NFTマーケットプレイスとは?取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説

仮想通貨を含むブロックチェーン業界全体はいま、冬の時代を迎えつつあります。ビットコインやイーサリアムが過去最高額を更新した2021年と比べると、話題性だけではなく取引量やアクティブユーザーが減少しているこの現状はいささか厳しいといわざるを得ません。

一方で、デジタル資産「NFT」の取引が、度々明るいニュースを運んできてくれます。今回は、そのNFT取引の中心的な役割を果たす「NFTマーケットプレイス」の概要から、それぞれの特色や違いまで解説していきます。

  1. NFTマーケットプレイスとは?
  2. NFTとは?
  3. NFTマーケットプレイスの選び方
  4. 注目すべきNFTマーケットプレイス
  5. まとめ

NFTマーケットプレイスとは?

NFTマーケットプレイスとは、クリエイターが自分で制作したNFT作品を出品販売したり、自分が所有するNFT作品を購入者同士で取引できる、NFT作品の売買プラットフォームです。個人間でモノを売買するメルカリやラクマの ”デジタルデータ版” をイメージすれば理解できるかと思います。

NFTマーケットプレイスでできることは以下です。

  1. NFT作品を出品・販売する
  2. 販売されているNFT作品を購入する
  3. 購入したNFT作品を更に二次販売する

基本的にNFT作品は、購入者によって二次販売された際にも元のクリエイターに利益が還元される仕組みとなっています。しかし、マーケットプレイスによっては二次販売が禁止されていたり、運営から承認されたクリエイターしか出品できない、などの制限がある場合もあります。


現在、世に流通しているNFT作品のほとんどは、仮想通貨の一つであるイーサリアムのブロックチェーンを基盤として作成されています。そのため、NFTマーケットプレイスでは決済手段にイーサリアムが採用されている場合がほとんどです。

では、数ある中からどのようにして利用するNFTマーケットプレイスを決めれば良いのでしょうか。そちらを解説する前にまずは「そもそもNFTって何なの?」という疑問を抱えている人のために、NFTについて簡単に解説します。

NFTとは?

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

NFTマーケットプレイスの選び方

出典:pixabay

NFTについて軽く振り返りをしたところで次はNFTマーケットプレイスの選び方について見ていきます。

NFTマーケットプレイスには数多くの種類があります。それぞれ特色があるため、どの取引所を利用するか選ぶ際には、以下3つのポイントに着目してみましょう。

取り引きしたいNFTのジャンルで選ぶ

NFTマーケットプレイスによって、扱っているNFT作品のジャンルが異なります。ゲームアセットやトレーディングカードの取り扱い数に強みを持つ取引所もあれば、様々なジャンルを幅広く扱っている取引所もあります。

売買に利用できる仮想通貨の銘柄で選ぶ

決済に利用できる仮想通貨の銘柄も、NFTマーケットプレイスごとに異なるため注意が必要です。NFTマーケットプレイスは先述のブロックチェーン技術を土台としており、マーケットプレイスごとに土台とするブロックチェーンの種類が異なるためです。

NFT技術の基盤となるイーサリアムはほとんどの取引所で利用可能で、中には日本円やクレジットカード決済が可能なNFTマーケットプレイスもあります。

取引時に発生する手数料で選ぶ

取引の際に発生する手数料も、NFTマーケットプレイスを選ぶ上で重要なポイントです。割高な手数料を設定している取引所もある一方で、取引手数料が無料であることを強みとしている取引所もあります。

注目すべきNFTマーケットプレイス

OpenSea

出典:OpenSea

取り扱いコンテンツデジタルアート、ゲームアセット、トレーディングカード、デジタルミュージック、ブロックチェーンドメイン、ユーティリティトークンなど
基盤ブロックチェーンEthereum、Polygon、Klaytn、Solana、Avalanche、BNB Chain、Optimism、Arbitrum
決済通貨イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)、ベーシックアテンショントークン(BAT)など
販売手数料2.5%

OpenSeaは、2017年にサービスを開始した最古参かつ最大手のNFTマーケットプレイスです。2017年のサービス開始後はどんどん市場規模を拡大し、2023年7月時点で1.67億ドルの月間取引高を誇ります。

NFT出品数も8000万点を超え、取り扱うジャンルもデジタルアートやゲームアセットなど多種多様であり、ユーザーはウォレットを接続するだけでNFTの作成や売買が可能となっています。

その作品の中には数々の有名人によるNFTもあり、例えばお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣氏や、世界的に著名な現代アーティストである村上隆氏などが自身のNFT作品をOpenSeaに出品しています。


OpenSeaの特徴のひとつに、複数のブロックチェーンに対応していることが挙げられます。一般的なNFTマーケットプレイスが対応しているブロックチェーンはイーサリアムのみであることが多いですが、OpenSeaの場合イーサリアムに加えてPolygon(ポリゴン)やKlaytn(クレイトン)、Solana(ソラナ)といったブロックチェーンにも対応しています。

