【2024年】ブロックチェーンの市場規模は?市場拡大の背景や活用先についても解説!

ブロックチェーン技術は、暗号資産を始め、フィンテック領域全般で活用されている技術です。近年では医療・ヘルスケアや不動産、ファッションなど非金融の分野でも実用化が進んでおり、一定の成果につなげている大企業も多いため、ますます注目度が高まっています。

しかし、ブロックチェーンという言葉の認知度が高まる一方で、自社ビジネスへの活用には至っていない、あるいは将来性に不安を感じているという方は多いことでしょう。これは技術そのものの市場規模が小さすぎる場合、参入のリスクが高くなってしまうためです。そこで本記事では、国内と世界におけるブロックチェーンの市場規模について解説していきます。

  1. そもそもブロックチェーンとは?
  2. ブロックチェーンの市場規模は一つじゃない!?
  3. 国内のブロックチェーン市場規模
  4. 世界のブロックチェーン市場規模
  5. なぜブロックチェーン市場が拡大したのか?|3つの成長理由
  6. ブロックチェーンの非金融分野への適用先
  7. まとめ:ブロックチェーンはさらなる市場規模拡大によって、より身近な存在へ

そもそもブロックチェーンとは?

出典:shutterstock

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された暗号資産「ビットコイン」の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」といいますが、ブロックチェーンはそんなデータベースの一種です。その中でもとくにデータ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術となっています。

ブロックチェーンにおけるデータの保存・管理方法は、従来のデータベースとは大きく異なります。これまでの中央集権的なデータベースでは、全てのデータが中央のサーバーに保存される構造を持っています。したがって、サーバー障害や通信障害によるサービス停止に弱く、ハッキングにあった場合に、大量のデータ流出やデータの整合性がとれなくなる可能性があります。

これに対し、ブロックチェーンは各ノード(ネットワークに参加するデバイスやコンピュータ)がデータのコピーを持ち、分散して保存します。そのため、サーバー障害が起こりにくく、通信障害が発生したとしても正常に稼働しているノードだけでトランザクション(取引)が進むので、システム全体が停止することがありません

また、データを管理している特定の機関が存在せず、権限が一箇所に集中していないので、ハッキングする場合には分散されたすべてのノードのデータにアクセスしなければいけません。そのため、外部からのハッキングに強いシステムといえます。

ブロックチェーンでは分散管理の他にも、ハッシュ値と呼ばれる関数によっても高いセキュリティ性能を実現しています。

ハッシュ値は、ハッシュ関数というアルゴリズムによって元のデータから求められる、一方向にしか変換できない不規則な文字列です。あるデータを何度ハッシュ化しても同じハッシュ値しか得られず、少しでもデータが変われば、それまでにあった値とは異なるハッシュ値が生成されるようになっています。

新しいブロックを生成する際には必ず前のブロックのハッシュ値が記録されるため、誰かが改ざんを試みてハッシュ値が変わると、それ以降のブロックのハッシュ値も再計算して辻褄を合わせる必要があります。その再計算の最中も新しいブロックはどんどん追加されていくため、データを書き換えたり削除するのには、強力なマシンパワーやそれを支える電力が必要となり、現実的にはとても難しい仕組みとなっています

また、ナンスは「number used once」の略で、特定のハッシュ値を生成するために使われる使い捨ての数値です。ブロックチェーンでは使い捨ての32ビットのナンス値に応じて、後続するブロックで使用するハッシュ値が変化します。

コンピュータを使ってハッシュ関数にランダムなナンスを代入する計算を繰り返し、ある特定の条件を満たす正しいナンスを見つけ出します。この行為を「マイニング」といい、最初に正しいナンスを発見したマイナー(マイニングをする人)に新しいブロックを追加する権利が与えられます。ブロックチェーンではデータベースのような管理者を持たない代わりに、ノード間で取引情報をチェックして承認するメカニズム(コンセンサスアルゴリズム)を持っています。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

詳しくは以下の記事でも解説しています。

ブロックチェーンの市場規模は一つじゃない!?

