ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

  1. ブロックチェーンって何?
  2. ブロックチェーンの仕組み
  3. ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年ニュースを騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)
(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。
ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。
後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

従来のデータベースの特徴

① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
② それぞれのDBは独立して存在する
③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。
その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。
まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンの仕組み


ブロックチェーンをシンプルに図解すると、次のような構造をしています。

上図からもわかるように、ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています。
では、「ブロック」や「チェーン」とは、どういう意味でしょうか?

ブロックチェーンの仕組み①:「ブロック」

ブロックチェーンでは、一定量に取りまとめられた取引データを「Tx(Transaction、トランザクション)」と呼んでいます。
「ブロック」とは、このトランザクションを1MB分だけ集めてきて、日付などのメタ情報を付与して、ひとまとまりにしたものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

ブロックチェーンの仕組み②:「チェーン」

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています(これらの用語やルールに関しては、後ほど解説します)。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられているので、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

なお、こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

稀にチェーン型でないブロックチェーンというものもありますが、それらは分散型台帳であるもののブロックチェーン構造ではないので、厳密には区別されます(例えばIOTAで有名な「タングル」構造など)。

ブロックチェーンの仕組み③:データの共有方法(コンセンサスアルゴリズム)

ブロックチェーンでのデータ共有において重要な役割を持っているのが「ノード」と呼ばれる個々のネットワーク参加者です。

すでに述べた通り、ブロックチェーンは、従来のデータベースとは異なり中央管理者が不在のため、データの管理や共有はすべて参加者だけで行う必要があります。
この参加者のことを「ノード」と呼び、世界中に散らばるノードが競争した結果、競争に勝利した一つのノードによって、絶えず新しいブロックが生成されていきます(ビットコインでは平均10分に1つのペースで新しいブロックが生成されるように設計されています)。

また、各ノードは、P2Pネットワーク内の他のノードの一部と繋げられており、あるノードでつくられた新しいブロックの情報は、そのノードと繋がっている他のノードにすぐさま伝播します
そして、この「ブロックの伝播」を繰り返していくことで、ブロックおよびブロックに含まれる取引データが、瞬く間に世界中の参加者へと共有される(=データが同期される)のです。
これによって、多数のノードがデータを持ち合うことで、ブロックチェーンでは、データの改竄や捏造が難しくなりました。

しかし、この方法は、あくまで「ブロック化された元のデータ内容が正しいこと」を前提としています。
ブロックチェーンの世界には第三者としての中央管理者がいません。
従って、もし、ブロックをつくった人間に悪意があった場合、その人間を管理できる存在がいないため、世界中の人が間違ったデータを同時に持ってしまうことになります。
つまり、P2Pネットワーク参加者のみで行うデータ共有の仕組みでは、「管理者不在の中、どうやってデータの真正性を担保するか?」という問題を解決する必要があるのです。

そこで、考え出されたのが、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる、ネットワーク内での合意形成の方法です。
ブロックチェーンでは、個々のネットワークごとに、「複数それっぽいブロックが出てきた時にどれを選ぶか?」という論点に対する合意方法が、コンセンサスアルゴリズムという形で事前に決められているのです。

(出典:pixabay

例えば、代表的なところでは、ビットコインのPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)あたりが有名です。
れる謎の人物であることを思い出してください)

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると以下のように分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

ノードの参加者が限定されているPermission型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。

代表的なブロックチェーンの種類

前述の分類に従い、頻出するブロックチェーンをマッピングしたものが次の図です。

企業向けの開発では中央集権によっているQuorum(Ethereumから派生)かHyperLedger Fabricを利用します。

〜ブロックチェーン基礎知識〜「マイニング」

今回は暗号資産に触れるにあたって最も基礎的な知識のひとつ、「マイニング」について解説していきます。また、「マイニング」を理解する上で避けては通れないのが「ブロックチェーン技術」についてです。そこで、本記事では初心者向けに「マイニング」と「ブロックチェーン技術」の基礎知識をご説明します。

  1. マイニング=「暗号資産の採掘」
  2. 「発行」に関する暗号資産と現金の違い
  3. ブロックチェーンとは
  4. 「承認」×「コイン発行」の連続=ブロックチェーン
  5. まとめ

マイニング=「暗号資産の採掘」

「マイニング」とは、「ブロックチェーン上で難しい問題を解くこと(承認作業)により、その報酬として新規発行したコインを得ること」を意味します。これは、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産で採用されている、コイン獲得方法です。

「マイニング」の元々の言葉の意味は「採掘」、つまり金や石炭などの鉱石を掘り起こすことを言います。そして、それらの鉱石の地球上に存在している量はあらかじめ決まっていて、所有者はもちろん鉱石を掘り当てた本人となります。

出典:pixabay

冒頭でも述べたとおり、暗号資産の分野で「マイニング」というと、「新規発行したコインを得る(掘り当てる)こと」となります。コインを掘り当てる?というとまだまだイメージが沸きにくいかもしれません。そこで、暗号資産にとって「コインを新規発行する」とは一体どういうことなのかを紐解いていきます。

「発行」に関する暗号資産と現金の違い

中央集権型の「現金」の場合

暗号資産の分野での「コインの発行」を解説する前に、私たちにとって最も身近な法定通貨、つまりいわゆる「現金」=日本円の場合はどうなのかを例に見てみましょう。

日本円の発行は、お札の場合は日本銀行が行っており、印刷する枚数は政府が管理しています。日本に限らず世界中の多くの国では、現金の発行量は国や政府などの中央機関が管理しています。つまり、多くの現金は「中央集権型」の管理システムをとっています。

出典:pixabay

また、現金に関する中央集権型の管理システムは、発行だけでなく送金といったお金のやり取りの場合も同様です。例えば、みなさんが手元の現金を誰かに送るとき、現金そのものを郵送するのではなく、銀行ATMを利用して送金するはずです。

このATMも、銀行という中央機関が管理している「中央集権型」の送金システムです。金額、宛先、時刻といった取引履歴は全て、ATMを運用する銀行のサーバーで一元管理をされています。


「暗号資産(コイン)」のほとんどは非中央集権

一方、暗号資産はシステムの中央管理者がおらず、コインの発行は全てプログラムによって自動で行われています。こうした管理手法を「非中央集権型」と言います。現金の中央集権型に対し、暗号資産は「非中央集権型」の管理システムを採用しているのが両者の大きな違いです。

上記の通り、送金、発行する際のセキュリティを担保してくれる中央管理者が暗号資産には存在しません。それでは、暗号資産の管理はどのようにして安全に行われるのでしょうか?それを可能とするのが「ブロックチェーン技術」です。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの耐改ざん性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DBそれぞれのDBは独立して存在するそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。ブロックチェーンに関して、より詳しい内容を知りたい方は、下記参考記事をご覧いただければと思います。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

「承認」×「コイン発行」の連続=ブロックチェーン

暗号資産の送金には承認作業が必要

先述したように、日本円などの現金の送金は、ATMを管理する銀行によって承認されます。しかし中央管理者がいない暗号資産の取引は、第三者であるマイナー(=マイニングする人)がその役割を担います。

例えば、AさんがBさんにビットコインを送った際に、「AさんがBさんにビットコインを送金した」というデータが本当に正しいかどうかを、世界中のマイナー達が確認します。その確認作業は膨大な計算を必要とする大変難しいもので、高性能のコンピューターを必要とします。

「コイン発行」は承認作業に対する対価

暗号資産の取引を承認することは難しい作業であるため、最初に承認を行った人には対価としてコインが支払われる仕組みとなっています。

出典:pixabay

このコインの新規発行を、鉱石の採掘になぞらえて「マイニング」(=「採掘」)と呼んでいるわけです。

ブロックチェーンの成立

第三者が、AさんとBさんの暗号資産取引を承認し、その対価としてコインを受け取る。この一連の作業が「マイニング」であり、そして「マイニング」により取引記録(トランザクション)が連続することにより「ブロックチェーン」は成立します。

まとめ

本記事では、暗号資産分野における「マイニング」と、その基盤となる「ブロックチェーン」について解説しました。

暗号資産分野は「非中央集権型」で、コインを管理・発行する特定の組織が存在しないため、マイニングによってそれらを担っています。このようにして「取引履歴のネットワークが維持」されることと、「新たなコインを発行する」仕組みが同時になりたっていることが、暗号資産の特徴のひとつです。

【2022年】NFTファッションの特徴と魅力、最新トピックスをご紹介

2021年以降、アートやゲーム、音楽など様々なカテゴリーで活用されはじめているNFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」ですが、ファッションやアパレルの分野でも注目を集めています。デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術であるNFTと、元来アナログなコンテンツであるファッション分野を組み合わせることで一体どのようなことが可能になるのでしょうか?そこで本記事では、NFTの基礎知識からNFTファッションのメリットや特徴、関連するトピックスをご紹介していきます。

ファッション分野へのNFT活用が拡大中
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
ファッション×NFTで実現すること
①ファッションアイテムに唯一性を付与できる
②デジタルファッションが ”現物” に近づく
NFTファッションに関するトピックス
有名ブランドが次々と参入
Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
Gucci(グッチ)
BURBERRY(バーバリー)
Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)
NFTファッション専門メーカーの誕生
伝統あるファッションショーにNFTが導入される
まとめ

ファッション分野へのNFT活用が拡大中

2021年以降、ゲームやアート、音楽といった様々な分野に広がりを見せたNFT「Non-Fungible Token(非代替性トークン)は、ファッション業界へも大きく普及しはじめており、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)Gucci(グッチ)といった、有名ハイブランドが次々とNFTに参入していることからも、その注目度の高さがうかがえます。

「デジタルデータを唯一無二化する技術」であるNFTと、服や靴などの ”現物” が存在するファッション分野を掛け合わせると、どのような事が可能となるのでしょうか。

NFTファッションの特徴や実際の導入事例をご紹介する前に、まずは前提となるNFTについて解説していきます。

NFTの基礎知識

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

ファッション×NFTで実現すること

①ファッションアイテムに唯一性を付与できる

出典:pixabay

NFTを活用することによって、デジタル、現物を問わずファッションアイテムに唯一性を付与できるようになります。

現物のファッションアイテムの偽造品対策としてギャランティカード(証明書)が従来から存在しますが、このギャランティカードを含めて偽造する悪質な詐欺も横行しており、特にハイブランドが被害を被るケースが後を絶ちません。

