2021年は、ビットコインが過去最高額を更新するなど、暗号資産にとって飛躍の年となりました。デジタル資産「NFT」の取引の活発化も、暗号資産が飛躍した理由の一つと言えるでしょう。今回は、そのNFT取引の中心的な役割を果たす「NFTマーケットプレイス」の概要から、取引所の選び方やそれぞれの取引所の特色や違いまで解説していきます。
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTとブロックチェーン
NFTマーケットプレイスとは?
NFTマーケットプレイスの選び方
取り引きしたいNFTのジャンルで選ぶ
売買に利用できる仮想通貨の銘柄で選ぶ
取引時に発生する手数料で選ぶ
様々なNFTマーケットプレイス
OpenSea
Coincheck NFT(β版)
LINE NFT
Rakuten NFT
AdambyGMO
まとめ
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。
出典:pixabay
NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。
つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。
本記事では、NFTによって唯一性・希少性が証明されたデジタルデータのことを「NFT作品」と表現して説明を進めていきます。NFT作品の種類はアート、音楽、キャラクター、ゲーム内アイテムなど多岐にわたります。
👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!』
NFTとブロックチェーン
NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。
ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。
👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!』
NFTマーケットプレイスとは?
NFTマーケットプレイスとは、クリエイターが自分で制作したNFT作品を出品販売したり、自分が所有するNFT作品を購入者同士で取引できる、NFT作品の売買プラットフォームです。個人間でモノを売買するメルカリやラクマの ”デジタルデータ版” をイメージすれば理解できるかと思います。
NFTマーケットプレイスでできることは以下です。
- NFT作品を出品・販売する
- 販売されているNFT作品を購入する
- 購入したNFT作品を更に二次販売する
基本的にNFT作品は、購入者によって二次販売された際にも元のクリエイターに利益が還元される仕組みとなっています。しかし、マーケットプレイスによっては二次販売が禁止されていたり、運営から承認されたクリエイターしか出品できない、などの制限がある場合もあります。
現在、世に流通しているNFT作品のほとんどは、仮想通貨の一つであるイーサリアムのブロックチェーンを基盤として作成されています。そのため、NFTマーケットプレイスでは決済手段にイーサリアムが採用されている場合がほとんどです。
NFTマーケットプレイスの選び方
NFTマーケットプレイスには数多くの種類があります。それぞれ特色があるため、どの取引所を利用するか選ぶ際には、以下3つのポイントに着目してみましょう。
出典:pixabay
取り引きしたいNFTのジャンルで選ぶ
NFTマーケットプレイスによって、扱っているNFT作品のジャンルが異なります。ゲームアセットやトレーディングカードの取り扱い数に強みを持つ取引所もあれば、様々なジャンルを幅広く扱っている取引所もあります。
売買に利用できる仮想通貨の銘柄で選ぶ
決済に利用できる仮想通貨の銘柄も、NFTマーケットプレイスごとに異なるため注意が必要です。NFTマーケットプレイスは先述のブロックチェーン技術を土台としており、マーケットプレイスごとに土台とするブロックチェーンの種類が異なるためです。
NFT技術の基盤となるイーサリアムはほとんどの取引所で利用可能で、中には日本円やクレジットカード決済が可能なNFTマーケットプレイスもあります。
取引時に発生する手数料で選ぶ
取引の際に発生する手数料も、NFTマーケットプレイスを選ぶ上で重要なポイントです。割高な手数料を設定している取引所もある一方で、取引手数料が無料であることを強みとしている取引所もあります。
様々なNFTマーケットプレイス
OpenSea
取り扱いコンテンツ |
デジタルアート、ゲームアセット、トレーディングカード、デジタルミュージック、ブロックチェーンドメイン、ユーティリティトークン |
---|---|
基盤ブロックチェーン |
イーサリアム、ポリゴン、クレイトン、テゾス |
決済通貨 |
イーサリアム、ポリゴン、クレイトン |
販売手数料(ガス代) |
2.5% |
OpenSeaは、2017年にサービスを開始した最古参かつ最大手のNFTマーケットプレイスです。2017年のサービス開始後はどんどん市場規模を拡大し、2022年8月の取引高は約3,650億円にも上ります。出品数も400万点を超え、取り扱うジャンルも非常に幅広いのが特徴です。
有名人によるNFT作品の出品も話題を呼び、例えばお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣氏や、世界的に著名な現代アーティストである村上隆氏が自身のNFTをOpenSeaに出品しています。
👉参考記事:『【2022年最新版】アートへのNFT活用事例集』
また、OpenSeaの特徴のひとつに、複数のブロックチェーンに対応していることが挙げられます。一般的なNFTマーケットプレイスが対応しているブロックチェーンはイーサリアムのみであることが多いですが、OpenSeaの場合イーサリアムに加えてPolygon(ポリゴン)やKlaytn(クレイトン)、Solana(ソラナ)といったブロックチェーンにも対応しています。
複数のブロックチェーンに対応していることで、扱えるNFT作品のジャンルや数も豊富となっています。
Coincheck NFT(β版)
取り扱いコンテンツ |
ゲームアセット、トレーディングカードなど |