今まで見てきたように、ブロックチェーンは非常に幅の広い概念であり、その性質上、ビジネス活用の可能性も多岐に渡ります。それ自体は良いことなのですが、ここである問題が生じます。それは、ブロックチェーンのマーケットに関する情報を得るために複数のWebサイトや書籍をみてみると、大小異なる様々な市場規模予測がなされており、どの数字を参考にすべきか困ってしまうという問題です。

ブロックチェーンは、「インターネットと並ぶかそれ以上の技術的革新」と言われることもあるほどイノベーティブな技術です。したがって、その技術的可能性や実社会への応用可能性をどのようにみるか、どこからどこまでをブロックチェーンに関連した市場とみるか、といった視点によって市場規模の算出方法が大きく異なってしまうのです。

しかし、これからブロックチェーンを自社活用しようという人、あるいは新規事業の立ち上げを検討している人にとってみれば、市場規模の数字によって意思決定も左右されるでしょう。そこで次章以降では、資料間の偏りを割り引いて考えるべく、市場規模に関する複数の予測レポートを参照していきます。

国内のブロックチェーン市場規模

ブロックチェーン国内市場規模予測①:経済産業省

ブロックチェーンの国内市場規模に関するマーケット予測で最もポピュラーな資料は、平成28年4月28日付で経済産業省の商務情報政策局 情報経済課が発表した『我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料』でしょう。

同資料では、大きく次の5つのテーマでブロックチェーンの社会変革・ビジネスへの応用が進むとした上で、それら5つのインパクトの合計として、将来的に国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています

  1. 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

この資料は、市場がまだ大きく形成されていない初期に発表されたこと、発表元が経済産業省であることから、複数の書籍や論文等でも引用され、ブロックチェーンの潜在的可能性に対する期待を膨らませる一つの要因になりました。

そして実際に、ブロックチェーンの応用可能性の広さとそのインパクトの大きさは資料の示す通りで、今後、金融分野にとどまらないあらゆる社会側面に広がっていくものと考えられます。しかし、この資料で言及されているのはあくまでブロックチェーン関連市場の話であって、ブロックチェーン市場そのものの規模予測ではないという点には留意が必要です。

ブロックチェーンはインターネット同様、それ自体で価値を発揮するというよりも、むしろその技術を何らかの既存ビジネスに応用することによって高い価値を生み出しうる技術です。そのため、「67兆円規模の市場に影響を与える」と聞くと強烈なインパクトがありますが、この数字にはブロックチェーンによる影響を受けているものの、内容自体はブロックチェーンと無関係、といったサービスなども含まれています

ブロックチェーンに限らず、市場規模を調べる際には、こうした「市場という言葉がどの範囲までを示しているのか」を適切に把握することが大切です。

ブロックチェーン国内市場規模予測②:株式会社矢野経済研究所

ブロックチェーンの国内市場規模に関する他の資料に、2022年1月28日に株式会社矢野経済研究所が発表した『2021 ブロックチェーン活用サービス市場の実態と将来展望』があります。経済産業省の資料とは異なり、ブロックチェーンを活用したサービスに焦点を当てた市場規模が予測されています。

同資料の調査結果サマリーによると、「2019年度までは、大手企業を中心にブロックチェーンの特性などを学んでいた最初期のフェーズにあった。実際に実証実験の多くが「お試し」の状況にあり、試行錯誤をしながらブロックチェーンに係る知見を吸収してきた」ことを理由に、2019年度の市場規模は171億8,000万円に留まったとしてます。

出典:株式会社矢野経済研究所「ブロックチェーン活用サービス市場に関する調査を実施(2021年)」

その一方で、ブロックチェーンに関する実証実験や先行事例が増加し、知見などが蓄積されていったことを受けてより本番に近い環境でサービスの検証へと進む大手事業者が出てきていることに着目し、「2025年度のブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は7,247億6,000万円に達すると予測」しています。

また、今後の展望として「領域の面でもトレーサビリティや認証に留まらず、住宅の賃貸契約と公共料金などとのデータ連携をブロックチェーン基盤で構築し、水道や電気の利用開始を入居時に可能にするなど、さまざまな領域へと広がりをみせていく」としており、適用領域の拡大についても触れられています。

ここで重要なポイントは、ブロックチェーンのビジネス活用フェーズがいよいよ実証段階からビジネス化段階へ突入しているということです。ブロックチェーンは次世代のデータベースとして暗号資産の登場とともに急速にその知名度を拡大させてきました。しかし、革新的な技術であればあるほど、既存市場へと応用する際のハードルが高く、ビジネス活用でクリアしなければならない課題も多くなります。新たな技術が社会実装されるまでには、技術自体の登場から長い年月が必要なのです。

