Ethereum、Ripple、GoQuorum、Hyperledger・・。一口にブロックチェーンといってもそのプラットフォームには、用途に合わせて数多くの種類があります。開発基盤として選ぶならどれがいいか?それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
ブロックチェーンのプラットフォームは用途に合わせて選ぼう
実は多数あるブロックチェーンのプラットフォーム
ブロックチェーンを活用したプロダクト・サービスの開発には、開発の実装基盤となるプラットフォームが不可欠です。一般にはあまり知られていませんが、ブロックチェーンのプラットフォームには非常に多くの種類があります。
ざっと名前を列挙するだけでも、以下の通りです。
- Bitcoin Core
- Ethereum
- Avalanche
- Ripple
- NEM
- Polygon
- Cosmos
- GoQuorum
- Hyperledger Fabric
- Corda
- Solana
- Stellar
- TRON
- BSC
- Waves
- EOS 等々
もちろん、これらの全ての名前や特徴を覚える必要はありません。
しかし、代表的ないくつかのプラットフォームについては、その分類と最低限の特徴はおさえておくほうが、実際にブロックチェーンを利用したプロジェクトの推進、あるいは外注もスムーズになるでしょう。
なぜ、プラットフォームを用途で比較するのか?
ブロックチェーンのプラットフォームを分類する方法は様々にありますが、本記事では「用途に合わせた分類」をお勧めします。
用途に合わせるというのは、たとえば単純な送金ならビットコイン、ゲームならイーサリアム、銀行間送金ならRippleやCordaを開発基盤とするのが好ましい、といった具合です。
一般的に、用途別での分類方法には、「パーミッションタイプ(ネットワークの公開範囲)」「独自の仮想通貨の有無」「スマートコントラクト機能の有無」「トランザクション速度(tps)」などがあります。
しかし、これらの分類方法では、分け方が大味すぎていまいち特徴を掴めない、開発時の構成次第で条件が変わりうる、といった限界があるため「結局よくわからない」という結果になってしまいます。
また色々と知識を手に入れたところで、結局のところは開発プロジェクトで達成したいゴール、つまり自社の課題に応じた開発基盤を選択するのがセオリーなので、骨折り損にもなってしまいかねません。
こうした理由から、以下では代表的な10種類のプラットフォームについて、用途に合わせて簡単な比較をしていきます。
代表的な10のブロックチェーンプラットフォーム
数多く存在するブロックチェーン開発基盤のうち、本記事では代表的なプラットフォームとして、Ethereum、BSC、Polygon、NEM、Solana、Ripple、Corda、GoQuorum、Hyperledger Fabric、Bitcoin Coreの10種類を取り上げます。
プラットフォーム名 | 対象 | 用途例 |
---|---|---|
Ethereum(イーサリアム) | toC企業 | NFTなど |
BSC(バイナンス・スマート・チェーン) | toC企業 | DApps、NFTなど |
Polygon(ポリゴン) | toC企業 | NFT、DAppsなど |
Symbol(シンボル) | toC企業 | ゲーム、DAppsなど |
Solana(ソラナ) | toC企業 | ゲームなど |
Ripple(リップル) | toC企業 | 銀行間送金(特化) |
Corda(コルダ) | toB企業 | 銀行間送金、企業間プラットフォームなど |
GoQuorum(ゴークオラム /ゴークォーラム) | toB企業 | 企業間プラットフォームなど |
Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック) | toB企業 | 企業間プラットフォームなど |
Bitcoin Core(ビットコインコア) | 個人 | 個人間送金 |
上表のように、10種類のプラットフォームを用途の観点から分類すると、大きく次の4つに分けることができます。
- toC企業向け:ゲームなどの開発に向いている
- toB企業向け:業界プラットフォームなどの開発に向いている
- 銀行向け:銀行間送金に特化している
- 個人向け:ちょっとした送金の手段として使われる
たとえば、あなたが製造業の会社で事業責任者をしており、ブランド戦略の一環で製品のトレーサビリティ(追跡可能性)を担保することで偽造品対策や競合製品との差別化を行いたいと考えているのであれば、2のtoB企業向けプラットフォームであるCordaやGoQuorum、Hyperledger Fabricを開発基盤としたプロジェクトを推進していくのがお勧めです。
あるいは自社経済圏を構築するためにトークン発行を前提としたプラットフォームを構築したいのであれば、開発基盤はEthereumのほぼ一択でしょう。
次項で詳しくみていくように、ブロックチェーンはその開発基盤によってターゲット層や情報秘匿性、搭載している機能に違いがあります。
