【2024年最新版】Web3.0とメタバース〜分散型インターネットにおける仮想現実の役割〜

“メタバース” についての話題に触れる際に ”Web3.0” というワードが登場する機会は多く、また逆も然りではないでしょうか。本記事ではこれらメタバース(仮想現実)とWeb3.0(分散型インターネット)についてそれぞれ解説し、さらにこの2つの関係性や現状の課題、そしてWeb3.0における代表的なメタバースの事例をご紹介していきます。

  1. メタバースとは?
  2. Web3.0とは?
  3. Web3.0とメタバースの関係性
  4. Web3.0におけるメタバースのメリット
  5. Web3.0におけるメタバースの現状の課題
  6. メタバースの様々な事例

メタバースとは?

出典:pixabay

メタバースについての概要

メタバースとは「インターネット上に作られた3Dの仮想空間」です。

“超える” という意味のメタ(meta)と”宇宙” を表すユニバース(universe)の2つの単語を組み合わせて、”もう一つの宇宙や別世界” を意味するメタバース(Metaverse)という言葉が生まれました。

メタバースというキーワードから想像しづらいかも知れませんが、駅広告やテレビCMでも活躍するVTuberも、メタバースの在り方の1つと呼べるでしょう。

言葉の意味だけではイメージがつきにくいかもしれませんが、例えば個性豊かな動物たちが暮らす村で ”あなた自身” が生活していく任天堂の大人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」や、全世界で1億4千万人以上がプレイするモンスターゲーム「Minecraft(マインクラフト)」といったゲームも、3Dの仮想空間という意味ではメタバースの一種です。

コンシューマー向けゲームを通じてすでに概念として存在していたメタバースですが、近年のVR/AR技術の向上によって「より現実に近い(リアリティの高い)仮想空間」が作られるようになってきました。

仮想空間のクオリティ向上や、このあとご紹介する様々な新しい技術と連携することにより、メタバースは単なるゲームの範疇を超えてWeb3.0(次世代の分散型インターネット)において重要な役割を果たすようになります。

メタバースが注目を集める理由

出典:BLOCKCHAIN MAGAGINE

近年、「メタバース」というワードがSNS上のみならず、テレビのニュースでもとりあげられる機会が増えています。その中でも、2021年10月28日には多くの人々にとって馴染み深いFacebookが社名を「Meta(メタ)」に変えたことが大きな話題となり、「メタバース」に注目が集まるきっかけの一つとなりました。

「Facebook、社名を「メタ」に変更 仮想空間に注力」

さらに2022年2月18日には、米Google傘下のYouTubeがメタバースへの参入を検討していると日本版公式ブログで明かしました。

「YouTubeがメタバース参入を検討中「まずはゲームに適用」

また、新型コロナウイルスの流行を経て、Zoomを筆頭とするオンラインMTGが一般的なものとなりました。こうしたバーチャルでのコミュニケーションに対する心理的ハードルが大きく引き下がったことも、人々が「メタバース」に興味をもつようになった要因の一つと考えられます。

さらに今後は、ソーシャルメディアにおいてもメタバースが当たり前の存在になるかもしれません。

2023年2月に、ニール・モーハン氏がYouTubeの新CEOに就任しました。彼はメタバースについて「メタバースはイノベーションを語るうえで避けることができない。現在、視聴体験により没入感を感じることができるような新たなアプローチについて検討中である。」と言及しています。

このことからも、私たちにとって最も身近なアプリケーションの一つであるYouTubeで今後web3分野が発展していくと予想されます。

2030年には世界で1.5兆米ドル(約200兆円)を超える規模の市場になるとの見通しもあるメタバースですが、なぜここまで注目されているのでしょうか。Web3.0とメタバースの関係性を紐解く前に、そもそもWeb3.0とは一体どのようなものなのかについて次項で詳しく解説していきます。

なお、メタバース関連のトピックについてはこちらのサイトでも詳しくまとめられています。

出典:メタバース相談室

Web3.0とは?

