社が独自のルール・フォーマットで文書(データ)を作成し、それぞれの台帳(データベース)で管理を行なっています。

また、それらのデータが紙ベースの業務で処理されることも少なくありません。

これらの状況から、関係各社同士での連携業務においては、絶えずオペレーションエラーのリスクを抱えながら、ヒトによる非効率な突合作業が繰り返されることで、必要以上の膨大なコストがかかってしまっています。

これに対して、取引をデジタル化し、ブロックチェーンを利用してデータベースを共有することで、各社の連携業務を合理化し、大幅なコスト削減をはかることができます。

出典:『ブロックチェーンは「国境」を打ち破る IBMが乗り出す「信頼の基盤作り」とは』(IT media NEWS)

例えば、ある貨物をA社からB社へと引き渡す際に、現状では、①A社でまずその貨物の伝票番号を確認し、B社へと引き渡した後にも、②B社内で同じ貨物の伝票番号確認を行うことで、1つの貨物に関する1回の移動について合計2回の作業が発生してしまいます(※わかりやすさのために話を簡便化しています)。

なぜなら、A社とB社では同じ貨物に対して異なるフォーマットでの管理を行なっており、それぞれのやり方で、それぞれのデータベースに情報を入れていく必要があるからです。

ここで、もし、A社とB社がデータベースを共有し、同じフォーマットで情報管理を行なっていたとしたらどうでしょうか?

その場合、A社とB社がそれぞれに確認作業を行う必要はなく、それまで2回行なっていた作業を1回に減らすことが可能になります。

こうした作業量削減のメリットの大きさは、日々、膨大な作業量に追われている物流業界の方であれば身にしみて理解できることでしょう。

このような「台帳共有による合理化」を国際貿易の舞台で大々的に実現させようとしているのが、本記事冒頭でも紹介した「TradeLens」です。

TradeLensは、2016年9月から、IBMとコンテナ船世界最大手のマースクとの共同で検証を開始したブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォームで、荷主・ターミナル・運送業者・船社・海上保険・通関業者など、海上物流に関係するあらゆる会社間でのデータベース共有を実現し、業界全体の非効率を解消しようという一大プロジェクトです。

IBM社の発表資料によると、国際貿易は、次のような業界課題を抱えています(下記、同資料より本文の一部を抜粋)。

  • データは組織のサイロに閉じ込められている
    • 情報はサプライ・チェーン内の数十のサービス・プロバイダーによって紙やさまざまなデジタル・フォーマットで保持されていて、複雑で、わずらわしい、経費のかさむ一対一のメッセージングを必要としています。
    • 結果として組織の境界を越えると情報が矛盾し、船荷がなかなかはっきりわ からず、さらには場所によっては見えないので、効率的な流れが妨げられています。
  • 手作業、時間のかかる、紙ベースの処理
    • 最新データの収集、処理と非効率な貿易ドキュメントの交換のために、手作業で確認したり、頻繁にフォローアップが必要だったりして、ミスや遅れが生じたり、コンプライアンス・コストがかさむといった結果になります。
    • 情報が足りないために、ドキュメントは常に遅れます。
  • 通関手続きに時間を要し、不正も発生
    • 税関当局によるリスク評価は十分な信頼できる情報が欠けているために、検査率が高くなり、詐欺や偽􏰀に対する防止手段が追加されて、通関手続きが遅れます。
  • 高コストと低レベルな顧客サービス
    • これらの難問が下流に大きな影響を与えます。
    • 効果的な予測、計画やサプライ・チェーンの混乱に対するリアルタイムの対応、サプライ・チェーン全体 での信頼できる情報の共有などができないので、過剰な安全在庫、高い管理コスト、運用上の難問、最終的には貧弱な顧客サービスにつながります。

こういった課題に対して、TradeLensでは、「グローバル・サプライ・チェーンのデジタル化」を掲げ、オープンソースの権限型ブロックチェーンであるHyperledger Fabricを元にしたIBM Blockchain Platformを利用することで、関係各社すべてでの台帳共有を実現しようとしています。

物流×ブロックチェーンの実現効果②:偽造品排除

「物流×ブロックチェーン」が実現する効果の二つ目は、「偽造品排除」です。

偽造品は物流業界の天敵とも呼べる存在で、経済協力開発機構(OECD)などによると、2016年に世界で取引された偽造品と違法コピー品は5090億ドル(約53兆円)にのぼるとも言われています。

近年、この偽造品問題をブロックチェーンを利用して解決しようという動向が、国内外に大きく広がっています。

そもそも、偽造品がここまで大きな問題でありながらもこれまで解決されてこなかった理由は、既存の物流システムが「トレーサビリティ(追跡可能性)」を高め切ることができなかったからと考えられます。

トレーサビリティとは、ある商品が生産されてから消費者の手元に届くまでにどのような経路を辿ってきたのかを正確に追跡できる程度、つまりサプライチェーンの透明性を表す概念です。

既存の物流システムでは、生産者から一次流通業者、一次卸売業者、二次流通業者・・・と、サプライチェーン上に数多くの関係者が存在しています。

さらに、それらの企業は、各社で異なる商品管理体制を敷いており、他社内で商品がどのように取り扱われているのかをすべて把握できるプレイヤーは存在しません。

したがって、ある商品が偽造品であったり、不良品であったりした場合も、それがどの時点での問題であったかを即座に特定することは難しく、問題の原因を排除できないまま次の問題を生じたり、適切な対応をしている企業が二次被害を被ったりしてしまいます。

この課題に対して、ブロックチェーンはその仕組み上、過去の全取引データを時系列順に格納・検索することができ、加えてデータの対改竄性が非常に高いため、悪徳業者による不正を防ぐことができます。

その特徴を「偽造品排除」の文脈でうまくビジネス利用しようとしているのが、日通(日本通運)です。

2020年3月9日の日本経済新聞の記事によると、「日本通運はアクセンチュアやインテル日本法人と組み、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用した輸送網の整備に乗り出」し、「まず医薬品を対象に2021年の構築を目指しており、倉庫の整備などを含め最大1千億円を投資する」ことで、「偽造医薬品の混入を防ぐための品質管理に生かし、将来は消費財全般に応用する」ことを発表しています(「」内は同記事からの引用)。

出典:「日通、ブロックチェーンで偽造品排除 物流に1000億円」( 2020/3/9 1:30日本経済新聞 電子版)

上図のように、ブロックチェーンを利用した偽装品排除の取り組みでは、メーカーから小売に至るまで、川上から川下のデータを同一クラウドデータベース上にすべて紐づけていくことで、ある商品がいつ、どこで、誰によって、どんな状態で管理されているかを可視化することができるようになります。

これにより、商品のトレーサビリティが高まり、産地やハラールの認証、違法コピーなど様々な偽造品問題を解消できるのではないか、と期待されています。

ブロックチェーンのビジネス活用は非金融がアツい!事業化3つの視点とは?

国内67兆円の市場に影響を与えるブロックチェーンマーケット。ビジネス活用は、金融/非金融/ハイブリッドの3領域のうち、2020年は、特に、非金融領域が盛り上がっています。事業化で重要な3つの視点とは?最新事例と共に解説します!

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年、世間を騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)

(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

なお、ブロックチェーンの技術について詳しくお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。

ブロックチェーンは技術の組み合わせ?〜P2P・Hash・公開鍵暗号〜

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。

ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。

後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。

その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

ブロックチェーンのメリットデメリット.jpg

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンビジネス市場の現状(2020年6月現在)

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、金融領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

出所:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

経済産業省が平成27年度に発表したブロックチェーンに関する調査資料によると、ブロックチェーンは将来的に、国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています。

具体的には、大きく次の5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

  1. 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

1つ目は、「トークン」といった言葉に馴染みがあるかと思いますが、狭義でいえば、いわゆる「仮装通貨」の領域です。

これは、すでに世界的にも幅広くビジネス活用が実現されており、今後はさらに、地方自治体等の非営利セクターで活用されていくことが期待されます。

2つ目は、例えば「ハンコ」の代替など、権利の証明をブロックチェーンで行ってしまおうという試みで、産業レベルで言えば、ProppyやLIFULLなど、不動産領域での利活用がすでに進み始めています。

3つ目は、近年ビジネスで注目を集めている経済変革の潮流である「シェアリングエコノミー」の文脈におけるブロックチェーンの応用です。

インターネットの登場と技術進化によって、例えばカーシェアリングや民泊など、個人資産を共有することによる社会全体の価値増加が可能になってきました。

ブロックチェーンには、この流れをさらに加速するための課題である「権利移転の証明」「権利主体の評価」といった問題を解決し、「セキュアな所有権移転」を実現できる可能性があります。

4つ目は、製造業〜物流業〜卸売業〜小売業にいたる、サプライチェーン全体の効率化を進めようという考え方です。

特に、いわゆる「川上」である製造・物流業界では、IBMを中心に世界的な業界変革の動向がみられており、世界最大の海運コングロマリットであるデンマークのMAERSK(マースク)や世界最古の医薬品・化学品企業であるドイツのMerck(メルク)といった超大物企業が、ブロックチェーンを利用した大規模プラットフォームを構築しています。

5つ目は、「スマートコントラクト」と呼ばれる、取引プロセス全自動化による業務効率化の話です。

スマートコントラクトは、取引に必要なプロセスをブロックチェーン基盤上で行うことで、取引主体者が作業を行わなくとも自動的に取引が履行されるような仕組みのことを指します。

これにより、これまで一つの取引を成立させるためにかかっていた業務コストを大幅に削減することが可能になります。

このように、ブロックチェーンの技術的可能性が明らかにされるにつれ、金融だけに限らない、様々な領域でのビジネス活用が進むようになってきています。

しかし、国内市場の現状では、ブロックチェーンはまだまだその真価を発揮しているとは言い難く、企業の国際競争において、日本企業が取り残されてしまうリスクも大いにあります。

これは、67兆円という市場規模予測からもわかる通り、ブロックチェーンの影響範囲が非常に広く、技術に馴染みのない方には「結局どのようなビジネス活用が可能なのか?」が理解しにくいことが普及の課題となっているためです。

そこで、本記事では、ブロックチェーンのビジネス活用を理解するために、①金融/非金融/ハイブリッドの3領域に大きく分けた上で、②特に応用範囲が広く市場規模の大きな「非金融」を重点的に、事業化のコツとなる視点や実際の事例を紹介してまいります。

ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの事業領域

ブロックチェーンビジネスの事業領域は金融/非金融/ハイブリッドの3つに区分できる

 

ブロックチェーンビジネスは、基本的に、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に大別されます。

ここでいう「金融領域」とは、平たく言えば「Fintech」と言われる領域のことで、より正確には「暗号資産(=仮想通貨)を活用した領域」と考えてください。

「暗号資産(仮想通貨)」とは、例えばビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、インターネット上でやりとりできる財産的価値のことで、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。

(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる

(2)電子的に記録され、移転できる

(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

暗号資産は、かつては「仮想通貨」と呼ばれており、いまだにその呼称の方が馴染み深い方も多いでしょうが、2019年3月15日に暗号資産に関する法改正が閣議決定され、呼称の変更が行われました。

こうした暗号資産を用いたビジネスが、ブロックチェーンビジネス第一の領域です。

これに対して、暗号資産ではなく、データの対改竄性やP2Pネットワーク、スマートコントラクトなど、ブロックチェーンの技術そのものを応用した産業・業務変革も盛んに行われています。

こうした「非金融」なビジネスが、ブロックチェーンビジネス第二の領域です。

基本的には、これら2つの領域に分けられますが、少しややこしい問題として、「非金融ながら暗号資産を活用する」ハイブリッドな領域も存在しています。

例えば、「トークンエコノミー」と呼ばれるビジネスモデルでは、ネットワーク独自に発行された暗号資産、つまりトークンをビジネス上の通貨として利用していますが、その目的は、暗号資産の運用益そのものではなく、あくまでトークンを活用した経済圏の構築と経済圏内の取引の活性化にあります。

このように、ブロックチェーン×金融の結晶である暗号資産を用いながら、非金融領域の課題解決を目指すような「金融×非金融」のハイブリッドなビジネスが、ブロックチェーンビジネス第三の領域です。

次に、これら3つの領域について、それぞれのビジネス活用の方向性をみていきましょう。

ブロックチェーンの金融領域におけるビジネス活用

金融領域のブロックチェーンビジネスって、ビットコイン?それともICO?

