【2020年】ブロックチェーンの市場規模は?複数の統計をまとめました

ブロックチェーンの国内市場規模は、2020年で100〜200億円、2025年には1000億円を超え、関連市場を合わせると67兆円の潜在規模があるとされています。経済産業省、矢野経済研究所、ミック経済研究所等の発表資料をもとに見方を解説します。

なお、ブロックチェーンビジネスの考え方、全体像の概観を学びたい方は、次の記事も併せてご覧ください。
→ 参考記事:『ブロックチェーンのビジネスモデル・活用事例〜非金融など応用領域も解説〜』

  1. ブロックチェーンのおさらい
  2. ブロックチェーンの市場規模①:日本国内での予測
  3. ブロックチェーンの市場規模②:世界予測

ブロックチェーンのおさらい

高まるブロックチェーン市場への期待

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、金融領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

そもそもブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと呼ばれる謎の人物によって提唱された「ビットコイン」(暗号資産システム)の中核技術として誕生しました。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、ブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

分散台帳とは.jpg

従来のデータベースの特徴

  • ① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
  • ② それぞれのDBは独立して存在する
  • ③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

  • ①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
  • ②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
  • ③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。

まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

ブロックチェーンの市場規模は一つじゃない!?

今見たように、ブロックチェーンは非常に幅の広い概念であり、その性質上、ビジネス活用の可能性も多岐に渡ります。

それ自体は良いことなのですが、ここで一つ問題が起こります。

ブロックチェーンのマーケットに関する情報を得るために複数のWebサイトや書籍をみてみると、大小異なる様々な市場規模予測がなされており、どの数字を参考にすべきか困ってしまう、という問題です。

これは、後に説明するように、ブロックチェーンの概念が新しく、応用可能性が非常に広いことと関係しています。

ブロックチェーンは、「インターネットと並ぶかそれ以上の技術的革新」と言われることもあるほどイノベーティブな技術です。

そのために、その技術的可能性や実社会への応用可能性をどのようにみるか、どこからどこまでをブロックチェーンに関連した市場とみるか、といった視点によって、市場規模の算出方法が大きく異なってしまうのです。

しかし、これからブロックチェーンを自社活用しようと言う人、あるいは新規事業の立ち上げを検討している人にとってみれば、市場規模の数字いかんで意思決定も左右されるでしょう。

そこで、次章以降では、資料間の偏りを割り引いて考えるべく、市場規模に関する複数の予測レポートを参照していきます。

ブロックチェーンの市場規模①:日本国内での予測

ブロックチェーン国内市場規模予測A:経済産業省(平成27年度)

ブロックチェーンの国内市場規模に関するマーケット予測で最もポピュラーな資料は、平成28年4月28日付で経済産業省の商務情報政策局 情報経済課が発表した『我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料』でしょう。

同資料では、大きく次の5つのテーマでブロックチェーンの社会変革・ビジネスへの応用が進むとした上で、それら5つのインパクトの合計として、将来的に国内67兆円の市場に影響を与えると予想されています。

  • 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  • 権利証明行為の非中央集権化の実現
  • 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  • オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  • プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

この資料は、市場がまだ大きく形成されていない初期に発表されたこと、発表元が経済産業省であることから、複数の書籍や論文等でも引用され、ブロックチェーンの潜在的可能性に対する期待を膨らませる一つの要因になりました。

そして、実際に、ブロックチェーンの応用可能性の広さとそのインパクトの大きさは資料の示す通りで、今後、金融分野にとどまらないあらゆる社会側面に広がっていくものと考えられます。

しかし、気をつけなければならない点として、この資料で言及されているのはあくまでブロックチェーン関連市場の話であって、ブロックチェーン市場そのものの規模予測ではありません

ブロックチェーンはインターネット同様、それ自体で価値を発揮するというよりも、むしろその技術を何らかの既存ビジネスに応用することによって高い価値を生み出しうる技術です。

そのため、「67兆円規模の市場に影響を与える」ほどのインパクトはあるものの、この数字には例えば、ブロックチェーンによる影響を受けているものの内容自体はブロックチェーンと無関係、といったサービスなども含まれています。

ブロックチェーンに限らず、市場規模を調べる際には、こうした「市場という言葉がどの範囲までを示しているのか」を適切に把握することが大切です。

ブロックチェーン国内市場規模予測B:矢野経済研究所

ブロックチェーンの国内市場規模に関する他の資料に、2019年5月22日付で株式会社矢野経済研究所(以下、矢野経済研究所)が発表した『2019 ブロックチェーン活用サービス市場の実態と将来展望』(有料、リンクは同資料のプレスリリースページ)があります。

同資料は、経済産業省の資料とは異なり、ブロックチェーンを活用したサービスの市場規模が予測されています。

矢野経済研究所によると、「2017年後半~2018年にかけては金融機関に留まらず、幅広い業界においてサプライチェーンや権利証明など、同技術を応用した実証実験を積極的に実施し、その活用可能性を見出しつつあ」り、その結果として、「2019年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は、171億5,000万円の見込み」です。

さらに、同社は「BaaS(Blockchain as a Service)ソリューションの提供」が始まることに注目しつつ、「2022年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は1,235億9,000万円」、「2017年度~2022年度の5年間の年平均成長率(CAGR)は108.8%」と見込んでいます。

また、今後の展望として、「フェーズ(段階)別では、実証実験が多いものの、2019年度以降、商用化に向けた効果検証フェーズや本格的な商用化フェーズへと進む案件が増えていく」ことを踏まえ、「日本発のブロックチェーンコンソーシアムの立上げが期待される」としています。

ここで、重要なポイントは、ブロックチェーンのビジネス活用フェーズがまだ実証段階にあるということでしょう。

革新的な技術であればあるほど、既存市場へと応用する際のハードルが高く、ビジネス活用でクリアしなければならない課題も多くなります。

そのため、実際に技術が社会実装されるまでには、技術自体の登場から長い年月を要することになります。

ブロックチェーンの場合は、概念自体の認識、技術的可能性の大きさの理解はかなり進んできているので、今後は、様々な業界での実験が繰り返され、その中から次世代の「当たり前」をつくるサービスが登場し、その後に一気に市場が拡大すると見込まれます。

こうした背景を踏まえて、前述の経済産業省の資料が将来的なインパクトの予測であったのに対して、矢野経済研究所では現在にフォーカスした統計がなされているために、数字に大きな開きがあることを理解することが重要です。

ブロックチェーン国内市場規模予測C:ミック経済研究所

ブロックチェーンの国内市場規模に関して、別の資料をもう一つ紹介します。

2020年1月6日に発刊された、株式会社ミック経済研究所(以下、ミック経済研究所)の『大きく活用用途広がるブロックチェーン市場の現状と展望 2019年度版』(有料、リンクは同資料のプレスリリースページ)です。

同資料では、ブロックチェーン関連業者(プラットフォーマー・SIer・アプリ/SWベンダー)の市場規模を予測しています。

ミック経済研究所によると、「2018年度の同市場は53.3億円、2019年度は79.9%増の95.9億円市場へと成長する見込み」で、「同市場は年平均成長率66.4%増で成長を続け、2024年度には1,000億円を超える市場へと成長」します(下図)。

出典:ミック経済研究所

この市場成長について同社は、「ブロックチェーンの技術自体は、高度なセキュリティが担保されることから金融を中心に順調に活用用途が広がって」おり、「現在はトレーサビリティや著作権の管理などでも有用とされ、金融領域以外での活用も期待されている」と、一時は落ちついたブロックチェーン市場への期待が、近年にまた高まり始めていることを指摘しています。

注目すべきことは、矢野経済研究所の調査と比べるとやや控えめな数字ではあるものの、ミック経済研究所の資料でも、ブロックチェーン市場は「2024年度には1,000億円を超える」とされており、調査方法や調査主体にかかわらず、ここ数年で大きな市場成長が見込まれていることです。

この背景には、同社が指摘している通り、金融領域以外での分野でブロックチェーンのビジネス活用が進んでいる現状があります。

この統計も、日本国内におけるブロックチェーンに対する期待の高まりを示している資料と言えるでしょう。

ブロックチェーンの市場規模②:世界予測

ブロックチェーン世界市場規模予測A:株式会社グローバルインフォメーション

次に、日本から海外へと目を転じてみましょう。

世界のブロックチェーン市場は、米国を中心に、技術的発展、市場規模ともに日本よりもはるかに進んでおり、すでに国際的大企業による大規模なブロックチェーンプラットフォームのローンチなどの動向が見られています(Mearsk社とIBM社の共同による海運プラットフォーム「Trade Lens」など)。

こうした世界市場のマーケット規模に対する統計の一つとして、株式会社グローバルインフォメーション(以下、GI)による市場調査レポート「ブロックチェーンの世界市場 – 2025年までの予測:アプリケーションプロバイダー、ミドルウェアプロバイダー、インフラプロバイダー」 (MarketsandMarkets)(有料、リンクは商品ページ) があります。

GIによると、「ビジネスプロセスの簡素化と、ブロックチェーン技術とサプライチェーン管理のニーズの高まりが、ブロックチェーン市場全体を牽引することにな」った結果、「ブロックチェーン市場規模は、2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大し、CAGR67.3%という驚異的な成長を遂げる」ことになります。

この驚異的な数字の根拠として、同社は、北米を中心とした市場における銀行・金融セクターでのマーケット維持を土台に、プライベートブロックチェーンの台頭、SEMs(中小企業部門)の高成長が市場に成長をもたらすとの見方を示しています。

特に、プライベートブロックチェーンに関して、GIは次のように言及しています。

「2020年に市場規模が最大になると予測されているプライベートブロックチェーンは、ユーザー権限などでセキュリティが確保された共有データベースまたは台帳としての役割を持ちます。通常、関連する組織のみが知っているプライベートキーを使用することで、そのセキュリティが守られます。ブロックチェーン技術の一種であるプライベートブロックチェーンは、書き込み権限は単一の組織に一元管理され、読み取り権限は、組織の使いやすさに基づいて制限されます。そのブロックチェーン技術を企業間のユースケースに活用するという点で、企業にとってより多くの機会を提供します。」