そのため、自身が推進するプロジェクトに向いているプラットフォームを把握し、その特性を理解しておくことは、開発者だけではなくビジネスサイドの担当者にとっても有益です。
また、独自の仮想通貨を備えているブロックチェーンもあるため、その背景知識としてチェーンの技術的特徴を把握しておいて損はないでしょう。
それでは、それぞれのプラットフォームについて順に見ていきましょう。
ブロックチェーンプラットフォームごとの特徴・違い
Ethereum(イーサリアム)
Ethereumは、2013年にロシアの若き天才Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)により構想されたプロジェクトで、ビットコインの設計思想を開発者向けに押し広げたプラットフォームです。
Ethereumの主な特徴は次の通りです。
- エンタープライズ向け(toC企業)
- NFTの開発に用いられることが多い
- 独自仮想通貨:ETH(イーサ)
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションレス型
- 情報の秘匿性が低い
Ethereumは、ビットコインを設計の土台としていることもあってか、パーミッションレス型、つまり不特定多数の参加を認めるネットワークであるため、情報の秘匿性を担保しづらく、企業の中でもゲーム開発などのtoC企業に採用されやすい点に特徴があります。
また、特筆すべき点として、トークンの開発基盤として実質的に市場を独占していることがあげられます。
これはトークンをリアルマネーと交換する取引所自体が、Ethereumの初期トークンであるERC20の規格に合わせてつくられたために、Ethereum以外での開発が困難になってしまっていることを背景としています。
したがって、ERCトークンの規格を変えるだけで様々なデジタル上の資産に対して互換性を持たせられるというメリットがあります。現在もERCの規格は増え続けており、今後新たな規格が登場すれば、新たなサービスにもブロックチェーンを組み込める可能性があります。
実際に、ERC20の規格で発行されたトークンは、誤送金すると再使用できないという仕様(=GOX、ゴックス)でした。これを解決するためにERC223という規格が誕生しました。
さらに、最新のアップデートShnghai(シャンハイ)では、ステーキングサービスに出金機能が搭載され、ユーザーの出金の自由度が増しました。
このように定期的なアップデートでユーザビリティが常に向上し続けており、初心者にもおすすめの開発基盤です。
BSC(バイナンス・スマート・チェーン)
BSC(バイナンススマートチェーン)とは、世界最大の海外取引所であるバイナンスが運営・管理する独自チェーンです。
BSCの主な特徴は以下の通りです。
- エンタープライズ向け(toC企業)
- DApps(分散型アプリケーション)の開発に用いられることが多い
- 独自仮想通貨:BNB(バイナンスコイン)
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションレス型
- 高速かつ低コスト
元々バイナンスでの取引にはバイナンスチェーンというブロックチェーンが利用されていました。しかし、このチェーンはプログラム上の制約が多かったため、ブロックチェーンとしての柔軟性に課題を抱えていました。そんなバイナンスチェーンが抱える課題の解決策としてBSCが開発されたため、自由にDAppsを構築することができます。
また、BSCはEthereum同様、スマートコントラクト機能も搭載しています。これにより、カスタマイズ性だけではなく、バイナンスチェーンの特徴であった高速の処理スピードも実現しており、ユーザーとプラットフォームの開発者の双方にとって大きなメリットを持つチェーンとなっています。
さらに、BSCの手数料はそのほかのチェーンに比べると割安になっています。これは、BSCのコンセンサスアルゴリズムが、「PoSA(プルーフ・オブ・ステーク・オーソリティ)」という方式が用いられているためです。
この方式のもとでは、承認の仕組みに高性能なコンピュータや大量の電力を要する計算処理は不要なため、手数料を抑えることができます。
独自の仮想通貨であるBNB(バイナンスコイン)は執筆時点(2023年8月)で、時価総額4位にランクインしており、その安定性も人気の理由です。
このような背景から、現在はBSCがバイナンスのメインチェーンとして採用されています。
Polygon(ポリゴン)
Polygon(ポリゴン)は、イーサリアムが抱える「処理の遅延」や「手数料の高騰」といった問題の解決を目指してつくられたブロックチェーンです。2021年まではMaticNetworkという名前でサービス展開していました。
- エンタープライズ向け(toC企業)
- トークンやDAppsの開発に用いられることが多い
- 独自仮想通貨:MATIC(マティック)
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションレス型
- 高速かつ低コスト
PolygonはEthereumのセカンドレイヤーとして開発されています。メインのブロックチェーンと並行して高速でブロックを生成し、Ethereumにリンクします。このシームレスな接続によって、Polygon自体が持つトランザクションの実行能力と、Ethereumが持つ豊富なDAppsへのアクセスを実現しています。