ブロックチェーンビジネス第一の領域は、「金融領域」です。

先ほども説明した通り、金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)の利活用を目的としたビジネス領域と考えてください。

「Fintech」という用語に馴染みのある方も多いかと思いますが、必ずしも「ブロックチェーンの金融領域=Fintech」というわけではないため、注意が必要です(後に説明する「ハイブリッド領域」のビジネスを指して”Fintech”と呼ばれることもあります)。

この領域におけるビジネス活用として、まずはじめに思い浮かぶのは、暗号資産取引でしょう。

暗号資産取引は、ブロックチェーンの生みの親であるサトシ・ナカモトが提唱した「ビットコイン」を代表格に、イーサリアムやリップルなどの暗号通貨、つまりブロックチェーン技術を応用した法定通貨以外の新通貨の売買等を通して、キャピタルゲインを獲得することをインセンティブとしたビジネスです。

例えば、ビットコインでは、PoWというコンセンサスアルゴリズム(合意形成のルール)に基づいたマイニングと呼ばれるコンピュータの演算作業を通じてビットコインを報酬として獲得し、仮想通貨取引所を通じて他の投資家等に売却することで、利益を得ることができます。

(こうしたブロックチェーンネットワークの仕組みについて詳しく知りたい方は、「【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!」を併せてご覧ください。)

また、新規事業立ち上げや経営企画などの職種に関わっている方であれば、「ICO」を思い浮かべられるかもしれません。

ICOとは、Initial Coin Offering(イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)の略で、企業が仮想通貨を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う方法のことです。

「クラウドセール」「トークンセール」「トークンオークション」とも呼ばれるこの方法は、IPO(Initial Public Offering、新規公開株)、いわゆる株式上場の問題点である審査の難度やコストの高さを解決する方法として、一時期、大きな注目を集めました。

しかし、投資に対するハードルの低さが災いし、ICOの仕組みを悪用した詐欺事件なども起こってしまったこともあり、近年では、一時期の勢いは見られないのが現状でしょう。

金融領域のブロックチェーンビジネスで関心が高まる、「STO」領域って?

先ほど見たように、金融領域におけるブロックチェーンのビジネス活用方法は、かつては暗号通貨取引やICOが主流でした。

しかし、最近のトレンドとしては、政府も関与する「STO」の領域に関心が高まってきています。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法です(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICOの問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が低いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

ブロックチェーンの非金融領域におけるビジネス活用

ブロックチェーンビジネス第二の領域は、「非金融領域」です。

非金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことで、台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

非金融領域のブロックチェーンビジネスが注目を集めている理由としては、①適用範囲が非常に広い(どの産業にも可能性がある)、②したがって適用領域の市場規模が大きくなる可能性が高い(政府予想では数十兆円規模)、③これまでに実現してこなかった産業レベルでのイノベーションが起こりうる可能性がある、といったところでしょうか。

門戸が広がったとは言え、まだまだ参加できるプレイヤーが限られている金融領域と比べて、非金融領域では、業務課題レベルからの解決が十分に可能なため、新規事業立ち上げや経営企画の方だけでなく、あらゆる職種の方にとって、この領域について理解しておくことは自社の役に立つかと思います。

非金融領域におけるブロックチェーンビジネスの事業化にあたっては、3つの視点に分けて考えるとわかりやすいでしょう。

すなわち、「直接化」「民主化」「自由化」の3つの視点です。

いずれも、取引における主体者同士の関わり方を構造的に捉えたもので、ブロックチェーン以前の取引が中央管理者からの一方向的な形であったのに対して、ブロックチェーンビジネスでは、非管理者のメリットが増す形に商流を変化させています。

これらの視点の詳細については、次の章で詳しく見ていくこととしましょう。

ブロックチェーンビジネスのハイブリッド領域におけるビジネス活用(非金融×暗号資産)

ブロックチェーンビジネス第三の領域は、「ハイブリッド領域」です。

ハイブリッド領域とは、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域です。

乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

わかりやすい例としては、いわゆる「トークンエコノミー」もこの領域のビジネスと考えられます。

上でも説明したように、トークンエコノミーは、例えば地方自治体など一定の経済圏や自社ネットワークをもつような法人が、その影響範囲内にトークンと呼ばれる仮想通貨決済システムを導入することで、その中でのビジネスを活発化しながら顧客を囲い込んでいこうという取り組みです。

この手の取り組みで、最も大手のところで言えば、MUFGコイン(発表当時の名称、現在はcoin)がこれに該当するでしょう。

しかし、こうしたトークンエコノミーに代表されるハイブリッド領域は、直感的にイメージがしやすく、美しいビジネスモデルも容易に描けてしまう(例えば「●●経済圏」といったワードは事業家として胸踊るものがある)一方で、実際にビジネスを推進する上での課題は多く、難度が非常に高くなるケースが多いため、事業化の際には十分な注意が必要です。

特に、ブロックチェーン開発企業との協業において、「サービス自体の売り上げよりも、決済に使う仮想通貨の値上がり益によって儲けましょう」という提案が行われる場合には注意した方が良いでしょう。

理由は、下記の通りです。

  • 新興基盤の多くは1年ももたずに消えていくため
  • いざサービス開発をしようという時に過去のユースケースが少ないのでバグやシステムトラブルが発生した時にエンジニアがお手上げになるケースが多いため
  • 仮想通貨の値上がり益がインセンティブになることから、事業課題の解決のためのインセンティブがおろそかになってしまい誇大広告や詐欺の温床になるケースが多いため

そのため、もしもあなたが大手企業の事業企画担当者として「トークンエコノミー」などのハイブリッド領域におけるブロックチェーンビジネスを検討しているのであれば、提案を受けた基盤の過去のケース数を確認することをおすすめします(GitHubなどで)。

また、この領域は資金決済法の適用を受けるので、事業企画においても繊細な配慮が必要な点について法務部門から「突っ込まれる」可能性が高いため、注意しておく必要があるでしょう。

非金融領域におけるブロックチェーンビジネス・事業化の3つの視点

先述した通り、非金融領域におけるブロックチェーンビジネスには、事業化にあたって抑えておくべき3つの視点があります。

  1. 「直接化・自動化」
  2. 「民主化・透明化」
  3. 「相対化・自由化」

これらはすべて、取引関係における中央管理者とどのような関係を組むか、という問いに対する視点です。

それぞれ、順にみていきましょう。

非金融ブロックチェーンビジネス・事業化の視点①:「直接化・自動化」

事業化のロジック

ブロックチェーンをビジネス活用する上で重要な「事業化の視点」、その一つ目は、「直接化・自動化」です。

これは、上図の通り、取引のプロセスを合理化することによって、いわゆる「取引コスト」を削減しようという視点です。

あらゆる産業のあらゆる取引にはヒト・モノ・カネ・情報の流通プロセスがあり、そのプロセス内では、取引の主体者や取引自体の信用を担保するための付随業務が至るところで発生しています。

また、それらの業務を適切に遂行し、取引を無事に遂行する上では、「信用に値する第三者」を経由するのが常套手段です。

身近なわかりやすい例で言えば、銀行がその最たるものでしょう。

カネ、つまり信用そのものの流通を取り扱うために、私たちは中央銀行(日本であれば日本銀行)をはじめとした「信用に値する」中央管理者に第三者委託し、銀行が取引にかかる業務を代理履行してくれることで、スムーズな取引が可能になっているのです。

しかし、その一方で、第三者を介することは、中央管理者による規制や圧迫、中間マージンによるコスト高、商流の延長によるリードタイムの間延びなど、様々な取引コストの発生を意味します。

また、取引に付随する業務を履行することそのものにも、大きな人件費がかかってきます。

この問題に対して、「分散型台帳」技術とも言われるブロックチェーンでは、その仕組み上、ネットワークの参加者が個人レベルで(Peer to Peerで)、信用を担保しながら、安全に取引を行うことができます

また、スマートコントラクトと呼ばれる仕組みによって、ブロックチェーンの基盤上で定型業務の履行を自動的に行うこともでき、これまで管理業務に費やされてきた膨大な時間や人件費を削減することもできます

ビジネス活用のアイデアとしては、例えば、次のようなイメージです。

  • 参加者個人同士のシェアリングサービスにおける管理業務を合理化する
  • トレーサビリティを第三者認証なしで実現する
  • 社長がいない株式会社

このように、取引を主体者同士で直接行なったり、取引そのものを自動的に履行させる仕組みをつくったりすることで、商流にかかわる取引コストを大幅に削減しようというのが、「直接化・自動化」の視点です。

ビジネスケース①-A:自律分散型図書館DAOLIB構想

ブロックチェーンによる「直接化」の面白い例の一つに、「自律分散型図書館DAOLIB」と呼ばれる次世代型図書館の構想があります。

これは、利用者と管理者を分け、図書データを中央集権的に管理している既存の図書館に対して、利用者と管理者を同一にし、中央管理者としての図書館の役割をなくしてしまおうという試みです。

多くの方は、過去に友人同士で本の貸し借りをしたことがあるでしょう。

そうした貸し借りは、「友人」という信用関係が成り立っており、かつ、規模が小さく管理の必要性がほとんどないために可能になっています。

しかし、この貸し借りを知らない人との間でやろうとすれば、友人との間のようにはうまくいきません。

例えば、よくある話として、「あれ、あの本誰に貸したっけ?」というように、紛失のリスクを始めとして、本自体の管理に始まり、いつ誰と誰が貸し借りをしたのか、といった経路も記録する必要が出てきます。

そこで、ブロックチェーンの登場です。

「分散型台帳」とも呼ばれるブロックチェーンは、暗号資産の管理手法としてつくられた経緯からもわかるように、本来、データの管理に非常に長けている技術です。

自律分散型図書館DAOLIB構想がうまくいけば、分散型データ管理手法であるブロックチェーンの特徴がうまく生かされることで、本の貸し手と借り手のやり取りを「直接化」することが可能になるでしょう。

ビジネスケース①-B:Workday Credentials

続いて、ブロックチェーンによるビジネスの「自動化」の例をあげましょう。

代表格は、人事クラウド大手のWorkdayによる、ブロックチェーン技術を用いて資格や職歴などの発行、確認を行うプラットフォームである、「Workday Credentials」です。

人事・総務経験者であれば誰しもうなずくことかと思いますが、転職マーケットにおいて、採用する側の労力以上に煩わしいのが、前職側の人事業務でしょう。

Workday Credentialsでは、従業員の職務経験やスキルなどの証明を発行することで、前職の人事部からするともっともやりたくない在職証明などの業務、採用/応募時の確認作業を大幅に合理化できます。

そして、このサービスの背後にあるのが、ブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンは、「データの過去履歴を追うこと」や「データの対改竄性」に優れているため、企業の在職証明であったり、あるいは高等教育機関の学位証明などに幅広く応用されています。

また、スマートコントラクトによる定型取引の自動履行も可能なので、例えば上記の人事業務のような、これまでは信用担保のために人手を必要としていた「コストセンター」と位置付けられる業務を、「自動化」することが可能になります。

「自動化」と聞けば、つい「AI」「RPA」といったテーマを想像しがちですが、実は、こうしたデータの真贋が問われるような局面の自動化であれば、ブロックチェーンに分があると言えるでしょう。

非金融ブロックチェーンビジネス・事業化の視点②:「民主化・透明化」

事業化のロジック

ブロックチェーンをビジネス活用する上で重要な「事業化の視点」、その二つ目は、「民主化・透明化」です。

これは、上図の通り、従来は管理者あるいはプラットフォームから参加者への一方向な上意下達だったコミュニケーションを、管理者に一方的に有利にならないように双方向化しよう、という視点です。

これは、不透明になりがちなコミュニティー運営、例えば、寄付、投票、投げ銭などの透明化、といった双方向性をイメージするとわかりやすいでしょう。

ただ、これらについては、具体的に説明したほうがより理解しやすいかと思うので、早速、ケースをみていきましょう。

ビジネスケース②-A:医療用品の寄付の追跡

   

出典(画像左):「中国で医療用品寄付向けブロックチェーンポータル公開 新型コロナウイルス対策【ニュース】」(コインテレグラフジャパン)

読者のみなさんは、どこかの団体に寄付をしたことがあるでしょうか?