実際に、日本でも、プライベートブロックチェーンに対する取り組みが各業界の先進的な企業によって進められ始めています

この時期に、ブロックチェーンに対する投資を行えていたかどうかが、10年先の企業の未来を変えるかもしれません。

ブロックチェーン世界市場規模予測B: IDC Japan 株式会社

ブロックチェーンの世界市場規模を予測する他の資料に、2019年9月に、IT専門調査会社である IDC Japan 株式会社(以下、IDCJ)が発表したWorldwide Semiannual Blockchain Spending Guideがあります。

IDCJによると、「世界のブロックチェーンソリューションに対する支出額は2023年に約159億ドルに達する見通し」で、「2018年から2023年までの予測期間を通じて、ブロックチェーンへの支出額は安定して増加し、5年間の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は60.2%にな」ります。

また、同社はブロックチェーン市場に対する分析として、「世界的にブロックチェーン支出額が最大の業種は、銀行業」であり、「予測期間全体を通じて、銀行は全世界の支出総額の約30%を占める見通し」だとしています。

また、「その次に大きい支出が見込まれる業種は、組立製造業とプロセス製造業で」、「両者を合わせると支出額全体の20%以上になる見通しで」あり、その中でも特に「プロセス製造業は、最も高い支出成長率が見込まれる業種でもあり(CAGR68.8%)、予測期間の終わり頃には、ブロックチェーン支出額が第2位の業種になると予測」しています。

ここで注目すべきは、ブロックチェーン市場第二の支出源泉として製造業をあげていることです。

2020年現在、ブロックチェーン業界では、複数の非金融領域における市場の創出・拡大が進んでいます。

とりわけ、物流業界は、IBM社を筆頭に、ブロックチェーンの技術を利用した世界的なサプライチェーンの変革が進められており、近い将来、ブロックチェーンに対応している企業とそうでない企業で、明暗が分かれてくる可能性があります。

米国IDC Worldwide Blockchain Strategies リサーチディレクターであるジェームス・ウェスター氏による「一般社会ではブロックチェーンをめぐって時として白熱した議論が交わされていますが、そのような中で、企業によるこのテクノロジーの採用は静かに進行し、複数のユースケースでティッピングポイントに達しています。初期の試験運用プログラムでブロックチェーンの価値を認めた企業が、そうしたプロジェクトを本番環境に移しつつあります」という発言の背景には、まさに物流業界のような社会変革の動向があると言えるでしょう。

【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、Utility Token〜

近年、STOをはじめ、ブロックチェーンのトークンを活用した新しいビジネスが生まれています。特に、複数種類あるトークンの中でも、Utility Tokenに注目が集まっています。トークンの定義、特徴をもとに、最新事例を解説します!

  1. ブロックチェーンのトークンを使った資金調達方法「STO」って?
  2. トークンとは何か?
  3. ブロックチェーントークンのビジネス活用:Utility Token によるトークンエコノミー

ブロックチェーンのトークンを使った資金調達方法「STO」って?

高まるブロックチェーン市場への期待

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、仮想通貨の領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

実際、世界経済フォーラムの発表によると、2025年までに、世界の総GDPの10%がブロックチェーン基盤上にのると言われています。

STOとは何か?

そうした諸産業でのブロックチェーンを用いた課題解決の中でも、2020年、特に注目を集めているのが、「STO」と呼ばれる、ブロックチェーン技術を利用した新しい資金調達方法です。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開、ブロックチェーンを利用した資金調達方法の一つ)の問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が高いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

トークンとは何か?

「トークン」という言葉がもつイメージ

上で述べたSTOでは、資金調達方法の一つとして、ブロックチェーンのトークンが活用されています。

こう聞くと、なんとなくわかったような気になりますが、その実、「トークン」という言葉はとても曖昧で、意味の幅が広い言葉です。

したがって、STOを始めとするトークンビジネスを理解するためには、まずはトークンという言葉が持つイメージを掴むことが重要です。

そもそも、トークン(token)は原義的に、「しるし」「象徴」「記念品」「証拠品」を指す言葉です(Wikipedia)。

しかし、ビジネス活用の文脈では、これら原義通りの意味よりも、むしろそこから派生した下記2つの意味が重要になります。

  1. 使える場所、交換対象などが限られている「代用貨幣」のこと
  2. 一回だけ、使い捨ての認証権限のこと

これらの意味から、ビジネスにおいてトークンがどのようなイメージで活用されているかが見えてきます。

すなわち、トークンは、「法定通貨や暗号資産(仮想通貨)と違って、交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」として用いられています。

もちろん、字義通りに全てのトークンが「使い捨てにしよう」と狙ってつくられるわけではありませんが、こうしたイメージを掴んでおくことで、数あるトークンの狙いや意味を理解しやすくなるでしょう。

トークンとブロックチェーン

今みたように、トークンそのもそも意味範囲の広い概念であり、ブロックチェーンに限定されたものではありません。

しかし、近年、トークンという言葉に注目が集まるときは、必ずといっていいほど、ブロックチェーンとセットにされています。

これは、一つにはICOやSTOといった新しい資金調達方法の背景にブロックチェーンの技術があることも影響していますが、むしろそれ以上に、そもそもブロックチェーンがトークンと相性の良い技術であることが大きな要因でしょう。

少し小難しい話になりますが、トークンとブロックチェーンの相性の良さを一言で言えば、「近代以来の国民国家経済、現代のグローバル資本主義に対するアンチテーゼ」として使われやすいという点で共通していることです。

まず、トークンは先ほど見たように、「法定通貨や暗号資産(仮想通貨)と違って、交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」としての特性をもっています。

したがって、トークンは、法定通貨や暗号資産で「外部」と均質化させたくない経済圏、例えば地方公共自治体やショッピングモールなど、オープンではあるものの中央権力を介していないコミュニティーで、そのコミュニティー内にのみ資する準貨幣として用いられます

そのため、逆に、もしコミュニティーの範囲を超えたレベルで経済圏を回していきたいのであれば、それはもはやトークンではなく、法定通貨や暗号資産で十分だということになります。

他方、暗号資産であるビットコインの副産物として生まれたブロックチェーンは、そもそもの技術的思想が「非中央集権的」です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

したがって、ブロックチェーンの技術は、暗号資産のみならず、例えば管理者不在のデータプラットフォームや第三者を介さない不動産取引など、既存の経済体制のあり方を変革するような方向性で、ビジネス活用される傾向にあります。

こうした相性の良さから、近年、STOを始めとした、ブロックチェーンの技術を活用したトークンビジネスがトレンドとなり始めています。

ブロックチェーンを活用したトークンの種類

実は、ブロックチェーンを活用したトークンには、様々な種類があります

代表的なトークンの種類と概要は、次の4つです。

(他にも、Transaction TokenやGovenance Tokenといった種類もありますが、概念自体が難しい上に使用される頻度もあまり多くはないため、ここでの説明は割愛します。)

区別のポイント

トークンの種類

意味

身近な例

トークン自体に金銭的価値が認められるか?

Utility Token

(ユーティリティトークン)

具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン

・パチンコ玉

・図書券

・電車やバスの切符

・遊園地の入場券

Security Token

(セキュリティトークン)

それ自体に金銭的価値が認められるトークン

・株券

・債権

トークンを相互に区別するか?

Fungible Token …(*)

(ファンジブルトークン)

メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン

・純金

(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)

Non Fungible Token

(ノンファンジブルトークン)

同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン

・土地

(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

(*)”fungible”は日本語で「代替可能性」を意味する英語。

今回の記事では、これら4種類の中でも特にUtility Tokenに絞って、次章で解説を行ってまいります。

もし、他のトークンについて詳しくお知りになりたいという方がいらっしゃれば、各領域のすばらしい企業がテーマを絞って研究していま

すので、ぜひ色々と調べてみてください。

ブロックチェーントークンのビジネス活用:Utility Token によるトークンエコノミー

Utility Tokenの特徴

Utility Token(ユーティリティトークン)は、先ほど見たように、トークンそれ自体は金銭的価値をもたず、具体的な他のアセットと交換することによって初めて資産性が生まれる種類のトークンです。

例えば、ロックミュージシャンのコンサートチケットもUtility Tokenの一つでしょう。

というのも、このチケットが価値をもつのは、そのミュージシャンの演奏を聞きたいと欲する人がいた上で、チケットを使うことで生の演奏を聞くことができると約束されているからです。

したがって、コンサート開催日の翌日以降であったり、そのミュージシャンを知らない人間しかいない地域であったりすると、そのチケットには1円の価値もなくなります。

また、別の例で言えば、JRの切符を西武鉄道で使っても意味がないのと同じ話です。

このように、Utility Tokenは、他のアセットとの交換可能性を金銭的価値に変えられるトークンであることから、次のような特徴をもちます。

  • 閉じられた(=一部の人間に限定された)コミュニティや地域などで効果を発揮しやすい
  • トークン自体は物質的価値をもたなくてもよい
  • 交換対象となるアセットの価値を定量化できる

こうした諸特徴は、既存のビジネスに活用する上で使い勝手が良いため、Utility Tokenは、ブロックチェーンの技術とともに、様々な領域で活用され始めています。

次に、具体的な活用事例を4つ、ご紹介します。

Utility Tokenの活用事例①:ファンビジネス

Utility Tokenの活用事例の一つ目は、ファンビジネスの領域におけるコミュニティ専用トークンです。

コミュニティ専用トークンは、集団の内外に大きな価値差を生じさせることで、小さなコミュニティに「熱狂」を生み出すことができます。

例えば、女優の石原さとみさんのファンクラブ内で、次のような条件で、ファン活動のために使える「SATOMIコイン」がつくられたとします(注:あくまで架空の話です)。

