ブロックチェーンのビジネス活用は非金融がアツい!事業化3つの視点とは?

国内67兆円の市場に影響を与えるブロックチェーンマーケット。ビジネス活用は、金融/非金融/ハイブリッドの3領域のうち、2020年は、特に、非金融領域が盛り上がっています。事業化で重要な3つの視点とは?最新事例と共に解説します!

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年、世間を騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)

(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

なお、ブロックチェーンの技術について詳しくお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。

ブロックチェーンは技術の組み合わせ?〜P2P・Hash・公開鍵暗号〜

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。

ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。

後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。

その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

ブロックチェーンのメリットデメリット.jpg

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンビジネス市場の現状(2020年6月現在)

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、金融領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

出所:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

経済産業省が平成27年度に発表したブロックチェーンに関する調査資料によると、ブロックチェーンは将来的に、国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています。

具体的には、大きく次の5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

  1. 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

1つ目は、「トークン」といった言葉に馴染みがあるかと思いますが、狭義でいえば、いわゆる「仮装通貨」の領域です。

これは、すでに世界的にも幅広くビジネス活用が実現されており、今後はさらに、地方自治体等の非営利セクターで活用されていくことが期待されます。

2つ目は、例えば「ハンコ」の代替など、権利の証明をブロックチェーンで行ってしまおうという試みで、産業レベルで言えば、ProppyやLIFULLなど、不動産領域での利活用がすでに進み始めています。

3つ目は、近年ビジネスで注目を集めている経済変革の潮流である「シェアリングエコノミー」の文脈におけるブロックチェーンの応用です。

インターネットの登場と技術進化によって、例えばカーシェアリングや民泊など、個人資産を共有することによる社会全体の価値増加が可能になってきました。

ブロックチェーンには、この流れをさらに加速するための課題である「権利移転の証明」「権利主体の評価」といった問題を解決し、「セキュアな所有権移転」を実現できる可能性があります。

4つ目は、製造業〜物流業〜卸売業〜小売業にいたる、サプライチェーン全体の効率化を進めようという考え方です。

特に、いわゆる「川上」である製造・物流業界では、IBMを中心に世界的な業界変革の動向がみられており、世界最大の海運コングロマリットであるデンマークのMAERSK(マースク)や世界最古の医薬品・化学品企業であるドイツのMerck(メルク)といった超大物企業が、ブロックチェーンを利用した大規模プラットフォームを構築しています。

5つ目は、「スマートコントラクト」と呼ばれる、取引プロセス全自動化による業務効率化の話です。

スマートコントラクトは、取引に必要なプロセスをブロックチェーン基盤上で行うことで、取引主体者が作業を行わなくとも自動的に取引が履行されるような仕組みのことを指します。

これにより、これまで一つの取引を成立させるためにかかっていた業務コストを大幅に削減することが可能になります。

このように、ブロックチェーンの技術的可能性が明らかにされるにつれ、金融だけに限らない、様々な領域でのビジネス活用が進むようになってきています。

しかし、国内市場の現状では、ブロックチェーンはまだまだその真価を発揮しているとは言い難く、企業の国際競争において、日本企業が取り残されてしまうリスクも大いにあります。

これは、67兆円という市場規模予測からもわかる通り、ブロックチェーンの影響範囲が非常に広く、技術に馴染みのない方には「結局どのようなビジネス活用が可能なのか?」が理解しにくいことが普及の課題となっているためです。

そこで、本記事では、ブロックチェーンのビジネス活用を理解するために、①金融/非金融/ハイブリッドの3領域に大きく分けた上で、②特に応用範囲が広く市場規模の大きな「非金融」を重点的に、事業化のコツとなる視点や実際の事例を紹介してまいります。

ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの事業領域

ブロックチェーンビジネスの事業領域は金融/非金融/ハイブリッドの3つに区分できる

 

ブロックチェーンビジネスは、基本的に、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に大別されます。

ここでいう「金融領域」とは、平たく言えば「Fintech」と言われる領域のことで、より正確には「暗号資産(=仮想通貨)を活用した領域」と考えてください。

「暗号資産(仮想通貨)」とは、例えばビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、インターネット上でやりとりできる財産的価値のことで、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。