その観点でこの資料を読み解くと、ブロックチェーンの場合は、概念の認識、技術的理解の浸透、そして実証実験による知見の蓄積を終え、課題を修正しながらのサービス化が始まっていると理解できます。インターネットやモバイル端末がここ数十年で一気に普及していったように、ブロックチェーンの普及も急速に拡大していく様子が想像できるはずです。

経済産業省の資料では将来的なインパクトの予測であったのに対して、矢野経済研究所では現在にフォーカスした統計がなされているために数字に大きな開きがありますが、長いトンネルを抜けてイノベーションがついに始まるという、現在のブロックチェーン業界(あるいはブロックチェーン業界人の主観)をよく捉えた資料です。

ブロックチェーン国内市場規模予測③:株式会社 xenodata lab.

ブロックチェーンの国内市場規模に関して、別の資料をもう一つ紹介します。株式会社 xenodata lab.では、国内で初となる経済分野に特化した言語モデルによる生成AI『SPECKTLAM』を用いて、ブロックチェーンの市場規模を予測しています。

同社が発表している「ブロックチェーン業界AI予測分析サマリー」によると、ブロックチェーン業界の国内市場規模は2029年に1,699億円に達すると見込まれています。とくに成長率の内訳では、前述の矢野経済研究所でもフォーカスされていた「ブロックチェーン活用サービス」が大きな割合を占めており、この分野の成長が市場の拡大に寄与すると予測されています。

出典:ブロックチェーン業界AI予測分析サマリー

この市場成長について同社は、「プラス要因である社会・その他の具体的な要因は、InsurTech進展や偽薬流通対策需要増加、FinTech進展と予測」しており、「ブロックチェーン=ビットコイン」「ブロックチェーン=金融」といった、かつての浮き沈みの激しい投機的なイメージから、落ちついた非金融分野におけるブロックチェーン市場への期待へと移り変わりを見せていることを指摘しています

市場規模については他の調査結果と比べるとやや控えめな数字ではあるものの、AIを用いた調査方法においてもその成長性については高い評価が下されており、調査主体にかかわらず、ここ数年で大きな市場成長が見込まれていることがおわかりいただけるでしょうか。この統計もまた、日本国内におけるブロックチェーンに対する期待の高まりを示している資料といえるでしょう。

世界のブロックチェーン市場規模

ブロックチェーン世界市場規模予測①:株式会社グローバルインフォメーション

次に、日本から海外へと目を転じてみましょう。世界のブロックチェーン市場は、 欧米や中国を中心として技術的発展、市場規模ともに日本よりもはるかに進んでおり、すでに国際的大企業による大規模なブロックチェーンプラットフォームのローンチなどの動向が見られています。

こうした世界市場のマーケット規模に対する統計の一つとして、株式会社グローバルインフォメーションでは、世界のブロックチェーンの市場について分析し、市場の基本構造や最新情勢、主な市場促進・抑制要因、コンポーネント別・プロバイダー別・種類別・組織規模別・用途別・地域別の市場動向の見通し、市場競争の状態、主要企業のプロファイルなどを調査したレポート(有料)を発表しています。

出典:株式会社グローバルインフォメーション「ブロックチェーンの世界市場:コンポーネント別 (プラットフォーム、サービス)・プロバイダー別 (アプリケーション、ミドルウェア、インフラ)・種類別 (パブリック、プライベート、ハイブリッド)・組織規模別 (中小企業、大企業)・用途別・地域別の将来予測 (2027年まで)

同社によると、「ビジネスプロセスの簡素化と、ブロックチェーン技術とサプライチェーン管理のニーズの高まりが、ブロックチェーン市場全体を牽引することにな」った結果、「世界のブロックチェーンの市場規模は、2022年の74億米ドルから、2027年には940億米ドルまで、66.2%のCAGRで成長する」と予測されています。

また、同社の別のレポートでは、北米を中心とした市場における銀行・金融セクターでのマーケット維持を土台に、プライベートブロックチェーンの台頭、SEMs(中小企業部門)の高成長が市場に成長をもたらすとの見方を示しており、特にプライベートブロックチェーンに関して、次のように言及しています。

