ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

ブロックチェーンとは、分散型台帳とも呼ばれる新しいデータベースです。P2P通信やHash関数などの暗号技術を組み合わせることで、取引データ等の情報を改ざん・喪失のリスクから守りながら複数のコンピュータに同期できることが特長です。

過去5年間で市場を急拡大させた後、現在は、セキュリティ上の課題を抱えつつも、金融・非金融を問わず、あらゆる産業での応用、ビジネス活用が進んでいます。ブロックチェーン 技術は、IoTやAIと補完しながら、今後どこに向かうのか?徹底解説します。

  1. ブロックチェーンとは?
  2. ブロックチェーンの仕組み
  3. ブロックチェーンの種類
  4. ブロックチェーンの市場規模
  5. ブロックチェーン技術の応用事例
  6. ブロックチェーンのビジネス活用
  7. ブロックチェーンの今後(AIとIoT)
  8. ブロックチェーンの課題
  9. まとめ

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「Bitcoin」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

Bitcoinには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、「分散型台帳」と呼ばれています。

ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うの?

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、「データの耐改ざん性」「安価なシステム利用コスト」「ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)」といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンの基礎構造

ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています(下図)。

「ブロック」とは、1MB分の「Tx(Transaction、トランザクション)」、つまり一定量に取りまとめられた取引データに、日付などのメタ情報を付与したものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。

一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より作成)

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。

さらに、より細かく見れば、「公開鍵暗号方式」と呼ばれる方法によって、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられています。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より作成)

公開鍵暗号方式とは、「暗号化と復号(暗号から元のデータに戻すこと)に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開できるようにした暗号方式」のことです。

ブロックチェーンでは、トランザクションデータの流出等のリスクを減らすために、取引データをトランザクション化する際に、この公開鍵暗号方式が利用されています。

出典:Udemyメディア

チェーン構造に加えて、この公開鍵暗号方式を採用していることで、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

コンセンサスアルゴリズム

ブロックチェーンネットワークでは、世界中に散らばるノード(=ネットワーク参加者)によって新しくつくられたブロックが、ノード間で伝播することにより、リアルタイムでのデータ同時共有が実現されています。

ノードは、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、特定の条件を満たすことでブロックを生成することができます。

コンセンサスアルゴリズムとは、中央管理者が不在であるブロックチェーンにおいて「どのデータが正しいか?」を決めるための、不特定多数のノードによる合意方法のことです。

なんだか定義だけでは理解しづらい概念ですよね。ではこれを理解するために、友人たちとピザのトッピングを決める場面を想像してみましょう。

あなたと友人2人がピザを注文することになりました。あなたは「アメリカン」、友人Aも「アメリカン」、友人Bは「イタリアン」を選んだとしましょう。あなたはこんなとき、どうやって意見をまとめますか?最も一般的な方法は、多数決でしょうか。その場合、「アメリカン」が2票で最多なので、ピザのトッピングは「アメリカン」に決まります。この意見をまとめる方法、ここでは「多数決」がコンセンサスアルゴリズムにあたります。

これをブロックチェーンの文脈に置き換えてみましょう。ブロックチェーン上のノードは、取引内容や新しいブロックを承認する際にコンセンサスアルゴリズムを用いて合意を形成します。ハッカーや不正行為からコミュニティを守るため、あるいは分散的な組織運営をするために、多数決だけではなく、Proof of Work(PoW)Proof of Stake(PoS)といったさまざまなアルゴリズムを開発しています。

Proof of Work(PoW)は、膨大な計算処理によって解答を見つけることが必要なアルゴリズムです。みんなで難しいクイズを解いて、最初の正解者が食べたいピザを選ぶイメージです。最初に正解を導き出したノードが次のブロックを承認し、他のノードもそれを確認して合意が形成されます。かの有名なBitcoin(ビットコイン)はこのアルゴリズムを採用しています。

少し具体的に見てみましょう。PoWでは、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(「Hash」「nonce」「Target」)を用いた計算作業をノードに課しています。

平たく言えば「ある条件を満たす数字を見つけましょう」という計算ですが、この問題を解くためには莫大なコンピュータの電気代がかかるため、簡単にはブロックをつくることはできません。

とはいえ、ビットコインでは、ブロックを無事に生成できると報酬として仮想通貨を手に入れることができるため、多くの人がブロックづくりに挑戦し、同時に複数のブロックが生まれてしまうこともあります(「フォーク」と呼ばれる事態)。

そこで、2点目として、PoWでは、複数のブロックが生まれた場合は、「最も長いチェーンに含まれるブロックが正しい」という基本原理を採用しています(ナカモト・コンセンサス)。

このように、ブロックチェーンでは独特かつやや複雑な仕組みによってブロックが生成されています。

一方、Proof of Stake(PoS)は、ノードが所有する仮想通貨の量に応じて承認権を与えるアルゴリズムです。友達がピザを注文する際、いちばん多くお金を出した人の意見を重視するような仕組みです。Ethereum(イーサリアム)やSolana(ソラナ)といった有名なブロックチェーンで採用されています。

