「CBDC」国が発行するデジタル通貨 〜ブロックチェーン×中央銀行〜

近年「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)」に対する研究開発の動きが、世界中で活発化しています。これまでのデジタル通貨とCBDCの違い、そしてその基盤となる「ブロックチェーン」について解説していきます。

なお、中国のブロックチェーン技術についての全体像を学びたい方は、次の記事も併せてご覧ください。

→ 参考記事:『中国のブロックチェーンを金融・非金融の軸で理解する〜デジタル人民元からBSNまで〜』

  1. 国が「デジタル通貨」を発行する動きが活発に
  2. CBDCはデジタル通貨の一種
  3. CBDCが注目されはじめた背景
  4. CBDCのメリット
  5. CBDC導入の課題
  6. CBDCが注目されはじめた背景
  7. CBDCとブロックチェーン
  8. まとめ

国が「デジタル通貨」を発行する動きが活発に

2020年7月、日米欧の先進7カ国(G7)が「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)」の発行に向けて連携する方針を固めました。以来、日本を含む各国でCBDCの研究・実験が活発に行われるようになっています。

本記事では、一般的な「デジタル通貨」について改めて整理をした上で、「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)」が注目されはじめた背景を、その基盤となりうる技術「ブロックチェーン」とともに紐解いていきます。

CBDCはデジタル通貨の一種

中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)

「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)」は法定通貨をデジタル化したものです。私たちがよく知る電子マネーや暗号資産は、すべて民間企業が発行・管理を行っています。CBDCは、民間企業ではなく「国」が発行・管理を行うデジタル通貨をイメージすれば良いでしょう。

デジタル通貨とは

デジタル通貨とは、「現金(紙幣や硬貨など)」ではなく、「デジタルデータに変換された、通貨として利用可能なもの」を意味します。Suicaや楽天Edyといった電子マネーや、ビットコインなどの暗号資産といったものが、すべてデジタル通貨にあてはまります。今回取り上げる「中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)」もデジタル通貨の一種です。

出典:TIME&SPACE:『デジタル通貨』とは? 電子マネーや仮想通貨など言葉の定義や違いを解説

CBDCが注目されはじめた背景

CBDCの研究は、今や世界中で注目を集めています。しかしある国は、デジタル通貨に関する研究開発に、かねてより国を挙げて力を入れていました。それが中国です。

中国は、独自のCBDCである「デジタル人民元」をアフリカやアジアなどの新興国の市場に投入し、現地での影響力拡大を狙っています。日米欧の自由主義陣営は、米ドルを基軸通貨とする現市場が「デジタル人民元」に取って代わられることを恐れています。日米欧が腰を上げた背景には、こうした中国の動きへの対抗心がありました。

一方で、中国は「デジタル人民元」を、遅くとも2022年2月に開催される北京の冬季オリンピックまでに実用化する、と発表しています。さらに中国は、延べ40万人に対して総額約12億円以上ものデジタル人民元を配るという大規模な配布実験を、2020年10月から2021年にかけてすでに実施しています。

CBDCのメリット

CBDCを導入するメリットとして、以下6つが挙げられます。

  1. 現金の輸送・保管コストの低減
  2. ATMの維持・設置費用の低減
  3. 銀行口座を持たない人への決済サービスの提供
  4. 脱税やマネーロンダリングなどの捕捉・防止
  5. 民間決済業者の寡占化防止
  6. キャッシュレス決済における相互運用性の確保

国が行う施策ですので、全ての店舗で電子決済が可能となることでしょう。さらに、「国」は民間の銀行よりも破綻しにくく安心感もありますし、振込手続きも短時間かつ手数料無料で行うことが可能となります。

CBDC導入の課題

CBDCを導入するにあたり課題として主に挙げられるのが以下の3つです。

  1. 電子決済用のシステム・機器を各店舗に整備するコストがかかる
  2. クラッキングや偽造に対する最高レベルのセキュリティ強度が必要で、技術的なハードルが高い
  3. 電力の確保が難しい

CBDCとブロックチェーン

CBDCが世界規模で発行されるようになると、規模に関わらず非常に多くの経済圏が誕生するようになると予想されます。そしてそれらの経済圏をシームレスに繋ぐためには、通貨のインターオペラビリティ(相互互換性)が重要になると思われます。また、セキュリティ上の課題も多く挙げられることでしょう。そこで欠かせない技術がブロックチェーンです。
👉参考記事:『「インターオペラビリティ」〜ブロックチェーン同士を接続する新たな技術〜

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。より詳しい内容に関しては、下記参考記事をご覧ください。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

まとめ

本記事でも紹介したようにCBDCは、世界中の中央銀行が研究を進める重要なテーマとなっています。キャッシュレス化が進む国ではCBDC導入に向けた取り組みが進められており、一部の国ではすでに実証実験を終えています。

そして、なんといっても本分野をリードする中国の動向からは目が離せません。中国は来年2022年には「デジタル人民元」を実用可能にすると発表しています。

これから起こるであろうデジタル通貨のさらなる普及によって、これまでのお金の価値観は、確実に変わっていくでしょう。

「Web 3.0」〜ブロックチェーンが紡ぐ新しいWebの世界〜

新しい時代のWeb──「Web3.0」という概念が近年注目を浴びています。これまでのWebの歴史を振り返ったうえで、「Web3.0」とその基盤にある「ブロックチェーン」によって何が実現できるのかを解説します。

  1. Webの進化の歴史
  2. Web3.0とは?
  3. まとめ

Webの進化の歴史

Web3.0の解説をするにあたり、これまでのWebがどのようにして進歩してきたかを、以下の3つの時代に分けて解説します。

  • Web1.0:1995年~(ホームページ時代)
  • Web2.0:2005年~(SNS時代)
  • Web3.0:これから(ブロックチェーン時代)

ただし、Web1.0/Web2.0/Web3.0の定義には明確な線引きはなく、曖昧な部分がある点にご注意ください。

Web1.0(ホームページ時代)

Web1.0時代は、Yahoo!やGoogle、MSNサーチなどが登場し始めた時期で、Webがまだ一方通行であった時代です。ウェブデザイナーのDarci DiNucci氏が1999年に、進化の段階を区別するためにWeb1.0とWeb2.0という呼び方を用いました。

出典:pixabay

ウェブサイトは1990年代初めに、静的HTMLのページを利用して作られました。また、個人が「ホームページ」を持ち情報を発信する、という文化もこの時代から生まれました。ただし、インターネットの接続速度も非常に低速であり、画像を1枚表示するだけでも時間がかかりました。

また、閲覧できる情報は情報作成者によってのみ管理されるため、閲覧ユーザーがデータを編集することはできません。こうした特徴から、web1.0は「一方向性の時代」とも呼ばれます。

Web2.0(SNS時代)

Web2.0時代になると、YouTube、Twitter、Instagramが登場し、誰もが発信者となりました。Web1.0時代が「一方向性の時代」とされたのに対し、Web2.0時代は様々な人との双方向の情報のやり取りができるようになったのです。

出典:pixabay

SNSによって誰もがWeb上で簡単に情報を発信できるようになり、Webは閲覧するだけのものではなく、自らが参加できるものとなりました。

また、いわゆるGAFAと呼ばれるプラットフォーム企業が大きく躍進した時代でもあります。

Web2.0の問題点

Webが多くの人々に馴染みのあるものとなったWeb2.0時代ですが、それと同時に問題点も浮き彫りになってきました。それが次の2つです。

  • 特定企業への個人情報の集中(プライバシー問題)
  • 中央集権型によるリスク(セキュリティ問題)

特定企業への個人情報の集中(プライバシー問題)

1つ目の特定企業に個人情報が集中する問題は、個人のプライバシー侵害の可能性が問題視されています。

現在、Google、Amazon、Facebook、AppleといったGAFAを筆頭に一部の大企業には、あらゆる情報が集まっています。これには、住所や年齢、性別など基本的な個人情報だけでなく、個人の嗜好や行動履歴までもが含まれます。

これらの企業は世界的に利用されているサービスを展開しているため、世界中のあらゆる個人情報が独占的に集められる状態になっているのです。プライバシーの観点からこの現状を問題視する声も多く、個人のプライバシーをどう守るかは重要な課題のひとつとなっています。

中央集権型によるリスク(セキュリティ問題)

2つ目の問題点として、中央集権型はサイバー攻撃を受けやすく、多くのユーザーに影響を及ぼす危険性があるという点が挙げられます。例えば2018年、GAFAの一角である大手SNS「Facebook」は5000万人超のユーザー情報を外部に流出してしまいました。

現在、ユーザーの個人情報はサーバーで集中管理されています。このサーバー・クライアント方式は一般的な管理方法ではありますが、サイバー攻撃を受けやすく、個人情報の流出や不正アクセス、データの改ざん、Webサイト/Webサービスが利用できなくなる、などのリスクがあります。

プライバシー問題とセキュリティ問題、この2つはWeb2.0の問題点です。

Web3.0とは?

web2.0が抱える問題は現在でも解決されておらず、さまざまな分野で生じるデータの不正利用問題の原因にもなっています。

出典:pixabay

web3.0は、「web2.0のデータ独占・改ざんの問題を解決する概念」として構想されています。その中核として大きなウエイトを占めているのが、「ブロックチェーン技術」です。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。より詳しい内容に関しては、下記参考記事をご覧ください。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

Web3.0がWeb2.0の問題点を解決する

ブロックチェーン技術により、情報管理のスタイルが非中央集権型となります。つまり、個人情報は特定の企業ではなく、ブロックチェーンに参加したユーザーによって分散管理されます。また、サービスを提供する基盤は特定企業に限定されず、ユーザー一人ひとりが参加するネットワークがサービスを提供する基盤となるのです。

出典:pixabay

ユーザー同士が、ネットワーク上で互いのデータをチェックし合うということは、不正アクセスやデータの改ざんが非常に難しいことを意味します。特定企業が個人情報を握ることもなければ、情報漏洩によって多大な被害を被ることもありません。

WEB3.0の概念が実現すれば、個人情報が分散管理され非中央集権型となり、不正アクセスや情報漏えい、データ改ざんのリスクが軽減し、Web2.0の問題点が解決できると考えられています。

まとめ

Web3.0時代を迎えることで、特定企業が個人情報を管理する時代が終わりを迎えるといわれます。ブロックチェーン技術によって新たなWebの世界が訪れるのです。

国や人種を越えたボーダーレスな世界を生むともいわれるWeb3.0。私たちの暮らしがどのように変化するのか楽しみに待ちましょう。

ステーブルコイン〜ブロックチェーン時代で急成長する新たな暗号資産〜

近年、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった従来の仮想通貨に加え、より安定した「ステーブルコイン」と呼ばれる新たな暗号資産が注目を集めています。ステーブルコインとは一体どういったものか?誕生の背景と、ステーブルコイン実現の基盤となるブロックチェーン技術について解説し、その将来性について考察していきます。

  1. ステーブルコインとは?
  2. ステーブルコインが注目される理由
  3. ステーブルコインの課題と将来性

ステーブルコインとは?

