ブロックチェーンのビジネスモデル・活用事例〜非金融など応用領域も解説〜

国内67兆円の影響力をもつブロックチェーン市場。そのビジネスモデルは仮想通貨、フィンテックを経て、非金融(ブロックチェーン3.0)へ応用領域が拡大しました。トークン、スマートコントラクト等の技術発展と、2020年最新の活用事例を解説します!

目次

  1. ブロックチェーンビジネス市場の現状(2020年9月現在)
  2. ブロックチェーンとは?
  3. ブロックチェーンのビジネスモデル進化
  4. ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの応用領域
  5. ブロックチェーンの応用領域拡大を支える技術発展
  6. ブロックチェーン3.0(非金融領域)の3つのビジネスモデル
  7. ブロックチェーンのビジネス活用事例(非金融領域)

ブロックチェーンビジネス市場の現状(2020年9月現在)

2020年現在、経済産業省が「ブロックチェーンは将来的に国内67兆円の市場に影響を与える」との予測を発表してから5年が経過しました。

出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

この5年間で、社会変革・ビジネスへの応用が進むとみられていた5つのテーマでは、次のような形で、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。

#

社会変革のテーマ

社会実装の方向性

活用事例

1

価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化

トークン活用

ICO、STO、ファンビジネス、地域通貨

2

権利証明行為の非中央集権化の実現

不動産領域における登記などの権利証明

LIFULL、積水ハウス、Propy

3

遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現

医療プラットフォームや電子政府

MedRec、The MediLedger Project、サスメド、健康銀行

4

オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現

国際海運における物流プラットフォーム

MAERSK(マースク)、Merck(メルク)

5

プロセス・取引の全自動化・効率化の実現

DAO(自律分散型組織)

DEX、投票、国際貿易

その結果、現実的な推計としても、ブロックチェーンの市場規模は2020年で100〜200億円、2025年には1000億円を超える国内市場を形成し、世界全体では2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大するとの見解も発表されています。

👉参考記事:『【2020年】ブロックチェーンの市場規模は?複数の統計をまとめました

さらに、世界経済フォーラムによると、2025年までに世界のGDP総額の10%がブロックチェーン基盤上に乗るとされており、今後のさらなる技術発展とマーケット拡大、そして私たちの生活への浸透が期待されます。

ただし、他方で、ブロックチェーンは、原理的なセキュリティリスクや、スケーラビリティ等の課題を抱えてもいます。

ブロックチェーンの今後を左右するのは、まさに、ビジネスの現場にいる私たちが、どれだけ現実的に未来を捉え、技術・ビジネスの両軸から理解を深めていくかにかかっているでしょう。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長は、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ、の3点です。

これらの特長は、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

 

従来のデータベースの特徴

ブロックチェーンの特徴

構造

各主体がバラバラな構造のDBを持つ

各主体が共通の構造のデータを参照する

DB

それぞれのDBは独立して存在する

それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている

データ共有

相互のデータを参照するには新規開発が必要

共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ブロックチェーンのビジネスモデル進化

ブロックチェーンは、この10年間あまりで技術の進展とともに、技術の応用領域、そしてビジネスモデルを進化させてきました。

進化の歴史は、ブロックチェーン1.0、2.0、3.0という呼称で知られています。

ブロックチェーンは、2008年に誕生した当時はまだ、仮想通貨ビットコインの中核技術の一つに過ぎませんでした(ブロックチェーン1.0)。

その後、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)が、ビットコインの仕組みを仮想通貨以外の領域に応用するべくEthereumを開発し、個人間送金や契約の自動履行など、主に金融領域でのビジネス活用が盛んに行われるようになりました(ブロックチェーン2.0)。

そして、近年、Ethereumのtps(トランザクション速度)の遅さを改善したEOS(エオス)、toB企業向け開発に特化したQuorum(クオラム)やHyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)などのプラットフォームが登場し、またブロックチェーン技術の有用性に対する社会の関心が高まったことを背景に、非金融領域へのビジネス活用が急速に進み始めています(ブロックチェーン3.0)。

ブロックチェーンのビジネス活用が進む3つの応用領域

ブロックチェーンの応用領域は金融/非金融/ハイブリッドの3つに分類できる

ブロックチェーン市場におけるビジネスモデルの進化は、新しいモデルが過去のモデルに取って代わるのではなく、過去のモデルを残しつつも、新しい応用領域へとマーケットが拡大する形で進んできました。

具体的には、2020年現在のブロックチェーン応用領域は、ブロックチェーン1.0、2.0の金融を軸に、3.0の非金融、両者のハイブリッドの3つに分類できます。

ブロックチェーンの応用領域①:金融領域(フィンテック)

ブロックチェーンビジネスの第一の領域は、「金融領域」です。

「金融領域」とは、平たく言えば「Fintech(フィンテック)」と言われる領域のことで、より正確には「暗号資産(=仮想通貨)を活用した領域」と考えてください。

(出典:pixabay

金融領域でのブロックチェーンの活用事例には、例えば次のようなものがあります。

  • 暗号資産取引
    • ブロックチェーン技術を応用した法定通貨以外の新通貨の売買等を通して、キャピタルゲインを獲得することをインセンティブとしたビジネス
  • ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)
    • 企業が仮想通貨を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う方法
    • 「クラウドセール」「トークンセール」「トークンオークション」とも呼ばれる
    • ICOの仕組みを悪用した詐欺事件なども起こってしまったこともあり、近年では、一時期の勢いは見られない
  • STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)
    • 有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法
    • ICOの問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めている
    • 金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株で、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされている

フィンテック分野での事例としては、IBM社がローンチした相殺決済サービス、CLSNetが挙げられるでしょう。

同サービスでは、顧客が持つ複数の機関に対する債務と債権を相殺して一回の決済に振り替えることで整理できます。

2018年11月28日より、FX決済サービスのCLS社とIBM社の共同で提供が開始され、ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどの世界的な金融機関がこのシステムを利用していることでも有名です。

なお、「Fintech」という用語に馴染みのある方も多いかと思いますが、必ずしも「ブロックチェーンの金融領域=Fintech」というわけではないため、注意が必要です(後に説明する「ハイブリッド領域」のビジネスを指して”Fintech”と呼ばれることもあります)。

ブロックチェーンの応用領域②:非金融領域

ブロックチェーンビジネス第二の領域は、「非金融領域」です。

非金融領域とは、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことで、台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

【例】中国・天水りんごの真贋証明

出典:Blockchain Business & Solution

非金融領域のブロックチェーンビジネスが注目を集めている理由は、次の通りです。

  1. 適用範囲が非常に広い(どの産業にも可能性がある)
  2. したがって適用領域の市場規模が大きくなる可能性が高い(政府予想では数十兆円規模)
  3. これまでに実現してこなかった産業レベルでのイノベーションが起こりうる可能性がある