(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる

(2)電子的に記録され、移転できる

(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

暗号資産は、かつては「仮想通貨」と呼ばれており、いまだにその呼称の方が馴染み深い方も多いでしょうが、2019年3月15日に暗号資産に関する法改正が閣議決定され、呼称の変更が行われました。

こうした暗号資産を用いたビジネスが、ブロックチェーンビジネス第一の領域です。

これに対して、暗号資産ではなく、データの対改竄性やP2Pネットワーク、スマートコントラクトなど、ブロックチェーンの技術そのものを応用した産業・業務変革も盛んに行われています。

こうした「非金融」なビジネスが、ブロックチェーンビジネス第二の領域です。

基本的には、これら2つの領域に分けられますが、少しややこしい問題として、「非金融ながら暗号資産を活用する」ハイブリッドな領域も存在しています。

例えば、「トークンエコノミー」と呼ばれるビジネスモデルでは、ネットワーク独自に発行された暗号資産、つまりトークンをビジネス上の通貨として利用していますが、その目的は、暗号資産の運用益そのものではなく、あくまでトークンを活用した経済圏の構築と経済圏内の取引の活性化にあります。

このように、ブロックチェーン×金融の結晶である暗号資産を用いながら、非金融領域の課題解決を目指すような「金融×非金融」のハイブリッドなビジネスが、ブロックチェーンビジネス第三の領域です。

次に、これら3つの領域について、それぞれのビジネス活用の方向性をみていきましょう。

ブロックチェーンの金融領域におけるビジネス活用

金融領域のブロックチェーンビジネスって、ビットコイン?それともICO?

ブロックチェーンビジネス第一の領域は、「金融領域」です。

先ほども説明した通り、金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)の利活用を目的としたビジネス領域と考えてください。

「Fintech」という用語に馴染みのある方も多いかと思いますが、必ずしも「ブロックチェーンの金融領域=Fintech」というわけではないため、注意が必要です(後に説明する「ハイブリッド領域」のビジネスを指して”Fintech”と呼ばれることもあります)。

この領域におけるビジネス活用として、まずはじめに思い浮かぶのは、暗号資産取引でしょう。

暗号資産取引は、ブロックチェーンの生みの親であるサトシ・ナカモトが提唱した「ビットコイン」を代表格に、イーサリアムやリップルなどの暗号通貨、つまりブロックチェーン技術を応用した法定通貨以外の新通貨の売買等を通して、キャピタルゲインを獲得することをインセンティブとしたビジネスです。

例えば、ビットコインでは、PoWというコンセンサスアルゴリズム(合意形成のルール)に基づいたマイニングと呼ばれるコンピュータの演算作業を通じてビットコインを報酬として獲得し、仮想通貨取引所を通じて他の投資家等に売却することで、利益を得ることができます。

(こうしたブロックチェーンネットワークの仕組みについて詳しく知りたい方は、「【ビジネスパーソン向け】ブロックチェーンの仕組みを20分で理解しよう!」を併せてご覧ください。)

また、新規事業立ち上げや経営企画などの職種に関わっている方であれば、「ICO」を思い浮かべられるかもしれません。

ICOとは、Initial Coin Offering(イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)の略で、企業が仮想通貨を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う方法のことです。

「クラウドセール」「トークンセール」「トークンオークション」とも呼ばれるこの方法は、IPO(Initial Public Offering、新規公開株)、いわゆる株式上場の問題点である審査の難度やコストの高さを解決する方法として、一時期、大きな注目を集めました。

しかし、投資に対するハードルの低さが災いし、ICOの仕組みを悪用した詐欺事件なども起こってしまったこともあり、近年では、一時期の勢いは見られないのが現状でしょう。

金融領域のブロックチェーンビジネスで関心が高まる、「STO」領域って?