あるいは、街頭に立って募金を呼びかけている団体に、迷いなくお金を募金したことがあるでしょうか?

これらの問いに対しては、様々な立場からの様々な意見があることかと思いますが、その中の大きな論点の一つに、「お金を募金したはいいけど、本当にこの団体が慈善活動にちゃんと使ってくれるか怪しい」「下手な使い方をされるくらいであれば募金しないほうがいいのではないか」といったものがあります。

要は、「寄付や募金の運用管理者に対する信用」の問題です。

この問題は、寄付や募金を活動資金源としているNPO法人などにとっては、ファンドレイジングをする上で非常に大きく、やっかいな課題です。

他方、寄付や募金をする側からしてみても、詐欺団体ではなく、できる限り信用できて、ちゃんとした使い道をしてくれると思える団体を支援したいもの。

こうした課題を解決する手段として、近年、ブロックチェーン技術の応用が進められています。

ブロックチェーンは、全取引の記録を、改竄も消去もされることなく追跡できるという特徴をもっており、その高いトレーサビリティーが、例えば今回のケースの「コロナウィルス対策のための医療用品寄付」のような、公共性が高く、情報の非対称性によるリスクが極めて高い問題に、見事にマッチしているのです。

このような、ビジネス(あるいはそれに類似した事業)の「透明性」を担保する動きは、今後、ますます増えていくと考えられます。

そうした課題感をもっている場合には、ブロックチェーンのビジネス活用を検討することをお勧めします。

ビジネスケース②-B:Socios.com(サッカーファントークン)

  

ブロックチェーンの「民主化」の事例として有名なのが、Socios.com(サッカーファントークン)です。

ファントークンで「チームの決定」に投票可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

近年、インターネットの登場、余暇時間の増長、価値観の多様化の進展、可処分所得の増加など、様々な社会・経済的要因を背景に、消費者は「ただつくられた商品を購入して、消費して、終わり」ではなく、「自分の価値観にあったより長く、より深く愛せるもの」に対して、大きなお金を払うようになってきました

そのため、ビジネス界では、特にtoCサービスをもつビジネスでは、従来の「顧客視点」のマーケティングからさらに一歩進んで、「顧客=身内」と考えるコミュニティマーケティングとでも呼ぶべき、ファンビジネスのマーケットが伸長しています。

例えば、最近の世界的ブームであるクラフトビール。

その火付け役でもあるBrew Dog社では、顧客に自社株を買ってもらい、そのまま自社運営にかかわってもらう(「パンク株」)という試みをしたことでも話題になりました。

これはまさに、従来の「会社vs顧客」という対立構造から、「会社=顧客」へと変化を遂げていることの表れでしょう。

今回紹介しているSocios.comでも、そうした「ファンによるコミュニティの民主化」を進め、「ファン=応援する人」ではなく、「ファン=チームと一緒になって経営する人」として巻き込むことで、より長く、より深く愛せるサッカーチームになることを目指します。

ブロックチェーンは、ここで課題となりやすい「意思決定に対する投票」の問題を、すでにこれまで述べた特徴をもって、見事に解決していると言えるでしょう。

非金融ブロックチェーンビジネス・事業化の視点③:「相対化・自由化」

事業化のロジック

ブロックチェーンをビジネス活用する上で重要な「事業化の視点」、その三つ目は、「相対化・自由化」です。

これは、平たく言えば、「データの囲い込み」をなくして、みんなで利用していきましょうね、という視点です。

これまでは、同じ業界でも、各社が異なるデータベースを用意し、それぞれの顧客に対してそれぞれ別の形でデータを保有していました。

そのため、データを共有してさえいれば確保できるはずの利用者の自由度が、大きく下がってしまうケースが少なくありません。

例えば複数のサービスを使おうと思ったら、その度にログインIDとパスワードを入れなくてはいけなくなり、「あれ?パスワードなんだっけ・・・」といったことも珍しくないのではないでしょうか。

また、法人としてみても、同じ業界で、同じ資産を使っている間柄なのに、各社がそれぞれに同じようなデータを集める無駄な競争を行なっていたり、パワーの強い一社がデータを独占してしまって他社がどうにもならない(結果、業界としての進歩が望めない)ということが日常的に起こっています。

これに対して、ブロックチェーンでは、各社がそれぞれにサーバーをもつのではなく、一つのネットワークを共有することで、デジタル資産を安全に共有することができます。

これによって、まず、消費者側の受けられる恩恵が増します。

例えば、IDを他サービスに持っていって認証の手間を省ける、自分が著作権を有するコンテンツを自由にいろいろなプラットフォームで売れる、といったようなイメージです。

また、企業としても、同業他社が安全にデータを共有し合えることで、あるいは川上と川下がスムーズに繋がることで、独占によるメリット以上に大きなリターンが得られるケースも少なくありません。

「シェアリングエコノミー」「限界費用ゼロ社会」に向かっていくと言われる現代の社会において、こうした「相対化・自由化」の流れはますます高まっていくでしょう。

ビジネスケース③-A:メディカルチェーン

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の一つ目の例は、「メディカルチェーン」です。

これは、かれこれ20年ほど叫ばれ続けていた医療のデジタル化、特に電子カルテを始めとする院内データの共通化の問題を、ブロックチェーンで巧みに解決しようという試みです。

医療データは、個人情報の中でも特に秘匿性が高く、セキュリティ要件が最も高く求められます。

そして、医療機関ごとのデータ保存形式も異なるため、それらを共有していくハードルは非常に高いものになります。

メディカルチェーンでは、この問題に対して、各医療機関のデータを一つのブロックチェーン基盤上に乗せることを目指しています。

また、ビジネスモデルとしては、トークンエコノミーを採用し、トークンからの収益と医療機関からの収益を主治医や患者に還元することで、この仕組みがうまく回るように設計されています。

ビジネスケース③-B:国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の二つ目の例は、国連による「難民・ホームレス等向けIDサービス」です。

これは、難民が、国連から付与されるIDカードなしにサービスを利用できるようにするための仕組みで、生体認証データをもとに国連が本人確認を行なった上で、その認証IDをブロックチェーン基盤上で管理しようというものです。

この仕組みによって、従来は各国の各関係機関がそれぞれにデータ認証をするために共通のIDカードを必要としていたところを、共通の基盤をもつことで、IDカードを携帯していないような緊急事態にも人道支援を迅速に行うことが可能になります。

まさに、ブロックチェーンの特徴をうまくいかした「相対化・自由化」の好例であると言えるでしょう。

ブロックチェーンは技術の組み合わせ?〜P2P・Hash・公開鍵暗号〜

「組み合わせのイノベーション」とも呼ばれるブロックチェーンには、新旧様々な技術が用いられています。それらの技術は、ブロックチェーンの仕組みにどのような貢献をしているのでしょうか?ビジネスパーソン向けに、わかりやすく解説します!

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年ニュースを騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)
(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。
ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。
後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

従来のデータベースの特徴

① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
② それぞれのDBは独立して存在する
③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。
その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。
まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンの仕組み


〈!注意〉
本記事の解説では、仕組みにおける重要概念の紹介だけにとどめます。
より詳しくブロックチェーンの仕組みをお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!


ブロックチェーンをシンプルに図解すると、次のような構造をしています。

上図からもわかるように、ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています。
では、「ブロック」や「チェーン」とは、どういう意味でしょうか?

ブロックチェーンの仕組み①:「ブロック」

ブロックチェーンでは、一定量に取りまとめられた取引データを「Tx(Transaction、トランザクション)」と呼んでいます。
「ブロック」とは、このトランザクションを1MB分だけ集めてきて、日付などのメタ情報を付与して、ひとまとまりにしたものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

ブロックチェーンの仕組み②:「チェーン」

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています(これらの用語やルールに関しては、後ほど解説します)。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられているので、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

なお、こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

稀にチェーン型でないブロックチェーンというものもありますが、それらは分散型台帳であるもののブロックチェーン構造ではないので、厳密には区別されます(例えばIOTAで有名な「タングル」構造など)。

ブロックチェーンの仕組み③:データの共有方法(コンセンサスアルゴリズム)

ブロックチェーンでのデータ共有において重要な役割を持っているのが「ノード」と呼ばれる個々のネットワーク参加者です。

すでに述べた通り、ブロックチェーンは、従来のデータベースとは異なり中央管理者が不在のため、データの管理や共有はすべて参加者だけで行う必要があります。
この参加者のことを「ノード」と呼び、世界中に散らばるノードが競争した結果、競争に勝利した一つのノードによって、絶えず新しいブロックが生成されていきます(ビットコインでは平均10分に1つのペースで新しいブロックが生成されるように設計されています)。

また、各ノードは、P2Pネットワーク内の他のノードの一部と繋げられており、あるノードでつくられた新しいブロックの情報は、そのノードと繋がっている他のノードにすぐさま伝播します。
そして、この「ブロックの伝播」を繰り返していくことで、ブロックおよびブロックに含まれる取引データが、瞬く間に世界中の参加者へと共有される(=データが同期される)のです。
これによって、多数のノードがデータを持ち合うことで、ブロックチェーンでは、データの改竄や捏造が難しくなりました。

しかし、この方法は、あくまで「ブロック化された元のデータ内容が正しいこと」を前提としています。
ブロックチェーンの世界には第三者としての中央管理者がいません。
従って、もし、ブロックをつくった人間に悪意があった場合、その人間を管理できる存在がいないため、世界中の人が間違ったデータを同時に持ってしまうことになります。
つまり、P2Pネットワーク参加者のみで行うデータ共有の仕組みでは、「管理者不在の中、どうやってデータの真正性を担保するか?」という問題を解決する必要があるのです。

そこで、考え出されたのが、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる、ネットワーク内での合意形成の方法です。
ブロックチェーンでは、個々のネットワークごとに、「複数それっぽいブロックが出てきた時にどれを選ぶか?」という論点に対する合意方法が、コンセンサスアルゴリズムという形で事前に決められているのです

(出典:pixabay

例えば、代表的なところでは、ビットコインのPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)あたりが有名です。
れる謎の人物であることを思い出してください)

なお、ブロックチェーンの種類について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

ブロックチェーンに利用されている技術

ここまで、ブロックチェーンそのものの仕組みを簡単に説明してきました。
しかし、実際には、ブロックチェーンを従来のデータベースと差別化している要因は、それだけではありません。

冒頭でも述べたように、ブロックチェーンは「組み合わせによるイノベーション」と言われるほど、新旧様々な技術を組み合わせることで、その特異性を発揮していると言えます。
そこで、本章では、ブロックチェーンに利用されている既存技術のうち、代表的な3つの技術を詳しくご紹介します。