このようにさまざまなブロックチェーンに対応しているため、ガス代(仮想通貨自体の手数料、検証作業をおこなったネットワーク参加者に報酬として分配されている)の軽減が可能です。複数のブロックチェーンを利用できることで、ガス代が高いといわれているイーサリアム以外も選択でき、比較的コストを下げて取引することができます。

また、複数のブロックチェーンに対応していることで、扱えるNFT作品のジャンルや数も豊富となっています。

Blur

出典:Blur

取り扱いコンテンツデジタルアート、ゲームアセット、トレーディングカード、デジタルミュージック、ブロックチェーンドメイン、ユーティリティトークンなど
基盤ブロックチェーンEthereum
決済通貨イーサリアム(ETH)
販売手数料0%

Blur(ブラー)は、2022年10月にローンチした新興のNFTマーケットプレイスです。

「プロトレーダー向けのマーケットプレイス」を謳っているBlurでは、外部マーケットプレイスを横断して取引が行える(各マーケットの出品状況や価格を確認・比較しながら効率的に取引ができる)「アグリゲーター機能」や、独自トークン「BLUR」のエアドロップ(あらかじめ定められた条件をクリアすると、トークンを無料でもらえるイベント)を積極的に行っています。

こうした独自の路線を突き進むBlurは、正式ローンチからわずか1年足らずで業界最大手のOpenSeaの取引量を上回るなど、驚異的な成長を見せるNFTマーケットプレイスとして注目されています。

ユーザーから見たBlurの最大のメリットは、「販売手数料が無料」であるということでしょう。前述のOpenSeaでは、販売手数料が2.5%がかかりますが、Blurでは無料で利用することができます。

また、イーサリアムETH(イーサ)自体はERC-20という共通規格に対応していないため、OpenseaではNFTに対して入札するためにはwETHにスワップ(交換)する必要がありました。しかし、BlurではBlurではETHのままの入札が可能です。そのため、入札の取り消し時にガス代が発生しません。

このようにBlurには、一度に多くのNFT作品を売買するトレーダーにとっては、コストを抑えられるという大きなメリットがあり、今後も活発に取引がされていくと予想されます。

Coincheck NFT

出典:Coincheck NFT

取り扱いコンテンツゲームアセット、トレーディングカードなど
基盤ブロックチェーンイーサリアム
決済通貨ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リスク(LSK)、リップル(XRP)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、ステラルーメン(XLM)、クアンタム(QTUM)、ベーシックアテンショントークン(BAT)、モナコイン(MONA)、ポルカドット(DOT)など
販売手数料10%

Coincheck NFTは、日本国内最大級の仮想通貨取引所であるCoincheckが運営しているNFTマーケットプレイスです。運営元が暗号資産取引サービスを行っているため、ビットコインやイーサリアムはもちろん、Coincheckで取り扱いのある10種類以上の通貨で売買をすることが可能です。

Coincheck NFTの最大の魅力は、オフチェーン取引に対応している点です。オフチェーン取引とはブロックチェーン外での取引のことを指します。

イーサリアムブロックチェーン上で発行されたNFTは、イーサリアムブロックチェーン内でそのまま取引することになり、その際に「ガス代」と呼ばれる手数料を支払わなければいけません。そして「ガス代」はユーザー数が増えるにつれて高額になってしまうため、NFT市場が拡大中の今、イーサリアムのガス代の高騰が大きな問題となってしまっています。

Coincheck NFTの場合、NFTの取引履歴をブロックチェーンに記録しない「オフチェーン」でおこなっているため、高額なガス代を支払うことなくNFT作品を売買することが可能です。

こうした決済通貨の豊富さやガス代の削減により、国内最大手のNFTマーケットプレイスに君臨しているのがこのCoincheck NFTです。

LINE NFT

出典:LINE NFT

取り扱いコンテンツゲーム、スポーツ、アニメ、キャラクターなど
基盤ブロックチェーンLINE Blockchain
決済通貨LINE Pat、LINK
販売手数料アイテムごとに異なる

LINE NFTは2022年4月にサービスを開始した新しいNFTマーケットプレイスです。

LINE NFTの特徴はその手軽さです。我々日本人にとってお馴染みのLINEアプリの基盤を活かし、NFTの購入から二次流通までを手軽に実現でき、特にLINE Payを通じて日本円での決済が可能な点が非常に便利です。

また、普段から使っているLINE IDを使って登録できるデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」と連携しており、NFT取引のために仮想通貨ウォレットを用意しなくてもOK。初めてのユーザーにも優しいサービス設計となっており、NFTデビューにもうってつけです。

さらに、LINE NFTでは、運営からの認定を受けた企業やクリエイターだけが出品できる仕組みになっています。大手NFTマーケットプレイスでは、誰でも簡単にNFTを出品しているため市場の流動性はありますが、偽物や模造品などの低クオリティなNFTもマーケットに並んでしまいます。

