仮想通貨やNFTの話題に触れる中で「DAO」という言葉を目にする機会があるのでは無いでしょうか。「分散型自律組織」と日本語に訳されるDAOですが、一体どのような特徴やメリットがあるのでしょうか。本記事では、「DAO(分散型自律組織)」の概要やメリットと課題、そして実際の事例をご紹介していきます。
1.DAO(分散型自律組織)とは?
DAO(分散型自律組織)の概要
DAOが注目されている理由
2.DAO(分散型自律組織)の特徴とメリット
特徴①:組織の管理者が存在しない
特徴②:透明性が高く民主的な組織運営
特徴③:誰でも組織に参加できる
3.DAO(分散型自律組織)の代表的な事例
BitDAO(ビッダオ)
BitCoin(ビットコイン)
Ninja DAO
MakerDAO(メイカーダオ)
Compound(コンパウンド)
4.DAO(分散型自律組織)の現状の課題
課題①:組織の意思決定に時間がかかる
課題②:ハッキングリスク
課題③:法整備が不十分
5.まとめ:DAO(分散型自律組織)の今後
株式会社ではなくDAOでの組織運営が広まる
DAOへの注目が高まりガバナンストークンの価格が上昇する
1.DAO(分散型自律組織)とは?
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DAO(分散型自律組織)の概要
DAO (Decentralized Autonomous Organization、ダオ)は「分散型自律組織」と日本語で訳され、ブロックチェーン上で管理・運営される組織のことです。
その特徴については後に詳しく解説しますが、株式会社などの一般的な組織とは異なり組織の管理者が存在しないという点が、DAOの大きな特徴のひとつです。組織の意思決定は管理者によるトップダウンではなく、組織の参加者全員によって平等に行われます。
DAOが注目されている理由
DAO自体は2014年頃から存在していた概念ですが、2021年以降に大きな注目を集めるようになりました。その理由として、NFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」や「DeFi(分散型金融)」などの仮想通貨分野の盛り上がりがあります。
👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!』
👉参考記事:『DeFi(ディーファイ)とは?ブロックチェーンによる分散型金融の可能性』
これら仮想通貨関連によるインターネット上での技術革新は ”Web3.0” と呼ばれています。Web3.0において仮想通貨はお金、DeFiは金融サービス、NFTはデジタルに関する所有権のあり方、そしてDAOは”組織”を変える技術であり、それぞれが密接に関わり合って技術革新が起こってきました。
👉参考記事:『【2022年】”Web 3.0” とは?』
2.DAO(分散型自律組織)の特徴とメリット
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続いて、DAO(分散型自律組織)の特徴とメリットについてより詳しく解説していきます。
特徴①:組織の管理者が存在しない
先述したように、DAOの大きな特徴として組織の管理者が存在しないという点が挙げられます。
株式会社を代表とする従来の組織では、意思決定は上層部の管理者によって行われ、決定事項を組織の下流にまで行き渡らせる「トップダウン方式」が一般的でした。
一方でDAOには管理者が存在せず、参加者全員が一丸となってプロジェクトを推し進めていくため、トップダウン方式に比べて様々な意見が出されて議論されることがメリットと言えます。
特徴②:透明性が高く民主的な組織運営
管理者が存在しないDAOには中央集権的な権力者が存在しないため、その意思決定のプロセスは一般的な株式会社などと比べて非常に民主的です。
具体的には、DAOを動かすための意思決定に関わるためには、そのDAOのコミュニティ内で使われる仮想通貨「ガバナンストークン」を保有する必要があります。そのトークン保有者による投票によってDAOの意思決定が行われ、さらに投票のプロセスは全てブロックチェーン上に記録されるため、民主的かつ透明性の高い組織運営が実現可能となります。
また、投票の際に使用される「ガバナンストークン」は組織運営のための資金調達としての役割もあり、実際に多くのDAOがこのガバナンストークンの発行によって資金を調達しています。
ガバナンストークンを保有することには、先述した組織運営に係る権利を得る以外にも、プロジェクトが成功した際のインセンティブを得ることができるなどの金銭的メリットがあります。
特徴③:誰でも組織に参加できる
従来の組織に参加するためには試験や面接を通過し、契約書を結ぶのが一般的です。組織から離脱する場合も同様に契約解除の手続きが必要でしょう。
一方のDAOは、国籍や性別に関係なくインターネット環境さえあれば誰でも参加できます。また、DAOは匿名での参加も認められるケースも多く、顔や実名を明かさずにプロジェクトに参加できるのが従来の組織と大きく異なる点です。
3.DAO(分散型自律組織)の代表的な事例
ここでは、2022年時点での代表的なDAOをご紹介していきます。
BitDAO(ビッダオ)
BitDAO(ビッダオ)は大手仮想通貨取引所「Bybit(バイビット)」が主導するDAOプロジェクトで、大手決済サービス「PayPal」の創業者であるピーター・ティールを始めとする数多くの著名人が設立時に資金提供したことで知られています。
2021年にNFTやDeFiに関する、将来性の高いプロジェクトに資金提供することを目的に設立されました。
DAO内では「BIT」というガバナンストークンが発行され、BITの保有者はBitDAOの出資先や出資額を決める投票に参加できたり、保有量に応じた利益が分配されます。
BitCoin(ビットコイン)
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仮想通貨BitCoin(ビットコイン)は、完全な形で分散運営されている世界初のDAOであるとされています。
