【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、Utility Token〜

近年、STOをはじめ、ブロックチェーンのトークンを活用した新しいビジネスが生まれています。特に、複数種類あるトークンの中でも、Utility Tokenに注目が集まっています。トークンの定義、特徴をもとに、最新事例を解説します!

ブロックチェーンのトークンを使った資金調達方法「STO」って?

高まるブロックチェーン市場への期待

ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。

DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンにおけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニアの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更といった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体を大きく変える可能性として期待されています。

その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネスのみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めています。

その背景として、もともとはFintech(フィンテック、金融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコインを支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近年、仮想通貨の領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになってきました。

実際、世界経済フォーラムの発表によると、2025年までに、世界の総GDPの10%がブロックチェーン基盤上にのると言われています。

STOとは何か?

そうした諸産業でのブロックチェーンを用いた課題解決の中でも、2020年、特に注目を集めているのが、「STO」と呼ばれる、ブロックチェーン技術を利用した新しい資金調達方法です。

STOとは、Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略で、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです(「セキュリティ」というのは「証券」という意味であることに注意して下さい)。

STOは、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開、ブロックチェーンを利用した資金調達方法の一つ)の問題点であったスキャム(いわゆる詐欺)や仕組み自体の投機的性質を解消する、新しい資金調達方法として注目を集めており、1兆ドル以上のマーケットになるとの予想もなされています。

ICOと比較した際のSTOのメリットとしては、次の4点が挙げられます。

  1. 詐欺コインがなくなる
  2. 取引が24時間365日可能
  3. スマートコントラクトによる仲介の排除とコスト削減
  4. 所有権の分割ができるようになる

他方で、法規制に則って運用されるためにICOよりも自由度が低く、規制の管理下におかれるために、投資の参入障壁が高いことなどのデメリットもあります。

しかし、2019年の時点ですでに数億ドル以上のSTO案件が生まれていることを鑑みると、今後、STOが金融領域におけるブロックチェーンビジネスの注目株であることは間違い無いでしょう。

トークンとは何か?

「トークン」という言葉がもつイメージ

上で述べたSTOでは、資金調達方法の一つとして、ブロックチェーンのトークンが活用されています。

こう聞くと、なんとなくわかったような気になりますが、その実、「トークン」という言葉はとても曖昧で、意味の幅が広い言葉です。

したがって、STOを始めとするトークンビジネスを理解するためには、まずはトークンという言葉が持つイメージを掴むことが重要です。

そもそも、トークン(token)は原義的に、「しるし」「象徴」「記念品」「証拠品」を指す言葉です(Wikipedia)。

しかし、ビジネス活用の文脈では、これら原義通りの意味よりも、むしろそこから派生した下記2つの意味が重要になります。

  1. 使える場所、交換対象などが限られている「代用貨幣」のこと
  2. 一回だけ、使い捨ての認証権限のこと

これらの意味から、ビジネスにおいてトークンがどのようなイメージで活用されているかが見えてきます。

すなわち、トークンは、「法定通貨や暗号資産(仮想通貨)と違って、交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」として用いられています。

もちろん、字義通りに全てのトークンが「使い捨てにしよう」と狙ってつくられるわけではありませんが、こうしたイメージを掴んでおくことで、数あるトークンの狙いや意味を理解しやすくなるでしょう。

トークンとブロックチェーン

今みたように、トークンそのもそも意味範囲の広い概念であり、ブロックチェーンに限定されたものではありません。

しかし、近年、トークンという言葉に注目が集まるときは、必ずといっていいほど、ブロックチェーンとセットにされています。

これは、一つにはICOやSTOといった新しい資金調達方法の背景にブロックチェーンの技術があることも影響していますが、むしろそれ以上に、そもそもブロックチェーンがトークンと相性の良い技術であることが大きな要因でしょう。

少し小難しい話になりますが、トークンとブロックチェーンの相性の良さを一言で言えば、「近代以来の国民国家経済、現代のグローバル資本主義に対するアンチテーゼ」として使われやすいという点で共通していることです。