ほかにもProof of Importance(PoI)Proof of Consensus(PoC)といった様々なコンセンサスアルゴリズムが存在します。コンセンサスアルゴリズムは異なるノード間で合意を形成し、正しい情報を保持するための鍵となる重要な要素です。そのため、それぞれの弱点や課題を補うようにして新たなコンセンサスアルゴリズムが誕生しており、その進化は今後も続いていくでしょう。

P2P(Peer to Peer)通信

ブロックチェーンに利用されている最も代表的な関連技術が「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)通信」です。

P2Pとは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、従来のデータベースの「クライアントーサーバ型」と対比されます。

出典:平和テクノシステム

クライアントーサーバ型では、情報媒体間でデータの送受信を行う際に、データ共有を行う媒体間で直接通信せず、第三者媒体をサーバとして経由するため、どうしても中央管理者の存在が不可欠でした(Google ChromeやAWSをイメージするとわかりやすいでしょう)。

これに対して、P2Pでは、媒体間で直接やり取りを行うために、第三者のサーバを必要としません。

したがって、ブロックチェーンの最大の特徴でもある「非中央集権性」は、まさにこのP2Pによってもたらされたものと言えます。

実際に、P2Pは第三者を介さない個人間での送金手続きや小売電気事業者を通さない個人間での電力取引、無料インターネット電話サービスの先駆けともいえるSkypeなどに用いられています。

Hash(ハッシュ値、ハッシュ関数)

ブロックチェーンの各ブロックには、データの耐改ざん性を高めるために、「Hash値」と呼ばれる値がメタ情報として埋め込まれています。

Hash値は、「Hash関数」と呼ばれる特殊な暗号化技術を通して作られます。

ブロックチェーンでは、一つ前のブロックをHash化したHash値を次のブロックに渡し、それを織り込んでブロックを作成します。

Hashは少しでも入力値が変わると異なるハッシュ値が生成されます。したがって、ブロック内のデータが改ざんされると、そのブロックのハッシュ値も変わり、他のノードとの不一致が検出されます。これにより、改ざんや不正アクセスが防止されます。

また、Hashはデータの内容に関わらず一定の長さで生成されます。この特徴によって、大量のデータを効率的に比較・検証することが可能です。

さらに、元のデータからHashを逆算することは非常に困難です。そのため、Hashを用いることで、個人情報や機密データを扱うことができます。

このようにHashはブロックチェーン技術の中で重要な役割を果たしており、データの信頼性とセキュリティを確保するために欠かせない要素です。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると、パブリック型コンソーシアム型/プライベート型の2種類に分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

パブリック型ブロックチェーンは、不特定の参加者により運営され、管理者が不在であるという特徴を持ちます。また、パブリック型の場合は、誰もがブロックチェーンのマイニングを行うマイナーとなれます。

他方、コンソーシアム型/ライベート型ブロックチェーンでは、参加者は一部の企業等に限定され、また、コンセンサスアルゴリズムによって許可された管理者がネットワークの管理にあたります。また、この形式下では管理者の許可を受けたものだけがマイナーとなれます。

このようにコンソーシアム/プライベート型のチェーンは、分散化という観点では、ブロックチェーンを使う意義が薄く、ややメリットに欠けるでしょう。しかし、ノードの参加者が限定されているため、企業向けのエンタープライズ用途に好まれています。

また、ブロックチェーンの分類には、パーミッションド型/パーミッションレス型の区別もあります。これは、取引を承認する参加者の身元が明らかにされるなどして、ノードとして参加するのに許可(=permission)が必要か否かで分類を行ったものです。

そのため基本的には「パブリック型=パーミッションレス型」という認識で良いでしょう。

開発基盤としてのブロックチェーンプラットフォーム

ブロックチェーンを活用したプロダクト・サービスの開発には、開発の実装基盤となるプラットフォームが不可欠です。ブロックチェーンのプラットフォームには、用途に合わせて数多くの種類があります。

代表的なブロックチェーンプラットフォームは、次の通りです。

プラットフォーム名対象用途例
Ethereum(イーサリアム)エンタープライズ向け(toC企業)NFTなど
BSC(バイナンス・スマート・チェーン)エンタープライズ向け(toC企業)DApps、NFTなど
Polygon(ポリゴン)エンタープライズ向け(toC企業)NFT、DAppsなど
Symbol(シンボル)エンタープライズ向け(toC企業)ゲーム、DAppsなど
SOLANA(ソラナ)エンタープライズ向け(toC企業)ゲームなど
Ripple(リップル)エンタープライズ向け(銀行)銀行間送金(特化)
Corda(コルダ)エンタープライズ向け(toB企業)銀行間送金、企業間プラットフォームなど
GoQuorum(ゴークオラム /ゴークォーラム)エンタープライズ向け(toB企業)企業間プラットフォームなど
Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)エンタープライズ向け(toB企業)企業間プラットフォームなど
Bitcoin Core(ビットコインコア)個人向け個人間送金

