2021年頃からNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」がメディアやSNSに取り上げられることも増えてきましたが、その中でも ”アート” へのNFT利用が特に注目を集めています。とある画像データに75億円もの価値がついたり、数々の著名人が積極的に参入するなど話題に事欠かないNFTアート。 本記事ではそんなNFTアートについて、NFTの基礎知識やメリットを交えながら解説していきます。
NFTアートはNFT活用の火付け役
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
アート×NFTで実現すること
唯一無二という価値が生まれる
新たなマネタイズ方法が生まれる
NFTアートの実例
「Everydays: The First 5000 Days」by Beeple
Bored Ape Yacht Club(BAYC)
CryptoPunks(クリプトパンク)
「Zombie Zoo」by Zombie Zoo Keeper
手塚アニメ_アトムのモザイクアート
まとめ
NFTアートはNFT活用の火付け役
出典:pixabay
2021年以降にNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」への注目が拡大していくきっかけとなったのは、アート分野に対してNFTが活用され、それらが非常に高い金額で取引されたことでしょう。
例えば、2021年3月に海外クリエイター「Beeple」氏が作成したデジタルアート作品が約75億円もの高額で取引され、2021年8月には東京都在住の8歳の少年が描いたデジタルアート3枚が約200万円で落札されました。一見すると普通の ”画像データ” にも関わらず、驚くような高値がつくというそのギャップによって多くの人々が驚き、世界的な話題を呼びました。
また、上記のような高値での取引以外に、人気アイドルグループSMAPの元メンバーである香取慎吾さんや人気女優の広瀬すずさんといった著名人がNFTアートに次々と参入していることも、日本国内でNFTアートが注目を集めるきっかけとなっています。
2022年現在では、ゲームや音楽、スポーツなど様々な分野へNFTが活用されていますが、その火付け役となったのがNFTアートでした。
👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜』
👉参考記事:『NFT技術の音楽分野への活用 〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜』
👉参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜』
そんなNFTアートについての解説や、より多くの事例をご紹介する前に、まずは次項でNFTそのものについて解説していきます。
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。
出典:pixabay
NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。
つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。
NFTが必要とされる理由
世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。
それぞれの例を挙げていくと、
【替えが効くもの (代替性) 】
- 硬貨や紙幣
- フリー素材の画像や音楽
- 量産される市販品
【替えが効かないもの (非代替性) 】
- 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
- ゴッホの「原画」
- ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」
人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。
一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。
実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。
そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。
NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。
👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!』
NFTとブロックチェーン
NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。
ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。
👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!』
アート×NFTで実現すること
唯一無二という価値が生まれる
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NFTの解説でも述べたように、実物の絵画や美術品といったPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。
しかし、アーティストが描いたデジタル作品に対して ”唯一無二の本物” であるという証明をすることは不可能に近く、コピーやスクリーンショットがWEB上に溢れてしまうことは容易に想像がつきます。
しかしこれからは、NFT技術によって ”唯一無二の本物” であるという証明がなされた「自分が好きなアーティストが描いたデジタル作品」を、自分だけのモノにできるのです。
“唯一無二の本物” を所有することによって、作品やアーティストに対してさらに愛着が持てるようになったり、ファンコミュニティの中で「自分はあのデジタルアートを所有する特別なファンだ」といった心理的な優越感を得ることができます。