ステーブルコインとは、価格変動が少なくなるよう設計された仮想通貨の総称です。
言葉の意味から紐解くと、下記の意味です。

  • ステーブル(Stable):安定した、変動のない
  • コイン(Coin):仮想通貨

ビジネスで利用する通貨には、価格が安定していることが必要です。通貨の価格が大きく変動すると、価格設定を頻繁に更新しなればなりません。また、保有する通貨の価格変動リスクについても考慮し続ける必要があります。

出典:bittimes

ステーブルコインは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のようなボラティリティ(価格変動)の高い仮想通貨とは異なり、基本的には価格が安定しています。それゆえ、デジタル世界における新たな基軸通貨としての普及が期待されています。

ステーブルコインにはいくつかの種類があり、最も人気のある「テザー(USDT)」を始め、これまでに世界中で多くのステーブルコインが発行されてきました。

「紙幣や硬貨というアナログな貨幣」に代わる「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」という概念が注目を集めつつある中で、昨今はステーブルコインへの関心も急速に高まってきています。

ステーブルコインが注目される理由

ステーブルコイン誕生の背景

仮想通貨の元祖であるビットコインは、デジタル世界における基軸通貨となるべく2009年に誕生しました。しかし、結果的にそのボラティリティの大きさから、基軸通貨としての信頼を完全に得るまでには至っていません。

出典:pixabay

ビットコインに限らずこれまでの仮想通貨は全般的にボラティリティが大きく、「仮想通貨」は現時点では従来の通貨のように使うのは難しいという状況にあります。

そこで、ブロックチェーン上で既存の通貨や資産を担保として、より安定した暗号資産を発行する取り組みが立ち上がりました。こうして、価格が安定している仮想通貨「ステーブルコイン」が誕生したのです。

次項では、ステーブルコイン誕生の基盤となった「ブロックチェーン」技術についても少し触れておきます。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ステーブルコインのメリット

ステーブルコインのメリットは、これまでもご紹介してきたように「価格が安定していること」です。価格の暴落リスクに晒されないという点と、ボーダレスかつ低い手数料でのデジタル決済・送金が実現できる点を踏まえ、「国境を超えた法定通貨としての機能」も期待されています。

2021年5月現在、ステーブルコインの主な利用目的は、単なる安全資産としての保有、もしくは仮想通貨暴落時に対する投資資金の一時的な避難先(利確先)といった仮想通貨トレードでの利用が一般的です。しかし、その安定性と汎用性の高さから、将来的にはブロックチェーン上の経済圏全体の主要な価値交換手段となる可能性があります。

ステーブルコインの課題と将来性

出典:pixabay

ステーブルコインは、デジタル世界における基軸通貨としての普及が期待されていますが、規制が不明確な点が課題の一つとして挙げられています。

世界的にもステーブルコインに対する法規制の備が追いついていないのが現状で、法整備に先立ちステーブルコインの概念の導入が進んできたため、規制の如何によってはステーブルコイン市場そのものの動向が変わる可能性もあります。

一方で、当然ながらステーブルコインは大きな将来性を秘めていることも間違いないと言えます。先述したように、「国境を超えた法定通貨としての機能」や、自国の通貨を信用できない人々の資産の逃げ先としての役割、仮想通貨の抱える課題を解決する役割など、その必要性は既に十分認知されつつあります。

法定通貨とも従来の仮想通貨とも異なる、新たな暗号資産「ステーブルコイン」。各国の法規制の整備を含め、今後の動向には絶えず注意を払っておきたいところです。

〜ブロックチェーン基礎知識〜「マイニング」

今回は暗号資産に触れるにあたって最も基礎的な知識のひとつ、「マイニング」について解説していきます。また、「マイニング」を理解する上で避けては通れないのが「ブロックチェーン技術」についてです。そこで、本記事では初心者向けに「マイニング」と「ブロックチェーン技術」の基礎知識をご説明します。

  1. マイニング=「暗号資産の採掘」
  2. 「発行」に関する暗号資産と現金の違い
  3. ブロックチェーンとは
  4. 「承認」×「コイン発行」の連続=ブロックチェーン
  5. まとめ

マイニング=「暗号資産の採掘」

「マイニング」とは、「ブロックチェーン上で難しい問題を解くこと(承認作業)により、その報酬として新規発行したコインを得ること」を意味します。これは、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産で採用されている、コイン獲得方法です。

「マイニング」の元々の言葉の意味は「採掘」、つまり金や石炭などの鉱石を掘り起こすことを言います。そして、それらの鉱石の地球上に存在している量はあらかじめ決まっていて、所有者はもちろん鉱石を掘り当てた本人となります。

出典:pixabay

冒頭でも述べたとおり、暗号資産の分野で「マイニング」というと、「新規発行したコインを得る(掘り当てる)こと」となります。コインを掘り当てる?というとまだまだイメージが沸きにくいかもしれません。そこで、暗号資産にとって「コインを新規発行する」とは一体どういうことなのかを紐解いていきます。

「発行」に関する暗号資産と現金の違い

中央集権型の「現金」の場合

暗号資産の分野での「コインの発行」を解説する前に、私たちにとって最も身近な法定通貨、つまりいわゆる「現金」=日本円の場合はどうなのかを例に見てみましょう。

日本円の発行は、お札の場合は日本銀行が行っており、印刷する枚数は政府が管理しています。日本に限らず世界中の多くの国では、現金の発行量は国や政府などの中央機関が管理しています。つまり、多くの現金は「中央集権型」の管理システムをとっています。

出典:pixabay

また、現金に関する中央集権型の管理システムは、発行だけでなく送金といったお金のやり取りの場合も同様です。例えば、みなさんが手元の現金を誰かに送るとき、現金そのものを郵送するのではなく、銀行ATMを利用して送金するはずです。

このATMも、銀行という中央機関が管理している「中央集権型」の送金システムです。金額、宛先、時刻といった取引履歴は全て、ATMを運用する銀行のサーバーで一元管理をされています。


「暗号資産(コイン)」のほとんどは非中央集権

一方、暗号資産はシステムの中央管理者がおらず、コインの発行は全てプログラムによって自動で行われています。こうした管理手法を「非中央集権型」と言います。現金の中央集権型に対し、暗号資産は「非中央集権型」の管理システムを採用しているのが両者の大きな違いです。

上記の通り、送金、発行する際のセキュリティを担保してくれる中央管理者が暗号資産には存在しません。それでは、暗号資産の管理はどのようにして安全に行われるのでしょうか?それを可能とするのが「ブロックチェーン技術」です。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。ブロックチェーンに関して、より詳しい内容を知りたい方は、下記参考記事をご覧いただければと思います。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

「承認」×「コイン発行」の連続=ブロックチェーン

暗号資産の送金には承認作業が必要

先述したように、日本円などの現金の送金は、ATMを管理する銀行によって承認されます。しかし中央管理者がいない暗号資産の取引は、第三者であるマイナー(=マイニングする人)がその役割を担います。

例えば、AさんがBさんにビットコインを送った際に、「AさんがBさんにビットコインを送金した」というデータが本当に正しいかどうかを、世界中のマイナー達が確認します。その確認作業は膨大な計算を必要とする大変難しいもので、高性能のコンピューターを必要とします。

「コイン発行」は承認作業に対する対価

暗号資産の取引を承認することは難しい作業であるため、最初に承認を行った人には対価としてコインが支払われる仕組みとなっています。

出典:pixabay

このコインの新規発行を、鉱石の採掘になぞらえて「マイニング」(=「採掘」)と呼んでいるわけです。

ブロックチェーンの成立

第三者が、AさんとBさんの暗号資産取引を承認し、その対価としてコインを受け取る。この一連の作業が「マイニング」であり、そして「マイニング」により取引記録(トランザクション)が連続することにより「ブロックチェーン」は成立します。

まとめ

本記事では、暗号資産分野における「マイニング」と、その基盤となる「ブロックチェーン」について解説しました。

暗号資産分野は「非中央集権型」で、コインを管理・発行する特定の組織が存在しないため、マイニングによってそれらを担っています。このようにして「取引履歴のネットワークが維持」されることと、「新たなコインを発行する」仕組みが同時になりたっていることが、暗号資産の特徴のひとつです。

ブロックチェーン×ハラル認証〜偽装ハラル問題への対抗策〜

イスラム教の戒律に則って調理・製造された製品であることを示す「ハラル認証」。近年相次ぐ「偽装ハラル」への対抗策として注目される、ブロックチェーン技術について解説します!