しかし、LINE NFTでは運営側がしっかりと出品者を審査できるため、NFTの質がある程度担保されています。誰でも安心してNFT取引が楽しめる点は大きなメリットといえるでしょう。

圧倒的な手軽さが実現できた一方で、NFTの醍醐味である”複数のサービスをまたいだ取引”は今の所できません。LINEが運用するブロックチェーン:LINE Blockchainは、同社が独自に開発した「プライベートチェーン」であり、イーサリアムなどの他のブロックチェーンとの互換性が無いためです。

こういったデメリットも存在しますが、LINEは独自のエコシステムを構築するのに長けた企業でもあります。実際にすでに国内でもスポーツ・音楽などエンタメ分野でのコラボがたくさん生まれており、赤西仁さんや今田美桜さん、Nissy(⻄島隆弘)さんといった数々の芸能人も参加しています。

株式会社電通やGMO NIKKO株式会社といった名だたる企業がセールスパートナーとなっており、勢いのあるNFTマーケットプレイスです。

Rakuten NFT

出典:Rakuten NFT

取り扱いコンテンツアニメ、アイドルなど15以上のカテゴリー
基盤ブロックチェーン自社ブロックチェーン
決済通貨クレジットカード、楽天ポイント※パックの購入のみイーサリアム(ETH)での決済が可能
販売手数料14%

RAKUTEN NFTは、大手通販サイトの楽天グループが運営するNFTマーケットプレイスで、日本円や楽天ポイントで決済できるのが特徴です。先述したLINE NFT同様、手軽に簡単に取引がスタートできるNFTマーケットプレイスです。

また、独自のブロックチェーンを基盤としている点もLINE NFTと似ており、他のブロックチェーンとの互換性はありません。NFT作品の保管・管理が楽天という一企業に大きく依存している点が他のNFTマーケットプレイスと大きく異なる点です。

面白いのは、購入時に楽天ポイントが貯まり、支払い時には楽天ポイントで決済できるという点です。一部のマーケットプレイスでは、独自のトークンを付与して取引の活性化を図っていますが、Rakuten NFTでは楽天ポイントという既存のリソースを生かして取引の活性化を実現しています。

これはweb2.0とweb3.0の融合ともいえるケースで、ユーザーとしてもweb3.0に触れるハードルはそんなに高く感じないでしょう。既存のポイントシステムの延長としてNFTを体験することができ、手軽にNFTの購入ができる設計であることには注目です。

販売手数料が割高な点や仮想通貨での決済対応は一部のみである点などには様々な意見もありますが、大手企業が運営していることや独自のシステムなどが評価され、こちらも人気のNFTマーケットプレイスとなっています。

Adam byGMO

出典:Adam byGMO

取り扱いコンテンツデジタルアート、デジタルミュージックなど
基盤ブロックチェーンイーサリアム
決済通貨イーサリアム、銀行振込、クレジットカード
販売手数料5%(二次流通時)

Adam byGMOは、インターネットグループ会社として知られるGMOグループの子会社が運営しているNFTマーケットプレイスです。

Adam byGMOの最大の特徴は、決済通貨がイーサリアムだけでなく日本円に対応していることです。一般的なECサイトと同様、銀行振込やクレジットカードによる決済が可能なので、暗号資産を保有していないNFT初心者の方でも簡単にNFT作品を購入することができます。

取り扱いコンテンツは、アートや音楽、漫画などです。音楽家の坂本龍一氏や小室哲哉氏、漫画家の東村アキコ氏など多くの著名人がすでにNFT作品を出品したことでも話題となりました。

また、二次流通させる場合には作品の売却額の5%が販売手数料として発生し、作者にも売上金からロイヤリティを支払います。クリエイターには最初の売上金しか入らない他のプラットフォームと比べると、ユーザーだけでなくクリエイターにとってもメリットの大きいNFTマーケットプレイスであり、さらなる出品数の増加にも期待できます。

まとめ

今回はNFTマーケットプレイスに関して説明してきました。

NFT化されたデジタルコンテンツを取引できる場が生まれた事により、クリエイター・購入者双方にとって新たな価値を創出することができるようになりました。

一方で、NFT”マーケットプレイス”に限らず、NFTそのものの歴史がまだまだ浅いため、法整備が完全には整っていません。

法律的な整備が進んでいないため、NFTの取引で金銭的な損失があった場合には、法律的な保護が受けられず自己責任となってしまうこともあるでしょう。また、きちんと定まっているわけでは有りませんが、NFT作品を売却した際に得た利益は雑所得としてみなされ、課税対象となる可能性が高いため注意が必要です。

NFT自体の認知がより広まり、NFTに関する法整備が整っていけば、NFTマーケットプレイスを含むNFT市場のさらなる拡大が期待できます。