門戸が広がったとは言え、まだまだ参加できるプレイヤーが限られている金融領域と比べて、非金融領域では、業務課題レベルからの解決が十分に可能です。

そのため、新規事業立ち上げや経営企画の方だけでなく、あらゆる職種の方にとって、この領域について理解しておくことは自社の役に立つかと思います。

非金融領域でのビジネス活用の考え方や事例については、本記事の後半で詳しく見ていきます。

ブロックチェーンの応用領域③:ハイブリッド領域(非金融×暗号資産)

ブロックチェーンビジネス第三の領域は、「ハイブリッド領域」です。

ハイブリッド領域とは、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域です。

乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

わかりやすい例としては、いわゆる「トークンエコノミー」がこの領域のビジネスと考えられます。

この手の取り組みで言えば、MUFGコイン(発表当時の名称、現在はcoin)がこれに該当するでしょう。

出典:ゼロスマ

トークンエコノミーに代表されるハイブリッド領域は、事業化にあたって最新の注意が必要な領域です。

というのも、同領域は、直感的にイメージがしやすく、美しいビジネスモデル(「●●経済圏」など)も容易に描けてしまう一方で、実際には下記のような課題が存在し、難度が非常に高くなるケースが多くなります。

  • 新興基盤の多くは1年ももたずに消えていく
  • いざサービス開発をしようという時に過去のユースケースが少ないため、バグやシステムトラブルが発生した時にエンジニアがお手上げになるケースが多
  • 仮想通貨の値上がり益がインセンティブになる場合は、事業課題の解決のためのインセンティブがおろそかになってしまい誇大広告や詐欺の温床になるケースが多い

そのため、事業企画担当者として「トークンエコノミー」などのハイブリッド領域におけるブロックチェーンビジネスを検討しているのであれば、提案を受けた開発基盤の「過去のケース数」を確認することをおすすめします(GitHubなどで)。

また、この領域は資金決済法の適用を受けるので、事業企画においても繊細な配慮が必要な点について法務部門から「突っ込まれる」可能性が高いため、注意しておく必要があるでしょう。

ブロックチェーンの応用領域拡大を支える技術発展

仮想通貨領域から非金融領域へといたるブロックチェーンの応用領域の拡大は、技術発展に伴って進んできました。

実際に、ビジネスや産業に応用されている技術には、例えば次のようなものがあります。

  • Smart Contract(スマートコントラクト、契約自動化)
  • Traceability(トレーサビリティ、履歴追跡)
  • Tokenization(トークナイゼーション、トークン化)
  • Self Sovereign Identity(セルフソブリンアイデンティティ、自己主権型ID)

これらのうち、本記事では、必ずと言っていいほどブロックチェーンでの応用が検討される、スマートコントラクトとトークンの2点について、簡単に説明します。

Smart Contract(スマートコントラクト)

スマートコントラクトとは、1994年にニック・スザボという暗号学者が提唱した「契約の自動化」を意味するコンピュータプロトコルです。

後に、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)がEthereum基盤上で開発・提供し始めたことから、ブロックチェーンの代表技術としてビジネスに活用されるようになりました。

スマートコントラクトの考え方自体は、ブロックチェーンに限らず、身近なところに用いられています。

代表的な事例は自動販売機で、「飲料の売買取引」をベンダーマシンを使って自動化していることから、スマートコントラクトのわかりやすい例として挙げられます。

ブロックチェーンの文脈では、フィンテックにおける送金業務の自動化DEX(分散型取引所)、非金融領域では投票システム国際貿易プラットフォームなど、多岐にわたるビジネスへの応用が進んでいます。

こうした形で、スマートコントラクトがビジネスプロセス上に実装されることで、取引プロセスのデジタル化・自動化による取引コスト削減が期待できます。

👉参考記事:『スマートコントラクトとは?ブロックチェーンの社会実装手段を解説!

Tokenization(トークン化)

トークンは、ビジネスの文脈上では「交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」といった意味で用いられる概念で、非中央集権的なブロックチェーンとセットでビジネス活用されます。

トークンには、代表的な4つの種類があります。

【トークンの種類】

区別のポイント

トークンの種類

意味

身近な例

トークン自体に金銭的価値が認められるか?

Utility Token

(ユーティリティトークン)

具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン

・パチンコ玉

・図書券

・電車やバスの切符

・遊園地の入場券

 

Security Token

(セキュリティトークン)

それ自体に金銭的価値が認められるトークン

・株券

・債権

トークンを相互に区別するか?

Fungible Token …(*)

(ファンジブルトークン)

メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン

・純金

(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)

 

Non Fungible Token

(ノンファンジブルトークン)

同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン

・土地

(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

トークンの活用事例としては、例えば、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)やSTO(Security Token Offering、セキュリティ・トークン・オファリング)といった資金調達方法であったり、ファンコミュニティ専用の共通貨幣などに用いられています。

2020年現在では、Utility Token(ユーティリティトークン)の既存ビジネスへの活用、もしくは、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)による新規事業開発のどちらかがトークンビジネスの主流と言えるでしょう。

👉参考記事:『【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、Utility Token〜

ブロックチェーン3.0(非金融領域)の3つのビジネスモデル

非金融領域におけるブロックチェーンビジネスには、事業化にあたって抑えておくべき3つの視点があります。

これらはすべて、「取引関係における中央管理者とどのような関係を組むか」、という問いに対する視点です。

それぞれ、順にみていきましょう。

非金融ブロックチェーンのビジネスモデル①:「直接化・自動化」

非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの一つ目は、「直接化・自動化」です。

これは、取引のプロセスを合理化することによって、いわゆる「取引コスト」を削減しようという視点です。

ヒト・モノ・カネ・情報の流通プロセスにおいては、取引の主体者や取引自体の信用を担保するための付随業務が至るところで発生しています。

それらの業務を適切に遂行し、取引を無事に遂行する上では、「信用に値する第三者」を経由するのが常套手段です。

出典:Wikipedia

しかし、第三者の介入は、中央管理者による規制や圧迫、中間マージンによるコスト高、商流の延長によるリードタイムの間延びなど、様々な取引コストを発生させます。

また、外部企業に付随業務の履行を代行してもらうこと自体にも、大きな人件費がかかってきます。

この問題に対して、「分散型台帳」技術とも言われるブロックチェーンでは、その仕組み上、ネットワークの参加者が個人レベルで(Peer to Peerで)、信用を担保しながら、安全に取引を行うことができます。

また、スマートコントラクトによって、ブロックチェーンの基盤上で定型業務の履行を自動的に行うこともでき、これまで管理業務に費やされてきた膨大な時間や人件費を削減することもできます。