まず、トークンは先ほど見たように、「法定通貨や暗号資産(仮想通貨)と違って、交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」としての特性をもっています。

したがって、トークンは、法定通貨や暗号資産で「外部」と均質化させたくない経済圏、例えば地方公共自治体やショッピングモールなど、オープンではあるものの中央権力を介していないコミュニティーで、そのコミュニティー内にのみ資する準貨幣として用いられます

そのため、逆に、もしコミュニティーの範囲を超えたレベルで経済圏を回していきたいのであれば、それはもはやトークンではなく、法定通貨や暗号資産で十分だということになります。

他方、暗号資産であるビットコインの副産物として生まれたブロックチェーンは、そもそもの技術的思想が「非中央集権的」です。

「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンは、中央管理を前提としている従来のデータベースとは異なり、常に同期されており中央を介在せずデータが共有できるので参加者の立場がフラット(=非中央集権、分散型)という特徴を備えています。

したがって、ブロックチェーンの技術は、暗号資産のみならず、例えば管理者不在のデータプラットフォームや第三者を介さない不動産取引など、既存の経済体制のあり方を変革するような方向性で、ビジネス活用される傾向にあります。

こうした相性の良さから、近年、STOを始めとした、ブロックチェーンの技術を活用したトークンビジネスがトレンドとなり始めています。

ブロックチェーンを活用したトークンの種類

実は、ブロックチェーンを活用したトークンには、様々な種類があります

代表的なトークンの種類と概要は、次の4つです。

(他にも、Transaction TokenやGovenance Tokenといった種類もありますが、概念自体が難しい上に使用される頻度もあまり多くはないため、ここでの説明は割愛します。)

区別のポイント

トークンの種類

意味

身近な例

トークン自体に金銭的価値が認められるか? Utility Token

(ユーティリティトークン)

具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン ・パチンコ玉

・図書券

・電車やバスの切符

・遊園地の入場券

Security Token

(セキュリティトークン)

それ自体に金銭的価値が認められるトークン ・株券

・債権

トークンを相互に区別するか? Fungible Token …(*)

(ファンジブルトークン)

メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン ・純金

(→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ)

Non Fungible Token

(ノンファンジブルトークン)

同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン ・土地

(→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる)

(*)”fungible”は日本語で「代替可能性」を意味する英語。

今回の記事では、これら4種類の中でも特にUtility Tokenに絞って、次章で解説を行ってまいります。

もし、他のトークンについて詳しくお知りになりたいという方がいらっしゃれば、各領域のすばらしい企業がテーマを絞って研究していま

すので、ぜひ色々と調べてみてください。

ブロックチェーントークンのビジネス活用:Utility Token によるトークンエコノミー

Utility Tokenの特徴

Utility Token(ユーティリティトークン)は、先ほど見たように、トークンそれ自体は金銭的価値をもたず、具体的な他のアセットと交換することによって初めて資産性が生まれる種類のトークンです。

例えば、ロックミュージシャンのコンサートチケットもUtility Tokenの一つでしょう。

というのも、このチケットが価値をもつのは、そのミュージシャンの演奏を聞きたいと欲する人がいた上で、チケットを使うことで生の演奏を聞くことができると約束されているからです。

したがって、コンサート開催日の翌日以降であったり、そのミュージシャンを知らない人間しかいない地域であったりすると、そのチケットには1円の価値もなくなります。

また、別の例で言えば、JRの切符を西武鉄道で使っても意味がないのと同じ話です。

このように、Utility Tokenは、他のアセットとの交換可能性を金銭的価値に変えられるトークンであることから、次のような特徴をもちます。

  • 閉じられた(=一部の人間に限定された)コミュニティや地域などで効果を発揮しやすい
  • トークン自体は物質的価値をもたなくてもよい
  • 交換対象となるアセットの価値を定量化できる

こうした諸特徴は、既存のビジネスに活用する上で使い勝手が良いため、Utility Tokenは、ブロックチェーンの技術とともに、様々な領域で活用され始めています。

