近年、NFTがニュースやSNSでも取り上げられることも増えてきましたが、そのNFTと関連して「メタバース」という言葉も耳にすることも増えてきました。実はメタバースの概念そのものは以前から存在しており、近年になって注目を集めるようになった背景にはNFT技術が深く関係しています。
本記事では、従来のメタバースの概念とNFT技術の基礎を説明した上で、メタバースとNFTの掛け合わせによって新たにどのようなことが実現できるのかを解説していきます。
近年注目を集める「メタバース」
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メタバースに関する近年のトピックス
近年、「メタバース」というワードがSNS上のみならず、テレビのニュースでもとりあげられる機会が増えています。その中でも、2021年10月28日には多くの人々にとって馴染み深いFacebookが社名を「Meta(メタ)」に変えたことが大きな話題となり、「メタバース」に注目が集まるきっかけの一つとなりました。
さらに2022年2月18日には、米Google傘下のYouTubeもメタバースへの参入を検討していると日本版公式ブログで明かしました。
また、2020年以降のコロナ禍において、Zoomを筆頭とするオンラインMTGが一般的なものとなりました。こうしたバーチャルでのコミュニケーションに対する心理的ハードルが大きく引き下がったことも、人々が「メタバース」に興味をもつようになった要因の一つと考えられます。
メタバースとは
メタバースとは「オンライン上に構築された仮想空間」です。
言葉で説明するとイメージがつきにくいかも知れませんが、実はメタバースという概念そのものは以前から存在しているのです。
個性豊かな動物たちが暮らす村であなた自身 が生活していく任天堂の大人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」もひとつのメタバースです。
全世界で1億4千万人以上がプレイするモンスターゲーム「Minecraft(マインクラフト)」は、オンラインで仲間たちと冒険に出かけるも良し、多くのプレイヤー達が住民として暮らすサーバー内で各々建築をしたり農業を営むも良しといった、非常に自由度の高いメタバースです。
つまりメタバースとは、「画面の向こうにあるもうひとつの世界」を指します。
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コンシューマー向けゲームを通じてすでに概念として存在していたメタバースですが、近年のVR/AR技術の向上によって「より現実に近い(リアリティの高い)仮想空間」が作られるようになってきました。
さらに、デジタルデータに唯一性をもたせる技術であるNFTを活用することにより、次項で述べる ”従来のメタバースの課題” を解決することができるようになったのです。
従来のメタバースの課題
従来のメタバースの課題、それは「メタバース内のデジタルデータの価値を証明することが困難である」という点です。
先述した「あつまれ どうぶつの森」や「Minecraft(マインクラフト)」の中には、ゲーム内で使える独自の通貨やゲーム内アイテムが存在しています。
ただし、それらはあくまでもゲーム内だけで使える通貨やアイテムであって、現実世界において価値をもたせることはできません。どうぶつの森の中でお金をいくら稼ぎ、家を増築し、貴重な家具を持っていようが、それらは全てゲーム内での出来事に過ぎないのです。
つまり従来のメタバースと現実世界では、価値の交換が出来ませんでした。なぜならゲーム内データはいくらでもコピーが可能で、価値あるものだという証明が困難であったためです。
そこで登場するのがNFT=「Non-Fungible Token」です。
このNFTという技術を用いることによって、これまで不可能だったゲーム内データの価値の証明が可能になり、現実世界の通貨で取引できるようになるのです。
NFTとは?
