ブロックチェーンがコールドチェーンにもたらす変化とは?~温度管理・トレーサビリティへの活用~

冷凍技術の革新は私たちの食生活を大きく変容させました。1930年に戸畑冷蔵(現日本水産の前身)が「冷凍いちご」を販売してから100年近くが経った現在では、スーパーやコンビニで鮮度の高い食品を購入したり、あるいはファミリーレストランなどの外食産業では多種多様なメニューが低価格かつハイクオリティで提供されています。

こうした便利なサービスが確立しているのは、「コールドチェーン」という仕組みが関係しています。そしてさらに2024年現在、コールドチェーンへブロックチェーンを導入しようという動きが見られます。

本記事では、コールドチェーンやブロックチェーンのそもそもの仕組みや実際の事例に触れつつ、これからの温度管理のあり方についてご紹介していきます。

  1. コールドチェーンについて学ぶ
  2. ブロックチェーンとは?
  3. ブロックチェーンがコールドチェーンをどう変える?
  4. RFIDによって、さらにブロックチェーンの可能性は広がっている
  5. ブロックチェーン×コールドチェーンの事例
  6. まとめ

コールドチェーンについて学ぶ

そもそもコールドチェーンって?

コールドチェーンの流れ
出典:株式会社ロジクエスト

コールドチェーンとは、「生鮮食品や冷凍食品といった低温管理が必要な商品を、生産から輸送、保管といった流通プロセスを一貫して所定の温度を保つ仕組み」のことです。日本語では「低温物流体系」や「低温ロジスティクス」「生鮮SCM(サプライチェーン・マネジメント)」とも呼ばれています。

現在では冷凍食品や生鮮食品だけでなく、花卉や医薬品、電子部品などさまざまな分野でコールドチェーンが活用されており、私たちの日常生活に欠かせない技術となっています。

コールドチェーンの重要性

冒頭にも説明した通り、コールドチェーンが整備されたことで私たちの生活は一変しました。では、具体的にはどのような場面でその役割を発揮しているのでしょうか?

コールドチェーンの主な目的は、低温状態を維持することによって各商品の品質を一定に保つことです。これまでの輸送方法といえば通常のトラックで屋外の倉庫などに常温で運搬されるのが一般的でしたが、クール便や冷凍・冷蔵倉庫の拡大によって低温流通が実現しました。これにより、鮮度を保ったまま消費者の元へ様々な商品を送ることができるようになりました。

また、低温状態を長期化させることで、各商品のロスも削減できますたとえば生鮮食品であれば低温管理によって雑菌の繁殖や鮮度の劣化を防ぎ、店舗でより長い期間販売できるため、賞味期限切れによる廃棄の減少に繋がります。

さらに、コールドチェーンは商品の販路拡大にも一役買っています。従来の輸送形態では各地に中継地点となる物流の拠点が必要であり、品質維持の観点から遠方へのダイレクト輸送が困難でした。そのため、低温管理が必要な商品の輸送エリアは基本的には出荷地の周辺数十キロに限られていました。

コールドチェーンによりこうした商品の長距離輸送が可能になったことで、出荷地から遠く離れた全国各地へ商品を届けることが可能となりました。一部地域でしか販売されていなかった商品や、鮮度を売りにした商品が遠方からでも購入できるようになり、経済圏を大幅に拡大させました。

コールドチェーンの影響は、物流だけに留まりません。医薬品や血液パックなどの温度管理にも必須の技術となっています。特にコロナ禍では、ワクチンの低温管理が重要な政策として各国で認識され、一気にコールドチェーンの普及が進んだともいわれています。

このように、コールドチェーンは物流業界以外にも、様々な業界へ影響を及ぼす重要なテーマとなっています。

コールドチェーンの課題

出典:shutterstock

いまや現代人の生活になくてはならないコールドチェーンですが、いくつかの課題も露見しています。なかでも、特に問題視されているのが、温度モニタリングにおける人為的なミスです。

鮮度や品質を担保する技術であるコールドチェーンでは、一貫した温度管理が絶対条件です。当然ながら、各商品は生産から消費者の手に届くまで、一定の温度が維持されているか定期的にチェックを行います。

一方で現行のコールドチェーン管理は、定期的な温度モニタリングと手作業による記録管理に頼ってきたため、人の手によるミスや不正が起こりやすく、リアルタイムでの温度管理や可視性にも欠けていました

人為的ミスが原因で空調が万全に機能していなければ品質の維持は担保できず、リアルタイムでモニタリングできなければ、スケジュールが少しずれるだけで想定外に商品を常温下に晒されることもあるかもしれません。