先ほど見たように、金融領域におけるブロックチェーンのビジネス活用方法は、かつては暗号通貨取引やICOが主流でした。

しかし、最近のトレンドとしては、政府も関与する「STO」の領域に関心が高まってきています。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法です(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICOの問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が低いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

ブロックチェーンの非金融領域におけるビジネス活用

ブロックチェーンビジネス第二の領域は、「非金融領域」です。

非金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことで、台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

非金融領域のブロックチェーンビジネスが注目を集めている理由としては、①適用範囲が非常に広い(どの産業にも可能性がある)、②したがって適用領域の市場規模が大きくなる可能性が高い(政府予想では数十兆円規模)、③これまでに実現してこなかった産業レベルでのイノベーションが起こりうる可能性がある、といったところでしょうか。

門戸が広がったとは言え、まだまだ参加できるプレイヤーが限られている金融領域と比べて、非金融領域では、業務課題レベルからの解決が十分に可能なため、新規事業立ち上げや経営企画の方だけでなく、あらゆる職種の方にとって、この領域について理解しておくことは自社の役に立つかと思います。

非金融領域におけるブロックチェーンビジネスの事業化にあたっては、3つの視点に分けて考えるとわかりやすいでしょう。

すなわち、「直接化」「民主化」「自由化」の3つの視点です。

いずれも、取引における主体者同士の関わり方を構造的に捉えたもので、ブロックチェーン以前の取引が中央管理者からの一方向的な形であったのに対して、ブロックチェーンビジネスでは、非管理者のメリットが増す形に商流を変化させています。

これらの視点の詳細については、次の章で詳しく見ていくこととしましょう。

ブロックチェーンビジネスのハイブリッド領域におけるビジネス活用(非金融×暗号資産)

ブロックチェーンビジネス第三の領域は、「ハイブリッド領域」です。

ハイブリッド領域とは、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域です。

乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

わかりやすい例としては、いわゆる「トークンエコノミー」もこの領域のビジネスと考えられます。

上でも説明したように、トークンエコノミーは、例えば地方自治体など一定の経済圏や自社ネットワークをもつような法人が、その影響範囲内にトークンと呼ばれる仮想通貨決済システムを導入することで、その中でのビジネスを活発化しながら顧客を囲い込んでいこうという取り組みです。

この手の取り組みで、最も大手のところで言えば、MUFGコイン(発表当時の名称、現在はcoin)がこれに該当するでしょう。

しかし、こうしたトークンエコノミーに代表されるハイブリッド領域は、直感的にイメージがしやすく、美しいビジネスモデルも容易に描けてしまう(例えば「●●経済圏」といったワードは事業家として胸踊るものがある)一方で、実際にビジネスを推進する上での課題は多く、難度が非常に高くなるケースが多いため、事業化の際には十分な注意が必要です。

特に、ブロックチェーン開発企業との協業において、「サービス自体の売り上げよりも、決済に使う仮想通貨の値上がり益によって儲けましょう」という提案が行われる場合には注意した方が良いでしょう。

理由は、下記の通りです。

  • 新興基盤の多くは1年ももたずに消えていくため
  • いざサービス開発をしようという時に過去のユースケースが少ないのでバグやシステムトラブルが発生した時にエンジニアがお手上げになるケースが多いため
  • 仮想通貨の値上がり益がインセンティブになることから、事業課題の解決のためのインセンティブがおろそかになってしまい誇大広告や詐欺の温床になるケースが多いため

そのため、もしもあなたが大手企業の事業企画担当者として「トークンエコノミー」などのハイブリッド領域におけるブロックチェーンビジネスを検討しているのであれば、提案を受けた基盤の過去のケース数を確認することをおすすめします(GitHubなどで)。

また、この領域は資金決済法の適用を受けるので、事業企画においても繊細な配慮が必要な点について法務部門から「突っ込まれる」可能性が高いため、注意しておく必要があるでしょう。

非金融領域におけるブロックチェーンビジネス・事業化の3つの視点

先述した通り、非金融領域におけるブロックチェーンビジネスには、事業化にあたって抑えておくべき3つの視点があります。

  1. 「直接化・自動化」
  2. 「民主化・透明化」
  3. 「相対化・自由化」

これらはすべて、取引関係における中央管理者とどのような関係を組むか、という問いに対する視点です。

それぞれ、順にみていきましょう。

非金融ブロックチェーンビジネス・事業化の視点①:「直接化・自動化」

事業化のロジック

ブロックチェーンをビジネス活用する上で重要な「事業化の視点」、その一つ目は、「直接化・自動化」です。

これは、上図の通り、取引のプロセスを合理化することによって、いわゆる「取引コスト」を削減しようという視点です。

あらゆる産業のあらゆる取引にはヒト・モノ・カネ・情報の流通プロセスがあり、そのプロセス内では、取引の主体者や取引自体の信用を担保するための付随業務が至るところで発生しています。