クリエイターとしても、自分の作品を気に入ってくれた特別なファンの存在を、NFTアートを通してこれまでよりも近く感じることができるはずです。
新たなマネタイズ方法が生まれる
出典:pixabay
従来であればアーティストが自分の作品を出品する際に、ギャラリーや仲卸し業者に少なくない金額の手数料を差し引かれる事が多かったため、アーティスト活動だけで生計をたてられる人はほんの一握りでした。
一方で、NFTアートはWEB上で誰でも手軽に出品することができ、出品手数料もかからない、あるいは従来に比べれば非常に少なくすみます。出品の手軽さとマネタイズのしやすさが相まって、アーティストたちはより多くの収入を得るチャンスが増えます。
また、NFTの技術をアートに活用することで、そのアートが転売されるたびに作者の元に収益を還元する仕組みが実現できます。無名時代に描いた作品が有名になってから高値で取引されるようになると作者自身にもその利益が還元されるため、収益だけでなく作り手のモチベーションアップにも繋がります。
NFTによってアートの新たなマネタイズ方法が生み出されると、収入面で夢を諦めていた多くの才能あるクリエイター達のモチベーションアップに繋がり、ゆくゆくはアート市場そのものが盛り上がっていくことが期待できます。
NFTアートの実例
続いて、2022年時点でのNFTアートの実例をご紹介していきます。
「Everydays: The First 5000 Days」by Beeple
👉出典:Christie’s『Beeple Everydays – The First 5000 Days』
海外アーティストであるBeeple氏によって作られた「Everydays-The First 5000Days」は約75億円で落札されたNFTであり、これはNFT史上最高の取引額(2022年7月時点)とされています。
このNFTは、Beeple氏が10数年間毎日作成し続けたプロジェクトである「EVERY DAYS」の作品をまとめて1つのNFTとした作品で、その価格のインパクトも相まって、同作品は「世界で最も有名なNFTアート」としても知られています。
Beeple氏は、NFTに注力するまでは世界的に注目されるほどのアーティストではありませんでしたが、今ではNFTアートの先駆者として世界中で認知されているアーティストとなりました。
Bored Ape Yacht Club(BAYC)
👉Bored Ape Yacht Club(BAYC)の公式ページ
「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」は、アメリカのNFTスタジオであるYuga Labsが制作する類人猿をモチーフにしたNFTアートコレクションです。顔のパーツや表情、服装などバリエーションの異なる1万点のNFTアートが発行され、同じ絵柄は1枚として存在しません。
2022年7月現在、海外セレブや著名人を中心にSNSのアイコンを自分が所有しているNFTアートにすることが流行りつつあり、その先駆けともいえるのがこのBored Ape Yacht Club(BAYC)です。
さらに2022年4月には、アメリカ最大手の仮想通貨取引所であるコインベースによる映画化も発表されました。BAYCのNFT所有者が、自身のNFTをオーディションに出すことが可能で、映画にキャスティングされれば約135万円(1万ドル)のライセンス費を受け取ることができるという試みも予定されています。
CryptoPunks(クリプトパンク)
CryptoPunks(クリプトパンク)は、2017年に誕生した世界最古と言われているNFTアートコレクションで、24×24ピクセルのドット絵で男女の様々な顔が描かれています。こちらもBored Ape Yacht Club(BAYC)同様、同じ絵柄は1枚として存在しません。
リリース当初は無料配布されていましたが、作品の総発行枚数は1万点と限りがあり、その希少性から数千万円以上の値段が付けられるまでに価格が高騰しています。
2022年現在は、その高額な値段から一種の投資商品のような扱いをされており、多くの有名投資家が保有しています。
「Zombie Zoo」by Zombie Zoo Keeper
👉出典:BuzzFeed News『8歳の少年が描いた1枚の絵が、NFT取引で160万円相当に!』
「Zombie Zoo(ゾンビ・ズー)」は、2021年に当時8歳の日本人の少年によって始められたNFTアートプロジェクトです。
彼が夏休みの自由研究として描いた3枚のデジタルアートを、彼の母親であるアーティストの草野絵美さんの協力のもと世界最大手のNFT取引所『OpenSea(オープンシー)』に出品したところ、世界的に有名DJによって約240万円で落札されました。
2022年には、東映アニメーションによるアニメ化プロジェクトも始動するなど、日本人のしかも子供によるNFTアート作品とあって、非常に多くの注目を集めているNFTアートプロジェクトです。
手塚アニメ_アトムのモザイクアート
👉出典:美術手帖「日本発NFTの最高落札額。モザイクアートNFT「鉄腕アトム」が約5600万円で落札」
2021年12月、日本を代表する漫画家である手塚治虫氏の代表作品を題材に展開されたNFTプロジェクト「From the Fragments of Tezuka Osamu」の第一弾として、「鉄腕アトム」を題材としたNFTアートが世界最大手のNFT取引所『OpenSea(オープンシー)』に出品され、約5600万円で落札されました。
このNFTアート「鉄腕アトム」は、手塚治虫漫画のカラー原画840枚と4000枚以上の白黒漫画原稿で構成されたモザイクアートで、売上の10%をユニセフと日本の子供のために寄付することも発表されています。
まとめ
今回はNFTアートについて解説し、実際の事例をご紹介してきました。
NFTアートはクリエイターと買い手の双方にとってより良い体験をもたらす革新的な技術です。
一方で現状、NFTアートは依然目新しいモノとして捉えられており、高額な金額で投機的に取引されることに注目が集まりがちです。今後は、アートの原点である ”純粋に気に入った作品を購入する” という向き合い方が広まり、現実のアートのように人々の生活の一部となっていくことを期待します。