  • Twitterで、石原さとみさんのツイートをリツイートすることでのみ、SATOMIコインを受け取れる
  • SATOMIコインを一定量貯めることで、サイン色紙など、石原さとみさんのグッズと交換できる
  • SATOMIコインは、ファンクラブに入会している人だけが保有することができる

このSATOMIコインは、ファンの方々にとっては非常に価値があるものでしょう。

逆に、石原さとみさんに全く興味をもたない人にとっては、いくらコインを集めたところで使い道がないため、コインに価値を認めないはずです(コインを自由に売り買いできるマーケットがあれば、投機目的でSATOMIコインを集める人もでてくるかもしれませんが、コインに価値を生じさせているのはあくまでファンの熱量です)。

つまり、SATOMIコインは、集団(ここではファンクラブ)の「内」と「外」で価値に差を生じさせています。

こうした集団内外での価値差の発生は、法定通貨では嫌われる現象です。

法定通貨では、あらゆる集団間・個人間で価値の差を「均す(ならす)」ことを目的としているため、コミュニティ専用のトークンとは思想が真逆なのです。

そして、この特性ゆえに、ファンコミュニティ専用のトークンには価値上昇の歯止めがききにくく、閉じられたコミュニティ内におけるファン同士の熱量の相乗効果によって、「熱狂」を伴う経済価値を生み出すことに繋がります。

この原理を実際のビジネスに適用としている事例が、サッカークラブチーム用トークンである「socios.com」です。

socios.comは、ファントークンを用いて「チームの決定」に投票をすることが可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

このトークンには、従来は「試合を見に行って、グッズを買って、選手を応援する」存在であったファンに、チームの運営の一部も担ってもらうことで、よりロイヤルティを高めていこうという狙いがあります。

このように、Utility Tokenを利用したファンビジネスにおけるコミュニティ専用トークンは、企業のマーケティング文脈で考えるならば「新規顧客の開拓」よりも「既存顧客のコミュニティ化」に向いていると言えるでしょう。

Utility Tokenの活用事例②:シェアリングエコノミー

Utility Tokenの活用事例の二つ目は、シェアリングエコノミーです。

シェアリングエコノミーは、「トークンエコノミーの事業適用の本丸」とも言える活用領域で、国内動向で言えば、ガイアックス社が注力してビジネス活用を進めています。

シェアリングエコノミーのサービスにおいて、Utility Tokenと、その背景技術であるブロックチェーンを用いることで、透明性が非常に高く、管理コストの安いサービスをつくることができるようになります。

例えば、シェアリングエコノミーのサービスの一つに「レンタサイクル」があります。

ここでいうレンタサイクルは、自転車店がその場所を起点として貸し借りする類のものではなく、中国で一時期流行ったような、エリアの拠点ごとに駐輪場と大量の自転車を設置して、借主がスマートフォンアプリで貸し借りの手続きを行うものをイメージする方がわかりやすいでしょう。

レンタサイクルは、「ちょっとそこまで行くのに自転車を使いたいけど、わざわざ高いお金を出してまで買いたくはない」人に対して、耐久財である自転車を安くで貸し出すビジネスです。

このビジネスでは、「何回も貸す」ことと「人手を介さない(つまり人件費をかけない)」ことを前提条件として、一回の利用あたりの単価を下げることで多くの人に借りてもらい、利益を出すことができます。

ここで課題となるのが、盗難や乗り捨て、破損などのリスクと、管理コストのトレードオフ(に近い)関係です。

不要な管理コストをできる限りなくしたい一方で、管理コストを削ると、貸し借りや決済の記録がずさんになったり、顧客管理が不十分なために自転車の盗難等のリスクが高まったりしてしまいます。

そこで、課題解決の手法として注目されるのが、Utility Tokenとブロックチェーンの技術です。

レンタサイクルの管理にスマートコントラクト(貸借契約の自動執行)を使い、決済にトークンを使うことで、貸し借りの記録はブロックチェーン上で記録され、決済記録も同じブロックチェーン上でトークンで記録することができます

そして、これらの機能により、透明性が高く、かつ、管理コストの安いサービスが実現されます。

また、こうした課題感は、レンタサイクルに限らず、シェアリングエコノミー全体がモデルの原理的にもちうる問題です。

そのため、シェアリングエコノミーをビジネスモデルとする様々なサービスで、Utility Tokenを用いたトークンエコノミーが注目されています。

Utility Tokenの活用事例③:公共財の管理・利用

Utility Tokenの活用事例の三つ目は、公共財の管理・利用です。

公共財は、シェアリングエコノミーの延長領域として、近年、Utility Tokenの適用可能性が探られています

公共財の管理・利用にトークンを活用しようという発想の根底には、資本主義における価値の定量化への流れの中で、定性的価値、とりわけ情緒的な価値をうまく保っていこうという考えがあります。

私たちの身の回りには、リンゴのように数えることもできないし、餅のように切り分けられないはずなのに、あたかも「数えることができるもの」「切り分けられるもの」として売り買いされているものが多く存在します。

その象徴が、集団への「貢献」だったり、風土・環境のような「公共財」です。

資本主義の世の中、特にIoTやAIなどのデータサイエンスが発展し、「自然や社会のあらゆるものを定量化・分析して、私たちの生活をより豊かにするように最適化していこう」という思想が強まってきている現代では、そうした「貢献」や「公共財」のような定性的価値を備えたものであっても、定量化の波から逃れることは現実的ではありません

しかし、その一方で、個人や要素に還元された「数えられる結果」だけに縛られず、定性的価値の背後にある「美しい動機」を認めていこうという考え方も根強く存在しています。

こうした思想の背景には、純粋に動機やプロセスを大切にしていきたいという想いだけでなく、定量的データ分析に偏重した評価体系がこれまで以上に社会に広がった場合、行き過ぎた個人主義や結果主義が幅をきかせることで、フリーライダーやモラルハザードなどの「公的福利」を脅かす問題がより深刻になりうるのではないか、というネガティヴフィードバックへの懸念も横たわっています。

そこで、現在、定量化しつつも美しい動機が評価され、ポジティブフィードバックループが回るような仕組みのためにトークンが使えないか、公共財の分野での検討がなされているのです。

Utility Tokenの活用事例④:地域通貨

Utility Tokenの活用事例の四つ目は、地域通貨です。

地域通貨も、現在、その適用可能性が探られている領域の一つで、今後の発展が期待されている領域でもあります。

地域通貨へのトークン適用の背後にも、資本主義における定量化の波に対する抵抗が見られます。

現代に流通している法定通貨は、すべてのものを定量化させ、「商品」として流通させることで拡大していっています。

したがって、原理上、時間が経過するほど法定通貨で交換できる商品は増えていくことになります。

そして、その結果、地方の小さな経済主体と大都市の経済主体が同列で競争させされ、前者は後者に従属していくようになり、さらには決済ごとにかかる数%の手数料収入も、地方都市から大都市へと流出していくことになります。

近年、こうした流れを食い止めるべく、あえて法定通貨ではない地域通貨を使う地区が増えています。

代表的なものでいえば、「さるぼぼコイン」、カヤック社の「まちのコイン」などです。

地域通貨は、「閉じたコミュニティに向いている」というUtility Tokenの特徴を生かし、あえて地区内に経済圏を限定することによって大都市との競争から逃れようという試みです。

また、経済圏の管理を自治体が主導することで、決済の手数料収入が流れてしまうことも防ぐ狙いがあります。

現在は、まだ成功事例がそこまで多くはありませんが、今後も、この動きは加速していくと予想されます。

ブロックチェーンは不動産業界40兆円市場の切り札となりうるか?

不動産業界は、国内30万社、市場規模40兆円を誇る巨大産業です。その不動産業界で、今、ブロックチェーンを活用したビジネスが増えています。LIFULL、積水ハウス、Propy。不動産×ブロックチェーンは業界を変革できるのか?一挙、解説します!

なお、ブロックチェーンビジネスの考え方、全体像の概観を学びたい方は、次の記事も併せてご覧ください。

→ 参考記事:『ブロックチェーンのビジネスモデル・活用事例〜非金融など応用領域も解説〜』

目次

  1. 不動産業界の有望技術として注目を集めるブロックチェーン
  2. ブロックチェーンとは?
  3. ブロックチェーンのビジネスモデル進化
  4. 不動産業界でブロックチェーンが注目される理由
  5. 「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる2つの課題
  6. 「不動産×ブロックチェーン」の事例
  7. 「不動産×ブロックチェーン」の最新動向:STO

不動産業界の有望技術として注目を集めるブロックチェーン

不動産業界は、国内30万社以上のプレイヤーが存在し、市場規模は40兆円とも言われる巨大産業です。

日本にはおよそ600万社の企業が存在することを踏まえると、不動産の数は全業界の5%を占めていることになります。

また、当然、その歴史も古く、昔からの取引関係や商慣行などが色濃く残り続けている業界でもあります。

そうした不動産業界で、近年、ブロックチェーン技術を活用した新たなサービスがいくつもローンチされ、業界の課題解決に対する期待が高まっています

例えば、大手ハウスメーカーの積水ハウスでは、ブロックチェーンを活用した次世代不動産プラットフォーム構想が推し進められています。

出典:ITmedia「ハウスメーカーが構想する“不動産ブロックチェーン”の可能性とインパクト (1/3)」

ITmediaによると、同社は、「2019年3月には、KDDI、日立と、企業間の情報連携基盤を実現すべく、協創を開始」し、「本人確認情報(KYC)をブロックチェーン上で共有し、賃貸契約の利便性向上を実証実験によって検証し」た他、「同年9月27日には、大阪ガス、東邦ガス、損害保険ジャパン日本興亜、東京海上ホールディングス、三井住友海上火災保険も参画に加わり、住まいに関わる多くの手続きをワンストップ化させるための検討に入」りました。