また、ミスではなく意図的に低温管理が怠られる可能性もあります。ベトナムなどの東南アジア諸国では、ドライバーの賃金体系が運賃の中から会社利益を含む必要経費を除いた金額が収入となるケースがあります。したがって、少しでもガソリン代を節約するために、定期的なエンジン停止を行っているドライバーも少なくないのです。商品の品質だけでなく、誠実なドライバーが損をすることにもなってしまいます。

リアルタイムかつシステマチックに監視を行わなければ、上記のようなミスや不正を解決することはできないでしょう。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、別名「分散型台帳」とも呼ばれています。

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、データの不正な書き換えや災害によるサーバーダウンなどに対する耐性が高く、安価なシステム利用コストやビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

詳しくは以下の記事でも解説しています。

ブロックチェーンがコールドチェーンをどう変える?

出典:Pexels

データの真正性が担保される

従来のデータベースでは、企業や個人がすでに記録された管理履歴を改ざんすることは(知識があれば)容易でした。特に管理者による内部不正を防いだり検知するのは非常に困難です。一方のブロックチェーンは「ハッシュ」や「ナンス」、「公開鍵暗号方式」といった様々な要素によって、管理者も含めて改ざんすることが著しく難しいデータベースになっています。

したがって、ドライバーや検温員といった各作業者のモラルに委ねられていた温度管理を厳格に行うことができます。これにより、理論上可能であった商品の品質の維持が内実ともに可能になります。

また、データが常に正しいのであれば、仮に冷蔵・冷凍機器が故障していて品質に問題が生じた場合も、すぐにその原因となっている地点を特定することができます。自動車や家電などリコールが発生しやすい製品の製造ラインでは、比較的こうしたデータの取得を行っていることが多いです。しかしながら、生鮮食品などの分野ではこうしたサプライチェーンの管理が徹底されているケースは多くありません。こうした分野でもすぐに問題の根源を特定できるというのは新たな価値になりうるでしょう。

チェーン全体でデータへアクセスできる

ブロックチェーンでは分散してデータの管理を行います。したがって、従来のデータベースのように場合によってはデータの改ざんが可能な特定特権的なの管理者を持ちません。チェーンの参加者全員がデータへアクセスすることも可能です。こうした特徴を活かして、チェーン全体で当事者意識を持って品質の管理に取り組むことができます。

たとえば、生産の段階で低温管理に最大限配慮している企業があるとします。しかし、その商品を配送するフェーズで温度管理を徹底しなければ、いくら生産者が努力したところで品質は向上しないままです。それどころか、現状のデータ管理では生産者は生産、配送業者は輸送のデータをそれぞれが管理しているために、生産者は原因が分からずじまいになってしまいます

一方でブロックチェーンを導入しているコールドチェーンであれば、自社の担当範囲以外でも商品の情報を追跡できます。したがって、どこのフェーズが品質を低下させているかを相互に監視・確認し合うことで、品質を一定に管理できるような環境を構築できます。

これはブロックチェーン技術を使った貿易プラットフォームや不動産プラットフォームが、売り手と買い手以外のどの関与者の間でどのような情報のやりとりがおこなわれているかを全プレーヤーで確認できるのと、構造は同じです。

面倒な確認も不要で正当な取引が可能

ブロックチェーンにはもう一つ、従来のデータベースにはない武器があります。それが「スマートコントラクト」です。スマートコントラクトとは、事前に決めた条件に基づいて、それを満たした場合には自動的に契約が実行されるという仕組みのことです。

このスマートコントラクトを活用すれば、正当な取引が可能になります。これまでの取引では、物流段階での温度管理が実際にされているかどうかはわかりませんでした。そのため「されているだろう」の暗黙の了解のもと、物流業者の信用において取引がされていました。

スマートコントラクトを用いれば、条件に低温管理(◯度以下で配送が行われた)を設定することで、条件を満たしている商品に対して自動的に受け入れを行えるため、両者にとってフェアな取引を瞬時に完了できます。時間や手間をかけることなく商取引が行えるため、時間をより有効に使うことができるでしょう。

また、万が一契約温度を下回ってしまったことが検知されたら、スマートコントラクトを活用することで自動で追加発注を掛けられます。追加発注の確認待ちによる時間のロスを大幅に削減することも可能になるかもしません。

RFIDによって、さらにブロックチェーンの可能性は広がっている

出典:shutterstock

コールドチェーンで重要な検討事項となるのが、データの取得点です。データの管理をブロックチェーンで行うことで真正性を担保したとしても、効率よくデータの連携をすることができなければブロックチェーンの導入メリットは限られたものになってしまいます。