  1. 近年増加する偽装ハラル問題
  2. 「ハラル認証」=「ハラルであることの保証」
  3. ハラール認証におけるブロックチェーン技術の役割

近年増加する偽装ハラル問題

イスラム教信者にとっての偽装ハラル

2021年現在、ハラル(イスラム教の戒律を満たした)の認証を受けていない製品に関する詐称問題が相次いでいます。豚肉を牛肉の血の中に浸した「偽装牛肉」が出回っているというニュースは、イスラム教信者たちに大きな衝撃を与えました。

豚肉を口にすることは、イスラム教の戒律上認められていません。それらを提供することは、口にした本人のみならず宗教を侮辱することにもなりかねず、一企業・一個人の対応だけでは済まなくなる可能性もあるのです。

「宗教上食べてはいけないものがある」という感覚は、我々日本人には馴染みが薄いかもしれません。しかし、世界でハラル製品を使っている人口は約19億人と想定されます。つまり、世界の人口の4分の1近くの人々にとっては大きな問題となりうるということです。

偽装ハラルに対抗する新たなテクノロジー

こういった偽装ハラル問題解決に向けて、ある新たな技術が注目されるようになりました。近年、ブランド製品の真贋証明(しんがんしょうめい)などで利用されている「ブロックチェーン技術」です。

本記事では、今回の偽装問題の背景にある「ハラル」について解説した上で、問題解決のためのブロックチェーン技術の利用をご紹介します。

「ハラル認証」=「ハラルであることの保証」

ハラルとは

イスラムの教えで「許されている」という意味のアラビア語がハラル【アラビア語: حلال Halāl 】です。

ハラルの対象には、「物」(食べ物・飲み物・化粧品)だけではなく「事」(約束・契約・仕事)も含まれます。

逆に、イスラムの教えで禁じられているものの代表例が、豚肉、アルコールです。

ハラル認証の必要性

「ハラル認証」とは、イスラム教の戒律に則って調理・製造された製品であることを示すシステムです。

出典: Japanese Heart

食品加工技術や流通が発達するにつれ、一般的なイスラム教信者の消費者には、目の前の商品がハラルなのかそうでないのかの判別が必要となりました。

そこで宗教と食品科学の2つの面から、その商品がハラルであることを認証機関が保証する「ハラル認証」が誕生しました。

ハラル認証の現状

ハラル認証制度には「農場からフォークまで」の考え方があります。

つまり原料から流通・製造を通じて消費者が消費する瞬間までハラルであるべきと考えられています。

2021年5月現在、ハラル認証機関は世界に300以上あると言われています。しかし、世界的な統一基準がないので、その判断基準や指導内容は認証機関や団体によって異なります。

ハラル認証導入における課題

ハラル認証は、本来であれば世界的な統一基準により判断されるべき制度です。しかし、サプライチェーン上のすべての利害関係者が、それぞれ異なるプロセスやシステムを利用しており、また手作業の部分や人的資源に頼っている部分が非常に多いのが実情です。

  1. ハラール認証システムの非統一性
  2. ハラール製品情報の不正確性
  3. 原材料に対する厳格な管理意識の欠如

上記のような問題点の根本にあるのは、「サプライチェーン全体をまとめる統一プラットフォームが不足している」ということです。

この課題を解決するために近年注目を集めているのが、冒頭でも触れた「ブロックチェーン技術」です。

ハラール認証におけるブロックチェーン技術の役割

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ハラル認証へのブロックチェーン技術の利用

ブロックチェーンを使用することにより「サプライチェーン全体をまとめる統一プラットフォーム」が実現します。

統一プラットフォームの導入により、様々な製品の出所を追跡できるようになります(「トレーサビリティ」の実現)。そのため、仮に製品が偽造されたとしても、もともとの生産地や生産状態を追跡していけば認証が取れるようになります。

このことにより、消費者は購入したハラル製品についての加工から提供までの情報を簡単に調べることが可能となるのです。

👉参考記事:『ブロックチェーンのトレーサビリティへの応用〜食品・物流・偽造品対策〜

ブロックチェーン技術のハラル認証への利用は、食品偽装防止に留まりません。医薬品、化粧品、ムスリムファッションの分野でもブロックチェーン技術の重要性が認知されつつあります。

ハラル商品全般に対して同テクノロジーを適用すれば、ハラルの市場認知度を食品業界の他の認証(例えば有機など)に匹敵するよう高めることができます。

冒頭にも述べたように、ハラル製品の市場規模は約19億人、世界の人口の4分の1近くにものぼります。ブロックチェーン技術は偽装防止の枠を超え、ハラル市場の様々なコンプライアンスに革命的な進化を与えるでしょう。

「インターオペラビリティ」〜ブロックチェーン同士を接続する新たな技術〜

近年、ブロックチェーン技術に関して「インターオペラビリティ」という言葉を目にする機会が増えてきました。ブロックチェーンが持つ現状の課題と、「インターオペラビリティ」によって何が実現するのかを解説していきます!

  1. はじめに
  2. ブロックチェーンの相互運用性に関する課題
  3. インターオペラビリティ=相互運用性
  4. まとめ

はじめに

2009年にビットコインが運用開始されて以来、イーサリアム、イオスなど、様々なブロックチェーンプラットフォームが誕生しました。

それに伴い、暗号資産などの金融領域だけではなく、非金融領域においてもブロックチェーン技術が多方面で応用され始めています。

特に近年では、物流や貿易などサプライチェーン・マネージメントにおけるトレーサビリティシステムへの活用など、ブロックチェーンに関する実証実験や実装が急速に進んでいます。

👉参考記事:『ブロックチェーンのトレーサビリティへの応用〜食品・物流・偽造品対策〜

出典:ferret

しかし、そうした形でブロックチェーン利用の可能性が広がる一方で、ブロックチェーン技術自体に関わる根本的な課題も浮かび上がってきています。それは、異なるブロックチェーン間のデータのやり取りが困難(相互運用性がない状態)であるということです。

本記事では、現状のブロックチェーンの相互運用性に関する課題を明らかにした上で、その解決策となりうる「インターオペラビリティ(=相互運用性)」技術について解説します。

ブロックチェーンの相互運用性に関する課題

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

異なるブロックチェーン間に相互運用性はない

ブロックチェーン技術には、ビットコインやイーサリアムなど複数の種類の基盤があります。同じ種類のブロックチェーン間のデータのやりとり、例えばイーサリアムのウォレット(仮想通貨取引を行うための口座)から別のイーサリアムウォレットに対しては、手軽に送金をすることができます。

しかし、イーサリアムをビットコインのウォレットに送ることはできません。なぜなら、各ブロックチェーンネットワークは異なるルール・仕様に基づいており、それぞれに互換性がない状態となっているからです。そのため、ビットコインをイーサリアムに変換しようとすると、取引所で取引する必要がありました。

「互換性がない」とは、どういう状態を指すのでしょうか?

例えば、私たちが日常で利用している銀行では、異なる銀行間でのサービスの互換性が担保されています。

具体的には、私たちは三井住友銀行の口座から三菱UFJの口座へと送金できる、といった具合です。

しかし、こうした互換性がなくり、三井住友銀行に預けたお金は三井住友銀行内でしか使えない、となると大変不便です。

これと近しいことがブロックチェーン間の課題として挙げられているのです。

この「互換性の無さ」がブロックチェーン技術発展の妨げとならぬよう、異なるブロックチェーン同士を繋ぐことができるようにする仕組みが研究・開発されています。

それが「インターオペラビリティ」と呼ばれる技術です。

インターオペラビリティ=相互運用性

インターオペラビリティとは?

インターオペラビリティは日本語で”相互運用性”と訳されます。

ブロックチェーン関連の文脈では、ビットコインやイーサリアムなど、”無数の様々なブロックチェーン同士を相互に運用可能とするための技術”のことを指します。

インターオペラビリティによって可能になること

インターオペラビリティによってシステム同士が連携できるようになると、異なるブロックチェーン同士でも送金やデータのやり取り、コミュニケーションが可能となります。例えば、イーサリアムをビットコインのウォレットに送ることができるのです。

ユーザー側からはシステム特性に依存しないシームレスな取引や処理が実行され、不必要な手間や不自由さのない世界が実現可能となります。

非常に革新的な技術であり、ブロックチェーンが社会へより普及するためには必須の技術であると言えるでしょう。

2021年5月現在、様々なプロジェクトがこうした異なるチェーン間における価値の移動、コミュニケーション手段の確立・実現に向けて開発を行っています。

インターオペラビリティの実現を目指す、ポルカドット(Polkadot)

こうしたプロジェクトの中でも特に期待を集めているのがポルカドット(Polkadot)です。

ポルカドット(Polkadot)は、イーサリアムの共同創業者であるGavin Woodらによって2016年に立ち上げられました。ブロックチェーン技術によって実現する分散型ネットワーク=「Web3.0」を実現するプロジェクトとして位置づけられます。

以下がWeb1.0〜3.0の推移のイメージです。

  • Web1.0:1995年~2005年(ホームページ時代)
  • Web2.0:2005年~2018年(SNS時代)
  • Web3.0:2018年~(ブロックチェーン時代)
    出典:CREATIVE VILLAGE

「Web3.0」実現の基盤となる技術としてブロックチェーンは位置づけられています。そして、ブロックチェーンが基盤として正しく機能するために、インターオペラビリティの課題解決に向けての研究開発が続けられています。

まとめ

本ページでは、ブロックチェーン同士を接続する新たな技術=「インターオペラビリティ」について解説してきました。

これまでのブロックチェーンを活用したシステムは、目的に応じて個別最適で作られてきました。インターオペラビリティ技術によってこれら個々のシステムをつなげることで、ブロックチェーンは新たな社会インフラ技術になる可能性も持っています。

今後、ブロックチェーン間を接続するインターオペラビリティ技術の重要性がさらに増してくることでしょう。

PayPalが暗号資産へ参入!ブロックチェーン×暗号資産決済の未来は?

2021年3月、決済大手のPayPalが暗号資産による決済に対応しました。その背景にある「ブロックチェーン」技術と、消費者にとってのメリット・デメリットについて解説します!

  1. PayPalの参入で暗号資産決済が本格的な幕開けを迎える?
  2. 暗号資産決済のメリット・デメリット
  3. ブロックチェーン×暗号資産決済
  4. PayPalの展望

PayPalの参入で暗号資産決済が本格的な幕開けを迎える?

PayPalでの決済に暗号資産が使えるように!

米決済大手PayPalが、暗号資産(仮想通貨)市場への参入計画を発表したのは、2020年10月のことです。

同社は世界で3億4600万件ものアクティブユーザー(アカウント)を抱えることから、当時、市場は大いに盛り上がりました。

そしてついに2021年3月30日、「PayPalが、PayPalウォレットを通した暗号資産によるオンライン決済に対応した」とロイターが報じました。

ビットコイン・イーサリアムといった暗号資産(仮想通貨)で気軽に買い物ができる時代が、いよいよ本格的な幕開けを迎えるのでしょうか?