また、2019年7月23日には、株式会社bitFlyer Blockchainが住友商事株式会社と業務提携を行い、独自ブロックチェーンmiyabiを活用した不動産賃貸契約の効率化を行っていく旨を発表しました。具体的には、「住宅の賃貸契約の電子化に加えて、借主がスマートフォン1つで物件の内見予約から契約、その後の契約更新から退去手続きに至るまでを行えるプラットフォームを目指し、両社は共同開発に着手」しています(カギ括弧内は仮想通貨Watchより引用)。

他にも、LIFULLによる不動産賃貸へのブロックチェーン導入や、外資企業のPropyによる国際不動産売買プラットフォームの構築など、この数年で、「不動産×ブロックチェーン」の動向は大きく様変わりし出したと言えるでしょう(なお、これらの事例については、本記事の後半でも紹介します)。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

参考記事👉「ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ブロックチェーンのビジネスモデル進化

ブロックチェーンは、この10年間あまりで技術の進展とともに、技術の応用領域、そしてビジネスモデルを進化させてきました。

進化の歴史は、ブロックチェーン1.0、2.0、3.0という呼称で知られています。

ブロックチェーンは、2008年に誕生した当時はまだ、仮想通貨ビットコインの中核技術の一つに過ぎませんでした(ブロックチェーン1.0)。

その後、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)が、ビットコインの仕組みを仮想通貨以外の領域に応用するべくEthereumを開発し、個人間送金や契約の自動履行など、主に金融領域でのビジネス活用が盛んに行われるようになりました(ブロックチェーン2.0)。

そして、近年、Ethereumのtps(トランザクション速度)の遅さを改善したEOS(エオス)、toB企業向け開発に特化したQuorum(クオラム)やHyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)などのプラットフォームが登場し、またブロックチェーン技術の有用性に対する社会の関心が高まったことを背景に、非金融領域へのビジネス活用が急速に進み始めています(ブロックチェーン3.0)。

不動産業界は、まさにこのブロックチェーン3.0の代表的な応用領域と言えるでしょう。

不動産業界でブロックチェーンが注目される理由

不動産業界は、次のような特徴をもつ産業です。

  • プレイヤー数が多い
  • とりわけ古参のプレイヤーが多く、幅をきかせている
  • 情報に非対称性がある(借り手と貸し手、買い手と売り手、など)
  • 第三者仲介・管理が取引の基本形態になることが多い
  • 取引単価が大きい

これらの特徴から、不動産業界では、プレイヤー間の心理的な駆け引きや情報操作による「騙し」が横行しやすい傾向にあります。

また、第三者が介入することにより取引コストが大きくかかってしまうという課題も存在しています。

こうした状況に対して、ブロックチェーンは先ほど見たように、次のような特徴をもっています。

  • データ(取引記録)をオープンかつ正しく記録することができる
  • 中央管理者を設けず、当事者間でのデータ共有が可能

したがって、ブロックチェーンの技術を利用することで、不動産業界では、第三者仲介・管理による取引コストの増加を伴わずに、

  1. 利害が衝突したり見解が一致しない関係で、取引を簡単にする
  2. 従来証券化されてこなかった小口証券を実現する

といった課題解決が可能になるのです。

(これらの課題解決については、次の章でそれぞれ詳しくみていきます)

近年、不動産業界でブロックチェーンが注目される背景には、このような「オープン」「真正」「分散」といったブロックチェーンの諸特徴と不動産業界が抱えていた課題との相性の良さがあると言えるでしょう。

「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる2つの課題

「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる課題A:利害不一致な取引の簡易化

不動産業界にブロックチェーンを導入することにより解決しうる課題の1つ目は「利害が衝突したり見解が一致しない関係で、取引を簡単にする」ことです。

先ほど見たように、不動産取引は全般的に「情報の非対称性」に基づいて無駄な取引コストが発生しているケースが多いと言えます。

これを、不動産のライフサイクルごとにあてはめた課題解決が行われています。

それぞれのフェーズにおいて、「誰と誰の間に非対称性があるのか?」に注目すると、課題の理解が容易です。

  • ライフサイクル①:登記
    • 「役所」と「登記申請者」間の非対称性が課題
    • 役所からすると、「不動産の所有者は本当にこの登記申請者本人なのか?」を確かめるのが難しい
    • そのため、権利証明や複雑な登記申請手続きが必要となり、登記申請者にとっても役所にとっても取引コストが増大する
    • 特に、発展途上国で解決できる問題が多い
  • ライフサイクル②:売買
    • 「買い手」と「売り手」間の非対称性が問題
    • 買い手からすると、「この人は本当に所有しているのか?」「隠れ担保がついてないか?」「入居者間や近隣で厄介なトラブルはないか?」、売り手からすると、「この人は本当に支払ってくれるのか?」という疑念が付きまとってしまう
    • そのため、双方の信用を担保するための第三者仲介が必要となり、いわゆる「両手取引」における高い二重の手数料が取引コストとなる。
  • ライフサイクル③:賃貸
    • 「借り手」と「貸し手」間の非対称性が課題
    • 借り手からすると、「ここは事故物件ではないか?」「家主はしっかりメンテナンスしてくれるのか?」、貸し手からすると、「この人は毎月きちんと家賃を支払ってくれるのか?」「この人はモンスター住民にならないか?」といった不安が生じてしまう
    • そのため、双方の信用を単肥するための第三者仲介が必要となり、いわゆる「両手取引」における高い二重の手数料が取引コストとなる
  • ライフサイクル④:修繕
    • 「 修繕に入る施工業者」と「過去の施工業者」間の非対称性が課題
    • 修繕に入る施工業者からすると、「今回修繕依頼されている水道の型番はそもそも何番なのか?」「過去にどんな修繕工事をしているのか?」といった情報が不明瞭。
    • そのため、物件情報や過去の施工情報など、必要ながらも可視化されていない情報を確かめるためのコストがかかったり、最悪の場合はわからないままとなってしまう

こうしたプレイヤー間の情報非対称性に起因した不動産取引の課題に対して、ブロックチェーンは、オープンかつ真正性の高い(データの改竄等がない)データ基盤において、第三者を排除した分散型の管理手法を提供することで、課題解決に寄与するとみられています。

「不動産×ブロックチェーン」が解決しうる課題B:小口証券の実現

不動産業界の課題でもう一つ注目されているのが、「小口証券の実現」です。

従来、不動産業界では、REIT(不動産投資信託)などにより、不動産の証券化が進められていました。

しかし、証券化できる不動産の規模は、中〜大規模なものに限定されており、たとえば、山村で廃屋になった古民家、ニュータウンで独居老人の住んでいた空き家、などはあまり対象とされてきませんでした。

これは、従来の不動産ファンドでは組成運用コストが大きくかかることから、小規模な不動産ではそのコストを回収しきることができず、ファンド組成が難しかったためです。

この課題に対して、ブロックチェーン技術を用いることで、トークンなどの活用により証券のデジタル化を進められ、組成運用コストを大幅に引き下げることが可能になります。

そのため、従来はコスト高になり踏み込めなかった小規模な不動産の証券化、つまり「小口証券」が実現されることになります。

そして、この小口証券化が進むことで、証券化できる不動産の幅が広がるだけでなく、中〜大規模の不動産には手を出せなかった個人投資家からも広く投資を募ることが可能になります。

実際に、不動産情報サイト大手のLIFULLは、2020年から、デジタル証券プラットフォームを提供する米セキュリタイズと提携して、日本でブロックチェーンを用いた不動産のデジタル証券化の実証実験を開始しています。

出典:coindesk JAPAN「LIFULLが不動産のデジタル証券化を実験、米セキュリタイズと【セキュリティトークン】」

具体的には、特別目的会社(SPC)が物件を小口トークン化し、投資家に売り出すという発行スキームで、ブロックチェーンを用いることで、配当や償還、二次流通を自動化する狙いがあります。

こうした取り組みが進むことで、REIT市場が取りきれなかった新たな不動産マーケットの開拓が進んでいくと見られています。

「不動産×ブロックチェーン」の事例

国内事例:LIFULL(不動産賃貸)

「不動産×ブロックチェーン」の代表事例として注目を集めているのが、不動産情報サイトを運営する株式会LIFULLによる不動産情報コンソーシアム「ADRE(Aggregate Data Ledger for Real Estate、アドレ)」です。

この取り組みは、「異業種プレーヤー間で不動産データを共有・連携することにより、不動産業界の抱える課題を解決するとともに、不動産業界・取引市場を発展させる」ことを目的に、2018年7月から異業種6社(LIFULL、NTTデータ経営研究所、NTTデータ先端技術、全保連、ゼンリン、ネットプロテクションズ)による共同で進められていたプロジェクトで、新たに、不動産取引に関わる手続きをワンストップで行うサービスなどを展開する株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)、マンション管理組合に対して住宅設備やセキュリティ機器の提供などをしている三菱UFJリース株式会社、法律弁護士法人 鈴木康之法律事務所などが加わり、正式に発足しています。

出典:LIFULL HOME’S PRESS

LIFULLによると、ADREの背景となっている不動産業界の課題は次のようなものです。

「物件探しをしているとき、良いと思った物件について問合せると、すでに入居が決まっており、別の物件を紹介されたという経験はないだろうか。あるいは、不動産ポータルサイトなどに同じ物件の情報がいくつも表示され、どの情報が正しいのかよくわからないということも少なくない。不動産業界においては、1つの不動産に関する情報が、仲介会社や管理会社、インフラ会社などにバラバラに保有されているため、こうした問題が起こりやすい状況にある。」(LIFULL HOME’S PRESSより)

こうした課題を解決するコンソーシアムが成立し、プラットフォームデータベースが各社に共有されることで、これまで各社の中で個別に管理され、取引コストのもととなっていた情報がスムーズに共有され、不動産賃貸の領域において、様々なコストダウンが進むと見られています。

