NFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」は、デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術で、アートやゲーム、音楽など様々なカテゴリーで活用されはじめています。特に、今回ご紹介するスポーツの分野では、選手やクラブとファンとのエンゲージメントを高める手段として大きな可能性を秘めています。本記事では、NFTの基本知識から、スポーツ×NFTによってどんなメリットが生まれるのかを解説し、そして具体的な活用事例についてご紹介していきます。
スポーツ分野へのNFT活用
スポーツとの親和性が高いNFT
実際に様々な団体でのNFT導入が始まっている
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
スポーツ×NFTで実現すること
ファンとのエンゲージメントを高められる
“唯一無二の本物” を所有する喜び
NFTによって実現する新たな応援の形
選手やチームにとっての新たな収益源となる
スポーツ分野×NFTの活用実例
Sorare
NBA Top Shot
日本プロ野球における取り組み
西武ライオンズ(ライオンズコレクション)
パ・リーグ(パ・リーグ Exciting Moments β)
まとめ
スポーツ分野へのNFT活用
スポーツとの親和性が高いNFT
出典:pixabay
サッカーや野球、バスケットボールを始めとする「スポーツ」は、いつの時代も世界中の人々を熱狂させる非常に魅力的なコンテンツです。自分が応援するチームのドラマチックな勝利をリアルタイムで観戦したり、好きな選手の活躍をその目に焼き付けることは、替えの効かない素晴らしい体験となります。
近年、そういったスポーツへNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」を活用する動きが世界中で拡大しています。
NFTとは「デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術」のことで、1試合ごとに何らかのドラマが生まれ、同じシーンが二度と起こらないスポーツとは非常に親和性が高いと言われています。
実際に様々な団体でのNFT導入が始まっている
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スポーツとNFTの親和性の高さは以前から着目されており、2019年には既に「Sorare(ソラーレ)」というサッカーのトレードカードゲームがNFTをいち早くスポーツに取り入れています。
続いて2020年に米プロバスケットボールリーグであるNBAがNFT市場に参入、さらに2022年には米メジャーリーグ(MLB)が参入を予定しています。また、日本でもサッカーのJリーグやプロ野球の一部チームでNFT活用の動きが活発化しています。これら活用事例の詳細については後ほど詳しくご紹介します。
このように、実際に様々なスポーツ団体によって導入が始まっているNFTですが、スポーツ分野へNFTを活用することによって一体どんな具体的なメリットがあるのでしょうか?
スポーツへのNFT導入のメリットについて触れる前に、まずは次項でNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)について改めて詳しく解説していきます。
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。
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NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。
つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。
NFTが必要とされる理由
世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。
それぞれの例を挙げていくと、
【替えが効くもの (代替性) 】
- 硬貨や紙幣
- フリー素材の画像や音楽
- 量産される市販品
【替えが効かないもの (非代替性) 】
- 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
- ゴッホの「原画」
- ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」
人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。
一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。
実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。
そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。
NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。
👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!』
NFTとブロックチェーン
NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。
ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。
👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!』
スポーツ×NFTで実現すること
ファンとのエンゲージメントを高められる
“唯一無二の本物” を所有する喜び
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これまでは、画像や動画といったデジタルデータに対して ”唯一無二の本物” であるという証明をすることは不可能に近く、有名な試合のワンシーンはYouTubeにアクセスすれば誰もが簡単に見ることが出来ました。
しかしこれからは、NFT技術によって ”唯一無二の本物” であるという証明がなされた試合中のドラマチックなワンシーンを、自分だけのモノにできるのです。
“唯一無二の本物” を所有することによって、チームや選手に対してさらに愛着が持てるようになったり、ファンコミュニティの中で「自分は正真正銘のファンだ」といった心理的な優越感を得ることができます。