P2P(Peer to Peer)通信

ブロックチェーンに利用されている最も代表的な技術が「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)」です。

P2Pとは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、ブロックチェーンの最大の特徴でもある「非中央集権性」をもたらしているのが、この技術です。

P2Pは、わかりやすいイメージで言えば、第三者を介さない個人間送金などで活用されています。
また、無料インターネット電話サービスの先駆けともいえるSkypeにも、このP2P技術が用いられています。

これに対して、従来のデータベースでは、「クライアントーサーバ型」と呼ばれる通信方式が採用されています。
クライアントーサーバ型とは、情報媒体間でデータの送受信を行う際に、データ共有を行う媒体間で直接通信せず、第三者媒体をサーバとして経由する方式のことです。
そのため、従来のデータベースを使ってデータを共有しようと思うと、どうしても中央管理者が必要となってしまいます。
これは、Google ChromeやAWS(Amazon Web Service)などを想像するとわかりやすいでしょう。

なお、厳密には、P2Pとブロックチェーンは全くの別技術で、全てのブロックチェーンがP2P方式というわけではありませんが、基本的には「ブロックチェーン=P2P」という理解で問題ありません。

Hash(ハッシュ値、ハッシュ関数)

次に、Hashについてです。

ビットコインのコンセンサスアルゴリズム(PoW)では、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(ハッシュ、ナンス、ターゲット)を用いた計算作業をノードに課しています。
この計算作業とは、具体的に、「ブロックのバイトにnonceを加えたものをHash化した値が、特定のターゲット値以下になるようなnonceを見つける作業」のことです。

どういうことか、順に、詳しくみていきましょう。

マイニングで用いられるメタ情報①:Hash

改めて、マイニングに用いられるメタ情報は、次の3つです。

  • Hash(ハッシュ、ハッシュ値)
  • nonce(ナンス)
  • Target(ターゲット)

Hashとは「一連の取引データが、ハッシュ関数と呼ばれる暗号化技術によって、文字列化された値」であり、このHashをつくる作業をハッシュ化と呼びます。

ブロックチェーンの仕組みでは、あるブロック(A)内に格納された諸データ(トランザクション+メタ情報)がハッシュ化され、そこでつくられたHashが次のブロック(B)のメタ情報の一つとして格納されます。

そして、そのブロック(B)内に格納された諸データがハッシュ化され、そのHashがまた次のブロック(C)に格納され、・・・といったことを繰り返していきます。
こうして、前後のブロックがHashによってチェーン状に繋げられているために、その仕組み全体をブロックチェーンと呼ぶのでした(こうしたHashによる繋がりを「ハッシュチェーン」と呼ぶこともあります)。

マイニングで用いられるメタ情報②:nonce・Targetとハッシュ化

さて、ビットコインにおけるマイニングでは、このHashと、ブロックごとに予め定められている「Target」という特定の値をもとに、「nonce」と呼ばれる未知数を求める計算を行います。
具体的には、「あるブロックをまとめた情報(バイト)にnonce(未知数)を加えたものをハッシュ化した値(Hash)が、特定のTarget(値)以下になるようなnonceを見つける作業」がProof of Workです。

実際には、例えば、次のような形の式を解くことになります。

「NotNonce」をブロックの情報そのものとすると、それにnonceの値を付加してHash関数を通します。

ここでは、nonceが5の時に条件を満たしたのでnonce=5としてブロックが生成されます(Hash値の先頭にある文字列が00であり、これは01から始まるTargetよりも小さな値であると言えます)。

nonceは一つの値とは限らないため、他の値で条件を満たすものがあった場合も、問題ありません。
そのため、条件を満たしてさえいれば良いので、運良くたままた早く見つかることもあれば全く見つからないこともあります。
したがって、ブロックの生成スピードは、マイナーによって異なります。

このように、ビットコインのPoWでは、マイナーはHash、nonce、Targetを用いた計算(マイニング)を行うことで、ブロックを生成することができます。

マイニングにおいて重要な役割を果たしていたHashも、実は、ブロックチェーン特有の技術ではなく、ブロックチェーン以前から存在していた暗号技術を転用したものです。

ブロックチェーンでは一つ前のブロックをHash化したHash値を次のブロックに渡し、それを織り込んでブロックを作成します。
Hashは少しでも入力値が変わると全く異なる出力となるという特徴があります。

また、その他に出力値の長さが入力に関わらず一定であること、出力から入力を類推できないという特徴があります。

まとまると次のような特徴があり、ブロックチェーンのメリットにつながります。

Hashはブロックチェーン以前にも、暗号技術として使われていた?

今見たように、Hashという技術は、ブロックチェーンの構造およびセキュリティを堅牢なものにする上で、非常に重要な役割を果たしています。
しかし、実は、このHash(およびハッシュ関数)は、ブロックチェーンで初めて実用化された技術ではありません。

Hashは、ブロックチェーン以前から、暗号技術の一つとして、広く使われていました。
ブロックチェーンは、「分散型台帳」としての非中央集権的な特徴とメリットを存分に発揮しつつ、セキュリティ等の実運用上のリスクを緩和する目的で、うまく既存技術を転用することに成功したのです。

公開鍵暗号方式

最後は、公開鍵暗号方式についてです。

公開鍵暗号方式とは、「暗号化と復号(暗号から元のデータに戻すこと)に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開できるようにした暗号方式」のことで、次のような「鍵の配送問題」に対する解決策の一つとして、企業のセキュリティなどで用いられているものです。

  • 暗号は通信の秘匿性を高めるための手段だが、それに必須の鍵もまた情報なので、鍵を受け渡す過程で盗聴されてしまうというリスクが存在する
  • 共通鍵を秘匿して受け渡すには(特使が運搬するというような)コストもかかり、一般人が暗号を用いるための障害が存在する

具体的な仕組みについては、『Udemyメディア』の「公開鍵暗号方式とは?初心者でもわかる公開鍵暗号方式の基礎」という記事が非常にわかりやすく解説していたため、下記、そちらを引用します。

「公開鍵暗号方式では2つの鍵を利用してデータのやり取りを行います。

2つの鍵とは受信者が作成する「公開鍵」と「秘密鍵」です。
公開鍵は誰でも簡単に入手できる公開された鍵ですが、秘密鍵は1つしかない大切な鍵です。

それでは2つの鍵を使ったデータの送信を見てみましょう。

公開鍵暗号方式の仕組み

1. 受信者が秘密鍵を使って公開鍵を作成する
2. 送信者は受信者の公開鍵を取得する
3. 平文(暗号化したい文)を送信者が公開鍵を使い暗号化し送付する
4. 受信者が暗号文を受け取る。
5. 受信者は暗号文を秘密鍵で平文に復号化する

このように、受信者(秘密鍵を持っている人)のみが暗号を解くことができる仕組みになっています。
秘密鍵は受信者が大切に保管し、公開鍵は誰でも取得できる場所に公開されています。」

ブロックチェーンでは、取引データをトランザクション化する際に、この公開鍵暗号方式が利用されています。
具体的には、自分のもつ秘密鍵でトランザクションに署名をすることで、データの安全性を高めています。

ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

ブロックチェーンには、「管理者の在・不在」に応じて、複数の種類(パブリック型、コンソーシアム型、プライベート型)が存在します。具体的に、どのような違いがあり、自社ではどれを採用すべきでしょうか?本記事で、詳しく解説します!

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年ニュースを騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)
(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

なお、ブロックチェーンの技術について詳しくお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
ブロックチェーンは技術の組み合わせ?〜P2P・Hash・公開鍵暗号〜

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。
ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。
後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

従来のデータベースの特徴

① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
② それぞれのDBは独立して存在する
③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。
その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。
まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンの仕組み


〈!注意〉
本記事の解説では、仕組みにおける重要概念の紹介だけにとどめます。
より詳しくブロックチェーンの仕組みをお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!


ブロックチェーンをシンプルに図解すると、次のような構造をしています。

上図からもわかるように、ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています。
では、「ブロック」や「チェーン」とは、どういう意味でしょうか?

ブロックチェーンの仕組み①:「ブロック」

ブロックチェーンでは、一定量に取りまとめられた取引データを「Tx(Transaction、トランザクション)」と呼んでいます。
「ブロック」とは、このトランザクションを1MB分だけ集めてきて、日付などのメタ情報を付与して、ひとまとまりにしたものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

ブロックチェーンの仕組み②:「チェーン」

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています(これらの用語やルールに関しては、後ほど解説します)。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられているので、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

なお、こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

稀にチェーン型でないブロックチェーンというものもありますが、それらは分散型台帳であるもののブロックチェーン構造ではないので、厳密には区別されます(例えばIOTAで有名な「タングル」構造など)。

ブロックチェーンの仕組み③:データの共有方法(コンセンサスアルゴリズム)

ブロックチェーンでのデータ共有において重要な役割を持っているのが「ノード」と呼ばれる個々のネットワーク参加者です。

すでに述べた通り、ブロックチェーンは、従来のデータベースとは異なり中央管理者が不在のため、データの管理や共有はすべて参加者だけで行う必要があります。
この参加者のことを「ノード」と呼び、世界中に散らばるノードが競争した結果、競争に勝利した一つのノードによって、絶えず新しいブロックが生成されていきます(ビットコインでは平均10分に1つのペースで新しいブロックが生成されるように設計されています)。

また、各ノードは、P2Pネットワーク内の他のノードの一部と繋げられており、あるノードでつくられた新しいブロックの情報は、そのノードと繋がっている他のノードにすぐさま伝播します
そして、この「ブロックの伝播」を繰り返していくことで、ブロックおよびブロックに含まれる取引データが、瞬く間に世界中の参加者へと共有される(=データが同期される)のです。
これによって、多数のノードがデータを持ち合うことで、ブロックチェーンでは、データの改竄や捏造が難しくなりました。

しかし、この方法は、あくまで「ブロック化された元のデータ内容が正しいこと」を前提としています。
ブロックチェーンの世界には第三者としての中央管理者がいません。
従って、もし、ブロックをつくった人間に悪意があった場合、その人間を管理できる存在がいないため、世界中の人が間違ったデータを同時に持ってしまうことになります。
つまり、P2Pネットワーク参加者のみで行うデータ共有の仕組みでは、「管理者不在の中、どうやってデータの真正性を担保するか?」という問題を解決する必要があるのです。

そこで、考え出されたのが、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる、ネットワーク内での合意形成の方法です。
ブロックチェーンでは、個々のネットワークごとに、「複数それっぽいブロックが出てきた時にどれを選ぶか?」という論点に対する合意方法が、コンセンサスアルゴリズムという形で事前に決められているのです。

(出典:pixabay

例えば、代表的なところでは、ビットコインのPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)あたりが有名です。
れる謎の人物であることを思い出してください)

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると以下のように分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

ノードの参加者が限定されているPermission型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。

代表的なブロックチェーンの種類

前述の分類に従い、頻出するブロックチェーンをマッピングしたものが次の図です。

企業向けの開発では中央集権によっているQuorum(Ethereumから派生)かHyperLedger Fabricを利用します。

【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンとは「分散型台帳」とも呼ばれるビットコインの中核技術です。発明からわずか10年弱、瞬く間に世界を一変させました。国内市場60兆円以上とも言われるイノベーションの本質は何か?ビジネス界に衝撃を与える「新常識」に迫ります!