また、それらの業務を適切に遂行し、取引を無事に遂行する上では、「信用に値する第三者」を経由するのが常套手段です。

身近なわかりやすい例で言えば、銀行がその最たるものでしょう。

カネ、つまり信用そのものの流通を取り扱うために、私たちは中央銀行(日本であれば日本銀行)をはじめとした「信用に値する」中央管理者に第三者委託し、銀行が取引にかかる業務を代理履行してくれることで、スムーズな取引が可能になっているのです。

しかし、その一方で、第三者を介することは、中央管理者による規制や圧迫、中間マージンによるコスト高、商流の延長によるリードタイムの間延びなど、様々な取引コストの発生を意味します。

また、取引に付随する業務を履行することそのものにも、大きな人件費がかかってきます。

この問題に対して、「分散型台帳」技術とも言われるブロックチェーンでは、その仕組み上、ネットワークの参加者が個人レベルで(Peer to Peerで)、信用を担保しながら、安全に取引を行うことができます

また、スマートコントラクトと呼ばれる仕組みによって、ブロックチェーンの基盤上で定型業務の履行を自動的に行うこともでき、これまで管理業務に費やされてきた膨大な時間や人件費を削減することもできます

ビジネス活用のアイデアとしては、例えば、次のようなイメージです。

  • 参加者個人同士のシェアリングサービスにおける管理業務を合理化する
  • トレーサビリティを第三者認証なしで実現する
  • 社長がいない株式会社

このように、取引を主体者同士で直接行なったり、取引そのものを自動的に履行させる仕組みをつくったりすることで、商流にかかわる取引コストを大幅に削減しようというのが、「直接化・自動化」の視点です。

ビジネスケース①-A:自律分散型図書館DAOLIB構想

ブロックチェーンによる「直接化」の面白い例の一つに、「自律分散型図書館DAOLIB」と呼ばれる次世代型図書館の構想があります。

これは、利用者と管理者を分け、図書データを中央集権的に管理している既存の図書館に対して、利用者と管理者を同一にし、中央管理者としての図書館の役割をなくしてしまおうという試みです。

多くの方は、過去に友人同士で本の貸し借りをしたことがあるでしょう。

そうした貸し借りは、「友人」という信用関係が成り立っており、かつ、規模が小さく管理の必要性がほとんどないために可能になっています。

しかし、この貸し借りを知らない人との間でやろうとすれば、友人との間のようにはうまくいきません。

例えば、よくある話として、「あれ、あの本誰に貸したっけ?」というように、紛失のリスクを始めとして、本自体の管理に始まり、いつ誰と誰が貸し借りをしたのか、といった経路も記録する必要が出てきます。

そこで、ブロックチェーンの登場です。

「分散型台帳」とも呼ばれるブロックチェーンは、暗号資産の管理手法としてつくられた経緯からもわかるように、本来、データの管理に非常に長けている技術です。

自律分散型図書館DAOLIB構想がうまくいけば、分散型データ管理手法であるブロックチェーンの特徴がうまく生かされることで、本の貸し手と借り手のやり取りを「直接化」することが可能になるでしょう。

ビジネスケース①-B:Workday Credentials

続いて、ブロックチェーンによるビジネスの「自動化」の例をあげましょう。

代表格は、人事クラウド大手のWorkdayによる、ブロックチェーン技術を用いて資格や職歴などの発行、確認を行うプラットフォームである、「Workday Credentials」です。

人事・総務経験者であれば誰しもうなずくことかと思いますが、転職マーケットにおいて、採用する側の労力以上に煩わしいのが、前職側の人事業務でしょう。

Workday Credentialsでは、従業員の職務経験やスキルなどの証明を発行することで、前職の人事部からするともっともやりたくない在職証明などの業務、採用/応募時の確認作業を大幅に合理化できます。