また、同チェーンの開発を行うPolygon Labsは、「Polygon 2.0」への大型アップデートを発表しています。このアップデートでは、ゼロ知識証明を利用した処理コストの高いデータのオフチェーン処理を実現し、コストをさらに大きく削減できるとしています。
また、今後はユーザーが複数のチェーンを検証できるようになります。したがって、ユーザーは1つの通貨で複数のチェーンを管理できるようになり、エコシステムの安全性と拡張性が高まります。
なお、この「Polygon 2.0」では、独自の通貨も「MATIC」から「POL」へとアップグレードされる模様です。
2023年8月には、国内大手の仮想通貨取引所であるCoincheckでもPolygonの取り扱いを開始しており、国内でも近年注目されているブロックチェーンです。
Solana(ソラナ)
Solanaは2017年にAnatoly Yakovenko氏によって考案され、2020年3月にローンチされたばかりの比較的新しいプラットフォームです。Ethereumと同じくパーミッションレス型、独自仮想通貨をもったtoC企業向けの開発基盤です。
Solanaの主な特徴は、次の通りです。
- エンタープライズ向け(toC企業)
- ゲーム、DAApsの開発に用いられることが多い
- 独自仮想通貨:SOL(ソル)
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションレス型
- トランザクション速度(tps)が速い
Solanaの最たる特徴は、トランザクション速度(tps)の速さです。
たとえば、ビットコインのトランザクション処理速度は6件/秒、イーサリアムは15件/秒ですが、Solanaの場合は50,000件以上/秒と圧倒的な数字を誇ります。
また、Solanaの取引手数料は平均して0.00025ドル程度であり、取引の障壁の少なさでは群を抜いています。
これらは、「PoH(プルーフ・オブ・ヒストリー)」というネットワークに参加しているコンピューター同士の同期を必要としない独自のコンセンサスアルゴリズムによって実現しています。PoHでは、ネットワークの通信状態に関係なく、ネットワーク全体として処理が進められるため、高速かつ低コストでの取引を可能にしています。
こうした特徴や手数料の安さから「イーサリアム・キラー」とも呼ばれているSolanaですが、安定性に欠けるというデメリットもあります。度重なる稼働トラブルや支援元の大手仮想通貨取引所FTXが破綻するなどして、SOLは幾度も暴落を経験しています。
新興のブロックチェーンには将来性がある一方で、その価値を一定に保つのは難しいという欠点があることも覚えておいた方が良いでしょう。
Symbol(シンボル)
Symbolは2021年にローンチされたプラットフォームで、EthereumやPolygonと同じくパーミッションレス型、独自仮想通貨をもったtoC企業向けの開発基盤です。
2021年に誕生したと聞くと、「まだ安定していないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、Symbolには前身となるNEM(ネム)と呼ばれるブロックチェーンがあり、NEMで定評のあったマルチシグというセキュリティシステムが引き継がれています。
そのため、新興のブロックチェーンではありますが、実績と信頼のあるエコシステムとなっています(Symbolが誕生したあともNEMは存続し続けており、現在はSymbolのサブチェーンにする計画が進行中です)。
Symbolの主な特徴は、次の通りです。
- 個人やコミュニティ、企業などユーザーの属性に関係なく利用できる
- ゲームや取引所、DAppsの開発など幅広い目的に用いられることが多い
- 独自仮想通貨:XYM(ジム)
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションレス
Symbolでは、コンセンサスアルゴリズムに「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」を改良した、「PoS+(プルーフ・オブ・ステーク・プラス)」が採用されています。
PoS+では、XYMの保有量だけでなく、取引量や活動量も評価対象にしたスコアが自動的に算出され、それに応じてブロックの生成者が決まる仕組みが導入されています。そのため、XYMの保有量に関わらず、献身的(アクティブ)なユーザーを優遇するというある意味で公平なシステムとなっています。
また、Symbolはパブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーン両方の機能が搭載されたハイブリッド型のチェーンです。そのため、プロジェクトのセキュリティ性に応じて、機能を使い分けることが可能になります。
実際に、2022年にカタールで開催された「FIFAワールドカップ」のホテル建設にSymbolが採用されました。Symbolが導入されたのはホテル建設の工程管理プラットフォームや建造物を3次元で設計するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と呼ばれるツールです。