PayPalの今後

ロイターによると、世界中の数百万ものオンラインショップにて、PayPalウォレットを通して以下4種の暗号資産による支払いが可能になるとのことです。

・ビットコイン(BTC)
・イーサリアム(ETH)
・ライトコイン(LTC)
・ビットコインキャッシュ(BCH)

暗号資産による決済手数料は徴収せず、1度の購入に際しては1種類の暗号資産のみ使用可能です。また、消費者による暗号資産決済の場合でも、ショップ側は法定通貨で受け取る(=PayPal内部で換金する)ことができ、今後数ヶ月以内に2900万の加盟店全てで利用できることを目指すとしています。


出典:pixabay

PayPalのCEOであるDan Schulman氏は次のように述べています。

「PayPalウォレット内で、クレジットカードやデビットカードと同じように暗号資産をシームレスに使用できるのは今回が初めてです。私たちは、暗号資産が購入や保有、販売の対象となる資産クラスから、現実世界の何百万ものショップと取引を行うための合法的な資金源となるための重要なターニングポイントになると考えています。」

PayPalは、2020年10月に暗号資産市場への本格的な参入を発表して以降、市場の盛り上がりを牽引してきました。現在は米国内でのサービスにとどまりますが、年内にイギリスへの展開を予定しており、また決済サービスVenmoにも暗号資産事業を拡大する予定です。

暗号資産決済のメリット・デメリット

そもそも暗号資産で決済することのメリット・デメリットは何でしょうか?消費者目線で検証してみましょう。

メリット

「世界中どこでもストレスフリーのキャッシュレス決済が可能」

現在は海外に旅行や出張に行く際、日本円と現地通貨を交換したり、クレジットカードで外貨決済を行ったりする必要があります。ですが、両替には決して安くない手数料が発生するうえ、手間もかかります。
また海外ECでの買い物の際には、クレジットカード決済を行う場合は外貨建てとなり、カード会社所定の為替手数料が発生してしまうのが現状です。


出典:pixabay

一方で、ビットコインなどの暗号資産であれば基本的に世界共通です。そのため、決済のためにわざわざ現地通貨に交換することなく、日本で入手した暗号資産をそのまま世界中で利用することができ、為替手数料などは発生しません。オンライン決済においても同様です。

デメリット

「価格変動が激しく、確定申告が必要」

暗号資産の価格変動は激しく、保有しているだけで大きく対日本円価値が上下します。そのため、日常の決済手段としては家計の管理が難しくなってしまいます。

また日本国民は、暗号資産の売買によって生じた為替差損益の確定申告が必要になります。


出典:pixabay

決済に用いた時点で原則として確定申告の対象になってしまうため、損益の計算や確定申告を行う手間が発生することになってしまいます。この手間を考えると、日本の一般消費者にとっては暗号資産決済は少しハードルが高いかもしれません。

ブロックチェーン×暗号資産決済


暗号資産決済を可能にした「ブロックチェーン」という技術

今回のPayPalの暗号資産決済への対応の背景には「ブロックチェーン」というデータ管理技術の存在があります。

ブロックチェーンの技術は、暗号資産のみならず、例えば管理者不在のデータプラットフォームや第三者を介さない不動産取引など、既存の経済体制のあり方を変革するような方向性で、ビジネス活用される傾向にあります。

この「ブロックチェーン」に関して、もう少し深堀りしてみましょう。

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されています。

👉参考記事:『ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

ブロックチェーン×暗号資産決済の普及事例は?


ビックカメラ

画像出典:COIN OTAKU

日本最大の仮想通貨・ブロックチェーン企業であるbitFlyerのシステムを使用し、2017年4月に一部店舗でビットコインによる決済サービスを試験的に導入。想定よりも利用が多かったことから、その後ビックカメラ全店舗へ順次拡大した。

マスターカード(Mastercard)

画像出典:coindesk JAPAN

2021年2月マスターカード(Mastercard)は、加盟店が客の暗号資産での決済を行える機能を2021年後半に提供すると、発表しました。現時点ではどの暗号通貨を取り扱うかは発表されていません。これについては、コンプライアンス対策などの要件を今後検討するとしています。

PayPalの展望

今回は、決済大手PayPalが決済方法として「暗号資産」を導入した話題をご紹介しました。

PayPalを皮切りに、マスターカードやVisaなど、決済プラットフォーム大手の暗号資産事業への注力が著しい状況が続いています。

さらにPayPalは2021年5月、ステーブルコイン(=より安定した価格を実現するように設計された暗号資産)への対応を進める計画を進めていることが分かっています。

PayPal含め、決済業界は今後さらに暗号資産に関する取り組みを加速していくことでしょう。

ブロックチェーン技術が真贋証明に応用できるワケ〜LVMH、集英社など事例多数〜

 2021年4月現在、ブロックチェーン技術の真贋証明への応用が注目されています。偽造品被害が増加する中、製造業を中心としたサプライチェーンマネジメントの一環として行われる真贋証明。そのメリットを、各社が行うトレーサビリティ担保に向けた取り組み事例と共に説明します!

  1. 今、「ブロックチェーン×真贋証明」が注目されている!
  2. 偽造品対策としての真贋証明
  3. ブロックチェーンが真贋証明にはたす役割
  4. ブロックチェーンを用いた真贋証明の取り組み事例

今、「ブロックチェーン×真贋証明」が注目されている!

2021年現在、製造業や小売業、あるいはアートなど、ブロックチェーン技術を真贋証明(しんがんしょうめい)に応用する動きが多方面の業界で見られています。

例えば、LVMH (ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)は、ConsenSys、Microsoftとの共同で、イーサリアムベースの「AURA(オーラ)」と呼ばれるブロックチェーンプラットフォームによる、高級ブランド品の真正品証明を発表しました。

出典:Pixaboy

LVMHは、ルイ・ヴィトン、クリスチャンディオール、タグ・ホイヤー、モエ・エ・シャンドンなど75もの高級ブランドを有する巨大グループで、かつてより悩まされていた偽造品の撲滅に向けて15億円以上の費用を投入していると言われています。

その中心的な取り組みである「AURA」では、同社のサプライチェーン(原材料の調達から店頭に並ぶまでの一連の商流)上で、商品に関する多様な情報が複製不可能な状態でブロックチェーン基盤上に記録されます。

そして、消費者は、ブランドのアプリを使ってそれらの情報を含むQRコードを読み取ることで、その商品が「本物のルイヴィトンかどうか」を確認することができます。

この仕組みにより、消費者が安心して商品を買うことができるだけでなく、LVMHは、自社のブランドを保護することができるのです。

また、「山寨死(Shānzhài sǐ)」と呼ばれる偽造品の社会問題が起きている中国では、例えば、農作物の真贋証明にもブロックチェーンが活用されています(下図、「天水リンゴ」のブランド判定)。

出典:Blockchain Business & Solution

元々、ブランド力のあるリンゴとして有名だった天水リンゴですが、近年、天水リンゴの名前を語った偽物が市場に出回り被害を受けてしまっていたことを受け、ブロックチェーンを活用した対策に乗り出しました。

天水リンゴでは、上図のように、リンゴにQRコードのフィルムを貼り付けて日焼けさせることで、自社ブランドの真贋判定を可能にしています。

本記事では、こうした事例に見られる「ブロックチェーン×真贋証明」をテーマに、偽造品被害の実態やブロックチェーン技術、具体的な事例などをご紹介します。

偽造品対策としての真贋証明

真贋証明とは?

真贋証明(または真贋判定)とは、「ある商品が本物かどうかを判断する」ための方法です。

例えば、iPhoneの裏面には、販売元であるApple社のロゴであるりんごマークが記されています。

このマークを確認することで、消費者は、そのスマートフォンがApple社の正規品であることを確かめることができます(後で説明するように、本当のところは、ロゴマークだけでは証明にはならないのが実情ですが・・・)。

真贋証明の仕組みを整えることには、①企業にとってのブランド保護、②消費者にとっての安全性・安心感の担保、という適正な経済活動にとって欠かせない2つのメリットがあります。

特に、ブランド保護が重要な製造業者にとっては、必ず検討すべき問題だと言えるでしょう。

なぜ、真贋証明が必要か?

こうした真贋証明の必要性が生まれる背景には、「偽造品の増加」という社会問題があります。

偽造品とは、他者の創った知的財産の無断コピーや、類似製品のことです。

厳密な言葉の定義はなされていませんが、一般に偽造品と呼ばれるものには、次の2つがあります(外務省ホームページより)。

  • 模倣品:特許権、実用新案権、意匠権、商標権を侵害する製品のこと
  • 海賊版:著作権、著作隣接権を侵害する製品のこと

出典:外務省

日本でも、一時、映画等のコンテンツDVDの違法海賊版が大量に出回る事件が話題になりましたが、近年では、そうしたコピーの容易な情報商品だけではなく、例えばスマートフォンや時計などの高級ブランドについても、ロゴや商品名など一部のみを巧妙に変えた、「なりすまし製品」も増えています。

そうした偽造品の中には、見た目では本物のブランドとほとんど全く変わらないものもあり、高い代金を支払った後に初めて偽物だとわかるケースも少なくありません。

しかし、不特定多数の偽造品業者をすべて取り締まることはできず、また一般消費者が偽造品を見極めることも難しいため、ブランド保護だけでなく安全性の向上も含めた企業努力の一つとして、近年、真贋証明の重要性が増してきているのです。

偽造品被害の実態

では、実際に、偽造品による被害はどの程度なのでしょうか?