そして、こうしたADREによる「情報の非対称性」の解決をサポートしている技術が、ブロックチェーンです。

業界横断プラットフォームの中核技術としてブロックチェーンを採用した理由として、同社は「分散管理型のブロックチェーンは公的プラットフォームの構築に向いている」としています。

これは、本記事でも説明した通り、「オープン」で「中央管理者がいない」基盤であるブロックチェーンが、プレイヤー数が多く、利害関係が一致しづらい不動産業界の課題解決に向いていることを示す好例だと言えるでしょう。

海外事例:Propy(国際不動産売買)

もう一つ、「不動産×ブロックチェーン」の代表格として注目を集めている海外事例に、オンライン国際不動産売買プラットフォーム「Propy(プロピー)」があります。

Propyは、2015年に設立した、アメリカのカリフォルニアに拠点を置くフィンテック系ベンチャー「Propy Inc.(プロピーインコーポレーテッド)」が開発した、ブロックチェーンのスマートコントラクト機能を利用したプロダクトです。

「国際的な不動産取引では、ブローカー・取引の安全性を保証するエスクローサービス・土地の登記サービス・送金業者など複数の仲介業者とやり取りをする必要があ」り、「複数の仲介業者を介することは、取引の長期化や詐欺が発生するリスクが増大することに加え、大量の書類を作成・署名をする事務作業のコストも発生している」ことを背景に、Propyでは、「スマートコントラクトを用いることで様々な仲介手数料をなくし、世界中の登記所と連携することにより、効率的な不動産の国際取引の実現を目指してい」ます(カギ括弧内は、BLOCKCHAIN-BUISINESSによる事例解説より引用)。

スマートコントラクトとは、「契約条件の締結や履行がプログラムによって自動で実行される仕組み」のことで、従来であればヒトが逐一実行せざるを得なかった不動産取引における付随業務を、ブロックチェーン基盤上で取引を行うことで、ヒトの手を介さなくてもよくなり、結果として取引コストが大幅に引き下げられることになります。

Propyも、すでに説明した不動産業界における情報の非対称性に伴う取引リスク(とその結果として必要になる取引コスト)を減らすために、ブロックチェーン技術を活用している好例だと言えるでしょう。

「不動産×ブロックチェーン」の最新動向:STO

上でみたようなブロックチェーンによる業界課題解決に併せて、不動産業界には、ブロックチェーン関連の注目すべき動向がもう一つあります。

それが、「STO」と呼ばれる、ブロックチェーン技術を利用した新しい資金調達方法です。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICO(イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開、ブロックチェーンを利用した資金調達方法の一つ)の問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が高いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

そして、実際に、2020年現在、不動産業界でのSTOへの注目度が高まっています

先ほど課題解決の一つとして説明した「小口証券の実現」でも、まさにこのSTOがうまく利用されています。

このように、STO自体は不動産に限った方法ではありませんが、業界との相性の良さから見て、STOは不動産業界における今後の一大潮流の一つになると予想されます。

【業界動向】物流×ブロックチェーンは何を実現する?最新の活用事例も!

ブロックチェーンは、国内67兆円の潜在マーケットをもつ有望技術です。特に物流業界と相性がよく、①台帳共有による合理化、②偽造品排除の二側面から注目を集めています。IBM等の最新事例と共に物流のデジタルトランスフォーメーション動向に迫ります。

なお、ブロックチェーンビジネスの考え方、全体像の概観を学びたい方は、次の記事も併せてご覧ください。

→ 参考記事:『ブロックチェーンのビジネスモデル・活用事例〜非金融など応用領域も解説〜』

目次

  1. 今、「物流×ブロックチェーン」が熱い。
  2. ブロックチェーンとは?
  3. ブロックチェーンと物流課題の相性の良さ
  4. 物流×ブロックチェーンで実現しうる2つの効果と活用事例

今、「物流×ブロックチェーン」が熱い。

2020年現在、ブロックチェーンとロジスティクス分野を掛け合わせたビジネスが、世界的な盛り上がりを見せています。

ガートナーのレポートでは世界のサプライチェーンソフトウェアマーケットは2017年の約1兆3000億円から13.9%の伸びを記録しており、中でも、Transparency Market Researchは今後さらに成長が期待され、2026年には3兆5000億円近くまで拡大すると予測されています。

例えば、グローバルEC企業であるAmazonは、2020年5月26日に、3年前に出願した「分散型台帳認証」の特許申請が承認されたことで、グローバルサプライチェーンの課題に対してブロックチェーンを用いたソリューションを提供し始める構えを見せています。

出典:ITmedia NEWS

具体的には、ハイパーレジャー(Hyperledger)などの分散型台帳技術(DLT)によってデータの改ざんを防ぎ、単一障害点(停止するとシステム全体が停止する箇所)を取り除くなど、中央集権型組織の管理上の問題を回避しようという方針です。

また、IBMは、コンテナ船世界最大手のA.P. Moller-Maersk(A.P.モラー・マースク、以下マースク)との共同でブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォーム「TradeLens」を構築した他、世界最古の医薬品・化学品メーカーであるMerck KGaA(メルク・カーゲーアーアー、以下メルク)と共に偽造品対策プラットフォームを立ち上げています。

出典:TRADELENS 概要(IBM社資料)

ヨルダンの税関ではやAqaba税関では、トレードレンズのブロックチェーンサプライチェーンサービスの活用が進められています。

さらに、アジアに目を転じてみても、中国EC市場シェア2位のJD.com(下図)がブロックチェーンに関連する200件超もの特許を申請したという報道がなされるなど、世界最大の人口を抱える中国においても、物流のシステム全体をブロックチェーンによって強化していく流れがみられています。

出典:JD.com

その他、ロジスティックプロバイダーAlbaによるIPRブロックチェーン活用の実証実験参加、サプライチェーンロジスティックソフトウェアを開発するSwivel Softwareの国際間取引プラットフォームGlobal eTrade Services (GeTS)への参画など、影響力の大きなプレーヤーによる動きが続々と発表されています。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

参考記事👉「ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ブロックチェーンと物流課題の相性の良さ

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」という特徴を踏まえた上で、なぜ、「ブロックチェーン×物流業界がアツい」のでしょうか?

これは、結論からいえば、「物流業界のニーズとブロックチェーン開発会社のシーズとの利害関係が見事に一致したから」とみるのが妥当でしょう。

物流業界のニーズ

まず、物流業界側のニーズとして、「もともと物流業界は取引をデジタル化しようにも、プレーヤーが多すぎて中央のデータベースを誰が管理するかで意思統一できなかった」という課題がありました。

これに対して、ブロックチェーンは先ほどみたように、中立的でオープンな「非中央集権性」をもった技術です。

データ共有をセキュアに、また利害関係の衝突なく行うために、ブロックチェーンはまさに「渡りに船」な技術だと言えます。

こうした理由から、物流業界のニーズに対して、ブロックチェーンはマッチしています。

ブロックチェーン開発会社のシーズ

近年、ブロックチェーンの技術的可能性は金融領域の枠を超え始めたため、開発会社は、より自分たちのビジネスを拡大していくために、暗号資産(仮想通貨)以外の適用領域を探していました。

開発会社がシーズとして求めていた領域は、次のような、ブロックチェーンの特性をうまく活かせる条件をもった領域でした。

  • データベース共有によるコスト削減メリット →  「プレーヤーが多すぎて非効率な」業界
  • 非中央集権性 → 現時点で中央管理者が不在な方が実現しやすい → 「GAFAも中国もいない」業界
  • 優れたトレーサビリティ(データの追跡可能性) → 「嘘が多い」業界

こうした諸条件をもとに開発機会を各社が探していったところ、例えば不動産や医療など複数の業界が該当することになります。

そして、その一つとして、物流、サプライチェーンといった領域がフォーカスされれることになりました。

物流×ブロックチェーンで実現しうる2つの効果と活用事例

「物流×ブロックチェーン」では、大きく次の2つの効果を期待することができます。

  • 効果①:台帳共有による合理化
  • 効果②:偽造品排除

実際の活用事例をみながら、順に、説明していきましょう。

物流×ブロックチェーンの実現効果①:台帳共有による合理化

「物流×ブロックチェーン」が実現する効果の一つ目は、「台帳共有による合理化」です。

通常、物流業界では、関係各社が独自のルール・フォーマットで文書(データ)を作成し、それぞれの台帳(データベース)で管理を行なっています。

また、それらのデータが紙ベースの業務で処理されることも少なくありません。

これらの状況から、関係各社同士での連携業務においては、絶えずオペレーションエラーのリスクを抱えながら、ヒトによる非効率な突合作業が繰り返されることで、必要以上の膨大なコストがかかってしまっています。

これに対して、取引をデジタル化し、ブロックチェーンを利用してデータベースを共有することで、各社の連携業務を合理化し、大幅なコスト削減をはかることができます。

出典:『ブロックチェーンは「国境」を打ち破る IBMが乗り出す「信頼の基盤作り」とは』(IT media NEWS)

このような「台帳共有による合理化」を国際貿易の舞台で大々的に実現させようとしているのが、本記事冒頭でも紹介した「TradeLens」です。

TradeLensは、2016年9月から、IBMとコンテナ船世界最大手のマースクとの共同で検証を開始したブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォームで、荷主・ターミナル・運送業者・船社・海上保険・通関業者など、海上物流に関係するあらゆる会社間でのデータベース共有を実現し、業界全体の非効率を解消しようという一大プロジェクトです。