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年ニュースを騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、”Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System. (Nakamoto)” (Bitcoin: Peer-to- Peer電子マネーシステム)というSatoshi Nakamoto名義による論文の発表と共に、 2008年に理論と仕組みが発明されました。

(出典:pixabay

ビットコインは、その技術的可能性の高さはもちろん、謎に包まれた発案者 ”サトシ・ナカモト” の存在、計算能力に優れたパーソナルコンピューターの社会普及などの要因も相まって、発明からわずか数年で世界に広がりを見せます。

そして、以前のデジタル通貨が抱えていた問題、すなわち①「この通貨が本物かどうか?」②「この通貨は私だけのものか?(二重支払い問題)」という2つの問題を、中央銀行や政府などの管理者に頼ることなく解消したことで、民間による通貨の発行と決済機能を実現し、世の中に大きな衝撃を与えました。

これは、ビットコインが下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであるためと言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンは、当初こそビットコイン発明の副産物としての位置付けでした。
しかし、2020年現在では、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

ブロックチェーンの定義

有識者によるブロックチェーンの定義

では、ブロックチェーンとは、一体なんでしょうか?

実は、ブロックチェーンには明確な定義がなされておらず、その幅広い性質をめぐって、専門家の間でも意見が分かれています。例えば、日本の業界団体や有識者は、次のような定義をしています(ここでは深入りせず、さらっと眺めてください)。

▼日本ブロックチェーン協会(JBA)による定義

(1)「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」

(2)「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」

▼杉井靖典氏(『いちばんやさしいブロックチェーンの教本』の著者)による定義

「正しい記録しかできない、変更できない、消せない、改ざんできない、壊れても自動修復される、落ちない、みんなに合意された情報だけが有効と認識される、ネットワーク共有型のデータベース」

これらの定義を見てもわかるように、ブロックチェーンは、要素技術や特徴が多岐にわたり、その定義が非常に複雑になりがちです(ここでは、理解できる必要はありません)。
また、ブロックチェーンと一口に言っても、どのネットワークで用いられているものなのか(例えばビットコインなのか、イーサリアムなのか、など)によっても、性質が変わってきてしまいます。
そのため、背景知識の薄い初心者の方にはどうしても取っつきづらく、理解が進みにくい傾向にあるのが難点です。

本記事でのブロックチェーンの定義

そこで、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

私たち人間が日々、社会で何かしらの行動を起こすと、そこには必ず「取引」と「取引データ」が生まれます。
例えば、コンビニでジュースを買った時、あなたと店員さんとの間では、品物と代金の交換という取引が成立しています。
そして、そのとき、POSシステム(いわゆるレジ)によって記録され、保管されるのが取引データです。

また、他にも、あるサービスを利用するときの個人情報のやり取り、ある人が結婚しているかどうかの記録、などなど、人がいるところには無数の取引と、取引データが存在しています。

今述べたPOSシステムをはじめ、こうした取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。
ブロックチェーンとは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ロックチェーンの特徴

ブロックチェーンと従来のデータベースとの違い

ブロックチェーンとは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもつ技術です。
後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンと従来のデータベースとは何が違うのでしょうか?

従来のデータベースの特徴

① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
② それぞれのDBは独立して存在する
③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。
その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

ブロックチェーンのメリット/デメリット

ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

メリットは、先ほど触れた通りなので、ここでは、デメリットについて解説します。

  • 処理速度が遅い
    • クレジットカード決済が秒間2万件処理できるのに対し、Bitcoinは秒間7件が限界です。処理速度を向上させる技術が日々研究されています。
  • (パブリック型の場合)手数料が発生する
    • 中央がいなくなったとはいえブロックチェーンを支える「マイナー」と呼ばれる参加者が必要です。彼らは高性能なコンピュータを使い、大量の電気を使用します。
    • そのため手数料としてマイナーに支払う幾ばくかの謝礼が発生します。
    • これは中央集権型の仕組みでは運営企業が維持していたサーバー費用などをユーザーに請求せず無料で利用できるサービスが多いのとは対照的な仕組みです。
    • もっとも送金手数料などは銀行よりも安いため世界に普及したという経緯があり、手数料は一般的に従来の仕組みよりも安く抑えられる傾向があります。
  • 「51%問題」があり、改竄が不可能ではない
    • よく誤解されることですがブロックチェーンは改竄が「困難」なのであって「不可能」ではありません。
  • 無駄な電力消費
    • PoWの仕組み上、マイナーが計算競争を行うため高性能なコンピューターを動かすことで、大量の電気が消費されます。
    • ブロックチェーン以外では使うことのない計算ですので、地球温暖化の観点から懸念されています。

なお、これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

ブロックチェーンの仕組み

ここからは、ブロックチェーンがどのような仕組みで動いているのか、その理論と実際例を解説していきます。
大きくは、基本構造をまず抑えた上で、データの共有方法、とりわけコンセンサスアルゴリズムについて理解することが重要です。
また、ビットコインのコンセンサスアルゴリズムであるPoWのうち、「マイニング」の概念も理解できるとベターでしょう。

ただし、ブロックチェーンは、発明の経緯からして、体系だてられた理論を出発点にしたというよりは、実運用上の必要に応じて具体的な技術を組み合わせてつくられています。
そのため、ブロックチェーンの仕組みは、初心者にとっては非常に難解で、いきなり全てを理解しようとするとつまづいてしまう方も少なくありません。

そのため、本記事の解説では、仕組みにおける重要概念の紹介だけにとどめます。
より詳しくブロックチェーンの仕組みをお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!

ブロックチェーンの基本構造

ブロックチェーンをシンプルに図解すると、次のような構造をしています。

上図からもわかるように、ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています。

ブロックチェーンでは、一定量に取りまとめられた取引データを「Tx(Transaction、トランザクション)」と呼んでいます。
「ブロック」とは、このトランザクションを1MB分だけ集めてきて、日付などのメタ情報を付与して、ひとまとまりにしたもの
です。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています(これらの用語やルールに関しては、後ほど解説します)。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられているので、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

なお、こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

稀にチェーン型でないブロックチェーンというものもありますが、それらは分散型台帳であるもののブロックチェーン構造ではないので、厳密には区別されます(例えばIOTAで有名な「タングル」構造など)。

ブロックチェーンにおけるデータ共有の考え方

ブロックチェーンにおけるデータ共有:「ノード」がブロックの生成と伝播を行う

ブロックチェーンでのデータ共有において重要な役割を持っているのが「ノード」と呼ばれる個々のネットワーク参加者です。

すでに述べた通り、ブロックチェーンは、従来のデータベースとは異なり中央管理者が不在のため、データの管理や共有はすべて参加者だけで行う必要があります。
この参加者のことを「ノード」と呼び、世界中に散らばるノードが競争した結果、競争に勝利した一つのノードによって、絶えず新しいブロックが生成されていきます(ビットコインでは平均10分に1つのペースで新しいブロックが生成されるように設計されています)。

また、各ノードは、P2Pネットワーク内の他のノードの一部と繋げられており、あるノードでつくられた新しいブロックの情報は、そのノードと繋がっている他のノードにすぐさま伝播します
そして、この「ブロックの伝播」を繰り返していくことで、ブロックおよびブロックに含まれる取引データが、瞬く間に世界中の参加者へと共有される(=データが同期される)のです。

このように、ブロックチェーンでは、P2Pネットワークの参加者自身がブロックの生成やデータの共有(=ブロックの伝播)を行なうことで、分散型のデータベースが高い精度で実現されています。

ノードによるブロック生成・伝播の問題点と解決策:コンセンサスアルゴリズム

今みたように、ノードによるブロック生成・伝播の仕組みによって、世界中のノードがほぼ同時に、同じ内容のデータをもつことができるようになりました。
そして、多数のノードがデータを持ち合うことで、データの改竄や捏造が難しくなりました。

しかし、この方法は、あくまで「ブロック化された元のデータ内容が正しいこと」を前提としています。
ブロックチェーンの世界には第三者としての中央管理者がいません。
従って、もし、ブロックをつくった人間に悪意があった場合、その人間を管理できる存在がいないため、世界中の人が間違ったデータを同時に持ってしまうことになります。
つまり、P2Pネットワーク参加者のみで行うデータ共有の仕組みでは、「管理者不在の中、どうやってデータの真正性を担保するか?」という問題を解決する必要があるのです。

そこで、考え出されたのが、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる、ネットワーク内での合意形成の方法です。
ブロックチェーンでは、個々のネットワークごとに、「複数それっぽいブロックが出てきた時にどれを選ぶか?」という論点に対する合意方法が、コンセンサスアルゴリズムという形で事前に決められているのです。

一般に、コンセンサスアルゴリズムには、次の2つの役割があります。

  1. ネットワーク内の発言権を誰に持たせるかを決める(=一定の条件を満たすノードにブロック生成を認める)
  2. 複数の発言者がいる場合に、誰の発言が最も有力かを決める(=2つ以上の異なるブロックが同時に生成されたとき、どのブロックが正しいかについての合意を形成する)

代表的なところでは、ビットコインのPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)あたりが有名です。

ビットコインのコンセンサスアルゴリズム:PoW(Proof of Work)

では、具体的に、コンセンサスアルゴリズムはどのようにして「データの真正性問題」を解決しているのでしょうか?
本記事はビットコインを前提に執筆しているため、ここでは、代表例としてPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)の説明を行います。

先ほどみた、コンセンサスアルゴリズムの2つの役割からみると、PoWは次の2つの原理によって成り立っています。

PoWの原理①(1つ目の役割:ブロックの生成条件)=「メタ情報に関する計算に成功するとブロックを生成できる」
PoWの原理②(2つ目の役割:フォークへの対応)=「複数のブロックが生成された場合、最も長いチェーンを正統とし、その中に含まれるブロックを正しいと認める」…”ナカモト・コンセンサス”

まず、1つ目の原理として、PoWでは、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(ハッシュ、ナンス、ターゲット)を用いた計算作業をノードに課しています
この「ある数字(nonce)を見つけ出す」計算に成功するためには、途方もないレベルの膨大な作業量が必要になります。
そのため、一つのブロックを生成するために、ノードは、コンピュータに大量の計算を行わせるための大きなコスト(電気代)を支払わなければなりません
PoWでは、誰でもブロック生成に参加できるものの、この計算量とそれにかかるコストの大きさが制約条件となって、ブロック生成に参加するノード(マイニングをするノードなので、「マイナー」と呼ばれます)の数を制限することに成功しています。

次に、2つ目の原理として、PoWでは、フォークによって複数のチェーンが生まれた場合、最も長いチェーンに含まれるブロックを正統と認めるルールを設けています。
これは、コンセンサスアルゴリズムであるPoWの中でも特に、「ナカモト・コンセンサス」と呼ばれるルールです。

ビットコインでは、後述する経済的インセンティブのもと、各マイナーが計算競争を行なった結果、下図のように、異なるブロックを持った複数のチェーン分岐が発生してしまうことがあります。

この「フォーク」と呼ばれる問題を解決するために、ナカモト・コンセンサスでは、ブロックの伝播にかかる時間のタイムラグと、10分に1つの新しいブロックが生成されていくというビットコインの設計を利用して、ブロックの中身に優劣をつけるのではなく、「結果として最も長いチェーンを形成したブロックが正しい」という原理が採用されました(上図では、青い背景色のチェーンとブロックが正統と認められます)。

さらに、こうしたルールが現実に効果を発揮するために、ビットコインでは、マイナーに対する経済的インセンティブ(報酬)が用意されています。

先ほど説明した通り、マイニングを行うために、マイナーは高性能なコンピュータを用意し、電気代をかけて計算を行い続けなければなりません。
これは、マイナーにとってのコストになるため、このままでは、誰もブロックをつくろうという気にはなりません。

そこで、彼らへのインセンティブとして、新たなブロックを見つけて一番最初に伝播させたマイナーには採掘の報酬と、トランザクションに含まれる手数料の合計が振り込まれるというインセンティブが用意されています。