OECDが2019年3月18日に発表した情報によると、世界全体の偽造品輸入額は5090億米ドル、実に世界全体の貿易の3.3%にも上ります。

2013年には4610億米ドル(世界全体の貿易額の2.5%)だったことから、この数年間で、偽造品による被害は急激に拡大していることがわかります。

また、同資料では、「2016年の押収品に占める財で最も多かったのは(ドル換算)、靴、衣料品、革製品、電気製品、時計、医療機器、香水、玩具、宝飾品、薬品で」あり、「税関当局によると、商標のついたギターや建築資材といった過去にはあまり見られなかった財の偽造品が増加して」いるとも発表されています。

加えて、同様の被害は日本国内でも広がっています。

特許庁によると、国内で模倣品被害を受けた法人数は、2015年度の10,000法人(全体の6.0%)から2019年度の15,943法人(全体の7.4%)へと、絶対数では約159%、全体に占める比率では約123%と大幅に増加しています。

出典:特許庁「模倣品被害実態調査報告書(2016〜2020年度)」より筆者作成

また、模倣被害対策の実施法人数は、2015年度の27,025法人から2019年度の39,196法人へと約145%増加しており、現場の経営者視点からみても、真贋証明による偽造品対策が無視できない経営問題になっていることがみて取れます。

出典:特許庁「模倣品被害実態調査報告書(2016〜2020年度)」より筆者作成

さらに、これらの情報はあくまでビジネス取引に関わる範囲に限定されていることから、アートなどのビジネスによらない著作権等の侵害をも考慮すれば、偽造品の被害は非常に大きな社会問題であることが理解できるでしょう。

こうした流れを受けて、冒頭でも触れた通り、近年、ブロックチェーン技術を応用した真贋証明の社内システムや、独立サービス等が急増しています。

ブロックチェーンが真贋証明にはたす役割

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)

ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。

これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。

分散台帳とは.jpg

ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。

従来のデータベースの特徴 ブロックチェーンの特徴
構造 各主体がバラバラな構造のDBを持つ 各主体が共通の構造のデータを参照する
DB それぞれのDBは独立して存在する それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている
データ共有 相互のデータを参照するには新規開発が必要 共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要

ブロックチェーンは、こうした「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されています

ブロックチェーン技術が真贋証明に応用できる理由

真贋証明に欠かせない「トレーサビリティ」

真贋証明は、ある商品が「いつ」「どこで」「誰の手によって」「どうやって」扱われたのか、そしてそれらの情報は正しいのか、ということを証明することによって実現できます。

商品からこうした情報が正しく取得できる状態を「トレーサビリティ(が担保されている)」と言い、真贋証明には欠かせない条件といえます。

トレーサビリティ(Traceability、追跡可能性)とは、トレース(Trace:追跡)とアビリティ(Ability:能力)を組み合わせた造語で、ある商品が生産されてから消費者の手元に至るまで、その商品が「いつ、どんな状態にあったか」が把握可能な状態のことを指す言葉です。

具体的には、先にみた「天水りんご」の例のように、まずは商品のトレーサビリティを担保した上で、商品情報を記載したQRコードを商品に印字し、それを消費者がスマートフォンで読み取るなどして真贋を確かめることになります。

真贋証明(あるいはトレーサビリティ)の条件

ここで、トレーサビリティの担保、そして真贋証明のためには、次の2つの条件が満たされている必要があります。

  • サプライチェーン上で、商品に関する情報を一元で管理できている
  • その管理体制において、商品データの正しさが損なわれない

1点目は、サプライチェーン・マネジメントにおける情報一元管理システムの構築を意味しています。

一般に、ある商品が「創って、作って、売られる」までには、製造業者、流通業者、小売業者など大小様々な企業が関わっています。

そして、それぞれの企業が、それぞれの方法で、商品に関わるデータを管理・利用しているのが通例です。

そのため、一つの商品に関するデータであっても、小売業者に聞いても小売に関わる時点までのことしかわからず、あるいは製造元に問い合わせても流通から先のことはわからない、といった状況に陥ることがほとんどです。

そこで、サプライチェーンを機能別に(つまりは企業単位で)分断するのではなく、商品単位で一連のシステムとして捉え、関連企業間のデータ連携を行うことで、商品が「いつ」「どこで」「誰の手によって」「どうやって」扱われたのかを把握することができるようになります。

2点目は、1点目の管理システムにおいて、データのセキュリティが十分に担保されている状態を意味しています。

商品のトレーサビリティが担保され、正しく真贋証明が行われるためには、証明のもととなるデータに対する信用が十分であることが求められます。

しかし、システムのセキュリティ要件が十分に満たされていない場合、第三者による攻撃を受けることによるデータの改竄や破損、あるいはシステムダウンによるデータの損失などのリスクが考えられます。

そこで、システムをデータセキュリティに強い技術によって構築することで、そのデータをもとにした真贋証明を適切に履行することが可能になります。

ブロックチェーンが真贋証明の条件を同時に満たす!

これらの条件を満たすことができる技術がブロックチェーンです。

先に見たように、ブロックチェーンには、次の特長があります。

  • 非中央集権的な分散システムであるため、競合・協業他社のデータ連携が行いやすい
  • セキュリティが強固なため、データ改竄やシステムダウンのリスクに強い

1点目の課題であった「データ連携」の障害となるのは、異なる利害関係のもとにある複数の企業が簡単に手を結びにくいことです。

これに対して、「非中央集権的」「分散的」であるブロックチェーンでは、例えばGoogleやAmazonのような中央管理プラットフォームに権力が集中するということなく、横並びでデータ連携を行うことができます(”All for One”ではなく、”One for All”なデータベース)。

また、2点目の課題については、そもそもブロックチェーンが仮想通貨の中核技術として誕生した経緯からもわかるように、技術そのものに「データが改竄されにくく、システムダウンに強い」という特性があります。

ブロックチェーンはこうした特長をもっていることから、次にみるように、近年、様々な業界で真贋証明プラットフォームの中核技術として利用され始めています。

ブロックチェーンを用いた真贋証明の取り組み事例

ブロックチェーン真贋証明サービス「cryptomall certification(クリプトモール証明書)」

スタートアップが手がけるブロックチェーンを用いた真贋証明サービスとして、2020年4月1日(水)にプレスリリースされたのが「cryptomall certification(クリプトモール証明書)」です。

開発元のcryptomall ou社によると、cryptomall certificationでは、「商品にスマートフォンをかざすだけで、改ざん不可能な商品情報や生産地、そしてお客さまの手元にたどり着いた経過、つまり商品が持つ本物のストーリーを証明する」ことができます。

出典:PR TIMES

同サービスは、認定商品の中に「繊維型マイクロチップ」を埋め込み、消費者が手元の端末でそれを読み込むことで、商品を「トレースバック(=商品に関する記録を過去に遡ること)」する仕組みです。

まだリリース後間もないサービスではありますが、ブロックチェーンによるトレーサビリティの担保、そして真贋証明の手段として、今後に期待したい事例だと言えるでしょう。

エイベックス・テクノロジーズ「A trust(エートラスト)」

エイベックス・テクノロジーズは、デジタルコンテンツの領域で、著作権を保護するための真贋証明プラットフォーム「A trust」を開発しています。

2019年に開発された「A trust」は、ブロックチェーン技術を用いてデジタルコンテンツに証明書を付与することで、購入者が証明書付きのデジタルコンテンツを所有できるようになる仕組みです。

また、決済については法定通貨を用いているため、既存のデジタルコンテンツの販売プラットフォームにも適用できることが特徴だとされています。

出典:Impress Watch

先にも触れた通り、偽造品(ここでは海賊版)の問題は、容易にデータのコピーが可能なデジタルコンテンツ領域において特に大きな影響を及ぼしています。

多くのデジタルコンテンツを抱えるエイベックス社では、デジタルコンテンツの「真正性」を証明できる証明書を改竄不可能な形で付与する仕組みを構築することで、クリエイターと購入者の双方を保護しようとしていると考えられます。

集英社「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」

同じくコンテンツ領域の取り組みとして注目されているのが、2021年3月1日に集英社が始めた「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」です。

同サービスは、アナログコンテンツである漫画の複製原画を、所有者履歴や真贋の証明を行うことで、絵画のような美術品として流通させることを狙ったプラットフォームサービスです。

購入者は、複製原画とともに送付されたブロックチェーン証明書付きのICタグをスマートフォンで読み込むことで、その原画の所有者履歴や真贋証明を確認することができます。

出典:IT media NEWS(漫画『ワンピース』の複製原画)

同取り組みでは、美術品や骨董品の際に必ず問題となる「鑑定」をブロックチェーン技術で代用することで、鑑定士やアナログ証明などの手段に頼ることなく、「正しい価値」を流通させることを狙っています。

また、そうした従来の手段では管理しきれなかった所有者履歴も同時に明らかにすることで、これまで以上に「正しい」価値証明にもつながると考えられます。

この取り組みが成功すれば、漫画等のアナログコンテンツを制作するクリエイターにとって、新たな収入源も確保され、より優れたコンテンツが生み出しやすくなる点からも、今後、期待が高まります。

スイス Breitling「Arianee」

最後に、海外の事例もみておきましょう。

こちらは、スイスの高級時計メーカーであるブライトリングが、高級品のデジタル認証の世界標準構築を目指す非営利コンソーシアム「Arianee」が提供するブロックチェーンプラットフォーム(イーサリアムERC-721標準使用)を利用し、時計の紛失、破損、盗難などのリスクから消費者を保護することを狙った事例です。

出典:COINPOST

この仕組みでは、時計一つ一つにシリアル番号などのデータを含むデジタル証明書が付与されており、購入日、修理の記録など、製品の全履歴がブロックチェーンに記録されます。

そして、購入者は、時計に付属されているカードをスマートフォンで読み取ることで、デジタル証明書を安全に保管するプライベートなデジタルウォレットへアクセスすることが可能になります。

有形資産の真贋証明の方法としては、冒頭で触れた「天水りんご」のように、商品に対して直接QRコードを印字するものと、本事例のように、カード等を付属するものがありますが、Breitlingのような高級品の場合は、商品自体の美観を損なうことのないよう、後者の方法をとることでより完全な形でブランド保護をすることが可能になります。

こうしたブロックチェーンの真贋証明を利用したブランド保護は、今後、日本の高級品メーカーでも主流になっていくでしょう。

ブロックチェーンのトレーサビリティへの応用〜食品・物流・偽造品対策〜

  1. 2021年、ブロックチェーン技術を応用したトレーサビリティ・システムが注目を集めている!
  2. トレーサビリティとは?
  3. ブロックチェーンとは
  4. トレーサビリティの課題に対するブロックチェーンの適用可能性
  5. ブロックチェーン×トレーサビリティの事例

2021年、ブロックチェーン技術を応用したトレーサビリティ・システムが注目を集めている!