上表のように、10種類のプラットフォームを用途の観点から分類すると、大きく次の4つに分けることができます。

1 toC企業向け:ゲームなどの開発に向いている

2 toB企業向け:業界プラットフォームなどの開発に向いている

3 銀行向け:銀行間送金に特化している

4 個人向け:ちょっとした送金の手段として使われる

自身が推進するプロジェクトに向いているプラットフォームを把握し、その特性を理解しておくことは、開発者だけではなくビジネスサイドの担当者にとっても有益です。詳しくは、以下の記事で解説しています。

ブロックチェーンの市場規模

経済産業省が「ブロックチェーンは将来的に国内67兆円の市場に影響を与える」との予測を発表してから8年が経過しました。

同予測によると、具体的には、大きく次の5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

1 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化

2 権利証明行為の非中央集権化の実現

3 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

4 オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

5 プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

事実、この数年間で、1はSTOなどのトークン活用、2は不動産領域における登記などの権利証明、3は医療プラットフォームや電子政府、4は国際海運における物流プラットフォーム、5はDEXに代表されるDAO(自律分散型組織)、といった具合に、既存の産業をDX(デジタルトランスフォーメーション)する形での市場拡大が進んできました。

その結果、ブロックチェーン技術の国内市場規模は2025年に1000億円を超え、関連市場を合わせると67兆円の潜在規模があるとされています。また、世界市場規模は2023年の175億7000万ドルから2030年までに4694億9000万ドルに成長すると予測されています。

さらに、世界経済フォーラムによると、2025年までに世界のGDP総額の10%がブロックチェーン基盤上に乗るとされており、今後のさらなる技術発展とマーケット拡大、そして私たちの生活への浸透が期待されます。

ブロックチェーン技術の応用事例

2023年現在、ブロックチェーン技術で最も頻繁に応用されているのが、次の2つです。

  • NFT
  • スマートコントラクト

NFT

出典:Pexels

NFTという言葉は「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「唯一無二・替えが効かない」ことを意味し、トークンには「データや通貨・モノ・証明」という意味があります。

つまり、NFTとは簡潔に言うと個別の価値を持ったデジタルコンテンツのことです。

NFTではこのようなブロックチェーンが持つ高いセキュリティ性能を利用して、web上のデータが本物なのか偽物なのかを誰でも判別することを可能にし、データの希少性を担保できます。ブロックチェーンの活用によって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれているというわけです。

たとえば、あるアーティストが作ったデジタルアートやミュージシャンが制作した音楽がNFTとして発行されると、それぞれがユニークな価値を持ちます。ファンやコレクターは「本物」という箔のついたコンテンツを所有・売買でき、アーティストやクリエイターはデジタルコンテンツ特有の偽造問題や無断利用といったリスクから自身の作品の所有権を守ることができます。

このようにNFTは、コレクションやデジタルコンテンツの商業活用など、新たな可能性を開拓することができる革新的な仕組みとして注目されています。

スマートコントラクト

出典:Pexels

スマートコントラクトとは、ブロックチェーンシステム上で規定のルールに従い、トランザクションや外部情報をトリガーに実行されるプログラムあるいはコンピュータプロトコルのことです。

1994年にNick Szabo(ニック・スザボ)という法学者・暗号学者によって提唱され、エンジニアのVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)がEthereum基盤上で開発・提供し始めました。

「契約(コントラクト)の自動化」を意味するスマートコントラクトは、事前定義から決済に至るまで、一連の契約のスムーズな検証、執行、実行、交渉を狙いとしています。

自動販売機にも例えられるスマートコントラクトの技術を用いることで、「プロセス・取引の全自動化・効率化」を実現し、世の中の不便や非効率を無くしていくためのブロックチェーンの思想を社会実装していくことが期待されており、例えば、DEX(分散型取引所)や投票システムなどに利用されています。

ブロックチェーンのビジネス活用

分散型台帳、トークン、スマートコントラクトといったブロックチェーンの諸側面は、実際のビジネス課題に合わせた様々なソリューションとして社会実装されています。

ビジネスソリューションとしてのブロックチェーンは、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に分けて考えることで、事業化に取り組みやすくなります。

第一の領域である金融領域は、暗号資産(仮想通貨)の利活用を目的としたビジネス領域です。

BTC(ビットコイン)やETH(イーサ)を始めとした暗号資産の取引市場や、ICOやSTOといった暗号資産やトークンを利用した派生市場での活用が行われています。

出典:pixabay

第二の領域である非金融領域は、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことです。

台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

この領域の活用事例は、次のように多岐に渡っています。

  • 自律分散型図書館DAOLIB構想
  • 職歴証明のWorkday Credentials
  • 医療用品の寄付の追跡ポータル
  • Socios.com(サッカーファントークン)
  • 医療データプラットフォームのメディカルチェーン
  • 国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