出典:pixabay

Web3.0を解説するにあたり、これまでのWebがどのようにして進歩してきたかを以下の3つの時代に分けて解説します。

①Web1.0:1995年~(ホームページ時代)

②Web2.0:2005年~(SNS時代)

③Web3.0:これから(分散型インターネットの時代)

①Web1.0(ホームページ時代)

Web1.0時代は、Yahoo!やGoogle、MSNサーチなどの検索エンジンが登場し始めた時期で、Webがまだ一方通行であった時代です。ウェブデザイナーのDarci DiNucci氏が1999年に、進化の段階を区別するためにWeb1.0とWeb2.0という呼び方を用いました。

ウェブサイトは1990年代初めに静的HTMLのページを利用して作られ、個人が「ホームページ」を持ち情報を発信する、という文化もこの時代から生まれました。ただし、インターネットの接続速度も非常に低速であり画像を1枚表示するだけでも時間がかかりました。

また、閲覧できる情報は情報作成者によってのみ管理されるため、閲覧ユーザーがデータを編集することはできません。こうした特徴からweb1.0は「一方向性の時代」とも呼ばれます。

②Web2.0(SNS時代)

Web2.0時代になるとYouTube、Twitter、InstagramなどのSNSが登場し、誰もが発信者となりました。Web1.0時代が「一方向性の時代」とされたのに対し、Web2.0時代は様々な人との双方向の情報のやり取りができるようになったのです。

また、Google、Amazon、Facebook、AppleといったいわゆるGAFAと呼ばれるプラットフォームサービスが大きく躍進し、巨大テック企業となっていった時代でもあります。

一方で、個人情報がGAFAのような特定の企業へ集中することによる個人のプライバシー侵害の可能性が問題視されています。一部の大企業に集まる情報には、住所や年齢、性別など基本的な個人情報だけでなく、個人の嗜好や行動履歴までもが含まれ、それらが利用できる状態になっているからです。

また、中央集権型の情報管理はサイバー攻撃を受けやすく、多くのユーザーに影響を及ぼす危険性があるという点も指摘されています。

2018年には「Facebook」が5000万人超のユーザー情報を外部に流出。また、2019年には「Amazon」が他の利用者の氏名や住所、注文履歴などが誤表示されて約11万アカウントのプライバシーが流出。さらには2022年には、「Twitter」の利用者およそ2億3000万人分の個人情報が流出するなど、実際にセキュリティ上のリスクが露見した例もあります。

③Web3.0(分散型インターネットの時代)

冒頭でも述べたように、Web3.0とは「次世代の分散型インターネット」のことを指します。さらに言うとGAFAやその他巨大テック企業へ個人情報が集中している現状から、次世代テクノロジーを活用して情報を分散管理することで、巨大企業に情報が集中しない新しい形の情報管理のあり方として期待されているのがWeb3.0の概念です。

特定企業へ個人情報が集中していることによるリスクは前項でご説明したとおりで、2021年以降、特定企業へ集中した情報を分散しようとする動きが活発化しています。

Web3.0とメタバースの関係性

出典:pixabay

メタバースはWeb3.0における”受け皿”

メタバースは、Web3.0「次世代の分散型インターネット」を構成する様々な技術革新の、言わば”受け皿”のような存在です。

Web3.0はブロックチェーンという基盤技術の上に成り立っており、仮想通貨はWeb3.0における文字通り”お金”の役割を果たします。

そして、現実世界の”金融サービス”はWeb3.0ではDeFi(分散型金融)によって置き換えられ、NFT(非代替性トークン)がWeb3.0におけるデジタル資産の”所有権”を明確にします。また、Web3.0では従来までの”会社組織”DAO(分散型自律組織)という形態をとるようになると予想されています。

これら全てを包括する”3Dの仮想空間(受け皿)”がまさにメタバースです。

Web3.0と呼ばれる様々な技術と連携すれば、メタバースは「インターネット上に作られた3Dの仮想空間」にとどまらず「現実世界と同じように遊んだり、仕事や取引をしたり、何かを創って交流したりする仮想世界」となる大きな可能性を秘めています。

Web3.0の要素が含まれないメタバースも存在する

ここで重要なことは「メタバース=Web3.0」と安易な等式を立てないことです。先述したように、今後メタバースにおいてWeb3関連技術の受け皿となっていくことでしょう。

しかし、これらの技術やサービスがなければメタバースが構築できないというわけではありません。ブロックチェーンやNFTといった技術を用いていなくても、利用できるメタバースサービスも多数存在します。

メタバースは「インターネット上に作られた3Dの仮想空間」程度の曖昧な概念であり、統一された定義はありません。したがって、現段階においてはWeb3.0の技術とメタバースは全く別物であり、「相性が良い」という事実、それ以上でもそれ以下でもありません。