これまでの多くのコールドチェーンでは「データロガー」と呼ばれる温度管理システムが用いられており、各ロガーから得た情報を事後管理するやり方が一般的でした。しかし、データロガーを用いた方法ではリアルタイムの状況に合わせた温度管理ができないばかりか、コストの観点からも適用できるのはトラックやコンテナ輸送のような商品が集積された管理形態に限定されてしまいます。そのため、コールドチェーンで求められる個別商品単位でのきめ細かな管理ニーズに応えることができませんでした。

この課題を解決するために、近年、RFIDと呼ばれるツールが利用され始めています。RFIDとは「Radio Frequency Identification」の略で、近距離の無線通信を用いてID情報などのデータを記録した専用タグと非接触かつ自動で情報をやりとりするシステムのことです。

出典:キーエンス ハンディターミナル活用ガイド

RFIDの最大の特徴は、遮蔽物・距離に強いこと、そして複数のタグを一括読取できることです。バーコードやQRコードのようにカメラを用いて読み取るシステムとは異なり、RFIDは電波を用いて情報をスキャンします。そのため、離れていたり、他のものと重なっている場合でも、安定して読み取ることが可能です。段ボールなど箱の中に入っているタグの情報も読み取ることができます。

さらに、ICタグにはラベルタイプのものやプラスチックなどのハードケースに包まれたもの、交通ICのように「かざす」動作で通信するNFCタイプのものなど様々な種類が存在します。サービスや商品の性質、読み取りシーンに合わせたタグを扱うことができるため、導入のハードルも一気に下がるでしょう。

こうしたツールを活用することで、新しいコールドチェーンでは、商品ごとの個別情報を一元管理し、各商品に個別最適化された温度管理を行うシステム(つまりはIoTシステム)が実現するといわれています。

RFIDとブロックチェーンを組み合わせることで、安全かつ簡易化された温度データ管理の時代が訪れるでしょう。受発注・決済・所有権移転も含めたトレーサビリティをリアルタイムかつ関係各社で一元管理できるようになるため、サプライチェーンマネジメントを大きく飛躍させると期待されています。

ブロックチェーン×コールドチェーンの事例

2024年現在、流通業界ではブロックチェーンをはじめとする先進技術によってプロセスイノベーションを起こすべく、各社で大規模な技術開発や実証実験が行われています。ここからは、ブロックチェーンとコールドチェーンを掛け合わせた事例についてご紹介します。

東京都立産業技術研究センター

東京都立産業技術研究センターはモノコトデザイン株式会社、ビヨンドブロックチェーン株式会社と共同で、ブロックチェーン技術を使ったセキュアなオープンプラットフォームを開発しています(2023年5月より一部機能の運用開始)。

このプラットフォームでは、POS(販売時点情報管理)やWMS(倉庫管理システム)など、すでに使われている複数のシステムとの連携しながら、コンタミネーション(異物混入)の防止や食品衛生規格などのトレーサビリティにも対応しています。

出典:東京都立産業技術研究センター

データの取得にはRFIDを採用しており、端末で収集したデータを、簡単に物流サーバへアップロードすることが可能です。また、配送ボックスは内部に開封検知機能と温度センサ機能を有しており、配送ボックスの外側にRFIDタグを貼付して、輸送履歴をトレースします。したがって、温度管理に加えて中身の入れ替えなどがないことを検出できる仕組みになっています。

同サービスはデータ改ざんの防止に利用されるブロックチェーンを使うことにより、今後ますます複雑化が予想される物流システムを透明化し、安全性の担保が必要となる商品のトレーサビリティデータを記録していくということです。

北京市

出典:shutterstock

2020年11月、中国の首都である北京市はブロックチェーンを活用したコールドチェーンプラットフォームである「北京冷鏈」をスタートさせました。これにより、消費者が冷凍食品を直接トレースできるようになりました。

契機となったのは同年の6月に、北京の食品卸売市場で輸入サーモンをさばいたまな板からコロナウイルスが検出されたことでした。感染の中心地である中国において、このニュースは大々的に報じられ、スーパーの店頭からはサーモンの姿が消えて輸入も一時停止されました。

こうした騒動を受け、「コールドチェーン導入」は、感染防止におけるキーワードに浮上しました。実は、先進国では食品物流の90%はコールドチェーンを経由しているのに対し、中国の普及率は極めて低く、70%は常温で管理されています。アイスクリームさえ毛布などに包んで常温で配送することもあるそうで、コールドチェーンの導入が喫緊の課題です。

そういった背景のなかで、公的な研究機関である微芯区塊鏈研究院が中心となって「北京冷鏈」の開発に成功しています。Wechat、 Alipayといったアプリを通して、当該商品の二次元コードをスキャンするだけで、商品履歴を確認できる仕組みです。

この国家的プロジェクトにおいても、ブロックチェーンはコールドチェーン食品の生産元、流通、倉庫保管、消費などの各段階のデータの改ざんを防ぐ技術として採用されています。