非金融ブロックチェーンのビジネスモデル②:「民主化・透明化」

非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの二つ目は、「民主化・透明化」です。

これは、従来は管理者あるいはプラットフォームから参加者への一方向な上意下達だったコミュニケーションを、管理者に一方的に有利にならないように双方向化しよう、という視点です。

先ほどみた「直接化・自動化」が中央管理者の存在による取引コストの増加にフォーカスしていたのに対して、「民主化・透明化」は、コミュニティ内の「情報の非対称性」に注目しています。

一般に、ビジネスは情報の非対称性を作り出すことで単価を高めるところに基本の発想があります。

ところが、インターネットの登場以来、「奪うのではなく与える」「隠すのではなくさらけ出す」「売るのではなく共有する」といった発想の転換が起こり始めました。

「なんてことはない」一般人の集まりが、自作の動画を公開し、YouTubeというプラットフォームで圧倒的な人気を集めて大儲けする、といった光景も、もはや珍しいことではなくなりました。

ブロックチェーンのもつ「非中央集権性」を活用することで、こうした最新のマーケティング手法を自社ビジネスに活用できる可能性があります。

実際の活用イメージで言えば、不透明になりがちなコミュニティー運営、例えば、寄付、投票、投げ銭などの透明化、といった双方向性を想像するとわかりやすいでしょう。

非金融ブロックチェーンのビジネスモデル③:「相対化・自由化」

非金融領域におけるブロックチェーンのビジネスモデルの二つ目は「相対化・自由化」です。

これは、平たく言えば、「データの囲い込み」をなくして、みんなで利用していきましょうね、という視点です。

これまでは、同じ業界でも、各社が異なるデータベースを用意し、それぞれの顧客に対してそれぞれ別の形でデータを保有していました。

こうした「データの囲い込み」には、次のようなデメリットがあります。

  • データを共有してさえいれば確保できるはずの利用者の自由度が大きく下がってしまう
  • 同じ業界で、同じ資産を使っている間柄なのに、各社がそれぞれに同じようなデータを集める無駄な競争を行なっていたり、パワーの強い一社がデータを独占してしまって他社がどうにもならない(結果、業界としての進歩が望めない)

これに対して、ブロックチェーンでは、各社がそれぞれにサーバーをもつのではなく、一つのネットワークを共有することで、デジタル資産を安全に共有することができます。

これには、次のようなメリットがあります。

  • IDを他サービスに持っていって認証の手間を省ける、自分が著作権を有するコンテンツを自由にいろいろなプラットフォームで売れる、といった形で、利用者がサービスから受けられる恩恵が増す
  • 同業他社が安全にデータを共有し合えることで、あるいは川上と川下がスムーズに繋がることで、独占によるメリット以上に大きなリターンが得られる可能性がある

「シェアリングエコノミー」「限界費用ゼロ社会」に向かっていくと言われる現代の社会において、こうした「相対化・自由化」の流れはますます高まっていくでしょう。

ブロックチェーンのビジネス活用事例(非金融領域)

自律分散型図書館DAOLIB構想

ブロックチェーンによる「直接化」の面白い例の一つに、「自律分散型図書館DAOLIB」と呼ばれる次世代型図書館の構想があります。

これは、利用者と管理者を分け、図書データを中央集権的に管理している既存の図書館に対して、利用者と管理者を同一にし、中央管理者としての図書館の役割をなくしてしまおうという試みです。

多くの方は、過去に友人同士で本の貸し借りをしたことがあるでしょう。

そうした貸し借りは、「友人」という信用関係が成り立っており、かつ、規模が小さく管理の必要性がほとんどないために可能になっています。

しかし、この貸し借りを知らない人との間でやろうとすれば、友人との間のようにはうまくいきません。

例えば、よくある話として、「あれ、あの本誰に貸したっけ?」というように、紛失のリスクを始めとして、本自体の管理に始まり、いつ誰と誰が貸し借りをしたのか、といった経路も記録する必要が出てきます。

そこで、ブロックチェーンの登場です。

「分散型台帳」とも呼ばれるブロックチェーンは、暗号資産の管理手法としてつくられた経緯からもわかるように、本来、データの管理に非常に長けている技術です。

自律分散型図書館DAOLIB構想がうまくいけば、分散型データ管理手法であるブロックチェーンの特徴がうまく生かされることで、本の貸し手と借り手のやり取りを「直接化」することが可能になるでしょう。

Workday Credentials

続いて、ブロックチェーンによるビジネスの「自動化」の例をあげましょう。

代表格は、人事クラウド大手のWorkdayによる、ブロックチェーン技術を用いて資格や職歴などの発行、確認を行うプラットフォームである、「Workday Credentials」です。

人事・総務経験者であれば誰しもうなずくことかと思いますが、転職マーケットにおいて、採用する側の労力以上に煩わしいのが、前職側の人事業務でしょう。

Workday Credentialsでは、従業員の職務経験やスキルなどの証明を発行することで、前職の人事部からするともっともやりたくない在職証明などの業務、採用/応募時の確認作業を大幅に合理化できます。

そして、このサービスの背後にあるのが、ブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンは、「データの過去履歴を追うこと」や「データの対改竄性」に優れているため、企業の在職証明であったり、あるいは高等教育機関の学位証明などに幅広く応用されています。

また、スマートコントラクトによる定型取引の自動履行も可能なので、例えば上記の人事業務のような、これまでは信用担保のために人手を必要としていた「コストセンター」と位置付けられる業務を、「自動化」することが可能になります。

「自動化」と聞けば、つい「AI」「RPA」といったテーマを想像しがちですが、実は、こうしたデータの真贋が問われるような局面の自動化であれば、ブロックチェーンに分があると言えるでしょう。

医療用品の寄付の追跡

   

出典(画像左):「中国で医療用品寄付向けブロックチェーンポータル公開 新型コロナウイルス対策【ニュース】」(コインテレグラフジャパン)

読者のみなさんは、どこかの団体に寄付をしたことがあるでしょうか?

あるいは、街頭に立って募金を呼びかけている団体に、迷いなくお金を募金したことがあるでしょうか?