たとえば住宅展示場のメタバースといった分野においては、Web3の要素が含まれないメタバースも普及していくと思われます。むしろこういったメタバースにおいて、NFTを発行したり、ブロックチェーンを用いたりしてしまうと、かえって無駄なコストが発生してしまいます。

Web3.0におけるメタバースのメリット

不正や改ざんを防止できる

ブロックチェーン技術を用いることで、メタバース内で取引される通貨やモノの管理が簡単になります。

Web3.0以前のメタバースでは、違法な複製やチートと呼ばれるデータの改ざん行為など、コミュニティの違反を完全になくすことはほぼ不可能でした。こういった不正が横行すると、運営会社に金銭的なダメージがあるだけでなく、公平なプレイ環境が提供できなくなったり、ユーザー離れを引き起こしたりします。

ブロックチェーンを活用したメタバースであれば、独自のアルゴリズムによってそもそも不正な改ざんを行うこと自体が不可能になります。

また、ゲーム内のデジタルアセットをNFTとして管理すれば、マーケットの拡大も可能です。NFTによって、そのデータが世界で唯一であることを証明でき、複製することが難しくなるため、限定アイテムなどが文字通り「限定」の価値が持てるからです。

このようにメタバース内の経済活動を加速するうえで、不正や改ざんを防止できるWeb3.0の技術は重要な存在だと考えられています。

プレイヤーがメタバース内で収益を上げられる

メタバースゲームのメリットとして、プレイヤー自身がゲームのプレイにより収益を得られることが挙げられます。従来のメタバースゲームでは、ゲーム内でしか価値がないものでした。

しかしWeb3.0でのメタバースでは、ゲーム内通貨に仮想通貨を用いることで、ゲームをしながら稼ぐという「Play to Earn(P2E)」が可能になりました。

また、ゲーム内に構築された土地も、売買や賃貸の対象になります。後述の事例でも紹介しますが、メタバース内の土地であっても取引されているメタバースも存在します。

また、メタバース内で入手したキャラクターやアイテムなどは、互換性のある他のゲームで使用できます。これは、NFTが持つ「データそのものは、特定のブロックチェーンプラットフォームに依存せず、所有者自身で管理できる」という特徴によるものです。

これによりユーザーは、運営会社の倒産やサービス終了に伴うデータ喪失という最悪の事態を回避することができます。

ビジネスチャンスが広がる

最近では企業がメタバース上でPRイベントや、コレクションを開催することも増えてきました。特にコロナ禍以降でその数は大きく増えたように感じます。イベントを開催するにあたって、分散型のネットワークで構築されたメタバースを利用すれば、企業の最大の懸念点である個人情報管理・セキュリティの面が解消されます。

また、NFTの発行によってブランドのファンとのコミュニティを形成するなど、リアルではなかなか接点を持てなかった人とつながることができます。メタバース空間だからこそ実現できるコラボレーションや仕掛けづくりによって、現実世界におけるマーケティングよりも高い対費用効果を発揮します。

Web3.0におけるメタバースの現状の課題

ハード面の強化

Web3.0におけるメタバースの活用が普及するためには、ハード面の強化が必要不可欠です。具体的にはVR機器の小型軽量化と、描写スペック向上です。

バーチャルの世界でより多くの時間を過ごすためには、より没入的で自然で表現豊かなVR機器が必要となります。現状のVR機器を数時間装着し続けるには、重さ、大きさともにまだまだ改良の余地があります。また、より高速通信ができ高画質で仮想世界を描くことのできる機器スペックも、今後さらに高いレベルで要求されることが予想できます。

2021年10月に社名を変更したMeta社(旧Facebook)が大量の資金を投入するなど社運をかけて推進しているのもまさにこのハード面です。同社は自社製品のQuestシリーズにすさまじい金額の投資をしています。このことからiPhoneやMacBookのような自社デバイスを普及させてこの課題を解決したいという思惑が読み取れます。

魅力的なコンテンツの充実

メタバースの普及にはハードウェアの進化ではなく、ソフト側つまりコンテンツの充実も不可欠です。そして、この分野において日本は大いに躍進できる可能性があります。なぜなら、日本は世界屈指の「コンテンツ大国」だからです。

日本国内には漫画やアニメ、ゲームなど面白いコンテンツを作ることのできるクリエイターが大勢おり、クリエイターをリスペクトする文化も存在します。加えて、ドラゴンボールやワンピース、ファイナルファンタジーやマリオなどの世界的な知名度と評価が高い作品の権利を持っているのが強みです。