そして前項で解説した通りNFTは「デジタルデータを唯一無二化する技術」なので、現物のファッションアイテムにNFT化したデジタルデータを紐付けた ”NFTタグ” を取り付ければ、そのアイテムの唯一性を証明できるようになります。”NFTタグ” として使えるものはICチップとQRコードの2種類があり、どちらも固有の情報を書き込め、NFT化すれば偽造もコピーもできないという点で共通しています。

この偽造もコピーもできない ”NFTタグ” が普及すれば、ファッション業界を長年悩ませてきた偽造品対策にとって大きな進歩となることでしょう。

②デジタルファッションが ”現物” に近づく

出典:pixabay

上記では現物のファッションアイテムに対してのNFT活用をご紹介しましたが、ファッション×NFTの本題はデジタルファッションです。

ゲームやメタバース(仮想現実)、SNS上で自身のアバターやキャラクターに好きな服を着用させたりコレクションして楽しむというデジタルファッションの概念は従来から存在していますが、これとNFTを結びつけることでデジタルデータとしてのファッションアイテムに「唯一性」を持たせることができるようになります。

👉参考記事:『メタバースとNFT 〜NFTによって証明される仮想現実内の”モノの価値”〜

👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜

デジタルファッションの唯一性が証明できるようになると、現物のファッションアイテムと同様に需要が生まれ価値が高まっていき、デジタルファッションを取り扱う取引が活発化します。そしてゲームやメタバース(仮想現実)内の自分のアバターに価値が高いアイテムを着用させることによって、満足感を得たり、コミュニティ内で優越感を得ることができます。

それはつまり、NFTによってファッションにおけるゲームやメタバース(仮想現実)と現実世界の差が縮まり、新たな市場が生まれるということを意味します。実際に名だたるハイブランドが次々とNFTファッションに参入しており、次項でご紹介していきます。

NFTファッションに関するトピックス

有名ブランドが次々と参入

Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)

出典:prtimes.jp「ルイ・ヴィトン、ゲームアプリ「Louis: The Game」に2つのチャプターが追加。NFTも新たに登場

2021年8月、フランスの高級ファッションブランド「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」は、創業者ルイの生誕200年を記念したプロジェクト「LOUIS 200」の一環として「LOUIS THE GAME」というゲームをリリースしました。

「LOUIS THE GAME」は公式マスコットキャラクターであるヴィヴィエンヌを操作して6つのステージを冒険していくストーリー形式のゲームです。ゲーム内にはNFT化された特別なアイテムが30個隠されており、そのうち10個を自身の作品が約75億円で落札されたことで話題になった人気NFTアーティスト「Beeple」がデザインしています。

Gucci(グッチ)

出典:Christie’s

イタリアを代表する老舗ファッションブランドの「Gucci(グッチ)」は、数あるハイブランドの中でもいち早くNFT市場に参加しました。

2021年5月に老舗オークションハウス「Christie’s(クリスティーズ)」と連携してNFTのビデオ作品を出品したのを皮切りに、その後もNFTに関連する様々なプロジェクトとコラボレーションを行うなどしています。

また、2022年1月にはNFTやメタバースに関して意見交換をする場として、配信プラットフォーム「Discord(ディスコード)」上で「Gucci Vault Discord」という専用スペースを設けるなど、GucciはNFT市場開拓に関してかなり積極的なブランドと言えます。

BURBERRY(バーバリー)

出典:hypebeast.com「Burberry が Blankos Block Party とタッグを組んだバーチャル NFT コレクションを発表

2021年8月、イギリスの有名ファッションブランド「BURBERRY(バーバリー)」は、独特の世界観で人気を博しているブロックチェーンゲーム「BLANKOS BLOCK PARTY(ブランコス・ブロック・パーティー)」とのコラボを実施しました。

このゲームのプレイヤーは、メタバース内の自身のアバターに好きなファッションアイテムを着せる事ができ、そのコレクションの一つとしてBURBERRY(バーバリー)の限定コラボアイテムが発売されました。

2022年6月にもまた新たなコレクションが追加されることが発表され、ファンの期待を膨らませています。

Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)

出典:Dolce&Gabbana

2021年9月、イタリアを代表する世界的なラグジュアリーファッションブランド「Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)」は、ブランド初のNFTコレクションとして「Collezione Genesi(ジェネシス コレクション)」を発表しました。

総額6億円以上で落札された男性用スーツや女性用ドレス、ティアラなど9点の作品は、デジタルデータだけでなく実際に着用できる ”現物” も購入者に届けられるという内容でした。

加えて、購入者をDolce&Gabbanaのアトリエプライベートツアーや次回のコレクションイベントへ招待するなど、現実世界とメタバース双方の体験価値を最大化させるファッションにおけるNFTのお手本的な活用方法を実現しました。

NFTファッション専門メーカーの誕生

出典:RTFKT

上記では既存の有名ブランドがNFT市場に参入する事例をご紹介してきましたが、現物は一切取り扱わないNFTファッションに特化したメーカーも誕生しています。

2019年に設立された「RTFKT(アーティファクト)」は、オンライン上でのみ着用可能なNFTスニーカーを販売しているメーカーです。

2021年3月には、NFTアート界で注目を集める若手アーティスト「Fewocious(フュウオシャス)」とのコラボレーションで制作したバーチャルスニーカー600足がたった7分で完売し、約3億3,200万円の売上を叩き出したため大きな話題となりました。

そんなRTFKTの創業メンバーはそれぞれファッションやNFTやメタバースなどのテクノロジーに精通したバックグラウンドを持っており、他にない高品質でオリジナリティあふれるバーチャル製品や体験を創り出していることが高く評価されています。

2021年12月に世界的大手スポーツブランドである「NIKE(ナイキ)」がRTFKTを買収したことも、今後のRTFKTに対する期待の表れでしょう。

伝統あるファッションショーにNFTが導入される

出典:pixabay

服飾の新作発表会・販促展示会であるファッションショーのうち特に約1週間にわたって開催されるファッションウィーク(コレクション)ですが、約70年という長い歴史を持つこのファッションウィークもコロナ禍の影響を受けて一気にデジタルフォーマットに移行中で、そこでNFTが大きな役割を果たています。

たとえば、パリで開催されるファッションウィークでは、オートクチュール・ファッション連盟(フランス服飾連盟)がフランスのNFTプラットフォーム「Arianee(アリアーヌ)」と連携し、特別に選ばれた人向けに限定のNFTをギフティングしたり、限定ファッションを閲覧できるなどの特別な体験を提供していました。

まとめ

今回はファッション分野へのNFT活用について解説してきました。

ファッション界隈は流行や目新しいものに対するアンテナを張っている人達が多いため、NFTが浸透していくのに多くの時間はかかりませんでした。また、有名ブランドが積極的に参入することにより、NFTに詳しくない一般層にも急速に普及していくことが予想できます。

ますます盛り上がっていくであろうNFTファッションに今後も注目です。

【2022年最新版】アートへのNFT活用事例集

2021年頃からNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」がメディアやSNSに取り上げられることも増えてきましたが、その中でも ”アート” へのNFT利用が特に注目を集めています。とある画像データに75億円もの価値がついたり、数々の著名人が積極的に参入するなど話題に事欠かないNFTアート。 本記事ではそんなNFTアートについて、NFTの基礎知識やメリットを交えながら解説していきます。

NFTアートはNFT活用の火付け役
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
アート×NFTで実現すること
唯一無二という価値が生まれる
新たなマネタイズ方法が生まれる
NFTアートの実例
「Everydays: The First 5000 Days」by Beeple
Bored Ape Yacht Club(BAYC)
CryptoPunks(クリプトパンク)
「Zombie Zoo」by Zombie Zoo Keeper
手塚アニメ_アトムのモザイクアート
まとめ

NFTアートはNFT活用の火付け役

出典:pixabay

2021年以降にNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」への注目が拡大していくきっかけとなったのは、アート分野に対してNFTが活用され、それらが非常に高い金額で取引されたことでしょう。

例えば、2021年3月に海外クリエイター「Beeple」氏が作成したデジタルアート作品が約75億円もの高額で取引され、2021年8月には東京都在住の8歳の少年が描いたデジタルアート3枚が約200万円で落札されました。一見すると普通の ”画像データ” にも関わらず、驚くような高値がつくというそのギャップによって多くの人々が驚き、世界的な話題を呼びました。

また、上記のような高値での取引以外に、人気アイドルグループSMAPの元メンバーである香取慎吾さんや人気女優の広瀬すずさんといった著名人がNFTアートに次々と参入していることも、日本国内でNFTアートが注目を集めるきっかけとなっています。

2022年現在では、ゲームや音楽、スポーツなど様々な分野へNFTが活用されていますが、その火付け役となったのがNFTアートでした。

👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜

👉参考記事:『NFT技術の音楽分野への活用 〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜

👉参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜

そんなNFTアートについての解説や、より多くの事例をご紹介する前に、まずは次項でNFTそのものについて解説していきます。

NFTの基礎知識

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

アート×NFTで実現すること

唯一無二という価値が生まれる

出典:pixabay

NFTの解説でも述べたように、実物の絵画や美術品といったPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

しかし、アーティストが描いたデジタル作品に対して ”唯一無二の本物” であるという証明をすることは不可能に近く、コピーやスクリーンショットがWEB上に溢れてしまうことは容易に想像がつきます。

しかしこれからは、NFT技術によって ”唯一無二の本物” であるという証明がなされた「自分が好きなアーティストが描いたデジタル作品」を、自分だけのモノにできるのです。

“唯一無二の本物” を所有することによって、作品やアーティストに対してさらに愛着が持てるようになったり、ファンコミュニティの中で「自分はあのデジタルアートを所有する特別なファンだ」といった心理的な優越感を得ることができます。