IBM社の発表資料によると、国際貿易は、次のような業界課題を抱えています(下記、同資料より本文の一部を抜粋)。

  • データは組織のサイロに閉じ込められている
    • 情報はサプライ・チェーン内の数十のサービス・プロバイダーによって紙やさまざまなデジタル・フォーマットで保持されていて、複雑で、わずらわしい、経費のかさむ一対一のメッセージングを必要としています。
    • 結果として組織の境界を越えると情報が矛盾し、船荷がなかなかはっきりわ からず、さらには場所によっては見えないので、効率的な流れが妨げられています。
  • 手作業、時間のかかる、紙ベースの処理
    • 最新データの収集、処理と非効率な貿易ドキュメントの交換のために、手作業で確認したり、頻繁にフォローアップが必要だったりして、ミスや遅れが生じたり、コンプライアンス・コストがかさむといった結果になります。
    • 情報が足りないために、ドキュメントは常に遅れます。
  • 通関手続きに時間を要し、不正も発生
    • 税関当局によるリスク評価は十分な信頼できる情報が欠けているために、検査率が高くなり、詐欺や偽􏰀に対する防止手段が追加されて、通関手続きが遅れます。
  • 高コストと低レベルな顧客サービス
    • これらの難問が下流に大きな影響を与えます。
    • 効果的な予測、計画やサプライ・チェーンの混乱に対するリアルタイムの対応、サプライ・チェーン全体 での信頼できる情報の共有などができないので、過剰な安全在庫、高い管理コスト、運用上の難問、最終的には貧弱な顧客サービスにつながります。

こういった課題に対して、TradeLensでは、「グローバル・サプライ・チェーンのデジタル化」を掲げ、オープンソースの権限型ブロックチェーンであるHyperledger Fabricを元にしたIBM Blockchain Platformを利用することで、関係各社すべてでの台帳共有を実現しようとしています。

物流×ブロックチェーンの実現効果②:偽造品排除

「物流×ブロックチェーン」が実現する効果の二つ目は、「偽造品排除」です。

偽造品は物流業界の天敵とも呼べる存在で、経済協力開発機構(OECD)などによると、2016年に世界で取引された偽造品と違法コピー品は5090億ドル(約53兆円)にのぼるとも言われています。

近年、この偽造品問題をブロックチェーンを利用して解決しようという動向が、国内外に大きく広がっています。

そもそも、偽造品がここまで大きな問題でありながらもこれまで解決されてこなかった理由は、既存の物流システムが「トレーサビリティ(商品の追跡可能性)」を高め切ることができなかったからと考えられます。

この課題に対して、ブロックチェーンはその仕組み上、過去の全取引データを時系列順に格納・検索することができ、加えてデータの対改竄性が非常に高いため、悪徳業者による不正を防ぐことができます。

こうしたブロックチェーンの特徴を「偽造品排除」の文脈でうまくビジネス利用しようとしているのが、日通(日本通運)です。

出典:「日通、ブロックチェーンで偽造品排除 物流に1000億円」( 2020/3/9 1:30日本経済新聞 電子版)

2020年3月9日の日本経済新聞の記事によると、「日本通運はアクセンチュアやインテル日本法人と組み、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用した輸送網の整備に乗り出」し、「まず医薬品を対象に2021年の構築を目指しており、倉庫の整備などを含め最大1千億円を投資する」ことで、「偽造医薬品の混入を防ぐための品質管理に生かし、将来は消費財全般に応用する」ことを発表しています(「」内は同記事からの引用)。

上図のように、ブロックチェーンを利用した偽装品排除の取り組みでは、メーカーから小売に至るまで、川上から川下のデータを同一クラウドデータベース上にすべて紐づけていくことで、ある商品がいつ、どこで、誰によって、どんな状態で管理されているかを可視化することができるようになります。

これにより、商品のトレーサビリティが高まり、産地やハラールの認証、違法コピーなど様々な偽造品問題を解消できるのではないか、と期待されています。

ブロックチェーンのビジネスモデル・活用事例〜非金融など応用領域も解説〜

国内67兆円の影響力をもつブロックチェーン市場。そのビジネスモデルは仮想通貨、フィンテックを経て、非金融(ブロックチェーン3.0)へ応用領域が拡大しました。トークン、スマートコントラクト等の技術発展と、2020年最新の活用事例を解説します!

目次

  1. ブロックチェーンビジネス市場の現状(2020年9月現在)
  2. ブロックチェーンとは?
  3. ブロックチェーンのビジネスモデル進化
  4. ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの応用領域
  5. ブロックチェーンの応用領域拡大を支える技術発展
  6. ブロックチェーン3.0(非金融領域)の3つのビジネスモデル
  7. ブロックチェーンのビジネス活用事例(非金融領域)

ブロックチェーンビジネス市場の現状(2020年9月現在)

2020年現在、経済産業省が「ブロックチェーンは将来的に国内67兆円の市場に影響を与える」との予測を発表してから5年が経過しました。

出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

この5年間で、社会変革・ビジネスへの応用が進むとみられていた5つのテーマでは、次のような形で、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。

#

社会変革のテーマ

社会実装の方向性

活用事例

1

価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化

トークン活用

ICO、STO、ファンビジネス、地域通貨

2

権利証明行為の非中央集権化の実現

不動産領域における登記などの権利証明

LIFULL、積水ハウス、Propy

3

遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

医療プラットフォームや電子政府

MedRec、The MediLedger Project、サスメド、健康銀行

4

オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

国際海運における物流プラットフォーム

MAERSK(マースク)、Merck(メルク)

5

プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

DAO(自律分散型組織)

DEX、投票、国際貿易

その結果、現実的な推計としても、ブロックチェーンの市場規模は2020年で100〜200億円、2025年には1000億円を超える国内市場を形成し、世界全体では2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大するとの見解も発表されています。

👉参考記事:『【2020年】ブロックチェーンの市場規模は?複数の統計をまとめました

さらに、世界経済フォーラムによると、2025年までに世界のGDP総額の10%がブロックチェーン基盤上に乗るとされており、今後のさらなる技術発展とマーケット拡大、そして私たちの生活への浸透が期待されます。

ただし、他方で、ブロックチェーンは、原理的なセキュリティリスクや、スケーラビリティ等の課題を抱えてもいます。

ブロックチェーンの今後を左右するのは、まさに、ビジネスの現場にいる私たちが、どれだけ現実的に未来を捉え、技術・ビジネスの両軸から理解を深めていくかにかかっているでしょう。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長は、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ、の3点です。

これらの特長は、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

 

従来のデータベースの特徴

ブロックチェーンの特徴

構造

各主体がバラバラな構造のDBを持つ

各主体が共通の構造のデータを参照する

DB

それぞれのDBは独立して存在する

それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている

データ共有

相互のデータを参照するには新規開発が必要

共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ブロックチェーンのビジネスモデル進化

ブロックチェーンは、この10年間あまりで技術の進展とともに、技術の応用領域、そしてビジネスモデルを進化させてきました。

進化の歴史は、ブロックチェーン1.0、2.0、3.0という呼称で知られています。

ブロックチェーンは、2008年に誕生した当時はまだ、仮想通貨ビットコインの中核技術の一つに過ぎませんでした(ブロックチェーン1.0)。

その後、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)が、ビットコインの仕組みを仮想通貨以外の領域に応用するべくEthereumを開発し、個人間送金や契約の自動履行など、主に金融領域でのビジネス活用が盛んに行われるようになりました(ブロックチェーン2.0)。

そして、近年、Ethereumのtps(トランザクション速度)の遅さを改善したEOS(エオス)、toB企業向け開発に特化したQuorum(クオラム)やHyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)などのプラットフォームが登場し、またブロックチェーン技術の有用性に対する社会の関心が高まったことを背景に、非金融領域へのビジネス活用が急速に進み始めています(ブロックチェーン3.0)。

ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの応用領域

ブロックチェーンの応用領域は金融/非金融/ハイブリッドの3つに分類できる

ブロックチェーン市場におけるビジネスモデルの進化は、新しいモデルが過去のモデルに取って代わるのではなく、過去のモデルを残しつつも、新しい応用領域へとマーケットが拡大する形で進んできました。

具体的には、2020年現在のブロックチェーン応用領域は、ブロックチェーン1.0、2.0の金融を軸に、3.0の非金融、両者のハイブリッドの3つに分類できます。

ブロックチェーンの応用領域①:金融領域(フィンテック)

ブロックチェーンビジネスの第一の領域は、「金融領域」です。

「金融領域」とは、平たく言えば「Fintech(フィンテック)」と言われる領域のことで、より正確には「暗号資産(=仮想通貨)を活用した領域」と考えてください。

(出典:pixabay

金融領域でのブロックチェーンの活用事例には、例えば次のようなものがあります。

  • 暗号資産取引
    • ブロックチェーン技術を応用した法定通貨以外の新通貨の売買等を通して、キャピタルゲインを獲得することをインセンティブとしたビジネス
  • ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)
    • 企業が仮想通貨を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う方法
    • 「クラウドセール」「トークンセール」「トークンオークション」とも呼ばれる
    • ICOの仕組みを悪用した詐欺事件なども起こってしまったこともあり、近年では、一時期の勢いは見られない
  • STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)
    • 有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法
    • ICOの問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めている
    • 金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株で、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされている

フィンテック分野での事例としては、IBM社がローンチした相殺決済サービス、CLSNetが挙げられるでしょう。

同サービスでは、顧客が持つ複数の機関に対する債務と債権を相殺して一回の決済に振り替えることで整理できます。

2018年11月28日より、FX決済サービスのCLS社とIBM社の共同で提供が開始され、ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどの世界的な金融機関がこのシステムを利用していることでも有名です。

なお、「Fintech」という用語に馴染みのある方も多いかと思いますが、必ずしも「ブロックチェーンの金融領域=Fintech」というわけではないため、注意が必要です(後に説明する「ハイブリッド領域」のビジネスを指して”Fintech”と呼ばれることもあります)。

ブロックチェーンの応用領域②:非金融領域

ブロックチェーンビジネス第二の領域は、「非金融領域」です。

非金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことで、台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

【例】中国・天水りんごの真贋証明

出典:Blockchain Business & Solution

非金融領域のブロックチェーンビジネスが注目を集めている理由は、次の通りです。

  1. 適用範囲が非常に広い(どの産業にも可能性がある)
  2. したがって適用領域の市場規模が大きくなる可能性が高い(政府予想では数十兆円規模)
  3. これまでに実現してこなかった産業レベルでのイノベーションが起こりうる可能性がある