セキュリティが高く法人向けのブロックチェーンであるからこそ、今後は他のプロジェクトでもSymbolが利用される可能性も十分に考えられるでしょう。
Ripple(リップル)
Rippleは、2012年から開始された金融決済・送金プラットフォームです。XRPという仮想通貨を発行しているため、そちらの方が有名かもしれません。
Rippleの主な特徴は次の通りです。
- エンタープライズ向け(銀行)
- 銀行間取引に特化している
- 独自仮想通貨:XRP(リップル)
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションド型
- 送金が速く、手数料が安い
- 秘匿性が低い
Rippleは、正確にはブロックチェーン技術は使用されていません。しかし、「XRP Ledger」という専用の分散型台帳管理システムを使用しています。このシステムでは、リップル社が指定したメンバーのみが承認作業を行います。
そのため送金スピードに定評があり、銀行間送金に特化したプラットフォームとして採用されることがほとんどです。
個人間送金のような頻度が少なく、かつもともとの手数料も大きくない取引であれば、のちに説明するBitcoin Coreで十分かもしれません。しかし、エンタープライズ、特に銀行のような膨大な頻度で多額の取引を行う企業にとっては、送金スピードは大きなメリットといえるでしょう。
通常のデータベースとブロックチェーンの中間的な位置付けにあるRippleですが、クロスチェーンブリッジの新たな規格を開発中とのこと。今後ますますブロックチェーンとの関わりも密になっていくことが予想されるため、必ず押さえておいた方が良いプラットフォームといえるでしょう。
ただし、2020年12月に米証券当局であるSEC(証券取引委員会)が、リップル社を相手に起こした裁判はいまだ係争中です。裁判で新しい展開がある度にXRPの価格が激しく上下するため、安定的な運用を望む方はほかのプラットフォームを利用した方が良いでしょう。
Corda(コルダ)
Cordaは、2014年に設立されたソフトウェア企業である「R3」(R3CEV LLC)を中心とした「R3コンソーシアム」によって開発・推進されているブロックチェーンプラットフォームです。
開発当初は、「取引におけるプライバシーの確保」という金融取引の要件を満たすための特化型プラットフォームとして誕生しましたが、その後は、金融領域に強みを持ちつつも他の領域にも使えるtoB企業向けプラットフォームとして利用されています。
Cordaの主な特徴は次の通りです。
- エンタープライズ向け(toB企業)
- 銀行間取引に強みをもつが、他の領域にも使える
- 独自仮想通貨:なし
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションド型
- 秘匿性が高い
Cordaは、銀行間取引に特化したRippleと、次に紹介するtoB企業向けのGoQuorumやHyperledger Fabricとの間の性質をもっています。
まずRippleとの違いは、Rippleが自社の独自仮想通貨をもつパーミッションレス型のプラットフォームであるのに対して、Cordaは参加者の限定されたパーミッション型のプラットフォームである点です。
この違いから、Rippleと比較して、Cordaは情報の秘匿性を高いレベルに保持できる点に特徴があるといえます。
実際に、Cordaを運営しているR3コンソーシアムには、「バンク・オブ・アメリカ」や「みずほ銀行」などのメガバンクが名を連ねており、Cordaはこうした企業の要求する高いプライバシー要件をクリアしています。
次にGoQuorumやHyperledger Fabricと比較すると、ユーザー企業のユースケースに対応した作りとなっています。これはスクラッチ開発となっていることや、Corda基盤上で作られたアプリ間のデータ連携に優れている(インターオペラビリティが高い)ことが理由です。
また、開発言語にJava / Kotlin(Javaをもっと簡潔にした言語)という扱える人口の多い言語を採用しているため、開発者を確保しやすいことも特徴の一つです。
GoQuorum(ゴークオラム / ゴークォーラム)
GoQuorumは、2016年にJ.P. Morganによって開発されたオープンソースソフトウェアです。
toC企業向けのプラットフォームであるEthereumをtoB企業向けに改変したもので、基本的にはEthereumと同様の特徴を持ちます。
GoQuorumの主な特徴は次の通りです。
- エンタープライズ向け(toB企業)
- 企業間プラットフォームに用いられる
- 独自仮想通貨:なし
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションド型
- 秘匿性が高い
- 95%はEthereumと同じ
GoQuorumがEthereumと異なる点は、「情報の秘匿性」と「スループット(単位時間あたりの処理能力)」です。