クリエイターとしても、自分の作品を気に入ってくれた特別なファンの存在を、NFTアートを通してこれまでよりも近く感じることができるはずです。

新たなマネタイズ方法が生まれる

出典:pixabay

従来であればアーティストが自分の作品を出品する際に、ギャラリーや仲卸し業者に少なくない金額の手数料を差し引かれる事が多かったため、アーティスト活動だけで生計をたてられる人はほんの一握りでした。

一方で、NFTアートはWEB上で誰でも手軽に出品することができ、出品手数料もかからない、あるいは従来に比べれば非常に少なくすみます。出品の手軽さとマネタイズのしやすさが相まって、アーティストたちはより多くの収入を得るチャンスが増えます。

また、NFTの技術をアートに活用することで、そのアートが転売されるたびに作者の元に収益を還元する仕組みが実現できます。無名時代に描いた作品が有名になってから高値で取引されるようになると作者自身にもその利益が還元されるため、収益だけでなく作り手のモチベーションアップにも繋がります。

NFTによってアートの新たなマネタイズ方法が生み出されると、収入面で夢を諦めていた多くの才能あるクリエイター達のモチベーションアップに繋がり、ゆくゆくはアート市場そのものが盛り上がっていくことが期待できます。

NFTアートの実例

続いて、2022年時点でのNFTアートの実例をご紹介していきます。

「Everydays: The First 5000 Days」by Beeple

👉出典:Christie’s『Beeple Everydays – The First 5000 Days

海外アーティストであるBeeple氏によって作られた「Everydays-The First 5000Days」は約75億円で落札されたNFTであり、これはNFT史上最高の取引額(2022年7月時点)とされています。

このNFTは、Beeple氏が10数年間毎日作成し続けたプロジェクトである「EVERY DAYS」の作品をまとめて1つのNFTとした作品で、その価格のインパクトも相まって、同作品は「世界で最も有名なNFTアート」としても知られています。

Beeple氏は、NFTに注力するまでは世界的に注目されるほどのアーティストではありませんでしたが、今ではNFTアートの先駆者として世界中で認知されているアーティストとなりました。

Bored Ape Yacht Club(BAYC)

👉Bored Ape Yacht Club(BAYC)の公式ページ

「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」は、アメリカのNFTスタジオであるYuga Labsが制作する類人猿をモチーフにしたNFTアートコレクションです。顔のパーツや表情、服装などバリエーションの異なる1万点のNFTアートが発行され、同じ絵柄は1枚として存在しません。

2022年7月現在、海外セレブや著名人を中心にSNSのアイコンを自分が所有しているNFTアートにすることが流行りつつあり、その先駆けともいえるのがこのBored Ape Yacht Club(BAYC)です。

さらに2022年4月には、アメリカ最大手の仮想通貨取引所であるコインベースによる映画化も発表されました。BAYCのNFT所有者が、自身のNFTをオーディションに出すことが可能で、映画にキャスティングされれば約135万円(1万ドル)のライセンス費を受け取ることができるという試みも予定されています。

CryptoPunks(クリプトパンク)

👉CryptoPunks(クリプトパンク)の公式ページ

CryptoPunks(クリプトパンク)は、2017年に誕生した世界最古と言われているNFTアートコレクションで、24×24ピクセルのドット絵で男女の様々な顔が描かれています。こちらもBored Ape Yacht Club(BAYC)同様、同じ絵柄は1枚として存在しません。

リリース当初は無料配布されていましたが、作品の総発行枚数は1万点と限りがあり、その希少性から数千万円以上の値段が付けられるまでに価格が高騰しています。

2022年現在は、その高額な値段から一種の投資商品のような扱いをされており、多くの有名投資家が保有しています。

「Zombie Zoo」by Zombie Zoo Keeper

👉出典:BuzzFeed News『8歳の少年が描いた1枚の絵が、NFT取引で160万円相当に!』

「Zombie Zoo(ゾンビ・ズー)」は、2021年に当時8歳の日本人の少年によって始められたNFTアートプロジェクトです。

彼が夏休みの自由研究として描いた3枚のデジタルアートを、彼の母親であるアーティストの草野絵美さんの協力のもと世界最大手のNFT取引所『OpenSea(オープンシー)』に出品したところ、世界的に有名DJによって約240万円で落札されました。

2022年には、東映アニメーションによるアニメ化プロジェクトも始動するなど、日本人のしかも子供によるNFTアート作品とあって、非常に多くの注目を集めているNFTアートプロジェクトです。

手塚アニメ_アトムのモザイクアート

👉出典:美術手帖「日本発NFTの最高落札額。モザイクアートNFT「鉄腕アトム」が約5600万円で落札

2021年12月、日本を代表する漫画家である手塚治虫氏の代表作品を題材に展開されたNFTプロジェクト「From the Fragments of Tezuka Osamu」の第一弾として、「鉄腕アトム」を題材としたNFTアートが世界最大手のNFT取引所『OpenSea(オープンシー)』に出品され、約5600万円で落札されました。

このNFTアート「鉄腕アトム」は、手塚治虫漫画のカラー原画840枚と4000枚以上の白黒漫画原稿で構成されたモザイクアートで、売上の10%をユニセフと日本の子供のために寄付することも発表されています。

まとめ

今回はNFTアートについて解説し、実際の事例をご紹介してきました。

NFTアートはクリエイターと買い手の双方にとってより良い体験をもたらす革新的な技術です。

一方で現状、NFTアートは依然目新しいモノとして捉えられており、高額な金額で投機的に取引されることに注目が集まりがちです。今後は、アートの原点である ”純粋に気に入った作品を購入する” という向き合い方が広まり、現実のアートのように人々の生活の一部となっていくことを期待します。

【2022年】中国NFT(デジタルコレクティブル)市場の現状

2021年以降NFTが世界的に関心を集める中、中国でもNFTに関する話題は事欠きません。仮想通貨に対する規制の厳しい中国では、2次販売禁止で、仮想通貨で決済できない他とは違う独自のNFT市場が形成されています。本記事では、中国での仮想通貨規制やNFTの基礎知識を解説した上で、中国NFT市場の特徴や、中国NFTのトピックスをご紹介していきます。

中国NFT市場と仮想通貨規制
政府による仮想通貨規制
中国独自のNFT市場が形成され急成長している
独自ルールのNFT市場
規制の中でも急成長する中国NFT市場
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
中国のNFT取引は他とどう違うのか
①決済通貨が人民元に絞られている
②2次売買が出来ない
③取引所に管理者が存在する
④利用には認証が必要
中国NFT市場のトピックス
政府主導で進むNFTインフラの構築
コロナ検閲への反攻手段としてNFTを利用
まとめ

中国NFT市場と仮想通貨規制

政府による仮想通貨規制

出典:pixabay

2021年頃からNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」が世界的に注目を集めています。

NFTとは仮想通貨の技術を基盤とした「デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術」のことで、他の国同様、中国でもNFT市場拡大の流れが起きていました。

しかし、中国国内でもNFTが盛り上がりを見せていた2021年9月に、中国政府は仮想通貨の決済や取引情報の提供など、仮想通貨に関連するサービスを全面的に禁止すると発表しました。

その背景には、仮想通貨の投機的な取引が中国経済に悪い影響を与えるといった考えや、中国政府が発行を計画している仮想通貨「デジタル人民元」を発行する上でのノイズを除去する狙いがあるとされています。

👉参考記事:『中国のブロックチェーンを金融・非金融の軸で理解する〜デジタル人民元からBSNまで〜

👉参考記事:『「BSN」〜中国が国家主導で開発を進めるブロックチェーンネットワーク〜

仮想通貨が全面的に禁止されたことにより、その仮想通貨を基盤とするNFTへの影響も懸念されました。しかし2021年9月以降、中国のNFT市場は規制と共存しつつ他の国とは違う独自の成長を遂げていくこととなります。

中国独自のNFT市場が形成され急成長している

独自ルールのNFT市場

出典:pixabay

2021年9月以降、仮想通貨への取り締まりは強化されましたが、NFTに関して完全には規制されておらず仮想通貨規制を考慮した上で独自のNFT市場が形成されています。

他のNFT市場との違いについての詳細は後述しますが、決済にビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETC)といった仮想通貨ではなく法定通貨である人民元が用いられている点がまず挙げられます。

加えて、世界に開放されているブロックチェーンではなく、中国政府が管理する閉ざされたブロックチェーンを利用しており、購入したNFTを外部(世界)の二次市場で売買することはできない点も中国NFT市場の特徴の一つです。

👉参考記事:『ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

また、NFTを取り扱う中国のテック大手企業の多くは、当局の規制に配慮して「NFT」ではなく「デジタルコレクティブル(数字収蔵品)」という言葉を使用し、世界の仮想通貨市場との区別を図っています。

これらから、世界と中国ではNFTを取り巻く環境や市場そのものの構造が異なるということが見てとれます。

規制の中でも急成長する中国NFT市場

出典:pixabay

中国NFT市場は、政府によって仮想通貨が規制されているにも関わらず、その市場規模を急速に拡大させています。

実際に、中国国内のNFTマーケットプレイス(NFT取引所)は2022年2月の時点で100あまりしか存在していませんでしたが、同年6月にはその数が500を突破し、たった4ヶ月で5倍にまで増加したことが現地メディアにより報じられています。

👉出典:inews.qq.com

👉参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜

中国のNFT市場がここまで急速に拡大した要因としては、同国内におけるNFTへの関心の高まりと、テンセントやアリババといった中国の巨大テック企業の本格的な参入があげられます。

NFTへの関心や需要が高まる一方で、NFTに関わる個人や企業は、仮想通貨に対して厳しい監視の目を向ける中国政府との直接的な対立を避けるために慎重なアプローチを取っています。

例えば、先述したように大手テック企業が「NFT」ではなく「デジタルコレクティブル(数字収蔵品)」という言葉を用いて区別するのも、当局による規制強化の可能性を回避するためだと言われています。

このように、仮想通貨市場に対して厳しい姿勢で臨む中国政府と、規制と共存しつつ拡大を続ける中国NFT市場、という構図が出来上がっているのが現状です。こういった中国独自のNFT事情について詳しく解説する前に、次項では今一度「NFT」という技術についておさらいをしていきます。

そもそもNFTとは?