2020年に市場規模が最大になると予測されているプライベートブロックチェーンは、ユーザー権限などでセキュリティが確保された共有データベースまたは台帳としての役割を持ちます。通常、関連する組織のみが知っているプライベートキーを使用することで、そのセキュリティが守られます。ブロックチェーン技術の一種であるプライベートブロックチェーンは、書き込み権限は単一の組織に一元管理され、読み取り権限は、組織の使いやすさに基づいて制限されます。そのブロックチェーン技術を企業間のユースケースに活用するという点で、企業にとってより多くの機会を提供します。

出典:ブロックチェーンの市場規模、2025年まで397億米ドルに成長、CAGRも67.3%を記録する見込み

実際に、日本でも、プライベートブロックチェーンに対する取り組みが各業界の先進的な企業によって進められ始めています。この時期にブロックチェーンに対する投資を行えていたかどうかが、10年先の企業の未来を変えるかもしれません。

ブロックチェーン世界市場規模予測②:Panorama Data Insights

ブロックチェーンの世界市場規模を予測する他の資料に、2022年にPanorama Data Insightsが発表した「ブロックチェーン技術市場-世界の機会分析および2030年までの産業予測」があります。

同社によると、「2021年のブロックチェーン技術の世界市場規模は67. 8億米ドルであったブロックチェーン技術の世界市場規模は、2022年から2030年までの予測期間中に85%の複合年間成長率(CAGR)で成長し、2030年には1,539.4億米ドルに達する」と予測されています。

また、同社は地域別のブロックチェーン市場に対する分析として、「アジア太平洋地域は大きな成長を遂げるでしょう。最近では、中国、日本、インドなどの国々の政府がブロックチェーン技術の利用を促進しています。これらの国の政府は、ブロックチェーンが様々な産業にもたらす効率性や透明性の向上などの利点から、ブロックチェーンの利用を推進しています。」と述べており、世界のブロックチェーン市場拡大の鍵を握っているのは、アジアであるとの見方を示しています

さらに注目したいのが、同レポート内でCOVID-19パンデミック下のワクチン管理を例に、非金融分野へのブロックチェーン導入の有用性について触れられていることです。もともとは世界最初の暗号資産であるビットコインを実現したテクノロジーのひとつであったブロックチェーンですが、2024年現在では、ブロックチェーン業界では、複数の非金融領域における市場の創出・拡大が進んでいます。近い将来、自社のビジネスがブロックチェーンに対応しているか否かで、明暗が分かれてくる可能性があります。

なぜブロックチェーン市場が拡大したのか?|3つの成長理由

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近年の先端技術のマーケットは移り変わりが激しく、一時期注目を集めたテクノロジーであってもあっという間に衰退してしまう、あるいは代替技術に飲み込まれてしまうことも少なくありません。そんななか、ブロックチェーンは着実にその市場を年々拡大させています。ここからはブロックチェーン市場の成長理由を3つに分けて紹介します。

規制環境の変化

ブロックチェーン市場の拡大要因の一つとして、規制環境の変化が重要な役割を果たしています。近年、多くの国々がブロックチェーン技術の潜在的な利点に注目し、研究開発や導入を支援する動きが活発化しています。その流れを受け、政府が積極的に関連する法的枠組みや規制への介入を図ることで、市場の安定性と信頼性が向上しました。

日本においても改正金融商品取引法によって暗号資産に対する規制が強化され、投資家や企業がより安心してブロックチェーン関連の事業に参入できる環境が整いました。

また、環境政策に関連して欧州ではサプライチェーン上の温室効果ガス排出量の可視化やDPP(デジタルプロダクトパスポート)を義務化するなど、規制強化が進んでいます。こうした「透明性が必要」「改ざんされてはならない情報」が誕生しつつあることも、ブロックチェーン業界には追い風になっています。

こうした国内外の様々な要因が相互に関係し、規制環境が整備されることによって、ブロックチェーン市場に新たなビジネスチャンスやイノベーションが生まれる基盤が整いました。

内外様々な技術革新

ブロックチェーン技術は、当初は処理速度が遅く、スケーリングが難しいという課題がありました。しかし、近年では、ShardingやLayer 2ソリューションなどの技術革新により、処理速度とスケーラビリティが大幅に向上しています。これにより、より多くのユーザーやアプリケーションがブロックチェーンを利用できるようになりました。