これらの問いに対しては、様々な立場からの様々な意見があることかと思いますが、その中の大きな論点の一つに、「お金を募金したはいいけど、本当にこの団体が慈善活動にちゃんと使ってくれるか怪しい」「下手な使い方をされるくらいであれば募金しないほうがいいのではないか」といったものがあります。

要は、「寄付や募金の運用管理者に対する信用」の問題です。

この問題は、寄付や募金を活動資金源としているNPO法人などにとっては、ファンドレイジングをする上で非常に大きく、やっかいな課題です。

他方、寄付や募金をする側からしてみても、詐欺団体ではなく、できる限り信用できて、ちゃんとした使い道をしてくれると思える団体を支援したいもの。

こうした課題を解決する手段として、近年、ブロックチェーン技術の応用が進められています。

ブロックチェーンは、全取引の記録を、改竄も消去もされることなく追跡できるという特徴をもっており、その高いトレーサビリティーが、例えば今回のケースの「コロナウィルス対策のための医療用品寄付」のような、公共性が高く、情報の非対称性によるリスクが極めて高い問題に、見事にマッチしているのです。

このような、ビジネス(あるいはそれに類似した事業)の「透明性」を担保する動きは、今後、ますます増えていくと考えられます。

そうした課題感をもっている場合には、ブロックチェーンのビジネス活用を検討することをお勧めします。

ビジネスケース②-B:Socios.com(サッカーファントークン)

  

ブロックチェーンの「民主化」の事例として有名なのが、Socios.com(サッカーファントークン)です。

ファントークンで「チームの決定」に投票可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

近年、インターネットの登場、余暇時間の増長、価値観の多様化の進展、可処分所得の増加など、様々な社会・経済的要因を背景に、消費者は「ただつくられた商品を購入して、消費して、終わり」ではなく、「自分の価値観にあったより長く、より深く愛せるもの」に対して、大きなお金を払うようになってきました

そのため、ビジネス界では、特にtoCサービスをもつビジネスでは、従来の「顧客視点」のマーケティングからさらに一歩進んで、「顧客=身内」と考えるコミュニティマーケティングとでも呼ぶべき、ファンビジネスのマーケットが伸長しています。

例えば、最近の世界的ブームであるクラフトビール。

その火付け役でもあるBrew Dog社では、顧客に自社株を買ってもらい、そのまま自社運営にかかわってもらう(「パンク株」)という試みをしたことでも話題になりました。

これはまさに、従来の「会社vs顧客」という対立構造から、「会社=顧客」へと変化を遂げていることの表れでしょう。

今回紹介しているSocios.comでも、そうした「ファンによるコミュニティの民主化」を進め、「ファン=応援する人」ではなく、「ファン=チームと一緒になって経営する人」として巻き込むことで、より長く、より深く愛せるサッカーチームになることを目指します。

ブロックチェーンは、ここで課題となりやすい「意思決定に対する投票」の問題を、すでにこれまで述べた特徴をもって、見事に解決していると言えるでしょう。

メディカルチェーン

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の一つ目の例は、「メディカルチェーン」です。

これは、かれこれ20年ほど叫ばれ続けていた医療のデジタル化、特に電子カルテを始めとする院内データの共通化の問題を、ブロックチェーンで巧みに解決しようという試みです。

医療データは、個人情報の中でも特に秘匿性が高く、セキュリティ要件が最も高く求められます。

そして、医療機関ごとのデータ保存形式も異なるため、それらを共有していくハードルは非常に高いものになります。

メディカルチェーンでは、この問題に対して、各医療機関のデータを一つのブロックチェーン基盤上に乗せることを目指しています。

また、ビジネスモデルとしては、トークンエコノミーを採用し、トークンからの収益と医療機関からの収益を主治医や患者に還元することで、この仕組みがうまく回るように設計されています。

国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

ブロックチェーンによるビジネスの「相対化・自由化」の二つ目の例は、国連による「難民・ホームレス等向けIDサービス」です。

これは、難民が、国連から付与されるIDカードなしにサービスを利用できるようにするための仕組みで、生体認証データをもとに国連が本人確認を行なった上で、その認証IDをブロックチェーン基盤上で管理しようというものです。

この仕組みによって、従来は各国の各関係機関がそれぞれにデータ認証をするために共通のIDカードを必要としていたところを、共通の基盤をもつことで、IDカードを携帯していないような緊急事態にも人道支援を迅速に行うことが可能になります。

まさに、ブロックチェーンの特徴をうまくいかした「相対化・自由化」の好例であると言えるでしょう。

ブロックチェーンを活用したその他のビジネス事例

本記事では、ブロックチェーンのビジネス活用領域を金融/非金融/ハイブリッドの3領域に区分した上で、主に非金融領域のビジネスロジックを解説しながら、2021年現在に主だったビジネス事例を詳しく説明してきました。

最後に、上では説明しきれなかったその他のビジネス事例について、大手企業/スタートアップに分けてごく簡単にご紹介します。

大手企業のブロックチェーンビジネス事例

中心企業、事例名

領域・市場

概要

LIFULL、ADRE(アドレ)

不動産賃貸

ブロックチェーンコンソーシアムによるデータの共有・一括管理を通した業界全体の取引コストダウン

ウォルマート、スマート・パッケージ

食品小売

生鮮食品の衛生管理、配送システムの管理によるセキュリティの強化

MITメディアラボ、MedRec

医療データ管理

イーサリアムを利用したプライベートチェーンで、過去の医療機関の同意や同意に必要な手続きを経ることなく、医療情報の再利用を可能にする

デンソー

自動車生産

自動運転車に独自のブロックチェーンシステムを搭載、データの改ざんを防止

日通(日本通運)

物流

サプライチェーン全体をブロックチェーンで管理し、偽造品を排除

ソニー

デジタルコンテンツ(教育、音楽、映画、etc)

ブロックチェーンベースの著作権管理システムによる著作者の保護とデジタルコンテンツの安全な共有

IBM、TradeLens

国際海運

ブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォームで、海上物流に関係するあらゆる会社間でのデータベース共有を実現し、業界全体の非効率を解消

マイクロソフト

ID(身分証明、個人認証)

ブロックチェーンベースの個人IDを開発

スタートアップのブロックチェーンビジネス事例

中心企業、事例名

領域・市場

概要

Propy

国際不動産売買

ブロックチェーンのスマートコントラクト機能を利用したオンライン国際不動産売買プラットフォームによる取引コストの低減

Robot Cache

デジタルコンテンツ売買(中古ゲーム)

ブロックチェーンプラットフォーム上でのデジタルゲームの中古売買、不正防止

サスメド

医療、臨床試験

ブロックチェーン技術を用いた臨床研究モニタリングの実証によるデータ改ざん防止

Civic

ID(身分証明、個人認証)

個人認証、年齢確認ができる自販機によるセキュリティの向上とコストの低下

Arteryex、健康銀行

医療データ管理

患者のデータポータビリティを高めるための、AIやブロックチェーン等の先端技術を取り入れた「次世代医療情報プラットフォーム」

ChainLink & OpenLaw

法務

スマートコントラクトで法契約、オフチェーンの銀行同士を仲介

ブロックチェーンの種類は?〜パブリック・コンソーシアム・プライベート〜

ブロックチェーンには、「管理者の在・不在」に応じて、複数の種類(パブリック型、コンソーシアム型、プライベート型)が存在します。具体的に、どのような違いがあり、自社ではどれを採用すべきでしょうか?本記事で、詳しく解説します!