2008年にビットコインを支える中核技術として誕生したブロックチェーン。

当初はビットコインやイーサリアムを始めとする仮想通貨や、トークン技術を使った資金調達方法であるICOなどの、いわゆる「フィンテック(金融領域での技術応用)」が大きな注目を集めてきました。

しかし、近年、ブロックチェーンの本質である「安全性が高く、分散的で、コストが低い」データベース」という特長から、金融領域よりもむしろ、非金融領域における産業応用により大きな期待が寄せられています。

中でも、商品の生産と物流に関わる業界、とりわけ食品を中心とした消費財のメーカーや流通業者にとって、ブロックチェーンはもはや「なくてはならない」技術だと言えるでしょう。

同業界では、従来、サプライチェーン・マネジメント(ある商品の企画から消費に至るまでの商流の管理や最適化)の重要性が叫ばれ続けていながらも、商流に関わるステークホルダー(利害関係者)の種類や数が多すぎること、それらの繋がりが前後の工程間で分断されていることなどを原因に、最も重要な要素である「データ」をほとんどうまく活用してこれなかったからです。

出典:ビジネス+IT「サプライチェーンマネジメント(SCM)とは何か? 基礎からわかる仕組みと導入方法」

こうした状況を打破する突破口として、2021年現在、多くの企業が取り組んでいるのが「トレーサビリティ」に対するブロックチェーン技術の応用です。

例えば、IBMは、コンテナ船世界最大手のA.P. Moller-Maersk(A.P.モラー・マースク)との共同でブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォーム「TradeLens」を構築した他、世界最古の医薬品・化学品メーカーであるMerck KGaA(メルク・カーゲーアーアー)と共に偽造品対策プラットフォームを立ち上げることで、トレーサビリティを中心としたサプライチェーンの最適化を図っています。

出典:TRADELENS 概要(IBM社資料)

すでに、ヨルダンの税関やAqaba税関では、トレードレンズのブロックチェーンサプライチェーンサービスの活用が進められています。

このように、ブロックチェーン技術のトレーサビリティへの応用は、2021年に大きく注目されているビジネストピックだといえるでしょう。

そこで、本記事では、「トレーサビリティとは何か?」「ブロックチェーンとは何か?」「具体的にどんな事例があるのか?」といった点について、以下で順に解説していきます。

トレーサビリティとは?

トレース(追跡)+アビリティ(能力)=トレーサビリティ!

トレーサビリティ(Traceability、追跡可能性)とは、トレース(Trace:追跡)とアビリティ(Ability:能力)を組み合わせた造語で、ある商品が生産されてから消費者の手元に至るまで、その商品が「いつ、どんな状態にあったか」が把握可能な状態のことを指す言葉です。

トレーサビリティは、サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ)のマネジメント要素の一つと考えられており、主に自動車や電子部品、食品、医薬品など、消費財の製造業で注目されています。

トレーサビリティの2つの要素:トレースバック/トレースフォワード

トレーサビリティは、「サプライチェーンの上流工程(企画や開発など製品の”起こり”のプロセス)と下流工程(販売や消費など製品の”終わり”のプロセス)のどちらに向かって追跡するか」によって、次の2つの要素に分けることができます。

  • 上流工程→下流工程へと追跡:「トレースフォワード(追跡+前)」
  • 下流工程→上流工程へと遡及:「トレースバック(追跡+後)」

例えば、食品業界のサプライチェーンにおいて、流通段階で食品に関する問題が発覚したとしましょう。

この場合、問題食品に関わる事業者は、まず、その問題食品のルートを追跡して商品を回収する必要があります。

また、次に、同じ問題が起こらないように問題食品のルートを遡及して原因を究明する必要もあります。

出典:農林水産省「トレーサビリティ関係」

このように、「ある製品がどこに行ったか」を下流工程に向かって追跡することを「トレースフォワード」、「ある製品がどこでどのように生まれたか」を上流工程に向かって訴求することを「トレースバック」と言います。

サプライチェーンマネジメントにおいてトレーサビリティを十分に担保するためには、この「トレースフォワード」と「トレースバック」の両方の要素が満たされていなければなりません。

なぜ、トレーサビリティが重要か?

トレーサビリティは、大きく次の2つの観点から、サプライチェーンマネジメント(SCM)において重要視されています。

  • 消費者保護
  • ブランド保護

一つ目は、消費者保護の観点です。

トレーサビリティが担保されることで、消費者は、「その商品を買っても大丈夫かどうか」を客観的な情報から判断することが可能になり、安心して消費行動を行うことができます。

例えば、スーパーマーケットで今晩の食材を選んでいるシーンを想像してみましょう。

久しぶりにお刺身を食べたいと思ったあなたは、生鮮食品コーナーでパック詰めされた魚介類を物色しています。

ここで、私たちは必ず、パックの表面に貼られた食品表示のシールを眺め、「そのお魚がどこで獲られ、鮮度はどのくらいなのか」といった情報を読み取ります。

出典:新潟市「食品表示法による表示について(新法に基づく表記)」

この行動によって、直接自分で獲ったわけではなくとも、その食材を食べても健康に被害が生じないであろうと、信用することができます。

逆に、もし食品表示がされていなかったとしたら、私たちは安心してその食材を買うことができません。

つまり、食品表示は、消費者や消費行動を保護するために義務付けられているのです。

そして、この食品表示は、「その食材が、いつ、どこで、誰によって調達され、どうやって運ばれてきたのか」といった物流の履歴情報を把握すること、すなわちトレーサビリティによって可能になっています。

この例のように、トレーサビリティは、商品情報の開示に役立つという点で、消費者保護に一役(どころか何役も)買っていると言えるでしょう。

二つ目は、ブランド保護の観点です。

先ほど述べたように、消費者は、商品そのものの品質だけではなく、その商品(や商品に関わる企業)に対する「信用」に対してもお金を払っています。

こうした、商品や企業活動のあり方に対するイメージに基づいた信用のことを「ブランド」と言います。

出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成

消費者は、信用度が高い商品、つまりブランドのある商品には多くのお金を払ってくれますが、逆に信用が落ちた商品、つまりブランドのなくなった商品にはお金を払ってくれなくなります。

したがって、企業が長く自社商品から利益を得続けるためには、自社のブランドを高め、維持し続けていく必要があります。

しかし、逆にこうした消費者の心理をうまくついて、ブランド品そっくりの偽造品をつくるなどの手口で、一時的に利益を稼いでいる業者も少なくありません。

偽造品が市場に大量に出回ってしまうと、需要と供給のバランスが崩れることによる値崩れだけではなく、品質の悪い粗悪品を消費者が手にしてしまうことにより信用が低下し、ブランドが毀損してしまいます。

そのため、企業はそうした偽造品などによる外部攻撃から、うまく自社ブランドを守っていかなければなりません。

トレーサビリティは、こうした「偽造品対策」の一環としても、強く意識していく必要があるキーワードと言えるでしょう。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。

ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。

ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。

一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。

ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。

参考記事👉「ブロックチェーン(blockchain)とは?仕組みや基礎知識をわかりやすく解説!

トレーサビリティの課題に対するブロックチェーンの適用可能性

ブロックチェーン技術は、どのような観点から、トレーサビリティの実現へと応用されるのでしょうか?

この問いには、サプライチェーンにおいてトレーサビリティの障害となる3つの課題がかかわっています。

  1. 協業企業間でデータ連携するインセンティブがない(リーダーシップの不在)
  2. 関わるプレイヤーが多すぎて非効率である(コストの高さ)
  3. そもそも情報に嘘や誤りが多い(情報の正確性)

トレーサビリティの課題①:リーダーシップの不在

まず、一つ目の課題は「リーダーシップの不在」です。

トレーサビリティを担保するためには、サプライチェーンの上流工程から下流工程に至るまで、協業企業同士が適切な形でデータ連携をし、チェーン全体を一つの「トレーサビリティ・システム」として定義しなおす必要があります。

しかし、企業は一般的に、サプライチェーン全体の利益ではなく、自社の利益のみに最適化したビジネス上のルールを設定し、各社のビジネスロジックに合わせた独自のシステム開発を行っています。

そのため、いざデータ連携を行おうとしても、協業企業同士のルールやプロトコルの違いが大きな障害となってしまいます。

この障害を乗り越えるためには、協業企業をうまくまとめるためのリーダーシップが必要です。

しかし、部分最適化をはかっている企業間の先導役をある企業が担うことは、その企業にとっての短期的な損失を意味することが多く、したがって、短期的には、リーダーシップを発揮するインセンティブが少ないと考えられます。

トレーサビリティの課題②:コストの高さ

2つ目の課題は、「コストの高さ」です。

通常、サプライチェーン上には、非常に数多くのプレイヤーが存在しています。

そのため、協業企業間でのデータ連携を行うにあたっては、プレイヤーの数だけネットワークが複雑になることで、データの参照コストやシステムの管理コストが莫大な規模に膨れ上がってしまいます。

業界全体で共有できるトレーサビリティ・システムをつくるためには、こうしたデータ連携にかかるコストをいかに抑えていくか、が大きな課題となります。

トレーサビリティの課題③:情報の正確性

3つ目の課題は、「情報の正確性」です。

ブロックチェーン×トレーサビリティの事例

海外事例:The Intelligent Supply Chain powered by IBM Blockchain

ブロックチェーンのトレーサビリティ問題への応用事例として、2021年現在最も目立っているのが、IBM社によるサプライチェーンのスマート化の事例です。

同社は、過去数年間にわたって、国際海運、食品管理、原産性証明など、生産と物流に関する様々な角度からブロックチェーンプラットフォームを開発し、トレーサビリティの問題に取り組んでいます。