そして、このサービスの背後にあるのが、ブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンは、「データの過去履歴を追うこと」や「データの対改竄性」に優れているため、企業の在職証明であったり、あるいは高等教育機関の学位証明などに幅広く応用されています。

また、スマートコントラクトによる定型取引の自動履行も可能なので、例えば上記の人事業務のような、これまでは信用担保のために人手を必要としていた「コストセンター」と位置付けられる業務を、「自動化」することが可能になります。

「自動化」と聞けば、つい「AI」「RPA」といったテーマを想像しがちですが、実は、こうしたデータの真贋が問われるような局面の自動化であれば、ブロックチェーンに分があると言えるでしょう。

非金融ブロックチェーンビジネス・事業化の視点②:「民主化・透明化」

事業化のロジック

ブロックチェーンをビジネス活用する上で重要な「事業化の視点」、その二つ目は、「民主化・透明化」です。

これは、上図の通り、従来は管理者あるいはプラットフォームから参加者への一方向な上意下達だったコミュニケーションを、管理者に一方的に有利にならないように双方向化しよう、という視点です。

これは、不透明になりがちなコミュニティー運営、例えば、寄付、投票、投げ銭などの透明化、といった双方向性をイメージするとわかりやすいでしょう。

ただ、これらについては、具体的に説明したほうがより理解しやすいかと思うので、早速、ケースをみていきましょう。

ビジネスケース②-A:医療用品の寄付の追跡

   

出典(画像左):「中国で医療用品寄付向けブロックチェーンポータル公開 新型コロナウイルス対策【ニュース】」(コインテレグラフジャパン)

読者のみなさんは、どこかの団体に寄付をしたことがあるでしょうか?

あるいは、街頭に立って募金を呼びかけている団体に、迷いなくお金を募金したことがあるでしょうか?

これらの問いに対しては、様々な立場からの様々な意見があることかと思いますが、その中の大きな論点の一つに、「お金を募金したはいいけど、本当にこの団体が慈善活動にちゃんと使ってくれるか怪しい」「下手な使い方をされるくらいであれば募金しないほうがいいのではないか」といったものがあります。

要は、「寄付や募金の運用管理者に対する信用」の問題です。

この問題は、寄付や募金を活動資金源としているNPO法人などにとっては、ファンドレイジングをする上で非常に大きく、やっかいな課題です。

他方、寄付や募金をする側からしてみても、詐欺団体ではなく、できる限り信用できて、ちゃんとした使い道をしてくれると思える団体を支援したいもの。

こうした課題を解決する手段として、近年、ブロックチェーン技術の応用が進められています。

ブロックチェーンは、全取引の記録を、改竄も消去もされることなく追跡できるという特徴をもっており、その高いトレーサビリティーが、例えば今回のケースの「コロナウィルス対策のための医療用品寄付」のような、公共性が高く、情報の非対称性によるリスクが極めて高い問題に、見事にマッチしているのです。

このような、ビジネス(あるいはそれに類似した事業)の「透明性」を担保する動きは、今後、ますます増えていくと考えられます。

そうした課題感をもっている場合には、ブロックチェーンのビジネス活用を検討することをお勧めします。

ビジネスケース②-B:Socios.com(サッカーファントークン)

  

ブロックチェーンの「民主化」の事例として有名なのが、Socios.com(サッカーファントークン)です。

ファントークンで「チームの決定」に投票可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

近年、インターネットの登場、余暇時間の増長、価値観の多様化の進展、可処分所得の増加など、様々な社会・経済的要因を背景に、消費者は「ただつくられた商品を購入して、消費して、終わり」ではなく、「自分の価値観にあったより長く、より深く愛せるもの」に対して、大きなお金を払うようになってきました

そのため、ビジネス界では、特にtoCサービスをもつビジネスでは、従来の「顧客視点」のマーケティングからさらに一歩進んで、「顧客=身内」と考えるコミュニティマーケティングとでも呼ぶべき、ファンビジネスのマーケットが伸長しています。