---|---|
基盤ブロックチェーン |
イーサリアム |
決済通貨 |
イーサリアム、ビットコイン、リスク、リップルなど様々 |
販売手数料(ガス代) |
10% |
Coincheck NFTは、日本国内最大級の仮想通貨取引所であるCoincheckが運営しているNFTマーケットプレイスです。Coincheck NFTの最大の魅力は、オフチェーン取引に対応している点です。オフチェーン取引とはブロックチェーン外での取引のことを指します。
イーサリアムブロックチェーン上で発行されたNFTは、イーサリアムブロックチェーン内でそのまま取引することになり、その際に「ガス代」と呼ばれる手数料を支払わなければいけません。そして「ガス代」はユーザー数が増えるにつれて高額になってしまうため、NFT市場が拡大中の今、イーサリアムのガス代の高騰が大きな問題となってしまっています。
Coincheck NFTの場合、NFTの取引履歴をブロックチェーンに記録しない「オフチェーン」でおこなっているため、高額なガス代を支払うことなくNFT作品を売買することが可能です。
決済手段として使える仮想通貨の豊富さも魅力のひとつで、Coincheckで購入可能な17銘柄のうち15種類の仮想通貨をNFTの取引時に利用可能です。
取り扱いコンテンツは、ゲーム内アイテムやトレーディングカードがラインナップされています。
👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜』
👉参考記事:『NFT×トレカ〜NFTが新たな価値を生み出したデジタルカード〜』
LINE NFT
取り扱いコンテンツ |
ゲーム、スポーツ、アニメ、キャラクターなど |
---|---|
基盤ブロックチェーン |
LINE Blockchain |
決済通貨 |
LINE Pat、LINK |
販売手数料(ガス代) |
無料 |
LINE NFTは2022年4月にサービスを開始した新しいNFTマーケットプレイスです。
LINE NFTの特徴はその手軽さです。我々日本人にとってお馴染みのLINEアプリの基盤を活かし、NFTの購入から二次流通までを手軽に実現でき、特にLINE Payを通じて日本円での決済が可能な点が非常に便利です。
普段から使っているLINE IDを使って登録できるデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」と連携しており、NFT取引のために仮想通貨ウォレットを用意しなくても、簡単にNFT取引ができるのが特徴です。
圧倒的な手軽さが実現できた一方で、NFTの醍醐味である”複数のサービスをまたいだ取引”は今の所できません。LINEが運用するブロックチェーン:LINE Blockchainは、同社が独自に開発した「プライベートチェーン」であり、イーサリアムなどの他のブロックチェーンとの互換性が無いためです。
👉参考記事:『「インターオペラビリティ」〜ブロックチェーン同士を接続する新たな技術〜』
取り扱いコンテンツはゲーム、スポーツ、アニメ、キャラクターといったエンタメ系が主で、吉本興業やスクエア・エニックスといった企業とのコラボも話題となっています。
👉参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜』
Rakuten NFT
取り扱いコンテンツ |
デジタルアート、ゲームアセット、デジタルミュージック、スポーツ、アニメ |
---|---|
基盤ブロックチェーン |
自社ブロックチェーン |
決済通貨 |
クレジットカード、楽天ポイント |
販売手数料(ガス代) |
14% |
RAKUTEN NFTは、大手通販サイトの楽天グループが運営するNFTマーケットプレイスで、日本円や楽天ポイントで決済できるのが特徴です。先述したLINE NFT同様、手軽に簡単に取引がスタートできるNFTマーケットプレイスです。
また、独自のブロックチェーンを基盤としている点もLINE NFTと似ており、他のブロックチェーンとの互換性はありません。NFT作品の保管・管理が楽天という一企業に大きく依存している点が他のNFTマーケットプレイスと大きく異なる点です。
AdambyGMO
取り扱いコンテンツ |
デジタルアート、デジタルミュージックなど |
---|---|
基盤ブロックチェーン |
イーサリアム |
決済通貨 |
イーサリアム、日本円 |
販売手数料(ガス代) |
5% |
AdambyGMOは、インターネットグループ会社として知られるGMOグループの子会社が運営しているNFTマーケットプレイスです。AdambyGMOの最大の特徴は、決済通貨がイーサリアムだけでなく日本円に対応していることです。一般的なECサイトと同様、銀行振込やクレジットカードによる決済が可能なので、暗号資産を保有していないNFT初心者の方でも簡単にNFT作品を購入することができます。
取り扱いコンテンツは、アートや音楽、漫画などです。音楽家の坂本龍一氏や小室哲哉氏、漫画家の東村アキコ氏など多くの著名人がすでにNFT作品を出品したことでも話題となりました。
👉参考記事:『NFT技術の音楽分野への活用 〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜』
まとめ
今回はNFTマーケットプレイスに関して説明してきました。
NFT化されたデジタルコンテンツを取引できる場が生まれた事により、クリエイター・購入者双方にとって新たな価値を創出することができるようになりました。
一方で、NFT”マーケットプレイス”に限らず、NFTそのものの歴史がまだまだ浅いため、法整備が完全には整っていません。
法律的な整備が進んでいないため、NFTの取引で金銭的な損失があった場合には、法律的な保護が受けられず自己責任となってしまうこともあるでしょう。また、きちんと定まっているわけでは有りませんが、NFT作品を売却した際に得た利益は雑所得としてみなされ、課税対象となる可能性が高いため注意が必要です。
👉参考記事:『【2022年】NFTの現時点での課題とは?〜革新的な技術に課せられた問題点〜』
NFT自体の認知がより広まり、NFTに関する法整備が整っていけば、NFTマーケットプレイスを含むNFT市場のさらなる拡大が期待できます。