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

中国のNFT取引は他とどう違うのか

出典:pixabay

①決済通貨が人民元に絞られている

前項でも触れたとおり、NFTやそれらのエコシステムはブロックチェーンを基盤に作られています。そしてNFTを取引する際の決済では、そのNFTが所属するブロックチェーン上での基軸通貨であるビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETC)といった仮想通貨を用いるのが一般的です。

しかし、仮想通貨への規制が厳しい中国でのNFT取引で使える決済手段は、法定通貨である人民元のみとなっています。

中国NFT市場が政府の規制と共存しつつ発展していけば、将来的にはデジタル人民元決済に対応する可能性も大いにあるでしょう。

②2次売買が出来ない

NFTの一般的な活用方法の一つに「2次売買による収益化」があります。NFTには、大元の持ち主が誰なのかという情報に加え、NFTが転売された際に大元の持ち主に何%還元されるのかという情報を記録させることができます。

この仕組みによって、音楽やスポーツといった様々な分野における転売収益の確保が可能になると注目を集めているのですが、中国のNFTにはこれが適用されません。

👉参考記事:『NFT技術の音楽分野への活用 〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜

👉参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜

なぜなら中国のNFTは、一般的なNFTのような世界に開放されているブロックチェーンではなく、中国政府の管理下にあり外部から遮断されたブロックチェーンを利用しているからです。

👉参考記事:『ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

2次売買による収益化は期待できない一方で、一般的なNFTに比べて投機的な取引が少なく、価格の変動性が比較的コントロールされている点が中国NFTのメリットとしてあげられます。

③取引所に管理者が存在する

中国のNFTプラットフォームのほとんどには”管理者”が存在します。これはブロックチェーンやNFTが本来持つ”自律分散型”という特徴とは逆行する考え方となります。

NFT取引所を始めとするブロックチェーン関連組織の意思決定は、特定の誰かによってではなく、組織全体で行うものだという考え方が一般的です。しかし中国のNFT市場は国が定める規制を厳格に遵守しており、それぞれのNFTプロジェクトは圧倒的に中央集権的です。

つまり中国NFT市場では、管理者がそのブロックチェーンの廃止を決定した場合、一瞬にしてすべてのデジタル資産にアクセスできなくなるといったリスクがあります。

④利用には認証が必要

一般的なNFT市場は誰でも匿名で参加できるのに対して、中国のNFTマーケットプレイスではすべての参加者に実名での身分証登録を義務付けています。KYC(Know Your Customer)ポリシーと呼ばれるこのルールは、マネーロンダリングや詐欺といった犯罪防止に役立つとされています。

しかし、先述したような中央集権的な仕組みの中国NFT市場では、NFTを利用する際に登録したすべての個人情報が、政府や一企業に把握されるようになるという側面もあります。

中国NFT市場のトピックス

出典:pixabay

政府主導で進むNFTインフラの構築

2022年1月、中国の政府関連団体は暗号通貨を使わない中国独自のNFTインフラをリリースしました。

決済やガス代の支払いに仮想通貨ではなく人民元を使用することから、一般的なNFTと区別する意味で「DDC(非中央集権デジタル証明書)」という名称を採用しています。

今後中国では、政府主導であらゆる証明書や口座管理に「DDC(非中央集権デジタル証明書)」が利用されることになると予想されます。

コロナ検閲への反攻手段としてNFTを利用

新型コロナ(COVID-19)の感染拡大により中国で厳格なロックダウンが敷かれた際には、人々が自分たちの置かれている状況を外部に知らせる方法としてNFTを利用しました。

ロックダウンによって食料や生活必需品が手に入らない市民達のフラストレーションが溜まる一方で、中国政府はその不満が世界に出回らないように非常に厳しい情報統制をおこなっていました。

そこでITリテラシーの高い一部の人々は、自分たちの置かれている厳しい状況や政府への不満を動画や画像に込めてNFT化し、規制をかいくぐって世界最大手のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaに出品したのです。

出品されたNFTのほとんどが無料であったことからも、これらの出品が営利目的ではなく情報発信目的であったことは明らかで、この取り組みは世界中で大きな話題を呼びました。

まとめ

本記事では、中国NFT市場の現状について解説してきました。

現状、中国当局は仮想通貨に対しては全面的に規制していますが、NFTについての具体的な規制や法整備は発表していません。 しかし今後中国国内のNFT市場が加熱し、当局の監視が及ばない場所での2次流通や資金洗浄などの違法行為が増えていくと、NFTに対しても規制を本格的に強化するかもしれません。

一方で、仮想通貨を使わない中国独自のNFTインフラの構築と普及が中国政府主導で進められているなど、中国独自のNFT利用は更に加速していくものと思われます。

今後の中国のNFT市場に関する動向を、引き続き見守っていきましょう。

NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜

NFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」は、デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術で、アートやゲーム、音楽など様々なカテゴリーで活用されはじめています。特に、今回ご紹介するスポーツの分野では、選手やクラブとファンとのエンゲージメントを高める手段として大きな可能性を秘めています。本記事では、NFTの基本知識から、スポーツ×NFTによってどんなメリットが生まれるのかを解説し、そして具体的な活用事例についてご紹介していきます。

スポーツ分野へのNFT活用
スポーツとの親和性が高いNFT
実際に様々な団体でのNFT導入が始まっている
NFTの基礎知識
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
スポーツ×NFTで実現すること
ファンとのエンゲージメントを高められる
“唯一無二の本物” を所有する喜び
NFTによって実現する新たな応援の形
選手やチームにとっての新たな収益源となる
スポーツ分野×NFTの活用実例
Sorare
NBA Top Shot
日本プロ野球における取り組み
西武ライオンズ(ライオンズコレクション)
パ・リーグ(パ・リーグ Exciting Moments β)
まとめ

スポーツ分野へのNFT活用

スポーツとの親和性が高いNFT

出典:pixabay

サッカーや野球、バスケットボールを始めとする「スポーツ」は、いつの時代も世界中の人々を熱狂させる非常に魅力的なコンテンツです。自分が応援するチームのドラマチックな勝利をリアルタイムで観戦したり、好きな選手の活躍をその目に焼き付けることは、替えの効かない素晴らしい体験となります。

近年、そういったスポーツへNFT=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」を活用する動きが世界中で拡大しています。

NFTとは「デジタルデータを替えの効かない唯一無二のものにできる技術」のことで、1試合ごとに何らかのドラマが生まれ、同じシーンが二度と起こらないスポーツとは非常に親和性が高いと言われています。

実際に様々な団体でのNFT導入が始まっている

出典:pixabay

スポーツとNFTの親和性の高さは以前から着目されており、2019年には既に「Sorare(ソラーレ)」というサッカーのトレードカードゲームがNFTをいち早くスポーツに取り入れています。

続いて2020年に米プロバスケットボールリーグであるNBAがNFT市場に参入、さらに2022年には米メジャーリーグ(MLB)が参入を予定しています。また、日本でもサッカーのJリーグやプロ野球の一部チームでNFT活用の動きが活発化しています。これら活用事例の詳細については後ほど詳しくご紹介します。

このように、実際に様々なスポーツ団体によって導入が始まっているNFTですが、スポーツ分野へNFTを活用することによって一体どんな具体的なメリットがあるのでしょうか?

スポーツへのNFT導入のメリットについて触れる前に、まずは次項でNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)について改めて詳しく解説していきます。

NFTの基礎知識

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

スポーツ×NFTで実現すること

ファンとのエンゲージメントを高められる

“唯一無二の本物” を所有する喜び

出典:pixabay

これまでは、画像や動画といったデジタルデータに対して ”唯一無二の本物” であるという証明をすることは不可能に近く、有名な試合のワンシーンはYouTubeにアクセスすれば誰もが簡単に見ることが出来ました。

しかしこれからは、NFT技術によって ”唯一無二の本物” であるという証明がなされた試合中のドラマチックなワンシーンを、自分だけのモノにできるのです。

“唯一無二の本物” を所有することによって、チームや選手に対してさらに愛着が持てるようになったり、ファンコミュニティの中で「自分は正真正銘のファンだ」といった心理的な優越感を得ることができます。

NFTによって実現する新たな応援の形

出典:pixabay

NFTによって価値が証明されるものは試合中のワンシーンだけではありません。

例えば、新人選手の手書きサインをNFT化し、将来の活躍を期待するファンがそれを購入する、という楽しみも生まれる可能性があります。NFTという記録に残る形で投資した新人選手が活躍するようになれば、以前から応援していたファンとしてこれほど誇らしいことは無いでしょう。

このようにNFTをスポーツのコンテンツに活用することで、選手とファンの新しいコミュニケーションが生まれます。人対人の関係性を新たに生み出せるのがNFTの魅力と言えるでしょう。

選手やチームにとっての新たな収益源となる

出典:pixabay

スポーツ分野へのNFT活用は、ファンに対してだけではなく選手やチームにとってもメリットをもたらします。それは、コンテンツの2次流通を収益化できるという点です。

これまでのチームや選手にとっての主な収入源は、試合日のチケット代や物販、そして各種中継といったコンテンツの一次利用によるものでした。一方これからは、あらゆるコンテンツやデータがNFT技術によって紐付けられ、転売による二次流通による利益がチームや選手に還元される仕組みが実現可能となります。

例えば、新人時代に書いたサインが有名になってから高値で取引されるようになると、選手自身にもその利益が還元され、活躍次第で大きな収入源となる可能性があります。同様に、優勝決定戦などのプレミア価格がついたチケットの転売利益を、チームに還元することも可能となります。

スポーツ分野×NFTの活用実例

続いて、2022年時点でのスポーツ分野×NFTの活用実例をご紹介します。

Sorare

👉Sorareの公式HP

Sorare(ソラーレ)は実在するサッカー選手を題材としたトレーディングカードゲーム(トレカ)です。ただし実物のカードではなく、NFT技術によって選手の写真や能力値が一つのデジタルデータにまとめられているのが特徴です。