最後に、第三の領域であるハイブリッド領域は、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域で、乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

いわゆる「トークンエコノミー」もこの領域に含んで考えるとわかりやすく、今後のブロックチェーン応用が期待されている領域です。

ブロックチェーンの今後(AIとIoT)

出典:Pexels

ブロックチェーンの今後を考える上で外せないのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)という考え方と、その前提条件となるIoT、AIという2つの概念です。

DXとは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指し、ブロックチェーンの活用方法として最も期待されていることでもあります。

DXは、ビッグデータの活用を前提としています。

そして、IoT、ブロックチェーン、AIという3つの概念は、この「ビッグデータ活用を前提としたDX」というより大きな社会動向の要素として、下記のように相互に関連づけることができます。

  1. ビッグデータを集める → IoTによるハードウェア端末でのデータ収集
  2. ビッグデータを保存・管理する → ブロックチェーンによるデータベースの統合・管理
  3. ビッグデータを分析する → AI(機械学習)による大量情報の処理
  4. ビッグデータを活用する(社会実装する)

このように、今後のブロックチェーンは、ビッグデータを利用したDXというより大きな枠組みのもと、IoTやAIといった相互補完技術と協働しながら、これまで活用されてこなかった大量のデータを分析するためのデータ基盤として利用が進んでいくでしょう。

そして、その結果として、ブロックチェーンは、産業や社会全体の仕組みを大きく変え、効率化し、私たちの生活をより豊かにする可能性を秘めています。

ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンには、その社会普及の壁となる以下3つの課題を抱えています。

  • スケーラビリティ
  • ファイナリティ
  • セキュリティ

この中でも、特に重要かつ深刻なのが、スケーラビリティの問題です。スケーラビリティとは「トランザクションの処理量の拡張性」つまり、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかの限界値のことを指します。

ブロックチェーンには、未処理のトランザクションが待機しておくメモプールという空間が存在します。処理するトランザクションが増えて記録可能な取引の上限を超過してしまうと、メモプールに大量のトランザクションが留まってしまいます。こうなると、次回以降のブロック生成時まで放置されて取引が完了しなくなるという問題があります。

また、マイナーと呼ばれるトランザクションの承認者は、ガス代(手数料)という経済的なインセンティブによって動いているので、手数料が多いものから処理を行います。すると、自らの取引を優先的にブロックに記録させるために相場より多くの手数料を支払うユーザーが現れ、手数料のインフレが起きてしまうという副次的な弊害もあります。

ブロックチェーンはトランザクションを承認して分散的に保有するという仕組み上、従来のデータベースよりもスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。

一般に、スケーラビリティは「tps(transaction per second、1秒あたりのトランザクション処理量)」で定義することができますが、実際に、代表的なブロックチェーンネットワークは、次のように不十分なスケーラビリティだと言われています。

一般的なクレジットカード: 数万tps

ビットコイン(PoWコンセンサスアルゴリズム): 3~7tps

イーサリアム(PoSコンセンサスアルゴリズム): 15~25tps

コンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク(PoAコンセンサスアルゴリズム): 数千tps

このようにブロックチェーンは、オープンで分散的なデータベースとして期待を集めている一方で、ネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティが担保できなくなるという課題を抱えています。

この課題に対しては様々なアプローチが試みられています。最も安直な最善策は、メインチェーンのブロック容量と生成スピードの制約を緩和させることです。

このアプローチでは、ブロックの容量を増やしたり、生成までの間隔を短縮することで、一回のトランザクションで処理できるデータ量を増加させて待機のトランザクションを減らすことができます。

しかし、これによってブロックチェーン本来の分散性が低下する可能性や、システム自体の安定性やセキュリティに影響を及ぼす可能性もあります。

また、金融領域では、「ライトニングネットワーク(Lightning Network)」という新しい概念に注目が集まっています。

ライトニングネットワークは、小規模ながら高頻度で行われる取引をオフチェーン(ブロックチェーンの外部)で処理し、最初と最後の取引だけをブロックチェーンに反映させる方法です。

最初の取引でビットコインを送金し、その金額内で自由に送金ができるため、ブロックチェーンのように途中の取引も全て検証する必要がなく、中間の処理を省くことでトレーサビリティ問題に対応しています。

このようなアプローチにより、決済の迅速化や高いトランザクション容量の実現が期待されています。たとえば、大手暗号資産取引所のバイナンスはビットコインの取引をライトニングネットワークで実行できるようになったと発表しています。

Binance Completes Integration of Bitcoin (BTC) on Lightning Network, Opens Deposits and Withdrawals