BitCoinには中央集権的な管理者はおらず、ブロックチェーン上の一定のルールに従って運営されており、オープンソースであるため誰でもその取引のプロセスを閲覧可能です。
なおガバナンストークンは存在せず、ブロックチェーンに取引を記録した際に新たにBitCoinが発行される仕組み(マイニング)です。後発のDAOとは異なり、トークンであるBitCoinの発行はこのマイニングでのみ行われます。
👉参考記事:『〜ブロックチェーン基礎知識〜「マイニング」』
中央集権的な管理者が不在にも関わらず、決められたプログラムに沿って意思決定されているBitCoinは、最も成功しているDAOのひとつと言えるでしょう。
Ninja DAO
出典:Ninja DAO
Ninja DAOは日本国内最大級のDAOであり、世界最大手のNFT取引所「OpenSea」で取引される「 CryptoNinja NFT 」というNFTプロジェクトの公式コミュニティです。
たとえNFT自体を所有していなくても「CryptoNinja NFT」の世界観に魅力を感じた人であれば誰でも参加可能で、ファン同士のコミュニケーションツールとして様々な活動がなされています。
NFTの二次流通も許可されており、小説、音楽、ゲームなどのファンによる二次創作も活溌な、今後さらに成長する可能性が高いDAOといえます。
MakerDAO(メイカーダオ)
出典:MakerDAO
MakerDAO(メイカーダオ)は、2014年にローンチされた歴史あるDAOプロジェクトです。
イーサリアムをMakerDAOへプールすることで、ステーブルコイン「DAI(ダイ)」が発行されるDeFiの仕組みをとっています。また、ガバナンストークン「MKR」の保有量に応じて、組織の意思決定への発言力を持てるようになる点も、典型的なDAOの形式といえるでしょう。
👉参考記事:『ステーブルコイン〜ブロックチェーン時代で急成長する新たな暗号資産〜』
ガバナンストークン「MKR」は歴史もあり信頼性の高いトークンとして人気を博しており、その収益性の高さから投資対象としても注目されています。
Compound(コンパウンド)
Compound(コンパウンド)は2018年に設立された仮想通貨の貸し手と借り手を繋げるプラットフォームです。ユーザーは資金を預けることで金利収入を得ることができ、加えて利用実績に応じて「COMP(コンプ)」というガバナンストークンが付与されます。
Compoundは2021年のDeFi(分散型金融)ブームの火付け役となったプロジェクトで、現在も人気のDeFiアプリケーションとして多くの人々が利用しています。
4.DAO(分散型自律組織)の現状の課題
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ここまでDAOの特徴やメリット、代表的な事例をご紹介してきましたが、DAOが持つ現状の課題についても触れていきます。
課題①:組織の意思決定に時間がかかる
さきほど、中央集権的な管理者を持たず民主的な意思決定が行われることをDAOのメリットとして挙げましたが、逆に組織の意思決定に時間がかかるという点がデメリットとして考えられます。
サービスがハッキングにあった場合やサービスに欠陥が見つかった場合などの不測の事態に対しても、ガバナンストークンによる投票が必要となるため、緊急時に迅速に対応することができないリスクがあります。
迅速な意思決定が必要な場面においては、従来の企業組織などのような中央集権的な「トップダウン方式」に軍配が上がる可能性が高いです。
課題②:ハッキングリスク
DAOに限らずWEB上のサービス全てに言えることですが、外部からのハッキングによるリスクは拭えません。
実際に、2016年にイーサリアム上のDAOである「The DAO」がハッキング攻撃を受け、被害総額は日本円にして約52億円にのぼりました。「The DAO」は、先程ご紹介した「BitDAO(ビッダオ)」同様の分散型投資ファンドであり、「The DAO」内にプールしていた投資用資金が狙われた形となります。
課題①にあげた「緊急時に迅速な意思決定ができない」という点と、次の課題③にあげる「法整備が不十分」である点を考慮すると、被害の補填に難航するものと思われます。
課題③:法整備が不十分
DAOは2021年以降に実体化されはじめた組織形態であるため、日本を含む世界各国の法整備が十分に追いついていない状況となっています。
2021年7月にようやく米ワイオミング州が全米で初めてDAOを合法化し、2022年2月にはマーシャル諸島共和国が国家として初めてDAOを法人として承認することが決定しました。
とはいえ、DAOを法人として認める法整備を進める動きはごく一部にとどまっており、今後の全世界的な普及が待ち望まれるところです。
5.まとめ:DAO(分散型自律組織)の今後
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株式会社ではなくDAOでの組織運営が広まる
DAO(分散型自律組織)は株式会社に比べて組織への参入ハードルが低く、また組織運営における民主性が高いため、今後は大きな組織から小さなコミュニティーまで様々な規模、分野に適用される可能性を秘めています。
また、組織としての透明性が非常に高いことから、チャリティーを始めとする慈善活動や非営利組織運用との相性が良いとされているため、NPO法人などにとって替わる存在となる可能性も十分に考えられます。
DAOへの注目が高まりガバナンストークンの価格が上昇する
DAOでの組織運営が普及すれば、各DAOに紐づくガバナンストークンの価値が高まることが予想されます。そしてトークン保有者への還元も活発化して、投資対象としてのDAOが一般層にまで注目を集めるようになれば、さらに多くのDAOプロジェクトが誕生していくことになるでしょう。
今回は、DAOの特徴やメリットを解説し、代表的な事例と解決すべき課題、そしてその将来性までをご紹介しました。
本記事を通して、DAOがこれまでの組織のあり方を大きく変える可能性を秘めていることがお分かりいただけたかと思います。
引き続き、今後のDAO(分散型自律組織)に関する動向に注目です。