優れたコンテンツを作る人材、文化、権利が全て揃う国は世界の中でも日本だけであるという点は、今後メタバース市場が拡大していく中で一歩抜きん出た強みであると言えます。

メタバースの様々な事例

Second Life(セカンドライフ)

出典:gemelog.com

Second Life(セカンドライフ)は2003年にリリースされた元祖メタバースとも言えるサービスで、プレイヤーは3D仮想空間で自分のアバターを作り、他の参加者とコミュニケーションをとることができます。

Web3.0の文脈でメタバースが注目されるようになったのは2021年頃ですが、それよりもなんと約20年前にメタバースの概念自体は既に存在していたのです。

しかしSecond Lifeのプレイ人口は下降の一途を辿り衰退してしまいます。その要因は「画質が悪く没入感が乏しい」「パソコンの要求スペックが高すぎる」などいくつかが挙げられますが、最大の要因は「そこで何もすることがないこと」でした。

つまり、前項で挙げたハードとソフトのどちらにおいても不十分だったため、メタバースの成功事例とは言えない結果に終わり、日本では「早すぎたメタバース」という負のイメージがついてしまいました。

同サービスは、現在もコアユーザーによる取引が続いていたり、モバイル版の開発が発表されたりと、サービスは継続中のため、今後の展開次第では再び盛り上がりを見せるかもしれません。「元祖メタバース」の動向については続報が待たれます。

元祖メタバースの『セカンドライフ』、モバイル版が開発中。デスクトップ版の資産は引き継げる見通し | テクノエッジ TechnoEdge

Fortnite(フォートナイト)

出典:fn-games.com

Fortnite(フォートナイト)はエピックゲームズ社が開発・発売している、2023年時点で5億人のユーザーを誇る大人気バトルロワイヤルゲームです。

リリース当初のプレイヤー達はゲームそのものを楽しむためにFortniteを利用していましたが、その後はコミュニケーションの場として利用され始め、今では単なるゲームではなくメタバースへと変貌を遂げています。

Fortniteのメタバースでは特設ステージでのライブや映画の上映会などのイベントも開催され、ゲームをするのではなく、そこに行って友人や他のプレイヤーと交流を深めることを目的としたユーザーも非常に多くなっています。

有名な事例としては、2020年8月に、米津玄師が日本人として初めて行なったバーチャル公演があります。仮想空間でのライブという斬新なパフォーマンスは、国内外のメディアでも数多く取り上げられ、話題になりました。

2023年7月にはフル映像がYouTube上にアップされて再び脚光を浴びています。

Fortniteのメタバースが持っている最大の強みは、ゲームとしての開発環境をそのままメタバースの開発環境に転用できる点です。

Fortniteはもともと、自分だけのオリジナルマップを作れる「クリエイティブモード」が存在しました。この仕組みやデータがメタバース内のエディター上でも使用できるため、ユーザーは過去のアセットを利用して、いとも簡単にマルチプレイ環境を構築できます。

柔軟な開発環境と豊富な素材、そして直感的な操作を兼ね備えたサービスであるFortniteは、現在最も成功を収めているメタバースといえるでしょう。

Decentraland(ディセントラランド)

出典:Decentraland

Decentraland(ディセントラランド)は、イーサリアムブロックチェーンをベースとしたVRプラットフォームで、メタバース内でゲームをしたりアイテムやコンテンツを作成・売買することが可能です。

Decentralandでは「LAND」というメタバース内の土地を保有・マネタイズできる点や、NFT化したアイテムをメタバース内で取引できる点が特徴です。

ゲーム開発の経験がない人でも簡単にゲームやアイテムを作成できるようなクリエイター機能が充実しているため、新規ユーザー参入のハードルも低め。デザイン性に優れたプラットフォームのため、ファッション関係のイベントも多数実施されています

また、Second LifeやFortniteでは中央集権的な組織運営によってコンテンツが提供されているのに対し、Decentralandはブロックチェーンを基盤にした分散型のメタバースとなっています。

Decentralandではユーザー自身が何を構築しどう使うのかを主体的に決定していくことを基本方針としており、これはまさにWeb3.0の概念と通ずるものがあります。Decentralandは最先端のメタバース事例の一つとして今後も注目です。

The Sandbox(ザサンドボックス)

出典:METAVERSE POST

The Sandboxは、イーサリアムのブロックチェーン上で提供されているNFTゲームです。

ユーザーは仮想空間上にLAND(土地)を購入またはレンタルをすることで、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成できます。