しかし、非金融領域においてはいまだ効果的な解決策は確立していません。

こうした原理的な課題は、ブロックチェーンが社会基盤となれるかどうかを左右する、重要な論点だと言えるでしょう。

まとめ

この記事では、ブロックチェーンについての仕組みとその周辺知識についてまとめました。

技術進化の一翼を担うブロックチェーンは、現在、様々なビジネスに影響を与えています。今後もさらなる革新が期待され、私たちの日常生活や産業構造に新たな可能性をもたらすことでしょう。

ブロックチェーンのコールドチェーンへの適用~温度管理・トレーサビリティ~

2022年現在、流通業界では、ブロックチェーンをはじめとする先進技術によってプロセスイノベーションを起こすべく、各社で大規模な技術開発や実証実験が行われています。

例えば、IBMが、コンテナ船世界最大手のA.P. Moller-Maersk(A.P.モラー・マースク、以下マースク)との共同でブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォーム「TradeLens」を構築した他、世界最古の医薬品・化学品メーカーであるMerck KGaA(メルク・カーゲーアーアー、以下メルク)と共に偽造品対策プラットフォームを立ち上げています。

出典:TRADELENS 概要(IBM社資料)

また、アジアに目を転じてみても、中国EC市場シェア2位のJD.com(下図)がブロックチェーンに関連する200件超もの特許を申請したという報道がなされるなど、世界最大の人口を抱える中国においても、物流のシステム全体をブロックチェーンによって強化していく流れがみられています。

出典:JD.com

さらに、ロジスティックプロバイダーAlbaによるIPRブロックチェーン活用の実証実験参加、サプライチェーンロジスティックソフトウェアを開発するSwivel Softwareの国際間取引プラットフォームGlobal eTrade Services (GeTS)への参画など、特に物流領域では、ブロックチェーンを活用したプラットフォーム構築競争が盛んにおこなわれています。

ブロックチェーン×コールドチェーン(温度管理)の必要性

GDPで高まるコールドチェーン(温度管理)の重要性

こうした流れの中、国内でも特に注目されている分野の一つが、「コールドチェーン(低温流通体系)」を実現するための「温度管理」です。

コールドチェーンとは、生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流方式、つまり「徹底的に温度管理されたサプライチェーン」のことで、商品の品質管理が問われる食品業界や医薬品業界においては、最も重要なプロセスと考えられています。

出典:国土交通省

実際に、2018年12月には、厚生労働省が日本版GDP(Good Disribution Practice=適正流通基準)ガイドラインを発出。

品質マネジメントや業務オペレーション、適格性評価など、医薬品の流通過程全般に関わる複数の基準が設定されていますが、その中でも、トレーサビリティと並んで最大の要件と考えられているのが温度管理システムなのです。

また、米国FSMA[FDA(U.S. Food and Drug Administration) Food Safety Modernization Act]や欧州GDP(Good Distribution Practice)による食料品・医薬品の貨物管理規制強化の影響も大きいでしょう。

同規制強化により、海外売上高比率の高い日本企業にも迅速な対応が求められており、コールドチェーン管理の改革および市場の拡大が見込まれています。

そして、日本でも、医薬品、食料品、化学品、農産物など、温度管理を必要とする幅広い業界でのコールドチェーン・イノベーションが求められています。

なぜ、ブロックチェーンか?

既存のコールドチェーンには、「データロガー」と呼ばれる温度管理システムが用いられており、各ロガーから得た情報を事後管理するやり方が一般的でした。

しかし、データロガーを用いた方法では、リアルタイムの状況に合わせた温度管理ができないばかりか、コストの観点からも、適用できるのはトラックやコンテナ輸送のような、商品が集積された管理形態に限定されてしまい、コールドチェーンで求められる、個別商品単位でのきめ細かな管理ニーズに応えることができません。

この課題を解決するために、近年は、QRコードRFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれるツールが利用され始めています。

<例:日立の温度検知ラベルに利用されるQRコード>

出典:日立製作所

RFIDとは、「RFIDタグと呼ばれる媒体に記憶された人やモノの個別情報を、無線通信によって読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)をおこなう自動認識システムのこと」で、「RFIDタグを読み取り機などにかざすことによって、情報(製造年月・流通過程・検査情報など)が表示機器に表され、さらに新しい情報を書き込むことで、製品の流れや人の入退場などが一元管理でき」ます(公益財団法人流通経済研究所2018より)。

こうしたツールを活用することで、新しいコールドチェーンでは、商品ごとの個別情報を一元管理し、各商品に個別最適化された温度管理を行うシステム(つまりはIoTシステム)が実現されると言われています。

そして、ここで生じるデータを一元管理するプラットフォームこそ、ブロックチェーンプラットフォームです。

RFIDとブロックチェーンによるオープンプラットフォームを構築することで、リアルタイムに関係各社で受発注・決済・所有権移転も含めたトレーサビリティを一元管理できるようになると期待されています。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、噛み砕いていうと「取引データを暗号技術によってブロックという単位でまとめ、それらを1本の鎖のようにつなげることで正確な取引履歴を維持しようとする技術のこと」です。