この「採掘報酬+手数料」というわかりやすいインセンティブをめぐって、マイナー達が我先にと計算競争を繰り広げるようになることで、PoWがうまく効果を発揮し、ブロックチェーンネットワークにおけるリアルタイムでのデータ共有が実現されているのです。

ブロックチェーンの生成過程

取引〜ブロック生成〜データ共有の流れ

ブロックチェーンは、ある取引のデータをブロック内に格納し、ネットワーク内の全ノードにリアルタイム共有する仕組みでした。
この仕組みは、次の一連の作業によって実現されます(この章でも、ビットコインを前提に説明します)。

  1. 取引が行われる
  2. 取引データに鍵がかけられ、トランザクションプールに貯められる
  3. マイナーが、トランザクションプールの中から一定量のトランザクション(1MB)を取り出し、データを検証する
  4. マイナーがPoWで定められた計算を行い、取り出したトランザクション群にメタ情報を付加して、ブロックを生成する(=マイニング)
    1. メタ情報①:一つ前のブロックのハッシュ値(Hash)
    2. メタ情報②:ナンス(nonce)
    3. メタ情報③:タイムスタンプ(ブロック生成の日時)
    4. メタ情報④:ターゲット
  5. マイナーが他の隣接ノードにブロックを伝播する
  6. ブロック情報を受け取ったノードが、そのブロックの正しさを検証する
    1. 届いたブロックを再度ハッシュ化し、ハッシュ値<ターゲットとなればOK
  7. 検証したノードが、さらに繋がっている他の隣接ノードにブロックを伝播する
  8. 以下、6~7を繰り返す

マイニング

ビットコインのコンセンサスアルゴリズム(PoW)では、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(ハッシュ、ナンス、ターゲット)を用いた計算作業をノードに課しています
この計算作業とは、具体的に、「ブロックのバイトにnonceを加えたものをHash化した値が、特定のターゲット値以下になるようなnonceを見つける作業」のことです。

改めて、マイニングに用いられるメタ情報は、次の3つです。

  • Hash(ハッシュ、ハッシュ値)
  • nonce(ナンス)
  • Target(ターゲット)

Hashとは「一連の取引データが、ハッシュ関数と呼ばれる暗号化技術によって、文字列化された値」であり、このHashをつくる作業をハッシュ化と呼びます
ブロックチェーンの仕組みでは、あるブロック(A)内に格納された諸データ(トランザクション+メタ情報)がハッシュ化され、そこでつくられたHashが次のブロック(B)のメタ情報の一つとして格納されます。

そして、そのブロック(B)内に格納された諸データがハッシュ化され、そのHashがまた次のブロック(C)に格納され、・・・といったことを繰り返していきます。
こうして、前後のブロックがHashによってチェーン状に繋げられているために、その仕組み全体をブロックチェーンと呼ぶのでした(こうしたHashによる繋がりを「ハッシュチェーン」と呼ぶこともあります)。

さて、ビットコインにおけるマイニングでは、このHashと、ブロックごとに予め定められている「Target」という特定の値をもとに、「nonce」と呼ばれる未知数を求める計算を行います
具体的には、「あるブロックをまとめた情報(バイト)にnonce(未知数)を加えたものをハッシュ化した値(Hash)が、特定のTarget(値)以下になるようなnonceを見つける作業」がProof of Workです。

実際には、例えば、次のような形の式を解くことになります。

「NotNonce」をブロックの情報そのものとすると、それにnonceの値を付加してHash関数を通します。

ここでは、nonceが5の時に条件を満たしたのでnonce=5としてブロックが生成されます(Hash値の先頭にある文字列が00であり、これは01から始まるTargetよりも小さな値であると言えます)。

nonceは一つの値とは限らないため、他の値で条件を満たすものがあった場合も、問題ありません。
そのため、条件を満たしてさえいれば良いので、運良くたままた早く見つかることもあれば全く見つからないこともあります。
したがって、ブロックの生成スピードは、マイナーによって異なります。

このように、ビットコインのPoWでは、マイナーはHash、nonce、Targetを用いた計算(マイニング)を行うことで、ブロックを生成することができます。

マイニングの計算難易度とビットコイン供給量

総発行数に上限を設けるために、ビットコインには、一定期間ごとに供給量を半分に減らす「半減期」と呼ばれる設計がなされています。

  • 1ブロック生成ごとに供給され、最初は50BTC
  • 4年に一度半減期を迎える。2020年5月12日に3度目の半減期を迎え、現在、6.25
  • BTC
  • 2140年以降、最小単位を下回るので供給が止まる
  • 最終的な発行数は21万BTC

そして、ビットコインでは、この半減期と通貨の総発行数を守るために、計算難易度の調整が行われています。

ブロックチェーン(ビットコイン)のマイニングでは、Targetが小さいほど、計算難度が上がります。
具体的にはターゲットの値で0がたくさん並ぶほどnonceの発見は難しくなります。

そしてTargetは、先ほど述べた発行数の上限と半減期の設計をもとに、ブロックの作成スピードから計算して自動で調整されます。

具体的には、2,016ブロックごとに、予想時間の20,160分以上かかっていれば難易度を下げ、20,160分以下なら難易度を上げます。
また、急激な変化をしないように、4倍または1/4の間に収まるようにする、というルールで運用されています。

ブロックチェーンに利用されている技術

ここまで、ブロックチェーンそのものの仕組みを詳しく説明してきました。
しかし、実際には、ブロックチェーンを従来のデータベースと差別化している要因は、それだけではありません。

冒頭でも述べたように、ブロックチェーンは「組み合わせによるイノベーション」と言われるほど、新旧様々な技術を組み合わせることで、その特異性を発揮していると言えます。
そこで、本章では、ブロックチェーンに利用されている既存技術のうち、代表的な3つの技術を簡単にご紹介します。

なお、ブロックチェーンの技術について詳しくお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。

ブロックチェーンは技術の組み合わせ?〜P2P・Hash・公開鍵暗号〜

P2P(Peer to Peer)通信

ブロックチェーンに利用されている最も代表的な技術が「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)」です。

P2Pとは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、ブロックチェーンの最大の特徴でもある「非中央集権性」をもたらしているのが、この技術です。

P2Pは、わかりやすいイメージで言えば、第三者を介さない個人間送金などで活用されています。
また、無料インターネット電話サービスの先駆けともいえるSkypeにも、このP2P技術が用いられています。

これに対して、従来のデータベースでは、「クライアントーサーバ型」と呼ばれる通信方式が採用されています。
クライアントーサーバ型とは、情報媒体間でデータの送受信を行う際に、データ共有を行う媒体間で直接通信せず、第三者媒体をサーバとして経由する方式のことです。
そのため、従来のデータベースを使ってデータを共有しようと思うと、どうしても中央管理者が必要となってしまいます。
これは、Google ChromeやAWS(Amazon Web Service)などを想像するとわかりやすいでしょう。

なお、厳密には、P2Pとブロックチェーンは全くの別技術で、全てのブロックチェーンがP2P方式というわけではありませんが、基本的には「ブロックチェーン=P2P」という理解で問題ありません。

Hash(ハッシュ値、ハッシュ関数)

次に、Hashについてです。
マイニングにおいて重要な役割を果たしていたHashも、実は、ブロックチェーン特有の技術ではなく、ブロックチェーン以前から存在していた暗号技術を転用したものです。

ブロックチェーンでは一つ前のブロックをHash化したHash値を次のブロックに渡し、それを織り込んでブロックを作成します。
Hashは少しでも入力値が変わると全く異なる出力となるという特徴があります。

また、その他に出力値の長さが入力に関わらず一定であること、出力から入力を類推できないという特徴があります。

まとまると次のような特徴があり、ブロックチェーンのメリットにつながります。

公開鍵暗号方式

最後は、公開鍵暗号方式についてです。

公開鍵暗号方式とは、「暗号化と復号(暗号から元のデータに戻すこと)に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開できるようにした暗号方式」のことで、次のような「鍵の配送問題」に対する解決策の一つとして、企業のセキュリティなどで用いられているものです。

  • 暗号は通信の秘匿性を高めるための手段だが、それに必須の鍵もまた情報なので、鍵を受け渡す過程で盗聴されてしまうというリスクが存在する
  • 共通鍵を秘匿して受け渡すには(特使が運搬するというような)コストもかかり、一般人が暗号を用いるための障害が存在する

具体的な仕組みについては、『Udemyメディア』の「公開鍵暗号方式とは?初心者でもわかる公開鍵暗号方式の基礎」という記事が非常にわかりやすく解説していたため、下記、そちらを引用します。

「公開鍵暗号方式では2つの鍵を利用してデータのやり取りを行います。

2つの鍵とは受信者が作成する「公開鍵」と「秘密鍵」です。
公開鍵は誰でも簡単に入手できる公開された鍵ですが、秘密鍵は1つしかない大切な鍵です。

それでは2つの鍵を使ったデータの送信を見てみましょう。

公開鍵暗号方式の仕組み

1. 受信者が秘密鍵を使って公開鍵を作成する
2. 送信者は受信者の公開鍵を取得する
3. 平文(暗号化したい文)を送信者が公開鍵を使い暗号化し送付する
4. 受信者が暗号文を受け取る。
5. 受信者は暗号文を秘密鍵で平文に復号化する

このように、受信者(秘密鍵を持っている人)のみが暗号を解くことができる仕組みになっています。
秘密鍵は受信者が大切に保管し、公開鍵は誰でも取得できる場所に公開されています。」

ブロックチェーンでは、取引データをトランザクション化する際に、この公開鍵暗号方式が利用されています。
具体的には、自分のもつ秘密鍵でトランザクションに署名をすることで、データの安全性を高めています。

ブロックチェーンの種類

ここまで、わかりやすさのために「ブロックチェーン」と一言でまとめて解説してきました。
しかし、実際には、ブロックチェーンは「管理者の在・不在」を軸に、複数の種類に分けることができます。

ブロックチェーンは、その種類によって、特徴やコンセンサスアルゴリズム、実際の導入時に考えるべき点など、あらゆることが大きく変わってきてしまいます。
そのため、プロジェクト時に「それ聞いたことがある」という程度には、用語に慣れ親しんでおく必要があるでしょう。

なお、ブロックチェーンの種類について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると以下のように分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

ノードの参加者が限定されているPermission型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。

代表的なブロックチェーンの種類

前述の分類に従い、頻出するブロックチェーンをマッピングしたものが次の図です。

企業向けの開発では中央集権によっているQuorum(Ethereumから派生)かHyperLedger Fabricを利用します。

【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!

ブロックチェーンは「分散型台帳」とも呼ばれるビットコインの中核技術です。P2Pネットワークで繋がった世界中のノード間で瞬時に、安全に、データ共有ができます。どんな仕組みなのでしょうか?ビジネスパーソン向けに、難解な用語をほぐして解説します!

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年ニュースを騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)
(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

なお、ブロックチェーンの技術について詳しくお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
ブロックチェーンは技術の組み合わせ?〜P2P・Hash・公開鍵暗号〜

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。
ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。
後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

従来のデータベースの特徴

各主体がバラバラな構造のDBを持つ
それぞれのDBは独立して存在する
相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。
その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。
まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンの仕組み(1):基本構造

ブロックチェーンをシンプルに図解すると、次のような構造をしています。

上図からもわかるように、ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています。
では、「ブロック」や「チェーン」とは、どういう意味でしょうか?