IBM ×  eProvenance

出典:Unsplash

ブロックチェーンの社会実装を積極的に行っているIBM社も、もちろんコールドチェーン分野に進出しています。同社はワインの出荷分析を行っているeProvenanceと共同でブロックチェーンプラットフォーム VinAssureの立ち上げを行いました。

ワインの保管と輸送中の温度条件は、品質に重大な影響を与えます。そのため、他の高級酒が常温でも保存がきくのに対して高級ワインはワインセラーでの保管が必須です。また、眠らせれば眠らせるだけ深みや価値が出てくるワインでは、24時間365日常に低温で管理される必要があります。

VinAssure は、AIやブロックチェーン、クラウドといった様々な先端テクノロジーが活用されているBlockchain Transparent Supplyをカスタマイズすることで、ワインに関する製造・管理のデータを追跡することが可能です。

プラットフォームの参加者はワインボトルにあるQR コードを読み取ることでサプライチェーン情報にアクセスでき、製品の認証基準、品質、オーガニック関連情報などを確認することができます。また、消費者だけでなく、ワインメーカーも生産に費やされた細心の注意を反映しているという、セルフブランディングにも活用することができます。

VinAssure にはすでに米国に本拠を置く複数のワインメーカーも参加しており、今後もサービスの拡大が期待されます。

日立製作所

出典:ビジネス深耕

東南アジアでは、近年の経済発展とともに高所得者層が増加し、品質管理された食品への要求が高まっています。しかしその一方で、コールドチェーンが未発達なことにより品質管理された食品が十分に消費者に提供されていません。こうした状況をコールドチェーン物流によって改革しようという試みが、日立製作所FCPF(Food Chain Platform、フードチェーンプラットフォーム)構想です。

出典:日立製作所

本プロジェクトでは、同社が開発した温度検知ラベルを用いることで、商品ごとに個別に、しかも安価に取り付けることができるため、輸送単位を限定することなく、生産者から消費者までのすべての工程で適切な温度管理を行うことができるとされています。

出典:日立製作所

同社は、「FCPFは温度検知ラベルのほかに、ブロックチェーン、ロジスティクス管理、画像診断/AI(Artificial Intelligence)、保冷ボックス、鮮度・熟成度シミュレータなど複数の日立の強み技術を活用し、食品の品質管理、トレーサビリティ、ダイナミックマッチング、物流指示などのサービスを提供することで、生産、卸、物流、小売り、さまざまなステークホルダーの要求に応じた価値を提供する」ことで、「従来よりも安価なコストできめ細やかな温度管理」を実現するとしています。

本プロジェクトは、センシングデバイスとIoT技術、AI、そしてブロックチェーンを組み合わせることで、コールドチェーンの課題をDXで解決しようとする好例だといえるでしょう。

まとめ

本記事では、ブロックチェーンがコールドチェーンに対してどのような貢献ができるのかについてご紹介しました。

コールドチェーンは現代の物流を支える重要な技術であり、今後ますます拡大が予想されます。一方で、導入にあたっては、仲卸業者や輸送業者などサプライチェーンに関わる人たちに理解や協力をしてもらう必要もあるかと思います。

従来のデータ管理では、かえって仲卸業者や輸送業者の手間が増えてしまい、なかなか理解や協力を得られないでしょう。ブロックチェーンによって安全かつ迅速なデータ管理を実現することで、こういった社内外の調整業務もスムーズに進むことでしょう。

トレードログ株式会社では、非金融領域におけるビジネスへのブロックチェーン導入を支援しています。新規事業のアイデア創出から現状のビジネス課題の解決に至るまで、包括的な支援が可能です。

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ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

ブロックチェーンとは、分散型台帳とも呼ばれる新しいデータベースです。P2P通信やHash関数などの暗号技術を組み合わせることで、取引データ等の情報を改ざん・喪失のリスクから守りながら複数のコンピュータに同期できることが特長です。

過去5年間で市場を急拡大させた後、現在は、セキュリティ上の課題を抱えつつも、金融・非金融を問わず、あらゆる産業での応用、ビジネス活用が進んでいます。ブロックチェーン 技術は、IoTやAIと補完しながら、今後どこに向かうのか?徹底解説します。

  1. ブロックチェーンとは?
  2. ブロックチェーンの仕組み
  3. ブロックチェーンの種類
  4. ブロックチェーンの市場規模
  5. ブロックチェーン技術の応用事例
  6. ブロックチェーンのビジネス活用
  7. ブロックチェーンの今後(AIとIoT)
  8. ブロックチェーンの課題
  9. まとめ

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「Bitcoin」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

Bitcoinには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、「分散型台帳」と呼ばれています。

ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うの?