なお、ブロックチェーンの過去、現在、今後について、概念の全体像を学びたい方は、次の記事も併せてご覧ください。 → 参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!』

  1. ブロックチェーンって何?
  2. ブロックチェーンの仕組み
  3. ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンって何?

ブロックチェーンとビットコイン

ブロックチェーンは、ここ数年ニュースを騒がせている「ビットコイン」を支える中核技術の一つです。

ビットコインとは、仮想通貨あるいはその背景にあるネットワークおよびソフトウェアの総称のことで、下記のような、暗号技術を中心とする新旧さまざまなテクノロジーを駆使し、うまく組み合わせることで実現されたイノベーションであると言われています。

  • 分散化されたP2P(Peer-to-Peer)ネットワーク(=Bitcoinプロトコル)
  • 数学的かつ決定論的な通貨発行(=分散マイニング)
  • 分散取引検証システム(トランザクションscript)
(出典:pixabay

その中でも、近年、特に注目を集めているのが、日本語では「分散型台帳」などと表現される新技術、「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンは、従来のデータベースが抱えていた諸課題を解決しうる期待の新技術として、金融、物流、医療、不動産、セキュリティなど、ありとあらゆる産業への応用が期待されており、経済産業省のブロックチェーン関連市場規模予測では全体で67兆円とも言われています。

ブロックチェーンの定義

ブロックチェーンには様々な定義が存在しますが、本記事では、出来るだけ分かり易くするために、ビットコイン環境下を前提にしつつ、次のように簡略化した定義で解説していきたいと思います。

ブロックチェーンの定義:「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言います。
ブロックチェーンは、このデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術なのです。

ブロックチェーンの特徴:「分散型台帳」って?

ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも表現される通り、ビジネスに限らず、あらゆる取引記録を保管するデータベースとしての機能をもっています。
後に説明するように、この「分散型」という特徴が、ブロックチェーンを際立たせています。

では、具体的に、ブロックチェーンは従来のデータベースと何が違うのでしょうか?

従来のデータベースの特徴

① 各主体がバラバラな構造のDBを持つ
② それぞれのDBは独立して存在する
③ 相互のデータを参照するには新規開発が必要

ブロックチェーンの特徴

①’ 各主体が共通の構造のデータを参照する
②’ それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
③’ 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

従来のデータベースは基本的に独立しており、データ共有にあたっては主従関係が発生します。
その点、ブロックチェーンは常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴をもちます。

こうしたブロックチェーンの「非中央集権性」の恩恵としては、

  • 中央を介さないので中間手数料がない、または安い
  • フラットな関係でデータの共有が行えるので競合他社同士でもデータを融通できる
  • 改竄や喪失に対して耐性がある

ということが挙げられます。
まさにこの「非中央集権、分散型」という特徴こそ、ブロックチェーンが様々な領域で注目・活用されている理由だと言えるでしょう。

こうした、ブロックチェーンのメリットやデメリットをまとめると、以下の通りです。

これらのデメリットについてはBitcoin以降のブロックチェーンで次々に改善されるものが登場してきており、将来的には解消されていくものと予想されています。

なお、「ブロックチェーンとは何か?」をより詳しく、全体的にお知りになりたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
【初心者必見】ブロックチェーンとは?ビジネスの新常識を分かり易く!

ブロックチェーンの仕組み


ブロックチェーンをシンプルに図解すると、次のような構造をしています。

上図からもわかるように、ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています。
では、「ブロック」や「チェーン」とは、どういう意味でしょうか?

ブロックチェーンの仕組み①:「ブロック」

ブロックチェーンでは、一定量に取りまとめられた取引データを「Tx(Transaction、トランザクション)」と呼んでいます。
「ブロック」とは、このトランザクションを1MB分だけ集めてきて、日付などのメタ情報を付与して、ひとまとまりにしたものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

ブロックチェーンの仕組み②:「チェーン」

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています(これらの用語やルールに関しては、後ほど解説します)。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられているので、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

なお、こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

稀にチェーン型でないブロックチェーンというものもありますが、それらは分散型台帳であるもののブロックチェーン構造ではないので、厳密には区別されます(例えばIOTAで有名な「タングル」構造など)。

ブロックチェーンの仕組み③:データの共有方法(コンセンサスアルゴリズム)

ブロックチェーンでのデータ共有において重要な役割を持っているのが「ノード」と呼ばれる個々のネットワーク参加者です。

すでに述べた通り、ブロックチェーンは、従来のデータベースとは異なり中央管理者が不在のため、データの管理や共有はすべて参加者だけで行う必要があります。
この参加者のことを「ノード」と呼び、世界中に散らばるノードが競争した結果、競争に勝利した一つのノードによって、絶えず新しいブロックが生成されていきます(ビットコインでは平均10分に1つのペースで新しいブロックが生成されるように設計されています)。

また、各ノードは、P2Pネットワーク内の他のノードの一部と繋げられており、あるノードでつくられた新しいブロックの情報は、そのノードと繋がっている他のノードにすぐさま伝播します
そして、この「ブロックの伝播」を繰り返していくことで、ブロックおよびブロックに含まれる取引データが、瞬く間に世界中の参加者へと共有される(=データが同期される)のです。
これによって、多数のノードがデータを持ち合うことで、ブロックチェーンでは、データの改竄や捏造が難しくなりました。

しかし、この方法は、あくまで「ブロック化された元のデータ内容が正しいこと」を前提としています。
ブロックチェーンの世界には第三者としての中央管理者がいません。
従って、もし、ブロックをつくった人間に悪意があった場合、その人間を管理できる存在がいないため、世界中の人が間違ったデータを同時に持ってしまうことになります。
つまり、P2Pネットワーク参加者のみで行うデータ共有の仕組みでは、「管理者不在の中、どうやってデータの真正性を担保するか?」という問題を解決する必要があるのです。

そこで、考え出されたのが、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる、ネットワーク内での合意形成の方法です。
ブロックチェーンでは、個々のネットワークごとに、「複数それっぽいブロックが出てきた時にどれを選ぶか?」という論点に対する合意方法が、コンセンサスアルゴリズムという形で事前に決められているのです。

(出典:pixabay

例えば、代表的なところでは、ビットコインのPoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)、イーサリアムのPoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)、ネムの PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)、リップルのPoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)あたりが有名です。
れる謎の人物であることを思い出してください)

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると以下のように分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

ノードの参加者が限定されているPermission型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。

代表的なブロックチェーンの種類

前述の分類に従い、頻出するブロックチェーンをマッピングしたものが次の図です。

企業向けの開発では中央集権によっているQuorum(Ethereumから派生)かHyperLedger Fabricを利用します。

ブロックチェーン(blockchain)とは何か?仕組みや特長をわかりやすく解説!