取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常にネットワークの参加者間で情報が同期されています。データとトランザクション(取引)が多数のノードに分散して保存されるため、一つのノードや場所に依存することなくシステムが機能します。

このように中央的な管理者を介在せずに、データが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権)であるため、「分散型台帳」と呼ばれています。

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在し、管理会社によって信頼性が担保されているそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを分散して持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」によって、「データの耐改ざん性」「安価なシステム利用コスト」「ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)」といったメリットが実現しています。

データの安全性や安価なコストは、DeFiに限らず様々な分野でブロックチェーンが注目・活用されている理由だといえるでしょう。

ブロックチェーン×コールドチェーン(温度管理)の事例

日立製作所の取り組み:温度検知ラベルとFCPF

2017年末、日立製作所は、コールドチェーン上での個別商品の品質管理を、温度検知ラベルを用いてIoT化・一元管理する、FCPF(Food Chain Platform、フードチェーンプラットフォーム)構想の実証実験を開始しました。

「東南アジアでは、近年の経済発展とともに高所得者層が増加し、品質管理された食品への要求が高まる一方で、コールドチェーンが未発達なことにより品質管理された食品が十分に消費者に提供されていない」ことを背景に、高品質な食品を提供するコールドチェーン物流を構築することが狙いです。

出典:日立製作所

本プロジェクトでは、同社が開発した温度検知ラベルを用いることで、商品ごとに個別に、しかも安価に取り付けることができるため、輸送単位を限定することなく、生産者から消費者までのすべての工程で適切な温度管理を行うことができるとされています。

出典:日立製作所

同社は、「FCPFは温度検知ラベルのほかに、ブロックチェーン、ロジスティクス管理、画像診断/AI(Artificial Intelligence)、保冷ボックス、鮮度・熟成度シミュレータなど複数の日立の強み技術を活用し、食品の品質管理、トレーサビリティ、ダイナミックマッチング、物流指示などのサービスを提供することで、生産、卸、物流、小売り、さまざまなステークホルダーの要求に応じた価値を提供する」ことで、「従来よりも安価なコストできめ細やかな温度管理」を実現するとしています。

本プロジェクトは、センシングデバイスとIoT技術、AI、そしてブロックチェーンを組み合わせることで、コールドチェーンの課題をDXで解決しようとする好例だと言えるでしょう。

日本通運の取り組み:医薬品の物流プラットフォーム

2020年、先述の日本版GDPを受けて、日本通運では、「Pharma2020」と呼ばれる1000億円規模の投資プロジェクトを開始しました。

同社によると、「プロジェクトでは、全国4か所(埼玉県、大阪府、福岡県、富山県)に医薬品専用センターを新設するほか、GDP基準に準拠した医薬品専用車両を開発し、全国を網羅した医薬品サプライネットワーク」の構築が予定されています。

同プロジェクトの中核をなしているのが、インテルと共同開発するIoTデバイスGCWA(Global Cargo Watcher Advance)を基幹技術としたブロックチェーン・プラットフォームです。

出典:日本通運

GCWAは、従来の温度管理デバイスであるデータロガーと異なり、ウェブ上にリアルタイムで個別商品の計測データをアップすることができるため、これまで「”空間”レベルにとどまっていた」温度管理を「個体レベルで温度や湿度、衝撃などの動態管理」へと昇華させることができるとされています。

そして、このGCWAを中心に取得された物流情報(温度モニタリング、輸配送状況、在庫状況など)と、トレーサビリティによる流通情報(受発注、決済、所有権移転など)を一元化するために活用されているのが、ブロックチェーンです。

ブロックチェーンを使うことで、中央管理者を排除したオープンプラットフォームの実現が期待されています。

NTT DATAの取り組み:DX推進ソリューション

2021年には、NTTデータが、ブロックチェーン技術をベースとしたDX推進ソリューション「BlockTrace®」の提供を開始しました。

同社によると、「BlockTraceは、ブロックチェーンプラットフォームおよび同プラットフォーム上のアプリケーションにより、お客さまのDXを推進するソリューションであり、今後NTTデータのブロックチェーン関連のサービスも含め、BlockTraceブランドでの展開を図」るとされており、その中の一つに、コールドチェーンの課題解決に向けたアプリケーションが含まれています。

出典:NTT DATA

その名も、「BlockTrace for Cold Chain」。

BlockTrace for Cold Chainでは、「輸送中の位置情報・温度管理情報をブロックチェーン上に書き込むことで、生鮮食品の品質状態を見える化し、エンドユーザーに訴求することができるため、商品価値の向上を見込むことができ」る他、「医薬品や化学品などのセンシティブな温度管理輸送が必要なシーンにも応用でき」る「低温輸送保証をサポートするソリューション」であるとされています。