ブロックチェーンの基本構造①:「ブロック」

ブロックチェーンでは、一定量に取りまとめられた取引データを「Tx(Transaction、トランザクション)」と呼んでいます。
「ブロック」とは、このトランザクションを1MB分だけ集めてきて、日付などのメタ情報を付与して、ひとまとまりにしたものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

ブロックチェーンの基本構造②:「チェーン」

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています(これらの用語やルールに関しては、後ほど解説します)。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられているので、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

なお、こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

稀にチェーン型でないブロックチェーンというものもありますが、それらは分散型台帳であるもののブロックチェーン構造ではないので、厳密には区別されます(例えばIOTAで有名な「タングル」構造など)。

ブロックチェーンの仕組み(2):データの共有方法

先ほどの説明で、ブロックチェーンの基本構造が、

  • ブロック①
    • 複数のトランザクション
      • 一つのブロック内に、1MBのトランザクションを記録
    • メタ情報
      • (前のブロックの)ハッシュ値
      • ナンス
      • ターゲット
      • タイムスタンプ
  • ブロック②
    • 複数のトランザクション
    • ・・・
  • ブロック③
    • ・・・

というように、取引データをたくさん詰め込んだブロックが、メタ情報によってチェーンのように繋がれていることがわかりました。

では、ブロックおよびブロック内の取引データは、参加者に対してどのように共有されていくのでしょうか?
また、ブロックは、いつ、誰が、どのようにつくっているのでしょうか?

まずは、ブロック生成の前提となるデータ共有の考え方からみていきましょう。

ブロックチェーンのデータ共有方法①:「ノード」によるブロックの生成と伝播

ブロックチェーンでのデータ共有において重要な役割を持っているのが「ノード」と呼ばれる個々のネットワーク参加者です。

すでに述べた通り、ブロックチェーンは、従来のデータベースとは異なり中央管理者が不在のため、データの管理や共有はすべて参加者だけで行う必要があります。
この参加者のことを「ノード」と呼び、世界中に散らばるノードが競争した結果、競争に勝利した一つのノードによって、絶えず新しいブロックが生成されていきます(ビットコインでは平均10分に1つのペースで新しいブロックが生成されるように設計されています)。

また、各ノードは、P2Pネットワーク内の他のノードの一部と繋げられており、あるノードでつくられた新しいブロックの情報は、そのノードと繋がっている他のノードにすぐさま伝播します
そして、この「ブロックの伝播」を繰り返していくことで、ブロックおよびブロックに含まれる取引データが、瞬く間に世界中の参加者へと共有される(=データが同期される)のです。

このように、ブロックチェーンでは、P2Pネットワークの参加者自身がブロックの生成やデータの共有(=ブロックの伝播)を行なうことで、分散型のデータベースが高い精度で実現されています。

ブロックチェーンのデータ共有方法②:ノードによるブロック生成・伝播の問題点と解決策(コンセンサスアルゴリズム)

今みたように、ノードによるブロック生成・伝播の仕組みによって、世界中のノードがほぼ同時に、同じ内容のデータをもつことができるようになりました。
そして、多数のノードがデータを持ち合うことで、データの改竄や捏造が難しくなりました。

しかし、この方法は、あくまで「ブロック化された元のデータ内容が正しいこと」を前提としています。
ブロックチェーンの世界には第三者としての中央管理者がいません。
従って、もし、ブロックをつくった人間に悪意があった場合、その人間を管理できる存在がいないため、世界中の人が間違ったデータを同時に持ってしまうことになります。
つまり、P2Pネットワーク参加者のみで行うデータ共有の仕組みでは、「管理者不在の中、どうやってデータの真正性を担保するか?」という問題を解決する必要があるのです。

そこで、考え出されたのが、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる、ネットワーク内での合意形成の方法です。
ブロックチェーンでは、個々のネットワークごとに、「複数それっぽいブロックが出てきた時にどれを選ぶか?」という論点に対する合意方法が、コンセンサスアルゴリズムという形で事前に決められているのです

(出典:pixabay

例えば、代表的なところでは、ビットコインのPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)あたりが有名です。

ブロックチェーンの仕組み(3):コンセンサスアルゴリズム

コンセンサスアルゴリズムの2つの役割

一般に、コンセンサスアルゴリズムには、次の2つの役割があります。

  1. ネットワーク内の発言権を誰に持たせるかを決める(=一定の条件を満たすノードにブロック生成を認める)
  2. 複数の発言者がいる場合に、誰の発言が最も有力かを決める(=2つ以上の異なるブロックが同時に生成されたとき、どのブロックが正しいかについての合意を形成する)

身近な例えで考えてみましょう。
例えば、高校の文化祭で模擬店のメニューを何にするかを決めなくてはいけないとします。

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文化祭に関しては、生徒の自主性を重んじて先生(=中央管理者)は口を出さないことになっているため、異なる意見をもった生徒間で話し合って合意を得なければなりません。
模擬店は、クラス全員から出資金を集めて運用することになっているので、みんな必死です。
また、クラス全体についての決めごとなので、クラス全員、誰でも自由に発言できるようになっています。

こういった状況で「メニューを何にするか」、言い換えれば「誰の意見が正しいか」をスムーズに決めるにはどうしたら良いでしょうか?

コンセンサスアルゴリズムの役割①:「発言権の制限」

まず、一つ目の問題として考えられるのが、大勢が口々に出した様々な意見がすべて正式な発言として認められてしまうと、全く収集がつかなくなってしまうということです。
実は、これはブロックチェーンに限らず、中央管理者のいないP2Pネットワーク全般で起こりがちな問題でもあります。

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そこで登場するのが、コンセンサスアルゴリズムの一つ目の役割である「発言権の制限」です。
基本的には誰でも発言できるものの、それが発言として正式に認められるために何かしらの努力や条件が必要だとしたら、どうでしょう?
今回の例で言えば、「文化祭の準備期間にどれだけクラスに貢献したか」で決めるとしたら、おそらく、正式に認められる発言の量は減ってくるはずです(「お前何もやってないくせに意見すんなよ」「うっ・・・」というイメージです)。
あるいは逆に、模擬店での発言権を獲得するために文化祭の準備を頑張る人が増えるかもしれませんが、そこには健全な競争が生まれますよね。

こうした発言権の制限、ブロックチェーンの文脈で具体的に言えば「ブロックの生成条件の設定」によって、いたずらや悪意によって誤ったブロックをつくろうとするノードをある程度排除することができます
(ちなみに上記の「働きの量と発言力が相関する」というルールは、後ほど説明するビットコインのコンセンサスアルゴリズム、PoW(Proof of Work)でも用いられている原理の一つです)

コンセンサスアルゴリズムの役割②:「有力な発言の選択(方法の設定)」

次に、二つ目の問題として考えられるのが、ある程度発言が絞られたはいいけれど、それでも複数の正式な発言が残っている場合、最終的にどの意見を採用するのかという問題です。
実際に、ブロックチェーンネットワークにおいても、異なる複数のブロックが同時に生成され、それによってチェーンが複数に枝分かれしてしまう「フォーク」と呼ばれる現象が起こります。
フォークが起こってしまうと、複数のブロックのうちどれが「正統」なのかをネットワーク参加者が判断できなくなり、データ自体の真正性が疑われてしまいます。

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こうした「複数の発言が並立する問題」に対して、パッと思いつくわかりやすい解決策としては、「投票による多数決」があげられるでしょうか。
あるいは、事前に「クラス委員」を決めておいて、意見が割れた場合にはクラス委員の一存で決めるという方法もあり得るでしょう。
いずれにせよ、このように「複数の発言(=ブロック)が並立している場合に何かしらのルールで決着をつける」のが、コンセンサスアルゴリズムの二つ目の役割です。

コンセンサスアルゴリズムの留意点

ただし、すべてのコンセンサスアルゴリズムがこれら両方の役割を担っているわけではありません。
あくまで、コンセンサスアルゴリズムは、そのネットワーク内での合意形成に必要な役割だけを担うことになります。

例えば、先ほどのクラスの例で言えば、実際には、2つ目の役割、例えば「クラス委員による決定」のみで十分かもしれません。
これは、高校のクラスが、①全員がお互いに素性を知っている閉じられたネットワークであること、②せいぜい数十名の規模であるために全体の総発言量や意見の食い違いが少なく済むこと、という合意形成に有利な特定の条件をもつネットワークだからです。

実際に、ブロックチェーンの世界でも、後ほど紹介する「コンソーシアム型」あるいは「プライベート型」と呼ばれるネットワークは、高校のクラスに近い特性をもっています。
したがって、そのコンセンサスアルゴリズムには、PoA(Proof of Authorioty)と呼ばれる、権威を認められた一部のノードがブロックを承認するルールが採用されています。

このように、ブロックチェーンネットワークでは、そのネットワークの特性に合った形で、データの真正性を担保するためのコンセンサスアルゴリズムが個別に定められています。

なお、ブロックチェーンの種類について詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

ビットコインのコンセンサスアルゴリズム:PoW(Proof of Work)

では、具体的に、コンセンサスアルゴリズムはどのようにして「データの真正性問題」を解決しているのでしょうか?
本記事はビットコインを前提に執筆しているため、ここでは、代表例としてPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)の説明を行います。

先ほどみた、コンセンサスアルゴリズムの2つの役割からみると、PoWは次の2つの原理によって成り立っています。

PoWの原理①(1つ目の役割:ブロックの生成条件)=「メタ情報に関する計算に成功するとブロックを生成できる」
PoWの原理②(2つ目の役割:フォークへの対応)=「複数のブロックが生成された場合、最も長いチェーンを正統とし、その中に含まれるブロックを正しいと認める」…”ナカモト・コンセンサス”

それぞれ、順にみていきましょう。

PoWの原理①:ブロックの生成条件としての「マイニング」

まず、1つ目の原理として、PoWでは、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(ハッシュ、ナンス、ターゲット)を用いた計算作業をノードに課しています
計算作業とは、具体的に、「ブロックのバイトにnonceを加えたものをHash化した値が、特定のターゲット値以下になるようなnonceを見つける作業」のことです(この計算の原理については、「ブロックチェーンの生成過程」の項目で詳しく解説しますので、ここでは「ふーん、とにかく何かしらの計算をコンピュータにやらせるんだね」と理解してください)。

(出典:pixabay

この「ある数字(nonce)を見つけ出す」計算に成功するためには、「マイニング(英:mining)」という名称からもわかるように、まるで巨大な鉱山からわずかな鉱石を採掘するかのごとく、途方もないレベルの膨大な作業量が必要になります。
そのため、一つのブロックを生成するために、ノードは、コンピュータに大量の計算を行わせるための大きなコスト(電気代)を支払わなければなりません
PoWでは、誰でもブロック生成に参加できるものの、この計算量とそれにかかるコストの大きさが制約条件となって、ブロック生成に参加するノード(マイニングをするノードなので、「マイナー」と呼ばれます)の数を制限することに成功しています。

PoWの原理②:フォークへの対応策としての「ナカモト・コンセンサス」

次に、2つ目の原理として、PoWでは、フォークによって複数のチェーンが生まれた場合、最も長いチェーンに含まれるブロックを正統と認めるルールを設けています。
これは、コンセンサスアルゴリズムであるPoWの中でも特に、「ナカモト・コンセンサス」と呼ばれるルールです。
(ビットコインの発明者が「サトシ・ナカモト」と呼ばれる謎の人物であることを思い出してください)

(出典:pixabay

すでに説明した通り、一つのブロックは、ある一定量(1MB)のトランザクションをひとまとめにして生成されています。
このトランザクションは、「トランザクションプール」と呼ばれるトランザクションの集積場所から、ブロックの生成を試みる各マイナーの任意で抽出されてきます。
そのため、「ある新しくつくられたブロックにどんなトランザクションが含まれているか」は、ネットワーク側からは指定されておらず、その時々に、個々のブロック生成者が決めることになります。
したがって、例えば、2020年の元日の正午に、A,B,Cという3つのマイナーがそれぞれにマイニング(計算)を行い、ブロック生成に成功したとすると、各マイナーが新しくつくったブロックA、ブロックB、ブロックCには、それぞれ異なったトランザクションが含まれている可能性があるわけです。