また、ブロックチェーン自体は次世代のデータベースに過ぎず、単独で新たなビジネスアイデアを具現化するというよりは、その他の技術と結びつくことでよりその真価を発揮します。なかでも、人工知能(AI)とIoT(モノのインターネット)は、ビッグデータと呼ばれる巨大なデータ群を扱う上でブロックチェーンと相性が良く、これらの発展に伴ってブロックチェーンの活用範囲が拡大しました。

ビジネスニーズとユースケースの多様化

様々なレポートでも言及されているように、金融分野以外の適用先が生まれたことが、昨今のブロックチェーンの広まりを大きく支えています。多くの企業や産業が、ブロックチェーン技術の耐改ざん性・分散性が持つ可能性に着目し、実証実験を行った結果、その有意性が社会全体に浸透することとなりました。

実証実験や海外の先行事例が輸入されることで、それまでは社内の「技術屋」の人間しか本質を見ていなかった部分を経営層や顧客までもわかりやすく理解することができ、ここ数年で一気にビジネス化のハードルが引き下げられたといえるでしょう。

ブロックチェーンの非金融分野への適用先

ブロックチェーン技術は、その分散性や耐改ざん性といった特性を活かして、金融サービスのみならず様々な分野で応用が進みつつあります。ここからは2024年現在に金融分野以外で活用されている主なブロックチェーンの適用先をご紹介します。

トークン

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暗号資産の世界では、既存のブロックチェーン技術を利用して新たに発行された暗号資産のことをトークンと呼びます。これらは、ビットコインやイーサリアムといった既存ブロックチェーンのシステムを間借りして発行されており、独自のブロックチェーンを持ちません。例えるなら、企業が独自に発行しているポイントに近いものです。

トークン自体は自由に売買することができ、決済に使用するだけでなく現実世界の資産やゲーム内の仮想アイテムなど、多くの実用性を兼ね備えています。ここ最近、「トークン」という言葉をよく耳にするようになった背景としては、ブロックチェーンの適用先となったことが大きな要因といえるでしょう。

従来のトークンは第三者による改ざんが重大な弱点であり、コピーガードやOPニス、擬似エンポスといった対策が取られてきました。しかし、それでもなお物理的な形を要するギフトカード等は偽造品による被害が相次いでおり、その公平性が保たれにくいという課題がありました。

耐改ざん性や透明性といった性質を兼ね備えるブロックチェーン技術によって発行されたトークンではこういった不正行為は極めて困難です。この唯一性の担保をうまく活用し、デジタルチケットやデジタル証券、デジタル身分証など幅広い用途に用いられています。

詳しくは以下の記事で解説しています。

偽造品対策

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「データが改ざんされにくい」ということは「データが結びつく対象が本物である」と証明できるということです。この性質を利用しているのがブランド保護・偽造品対策の分野です。

従来のブランド保護には、製品ごとに付与されたシリアルナンバーが記載されたギャランティカードを発行する形式が主流となっています。

この形式では、店舗側はシリアルナンバーをもとに購入者名、購入した品物、購入日を管理しているため、正規品か否かを照合することが可能になっています。また、バッグや財布などを修理に出す際に提示することで、正規店でのサポートが受けられるという利点もあります。 

一方で、最近ではギャランティカードの偽物も出回るようになってきています。ギャランティカードはただの数字が印刷されたカードに過ぎず、直接製品に刻まれているわけではありません。そのため、番号が実在するものであれば、いくらでも複製できてしまうのです。

それに対してブロックチェーンによるデータ管理では、リアルの製品にかざすだけでデータ通信が可能な、安全性の高い「NFC(Near Field Communication)」「RFID(Radio frequency identifier)」といった技術と合わせて使用することで、ユーザー自身がブロックチェーン上の安全なデータにアクセスし、唯一無二の価値をもつ正規品であることを確認できます。

こうした手軽に導入でき、高いパフォーマンスを発揮するブロックチェーンは近年、様々な業界で真贋証明プラットフォームの中核技術として利用され始めています。現在は主に高級な製品へ用いられることが多いですが、食品や、健康や美容など人体に直接関わる領域では、比較的安価な製品に対してもブロックチェーンを導入した対策が取られるかもしれません。