具体的には、次のようなプラットフォームを提供しています。

  • 国際コンテナ輸送の課題を解決する「TradeLens」
  • ありとあらゆる輸送手段に対応した物流可視化プラットフォーム「GLS : Global Logistics System」
  • 食の信頼構築を目指す業界プラットフォーム「IFT : IBM Food Trust」
  • 独自のプラットフォーム実装をサポートする「IBM Blockchain Transparent Supply」
  • 独自のプラットフォーム実装をサポートする「IBM Blockchain Transparent Supply」
  • 責任ある資源調達を実現「RSBN : Responsible Sourcing Blockchain Network」
  • FTA/EPA/TPPに対応した原産性証明プラットフォーム「DCP : Digital Certificate of Origin Platform」
  • 安全かつ低コスト・迅速にサプライヤー調達を実現する「TYS : Trust Your Supplier」

中でもとりわけ、コンテナ船世界最大手のA.P. Moller-Maersk(A.P.モラー・マースク、以下マースク)との共同で開発したブロックチェーン基盤の海上物流プラットフォーム「TradeLens」では、荷主、ターミナル、船社、通関など、海運に関わるあらゆるステークホルダーを巻き込むことで、世界規模な台帳共有による取引の合理化がはかられています。

出典:TRADELENS 概要(IBM社資料)

実際に、ヨルダンの税関やAqaba税関では、トレードレンズのブロックチェーンサプライチェーンサービスの活用が進められています。

国内事例:日通(日本通運)

2020年3月9日の日本経済新聞の記事によると、「日本通運はアクセンチュアやインテル日本法人と組み、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用した輸送網の整備に乗り出」し、「まず医薬品を対象に2021年の構築を目指しており、倉庫の整備などを含め最大1千億円を投資する」ことで、「偽造医薬品の混入を防ぐための品質管理に生かし、将来は消費財全般に応用する」ことを発表しています(「」内は同記事からの引用)。

出典:「日通、ブロックチェーンで偽造品排除 物流に1000億円」( 2020/3/9 1:30日本経済新聞 電子版)

これは、サプライチェーン・マネジメントの中でも、特に「偽造品対策」にフォーカスした課題解決の方法として、ブロックチェーンによるトレーサビリティ・システムを構築しようという事例です。

生産工場から小売の現場まで、物流の全体を担っている日通では、物流プロセスのどこかで偽造品が発覚した際に、その商品をトレースバックすることで、偽造品の原因を特定し、それを排除することを目指しています。

このトレースバックを適切に実行できるのも、ブロックチェーンがもつ特長があってのことだと言えるでしょう。

中国のブロックチェーンを金融・非金融の軸で理解する〜デジタル人民元からBSNまで〜

2025年に397億米ドルへの成長が予測されるブロックチェーン市場を牽引する中国。CBDCの官製デジタル人民元(e-CNY)を守るために暗号資産(仮想通貨)マイニングを規制する一方、4大商業銀行や公共事業を中心に研究開発と技術発展が進んでいます。2020年の最新事情に迫ります!

  1. 中国ブロックチェーン市場動向を理解する
  2. 金融領域における中国のブロックチェーン市場動向
  3. 非金融領域における中国のブロックチェーン市場動向

中国ブロックチェーン市場動向を理解する

拡大を続けるブロックチェーン市場

2020年8月現在、ブロックチェーンを応用したビジネスには様々なものがあります。

当初は、金融分野、とりわけ暗号資産(ビットコインなどいわゆる「仮想通貨」)のみに関係した「怪しい」技術だと思われがちだったブロックチェーンも、2020年で100〜200億円、2025年には1000億円を超える国内市場を形成し、世界全体では2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルへと拡大するとの見解も発表されています。

こうした市場拡大の背景には、IoTやAI等の技術進化を土台とした世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の発展とそれに伴うサイバーセキュリティ需要の拡大、キャッシュレス化の進展、ますます顧客重視の傾向が強まるマーケティング、巨大プラットフォーム企業の出現に対抗する形で進むアライアンスやM&A等の業界再編など、インターネットのインパクトが数十年かけてもたらした大きな社会変革の波があります。

堅牢なセキュリティ能力を誇るデータベースであり、「自律分散」をその技術思想としてもつブロックチェーンは、こうした社会変革を支える根幹技術として、今後の世界の社会基盤となりうる可能性を秘めているのです。

事実、世界経済フォーラムの発表によると、「2025年までに世界のGDPの10%までがブロックチェーン上に蓄積されるようになる」との予測もなされるほどに、21世紀におけるブロックチェーンの存在感は大きくなりました。

ブロックチェーンを牽引する中国

拡大を続けるブロックチェーン市場の中でも、ひときわ存在感を増しているのが中国です。

後にも触れるように、中国におけるブロックチェーンの研究開発や産業応用は、日本とはとても比べ物にならないほどのレベルで進んでいると言われています。

下図は、2020年時点でのブロックチェーンに関する特許市場におけるシェアを表しています。

このグラフからも明らかなように、世界全体のうちの実に7割を中国が占めており、2番手である米国の6倍近くあります。

日本が3%ほどしかないことを考えると、この特許市場のシェア、そしてその前提である特許出願数の多さは、中国マーケットの大きな特徴、強みの一つだと考えられます。

出典:BLOCK INSIGHT

こうした進展の背景として、中国では、官民を挙げてブロックチェーンの技術開発に取り組んでいます。

たとえば、2020年に、中国の国家ブロックチェーンインフラプロジェクト「BSN(Blockchain-Based Services Network)」が、イーサリアムやイオス、テゾスなどを含む6種類のパブリックブロックチェーンを統合することが判明しました。

また、中国建設銀行ブロックチェーンを活用した国際ファクタリング、中国農業銀行ブロックチェーンを活用した住宅ローン、中国工商銀行ブロックチェーンを活用したサプライチェーンファイナンスなど、大手企業各社による金融領域でのブロックチェーン活用が当たり前のように行われている他、ビットコインを支えるデータマイニングのほとんどは中国国内の工場で行われるなど、あらゆる面からブロックチェーンが社会に浸透しています。

こうした中国の状況は、日本でいまだに「ブロックチェーンって何?」「ビットコインって何か事件になってた怪しい投資手法でしょ?」といった人が多く、ブロックチェーンのビジネス活用が一向に進まない現状とは大きくかけ離れています。

したがって、日本におけるブロックチェーンのビジネス活用や産業応用を考えていく上で、中国の先例に学んでいくことには価値があると言えるでしょう。

ブロックチェーンビジネスを理解するための「軸」

中国のブロックチェーン事情を整理するために、まず、ブロックチェーンビジネス一般を理解するための軸を用意しましょう。

ブロックチェーンビジネスは、基本的に、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に大別されます。

ここでいう「金融領域」とは、平たく言えば「Fintech」と言われる領域のことで、より正確には「暗号資産(=仮想通貨)を活用した領域」と考えてください。

暗号資産は、かつては「仮想通貨」と呼ばれており、いまだにその呼称の方が馴染み深い方も多いでしょうが、2019年3月15日に暗号資産に関する法改正が閣議決定され、呼称の変更が行われました。

こうした暗号資産を用いたビジネスが、ブロックチェーンビジネス第一の領域です。

これに対して、暗号資産ではなく、データの対改竄性やP2Pネットワーク、スマートコントラクトなど、ブロックチェーンの技術そのものを応用した産業・業務変革も盛んに行われています。

こうした「非金融」なビジネスが、ブロックチェーンビジネス第二の領域です。

基本的には、これら2つの領域に分けられますが、少しややこしい問題として、「非金融ながら暗号資産を活用する」ハイブリッドな領域も存在しています。

例えば、「トークンエコノミー」と呼ばれるビジネスモデルでは、ネットワーク独自に発行された暗号資産、つまりトークンをビジネス上の通貨として利用していますが、その目的は、暗号資産の運用益そのものではなく、あくまでトークンを活用した経済圏の構築と経済圏内の取引の活性化にあります。

このように、ブロックチェーン×金融の結晶である暗号資産を用いながら、非金融領域の課題解決を目指すような「金融×非金融」のハイブリッドなビジネスが、ブロックチェーンビジネス第三の領域です。

本記事では、この「金融/非金融」という軸から、中国のブロックチェーンマーケットについて概説してまいります。

なお、弊社では、非金融領域でのブロックチェーンビジネスについては、事業化するための3つのポイントをおすすめしています。

この点については、本記事ではなく、下記の記事に詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

👉参考記事:『ブロックチェーンのビジネス活用は非金融がアツい!事業化3つの視点とは?

金融領域における中国のブロックチェーン市場動向

視点①:デジタル人民元(e-CNY)

中国における金融領域の適用先としては、「デジタル人民元(e-CNY)」を避けて通ることはできません。

デジタル人民元は、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC:Central Bank Digital Currency)の一種で、中央銀行が発行し、デジタル形式をとる法定通貨(中国なので”元”)のことです。

2020年10月には、抽選で50万人以上に計1億5000万デジタル人民元(約25億円)が配布され、約7万軒の実店舗およびネット通販で使えるようになり、さらに半年後には誰でも参加できる形での実証実験も行われるなど、中国当局によって、大規模実証実験の準備が着々と進められてきました。

👉参考記事:『「CBDC」国が発行するデジタル通貨 〜ブロックチェーン×中央銀行〜

デジタル人民元は、中国人民銀行によるとP2Pではないので技術的にはブロックチェーンというわけではありません。

しかし、次の二つの理由から、ここではまずあえてデジタル人民元について取り上げることとします。

  • デジタル人民元の仕組みはビットコインで用いられている通貨管理手法であるUTXO(Unspent Transaction Output、未使用トランザクションアウトプット)構造を取っていると言われている
  • 思想的文脈ではブロックチェーンを踏まえて理解する必要がある

そこで、本記事では、次の3つの方向性から、デジタル人民元の取組を捉えていくことにします。

  1. 「先進国の金融システムに追いつくための取組」としてのデジタル人民元
  2. 「基軸通貨米ドルに対する挑戦のひとつ」としてのデジタル人民元
  3. 「人民を縛りつけるデジタルの鎖」としてのデジタル人民元