👉参考記事:『NFT×トレカ〜NFTが新たな価値を生み出したデジタルカード〜

カードをコレクションする以外にも、購入したNFTトレカで自分だけのオリジナルチームを作ってそのスコアを競い合うことが出来ます。

Sorareの最大の特徴は、選手カードの性能が現実の試合結果とリアルタイムで連動しており、自分の持つ選手がゴールやアシストを決めるとSorare上でも強化される点です。つまり、いかにゲーム内のチームに実際に活躍している旬の選手を組み込めるかが、ハイスコアを出す鍵となってきます。

チームを構成するNFTトレカは、Sorare内での売買の他にも、ゲーム外のNFTマーケットプレイスによる取引によって入手できます。当然のことながら、現実世界で好成績をおさめる選手のNFTカードには人気が集中し、過去にはあのクリスティアーノ・ロナウド選手のNFTトレカが約3,200万円で売却されたことも大きな話題を呼びました。

👉参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜

さらに、2022年5月には米メジャーリーグベースボール(MLB)と提携することが発表され、同年夏にSorareの野球版がローンチされる予定です。

NBA Top Shot

👉NBA Top Shotの公式HP

NBA Top Shotは、北米のプロバスケットボールリーグであるNBAの選手を題材としたNFTトレカの収集や販売、展示を行うことができるNFTプラットフォームです。

NBA選手による歴史的なプレイなどのハイライト動画をNFTカードとして所有でき、人気選手のカードは1,000万円以上の価格で取引され、投資家の間でも話題となりました。

Sorare同様、NBA Top Shotには独自のマーケットプレイス機能が備わり、プレイヤー同士の交流やカード売買による二次流通が積極的に行われています。

日本プロ野球における取り組み

西武ライオンズ(ライオンズコレクション)

👉LIONS COLLECTION(ライオンズコレクション)の公式HP

日本プロ野球に関する最初のNFTコンテンツは、埼玉西武ライオンズの「LIONS COLLECTION(ライオンズコレクション)」です。

埼玉西武ライオンズは、コロナ禍によって球団の収益の柱である観客動員が大幅に減少したことを受け、「新しい収益を生み、かつファンにも受け入れられる取り組み」を目指し、2021年9月に日本のプロ野球界で初めてNFTを導入しました。

チームの人気選手である栗山巧選手が通算2000本安打を達成した際に、手書きサイン付きパネルとNFT化された記念動画データのセットが販売されたのを皮切りに、球団公式のサービスとしてNFTを取り扱い始めました。

メモリアルシーン以外の普段の試合でも、試合開始前の球場のスクリーンに映し出されるスタメン発表ボードムービーを毎試合NFT化し販売するなど、新たなファンコミュニケーションの一環としてNFTを積極的に取り入れています。

パ・リーグ(パ・リーグ Exciting Moments β)

👉パ・リーグ Exciting Moments βの公式HP

日本プロ野球のパ・リーグ6球団と国内No.1シェアのフリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリが共同となり、2021年12月に「パ・リーグ Exciting Moments β」を開始しました。

これは6球団の歴史を彩る名場面を捉えた映像や、シーズン中に活躍した選手のプレー映像をNFT化し、NFTの購入者は動画コンテンツを自分だけのコレクションとして保有できるサービスです。

NFTの販売数は動画の元となるシーンの希少性や、対象となる選手の人気によって異なります。例えば、2022年4月10日に千葉ロッテマリーンズの投手、佐々木朗希が記録した完全試合ムービーは、20個限定で販売され即完売となりました。チームの人気選手による偉業達成ということもあり、NFTの価値が非常に高まり話題を呼んだ成功例です。

さらに多くのファンを抱えるとされるセ・リーグへの波及も楽しみなプロジェクトです。

まとめ

今回はスポーツ分野へのNFT活用について解説してきました。

NFTはスポーツにおけるファンビジネスのあり方を変革するだけの大きな可能性を秘めていると言えます。

アートや音楽などの芸術分野へのNFT活用は投資目線で語られる事が多いですが、スポーツへのNFT活用はあくまでもファンが中心となって市場を牽引していくことが期待されます。

NFTの活用によってスポーツ市場は今後さらに盛り上がっていくことでしょう。

【2022年】NFTの現時点での課題とは?〜革新的な技術に課せられた問題点〜

2021年以降、デジタルデータに唯一性・希少性をもたせるNFTの技術は、アート、ゲーム、音楽等の様々な分野で活用され始めるなど、大きな可能性を秘めています。一方でNFT自体の歴史はまだまだ浅く、解決すべき課題が存在することは無視できません。そこで本記事では、改めて「NFTとは何なのか」を簡単に振り返った上で、現時点でのNFTの課題と解決に向けた動きについて解説していきます。

そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
急成長と共に浮かび上がる課題
NFTが抱える現状の課題
NFTの課題①:法整備
市場拡大に対して法整備が遅れている
NFT関連の法整備に向けた動きが活発化
NFTの課題②:ハッキングのリスク
NFTゲーム「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」
NFTマーケットプレイス「OpenSea」
NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」
価値の流動性が高い
浮き彫りになる環境問題
NFTの基盤通貨「イーサリアム」の電力消費
イーサリアムは2022年に ”燃費” を大幅に改善予定
まとめ

そもそもNFTとは?

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

急成長と共に浮かび上がる課題

”デジタルデータに唯一性・希少性をもたせる” という画期的な技術であるNFTの登場は、様々な分野で新たなビジネスを生み出し、現在もその市場は発展途上です。

2019年時点で300億円だった市場規模は、2022年には4000億円にまで急成長し、2027年には約2兆円に達すると予測されています。

👉出典:DreamNews『NFT(非代替性トークン)の市場規模、2027年に136億米ドル到達予測

NFTは短期間で急成長を遂げた一方で、新しい概念であるがゆえ未知な領域も数多くあります。手探り状態で市場が拡大を続けており、同時に解決すべき課題も次々と明らかになっています。

そこで次項では、NFTが抱える現状の課題について解説していきます。

NFTが抱える現状の課題

NFTの課題①:法整備

市場拡大に対して法整備が遅れている

出典:pixabay

NFTに限らず、新しい技術やサービスが普及していく過程では、それに伴って様々な法律問題が発生します。

NFTを活用したビジネスは急速に発展しつつある一方、NFT自体の法的位置付けやNFTの取引にかかる法規制・権利関係の整理は十分に追いついておらず、ひとたび不測のトラブルが生じた場合、大きな混乱が生じることが予想されます。

例えば、NFTに対する”所有権”は現法上認められていません。なぜなら、NFTは前項で解説したとおり「替えが効かないデジタル資産」であることを証明する技術ですが、Physical(物理的)な「モノ」ではないからです。そのためNFTを購入したとしても、購入者にどのような権利が認められるのかが明確ではありません。

NFT関連の法整備に向けた動きが活発化

出典:pixabay

2022年現在、複数の団体が日本国内のNFT関連の法整備に向けて具体的なアクションを起こしています。

例えば、(JCBA)一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会は「NFTビジネスに関するガイドライン」を2021年に策定、その後も改訂を行っており、NFT利用者にとって安心・安全な利用環境の提供を目指しています。

👉出典:JCBAの公式HP

また、年を同じくして凸版印刷・KDDI・ドコモなどの大きな影響力を持つ民間企業が、NFT領域における課題特定と解決策の提案を目的として「デジタル通貨フォーラムNFT分科会」を設立し、実証実験を開始しています。

👉出典:DeCurret『デジタル通貨フォーラムNFT分科会を設立

言わずと知れた世界最大の動画共有プラットフォームである「YouTube」も、サービス開始当初は、無断転載や倫理上不適切な動画に溢れた無法地帯と化していました。NFTへの注目度が増し、より一般層の人々にまで普及し、ビジネスチャンスが広がるにつれて自ずと法整備も進んでいくでしょう。

NFTの課題②:ハッキングのリスク

出典:pixabay

あらゆるIT分野にはハッキングのリスクがあり、NFTも例外ではありません。以下、2022年に発生したNFT関連のハッキング被害を3つご紹介します。

NFTゲーム「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」

「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」は「Axie(アクシー)」と呼ばれるモンスターを育成したり対戦させて、Play to Earn(P2E) =「遊んで稼ぐ」という言葉の火付け役的なゲームです。

👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜

2022年3月23日に、この「Axie Infinity」で使用される「Ronin Network」というブロックチェーンが外部からハッキングされ、750億円以上に相当する仮想通貨が盗み出されました。これは、ブロックチェーン及びNFTに関連するハッキング被害としては過去最大規模と

なったため、非常に大きなニュースとなりました。

NFTマーケットプレイス「OpenSea」

2022年2月19日に、NFTマーケットプレイス(取引所)の最大手である「OpenSea」で、総額2億円相当となるNFTが盗まれる事件が発生しました。

👉参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜

攻撃者は、OpenSeaがユーザーに対して仕様変更に関する告知を行っていた時期を狙い、OpenSeaを偽装した偽メールをユーザーに送付して不正なリンクを踏ませて誘導しました。OpenSea自体の技術的な問題ではなく、メールを用いた古典的なフィッシング詐欺によるものではありますが、被害額の大きさから注目を集めた事例となります。

NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」

「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」は、猿をモチーフにした有名なNFTコレクションです。NFT化されたイラストは、それぞれ背景や猿の顔服装などが異なり、同じものはひとつとしてありません。

人気アーティストグループ「EXILE」の関口メンディー氏や、アメリカを代表する歌手であるジャスティン・ビーバーといった多くの著名人がBAYCを購入しており、人気に拍車がかかっています。

2022年4月25日、この「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」の公式インスタグラムと公式Discordサーバーがハッキングされ、OpenSea同様のフィッシング詐欺が行われました。

乗っ取られた公式SNS上でNFTの無料配布を行うとした偽のリンクが拡散された結果、多くのユーザーがこれをクリックし、被害総額は約3億8000万円相当と推定されます。