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、「データの耐改ざん性」「安価なシステム利用コスト」「ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)」といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンの基礎構造

ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています(下図)。

「ブロック」とは、1MB分の「Tx(Transaction、トランザクション)」、つまり一定量に取りまとめられた取引データに、日付などのメタ情報を付与したものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。

一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より作成)

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。

さらに、より細かく見れば、「公開鍵暗号方式」と呼ばれる方法によって、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられています。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より作成)

公開鍵暗号方式とは、「暗号化と復号(暗号から元のデータに戻すこと)に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開できるようにした暗号方式」のことです。

ブロックチェーンでは、トランザクションデータの流出等のリスクを減らすために、取引データをトランザクション化する際に、この公開鍵暗号方式が利用されています。

出典:Udemyメディア

チェーン構造に加えて、この公開鍵暗号方式を採用していることで、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

コンセンサスアルゴリズム

ブロックチェーンネットワークでは、世界中に散らばるノード(=ネットワーク参加者)によって新しくつくられたブロックが、ノード間で伝播することにより、リアルタイムでのデータ同時共有が実現されています。

ノードは、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、特定の条件を満たすことでブロックを生成することができます。

コンセンサスアルゴリズムとは、中央管理者が不在であるブロックチェーンにおいて「どのデータが正しいか?」を決めるための、不特定多数のノードによる合意方法のことです。

なんだか定義だけでは理解しづらい概念ですよね。ではこれを理解するために、友人たちとピザのトッピングを決める場面を想像してみましょう。

あなたと友人2人がピザを注文することになりました。あなたは「アメリカン」、友人Aも「アメリカン」、友人Bは「イタリアン」を選んだとしましょう。あなたはこんなとき、どうやって意見をまとめますか?最も一般的な方法は、多数決でしょうか。その場合、「アメリカン」が2票で最多なので、ピザのトッピングは「アメリカン」に決まります。この意見をまとめる方法、ここでは「多数決」がコンセンサスアルゴリズムにあたります。

これをブロックチェーンの文脈に置き換えてみましょう。ブロックチェーン上のノードは、取引内容や新しいブロックを承認する際にコンセンサスアルゴリズムを用いて合意を形成します。ハッカーや不正行為からコミュニティを守るため、あるいは分散的な組織運営をするために、多数決だけではなく、Proof of Work(PoW)Proof of Stake(PoS)といったさまざまなアルゴリズムを開発しています。

Proof of Work(PoW)は、膨大な計算処理によって解答を見つけることが必要なアルゴリズムです。みんなで難しいクイズを解いて、最初の正解者が食べたいピザを選ぶイメージです。最初に正解を導き出したノードが次のブロックを承認し、他のノードもそれを確認して合意が形成されます。かの有名なBitcoin(ビットコイン)はこのアルゴリズムを採用しています。

少し具体的に見てみましょう。PoWでは、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(「Hash」「nonce」「Target」)を用いた計算作業をノードに課しています。

平たく言えば「ある条件を満たす数字を見つけましょう」という計算ですが、この問題を解くためには莫大なコンピュータの電気代がかかるため、簡単にはブロックをつくることはできません。

とはいえ、ビットコインでは、ブロックを無事に生成できると報酬として仮想通貨を手に入れることができるため、多くの人がブロックづくりに挑戦し、同時に複数のブロックが生まれてしまうこともあります(「フォーク」と呼ばれる事態)。

そこで、2点目として、PoWでは、複数のブロックが生まれた場合は、「最も長いチェーンに含まれるブロックが正しい」という基本原理を採用しています(ナカモト・コンセンサス)。

このように、ブロックチェーンでは独特かつやや複雑な仕組みによってブロックが生成されています。

一方、Proof of Stake(PoS)は、ノードが所有する仮想通貨の量に応じて承認権を与えるアルゴリズムです。友達がピザを注文する際、いちばん多くお金を出した人の意見を重視するような仕組みです。Ethereum(イーサリアム)やSolana(ソラナ)といった有名なブロックチェーンで採用されています。

ほかにもProof of Importance(PoI)Proof of Consensus(PoC)といった様々なコンセンサスアルゴリズムが存在します。コンセンサスアルゴリズムは異なるノード間で合意を形成し、正しい情報を保持するための鍵となる重要な要素です。そのため、それぞれの弱点や課題を補うようにして新たなコンセンサスアルゴリズムが誕生しており、その進化は今後も続いていくでしょう。

P2P(Peer to Peer)通信

ブロックチェーンに利用されている最も代表的な関連技術が「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)通信」です。

P2Pとは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、従来のデータベースの「クライアントーサーバ型」と対比されます。