さて、マイナーにより生成されたブロックは、次に、他のノードへと伝播されます。
ブロックの伝播は、A→D,E,F、B→G,H,I、C→J,K,L、D→M,N,O、E→P,Q,R・・・といった具合に、各マイナーとP2Pネットワークで繋がっている隣接ノードへと、そしてその隣接ノードとさらに隣接しているノードへと、それぞれのネットワーク経路にしたがって順に行われていきます。

しかし、ここで、困った問題が生じます。
この時点では、例えばAの隣接ノードであるDと、Bの隣接ノードであるGでは、持っている最新のブロック情報(つまりデータ内容)が異なってしまうのです。
この結果、下図のように、異なるブロックを持った複数のチェーン分岐が発生してしまうことになります。

これが、「フォーク」と呼ばれる問題です。

そこで、フォークを解消するために、ブロックA,B,Cのうち、どのブロックが正しいかを決める必要が生じます。
しかし、PoWの原理①では、この問題を解決することができません。
なぜなら、A,B,Cの3名とも、ブロック生成に必要な計算を無事に終えているからです。

この問題に対して、ナカモト・コンセンサスでは、ブロックの伝播にかかる時間のタイムラグと、10分に1つの新しいブロックが生成されていくというビットコインの設計を利用して、ブロックの中身に優劣をつけるのではなく、「結果として最も長いチェーンを形成したブロックが正しい」という原理が採用されました(上図では、青い背景色のチェーンとブロックが正統と認められます)。

以下で、実際にマイナーがブロックを作成し、最長のチェーンが切り替わる様子を見てみましょう。

まず、東京とサンフランシスコでマイナーが異なるブロックを作成し、世界に伝播させます。
この際のタイミングは同時ですが、伝播するにはネットワークを通じるのでタイムラグが生じます。

カイロに先にサンフランシスコのブロックが到着しました。
東京のブロックは傍流になります。

しかし、ここで、東京のブロックが先に届いたモスクワが発見したブロックが新たに伝播されてきます。

モスクワのブロックがカイロに届くと、もともと傍流であったチェーンが最長になり、本流となります。

このように、ビットコインネットワークでは、

  1. 大きなコストのかかる膨大な計算(マイニング)を完了したノードだけがブロックを生成できる
  2. 同時期に複数のブロックが生成された場合(フォーク)は、時間の経過によって最長となったチェーンに含まれるブロックを正統なデータとして認める(=ナカモト・コンセンサス)

という2つのルール(PoW)、平たくまとめると「計算のスピード競争に勝ったマイナーが正統」とする原理によって、全世界のP2Pネットワーク上で正しいデータをリアルタイムに共有することを実現しました。

ちなみに、こうしたルールが現実に効果を発揮するために、ビットコインでは、マイナーに対する経済的インセンティブ(報酬)が用意されています。

先ほど説明した通り、マイニングを行うために、マイナーは高性能なコンピュータを用意し、電気代をかけて計算を行い続けなければなりません。
これは、マイナーにとってのコストになるため、このままでは、誰もブロックをつくろうという気にはなりません。

そこで、彼らへのインセンティブとして、新たなブロックを見つけて一番最初に伝播させたマイナーには採掘の報酬と、トランザクションに含まれる手数料の合計が振り込まれるというインセンティブが用意されています。

この「採掘報酬+手数料」というわかりやすいインセンティブをめぐって、マイナー達が我先にと計算競争を繰り広げるようになることで、PoWがうまく効果を発揮し、ブロックチェーンネットワークにおけるリアルタイムでのデータ共有が実現されているのです。

ブロックチェーンの仕組み(3):ブロックの生成過程

取引〜ブロック生成〜データ共有の流れ

ブロックチェーンは、ある取引のデータをブロック内に格納し、ネットワーク内の全ノードにリアルタイム共有する仕組みでした。
この仕組みは、次の一連の作業によって実現されます(この章でも、ビットコインを前提に説明します)。

  1. 取引が行われる
  2. 取引データに鍵がかけられ、トランザクションプールに貯められる
  3. マイナーが、トランザクションプールの中から一定量のトランザクション(1MB)を取り出し、データを検証する
  4. マイナーがPoWで定められた計算を行い、取り出したトランザクション群にメタ情報を付加して、ブロックを生成する(=マイニング)
    1. メタ情報①:一つ前のブロックのハッシュ値(Hash)
    2. メタ情報②:ナンス(nonce)
    3. メタ情報③:タイムスタンプ(ブロック生成の日時)
    4. メタ情報④:ターゲット
  5. マイナーが他の隣接ノードにブロックを伝播する
  6. ブロック情報を受け取ったノードが、そのブロックの正しさを検証する
    1. 届いたブロックを再度ハッシュ化し、ハッシュ値<ターゲットとなればOK
  7. 検証したノードが、さらに繋がっている他の隣接ノードにブロックを伝播する
  8. 以下、6~7を繰り返す

まず、1は問題ないでしょう。

次に2は、取引データをトランザクション化する際に、後ほど紹介する「公開鍵暗号方式」と呼ばれる暗号化技術を用いて、そのデータ自体が改竄・喪失されないように保護するための作業です。

3は、マイニングの前に、トランザクション自体が「ちゃんとフォーマット通りかどうか」「ミスや不正がないか」といった検証を行う作業です。
データ分析の世界で言うところの「データの前処理」に近い工程と言えます。
また、身近な例で言えば、郵便物の配送前に、切手の値段や貼る位置、差出人の有無などが正しいかどうかをチェックしているのとも似ています。

4のマイニングは、次の項目で詳しく解説します。

5は、先ほどの章で説明した通りですが、実際には、ブロックの伝播時には6の工程も合わせて行われます。
6は、4のマイニングでなされた計算が合っているかを検証する、つまり「検算」のための作業です。
この作業は、ただの答え合わせなので、マイニングとは異なり、大きな計算量やそれに見合うコストは必要ありません。

最後に、7で、検算が終わったブロックをさらに他のノードに伝播し、以降、全員に伝播されるまで6〜7の工程が繰り返されます(8)。

マイニングの仕組み

前章でもみたように、ビットコインのコンセンサスアルゴリズム(PoW)では、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(ハッシュ、ナンス、ターゲット)を用いた計算作業をノードに課しています。
この計算作業とは、具体的に、「ブロックのバイトにnonceを加えたものをHash化した値が、特定のターゲット値以下になるようなnonceを見つける作業」のことです。

どういうことか、順に、詳しくみていきましょう。

マイニングで用いられるメタ情報①:Hash

改めて、マイニングに用いられるメタ情報は、次の3つです。

  • Hash(ハッシュ、ハッシュ値)
  • nonce(ナンス)
  • Target(ターゲット)

Hashとは「一連の取引データが、ハッシュ関数と呼ばれる暗号化技術によって、文字列化された値」であり、このHashをつくる作業をハッシュ化と呼びます。

ブロックチェーンの仕組みでは、あるブロック(A)内に格納された諸データ(トランザクション+メタ情報)がハッシュ化され、そこでつくられたHashが次のブロック(B)のメタ情報の一つとして格納されます。

そして、そのブロック(B)内に格納された諸データがハッシュ化され、そのHashがまた次のブロック(C)に格納され、・・・といったことを繰り返していきます。
こうして、前後のブロックがHashによってチェーン状に繋げられているために、その仕組み全体をブロックチェーンと呼ぶのでした(こうしたHashによる繋がりを「ハッシュチェーン」と呼ぶこともあります)。

マイニングで用いられるメタ情報②:nonce・Targetとハッシュ化

さて、ビットコインにおけるマイニングでは、このHashと、ブロックごとに予め定められている「Target」という特定の値をもとに、「nonce」と呼ばれる未知数を求める計算を行います
具体的には、「あるブロックをまとめた情報(バイト)にnonce(未知数)を加えたものをハッシュ化した値(Hash)が、特定のTarget(値)以下になるようなnonceを見つける作業」がProof of Workです。

実際には、例えば、次のような形の式を解くことになります。

「NotNonce」をブロックの情報そのものとすると、それにnonceの値を付加してHash関数を通します。

ここでは、nonceが5の時に条件を満たしたのでnonce=5としてブロックが生成されます(Hash値の先頭にある文字列が00であり、これは01から始まるTargetよりも小さな値であると言えます)。

nonceは一つの値とは限らないため、他の値で条件を満たすものがあった場合も、問題ありません。
そのため、条件を満たしてさえいれば良いので、運良くたままた早く見つかることもあれば全く見つからないこともあります。
したがって、ブロックの生成スピードは、マイナーによって異なります。

このように、ビットコインのPoWでは、マイナーはHash、nonce、Targetを用いた計算(マイニング)を行うことで、ブロックを生成することができます。

ちなみに、先ほど説明したブロック生成過程における一連の作業6「ブロック情報を受け取ったノードが、そのブロックの正しさを検証する」では、マイニングで見つけたnonceを加えた全てのブロック情報をハッシュ化し、それをTargetと比べることで検算を行います。
上の式では未知数だったnonceが明らかになった状態で、各値を代入して式の正しさをみるだけなので、計算自体は非常にシンプルです。
まさに、「検算」としての役割を果たしていることをおわかりいただけるかと思います。

マイニングの計算難易度とビットコイン供給量

マイニングの計算は、ブロックごとにTargetの値が変化し、基本的な傾向としては、徐々に計算難易度が上がっていく設計になっています。
計算難易度が上がる理由は、ビットコインが仮想通貨としての役割を果たすために、総発行ビットコイン数が決まっているからです。
(経済における通貨の話なのでここでは深く立ち入りませんが、大雑把には「インフレを避けたいから」と理解しておけば良いでしょう)

総発行数に上限を設けるために、ビットコインには、一定期間ごとに供給量を半分に減らす「半減期」と呼ばれる設計がなされています。

  • 1ブロック生成ごとに供給され、最初は50BTC
  • 4年に一度半減期を迎える。2020年5月12日に3度目の半減期を迎え、現在、6.25
  • BTC
  • 2140年以降、最小単位を下回るので供給が止まる
  • 最終的な発行数は21万BTC

そして、ビットコインでは、この半減期と通貨の総発行数を守るために、計算難易度の調整が行われています。

先の説明からおわかりのように、マイニング、つまりnonceを見つける難しさは、ターゲットになる値の小ささに依存します。

身近なものに例えるとすれば、マイニングの計算はディズニーの『シンデレラ』で、シンデレラの正体を突き止めるためにガラスの靴を国中の女性に履かせた、あの作業のようなものです。
ある女性がシンデレラと認められるかどうか(=ブロック生成を認められるかどうか)は、ガラスの靴のサイズ(=Targetの大きさ)に、その女性の足のサイズ(Hash)が適応できるかどうかで決まる、というわけです。

そして、そうした女性(nonce)を見つけるための作業の難易度は、当然、ガラスの靴のサイズによって異なります。
もし、靴のサイズが大きければ、その靴にあてはまるような女性はそれなりにいるでしょうし、小さくなればなるほど、該当者はどんどんと少なくなっていくでしょう。
そう考えると、シンデレラ姫は、相当に小さな足の持ち主だったのでしょうね。

これと同じように、ブロックチェーン(ビットコイン)のマイニングでも、Targetが小さいほど、計算難度が上がります。
具体的にはターゲットの値で0がたくさん並ぶほどnonceの発見は難しくなります

そしてTargetは、先ほど述べた発行数の上限と半減期の設計をもとに、ブロックの作成スピードから計算して自動で調整されます。

具体的には、2,016ブロックごとに、予想時間の20,160分以上かかっていれば難易度を下げ、20,160分以下なら難易度を上げます。
また、急激な変化をしないように、4倍または1/4の間に収まるようにする、というルールで運用されています。