価値の流動性が高い

出典:pixabay

NFTの価値は、現実世界の「モノ」と同じく需要と供給によって変動します。ただ、その値動きは「モノ」よりも大きく、価値の流動性が非常に高い点がNFTの特徴です。

価値の流動性が高くなる理由は、NFTはそもそも仮想通貨を基盤とした技術であり、関連する仮想通貨の値動きに合わせてNFT自体の価値も変動するためです。一般的に仮想通貨は、円やドルといった法定通貨に比べて値動きが激しいため、関連するNFTの価値の変動も必然的に大きくなります。

仮想通貨の値動きに加え、販売されているNFTそのものの希少価値も非常に流動的です。一部の著名人やインフルエンサーによってSNS上で取り上げられる事により、価値が突如として高騰する可能性があるのがNFTの世界です。

NFTを実際に購入する場合、そのNFTの適正な価値を見極める必要があります。不当に価値が吊り上げられたNFTを購入しないためにも事前にしっかりと情報収集を行い、自身のリスク許容度の範囲内での購入を心がけましょう。

浮き彫りになる環境問題

NFTの基盤通貨「イーサリアム」の電力消費

出典:pixabay

NFTを含めたブロックチェーン技術を活用した取引市場が盛り上がる一方で、取引における多大な電力消費とそれに伴う環境問題が指摘されています。

特に、多くのNFTに関連する仮想通貨「イーサリアム」での取引には、膨大な数のデータベースへのアクセス(マイニング)が必要で、その際に113テラワット/時という大量の電力を消費します。そして、なんとそれはオランダ全体の年間電力消費量に匹敵すると推計されます。

👉参考記事:『〜ブロックチェーン基礎知識〜「マイニング」

👉出典:MIT Technology Review『環境破壊、採掘寡占化—— ビットコインの「失敗」を イーサリアムは乗り越えるか

イーサリアムは2022年に ”燃費” を大幅に改善予定

イーサリアムでの取引が電力を大量に必要とする理由、それはイーサリアムという仮想通貨が「PoW(Proof of Work)」と呼ばれるアルゴリズム形式で作られているからです。現状のPoWによるマイニングは、大量の計算マシンによる電力消費が環境負荷をかけていると指摘されています。

この環境負荷問題を受けて、イーサリアムはこれまでの非常に燃費の悪い「PoW」から「PoS(Proof of Stake)」と呼ばれる圧倒的にエコなアルゴリズム形式へのアップデートを2022年中に実施する予定です。

この大規模なアップデートにより約99%もの消費電力を削減でき、イーサリアムを基盤とする全てのNFT取引にかかる環境負荷も大幅に改善できる見込みです。

まとめ

今回はNFTに関する解決すべき課題に焦点を当てて解説してきました。

NFTに関して、その可能性やメリットだけに目を向けるのではなく、解決すべき課題についても理解を深めることが大切です。加えて、発展途上にある技術であるNFTのネガな部分だけを切り取り「怪しい」「危険だ」といって拒絶するのではなく、どのようにすれば解決し、より良くなっていくのかという視点を持つことも大切です。

メタバースとNFT 〜NFTによって証明される仮想現実内の”モノの価値”〜

2021年頃からNFTがニュースやSNSでも取り上げられることも増え、そのNFTと関連して「メタバース」という言葉を耳にすることも増えてきました。実はメタバースの概念そのものは以前から存在しており、近年になって注目を集めるようになった背景にはNFT技術が深く関係しています。本記事では、従来のメタバースの概念とNFT技術の基礎を説明した上で、メタバースとNFTの掛け合わせによって新たにどのようなことが実現できるのかを解説していきます。

近年注目を集める「メタバース」
メタバースに関する近年のトピックス
メタバースとは
従来のメタバースの課題
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
NFT×メタバースで実現すること
NFT×メタバースの活用実例
The Sandbox
Decentraland
まとめ

近年注目を集める「メタバース」

出典:pixabay

メタバースに関する近年のトピックス

近年、「メタバース」というワードがSNS上のみならず、テレビのニュースでもとりあげられる機会が増えています。その中でも、2021年10月28日には多くの人々にとって馴染み深いFacebookが社名を「Meta(メタ)」に変えたことが大きな話題となり、「メタバース」に注目が集まるきっかけの一つとなりました。

👉出典:日経電子版「Facebook、社名を「メタ」に変更 仮想空間に注力」

さらに2022年2月18日には、米Google傘下のYouTubeがメタバースへの参入を検討していると日本版公式ブログで明かしました。

👉出典:IT media NEWS「YouTubeがメタバース参入を検討中「まずはゲームに適用」

また、2020年以降のコロナ禍において、Zoomを筆頭とするオンラインMTGが一般的なものとなりました。こうしたバーチャルでのコミュニケーションに対する心理的ハードルが大きく引き下がったことも、人々が「メタバース」に興味をもつようになった要因の一つと考えられます。

メタバースとは

メタバースとは「オンライン上に構築された仮想空間」です。

言葉で説明するとイメージがつきにくいかも知れませんが、実はメタバースという概念そのものは以前から存在しているのです。

個性豊かな動物たちが暮らす村で ”あなた自身” が生活していく任天堂の大人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」もひとつのメタバースです。

全世界で1億4千万人以上がプレイするモンスターゲーム「Minecraft(マインクラフト)」は、オンラインで仲間たちと冒険に出かけるも良し、多くのプレイヤー達が住民として暮らすサーバー内で各々建築をしたり農業を営むも良しといった、非常に自由度の高いメタバースです。

つまりメタバースとは、「画面の向こうにあるもうひとつの世界」を指します。

出典:pixabay

コンシューマー向けゲームを通じてすでに概念として存在していたメタバースですが、近年のVR/AR技術の向上によって「より現実に近い(リアリティの高い)仮想空間」が作られるようになってきました。

さらに、デジタルデータに唯一性をもたせる技術であるNFTを活用することにより、次項で述べる ”従来のメタバースの課題” を解決することができるようになったのです。

従来のメタバースの課題

従来のメタバースの課題、それは「メタバース内のデジタルデータの価値を証明することが困難である」という点です。

先述した「あつまれ どうぶつの森」や「Minecraft(マインクラフト)」の中には、ゲーム内で使える独自の通貨やゲーム内アイテムが存在しています。

出典:hikicomoron.net

ただし、それらはあくまでもゲーム内だけで使える通貨やアイテムであって、現実世界において価値をもたせることはできません。どうぶつの森の中でお金をいくら稼ぎ、家を増築し、貴重な家具を持っていようが、それらは全てゲーム内での出来事に過ぎないのです。

つまり従来のメタバースと現実世界では、価値の交換が出来ませんでした。なぜならゲーム内データはいくらでもコピーが可能で、価値あるものだという証明が困難であったためです。

そこで登場するのがNFT=「Non-Fungible Token」です。

このNFTという技術を用いることによって、これまで不可能だったゲーム内データの価値の証明が可能になり、現実世界の通貨で取引できるようになるのです。

そもそもNFTとは?

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

NFT×メタバースで実現すること

これまでのメタバースでは、ゲーム内アイテムが簡単にコピーできてしまうため価値の証明が困難でした。また、そのゲームで遊ぶことをやめてしまえば、これまで築き上げてきたゲーム内資産は再度ゲームを起動するまで利用されることはありません。

出典:pixabay

しかし、アイテムや土地・建物といったゲーム内資産をNFT化することにより、現実世界と同じく唯一無二である価値が生まれます。価値が生まれるとそのアイテムや土地が欲しい人との間に取引が生まれ、その取引はゲーム内通貨ではなく、仮想通貨や法定通貨で行われます。

つまり、メタバースとNFT技術を掛け合わせることによって、現実世界でのモノや不動産の売買と同様、メタバース内でのマネタイズが可能となるのです。

ゲーム内での活動がそのまま現実世界の価値とリンクするようになるという点で、NFT×メタバースの掛け合わせはとても大きな可能性を秘めています。

NFT×メタバースの活用実例

続いて、2022年時点で話題となっているNFT×メタバースの活用事例をご紹介します。

The Sandbox

👉The Sandboxの公式HP

The Sandboxは、3Dのオープンワールドの中で、建物を建築したり自分の”オリジナルのゲーム”を作ることができます。何をするかはプレイヤーの自由で、マインクラフトに似たジャンルのゲームです。

The Sandboxのメタバース内には「LAND」というNFT化された土地が存在し、現実世界の土地と同じように売買・所有することが出来ます。

LANDを保有した人は自分の土地を自由にアレンジすることができ、例えば自作のゲームを公開して ”ゲームセンター化”したり、何か催し物を開催したい人向けにスペースの一部を貸し出す ”貸しイベント会場化”する事ができます。

実際に数多くのアーティスト達が自らの作品を展示する場としてThe Sandboxを利用しており、また日本を代表するゲーム会社であるスクウェア・エニックスは会社の広報スペースとしてLANDを保有しています。

現実世界の土地と同じように、メタバース内のLANDを起点としたさまざまなビジネススタイルが個人・企業問わず誕生している点がThe Sandboxの魅力です。

Decentraland

👉Decentralandの公式HP

Decentralandは、イーサリアムブロックチェーンをベースとしたVRプラットフォームで、先程ご紹介したThe Sandbox同様、仮想空間内でゲームをしたりアイテムやコンテンツを作成・売買することが可能です。

ゲーム性は両者共通する部分も多く、「LAND」という仮想現実内の土地を保有・マネタイズできる点や、NFT化したアイテムをメタバース内で取引できる点も同じです。

一方、The Sandboxとの違いはその ”世界観” です。The Sandboxの世界が全て四角いブロックで構成されているのに対し、こちらのDecentralandは滑らかな3Dポリゴンで構成されており、よりポップで親しみやすい雰囲気の世界観が特徴です。

個性派人気アーティスト「きゃりーぱみゅぱみゅ」や、世界的に有名なセレブであるパリス・ヒルトンとのファッションコラボが話題となったことからも分かるように、そのポップな世界観とファッション業界との親和性が高いこともDecentralandの特徴のひとつです。

まとめ

NFTを活用したメタバース市場は今後急成長することが期待されており、様々な業種の企業が参入をすでに始めています。

例えば、SHIBUYA109渋谷店(東京都・渋谷区)を中心とした4つの施設を展開する株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは、「The Sandbox」のメタバース上に「SHIBUYA109 LAND」を開設することを発表しました。