門戸が広がったとは言え、まだまだ参加できるプレイヤーが限られている金融領域と比べて、非金融領域では、業務課題レベルからの解決が十分に可能です。

そのため、新規事業立ち上げや経営企画の方だけでなく、あらゆる職種の方にとって、この領域について理解しておくことは自社の役に立つかと思います。

非金融領域でのビジネス活用の考え方や事例については、本記事の後半で詳しく見ていきます。

ブロックチェーンの応用領域③:ハイブリッド領域(非金融×暗号資産)

ブロックチェーンビジネス第三の領域は、「ハイブリッド領域」です。

ハイブリッド領域とは、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域です。

乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

わかりやすい例としては、いわゆる「トークンエコノミー」がこの領域のビジネスと考えられます。

この手の取り組みで言えば、MUFGコイン(発表当時の名称、現在はcoin)がこれに該当するでしょう。

出典:ゼロスマ

トークンエコノミーに代表されるハイブリッド領域は、事業化にあたって最新の注意が必要な領域です。

というのも、同領域は、直感的にイメージがしやすく、美しいビジネスモデル(「●●経済圏」など)も容易に描けてしまう一方で、実際には下記のような課題が存在し、難度が非常に高くなるケースが多くなります。

  • 新興基盤の多くは1年ももたずに消えていく
  • いざサービス開発をしようという時に過去のユースケースが少ないため、バグやシステムトラブルが発生した時にエンジニアがお手上げになるケースが多
  • 仮想通貨の値上がり益がインセンティブになる場合は、事業課題の解決のためのインセンティブがおろそかになってしまい誇大広告や詐欺の温床になるケースが多い

そのため、事業企画担当者として「トークンエコノミー」などのハイブリッド領域におけるブロックチェーンビジネスを検討しているのであれば、提案を受けた開発基盤の「過去のケース数」を確認することをおすすめします(GitHubなどで)。

また、この領域は資金決済法の適用を受けるので、事業企画においても繊細な配慮が必要な点について法務部門から「突っ込まれる」可能性が高いため、注意しておく必要があるでしょう。

ブロックチェーンの応用領域拡大を支える技術発展

仮想通貨領域から非金融領域へといたるブロックチェーンの応用領域の拡大は、技術発展に伴って進んできました。

実際に、ビジネスや産業に応用されている技術には、例えば次のようなものがあります。

  • Smart Contract(スマートコントラクト、契約自動化)
  • Traceability(トレーサビリティ、履歴追跡)
  • Tokenization(トークナイゼーション、トークン化)
  • Self Sovereign Identity(セルフソブリンアイデンティティ、自己主権型ID)

これらのうち、本記事では、必ずと言っていいほどブロックチェーンでの応用が検討される、スマートコントラクトとトークンの2点について、簡単に説明します。

Smart Contract(スマートコントラクト)

スマートコントラクトとは、1994年にニック・スザボという暗号学者が提唱した「契約の自動化」を意味するコンピュータプロトコルです。

後に、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)がEthereum基盤上で開発・提供し始めたことから、ブロックチェーンの代表技術としてビジネスに活用されるようになりました。

スマートコントラクトの考え方自体は、ブロックチェーンに限らず、身近なところに用いられています。

代表的な事例は自動販売機で、「飲料の売買取引」をベンダーマシンを使って自動化していることから、スマートコントラクトのわかりやすい例として挙げられます。

ブロックチェーンの文脈では、フィンテックにおける送金業務の自動化DEX(分散型取引所)、非金融領域では投票システム国際貿易プラットフォームなど、多岐にわたるビジネスへの応用が進んでいます。

こうした形で、スマートコントラクトがビジネスプロセス上に実装されることで、取引プロセスのデジタル化・自動化による取引コスト削減が期待できます。

👉参考記事:『スマートコントラクトとは?ブロックチェーンの社会実装手段を解説!

Tokenization(トークン化)

トークンは、ビジネスの文脈上では「交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」といった意味で用いられる概念で、非中央集権的なブロックチェーンとセットでビジネス活用されます。

トークンには、代表的な4つの種類があります。

【トークンの種類】

区別のポイント

トークンの種類

意味

身近な例

トークン自体に金銭的価値が認められるか?

Utility Token

(ユーティリティトークン)

具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン

・パチンコ玉

・図書券

・電車やバスの切符

・遊園地の入場券

 

Security Token

(セキュリティトークン)

それ自体に金銭的価値が認められるトークン

・株券

・債権

トークンを相互に区別するか?

Fungible Token …(*)

(ファンジブルトークン)

メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン

・純金

(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)

 

Non Fungible Token

(ノンファンジブルトークン)

同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン

・土地

(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

トークンの活用事例としては、例えば、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)やSTO(Security Token Offering、セキュリティ・トークン・オファリング)といった資金調達方法であったり、ファンコミュニティ専用の共通貨幣などに用いられています。

2020年現在では、Utility Token(ユーティリティトークン)の既存ビジネスへの活用、もしくは、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)による新規事業開発のどちらかがトークンビジネスの主流と言えるでしょう。

👉参考記事:『【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、Utility Token〜

ブロックチェーン3.0(非金融領域)の3つのビジネスモデル

非金融領域におけるブロックチェーンビジネスには、事業化にあたって抑えておくべき3つの視点があります。

これらはすべて、「取引関係における中央管理者とどのような関係を組むか」、という問いに対する視点です。

それぞれ、順にみていきましょう。

非金融ブロックチェーンのビジネスモデル①:「直接化・自動化」

非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの一つ目は、「直接化・自動化」です。

これは、取引のプロセスを合理化することによって、いわゆる「取引コスト」を削減しようという視点です。

ヒト・モノ・カネ・情報の流通プロセスにおいては、取引の主体者や取引自体の信用を担保するための付随業務が至るところで発生しています。

それらの業務を適切に遂行し、取引を無事に遂行する上では、「信用に値する第三者」を経由するのが常套手段です。

出典:Wikipedia

しかし、第三者の介入は、中央管理者による規制や圧迫、中間マージンによるコスト高、商流の延長によるリードタイムの間延びなど、様々な取引コストを発生させます。

また、外部企業に付随業務の履行を代行してもらうこと自体にも、大きな人件費がかかってきます。

この問題に対して、「分散型台帳」技術とも言われるブロックチェーンでは、その仕組み上、ネットワークの参加者が個人レベルで(Peer to Peerで)、信用を担保しながら、安全に取引を行うことができます。

また、スマートコントラクトによって、ブロックチェーンの基盤上で定型業務の履行を自動的に行うこともでき、これまで管理業務に費やされてきた膨大な時間や人件費を削減することもできます。

非金融ブロックチェーンのビジネスモデル②:「民主化・透明化」

非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの二つ目は、「民主化・透明化」です。

これは、従来は管理者あるいはプラットフォームから参加者への一方向な上意下達だったコミュニケーションを、管理者に一方的に有利にならないように双方向化しよう、という視点です。

先ほどみた「直接化・自動化」が中央管理者の存在による取引コストの増加にフォーカスしていたのに対して、「民主化・透明化」は、コミュニティ内の「情報の非対称性」に注目しています。

一般に、ビジネスは情報の非対称性を作り出すことで単価を高めるところに基本の発想があります。

ところが、インターネットの登場以来、「奪うのではなく与える」「隠すのではなくさらけ出す」「売るのではなく共有する」といった発想の転換が起こり始めました。

「なんてことはない」一般人の集まりが、自作の動画を公開し、YouTubeというプラットフォームで圧倒的な人気を集めて大儲けする、といった光景も、もはや珍しいことではなくなりました。

ブロックチェーンのもつ「非中央集権性」を活用することで、こうした最新のマーケティング手法を自社ビジネスに活用できる可能性があります。

実際の活用イメージで言えば、不透明になりがちなコミュニティー運営、例えば、寄付、投票、投げ銭などの透明化、といった双方向性を想像するとわかりやすいでしょう。

非金融ブロックチェーンのビジネスモデル③:「相対化・自由化」

非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの二つ目は「相対化・自由化」です。

これは、平たく言えば、「データの囲い込み」をなくして、みんなで利用していきましょうね、という視点です。

これまでは、同じ業界でも、各社が異なるデータベースを用意し、それぞれの顧客に対してそれぞれ別の形でデータを保有していました。

こうした「データの囲い込み」には、次のようなデメリットがあります。

  • データを共有してさえいれば確保できるはずの利用者の自由度が大きく下がってしまう
  • 同じ業界で、同じ資産を使っている間柄なのに、各社がそれぞれに同じようなデータを集める無駄な競争を行なっていたり、パワーの強い一社がデータを独占してしまって他社がどうにもならない(結果、業界としての進歩が望めない)

これに対して、ブロックチェーンでは、各社がそれぞれにサーバーをもつのではなく、一つのネットワークを共有することで、デジタル資産を安全に共有することができます。

これには、次のようなメリットがあります。

  • IDを他サービスに持っていって認証の手間を省ける、自分が著作権を有するコンテンツを自由にいろいろなプラットフォームで売れる、といった形で、利用者がサービスから受けられる恩恵が増す
  • 同業他社が安全にデータを共有し合えることで、あるいは川上と川下がスムーズに繋がることで、独占によるメリット以上に大きなリターンが得られる可能性がある

「シェアリングエコノミー」「限界費用ゼロ社会」に向かっていくと言われる現代の社会において、こうした「相対化・自由化」の流れはますます高まっていくでしょう。

ブロックチェーンのビジネス活用事例(非金融領域)

自律分散型図書館DAOLIB構想

ブロックチェーンによる「直接化」の面白い例の一つに、「自律分散型図書館DAOLIB」と呼ばれる次世代型図書館の構想があります。

これは、利用者と管理者を分け、図書データを中央集権的に管理している既存の図書館に対して、利用者と管理者を同一にし、中央管理者としての図書館の役割をなくしてしまおうという試みです。