出典:平和テクノシステム

クライアントーサーバ型では、情報媒体間でデータの送受信を行う際に、データ共有を行う媒体間で直接通信せず、第三者媒体をサーバとして経由するため、どうしても中央管理者の存在が不可欠でした(Google ChromeやAWSをイメージするとわかりやすいでしょう)。

これに対して、P2Pでは、媒体間で直接やり取りを行うために、第三者のサーバを必要としません。

したがって、ブロックチェーンの最大の特徴でもある「非中央集権性」は、まさにこのP2Pによってもたらされたものと言えます。

実際に、P2Pは第三者を介さない個人間での送金手続きや小売電気事業者を通さない個人間での電力取引、無料インターネット電話サービスの先駆けともいえるSkypeなどに用いられています。

Hash(ハッシュ値、ハッシュ関数)

ブロックチェーンの各ブロックには、データの耐改ざん性を高めるために、「Hash値」と呼ばれる値がメタ情報として埋め込まれています。

Hash値は、「Hash関数」と呼ばれる特殊な暗号化技術を通して作られます。

ブロックチェーンでは、一つ前のブロックをHash化したHash値を次のブロックに渡し、それを織り込んでブロックを作成します。

Hashは少しでも入力値が変わると異なるハッシュ値が生成されます。したがって、ブロック内のデータが改ざんされると、そのブロックのハッシュ値も変わり、他のノードとの不一致が検出されます。これにより、改ざんや不正アクセスが防止されます。

また、Hashはデータの内容に関わらず一定の長さで生成されます。この特徴によって、大量のデータを効率的に比較・検証することが可能です。

さらに、元のデータからHashを逆算することは非常に困難です。そのため、Hashを用いることで、個人情報や機密データを扱うことができます。

このようにHashはブロックチェーン技術の中で重要な役割を果たしており、データの信頼性とセキュリティを確保するために欠かせない要素です。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると、パブリック型コンソーシアム型/プライベート型の2種類に分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

パブリック型ブロックチェーンは、不特定の参加者により運営され、管理者が不在であるという特徴を持ちます。また、パブリック型の場合は、誰もがブロックチェーンのマイニングを行うマイナーとなれます。

他方、コンソーシアム型/ライベート型ブロックチェーンでは、参加者は一部の企業等に限定され、また、コンセンサスアルゴリズムによって許可された管理者がネットワークの管理にあたります。また、この形式下では管理者の許可を受けたものだけがマイナーとなれます。

このようにコンソーシアム/プライベート型のチェーンは、分散化という観点では、ブロックチェーンを使う意義が薄く、ややメリットに欠けるでしょう。しかし、ノードの参加者が限定されているため、企業向けのエンタープライズ用途に好まれています。

また、ブロックチェーンの分類には、パーミッションド型/パーミッションレス型の区別もあります。これは、取引を承認する参加者の身元が明らかにされるなどして、ノードとして参加するのに許可(=permission)が必要か否かで分類を行ったものです。

そのため基本的には「パブリック型=パーミッションレス型」という認識で良いでしょう。

開発基盤としてのブロックチェーンプラットフォーム

ブロックチェーンを活用したプロダクト・サービスの開発には、開発の実装基盤となるプラットフォームが不可欠です。ブロックチェーンのプラットフォームには、用途に合わせて数多くの種類があります。

代表的なブロックチェーンプラットフォームは、次の通りです。

プラットフォーム名対象用途例
Ethereum(イーサリアム)エンタープライズ向け(toC企業)NFTなど
BSC(バイナンス・スマート・チェーン)エンタープライズ向け(toC企業)DApps、NFTなど
Polygon(ポリゴン)エンタープライズ向け(toC企業)NFT、DAppsなど
Symbol(シンボル)エンタープライズ向け(toC企業)ゲーム、DAppsなど
SOLANA(ソラナ)エンタープライズ向け(toC企業)ゲームなど
Ripple(リップル)エンタープライズ向け(銀行)銀行間送金(特化)
Corda(コルダ)エンタープライズ向け(toB企業)銀行間送金、企業間プラットフォームなど
GoQuorum(ゴークオラム /ゴークォーラム)エンタープライズ向け(toB企業)企業間プラットフォームなど
Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)エンタープライズ向け(toB企業)企業間プラットフォームなど
Bitcoin Core(ビットコインコア)個人向け個人間送金

上表のように、10種類のプラットフォームを用途の観点から分類すると、大きく次の4つに分けることができます。

1 toC企業向け:ゲームなどの開発に向いている

2 toB企業向け:業界プラットフォームなどの開発に向いている

3 銀行向け:銀行間送金に特化している

4 個人向け:ちょっとした送金の手段として使われる

自身が推進するプロジェクトに向いているプラットフォームを把握し、その特性を理解しておくことは、開発者だけではなくビジネスサイドの担当者にとっても有益です。詳しくは、以下の記事で解説しています。