109が展開するオリジナルNFTの販売やNFTが手に入るミニゲーム、メタバース上での広告事業など、様々な展開を行うことがアナウンスされています。

👉出典:PR TIMES「SHIBUYA109が「メタバース・NFT事業」に本格参入!」

また、PUBGの大ヒットにより2021年度に約2,000億円の売り上げを記録した韓国のゲーム大手:Kraftonは、暗号資産ブロックチェーン・ソラナ(SOL)を開発するソラナラボと連携し、NFTを利用したソラナ基盤のゲームを共同開発する計画を発表しました。
👉出典:forbesjapan「韓国「クラフトン」もメタバース参入、NFT事業を立ち上げ」

今後もNFT×メタバースの掛け合わせによって、これまでにない新しいモノや体験が次々と生み出されていくことでしょう。

👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜

👉参考記事:『【2022年】Web3.0とメタバース 〜分散型インターネットにおける仮想現実の役割〜

NFT技術の音楽分野への活用
〜クリエイターとリスナーが享受する新たな価値〜

近年のNFT技術の発達により、唯一性が担保されたデジタルコンテンツの資産価値が向上してきています。NFTといえば主にデジタルアートやゲームの分野で注目が集まっていますが、NFT技術の活用は「音楽」に対しても大きな可能性を秘めています。本記事では、NFT音楽とNFT技術についての基礎知識をご紹介し、さらに音楽のNFT化によって実現すること、すでに存在するNFT音楽の活用事例までを詳しく解説していきます。

NFT音楽が近年注目を集めている
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
音楽分野×NFTで実現すること
ライブチケットの転売収益の確保
新たなマネタイズ方法が生まれる
音楽分野×NFTの活用実例
故ホイットニー・ヒューストンのNFT音楽
「Linkin Park」のメンバーが作成したNFT音楽
坂本龍一の「595の音」
まとめ

NFT×音楽分野の多様な可能性

2021年12月、アメリカの著名シンガーである故ホイットニー・ヒューストンのデモ音源がNFT音楽オークションで約1.1億万円で落札され、”NFT音楽” への注目が一気に高まりました。

👉出典:billboard japan『故ホイットニー・ヒューストン、未発表曲がNFTオークションにて約1.1億円で落札

NFT音楽とは「NFT技術を使った唯一無二の楽曲データ」を指します。

NFT技術の活用は、これまでデジタルアートやトレーディングカード、ゲームの分野で注目を集めてきていますが、音楽分野へのNFT技術の活用も”楽曲データの唯一無二化” のみならず、”転売収益の確保” など様々な可能性を秘めています。

👉参考記事:『NFT×トレカ〜NFTが新たな価値を生み出したデジタルカード〜

👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜

まずはその根幹となるNFT技術について、次項で詳しく解説していきます。

そもそもNFTとは?

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

出典:pixabay

NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

音楽分野×NFTで実現すること

ライブチケットの転売収益の確保

出典:pixabay

NFT技術を音楽分野で活用する上で、実現性が高く、また実現した際のインパクトが大きいものでまず考えられるのが「ライブチケットの転売収益の確保」です。

現状、人気の高いミュージシャンやアイドルグループのライブチケットは高額転売に悩まされています。この場合の高額転売の弊害とは、転売による収益がクリエイター側に1円も還元されていないことを指します。

しかしNFT技術を活用すれば、NFT化されたデジタルチケットが転売されるたびに、クリエイター(チケットの発行者)にも手数料を還元するという仕組みが可能となります。また、NFT化されたチケットには取引履歴が全て記録されているので、仮に転売行為そのものをNGとしたい場合にも効力を発揮します。

実際にこの「ライブチケットの転売収益の確保」のために、海外では「Afterparty(アフターパーティー)」、日本国内では「ローソンチケットNFT」という名のプロジェクトが既にそれぞれ動き出しています。

新たなマネタイズ方法が生まれる

出典:pixabay

音楽クリエーターにとって、現在の音楽市場でのマネタイズはなかなか厳しいというのが現実です。その理由のひとつが、いま最も主流となっている音楽の提供の形である「ストリーミング配信」の収益性の悪さです。

実際に、音楽ストリーミング市場の51%を占めている「YouTube」では、収益のうち7%しかクリエイターに還元されていません。また「Spotify」や「Apple Music」など大手配信プラットフォームでは1再生あたりたった0.003円しか還元されない仕組みとなっています。

そうなった背景としては「音楽の希少価値が下がった事」があげられます。CD全盛期では”ジャケ買い”なる言葉があったように、音楽そのもの・CDジャケット・歌詞カードを含めたパッケージに対して3000円の価値がありました。それがストリーミング配信全盛のいま、気になった歌詞はネットで検索すればすぐに見つかり、誰かが作ったプレイリストを流して”いい感じの曲”を知る、という風に音楽は「消費される対象」となりました。

出典:pixabay

そこで、楽曲データをNFT化して数量限定で販売し、音楽の価値を復権しようとする試みが始まっています。NFT音楽を購入するファンにとっての大きなメリットは「数量限定の楽曲を購入したのは私です」という証明ができ、心理的に他のファンとの優位性を感じられる点です。

また、例えば100曲限定で販売された楽曲を手に入れたコアなファンがまた別のコアなファンに譲る際に、ライブチケット同様、転売収益が元のアーティストにも還元される仕組みを作ることも可能となります。

この試みは日本国内・海外を問わず多くのクリエーターたちの間で広まりつつあります。次項で詳しく解説しますが、例えば日本では坂本龍一や小室哲也といった大御所ミュージシャン、海外ではアメリカの人気バンド「LinkinPark(リンキン・パーク)」がNFT音楽を活用した試みをスタートさせています。

音楽分野×NFTの活用実例

続いて、2022年時点での音楽分野×NFTの活用実例をご紹介します。

故ホイットニー・ヒューストンのNFT音楽

👉出典:billboard japan『故ホイットニー・ヒューストン、未発表曲がNFTオークションにて約1.1億円で落札

音楽分野×NFTの活用実例としてまずあげられるのが、本記事冒頭でもご紹介したアメリカの著名シンガーである故ホイットニー・ヒューストンの実例です。

ホイットニー・ヒューストンは、グラミー賞の受賞歴のある世界で最も売れている歌手の一人で、2012年2月11日に48歳の若さで亡くなるまでポップ音楽の第一線で活躍し続けたレジェンドです。

彼女が17歳の時に録音した初期のデモ音源が、NFTプラットフォームであるOneOfのオークションに出品され、史上最高額となる99万9,999ドル(約1億1,400万円)で落札されました。

これだけの大物アーティストの音源がNFT音楽として発表されたことは大きな話題となり、「NFT音楽」の認知が一般層にまで広がるきっかけになりました。

「Linkin Park」のメンバーが作成したNFT音楽

👉出典:RollingStoneJapan『マイク・シノダが語る NFTとAIを使って追求する、新しい時代の音楽とアート

「Linkin Park」はホイットニー・ヒューストン同様グラミー賞の受賞歴があり、CDの全世界累計セールスは1億枚以上を記録した「21世紀最も売れた」と評されるアメリカのモンスターバンドです。

そのLinkin Parkの主要メンバーであるMike Shinoda(マイク・シノダ)氏は、ボーカルとして音楽面をリードするだけでなく、アルバムアートワーク、バンドの商品、ウェブデザイン、舞台でのプロダクションアートなど、Linkin Parkの芸術的な側面全般に携わったアーティストです。

そんなMike Shinoda(マイク・シノダ)氏は音楽とアートを融合させた自身のNFTプロジェクト「ZIGGURATS」を始動させ、今のストリーミング全盛時代における音楽のあり方、最新テクノロジーを使った表現方法を追求している第一人者です。

坂本龍一の「595の音」

👉出典:Adam byGMO『595音のNFT

日本を代表するミュージシャンである坂本龍一氏もNFT音楽に可能性を見いだしている一人です。坂本氏は2021年12月、映画『戦場のメリークリスマス』のテーマソングとして世界的にも知られている自身の代表曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」を1音ずつ区切った「595の音」をNFT化し販売しました。

「595の音」がNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」で出品されるやいなや、「坂本龍一のあの名曲の一部を自分だけのものにしたい」という思いから数多くの人々が申し込みに殺到しました。想定を超える数の海外からのアクセスに耐えきれず、サーバーが一時ダウンしたことも、このNFTの注目度の高さを表しています。

まとめ

本記事では、音楽分野へのNFT技術の活用について解説してきました。

音楽分野へNFT技術を活用することにより、クリエイターにとっては新たなマネタイズの可能性が、リスナーにとっては好きなクリエイターの作品を自分だけのものにできるという新たな価値が生まれます。

一部のクリエイター達の間ではNFTがすでに注目を集め、実際に自身の作品をNFTとして販売する動きも活発化してきています。今後、著名アーティストの参入がさらに進めば、音楽とNFTの掛け合わせは爆発的に広まっていくことでしょう。

【2022年5月】NFT関連の仮想通貨銘柄〜ブロックチェーン上での基軸通貨〜

2021年頃から「NFT」という言葉を耳にする機会も増え、最近ではニュースやSNSでも取り上げられることも増えてきました。そしてNFTが注目を集めるに伴い、NFTと同じブロックチェーンを基盤とする仮想通貨の価格も上昇傾向にあります。今回は話題となっているNFTに関連する仮想通貨の銘柄をご紹介していきます。

加熱するNFT関連銘柄
そもそもNFTとは?
NFT=デジタルの”はんこ”
NFTが必要とされる理由
NFTとブロックチェーン
NFT関連銘柄とは?
様々なNFT関連銘柄
エンジンコイン(ENJ)
サンド(SAND)
The Sandboxとは?
The Sandbox内の基軸通貨「SAND」
SANDの将来性
チリーズ(CHZ)
マナ(MANA)
Decentralandとは?
Decentraland内の基軸通貨「MANA」
まとめ

加熱するNFT関連銘柄

2021年は仮想通貨にとって飛躍の年となり、特にNFT関連の仮想通貨の躍進は非常に注目されました。例えば、NFT関連銘柄の一つであるエンジンコイン(ENJ)の価格は、2021年1月の10円台から同年4月には425円と、ごく短期間で40倍にも高騰しました。

その背景には、Coincheck(日本)やCoinbase(アメリカ)といった大手取引所への上場や、世界的ゲームであるMinecraftとの連携があり、いかにNFT市場が活発化しているかがうかがえます。

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また「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」やStepnといったNFTゲームによって、Play to Earn(P2E) =「遊んで稼ぐ」という概念が注目を集めています。それらのNFTゲームに関連する仮想通貨の価格も、NFTゲームが盛り上がるに伴い高騰しています。

👉参考記事:『NFT×ゲーム〜「遊んで稼ぐゲーム」について解説〜

本記事では具体的なNFT関連銘柄のご紹介はもちろんですが、まずは「NFTとはそもそも何なのか?」という基礎知識からおさらいしていきます。

そもそもNFTとは?