NFT=”証明書”付きのデジタルデータ
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NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性とは「替えが効かない」という意味で、NFTにおいてはブロックチェーン技術を採用することで、見た目だけではコピーされてしまう可能性のあるコンテンツに、固有の価値を保証しています。
つまり簡単にいうと、NFTとは、耐改ざん性に優れた「ブロックチェーン」をデータ基盤にして作成された、唯一無二のデジタルデータのことを指します。イメージとしては、デジタルコンテンツにユニークな価値を保証している”証明書”が付属しているようなものです。
NFTでは、その華々しいデザインやアーティストの名前ばかりに着目されがちですが、NFTの本質は「唯一性の証明」にあるということです。
NFTが必要とされる理由
世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した「NFT=非代替性トークン」は文字通り後者となります。
例えば、紙幣や硬貨には代替性があり、替えが効きます。つまり、自分が持っている1万円札は他の人が持っている1万円札と全く同じ価値をもちます。一方で、人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石、絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。しかし、画像や動画などのDigital(デジタル)な情報は、ディスプレイに表示されているデータ自体はただの信号に過ぎないため、誰でもコピーできてしまいます。
そのため、デジタルコンテンツは「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。
実際、インターネットの普及によって音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまっています。
NFTではそれぞれのNFTに対して識別可能な様々な情報が記録されています。そのため、そういったデジタル領域においても、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。
これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが期待できるため、NFTはいま、必要とされているのです。
NFT×メタバースで実現すること
NFTアイテムや建物、土地をメタバースで取引できるようにする
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これまでのメタバースでは、ゲーム内アイテムが簡単にコピーできてしまうため価値の証明が困難でした。また、そのゲームで遊ぶことをやめてしまえば、これまで築き上げてきたゲーム内資産は再度ゲームを起動するまで利用されることはありません。
しかし、アイテムや土地・建物といったゲーム内資産をNFT化することにより、現実世界と同じく唯一無二である価値が生まれます。価値が生まれるとそのアイテムや土地が欲しい人との間に取引が生まれ、その取引はゲーム内通貨ではなく、仮想通貨や法定通貨で行われます。
つまり、メタバースとNFT技術を掛け合わせることによって、現実世界でのモノや不動産の売買と同様、メタバース内でのマネタイズが可能となるのです。
ゲーム内での活動がそのまま現実世界の価値とリンクするようになるという点で、NFT×メタバースの掛け合わせはとても大きな可能性を秘めています。
メタバースでNFTアートを展示する
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NFTは前述の通り、いままではただのコピー可能な情報の塊にすぎなかったデジタルコンテンツに対して真贋性を担保できます。一つひとつの作品に対して固有の価値を証明できるNFTは現在、芸術分野での導入が進み始めています。
メタバース上で企画展を開催する際にNFT化した作品を展示すれば、ユーザーは移動や待ち時間なくアートを鑑賞できます。
また、メタバース内で自身のアバターを使って記念撮影をしたり、実際に作品を手に取ったりすることも可能でしょう。設計次第では気になっているNFTをその場で購入することも可能であるため、従来とは異なる角度から芸術に触れることができます。
美術館の来場者は中高年層が大半を占めていますが、NFTを使ったアプローチを採用すれば、若年層や芸術・美術に関心のなかった層も取り込めるでしょう。
メタバースのアバターでNFTファッションを楽しんでもらう
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実はメタバースとNFTの組み合わせという文脈では、ファッション分野が一番相性が良いのかもしれません。
メタバース上にバーチャル店舗を設置すれば、自身のアバターにNFTのデジタルファッションを着用させることができます。もちろんカスタムパーツとして他のブロックチェーンゲームで使用するのも手ですが、実店舗での試着の代用として利用することもできます。