次に、具体的な活用事例を4つ、ご紹介します。

Utility Tokenの活用事例①:ファンビジネス

Utility Tokenの活用事例の一つ目は、ファンビジネスの領域におけるコミュニティ専用トークンです。

コミュニティ専用トークンは、集団の内外に大きな価値差を生じさせることで、小さなコミュニティに「熱狂」を生み出すことができます。

例えば、女優の石原さとみさんのファンクラブ内で、次のような条件で、ファン活動のために使える「SATOMIコイン」がつくられたとします(注:あくまで架空の話です)。

  • Twitterで、石原さとみさんのツイートをリツイートすることでのみ、SATOMIコインを受け取れる
  • SATOMIコインを一定量貯めることで、サイン色紙など、石原さとみさんのグッズと交換できる
  • SATOMIコインは、ファンクラブに入会している人だけが保有することができる

このSATOMIコインは、ファンの方々にとっては非常に価値があるものでしょう。

逆に、石原さとみさんに全く興味をもたない人にとっては、いくらコインを集めたところで使い道がないため、コインに価値を認めないはずです(コインを自由に売り買いできるマーケットがあれば、投機目的でSATOMIコインを集める人もでてくるかもしれませんが、コインに価値を生じさせているのはあくまでファンの熱量です)。

つまり、SATOMIコインは、集団(ここではファンクラブ)の「内」と「外」で価値に差を生じさせています。

こうした集団内外での価値差の発生は、法定通貨では嫌われる現象です。

法定通貨では、あらゆる集団間・個人間で価値の差を「均す(ならす)」ことを目的としているため、コミュニティ専用のトークンとは思想が真逆なのです。

そして、この特性ゆえに、ファンコミュニティ専用のトークンには価値上昇の歯止めがききにくく、閉じられたコミュニティ内におけるファン同士の熱量の相乗効果によって、「熱狂」を伴う経済価値を生み出すことに繋がります。

この原理を実際のビジネスに適用としている事例が、サッカークラブチーム用トークンである「socios.com」です。

socios.comは、ファントークンを用いて「チームの決定」に投票をすることが可能なブロックチェーンアプリで、ユベントス、パリ・サンジェルマンなどの超有名クラブが既に使用を始めていることでも話題になっています。

このトークンには、従来は「試合を見に行って、グッズを買って、選手を応援する」存在であったファンに、チームの運営の一部も担ってもらうことで、よりロイヤルティを高めていこうという狙いがあります。

このように、Utility Tokenを利用したファンビジネスにおけるコミュニティ専用トークンは、企業のマーケティング文脈で考えるならば「新規顧客の開拓」よりも「既存顧客のコミュニティ化」に向いていると言えるでしょう。

Utility Tokenの活用事例②:シェアリングエコノミー

Utility Tokenの活用事例の二つ目は、シェアリングエコノミーです。

シェアリングエコノミーは、「トークンエコノミーの事業適用の本丸」とも言える活用領域で、国内動向で言えば、ガイアックス社が注力してビジネス活用を進めています。

シェアリングエコノミーのサービスにおいて、Utility Tokenと、その背景技術であるブロックチェーンを用いることで、透明性が非常に高く、管理コストの安いサービスをつくることができるようになります。

例えば、シェアリングエコノミーのサービスの一つに「レンタサイクル」があります。

ここでいうレンタサイクルは、自転車店がその場所を起点として貸し借りする類のものではなく、中国で一時期流行ったような、エリアの拠点ごとに駐輪場と大量の自転車を設置して、借主がスマートフォンアプリで貸し借りの手続きを行うものをイメージする方がわかりやすいでしょう。

レンタサイクルは、「ちょっとそこまで行くのに自転車を使いたいけど、わざわざ高いお金を出してまで買いたくはない」人に対して、耐久財である自転車を安くで貸し出すビジネスです。

このビジネスでは、「何回も貸す」ことと「人手を介さない(つまり人件費をかけない)」ことを前提条件として、一回の利用あたりの単価を下げることで多くの人に借りてもらい、利益を出すことができます。

ここで課題となるのが、盗難や乗り捨て、破損などのリスクと、管理コストのトレードオフ(に近い)関係です。

不要な管理コストをできる限りなくしたい一方で、管理コストを削ると、貸し借りや決済の記録がずさんになったり、顧客管理が不十分なために自転車の盗難等のリスクが高まったりしてしまいます。