NFT=デジタルの”はんこ”

NFTとは簡単に言うと「デジタルデータに偽造不可な鑑定書・所有証明書をもたせる技術」のことです。さらに噛み砕いて表現すると「デジタルコンテンツにポンと押す ”はんこ” のようなもの」です。

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NFTを言葉の意味から紐解くと、NFT=「Non-Fungible Token」の略で、日本語にすると「非代替性トークン」となります。非代替性は「替えが効かない」という意味で、トークンには「データや通貨・モノ・証明」などの意味があります。

つまり「唯一無二であることの証明ができる技術」を意味し、実際にはデジタル領域で活用されることから冒頭ではデジタルの ”はんこ” と表現しました。

NFTが必要とされる理由

世の中のあらゆるモノは大きく2つに分けられます。それは「替えが効くもの」と「替えが効かないもの」です。前述した非代替性トークンは文字通り後者となります。

それぞれの例を挙げていくと、

【替えが効くもの (代替性) 】

  • 硬貨や紙幣
  • フリー素材の画像や音楽
  • 量産される市販品

【替えが効かないもの (非代替性) 】

  • 大谷翔平の「直筆サイン入り」本
  • ゴッホの「原画」
  • ワールドカップ決勝の「プレミアチケット」

人は唯一性や希少性のあるもの、つまり「替えが効かないもの」に価値を感じます。
不動産や宝石・絵画などPhysical(物理的)なものは、証明書や鑑定書によって「唯一無二であることの証明」ができます。

一方で画像やファイルなどのDigital(デジタル)な情報は、コピーされたり改ざんされたりするリスクがあるため「替えが効くもの」と認識されがちで、その価値を証明することが難しいという問題がありました。

実際、インターネットの普及により音楽や画像・動画のコピーが出回り、所有者が不特定多数になった結果、本来であれば価値あるものが正当に評価されにくくなってしまったのです。

そういったデジタル領域においても、「替えが効かないもの」であることを証明する技術がまさにNFTなのです。

NFTがあれば、本物と偽物を区別することができ、唯一性や希少性を担保できます。NFTによって、これまではできなかったデジタル作品の楽しみ方やビジネスが生まれるのです。

👉参考記事:『【2022年】NFTとは何か?なぜ話題なのか、分かりやすく解説!』

NFTとブロックチェーン

NFTはブロックチェーンという技術を用いて実現しています。

ブロックチェーンは「一度作られたデータを二度と改ざんできないようにする仕組み」です。データを小分けにして暗号化し、それを1本のチェーンのように数珠つなぎにして、世界中で分散管理されています。そのため、コピーしたり、改ざんしたり、データが消えたりする心配がありません。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

NFT関連銘柄とは?

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NFTはゲームやアート、スポーツといった様々な分野で活用されており、それらのエコシステムはブロックチェーンを基盤に作られています。そして、そのブロックチェーン上での基軸通貨を「NFT関連銘柄」と表現します。

👉参考記事:『【2022年最新版】アートへのNFT活用事例集

👉参考記事:『NFTのスポーツ業界への活用〜新時代のファンビジネスと可能性〜

例えば、あるNFTゲーム内で得たアイテムの価値はそのNFTに関連する仮想通貨で示され、さらにそのアイテムを取引所(NFTマーケットプレイス)で売買する際にも、そのNFTに関連する仮想通貨で取引がなされます。

👉参考記事:『NFT×マーケットプレイス〜取引所の概要から選び方・それぞれの違いを解説〜

そのNFTが所属するブロックチェーン上での基軸通貨、それが「NFT関連銘柄」です。

様々なNFT関連銘柄

続いて、2022年時点で話題となっているNFT関連銘柄を4つご紹介します。

エンジンコイン(ENJ)

エンジンコイン(ENJ)はブロックチェーンプラットフォーム「Enjin platform」で発行される仮想通貨です。Enjin platformはシンガポールの企業「Enjin」が2017年に運営を開始したイーサリアムをベースとしたブロックチェーンプラットフォームで、主にオンラインゲームをするために設計されています。

👉出典:Enjin platformのHP

Enjin platformでは35種類ものオンラインゲームがプレイ可能で、それらゲーム内で利用するNFTを発行するためにプラットフォーム上の各ゲーム間で連携されています。Enjin platform上にあるゲームであれば異なるゲーム同士でもアイテムの売買が可能で、その取引に使用される基軸通貨がエンジンコインです。

Enjin platform上で最も注目を集めるゲームが「Minecraft(マインクラフト)」のEnjin platform版である「EnjinCraft」です。

マインクラフト:通称マイクラは、月間アクティブユーザー数が全世界で1億4千万人を超えるモンスタータイトルで、NFTによってゲーム内のアイテムに希少価値をもたせたものが「EnjinCraft」です。「EnjinCraft」で得たアイテムは、Enjin platform上の様々なプレイヤーたちの間でエンジンコインによって取引されます。

超メジャーゲームであるMinecraftと連携したことが、エンジンコイン最大のトピックと言えるでしょう。

サンド(SAND)

サンド(SAND)は、ブロックチェーンゲーム:The Sandboxのゲーム内で使える仮想通貨です。

The Sandboxとは?

The Sandboxは、イーサリアムのブロックチェーンを基盤として提供されているNFTゲームで、3Dのオープンワールドの中で建物を建築したり自分の”オリジナルのゲーム”を作ることができます。何をするかはプレイヤーの自由で、マインクラフトに似たジャンルのゲームです。

「LAND」というゲーム内の土地がNFTとして取引されており、プレイヤーは自分の所有するLAND上でプレイできるオリジナルのゲームの作成や、ゲーム内で使用するキャラクターやアイテムの作成を楽しむことができます。また、LANDの敷地内で作った施設の不動産収入を得ることなどもできます。

👉The Sandboxの公式HP

The Sandbox内の基軸通貨「SAND」

SANDはThe Sandbox内でのNFT取引の際の通貨としてだけでなく、保有しているだけで報酬を得られたり(ステーキング)、保有者はゲームの方向性を決める際の投票権を得られるガバナンストークンとしての役割があります。

SANDの将来性

The Sandboxは、日本の大手ゲーム開発企業スクウェア・エニックスをはじめ複数の企業やファンドから、総額201万ドル(約2億2000万円)もの融資を受けています。また、アディダスやavexなど有名企業がThe Sandbox内の「LAND」を保有しており、それぞれ独自のコンテンツを展開しています。

The Sandboxの注目は個人・法人問わず世界的に広まりつつあり、今後のさらなる発展が期待できます。

チリーズ(CHZ)

👉チリーズの公式HP

チリーズ(CHZ)とは、海外サッカークラブなどのスポーツチームとそのファンの人々との交流を生み出す取り組みを行っているプロジェクト、またそのプロジェクトで用いられる仮想通貨の名称です。

仮想通貨「チリーズ(CHZ)」は、”ファントークン” とも呼ばれる通貨で、これまでのファンビジネスに新しいイノベーションを起こすものとして注目を集めています。

“ファントークン” とはヨーロッパサッカーのクラブチームなどをはじめとしたスポーツクラブが発行する仮想通貨の一種で、そのクラブのファンはファントークンを所有することで、クラブが定めた報酬や特別な体験を受けることができます。

チリーズプロジェクトに参加しているスポーツクラブは海外サッカーやeスポーツ、格闘技など数多くあり、専用の取引アプリ「Socios.com(ソシオスドットコム)」を使ってチリーズと各クラブのファントークンを売買することができます。

2021年3月時点でFCバルセロナ(スペイン)、ユベントスFC(イタリア)、UFC(アメリカ)といった名だたるクラブチームがチリーズプロジェクトに参加しており、今後も提携する団体が増えると見込まれています。世界中のプロチームが参加するとなると、仮想通貨プロジェクトの中でもかなり大きいプロジェクトになるのは間違いありません。

マナ(MANA)

👉Decentralandの公式HP

マナ(MANA)はDecentralandというVRプラットフォーム内で用いられる仮想通貨です。

Decentralandとは?

Decentralandは、イーサリアムブロックチェーンをベースとしたVRプラットフォームで、仮想空間内でゲームをしたり、アイテムやコンテンツを作成し、売買することが可能です。

先程ご説明したThe Sandbox同様、仮想現実内で「LAND」と呼ばれる土地を保有・売却したり、他のユーザーがこの空間に参加してデジタル通貨の売買ができるという独創的な開発ツールも提供しています。

Decentraland内の基軸通貨「MANA」

MANAはDecentraland内で、アイテムやコンテンツの支払いに使用される基軸通貨です。先程の「LAND」を購入する際や、Decentraland内のマーケットプレイスやオークションでアイテムの取引を行うのに使用されます。

まとめ

今回はNFTに関連する仮想通貨の銘柄に関して解説しました。

NFT関連銘柄を理解するためには、その大元となるエコシステムやサービスを紐解く必要があります。サービスそのものが盛り上がり、そこでやり取りされるNFTの価値が高まり、そのチェーン上でやり取りされる基軸通貨である仮想通貨の価格が上昇していき、そしてNFT市場全体がさらに盛り上がることを期待しています。