例えば、最近の世界的ブームであるクラフトビール。

その火付け役でもあるBrew Dog社では、顧客に自社株を買ってもらい、そのまま自社運営にかかわってもらう(「パンク株」)という試みをしたことでも話題になりました。

これはまさに、従来の「会社vs顧客」という対立構造から、「会社=顧客」へと変化を遂げていることの表れでしょう。

今回紹介しているSocios.comでも、そうした「ファンによるコミュニティの民主化」を進め、「ファン=応援する人」ではなく、「ファン=チームと一緒になって経営する人」として巻き込むことで、より長く、より深く愛せるサッカーチームになることを目指します。

ブロックチェーンは、ここで課題となりやすい「意思決定に対する投票」の問題を、すでにこれまで述べた特徴をもって、見事に解決していると言えるでしょう。

非金融ブロックチェーンビジネス・事業化の視点③:「相対化・自由化」

事業化のロジック

ブロックチェーンをビジネス活用する上で重要な「事業化の視点」、その三つ目は、「相対化・自由化」です。

これは、平たく言えば、「データの囲い込み」をなくして、みんなで利用していきましょうね、という視点です。

これまでは、同じ業界でも、各社が異なるデータベースを用意し、それぞれの顧客に対してそれぞれ別の形でデータを保有していました。

そのため、データを共有してさえいれば確保できるはずの利用者の自由度が、大きく下がってしまうケースが少なくありません。

例えば複数のサービスを使おうと思ったら、その度にログインIDとパスワードを入れなくてはいけなくなり、「あれ?パスワードなんだっけ・・・」といったことも珍しくないのではないでしょうか。

また、法人としてみても、同じ業界で、同じ資産を使っている間柄なのに、各社がそれぞれに同じようなデータを集める無駄な競争を行なっていたり、パワーの強い一社がデータを独占してしまって他社がどうにもならない(結果、業界としての進歩が望めない)ということが日常的に起こっています。

これに対して、ブロックチェーンでは、各社がそれぞれにサーバーをもつのではなく、一つのネットワークを共有することで、デジタル資産を安全に共有することができます。

これによって、まず、消費者側の受けられる恩恵が増します。

例えば、IDを他サービスに持っていって認証の手間を省ける、自分が著作権を有するコンテンツを自由にいろいろなプラットフォームで売れる、といったようなイメージです。

また、企業としても、同業他社が安全にデータを共有し合えることで、あるいは川上と川下がスムーズに繋がることで、独占によるメリット以上に大きなリターンが得られるケースも少なくありません。

「シェアリングエコノミー」「限界費用ゼロ社会」に向かっていくと言われる現代の社会において、こうした「相対化・自由化」の流れはますます高まっていくでしょう。

ビジネスケース③-A:メディカルチェーン

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の一つ目の例は、「メディカルチェーン」です。

これは、かれこれ20年ほど叫ばれ続けていた医療のデジタル化、特に電子カルテを始めとする院内データの共通化の問題を、ブロックチェーンで巧みに解決しようという試みです。

医療データは、個人情報の中でも特に秘匿性が高く、セキュリティ要件が最も高く求められます。

そして、医療機関ごとのデータ保存形式も異なるため、それらを共有していくハードルは非常に高いものになります。

メディカルチェーンでは、この問題に対して、各医療機関のデータを一つのブロックチェーン基盤上に乗せることを目指しています。

また、ビジネスモデルとしては、トークンエコノミーを採用し、トークンからの収益と医療機関からの収益を主治医や患者に還元することで、この仕組みがうまく回るように設計されています。

ビジネスケース③-B:国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の二つ目の例は、国連による「難民・ホームレス等向けIDサービス」です。

これは、難民が、国連から付与されるIDカードなしにサービスを利用できるようにするための仕組みで、生体認証データをもとに国連が本人確認を行なった上で、その認証IDをブロックチェーン基盤上で管理しようというものです。

この仕組みによって、従来は各国の各関係機関がそれぞれにデータ認証をするために共通のIDカードを必要としていたところを、共通の基盤をもつことで、IDカードを携帯していないような緊急事態にも人道支援を迅速に行うことが可能になります。

まさに、ブロックチェーンの特徴をうまくいかした「相対化・自由化」の好例であると言えるでしょう。