ブロックチェーンの市場規模

経済産業省が「ブロックチェーンは将来的に国内67兆円の市場に影響を与える」との予測を発表してから8年が経過しました。

同予測によると、具体的には、大きく次の5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

1 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化

2 権利証明行為の非中央集権化の実現

3 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

4 オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

5 プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

事実、この数年間で、1はSTOなどのトークン活用、2は不動産領域における登記などの権利証明、3は医療プラットフォームや電子政府、4は国際海運における物流プラットフォーム、5はDEXに代表されるDAO(自律分散型組織)、といった具合に、既存の産業をDX(デジタルトランスフォーメーション)する形での市場拡大が進んできました。

その結果、ブロックチェーン技術の国内市場規模は2025年に1000億円を超え、関連市場を合わせると67兆円の潜在規模があるとされています。また、世界市場規模は2023年の175億7000万ドルから2030年までに4694億9000万ドルに成長すると予測されています。

さらに、世界経済フォーラムによると、2025年までに世界のGDP総額の10%がブロックチェーン基盤上に乗るとされており、今後のさらなる技術発展とマーケット拡大、そして私たちの生活への浸透が期待されます。

ブロックチェーン技術の応用事例

2023年現在、ブロックチェーン技術で最も頻繁に応用されているのが、次の2つです。

  • NFT
  • スマートコントラクト

NFT

出典:Pexels

NFTという言葉は「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「唯一無二・替えが効かない」ことを意味し、トークンには「データや通貨・モノ・証明」という意味があります。

つまり、NFTとは簡潔に言うと個別の価値を持ったデジタルコンテンツのことです。

NFTではこのようなブロックチェーンが持つ高いセキュリティ性能を利用して、web上のデータが本物なのか偽物なのかを誰でも判別することを可能にし、データの希少性を担保できます。ブロックチェーンの活用によって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれているというわけです。

たとえば、あるアーティストが作ったデジタルアートやミュージシャンが制作した音楽がNFTとして発行されると、それぞれがユニークな価値を持ちます。ファンやコレクターは「本物」という箔のついたコンテンツを所有・売買でき、アーティストやクリエイターはデジタルコンテンツ特有の偽造問題や無断利用といったリスクから自身の作品の所有権を守ることができます。

このようにNFTは、コレクションやデジタルコンテンツの商業活用など、新たな可能性を開拓することができる革新的な仕組みとして注目されています。

スマートコントラクト

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スマートコントラクトとは、ブロックチェーンシステム上で規定のルールに従い、トランザクションや外部情報をトリガーに実行されるプログラムあるいはコンピュータプロトコルのことです。

1994年にNick Szabo(ニック・スザボ)という法学者・暗号学者によって提唱され、エンジニアのVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)がEthereum基盤上で開発・提供し始めました。

「契約(コントラクト)の自動化」を意味するスマートコントラクトは、事前定義から決済に至るまで、一連の契約のスムーズな検証、執行、実行、交渉を狙いとしています。

自動販売機にも例えられるスマートコントラクトの技術を用いることで、「プロセス・取引の全自動化・効率化」を実現し、世の中の不便や非効率を無くしていくためのブロックチェーンの思想を社会実装していくことが期待されており、例えば、DEX(分散型取引所)や投票システムなどに利用されています。

ブロックチェーンのビジネス活用

分散型台帳、トークン、スマートコントラクトといったブロックチェーンの諸側面は、実際のビジネス課題に合わせた様々なソリューションとして社会実装されています。

ビジネスソリューションとしてのブロックチェーンは、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に分けて考えることで、事業化に取り組みやすくなります。

第一の領域である金融領域は、暗号資産(仮想通貨)の利活用を目的としたビジネス領域です。

BTC(ビットコイン)やETH(イーサ)を始めとした暗号資産の取引市場や、ICOやSTOといった暗号資産やトークンを利用した派生市場での活用が行われています。

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第二の領域である非金融領域は、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことです。

台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

この領域の活用事例は、次のように多岐に渡っています。

  • 自律分散型図書館DAOLIB構想
  • 職歴証明のWorkday Credentials
  • 医療用品の寄付の追跡ポータル
  • Socios.com(サッカーファントークン)
  • 医療データプラットフォームのメディカルチェーン
  • 国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

最後に、第三の領域であるハイブリッド領域は、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域で、乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

いわゆる「トークンエコノミー」もこの領域に含んで考えるとわかりやすく、今後のブロックチェーン応用が期待されている領域です。

ブロックチェーンの今後(AIとIoT)

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ブロックチェーンの今後を考える上で外せないのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)という考え方と、その前提条件となるIoT、AIという2つの概念です。