ブロックチェーンとは、分散型台帳とも呼ばれる新しいデータベースです。P2P通信やHash関数などの暗号技術を組み合わせることで、取引データ等の情報を改竄・喪失リスクをヘッジしながら複数のコンピュータに同期できることが特長です。過去5年間で市場を急拡大させた後、現在は、セキュリティ上の課題を抱えつつも、中国を始め、金融・非金融を問わず、あらゆる産業での応用、ビジネス活用が進んでいます。ブロックチェーン 技術は、IoTやAIと補完しながら、今後どこに向かうのか?徹底解説します。

目次

  1. ブロックチェーンとは?
  2. ブロックチェーンの仕組み
  3. ブロックチェーンの種類
  4. ブロックチェーンの市場規模
  5. ブロックチェーン技術の応用事例
  6. ブロックチェーンのビジネス活用
  7. 中国ブロックチェーンの動向
  8. ブロックチェーンの今後(AIとIoT)
  9. ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ各主体が共通の構造のデータを参照する
DB  それぞれのDBは独立して存在するそれぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ
共有
相互のデータを参照するには新規開発が必要共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンの基礎構造

ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています(下図)。

ブロックチェーン構造.jpg

「ブロック」とは、1MB分の「Tx(Transaction、トランザクション)」、つまり一定量に取りまとめられた取引データに、日付などのメタ情報を付与したものです。

身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。

一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。

これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。

具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています。

これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。

さらに、より細かく見れば、「公開鍵暗号方式」と呼ばれる方法によって、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられています。

(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)

公開鍵暗号方式とは、「暗号化と復号(暗号から元のデータに戻すこと)に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開できるようにした暗号方式」のことです。

ブロックチェーンでは、トランザクションデータの流出等のリスクを減らすために、取引データをトランザクション化する際に、この公開鍵暗号方式が利用されています。

出典:Udemyメディア

チェーン構造に加えて、この公開鍵暗号方式を採用していることで、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。

こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。

ブロックはどうやってつくられるか?

ブロックチェーンネットワークでは、世界中に散らばるノード(=ネットワーク参加者)によって新しくつくられたブロックが、ノード間で伝播することにより、リアルタイムでのデータ同時共有が実現されています。

ノードは、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、特定の条件を満たすことでブロックを生成することができます。

コンセンサスアルゴリズムとは、中央管理者が不在であるブロックチェーンにおいて「どのデータが正しいか?」を決めるための、不特定多数のノードによる合意方法のことです。

コンセンサスアルゴリズムは、ブロックチェーンプラットフォームの種類(後述)によって異なり、代表的なところでいえば、例えば、次のような種類があります。

  • ビットコイン:PoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)
  • イーサリアム:PoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)
  • ネム: PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)
  • リップル:PoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)

このうち、最も有名なPoWでは、次の2つの原理によって、データの正当性を担保しています。

  • PoWの原理①(1つ目の役割:ブロックの生成条件)=「ブロックのメタ情報に関する計算に成功するとブロックを生成できる」
  • PoWの原理②(2つ目の役割:フォークへの対応)=「複数のブロックが生成された場合、最も長いチェーンを正統とし、その中に含まれるブロックを正しいと認める」…”ナカモト・コンセンサス”

まず、1点目として、PoWでは、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(「Hash」「nonce」「Target」)を用いた計算作業をノードに課しています。

平たく言えば「ある条件を満たす数字を見つけましょう」という計算ですが、この問題を解くためには莫大なコンピュータの電気代がかかるため、簡単にはブロックをつくることはできません。

とはいえ、ビットコインでは、ブロックを無事に生成できると報酬として仮想通貨を手に入れることができるため、多くの人がブロックづくりに挑戦し、同時に複数のブロックが生まれてしまうこともあります(「フォーク」と呼ばれる事態)。

そこで、2点目として、PoWでは、複数のブロックが生まれた場合は、「最も長いチェーンに含まれるブロックが正しい」という基本原理を採用しています(ナカモト・コンセンサス)。

このように、ブロックチェーンネットワークでは、非中央集権的でありながらデータの正しさを担保するために、コンセンサスアルゴリズムに基づいたブロック生成が行われています。

P2P(Peer to Peer)通信

ブロックチェーンに利用されている最も代表的な関連技術が「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)通信」です。

P2Pとは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、従来のデータベースの「クライアントーサーバ型」と対比されます。

出典:平和テクノシステム

クライアントーサーバ型では、情報媒体間でデータの送受信を行う際に、データ共有を行う媒体間で直接通信せず、第三者媒体をサーバとして経由するため、どうしても中央管理者の存在が不可欠でした(Google ChromeやAWSをイメージするとわかりやすいでしょう)。

これに対して、P2Pでは、媒体間で直接やり取りを行うために、第三者のサーバを必要としません。

したがって、ブロックチェーンの最大の特徴でもある「非中央集権性」は、まさにこのP2Pによってもたらされたものと言えます。

なお、P2Pは、第三者を介さない個人間送金や、無料インターネット電話サービスの先駆けともいえるSkypeなどに用いられています。

Hash(ハッシュ値、ハッシュ関数)

ブロックチェーンの各ブロックには、データの対改竄性を高めるために、「Hash値」と呼ばれる値がメタ情報として埋め込まれています。

Hash値は、「Hash関数」と呼ばれる特殊な暗号化技術を通して作られます。

ブロックチェーンでは、一つ前のブロックをHash化したHash値を次のブロックに渡し、それを織り込んでブロックを作成します。

Hashは少しでも入力値が変わると全く異なる出力となるという特徴があります。

また、その他に出力値の長さが入力に関わらず一定であること、出力から入力を類推できないという特徴があります。

まとめると次のような特徴があり、ブロックチェーンのメリットにつながります。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの分類方法

ブロックチェーンは大別すると、パブリック型とコンソーシアム型/プライベート型の2種類に分けることができます。

ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。

パブリック型ブロックチェーンは、不特定の参加者により運営され、管理者が不在であるという特徴を持ちます。

他方、コンソーシアム型/プライベート型ブロックチェーンでは、参加者は一部の企業等に限定され、また、コンセンサスアルゴリズムによって許可された管理者がネットワークの管理にあたります。

ノードの参加者が限定されているコンソーシアム型/プライベート型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。

代表的なブロックチェーンの種類

前述の分類に従い、頻出するブロックチェーンをマッピングしたものが次の図です。

ブロックチェーンプラットフォーム例.jpg

ブロックチェーン黎明期における、主に金融領域での開発はBitcoinやEthereumといったパブリック型、つまり管理者が分散しているプラットフォームによって行われることがほとんどでした。