他にも、「サプライチェーンにおける情報共有ソリューション」である「BlockTrace for Supply Chain」等のアプリケーションも用意されており、これら複数のソリューションを組み合わせることで、コールドチェーンの課題解決が期待できるでしょう。

【2022年】中国NFT(デジタルコレクティブル)市場の現状

2021年以降NFTが世界的に関心を集める中、中国でもNFTに関する話題は事欠きません。仮想通貨に対する規制の厳しい中国では、2次販売禁止で、仮想通貨で決済できない他とは違う独自のNFT市場が形成されています。本記事では、中国での仮想通貨規制やNFTの基礎知識を解説した上で、中国NFT市場の特徴や、中国NFTのトピックスをご紹介していきます。

中国NFT市場と仮想通貨規制
政府による仮想通貨規制
中国独自のNFT市場が形成され急成長している
独自ルールのNFT市場
規制の中でも急成長する中国NFT市場
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
中国のNFT取引は他とどう違うのか
①決済通貨が人民元に絞られている
②2次売買が出来ない
③取引所に管理者が存在する
④利用には認証が必要
中国NFT市場のトピックス
政府主導で進むNFTインフラの構築
コロナ検閲への反攻手段としてNFTを利用
まとめ

中国NFT市場と仮想通貨規制

政府による仮想通貨規制

出典:pixabay

2021年頃からNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」が世界的に注目を集めています。

NFTとは仮想通貨の技術を基盤とした「デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術」のことで、他の国同様、中国でもNFT市場拡大の流れが起きていました。

しかし、中国国内でもNFTが盛り上がりを見せていた2021年9月に、中国政府は仮想通貨の決済や取引情報の提供など、仮想通貨に関連するサービスを全面的に禁止すると発表しました。

その背景には、仮想通貨の投機的な取引が中国経済に悪い影響を与えるといった考えや、中国政府が発行を計画している仮想通貨「デジタル人民元」を発行する上でのノイズを除去する狙いがあるとされています。

👉参考記事:『中国のブロックチェーンを金融・非金融の軸で理解する〜デジタル人民元からBSNまで〜

👉参考記事:『「BSN」〜中国が国家主導で開発を進めるブロックチェーンネットワーク〜

仮想通貨が全面的に禁止されたことにより、その仮想通貨を基盤とするNFTへの影響も懸念されました。しかし2021年9月以降、中国のNFT市場は規制と共存しつつ他の国とは違う独自の成長を遂げていくこととなります。

中国独自のNFT市場が形成され急成長している

独自ルールのNFT市場

出典:pixabay

2021年9月以降、仮想通貨への取り締まりは強化されましたが、NFTに関して完全には規制されておらず仮想通貨規制を考慮した上で独自のNFT市場が形成されています。

他のNFT市場との違いについての詳細は後述しますが、決済にビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETC)といった仮想通貨ではなく法定通貨である人民元が用いられている点がまず挙げられます。

加えて、世界に開放されているブロックチェーンではなく、中国政府が管理する閉ざされたブロックチェーンを利用しており、購入したNFTを外部(世界)の二次市場で売買することはできない点も中国NFT市場の特徴の一つです。

👉参考記事:『ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

また、NFTを取り扱う中国のテック大手企業の多くは、当局の規制に配慮して「NFT」ではなく「デジタルコレクティブル(数字収蔵品)」という言葉を使用し、世界の仮想通貨市場との区別を図っています。

これらから、世界と中国ではNFTを取り巻く環境や市場そのものの構造が異なるということが見てとれます。

規制の中でも急成長する中国NFT市場

出典:pixabay

中国NFT市場は、政府によって仮想通貨が規制されているにも関わらず、その市場規模を急速に拡大させています。

実際に、中国国内のNFTマーケットプレイス(NFT取引所)は2022年2月の時点で100あまりしか存在していませんでしたが、同年6月にはその数が500を突破し、たった4ヶ月で5倍にまで増加したことが現地メディアにより報じられています。

👉出典:inews.qq.com

👉参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜

中国のNFT市場がここまで急速に拡大した要因としては、同国内におけるNFTへの関心の高まりと、テンセントやアリババといった中国の巨大テック企業の本格的な参入があげられます。

NFTへの関心や需要が高まる一方で、NFTに関わる個人や企業は、仮想通貨に対して厳しい監視の目を向ける中国政府との直接的な対立を避けるために慎重なアプローチを取っています。

例えば、先述したように大手テック企業が「NFT」ではなく「デジタルコレクティブル(数字収蔵品)」という言葉を用いて区別するのも、当局による規制強化の可能性を回避するためだと言われています。

このように、仮想通貨市場に対して厳しい姿勢で臨む中国政府と、規制と共存しつつ拡大を続ける中国NFT市場、という構図が出来上がっているのが現状です。こういった中国独自のNFT事情について詳しく解説する前に、次項では今一度「NFT」という技術についておさらいをしていきます。

そもそもNFTとは?