多くの方は、過去に友人同士で本の貸し借りをしたことがあるでしょう。

そうした貸し借りは、「友人」という信用関係が成り立っており、かつ、規模が小さく管理の必要性がほとんどないために可能になっています。

しかし、この貸し借りを知らない人との間でやろうとすれば、友人との間のようにはうまくいきません。

例えば、よくある話として、「あれ、あの本誰に貸したっけ?」というように、紛失のリスクを始めとして、本自体の管理に始まり、いつ誰と誰が貸し借りをしたのか、といった経路も記録する必要が出てきます。

そこで、ブロックチェーンの登場です。

「分散型台帳」とも呼ばれるブロックチェーンは、暗号資産の管理手法としてつくられた経緯からもわかるように、本来、データの管理に非常に長けている技術です。

自律分散型図書館DAOLIB構想がうまくいけば、分散型データ管理手法であるブロックチェーンの特徴がうまく生かされることで、本の貸し手と借り手のやり取りを「直接化」することが可能になるでしょう。

Workday Credentials

続いて、ブロックチェーンによるビジネスの「自動化」の例をあげましょう。

代表格は、人事クラウド大手のWorkdayによる、ブロックチェーン技術を用いて資格や職歴などの発行、確認を行うプラットフォームである、「Workday Credentials」です。

人事・総務経験者であれば誰しもうなずくことかと思いますが、転職マーケットにおいて、採用する側の労力以上に煩わしいのが、前職側の人事業務でしょう。

Workday Credentialsでは、従業員の職務経験やスキルなどの証明を発行することで、前職の人事部からするともっともやりたくない在職証明などの業務、採用/応募時の確認作業を大幅に合理化できます。

そして、このサービスの背後にあるのが、ブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンは、「データの過去履歴を追うこと」や「データの対改竄性」に優れているため、企業の在職証明であったり、あるいは高等教育機関の学位証明などに幅広く応用されています。

また、スマートコントラクトによる定型取引の自動履行も可能なので、例えば上記の人事業務のような、これまでは信用担保のために人手を必要としていた「コストセンター」と位置付けられる業務を、「自動化」することが可能になります。

「自動化」と聞けば、つい「AI」「RPA」といったテーマを想像しがちですが、実は、こうしたデータの真贋が問われるような局面の自動化であれば、ブロックチェーンに分があると言えるでしょう。

医療用品の寄付の追跡

   

出典(画像左):「中国で医療用品寄付向けブロックチェーンポータル公開 新型コロナウイルス対策【ニュース】」(コインテレグラフジャパン)

読者のみなさんは、どこかの団体に寄付をしたことがあるでしょうか?

あるいは、街頭に立って募金を呼びかけている団体に、迷いなくお金を募金したことがあるでしょうか?

これらの問いに対しては、様々な立場からの様々な意見があることかと思いますが、その中の大きな論点の一つに、「お金を募金したはいいけど、本当にこの団体が慈善活動にちゃんと使ってくれるか怪しい」「下手な使い方をされるくらいであれば募金しないほうがいいのではないか」といったものがあります。

要は、「寄付や募金の運用管理者に対する信用」の問題です。

この問題は、寄付や募金を活動資金源としているNPO法人などにとっては、ファンドレイジングをする上で非常に大きく、やっかいな課題です。

他方、寄付や募金をする側からしてみても、詐欺団体ではなく、できる限り信用できて、ちゃんとした使い道をしてくれると思える団体を支援したいもの。

こうした課題を解決する手段として、近年、ブロックチェーン技術の応用が進められています。

ブロックチェーンは、全取引の記録を、改竄も消去もされることなく追跡できるという特徴をもっており、その高いトレーサビリティーが、例えば今回のケースの「コロナウィルス対策のための医療用品寄付」のような、公共性が高く、情報の非対称性によるリスクが極めて高い問題に、見事にマッチしているのです。

このような、ビジネス(あるいはそれに類似した事業)の「透明性」を担保する動きは、今後、ますます増えていくと考えられます。

そうした課題感をもっている場合には、ブロックチェーンのビジネス活用を検討することをお勧めします。

ビジネスケース②-B:Socios.com(サッカーファントークン)

  

ブロックチェーンの「民主化」の事例として有名なのが、Socios.com(サッカーファントークン)です。

ファントークンで「チームの決定」に投票可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

近年、インターネットの登場、余暇時間の増長、価値観の多様化の進展、可処分所得の増加など、様々な社会・経済的要因を背景に、消費者は「ただつくられた商品を購入して、消費して、終わり」ではなく、「自分の価値観にあったより長く、より深く愛せるもの」に対して、大きなお金を払うようになってきました

そのため、ビジネス界では、特にtoCサービスをもつビジネスでは、従来の「顧客視点」のマーケティングからさらに一歩進んで、「顧客=身内」と考えるコミュニティマーケティングとでも呼ぶべき、ファンビジネスのマーケットが伸長しています。

例えば、最近の世界的ブームであるクラフトビール。

その火付け役でもあるBrew Dog社では、顧客に自社株を買ってもらい、そのまま自社運営にかかわってもらう(「パンク株」)という試みをしたことでも話題になりました。

これはまさに、従来の「会社vs顧客」という対立構造から、「会社=顧客」へと変化を遂げていることの表れでしょう。

今回紹介しているSocios.comでも、そうした「ファンによるコミュニティの民主化」を進め、「ファン=応援する人」ではなく、「ファン=チームと一緒になって経営する人」として巻き込むことで、より長く、より深く愛せるサッカーチームになることを目指します。

ブロックチェーンは、ここで課題となりやすい「意思決定に対する投票」の問題を、すでにこれまで述べた特徴をもって、見事に解決していると言えるでしょう。

メディカルチェーン

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の一つ目の例は、「メディカルチェーン」です。

これは、かれこれ20年ほど叫ばれ続けていた医療のデジタル化、特に電子カルテを始めとする院内データの共通化の問題を、ブロックチェーンで巧みに解決しようという試みです。

医療データは、個人情報の中でも特に秘匿性が高く、セキュリティ要件が最も高く求められます。

そして、医療機関ごとのデータ保存形式も異なるため、それらを共有していくハードルは非常に高いものになります。

メディカルチェーンでは、この問題に対して、各医療機関のデータを一つのブロックチェーン基盤上に乗せることを目指しています。

また、ビジネスモデルとしては、トークンエコノミーを採用し、トークンからの収益と医療機関からの収益を主治医や患者に還元することで、この仕組みがうまく回るように設計されています。

国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の二つ目の例は、国連による「難民・ホームレス等向けIDサービス」です。

これは、難民が、国連から付与されるIDカードなしにサービスを利用できるようにするための仕組みで、生体認証データをもとに国連が本人確認を行なった上で、その認証IDをブロックチェーン基盤上で管理しようというものです。

この仕組みによって、従来は各国の各関係機関がそれぞれにデータ認証をするために共通のIDカードを必要としていたところを、共通の基盤をもつことで、IDカードを携帯していないような緊急事態にも人道支援を迅速に行うことが可能になります。

まさに、ブロックチェーンの特徴をうまくいかした「相対化・自由化」の好例であると言えるでしょう。

ブロックチェーンを活用したその他のビジネス事例

本記事では、ブロックチェーンのビジネス活用領域を金融/非金融/ハイブリッドの3領域に区分した上で、主に非金融領域のビジネスロジックを解説しながら、2021年現在に主だったビジネス事例を詳しく説明してきました。

最後に、上では説明しきれなかったその他のビジネス事例について、大手企業/スタートアップに分けてごく簡単にご紹介します。

大手企業のブロックチェーンビジネス事例

中心企業、事例名

領域・市場

概要

LIFULL、ADRE(アドレ)

不動産賃貸

ブロックチェーンコンソーシアムによるデータの共有・一括管理を通した業界全体の取引コストダウン

ウォルマート、スマート・パッケージ

食品小売

生鮮食品の衛生管理、配送システムの管理によるセキュリティの強化

MITメディアラボ、MedRec

医療データ管理

イーサリアムを利用したプライベートチェーンで、過去の医療機関の同意や同意に必要な手続きを経ることなく、医療情報の再利用を可能にする

デンソー

自動車生産

自動運転車に独自のブロックチェーンシステムを搭載、データの改ざんを防止

日通(日本通運)

物流

サプライチェーン全体をブロックチェーンで管理し、偽造品を排除

ソニー

デジタルコンテンツ(教育、音楽、映画、etc)

ブロックチェーンベースの著作権管理システムによる著作者の保護とデジタルコンテンツの安全な共有

IBM、TradeLens

国際海運

ブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォームで、海上物流に関係するあらゆる会社間でのデータベース共有を実現し、業界全体の非効率を解消

マイクロソフト

ID(身分証明、個人認証)

ブロックチェーンベースの個人IDを開発

スタートアップのブロックチェーンビジネス事例

中心企業、事例名

領域・市場

概要

Propy

国際不動産売買

ブロックチェーンのスマートコントラクト機能を利用したオンライン国際不動産売買プラットフォームによる取引コストの低減

Robot Cache

デジタルコンテンツ売買(中古ゲーム)

ブロックチェーンプラットフォーム上でのデジタルゲームの中古売買、不正防止

サスメド

医療、臨床試験

ブロックチェーン技術を用いた臨床研究モニタリングの実証によるデータ改ざん防止

Civic

ID(身分証明、個人認証)

個人認証、年齢確認ができる自販機によるセキュリティの向上とコストの低下

Arteryex、健康銀行

医療データ管理

患者のデータポータビリティを高めるための、AIやブロックチェーン等の先端技術を取り入れた「次世代医療情報プラットフォーム」

ChainLink & OpenLaw

法務

スマートコントラクトで法契約、オフチェーンの銀行同士を仲介