施設などを一定期間貸し出すことで、現実の不動産ビジネスと似たような形態で収益を得ることも可能なため、「遊んで稼げる」メタバースだといえます。

プログラミング不要で3Dゲームが作成できるツールなども用意されており、高度なスキルがなくともマーケットプレイスへ出品することができます。

パリス・ヒルトンやドラゴンボール、北斗の拳といったユニークなコラボで注目を浴びているThe Sandboxですが、LANDは発行数量に上限があることから、ユーザー数の増加に伴ってその価格は上昇すると予想されています。

さらには、2023年2月にはサウジアラビアのデジタル政府機関との連携も発表しており、今後の活躍が期待される大注目のプロジェクトです。

The Sandbox、サウジアラビアとメタバースで提携 SAND高騰

まとめ

本記事では、Web3.0(次世代の分散型インターネット)メタバース(仮想現実)それぞれの概要と、この2つの関係性について解説してきました。

VR機器の小型軽量化や描写スペック向上、そしてコンテンツの充実が進めば、Web3.0におけるメタバースの重要性はさらに増していくことでしょう。

仮想空間でのコミュニケーションは漫画の世界のことのようですが、技術レベルではすでに実現可能なものになっています。さらなるサービス登場に期待が高まります。

【2023年】”Web 3.0” とは?〜分散型インターネットでNFTが担う役割〜

2021年以降話題を集めている仮想通貨やNFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」、メタバース(仮想現実)と共に、”Web 3.0” という言葉を耳にする機会が増えてきました。本記事では、Web3.0に至るまでのWebの歴史を振り返った上で、Web3.0とは一体どういった概念なのか、加えてWeb3.0におけるNFTの役割に焦点を当てて解説していきます。

  1. Webの歴史は3つの時代に分けられる
  2. ブロックチェーンとは?
  3. Web3.0で実現すること
  4. Web3.0におけるNFTの役割
  5. まとめ

Webの歴史は3つの時代に分けられる

Web3.0を解説するにあたり、これまでのWebがどのようにして進歩してきたかを以下の3つの時代に分けて解説します。

Web1.0:1995年~(ホームページ時代)

Web2.0:2005年~(SNS時代)

Web3.0:これから(分散型インターネットの時代)

ただし、Web1.0/Web2.0/Web3.0の定義には明確な線引きはなく、曖昧な部分がある点にご注意ください。

①Web1.0(ホームページ時代)

出典:pixabay

Web1.0時代は、Yahoo!やGoogle、MSNサーチなどの検索エンジンが登場し始めた時期で、Webがまだ一方通行であった時代です。ウェブデザイナーのDarci DiNucci氏が1999年に、進化の段階を区別するためにWeb1.0とWeb2.0という呼び方を用いました。

ウェブサイトは1990年代初めに静的HTMLのページを利用して作られ、個人が「ホームページ」を持ち情報を発信する、という文化もこの時代から生まれました。ただし、インターネットの接続速度も非常に低速であり画像を1枚表示するだけでも時間がかかりました。

また、閲覧できる情報は情報作成者によってのみ管理されるため、閲覧ユーザーがデータを編集することはできません。こうした特徴からweb1.0は「一方向性の時代」とも呼ばれます。

②Web2.0(SNS時代)

出典:pixabay

Web2.0時代になるとYouTube、Twitter、InstagramなどのSNSが登場し、誰もが発信者となりました。Web1.0時代が「一方向性の時代」とされたのに対し、Web2.0時代は様々な人との双方向の情報のやり取りができるようになったのです。

SNSによって誰もがWeb上で簡単に情報を発信できるようになり、Webは閲覧するだけのものではなく、自らが参加できるものとなりました。

また、Google、Amazon、Facebook(元Meta)、AppleといったいわゆるGAFAと呼ばれるプラットフォームサービスが大きく躍進し、巨大テック企業となっていった時代でもあります。

Webが多くの人々に馴染みのあるものとなったWeb2.0時代ですが、それと同時に問題点も浮き彫りになってきました。それが次の2つです。

  • 特定企業への個人情報の集中(プライバシー問題)
  • 中央集権型によるリスク(セキュリティ問題)

1つ目に、個人情報が特定の企業へ集中することによる個人のプライバシー侵害の可能性が問題視されています。

現在、Google、Amazon、Facebook、AppleといったGAFAを筆頭に一部の大企業には、あらゆる情報が集まっています。これには、住所や年齢、性別など基本的な個人情報だけでなく、個人の嗜好や行動履歴までもが含まれます。