EthereumはもともとBitcoinを開発者向けに展開したパーミッションレス型のプラットフォームなので、ネットワークへの参加者が限定されておらず、プライバシー要件を高く保つことができません。
また、上述した通り、トランザクション処理速度(tps)も数百程度であり、企業間取引に求められる速度には達していません。
GoQuorumでは、Ethereumの特徴を基本的には維持しつつ、 企業向けに機能がブラッシュアップされているため、プライベートなトランザクションに向いています。ビジネスプロセスや顧客データの機密性を保ったままブロックチェーン上で処理できるため、企業が求めるセキュリティとコンプライアンスの要件に対応しやすくなります。
ただし、プライベートトランザクションは、取引があったこと自体はコンソーシアム内の全員が確認できるため、取引の存在自体を秘匿したいケースには向いていません。
Ethereumをベースにしているため、Ethereumエコシステムの知識やスキルが必要になってしまいますが、その分、機能性や拡張性においては優れたパフォーマンスを発揮するフレームワークとなっています。
Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)
Hyperledger Fabricは、2015年12月にLinux Foundationによって開始されたブロックチェーンプラットフォームです。
より厳密に言えば、複数のフレームワークやツールなどから構成されるプロジェクトである「Hyperledger」のうち、最もtoB企業で利用されているフレームワークが「Hyperledge(プロジェクトの中のフレームワークである) Fabric」です。
Hyperledger Fabricの主な特徴は次の通りです。
- エンタープライズ向け(toB企業)
- 企業間プラットフォームに用いられる
- 独自仮想通貨:なし
- スマートコントラクト機能:あり
- パーミッションド型
- 秘匿性が高い
基本的な特徴としては、GoQuorumと同じと考えて問題ありません。
主な違いとしては、Hyperledger FabricがIBM社のエンジニアによって最初からtoB企業向けに特化してつくられたプラットフォームであるために、GoQuorumよりもさらにエンタープライズ要素が強いことです。
そのため、新規参入企業が開発をスタートするための環境(フォーラムやドキュメントなど)が整っており、スムーズにプロダクト開発へ着手できます。
実際にHyperledger Fabricは、IBM社の牽引する各種の業界プラットフォーム開発の基盤として用いられています。
非金融領域でエンタープライズ向けのブロックチェーンネットワークやデータベースを構築していくのであれば、まずはこのHyperledger Fabricか、前述のGoQuorumを選択するのが良いでしょう。
Bitcoin Core(ビットコインコア)
最後に、Bitcoin Coreについて説明します。
Bitcoin Coreは言わずもがな、仮想通貨やブロックチェーン技術の先駆けであるBitcoinの開発基盤となるプラットフォームです。
Bitcoin Coreの主な特徴は次の通りです。
- 個人向け
- 開発基盤としてはほとんど用いられない
- 独自仮想通貨:BTC(ビットコイン)
- スマートコントラクト機能:なし
- パーミッションレス型
- 秘匿性が低い
- トランザクション処理速度が遅い
他のプラットフォームが、何らかの用途に合わせた開発基盤として構築されたのに対して、Bitcoin Coreは、仮想通貨としてのビットコインを世に送り出すために「サトシ・ナカモト」によって構築されたために、エンタープライズ向けのブロックチェーンプラットフォームとしては機能しません。
また、スマートコントラクトも、Ethereumの生みの親であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)によって生み出されたものであるため、Bitcoin Coreには機能が搭載されていません。
さらに、「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」と呼ばれるコンセンサス・アルゴリズムを採用し、フルノード形式(全てのトランザクションをダウンロードし続ける)であることから、トランザクションも7tpsと非常に遅く、企業間の送金などにも向いていません。
こうしたことから、Bitcoin Coreが開発基盤として用いられることは滅多になく、その用途は、ビットコインそのものの利用や、個人間送金などに限られています。
まとめ
今回はそれぞれの開発基盤の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。ブロックチェーンには様々な種類があり、それぞれに向き不向きの用途があることがお分りいただけたでしょうか。
とはいえ、まだこのコラム内で語りきれない特徴や実際の現場での使用感などにも違いがあり、日々新しいプラットフォームが開発されていることも事実です。自社システムにブロックチェーンを導入する際には専門的なアドバイスを受けると良いでしょう。
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