NFTによって実現する新たな応援の形
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NFTによって価値が証明されるものは試合中のワンシーンだけではありません。
例えば、新人選手の手書きサインをNFT化し、将来の活躍を期待するファンがそれを購入する、という楽しみも生まれる可能性があります。NFTという記録に残る形で投資した新人選手が活躍するようになれば、以前から応援していたファンとしてこれほど誇らしいことは無いでしょう。
このようにNFTをスポーツのコンテンツに活用することで、選手とファンの新しいコミュニケーションが生まれます。人対人の関係性を新たに生み出せるのがNFTの魅力と言えるでしょう。
選手やチームにとっての新たな収益源となる
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スポーツ分野へのNFT活用は、ファンに対してだけではなく選手やチームにとってもメリットをもたらします。それは、コンテンツの2次流通を収益化できるという点です。
これまでのチームや選手にとっての主な収入源は、試合日のチケット代や物販、そして各種中継といったコンテンツの一次利用によるものでした。一方これからは、あらゆるコンテンツやデータがNFT技術によって紐付けられ、転売による二次流通による利益がチームや選手に還元される仕組みが実現可能となります。
例えば、新人時代に書いたサインが有名になってから高値で取引されるようになると、選手自身にもその利益が還元され、活躍次第で大きな収入源となる可能性があります。同様に、優勝決定戦などのプレミア価格がついたチケットの転売利益を、チームに還元することも可能となります。
スポーツ分野×NFTの活用実例
続いて、2022年時点でのスポーツ分野×NFTの活用実例をご紹介します。
Sorare
Sorare(ソラーレ)は実在するサッカー選手を題材としたトレーディングカードゲーム(トレカ)です。ただし実物のカードではなく、NFT技術によって選手の写真や能力値が一つのデジタルデータにまとめられているのが特徴です。
👉参考記事:『NFT×トレカ〜NFTが新たな価値を生み出したデジタルカード〜』
カードをコレクションする以外にも、購入したNFTトレカで自分だけのオリジナルチームを作ってそのスコアを競い合うことが出来ます。
Sorareの最大の特徴は、選手カードの性能が現実の試合結果とリアルタイムで連動しており、自分の持つ選手がゴールやアシストを決めるとSorare上でも強化される点です。つまり、いかにゲーム内のチームに実際に活躍している旬の選手を組み込めるかが、ハイスコアを出す鍵となってきます。
チームを構成するNFTトレカは、Sorare内での売買の他にも、ゲーム外のNFTマーケットプレイスによる取引によって入手できます。当然のことながら、現実世界で好成績をおさめる選手のNFTカードには人気が集中し、過去にはあのクリスティアーノ・ロナウド選手のNFTトレカが約3,200万円で売却されたことも大きな話題を呼びました。
👉参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜』
さらに、2022年5月には米メジャーリーグベースボール(MLB)と提携することが発表され、同年夏にSorareの野球版がローンチされる予定です。
NBA Top Shot
NBA Top Shotは、北米のプロバスケットボールリーグであるNBAの選手を題材としたNFTトレカの収集や販売、展示を行うことができるNFTプラットフォームです。
NBA選手による歴史的なプレイなどのハイライト動画をNFTカードとして所有でき、人気選手のカードは1,000万円以上の価格で取引され、投資家の間でも話題となりました。
Sorare同様、NBA Top Shotには独自のマーケットプレイス機能が備わり、プレイヤー同士の交流やカード売買による二次流通が積極的に行われています。
日本プロ野球における取り組み
西武ライオンズ(ライオンズコレクション)
👉LIONS COLLECTION(ライオンズコレクション)の公式HP
日本プロ野球に関する最初のNFTコンテンツは、埼玉西武ライオンズの「LIONS COLLECTION(ライオンズコレクション)」です。
埼玉西武ライオンズは、コロナ禍によって球団の収益の柱である観客動員が大幅に減少したことを受け、「新しい収益を生み、かつファンにも受け入れられる取り組み」を目指し、2021年9月に日本のプロ野球界で初めてNFTを導入しました。
チームの人気選手である栗山巧選手が通算2000本安打を達成した際に、手書きサイン付きパネルとNFT化された記念動画データのセットが販売されたのを皮切りに、球団公式のサービスとしてNFTを取り扱い始めました。
メモリアルシーン以外の普段の試合でも、試合開始前の球場のスクリーンに映し出されるスタメン発表ボードムービーを毎試合NFT化し販売するなど、新たなファンコミュニケーションの一環としてNFTを積極的に取り入れています。
パ・リーグ(パ・リーグ Exciting Moments β)
👉パ・リーグ Exciting Moments βの公式HP
日本プロ野球のパ・リーグ6球団と国内No.1シェアのフリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリが共同となり、2021年12月に「パ・リーグ Exciting Moments β」を開始しました。
これは6球団の歴史を彩る名場面を捉えた映像や、シーズン中に活躍した選手のプレー映像をNFT化し、NFTの購入者は動画コンテンツを自分だけのコレクションとして保有できるサービスです。
NFTの販売数は動画の元となるシーンの希少性や、対象となる選手の人気によって異なります。例えば、2022年4月10日に千葉ロッテマリーンズの投手、佐々木朗希が記録した完全試合ムービーは、20個限定で販売され即完売となりました。チームの人気選手による偉業達成ということもあり、NFTの価値が非常に高まり話題を呼んだ成功例です。
さらに多くのファンを抱えるとされるセ・リーグへの波及も楽しみなプロジェクトです。
まとめ
今回はスポーツ分野へのNFT活用について解説してきました。
NFTはスポーツにおけるファンビジネスのあり方を変革するだけの大きな可能性を秘めていると言えます。
アートや音楽などの芸術分野へのNFT活用は投資目線で語られる事が多いですが、スポーツへのNFT活用はあくまでもファンが中心となって市場を牽引していくことが期待されます。
NFTの活用によってスポーツ市場は今後さらに盛り上がっていくことでしょう。