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

中国のNFT取引は他とどう違うのか

出典:pixabay

①決済通貨が人民元に絞られている

前項でも触れたとおり、NFTやそれらのエコシステムはブロックチェーンを基盤に作られています。そしてNFTを取引する際の決済では、そのNFTが所属するブロックチェーン上での基軸通貨であるビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETC)といった仮想通貨を用いるのが一般的です。

しかし、仮想通貨への規制が厳しい中国でのNFT取引で使える決済手段は、法定通貨である人民元のみとなっています。

中国NFT市場が政府の規制と共存しつつ発展していけば、将来的にはデジタル人民元決済に対応する可能性も大いにあるでしょう。

②2次売買が出来ない

NFTの一般的な活用方法の一つに「2次売買による収益化」があります。NFTには、大元の持ち主が誰なのかという情報に加え、NFTが転売された際に大元の持ち主に何%還元されるのかという情報を記録させることができます。

この仕組みによって、音楽やスポーツといった様々な分野における転売収益の確保が可能になると注目を集めているのですが、中国のNFTにはこれが適用されません。

👉参考記事:『NFT技術の音楽分野への活用 〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜

👉参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜

なぜなら中国のNFTは、一般的なNFTのような世界に開放されているブロックチェーンではなく、中国政府の管理下にあり外部から遮断されたブロックチェーンを利用しているからです。

👉参考記事:『ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

2次売買による収益化は期待できない一方で、一般的なNFTに比べて投機的な取引が少なく、価格の変動性が比較的コントロールされている点が中国NFTのメリットとしてあげられます。

③取引所に管理者が存在する

中国のNFTプラットフォームのほとんどには”管理者”が存在します。これはブロックチェーンやNFTが本来持つ”自律分散型”という特徴とは逆行する考え方となります。

NFT取引所を始めとするブロックチェーン関連組織の意思決定は、特定の誰かによってではなく、組織全体で行うものだという考え方が一般的です。しかし中国のNFT市場は国が定める規制を厳格に遵守しており、それぞれのNFTプロジェクトは圧倒的に中央集権的です。

つまり中国NFT市場では、管理者がそのブロックチェーンの廃止を決定した場合、一瞬にしてすべてのデジタル資産にアクセスできなくなるといったリスクがあります。

④利用には認証が必要

一般的なNFT市場は誰でも匿名で参加できるのに対して、中国のNFTマーケットプレイスではすべての参加者に実名での身分証登録を義務付けています。KYC(Know Your Customer)ポリシーと呼ばれるこのルールは、マネーロンダリングや詐欺といった犯罪防止に役立つとされています。

しかし、先述したような中央集権的な仕組みの中国NFT市場では、NFTを利用する際に登録したすべての個人情報が、政府や一企業に把握されるようになるという側面もあります。

中国NFT市場のトピックス

出典:pixabay

政府主導で進むNFTインフラの構築

2022年1月、中国の政府関連団体は暗号通貨を使わない中国独自のNFTインフラをリリースしました。

決済やガス代の支払いに仮想通貨ではなく人民元を使用することから、一般的なNFTと区別する意味で「DDC(非中央集権デジタル証明書)」という名称を採用しています。

今後中国では、政府主導であらゆる証明書や口座管理に「DDC(非中央集権デジタル証明書)」が利用されることになると予想されます。

コロナ検閲への反攻手段としてNFTを利用

新型コロナ(COVID-19)の感染拡大により中国で厳格なロックダウンが敷かれた際には、人々が自分たちの置かれている状況を外部に知らせる方法としてNFTを利用しました。

ロックダウンによって食料や生活必需品が手に入らない市民達のフラストレーションが溜まる一方で、中国政府はその不満が世界に出回らないように非常に厳しい情報統制をおこなっていました。

そこでITリテラシーの高い一部の人々は、自分たちの置かれている厳しい状況や政府への不満を動画や画像に込めてNFT化し、規制をかいくぐって世界最大手のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaに出品したのです。

出品されたNFTのほとんどが無料であったことからも、これらの出品が営利目的ではなく情報発信目的であったことは明らかで、この取り組みは世界中で大きな話題を呼びました。

まとめ

本記事では、中国NFT市場の現状について解説してきました。

現状、中国当局は仮想通貨に対しては全面的に規制していますが、NFTについての具体的な規制や法整備は発表していません。 しかし今後中国国内のNFT市場が加熱し、当局の監視が及ばない場所での2次流通や資金洗浄などの違法行為が増えていくと、NFTに対しても規制を本格的に強化するかもしれません。

一方で、仮想通貨を使わない中国独自のNFTインフラの構築と普及が中国政府主導で進められているなど、中国独自のNFT利用は更に加速していくものと思われます。

今後の中国のNFT市場に関する動向を、引き続き見守っていきましょう。

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