そこで、課題解決の手法として注目されるのが、Utility Tokenとブロックチェーンの技術です。

レンタサイクルの管理にスマートコントラクト(貸借契約の自動執行)を使い、決済にトークンを使うことで、貸し借りの記録はブロックチェーン上で記録され、決済記録も同じブロックチェーン上でトークンで記録することができます

そして、これらの機能により、透明性が高く、かつ、管理コストの安いサービスが実現されます。

また、こうした課題感は、レンタサイクルに限らず、シェアリングエコノミー全体がモデルの原理的にもちうる問題です。

そのため、シェアリングエコノミーをビジネスモデルとする様々なサービスで、Utility Tokenを用いたトークンエコノミーが注目されています。

Utility Tokenの活用事例③:公共財の管理・利用

Utility Tokenの活用事例の三つ目は、公共財の管理・利用です。

公共財は、シェアリングエコノミーの延長領域として、近年、Utility Tokenの適用可能性が探られています

公共財の管理・利用にトークンを活用しようという発想の根底には、資本主義における価値の定量化への流れの中で、定性的価値、とりわけ情緒的な価値をうまく保っていこうという考えがあります。

私たちの身の回りには、リンゴのように数えることもできないし、餅のように切り分けられないはずなのに、あたかも「数えることができるもの」「切り分けられるもの」として売り買いされているものが多く存在します。

その象徴が、集団への「貢献」だったり、風土・環境のような「公共財」です。

資本主義の世の中、特にIoTやAIなどのデータサイエンスが発展し、「自然や社会のあらゆるものを定量化・分析して、私たちの生活をより豊かにするように最適化していこう」という思想が強まってきている現代では、そうした「貢献」や「公共財」のような定性的価値を備えたものであっても、定量化の波から逃れることは現実的ではありません

しかし、その一方で、個人や要素に還元された「数えられる結果」だけに縛られず、定性的価値の背後にある「美しい動機」を認めていこうという考え方も根強く存在しています。

こうした思想の背景には、純粋に動機やプロセスを大切にしていきたいという想いだけでなく、定量的データ分析に偏重した評価体系がこれまで以上に社会に広がった場合、行き過ぎた個人主義や結果主義が幅をきかせることで、フリーライダーやモラルハザードなどの「公的福利」を脅かす問題がより深刻になりうるのではないか、というネガティヴフィードバックへの懸念も横たわっています。

そこで、現在、定量化しつつも美しい動機が評価され、ポジティブフィードバックループが回るような仕組みのためにトークンが使えないか、公共財の分野での検討がなされているのです。

Utility Tokenの活用事例④:地域通貨

Utility Tokenの活用事例の四つ目は、地域通貨です。

地域通貨も、現在、その適用可能性が探られている領域の一つで、今後の発展が期待されている領域でもあります。

地域通貨へのトークン適用の背後にも、資本主義における定量化の波に対する抵抗が見られます。

現代に流通している法定通貨は、すべてのものを定量化させ、「商品」として流通させることで拡大していっています。

したがって、原理上、時間が経過するほど法定通貨で交換できる商品は増えていくことになります。

そして、その結果、地方の小さな経済主体と大都市の経済主体が同列で競争させされ、前者は後者に従属していくようになり、さらには決済ごとにかかる数%の手数料収入も、地方都市から大都市へと流出していくことになります。

近年、こうした流れを食い止めるべく、あえて法定通貨ではない地域通貨を使う地区が増えています。

代表的なものでいえば、「さるぼぼコイン」、カヤック社の「まちのコイン」などです。

地域通貨は、「閉じたコミュニティに向いている」というUtility Tokenの特徴を生かし、あえて地区内に経済圏を限定することによって大都市との競争から逃れようという試みです。

また、経済圏の管理を自治体が主導することで、決済の手数料収入が流れてしまうことも防ぐ狙いがあります。

現在は、まだ成功事例がそこまで多くはありませんが、今後も、この動きは加速していくと予想されます。