過去にはZOZOSUIT(すでにサービス終了)など、実際に着用せずともフィット感やサイズ選択ができるサービスもあったように、現実のアセット以外に顧客との接点を持てるという点は大きなメリットになり得るでしょう。
また、ハイブランドがNFTアイテムを販売するケースも増えており、価値の高いファッションNFTが広まっています。たとえば、ルイ・ヴィトンは約586万円でNFTを限定発売しており、デジタルの世界においても「憧れのLOUIS VUITTON」を手にする価値を提供しています。
NFT×メタバースの活用実例
続いて、2023年時点のNFT×メタバースの活用事例をご紹介します。
The Sandbox
出典:The Sandbox
The Sandboxは、3Dのオープンワールドの中で、建物を建築したり自分の”オリジナルのゲーム”を作ることができます。何をするかはプレイヤーの自由で、マインクラフトに似たジャンルのゲームです。
The Sandboxのメタバース内には「LAND」というNFT化された土地が存在し、現実世界の土地と同じように売買・所有することが出来ます。
LANDを保有した人は自分の土地を自由にアレンジすることができ、例えば自作のゲームを公開して ”ゲームセンター化”したり、何か催し物を開催したい人向けにスペースの一部を貸し出す ”貸しイベント会場化”する事ができます。
実際に数多くのアーティスト達が自らの作品を展示する場としてThe Sandboxを利用しており、また日本を代表するゲーム会社であるスクウェア・エニックスは会社の広報スペースとしてLANDを保有しています。
現実世界の土地と同じように、メタバース内のLANDを起点としたさまざまなビジネススタイルが個人・企業問わず誕生している点がThe Sandboxの魅力です。
Decentraland
出典:Decentraland
Decentralandは、イーサリアムブロックチェーンをベースとしたVRプラットフォームで、先程ご紹介したThe Sandbox同様、仮想空間内でゲームをしたりアイテムやコンテンツを作成・売買することが可能です。
ゲーム性は両者共通する部分も多く、「LAND」という仮想現実内の土地を保有・マネタイズできる点や、NFT化したアイテムをメタバース内で取引できる点も同じです。
一方、The Sandboxとの違いはその ”世界観” です。The Sandboxの世界が全て四角いブロックで構成されているのに対し、こちらのDecentralandは滑らかな3Dポリゴンで構成されており、よりポップで親しみやすい雰囲気の世界観が特徴です。
個性派人気アーティスト「きゃりーぱみゅぱみゅ」や、世界的に有名なセレブであるパリス・ヒルトンとのファッションコラボが話題となったことからも分かるように、そのポップな世界観とファッション業界との親和性が高いこともDecentralandの特徴のひとつです。
Axie Infinity
Axie Infinityは、2018年にリリースされたメタバースゲームです。
このゲームの特徴はAxieというNFTペットを使って対戦や育成をすることによって、仮想通貨AXSを稼ぐことができる、いわゆる「Play to Earn」のゲームモデルであることです。
もともと、Axie Infinityはベトナムで開発されたこともあり、東南アジアで大きな広がりを見せています。物価も安くかつ賃金も低いこれらの国では、ゲーム内報酬だけで十分生活を送っていけるため、Axie Infinityを仕事にしている人もいたほどでした。
また、このゲームは当初イーサリアムブロックチェーン上のゲームとして普及しましたが、イーサリアムブロックチェーンにて起こった取引手数料の高騰やトランザクションスピードの遅延といったスケーラビリティ問題を受け、現在は独自のイーサリアムサイドチェーン「Ronin」で稼働しています。
サイドチェーンとは、メインチェーンの問題を解決するために開発された別の独立しているブロックチェーンのことです。Roninでの稼働により、Axie Infinityのプレイヤーは取引手数料が削減できるようになりました。
ガバナンストークンであるAXSの価格が下落しているため、全盛期よりは稼げなくなっていますが、その分ピーク時に比べると初期費用が安くなっているので、少額で参入してみるのも一手でしょう。
まとめ
NFTを活用したメタバース市場は今後急成長することが期待されており、様々な業種の企業が参入をすでに始めています。
例えば、SHIBUYA109渋谷店(東京都・渋谷区)を中心とした4つの施設を展開する株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、「The Sandbox」のメタバース上に「SHIBUYA109 LAND」を開設することを発表しました。
109が展開するオリジナルNFTの販売やNFTが手に入るミニゲーム、メタバース上での広告事業など、様々な展開を行うことがアナウンスされています。
SHIBUYA109が「メタバース・NFT事業」に本格参入!
また、PUBGの大ヒットにより2021年度に約2,000億円の売り上げを記録した韓国のゲーム大手:Kraftonは、暗号資産ブロックチェーン・ソラナ(SOL)を開発するソラナラボと連携し、NFTを利用したソラナ基盤のゲームを共同開発する計画を発表しました。
今後もNFT×メタバースの掛け合わせによって、これまでにない新しいモノや体験が次々と生み出されていくことでしょう。