(1)「先進国の金融システムに追いつくための取組」としてのデジタル人民元

人口第一位、GDP世界2位を誇る中国は、マーケットの規模こそ大きいものの、金融システムは内陸部を中心に大きく遅れているのが現状です。

既存のシステムが不完全であり、置き換えられるべき金融システムがないため、中国では金融領域に対する大胆な投資が可能となっています。

他方、アメリカや日本では事情が異なります。

両国ではすでに既存の金融システムが高いレベルで運用されており、新しいシステムと置換するには大きなコストやリスクが生じてしまいます。

そのため、中央銀行デジタル通貨の取り組みにおいても慎重にならざるを得ません。

こうしたことを背景に、中国は中央銀行デジタル通貨の導入によって、アメリカや日本の先を行ける勝算が高いのです。

つまり、デジタル人民元は中国にとって、先進国の金融システムに追いつくための取組としての意義があると考えられます。

(2)「基軸通貨米ドルに対する挑戦のひとつ」としてのデジタル人民元

デジタル人民元の別の側面は、基軸通貨米ドルに対する挑戦者としての性格です。

これまで、基軸通貨としての米ドルに対して、多方面からの挑戦が行われてきました。

記憶に新しいもので言えば、仮想通貨であるビットコインでしょう。

しかし、元々ビットコインは「中央銀行に対するオルタナティブ」として構想されましたが、”サトシ・ナカモト”はFRB(連邦準備制度)に対する最初の挑戦者ではありません。

ビットコイン以前にも、米ドル圏の内部としてはクレジットカード、ペイパルなどが、また、米国外では独仏がユーロを作り、ロシアはルーブル建の原油取引を推進しました。

ビットコインのみならず、デジタル人民元もそうした流れの中に位置付けてみることができます。

国際政治において主導権を握りたい中国にとって、この挑戦は非常に重要な意味を持ちます。

今後の国際政治では、途上国へのデジタル通貨の浸透がひとつの戦場となると言われており、中国は負債漬けにした途上国に対してデジタル人民元を普及させることで、それらの国々を中国側陣営として固定化することを狙っていると言われているのです。

これに対して、途上国をアメリカ側陣営につなぎとめるためのデジタル通貨は、(消去法で考えると)Facebookの”リブラ”しかありません。

しかし、現状では、ザッカーバーグはアメリカ保守層の理解を得るのに苦労していると言われています。

この状況を鑑みると、中国がデジタル人民元の導入に力を注ぐ理由も理解できるでしょう。

(3)「人民を縛りつけるデジタルの鎖」としてのデジタル人民元

デジタル人民元では、中国人民のすべての経済活動が中国共産党に対してつまびらかにされます。

表向きは「新しい形式の法定通貨」ですが、その本質は、政府が運営する巨大な台帳です。

したがって、脱税も密輸も反政府活動も、台帳を見れば一発で”バレて”しまいます。

あるいは、自由主義や民主主義を吹聴する電子書籍を購入した人民もすぐに炙り出されるでしょう。

本来であれば、ブロックチェーンやそれに類する技術(UTXOなど)は、非中央集権的な性格にその意義と本質があります。

しかし、こうした文脈においては、残念ながらブロックチェーンは中央管理者を繋ぎ止める「真実の鎖」ではなく、人民を縛りつける「支配の鎖」として利用される恐れがあります。

中央管理社会の比喩としてよく使われる、「1984」「華氏451度」のようなディストピア的世界も、デジタル人民元の導入によって、いよいよ目の前に示現し始めるのかもしれません。

視点②:暗号資産(仮想通貨)

上でみたデジタル人民元の導入背景をみると自ずと明らかなことですが、中国においては、暗号資産(仮想通貨)は厳しく規制されてきました。

規制の歴史を時系列順に並べると、次の通りです。

  • 2013年12月、ビットコインに対する警告
  • 2017年9月、ICOの全面的禁止
  • 2019年11月、再度取引所への警告
  • 2019年12月、改めてICOプロジェクトを規制
  • 2020年1月、「暗号法」制定

ここでは、それぞれの事柄の詳細には触れませんが、中国が一貫して暗号資産に対して厳しい姿勢を取り続けていることは明らかです。

なお、詳しい経緯は下記の記事にわかりやすくまとまっているため、ご参照ください。

→参照:BLOCK INSIGHT「中国の仮想通貨規制を時系列で解説:デジタル人民元を許容する訳とは」

視点③:大手企業

暗号資産の規制が続く一方で、中国では、4大商業銀行を中心に、大手企業による金融領域でのブロックチェーン活用が進んでいます。

大手企業によるブロックチェーン活用には、例えば次のような事例があります。

  • 中国建設銀行:ブロックチェーンを活用した国際ファクタリング
  • 中国農業銀行:ブロックチェーンを活用した住宅ローン
  • 中国工商銀行:ブロックチェーンを活用したサプライチェーンファイナンス
  • アリババ:ブロックチェーンを活用したオンライン保険の「相互宝」

アリババが提供している「相互宝」は、加入が無料で、加入者が病気になったとき、加入者全体で保険金を分担するという内容のオンライン保険です。

この事例で注目すべきは、契約者情報や請求データといった情報の管理・共有、不正防止などの機能にブロックチェーンがうまく活用されている点です。

ブロックチェーンの本質は、「データの対改竄性」と「非中央集権性」にあります。

中国の超巨大企業による無料オンライン保険という新規性の高い事業で使われているからといって、特別なことをしているわけではなく、ブロックチェーンのもつ性質をうまくビジネスモデルに利用して信頼性の高いサービスを展開しているという見方をすべきでしょう。

非金融領域における中国のブロックチェーン市場動向

視点①:真贋判定

非金融領域における中国のブロックチェーン活用のうち、もっとも特徴的な技術の適用対象は「真贋判定」でしょう。

真贋判定とは、ある財・サービスが「本物かどうか」を見極めることです。

これまでも度々ニュース等で取り上げられてきた通り、中国市場は偽造品の多さに特徴があります。

クラウドファンディング等で発表された新製品が、実際に出荷される前に安価にコピーされて利益余地を失ってしまうことに対して、「山寨死(Shānzhài sǐ)」という名前がつけられるほど、中国における「パクリ」問題は日常にあふれています。

そのため、中国市場における真贋判定は日本とは比較にならないほど高い価値をもちます。

そこで、導入されるのがブロックチェーンです。

データの改竄性の高さに加え、学位証明やサプライチェーンのトレーサビリティ向上によく利用されるほどの高い追跡性をもつブロックチェーンを利用することで、「山寨」に歯止めをきかせることができるのではないかと期待されています。

この真贋判定サービスとしてユニークな事例に、「天水リンゴ」があります。

出典:Blockchain Business & Solution

元々、ブランド力のあるリンゴとして有名だった天水リンゴですが、近年、天水リンゴの名前を語った偽物が市場に出回り被害を受けてしまっていたことを受け、ブロックチェーンを活用した対策に乗り出しました。

天水リンゴでは、上図のように、リンゴにQRコードを貼り付けることで、自社ブランドの真贋判定を可能にしています。

視点②:公共事業

中国では、公共領域でも積極的にブロックチェーンの技術導入が進んでいます。

公共領域へのブロックチェーン導入として有名な例は、公共調達の入札への適用でしょう。

実際の事例として、2020年6月23日より、中国雲南省の昆明市で、中国初のブロックチェーンを活用した入札プラットフォーム「Kun­y­il­ian (昆易链) 」が運用を開始しています。

Kun­y­il­ianは、北京のテクノロジー企業「Bei­jing Zhu­long」が、テンセントのTBaaS(Tencent Blockchain as a Service)システムを土台にブロックチェーン技術を応用・開発したプラットフォームで、試験運用中にも、公式の入札データに関連する約6万のブロックチェーン証明書が発行されたとされています。

また、同プラットフォームに技術提供を行なったテンセントは、すでにブロックチェーン技術を用いたサービスを複数展開しており、深センの地下鉄でブロックチェーンによる電子請求書発行システムを配備しています(CoinPost)。

こうした動きを皮切りに、今後、中国では、公共領域への技術導入がますます進んでいくと考えられます。

視点③:研究開発

本記事での冒頭でも触れた通り、中国では、政府が積極的にブロックチェーンを始めとするインフラ投資を進めており、研究開発も日本とは比べ物にならないスピードで進んでいると言われています。

すでに紹介した中国の国家ブロックチェーンインフラプロジェクト「BSN(Blockchain-Based Services Network)」が6種類のパブリックブロックチェーンを統合する出来事をみても、そのスピードは明らかです。

BSNの統合では、8月10日にローンチされるBSNの海外版「BSN International Portal」に対して、イーサリアム、イオス、テゾス、Nervos、ネオ、IRISnetが統合されることで、6種類のブロックチェーンの開発者が、BSNが海外に設置するデータセンターのストレージや帯域などのリソースを活用して、dApps(分散型アプリケーション)の開発が行えるようになります(CoinPost)。

👉参考記事:『「BSN」〜中国が国家主導で開発を進めるブロックチェーンネットワーク〜

また、中国の工業和信息化部(MIIT、日本の経済産業省に相当)は、2020年5月14日、Tencent(騰訊)、Huawei(華為)、Baidu(百度)、JD(京東)、Ping An(平安)などの企業が、ブロックチェーンや分散型台帳技術の国家標準の設定を目的とした新しい委員会に参加すると発表しています(THE BRIDGE)。

同委員会には、MIIT、地方自治体、シンクタンク、大学、スーパーコンピューティングセンター、ハイテク企業から71人の研究者と専門家が集められており、MIITの次官であるChen Zhaoxiong氏が委員長を務める他、5名の副長は中国人民銀行のデジタル通貨研究院の1名を含めて、全て政府のスタッフで構成されています(HEDGE GUIDE)。

こうした官民をあげた取り組みは、ブロックチェーン技術の研究開発を推し進めるのみならず、技術を社会実装する道を斬り開くためにも重要な動きです。

今後、中国のブロックチェーン技術はさらに発展を遂げるでしょう。