しかし、近年では、企業向けの開発では中央集権によっているQuorum(Ethereumから派生)かHyperLedger Fabricを利用することが増えています。

開発基盤としてのブロックチェーンプラットフォーム

ブロックチェーンを活用したプロダクト・サービスの開発には、開発の実装基盤となるプラットフォームが不可欠です。

ブロックチェーンのプラットフォームには、用途に合わせて数多くの種類があります。

代表的なブロックチェーンプラットフォームは、次の通りです。

プラットフォーム名誰向けか?用途例
Ethereum(イーサリアム)エンタープライズ向け(toC企業)トークン、ゲーム、etc
EOS(イオス)エンタープライズ向け(toC企業)ゲーム、etc
NEM(ネム)エンタープライズ向け(toC企業)ゲーム、etc
Ripple(リップル)エンタープライズ向け(銀行)銀行間送金(特化)
Corda(コルダ)エンタープライズ向け(toB企業)銀行間送金、企業間プラットフォーム、etc
Quorum(クオラム)エンタープライズ向け(toB企業)企業間プラットフォーム、etc
Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)エンタープライズ向け(toB企業)企業間プラットフォーム、etc
Bitcoin Core(ビットコインコア)個人向け個人間送金

上表のように、8つのプラットフォームを用途の観点から分類すると、大きく次の4つに分けることができます。

  1. toC企業向け:ゲームなどの開発に向いている
  2. toB企業向け:業界プラットフォームなどの開発に向いている
  3. 銀行向け:銀行間送金に特化している
  4. 個人向け:ちょっとした送金の手段として使われる

自身が推進するプロジェクトに向いているプラットフォームを把握し、その特性を理解しておくことは、開発者だけではなくビジネスサイドの担当者にとっても有益です。

👉参考記事:『ブロックチェーンのプラットフォームは用途で選ぼう!開発基盤の特徴を解説

ブロックチェーンの市場規模

経済産業省が「ブロックチェーンは将来的に国内67兆円の市場に影響を与える」との予測を発表してから5年が経過しました。

同予測によると、具体的には、大きく次の5つのテーマで、社会変革・ビジネスへの応用が進むとされています。

  1. 価値の流通・ポイント化・プラットフォームのインフラ化
  2. 権利証明行為の非中央集権化の実現
  3. 遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
  4. オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
  5. プロセス・取引の全自動化・効率化の実現
出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

事実、この5年間で、1はSTOなどのトークン活用、2は不動産領域における登記などの権利証明、3は医療プラットフォームや電子政府、4は国際海運における物流プラットフォーム、5はDEXに代表されるDAO(自律分散型組織)、といった具合に、既存の産業をDX(デジタルトランスフォーメーション)する形での市場拡大が進んできました。

その結果、ブロックチェーン技術の国内市場規模は、2020年で100〜200億円、2025年には1000億円を超え、関連市場を合わせると67兆円の潜在規模があるとされています。また、世界市場規模では2020年に36億7000万米ドルに達し、2021年から2028年にかけてCAGR82.4%の成長が見込まれています。

(👉参考記事:『【2021年】ブロックチェーンの市場規模は?複数の統計をまとめました』)

さらに、世界経済フォーラムによると、2025年までに世界のGDP総額の10%がブロックチェーン基盤上に乗るとされており、今後のさらなる技術発展とマーケット拡大、そして私たちの生活への浸透が期待されます。

ブロックチェーン技術の応用事例

2020年現在、ブロックチェーン技術で最も頻繁に応用されているのが、次の2つです。

  • トークン
  • スマートコントラクト

いずれも、フィンテックはもちろんのこと、非金融領域の産業応用に欠かせない技術と言えます。

トークン

トークンは、ビジネスの文脈上では「交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」といった意味で用いられる概念で、非中央集権的なブロックチェーンとセットでビジネス活用されます。

【トークンの種類】

区別のポイント

トークンの種類

意味

身近な例

トークン自体に金銭的価値が認められるか?

Utility Token


(ユーティリティトークン)

具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン

・パチンコ玉

・図書券

・電車やバスの切符

・遊園地の入場券

 

Security Token

(セキュリティトークン)

それ自体に金銭的価値が認められるトークン

・株券

・債権

トークンを相互に区別するか?

Fungible Token …(*)

(ファンジブルトークン)

メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン

・純金

(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)
 

Non Fungible Token

(ノンファンジブルトークン)

同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン

・土地

(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

例えば、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)やSTO(Security Token Offering、セキュリティ・トークン・オファリング)といった資金調達方法であったり、ファンコミュニティ専用の共通貨幣などに用いられています。

👉参考記事:『【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、Utility Token〜

スマートコントラクト

スマートコントラクトは、1994年にNick Szabo(ニック・スザボ)という法学者・暗号学者によって提唱され、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)がEtheruem基盤上で開発・提供し始めたコンピュータプロトコルで、「契約(コントラクト)の自動化」を意味しています。

自動販売機にも例えられるスマートコントラクトの技術を用いることで、「プロセス・取引の全自動化・効率化」を実現し、世の中の不便や非効率を無くしていくためのブロックチェーンの思想を社会実装していくことが期待されており、例えば、DEX(分散型取引所)や投票システムなどに利用されています。

👉参考記事:『スマートコントラクトとは?ブロックチェーンの社会実装手段を解説!

ブロックチェーンのビジネス活用

分散型台帳、トークン、スマートコントラクトといったブロックチェーンの諸側面は、実際のビジネス課題に合わせた様々なソリューションとして社会実装されています。

ビジネスソリューションとしてのブロックチェーンは、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に分けて考えることで、事業化に取り組みやすくなります。

第一の領域である金融領域は、暗号資産(仮想通貨)の利活用を目的としたビジネス領域です。

BTC(ビットコイン)やETH(イーサ)を始めとした暗号資産の取引市場や、ICOやSTOといった暗号資産やトークンを利用した派生市場での活用が行われています。

出典:pixabay

第二の領域である非金融領域は、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことです。

台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。

この領域の活用事例は、次のように多岐に渡っています。

  • 自律分散型図書館DAOLIB構想
  • 職歴証明のWorkday Credentials
  • 医療用品の寄付の追跡ポータル
  • Socios.com(サッカーファントークン)
  • 医療データプラットフォームのメディカルチェーン
  • 国連、難民・ホームレス等向けIDサービス

その結果、実は、前述の経済産業省によるブロックチェーン関連市場規模予測でも、全体67兆円のうち、いわゆる金融領域はわずか1兆円で、残りの66兆円は非金融領域に含まれるマーケットです。

【再掲】

出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

最後に、第三の領域であるハイブリッド領域は、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域で、乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。

いわゆる「トークンエコノミー」もこの領域に含んで考えるとわかりやすく、今後のブロックチェーン応用が期待されている領域です。

👉参考記事:『ブロックチェーンのビジネス活用は非金融がアツい!事業化3つの視点とは?