DXとは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指し、ブロックチェーンの活用方法として最も期待されていることでもあります。

DXは、ビッグデータの活用を前提としています。

そして、IoT、ブロックチェーン、AIという3つの概念は、この「ビッグデータ活用を前提としたDX」というより大きな社会動向の要素として、下記のように相互に関連づけることができます。

  1. ビッグデータを集める → IoTによるハードウェア端末でのデータ収集
  2. ビッグデータを保存・管理する → ブロックチェーンによるデータベースの統合・管理
  3. ビッグデータを分析する → AI(機械学習)による大量情報の処理
  4. ビッグデータを活用する(社会実装する)

このように、今後のブロックチェーンは、ビッグデータを利用したDXというより大きな枠組みのもと、IoTやAIといった相互補完技術と協働しながら、これまで活用されてこなかった大量のデータを分析するためのデータ基盤として利用が進んでいくでしょう。

そして、その結果として、ブロックチェーンは、産業や社会全体の仕組みを大きく変え、効率化し、私たちの生活をより豊かにする可能性を秘めています。

ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンには、その社会普及の壁となる以下3つの課題を抱えています。

  • スケーラビリティ
  • ファイナリティ
  • セキュリティ

この中でも、特に重要かつ深刻なのが、スケーラビリティの問題です。スケーラビリティとは「トランザクションの処理量の拡張性」つまり、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかの限界値のことを指します。

ブロックチェーンには、未処理のトランザクションが待機しておくメモプールという空間が存在します。処理するトランザクションが増えて記録可能な取引の上限を超過してしまうと、メモプールに大量のトランザクションが留まってしまいます。こうなると、次回以降のブロック生成時まで放置されて取引が完了しなくなるという問題があります。

また、マイナーと呼ばれるトランザクションの承認者は、ガス代(手数料)という経済的なインセンティブによって動いているので、手数料が多いものから処理を行います。すると、自らの取引を優先的にブロックに記録させるために相場より多くの手数料を支払うユーザーが現れ、手数料のインフレが起きてしまうという副次的な弊害もあります。

ブロックチェーンはトランザクションを承認して分散的に保有するという仕組み上、従来のデータベースよりもスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。

一般に、スケーラビリティは「tps(transaction per second、1秒あたりのトランザクション処理量)」で定義することができますが、実際に、代表的なブロックチェーンネットワークは、次のように不十分なスケーラビリティだと言われています。

一般的なクレジットカード: 数万tps

ビットコイン(PoWコンセンサスアルゴリズム): 3~7tps

イーサリアム(PoSコンセンサスアルゴリズム): 15~25tps

コンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク(PoAコンセンサスアルゴリズム): 数千tps

このようにブロックチェーンは、オープンで分散的なデータベースとして期待を集めている一方で、ネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティが担保できなくなるという課題を抱えています。

この課題に対しては様々なアプローチが試みられています。最も安直な最善策は、メインチェーンのブロック容量と生成スピードの制約を緩和させることです。

このアプローチでは、ブロックの容量を増やしたり、生成までの間隔を短縮することで、一回のトランザクションで処理できるデータ量を増加させて待機のトランザクションを減らすことができます。

しかし、これによってブロックチェーン本来の分散性が低下する可能性や、システム自体の安定性やセキュリティに影響を及ぼす可能性もあります。

また、金融領域では、「ライトニングネットワーク(Lightning Network)」という新しい概念に注目が集まっています。

ライトニングネットワークは、小規模ながら高頻度で行われる取引をオフチェーン(ブロックチェーンの外部)で処理し、最初と最後の取引だけをブロックチェーンに反映させる方法です。

最初の取引でビットコインを送金し、その金額内で自由に送金ができるため、ブロックチェーンのように途中の取引も全て検証する必要がなく、中間の処理を省くことでトレーサビリティ問題に対応しています。

このようなアプローチにより、決済の迅速化や高いトランザクション容量の実現が期待されています。たとえば、大手暗号資産取引所のバイナンスはビットコインの取引をライトニングネットワークで実行できるようになったと発表しています。

Binance Completes Integration of Bitcoin (BTC) on Lightning Network, Opens Deposits and Withdrawals

しかし、非金融領域においてはいまだ効果的な解決策は確立していません。

こうした原理的な課題は、ブロックチェーンが社会基盤となれるかどうかを左右する、重要な論点だと言えるでしょう。

まとめ

この記事では、ブロックチェーンについての仕組みとその周辺知識についてまとめました。

技術進化の一翼を担うブロックチェーンは、現在、様々なビジネスに影響を与えています。今後もさらなる革新が期待され、私たちの日常生活や産業構造に新たな可能性をもたらすことでしょう。

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