詳しくは以下の記事で解説しています。

医療・ヘルスケア

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医療・ヘルスケア分野は非金融ブロックチェーンの導入が進む業界の一つです。昨今の日本では、高齢化や医療サービスの充実に伴い、日本人の平均寿命と健康寿命の差は約10年もあります。そのため、年々医療サービスの仕事量が増加しており、この状況を放置すると医療サービスの需要と供給のバランスが崩れ、医療崩壊を引き起こしかねません

こうした現状を踏まえて医療業界では、予防医療に力を入れ医療崩壊を防ごうという考えが広まっています。予防医療の真価を発揮させるには、ヘルスケアデータを患者・医療施設・医療施設の間でシームレスに共有してうまく活用できるようにするシステム変革が必要です。

一方で医療で扱う情報は、個人情報の中でも特に高い秘匿性が要求されます。したがって、中央集権型のシステムと同等かそれ以上のセキュリティ要件を満たしながら情報を分散管理できる仕組みが必要です。こういった点において、ブロックチェーンはその要件にマッチしているため、国内外で多くの注目を集めています。

とくに行政サービスデジタル化の先駆けとして知られる国家・エストニアではヘルスケア分野における取り組みにはブロックチェーンを用いて安全かつ迅速なデータ管理を行っており、現在では処方箋の99%がオンラインで発行されているなど、国家レベルでもブロックチェーンの導入が行われています。

詳しくは以下の記事で解説しています。

エネルギー

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「なぜブロックチェーン市場は拡大したのか?」の章でも軽く触れましたが、ブロックチェーンを用いてエネルギーの調達由来や、再生エネルギーによって削減された温室効果ガスの排出量をリアルタイムに監視する動きが広がりつつあります

もちろん単なるエネルギーのトレーサビリティ実現であれば、通常のデータベースでも実現可能です。しかし、こうした脱炭素経営は消費者や投資家からの大きなリターンにも期待できるため、「グリーンウォッシュ」などの不正の温床にもなり得ます。

こうした不正を防止し、各制度の枠組みや国境の垣根を超えて正しく削減した事業者が正しく評価されるためには、ブロックチェーンを用いて透明性や信頼性を担保する必要性があるでしょう。

現在、国内における環境価値を取引できる証明制度には「非化石証書」「J-クレジット」「グリーン電力証書」の3つがありますが、日本卸電力取引所(JEPX)では、数年後を目処として非化石証書のブロックチェーンによるトラッキングを実現する方針を打ち出しています。

各制度については下記の記事で解説しています。

デジタルアイデンティティ

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近年、中央集権的な個人情報の管理については「データのセキュリティリスク」「テータ主権」の観点から批判的な見方が広がりつつあります。そんな時代において、行政機関やGAFAなどの大企業によるデータの一括的管理に対抗する手段としてブロックチェーンが注目されています。

ブロックチェーンを用いたデジタルアイデンティティの管理では、情報を分散的に管理し、公開鍵暗号方式によってデータの安全性を担保しているため、個人のデータ主権を保ちながらオンライン上での個人情報のやり取りを可能にします。

さらにブロックチェーンは、VCs(Verifiable Credentials)やDID(Decentralized Identifier)、ゼロ知識証明といった技術と組み合わさることで、その利点を余すことなく活用できます。

ブロックチェーンを採用したデジタルアイデンティティのプロジェクト事例は増えており、技術の進歩とともにそのユースケースや参入企業も多様化していくことでしょう。今はまだ開発段階の技術ですが、今後のさらなる実用化に大きな期待が寄せられます。

VCsやDIDといった周辺知識については下記の記事でも詳しく解説しています。

まとめ:ブロックチェーンはさらなる市場規模拡大によって、より身近な存在へ

今回は国内と世界におけるブロックチェーンの市場規模について解説しました。

これまで見てきたように、ブロックチェーン市場は今後ますます拡大していくことが予想されます。そして、その成長は市場規模の拡大にとどまらず、私たちの生活に密接に関わる様々な分野に革新をもたらすことでしょう。

ブロックチェーン技術はまだまだ発展途上ですが、その可能性は無限大です。今後も最新情報のキャッチアップを心がけましょう。

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