これらの企業は世界的に利用されているサービスを展開しているため、世界中のあらゆる個人情報が独占的に集められる状態になっているのです。プライバシーの観点からこの現状を問題視する声も多く、個人のプライバシーをどう守るかは重要な課題のひとつとなっています。

2つ目の問題点として、中央集権型の情報管理はサイバー攻撃を受けやすく、多くのユーザーに影響を及ぼす危険性があるという点が挙げられます。例えば2018年、GAFAの一角である大手SNS「Facebook」は5000万人超のユーザー情報を外部に流出してしまいました。

現在、ユーザーの個人情報はサーバーで集中管理されています。このサーバー・クライアント方式は一般的な管理方法ではありますが、サイバー攻撃を受けやすく、個人情報の流出や不正アクセス、データの改ざん、Webサイト/Webサービスが利用できなくなる、などのリスクがあります。

③Web3.0(分散型インターネットの時代)

出典:pixabay

Web3.0とは「次世代の分散型インターネット」のことを指します。さらに言うと、Google、Amazon、Facebook(元Meta)、Appleといった所謂GAFAやその他巨大テック企業によって個人情報を独占されている現状から、次世代テクノロジーを活用して情報を分散管理することで、巨大企業による独占からの脱却を目指そうとしているのがWeb3.0の概念です。

特定企業によって個人情報を独占されることによるリスクは前項でご説明したとおりで、2021年以降、特定企業によって独占された情報を分散しようとする動きが活発化しています。

そして、この情報の分散を可能にするのが次に解説するブロックチェーンの技術です。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、「分散型台帳」と呼ばれています。

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、「データの耐改ざん性」「安価なシステム利用コスト」「ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)」といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

Web3.0で実現すること

出典:pixabay

Web2.0時代の課題を解決できる

Web3.0の時代では、情報管理のスタイルがブロックチェーン技術により非中央集権型となります。つまり、個人情報は特定の企業ではなくブロックチェーンに参加したユーザーによって分散管理されます。また、サービスを提供する基盤は特定企業に限定されず、ユーザーひとりひとりが参加するネットワークがサービスを提供する基盤となるのです。

ユーザー同士が、ネットワーク上で互いのデータをチェックし合うということは、不正アクセスやデータの改ざんが非常に難しいことを意味します。特定企業が個人情報を握ることもなければ、情報漏洩によって多大な被害を被ることもありません。

このように、Web3.0の概念が実現すれば個人情報が分散管理され非中央集権型の情報管理スタイルとなり、不正アクセスや情報漏えい、データ改ざんのリスクが軽減し、Web2.0の問題点が解決できると考えられています。

Web3.0による新たなメリットも

加えて、Web3.0にはサービスの安定化と管理コストの削減というWeb2.0にはないメリットもあります。Web3.0の仕組み上、特定の管理者というものを必要とせずプログラムが自動で学習しサービスを運用していきます。そのため、従来であれば起こりうるメンテナンスによるサービス停止や人為的ミスの心配もなくなり、時間的、金銭的コストが削減できます。

Web3.0におけるNFTの役割

出典:pixabay

Web3.0実現のために不可欠な技術「NFT」

ブロックチェーン技術を基盤とするWeb3.0ですが、デジタルデータを分散管理する上で不可欠な事があります。それは、そのデジタルデータが本物である証明です。

管理者を置かずに全ての情報を分散管理するためには、やり取りされる情報の信頼性がこれまで以上に大切になってきます。出どころが分からない嘘の情報や不正にコピーされたデジタルデータが流通してしまうことは、管理者不在のWeb3.0においては致命的な欠陥となりえます。

しかし従来のデジタルデータは簡単にコピーでき、本物とコピーの区別をつけることはほぼ不可能でした。

そこで、NFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の出番です。「デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術」であるNFTが、Web3.0をより盤石なものにします。

NFT=”証明書”付きのデジタルデータ

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。

つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。

NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。

例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。

不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。

そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。

NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。

これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。

まとめ

本記事では、Web時代の歴史を振り返り、Web3.0によってどんな事が実現するかを解説し、そしてその中でNFTが担う役割についてご紹介してきました。Web3.0という大きな概念の中の、欠かせないひとつのピースとしてNFTが存在しています。

本記事をきっかけにNFTについて興味を持たれた方は、NFTの様々な活用事例について解説している過去の記事を是非御覧ください。