中国ブロックチェーンの動向

拡大を続けるブロックチェーン市場の中でも、ひときわ存在感を増しているのが中国です。

後にも触れるように、中国におけるブロックチェーンの研究開発や産業応用は、日本とはとても比べ物にならないほどのレベルで進んでいると言われています。

下図は、2020年時点でのブロックチェーンに関する特許市場におけるシェアを表しています。

このグラフからも明らかなように、世界全体のうちの実に7割を中国が占めており、2番手である米国の6倍近くあります。

日本が3%ほどしかないことを考えると、この特許市場のシェア、そしてその前提である特許出願数の多さは、中国マーケットの大きな特徴、強みの一つだと考えられます。

出典:BLOCK INSIGHT

こうした進展の背景として、中国では、官民を挙げてブロックチェーンの技術開発に取り組んでいます。

たとえば、2020年に、中国の国家ブロックチェーンインフラプロジェクト「BSN(Blockchain-Based Services Network)」が、イーサリアムやイオス、テゾスなどを含む6種類のパブリックブロックチェーンを統合することが判明しました。

また、中国建設銀行ブロックチェーンを活用した国際ファクタリング、中国農業銀行ブロックチェーンを活用した住宅ローン、中国工商銀行ブロックチェーンを活用したサプライチェーンファイナンスなど、大手企業各社による金融領域でのブロックチェーン活用が当たり前のように行われている他、ビットコインを支えるデータマイニングのほとんどは中国国内の工場で行われるなど、あらゆる面からブロックチェーンが社会に浸透しています。

さらに、中国では、金融領域での活用のみならず、非金融領域、例えば農作物の真贋判定(下図、天水リンゴのブランド判定)や公共事業における入札プラットフォームといった分野でのブロックチェーン活用も進められています。

出典:Blockchain Business & Solution

こうした動向は、政府や金融といった一部のセクターだけでなく、社会全体に広く技術が浸透している証左として捉えることができます。

中国は、日本と比べて既存システムが脆弱な場合が多く、その一方でスマートフォンの普及率が全年齢層で非常に高いといったギャップがあり、そうした社会状況が浸透を後押ししていると見る向きもあるでしょう。

しかし、そうしたことを割り引いて考えても、中国におけるブロックチェーンの普及度合いは日本よりも数年以上先を行っていると見る他ありません。

ブロックチェーンの今後を考える上で、中国の動向は、引き続き注視すべきでしょう。

👉参考記事:『中国のブロックチェーンを金融・非金融の軸で理解する〜デジタル人民元からBSNまで〜

ブロックチェーンの今後(AIとIoT)

ブロックチェーンの今後を考える上で外せないのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)という考え方と、その前提条件となるIoT、AIという2つの概念です。

DXとは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指し、ブロックチェーンの活用方法として最も期待されていることでもあります。

DXは、ビッグデータの活用を前提としています。

そして、IoT、ブロックチェーン、AIという3つの概念は、この「ビッグデータ活用を前提としたDX」というより大きな社会動向の要素として、下記のように相互に関連づけることができます。

  1. ビッグデータを集める → IoTによるハードウェア端末でのデータ収集
  2. ビッグデータを保存・管理する → ブロックチェーンによるデータベースの統合・管理
  3. ビッグデータを分析する → AI(機械学習)による大量情報の処理
  4. ビッグデータを活用する(社会実装する)

このように、今後のブロックチェーンは、ビッグデータを利用したDXというより大きな枠組みのもと、IoTやAIといった相互補完技術と協働しながら、これまで活用されてこなかった大量のデータを分析するためのデータ基盤として利用が進んでいくでしょう。

そして、その結果として、ブロックチェーンは、産業や社会全体の仕組みを大きく変え、効率化し、私たちの生活をより豊かにできる可能性を秘めています。

👉参考記事:『IoT、ブロックチェーン、AI。ビッグデータを活用したDXとは?

ブロックチェーンの課題

ブロックチェーンの未来の可能性を模索する中で、避けては通れない壁があります。

それは、ブロックチェーンの社会普及です。

上述したように、イノベーションとしてのブロックチェーンが本当に世界をより良く変えていくためには、社会のボリュームゾーンである「技術への未接触層」を巻き込み、彼ら彼女らの適切な理解と協力を得ていかなければなりません。

社会普及を実現するために、ブロックチェーンは主に、次の3つの課題を抱えています。

  • スケーラビリティ
  • ファイナリティ
  • セキュリティ

この中でも、特に重要かつ深刻なのが、スケーラビリティの問題です。

スケーラビリティとは、「トランザクションの処理量の拡張性」、つまり、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかの限界値のことを指します。

ブロックチェーンは、その仕組み上、従来のデータベースよりもスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。

一般に、スケーラビリティは「tps(transaction per second、1秒あたりのトランザクション処理量)」で定義することができますが、実際に、代表的なブロックチェーンネットワークは、次のように不十分なスケーラビリティだと言われています。

  • 一般的なクレジットカード:数万tps
  • ビットコイン(コンセンサスアルゴリズムがPoW):7tps
  • イーサリアム(コンセンサスアルゴリズムがPoS):15~20tps
  • コンソーシアム型のブロックチェーンネットワーク(コンセンサスアルゴリズムがPoA):数千tps

このように、ブロックチェーンは、オープンで分散的なデータベースとして期待を集めている一方で、ネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティが担保できなくなるという課題を抱えています。

この課題に対して、金融領域では、「ライトニングネットワーク(Lightning Network)」という新しい概念に注目が集まっています。

ライトニングネットワーク(英: Lightning Network)とは、少額決済(「マイクロペイメント」)等の小規模かつ多数回行われる取引の処理をブロックチェーン外で行い(「オフチェーン取引」)、最初と最後の取引だけをビットコインのブロックチェーンにブロードキャストして確定させる、ビットコインネットワークの新しい手法のことです。

ライトニングネットワークを活用することで、決済処理速度が2秒以内、毎秒100万件超の取引が可能なGO-NETというサービスが生まれるなど、今後の展開に期待がかけられています。

しかし、非金融領域での解決策は依然見えてはいません

こうした原理的な課題は、ブロックチェーンが社会基盤となれるかどうかを左右する、重要な論点だと言えるでしょう。

👉参考記事:『ブロックチェーンの3つの課題とは?〜スケーラビリティ、ファイナリティ、セキュリティ〜